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特開2022-157121軸受状態診断装置及び軸受状態診断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157121
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】軸受状態診断装置及び軸受状態診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/045 20190101AFI20221006BHJP
【FI】
G01M13/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061168
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一弘
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024AC05
2G024BA27
2G024CA13
2G024DA09
2G024FA04
(57)【要約】
【課題】軸受の診断精度を向上することができる軸受状態診断装置及び軸受状態診断方法を提供すること。
【解決手段】軸受状態診断装置10は、振動センサ20aの検出信号を帯域制限するフィルタ311a,311b,フィルタ311cを備える複数のフィルタリング処理部31a,31b,31cと、複数のフィルタリング処理部31a,31b,31cから出力される振動信号のうちの何れかを出力する比較処理部32と、比較処理部32から出力される振動信号の振動解析処理を行う状態判定部33と、を備える。複数のフィルタリング処理部が備えるフィルタは、それぞれ通過帯域が異なる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の軸受の状態診断を行う軸受状態診断装置であって、
前記軸受の振動を検出する振動センサと、
前記軸受の異常状態に応じて振動信号に特徴的に現れる特徴周波数成分に応じて、前記軸受の状態を判定する診断部と、
を備え、
前記診断部は、
前記振動センサの検出信号を帯域制限するフィルタを備える複数のフィルタリング処理部と、
前記複数のフィルタリング処理部から出力される振動信号のうちの何れかを出力する比較処理部と、
前記比較処理部から出力される振動信号の振動解析処理を行う状態判定部と、
を備え、
前記複数のフィルタリング処理部が備えるフィルタは、それぞれ通過帯域が異なる、
軸受状態診断装置。
【請求項2】
前記比較処理部は、
前記複数のフィルタリング処理部から出力される振動信号において検出されるピーク成分に応じて、前記状態判定部に出力する振動信号を選択する、
請求項1に記載の軸受状態診断装置。
【請求項3】
前記比較処理部は、
前記複数のフィルタリング処理部から出力される振動信号ごとに、前記特徴周波数成分のピーク検出を行い、ピーク検出された前記ピーク成分の振動強度に基づき、前記状態判定部に出力する振動信号を選択する、
請求項2に記載の軸受状態診断装置。
【請求項4】
前記比較処理部は、
前記特徴周波数成分の複数の次数のピーク成分を検出し、当該複数の次数のピーク成分の振動強度に基づき、前記状態判定部に出力する振動信号を選択する、
請求項3に記載の軸受状態診断装置。
【請求項5】
前記比較処理部は、
前記複数の次数のピーク成分の振動強度をそれぞれ所定の閾値と比較し、当該閾値以上であるか否かに応じて、前記状態判定部に出力する振動信号を選択する、
請求項4に記載の軸受状態診断装置。
【請求項6】
回転機械の軸受の状態診断を行う軸受状態診断方法であって、
振動センサの検出信号を通過帯域が異なる複数のフィルタでそれぞれ帯域制限し、
前記複数のフィルタで帯域制限した信号から得られる各振動信号のうちの何れかに基づき、前記軸