(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157117
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】安全装置及び開閉体装置
(51)【国際特許分類】
E05C 21/00 20060101AFI20221006BHJP
E05B 77/06 20140101ALI20221006BHJP
B60R 7/06 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E05C21/00 A
E05B77/06 Z
B60R7/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061160
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】阿部 翔太
【テーマコード(参考)】
2E250
3D022
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250JJ42
2E250LL11
2E250MM05
3D022CA08
3D022CB01
3D022CC18
3D022CD13
3D022CD17
(57)【要約】
【課題】安価に製造できる安全装置及びこれを備えた開閉体装置を提供する。
【解決手段】安全装置26は、本体部30を備える。安全装置26は、本体部30と開閉体13とを連結するとともに、本体部30に作用する所定以上の慣性力によって開閉体13に対して離脱する離脱部35を備える。安全装置26は、離脱部35の開閉体13からの離脱により開閉体13の開動作を規制する位置に移動する規制部41を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉体装置の開閉体を閉位置に維持する安全装置であって、
本体部と、
この本体部と前記開閉体とを連結するとともに、この本体部に作用する所定以上の慣性力によって前記開閉体に対して離脱する離脱部と、
この離脱部の前記開閉体からの離脱により前記開閉体の開動作を規制する位置に移動する規制部と、を備える
ことを特徴とする安全装置。
【請求項2】
規制部は、本体部に作用する所定以上の慣性力によって開閉体の開動作を規制する位置に移動する
ことを特徴とする請求項1記載の安全装置。
【請求項3】
本体部と開閉体とを回動可能に連結するヒンジ部を備え、
規制部は、前記本体部に形成され、離脱部の前記開閉体からの離脱による前記ヒンジ部での前記本体部の回動により前記開閉体の開動作を規制する位置に移動する
ことを特徴とする請求項1または2記載の安全装置。
【請求項4】
ヒンジ部は、離脱部が開閉体に連結されている状態で、規制部を前記開閉体の開動作を規制する方向へと付勢する復元力が付与されている
ことを特徴とする請求項3記載の安全装置。
【請求項5】
離脱部は、開閉体側に対して連結される弾性爪である
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の安全装置。
【請求項6】
離脱部は、本体部と開閉部との間に位置する弱部である
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載の安全装置。
【請求項7】
開閉体と、
この開閉体により開閉される被開閉部と、
請求項1ないし6いずれか一記載の安全装置と、
を備えることを特徴とする開閉体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体装置の開閉体を閉位置に維持する安全装置及びこれを備えた開閉体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車などの車両に用いられるグローブボックスなどの開閉体装置がある。開閉体装置は、通常、ロック機構やばねによる荷重により、リッドを閉位置に維持する機構を有する。このような開閉体装置において、車両の急停止時など過大な慣性力が生じたときにロック機構が外れてリッドが開かないよう、リッドを閉位置に維持する安全装置がある。
【0003】
安全装置としては、例えば開閉体により開閉される被開閉部側に、第一回動体及び第二回動体を回動可能に配置し、さらにばねを用い、開閉体を開方向に回動させる慣性力が作用したときに、第二回動体が第一回動体の回動方向を規制するとともに、ばねの付勢によって第一回動体側を開閉体に係止させて、開閉体の開動作を規制するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-12932号公報 (第4-8頁、
図1-12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の構成の場合、複数の回動体や追加のばねを用いる複雑な構成となる。このような付加的な構成を必要する安全装置の場合、低コストでの製造や軽量化が容易でない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、安価に製造できる安全装置及びこれを備えた開閉体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の安全装置は、開閉体装置の開閉体を閉位置に維持する安全装置であって、本体部と、この本体部と前記開閉体とを連結するとともに、この本体部に作用する所定以上の慣性力によって前記開閉体に対して離脱する離脱部と、この離脱部の前記開閉体からの離脱により前記開閉体の開動作を規制する位置に移動する規制部と、を備えるものである。
【0008】
請求項2記載の安全装置は、請求項1記載の安全装置において、規制部は、本体部に作用する所定以上の慣性力によって開閉体の開動作を規制する位置に移動するものである。
【0009】
請求項3記載の安全装置は、請求項1または2記載の安全装置において、本体部と開閉体とを回動可能に連結するヒンジ部を備え、規制部は、前記本体部に形成され、離脱部の前記開閉体からの離脱による前記ヒンジ部での前記本体部の回動により前記開閉体の開動作を規制する位置に導かれるものである。
【0010】
請求項4記載の安全装置は、請求項3記載の安全装置において、ヒンジ部は、離脱部が開閉体に連結されている状態で、規制部を前記開閉体の開動作を規制する方向へと付勢する復元力が付与されているものである。
【0011】
請求項5記載の安全装置は、請求項1ないし4いずれか一記載の安全装置において、離脱部は、開閉体側に対して連結される弾性爪であるものである。
【0012】
請求項6記載の安全装置は、請求項1ないし5いずれか一記載の安全装置において、離脱部は、本体部と開閉部との間に位置する弱部であるものである。
【0013】
請求項7記載の開閉体装置は、開閉体と、この開閉体により開閉される被開閉部と、請求項1ないし6いずれか一記載の安全装置と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の安全装置によれば、本体部に作用する所定以上の慣性力によって開閉体に対して離脱部が離脱し、この離脱部の離脱により本体部に作用する所定以上の慣性力によって規制部が開閉体の開動作を規制する位置に移動するため、本体部に作用する慣性力を利用した簡素な構成で、過大な慣性力に対し開閉体を閉位置に維持可能な安全装置を安価に製造できる。
【0015】
請求項2記載の安全装置によれば、請求項1記載の安全装置の効果に加えて、本体部に作用する慣性力を利用して規制部を移動させる構成を容易に形成できる。
【0016】
請求項3記載の安全装置によれば、請求項1または2記載の安全装置の効果に加えて、規制部を開閉体の開動作を規制する位置へと、確実に移動させることができる。
【0017】
請求項4記載の安全装置によれば、請求項3記載の安全装置の効果に加えて、離脱部の開閉体からの離脱によって、本体部に作用する慣性力とヒンジ部の復元力とにより、規制部を開閉体の開動作を規制する位置へと、より確実に移動させることができる。
【0018】
請求項5記載の安全装置によれば、請求項1ないし4いずれか一記載の安全装置の効果に加えて、離脱部を簡素に構成できるとともに、離脱部の形状を調整することで、離脱部が開閉体側から離脱するために本体部に作用する慣性力の大きさを容易に設定できる。
【0019】
請求項6記載の安全装置によれば、請求項1ないし5いずれか一記載の安全装置の効果に加えて、離脱部を容易かつ安価に製造でき、かつ、構成が簡素で軽量化が容易である。
【0020】
請求項7記載の開閉体装置によれば、過大な慣性力が作用したときでも開閉体を閉位置に維持できる、信頼性が高い開閉体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の安全装置を備える開閉体装置の慣性入力時の挙動を(a)ないし(c)の順に側方から示す端面図である。
【
図2】(a)は同上開閉体装置の通常時の開閉体の閉状態を側方から示す端面図、(b)は同上開閉体装置の通常時の開閉体の開状態を側方から示す端面図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態の安全装置を備える開閉体装置を側方から示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
図3において、10は開閉体装置を示す。本実施の形態において、開閉体装置10は、例えばグローブボックス、コンソールボックス、小物入れ(トレイ)、カップホルダなどの任意の車両用収納装置を例に挙げて説明する。なお、説明を明確にするために、
図1ないし
図3に示す矢印U方向を上方向、矢印D方向を下方向、矢印F方向を前方向、矢印R方向を後方向、矢印W方向を幅方向または両側方向として説明する。
【0024】
図3に示すように、開閉体装置10は、被開閉部12と、被開閉部12を開閉する開閉体13と、を備える。被開閉部12は、一例として、開口部を有する箱状に形成されている。図示される例では、被開閉部12は、両側に位置する側面部15、前後に位置する端面部16、及び側面部15及び端面部16の下部に連なる底面部17を有し、側面部15及び端面部16の上部により開口部が囲まれている。また、被開閉部12には、好ましくは開閉体13を係止するラッチ部が配置されている。
【0025】
図1ないし
図3に示す開閉体13は、蓋体、あるいはリッドなどとも呼ばれる。開閉体13は、被開閉部12を回動により開閉する。例えば、開閉体13は、被開閉部12の開口部を回動により開閉する。開閉体13は、好ましくはスプリングやダンパなどの付勢手段により被開閉部12(開口部)を開く方向に付勢されている。
【0026】
開閉体13は、開閉体本体20を有する。本実施の形態において、開閉体本体20は、開閉体装置10の上部に位置している。開閉体本体20は、例えば合成樹脂などの部材により形成されている。開閉体本体20は、被開閉部12(開口部)を覆うことができれば、任意の形状とすることができるが、本実施の形態では、前後左右方向に延びる四角形状に形成されている。
【0027】
開閉体13は、開閉体本体20の少なくとも一側部に形成されたアーム部22を有する。アーム部22は、開閉体本体20の下部に連なって形成されている。アーム部22は、被開閉部12の開口部よりも外方に位置する部分である。本実施の形態において、アーム部22は、被開閉部12の側面部15の外方に離れて位置し、側面部15と幅方向に対向する。図示される例では、アーム部22は、開閉体13の下部の後側寄りの位置から下方に延出されている。
【0028】
また、開閉体13は、被開閉部12に対して回動可能に支持される被支持部24を有する。被支持部24に開閉体13の回動中心Cが設定される。被支持部24は、開閉体本体20の後部寄り、かつ、アーム部22の上端部寄りの位置にある。被支持部24は、被開閉部12の後部寄りの位置に支持されている。例えば、被支持部24は、被開閉部12の両側の側面部15、あるいは、後側の端面部16の両側などに支持されている。したがって、本実施の形態において、開閉体13は、前部が被開閉部12に対して上下方向に回動することで被開閉部12(開口部)を開閉可能となっている。
【0029】
さらに、開閉体13は、好ましくはこの開閉体13を被開閉部12のラッチ部に係止するロック機構を構成する係止部を有する。例えば、係止部は、乗員などの操作により、ラッチ部への係止を解除可能となっている。
【0030】
そして、開閉体13には、安全装置26が取り付けられている。安全装置26は、通常時は開閉体13の開閉を妨げることのない位置にあって作動していないとともに、車両の急停止時などにより過大な慣性力が生じたときに作動して、閉位置にある開閉体13を閉位置に維持するものである。
【0031】
安全装置26は、少なくともいずれかのアーム部22に取り付けられている。本実施の形態において、安全装置26は、アーム部22の先端部である下端部に取り付けられている。安全装置26は、被支持部24の回動中心Cに対して軸直方向に離れて位置する。
【0032】
安全装置26は、本体部30を有する。本体部30は、作用する慣性力によって動作力、本実施の形態では回転モーメントを得る重量部または高質量部である。本体部30は、例えば合成樹脂などの部材により形成されている。本体部30は、円形状の外殻を有する。本体部30は、両側方向に所定の厚みを有する。本体部30は、格子状に形成されたリブ30aを側部に備えている。
【0033】
本体部30は、開閉体13に対し、ヒンジ部32を介して回動可能に連結されている。ヒンジ部32は、本体部30に対して後部上側に位置する。すなわち、ヒンジ部32は、本体部30を基準として、開閉体13の開閉端とは反対側に位置する。本実施の形態において、ヒンジ部32は、アーム部22の下端部に連結されている。図示される例では、ヒンジ部32としては、アーム部22と一体に成形されたインテグラルヒンジが用いられる。すなわち、ヒンジ部32は、合成樹脂などの部材により開閉体13側(アーム部22)と一体に成形されている。また、ヒンジ部32は、アーム部22に対して後部側に凸状となる半円弧状に湾曲されている。ヒンジ部32から、本体部30に亘り(一の)連結部33が延びている。連結部33は、例えば本体部30の接線方向に形成されている。
【0034】
また、本実施の形態において、ヒンジ部32は、製造時つまり自然状態では、
図1(c)に示すように、アーム部22に対して連結部33が後方に延びる方向に形成されている。一方、ヒンジ部32は、本体部30が開閉体13に対し離脱部35を介して連結されていることで、通常の使用時では
図1(a)に示すように連結部33が上下方向に沿う位置となる。したがって、ヒンジ部32には、離脱部35が開閉体13に連結されている状態で、
図1(a)に示す反時計回り方向、つまり離脱部35を離脱させる方向、及び本体部30を後方上側へと跳ね上げる方向へと付勢する復元力が付与されている。
【0035】
離脱部35は、本体部30をヒンジ部32とは異なる位置、本実施の形態ではヒンジ部32よりも前方の位置で開閉体13に対して連結している。すなわち、離脱部35は、ヒンジ部32に対して、開閉体13の開閉端側に位置する。本実施の形態において、離脱部35は、アーム部22の下端部に連結されている。図示される例では、離脱部35は、開閉体13側に対して連結される弾性爪である。離脱部35は、開閉体13(アーム部22)から下方に延びる連結受け部36に形成された係止開口部37に対して後方から挿入されて係止開口部37の前側の縁部に弾性的に係止される。本実施の形態において、離脱部35は、本体部30から突出する(他方の)連結部39の先端部に設定されている。連結部39は、連結部33に対して前方に離れた位置にある。連結部39は、連結部33と略平行に形成されている。連結部39は、本体部30の中心または重心を通り連結部33と平行な上下左右方向に延びる所定の仮想面Pを基準として、ヒンジ部32または連結部33とは反対側にある。
【0036】
さらに、本体部30には、規制部41が形成されている。規制部41は、安全装置26が作動したときに被開閉部12側の引っ掛け部42に引っ掛けられることで開閉体13の回動を規制するものである。本実施の形態において、規制部41は、本体部30からヒンジ部32に対して後方へと突出する。すなわち、規制部41は、ヒンジ部32に対し、開閉体13の開閉端とは反対側に突出する。規制部41は、ヒンジ部32を基準として回動中心Cとは反対側に位置する。規制部41は、先端側が上方、すなわちヒンジ部32側へと屈曲されたフック形状となっている。引っ掛け部42は、例えば被開閉部12の後側の端面部16に形成されている。本実施の形態において、引っ掛け部42は、ヒンジ部32の上部に位置する。
【0037】
また、本体部30には、突起部45が形成されている。突起部45は、本体部30において、前側下部に突設されている。
【0038】
そして、開閉体装置10は、開閉体13に安全装置26を一体的に成形するとともに、ヒンジ部32の付勢に抗しつつ、離脱部35を係止開口部37にて開閉体13側に係止させる。そのため、離脱部35が開閉体13側に連結された状態で、ヒンジ部32により本体部30が反時計回り方向に付勢される。この開閉体13を、付勢手段などを組み込みつつ被支持部24にて被開閉部12に取り付けることで、開閉体装置10が完成する。
【0039】
開閉体装置10は、
図2(a)に示す閉状態から、必要に応じて開閉体13の係止部を操作すると、被開閉部12のラッチ部への係合、すなわち開閉体13の被開閉部12に対するロック機構による係止が解除され、付勢手段による付勢力が解放されることで開閉体13が回動中心Cを中心として回動し、
図2(b)に示すように、開閉体13が最大に開いた最大開き位置で保持された開状態となる。
【0040】
開閉体13を開状態から閉状態とする場合には、付勢手段の付勢に抗して開閉体13を下方に押し込むと、係止部がラッチ部に対し係止され、ロック機構により開閉体13が被開閉部12に係止される。したがって、付勢手段に、開閉体13を開方向へと回動させる付勢力が蓄えられる。
【0041】
車両の急停止時など、過大な慣性力が開閉体装置10に作用した場合には、
図1(a)の矢印Iに示すように、重量部である本体部30に対し慣性力が作用し、矢印Mに示すように、ヒンジ部32を中心とした回転モーメントが発生する。
【0042】
この慣性力が所定以上であると、
図1(b)に示すように、離脱部35が開閉体13に対して離脱する。本体部30に作用する回転モーメント、及び、ヒンジ部32による本体部30の跳ね上げ方向への復元力により、本体部30が後方上側へと回動することで、規制部41が引っ掛け部42へと接近するように導かれる。
【0043】
そして、
図1(c)に示すように、規制部41が引っ掛け部42の後方上側から回り込んで引っ掛け部42に対し上方から当接する位置となると、慣性力による回動中心Cを中心とした回転モーメントによって開閉体13が開方向、つまり
図1(c)の時計回り方向へと回動しようとしたときに、規制部41が下方へと下がろうとするため、規制部41に対して下方から当接する引っ掛け部42によって規制部41の下方への移動が規制されることで、開閉体13が開方向へと回動する開動作が規制される。
【0044】
このように、本体部30に作用する所定以上の慣性力によって開閉体13に対して離脱部35が離脱し、この離脱部35の離脱により規制部41が開閉体13の開動作を規制する位置に移動するため、本体部30に作用する慣性力を利用した簡素な構成で、過大な慣性力に対し開閉体13を閉位置に維持可能な安全装置26を安価に提供できる。
【0045】
すなわち、ロック機構や付勢手段による荷重を増加させることで過大な慣性力に対し開閉体13を閉位置に維持する場合には、通常の動作時における操作荷重が上昇し、使い勝手が低下するのに対し、本実施の形態では、通常時の動作に影響を与えることなく、かつ、追加の部品を追加することなく、安全装置26としての機能を発揮できるとともに、低コスト化及び軽量化も可能になる。
【0046】
また、規制部41が、本体部30に作用する所定以上の慣性力によって開閉体13の開動作を規制する位置に移動するため、本体部30に作用する慣性力を利用して規制部41を移動させる構成を容易に形成できる。
【0047】
さらに、規制部41が、離脱部35の開閉体13からの離脱によるヒンジ部32での本体部30の回動により開閉体13の開動作を規制する位置に導かれるため、規制部41を開閉体13の開動作を規制する位置へと、確実に移動させることができる。
【0048】
また、ヒンジ部32には、離脱部35が開閉体13に連結されている状態で、規制部41を開閉体13の開動作を規制する方向へと付勢する復元力が付与されているため、離脱部35の開閉体13からの離脱によって、本体部30に作用する慣性力とヒンジ部32の復元力とにより、規制部41を開閉体13の開動作を規制する位置へと、より確実に移動させることができる。
【0049】
特に、ヒンジ部32をインテグラルヒンジとしたことで、開閉体13側(アーム部22)とヒンジ部32と本体部30とを一体に成形できるため、部品点数をより抑制でき、安全装置26及び開閉体13を、より簡素で安価に製造できる。
【0050】
さらに、離脱部35を、開閉体13側に対して連結される弾性爪としたことで、離脱部35を簡素に構成できるとともに、離脱部35の形状を調整することで、離脱部35が開閉体13側から離脱するために本体部30に作用する慣性力の大きさを容易に設定できる。
【0051】
そして、上記の安全装置26を開閉体装置10に備えることで、過大な慣性力が作用したときでも開閉体13を閉位置に維持できる、信頼性が高い開閉体装置10を提供できる。
【0052】
次に、第2の実施の形態について、
図4を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
本実施の形態において、離脱部35は、本体部と開閉部との間に位置する弱部として形成されている。例えば、離脱部35は、連結部39とアーム部22との連結部に形成されたノッチ状の弱部である。図示される例では、離脱部35は、連結部39とアーム部22との連結部に対し前側から形成されたスリットにより形成されている。
【0054】
そして、車両の急停止時など、過大な慣性力が開閉体装置10に作用した場合には、重量部である本体部30に対し慣性力が作用し、ヒンジ部32を中心とした回転モーメントが発生することで、この慣性力が所定以上であると、離脱部35に応力が集中して離脱部35が破断し、開閉体13に対して離脱することで、第1の実施の形態と同様に、規制部41が引っ掛け部42の後方上側から回り込んで引っ掛け部42に対し上方から当接する位置となり、開閉体13が開方向へと回動する開動作が規制される。
【0055】
このように、本実施の形態によれば、本体部30に作用する所定以上の慣性力によって開閉体13に対して離脱部35が離脱し、この離脱部35の離脱により本体部30に作用する所定以上の慣性力によって規制部41が開閉体13の開動作を規制する位置に移動するなど、上記の第1の実施の形態と同様の構成を有することで、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、金型の構造上、第1の実施の形態の離脱部35のような弾性爪を設定することが困難な場合でも、離脱部35を容易かつ安価に製造でき、かつ、構成が簡素で軽量化が容易である。また、離脱部35を形成するスリット形状を調整することで、離脱部35が開閉体13側から離脱するために本体部30に作用する慣性力の大きさを容易に設定できる。
【0056】
なお、上記の各実施の形態において、開閉体装置としては、車両の車室に備えられる収納装置を例に挙げて説明したが、車両以外に用いられる収納装置にも適用可能である。
【0057】
また、開閉体装置は、物品を収納する収納装置に限られず、被開閉部が開閉体により開閉される任意の開閉体装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、車両の車室に備えられる収納装置などの開閉体装置、及びその安全装置として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0059】
10 開閉体装置
12 被開閉部
13 開閉体
26 安全装置
30 本体部
32 ヒンジ部
35 離脱部
41 規制部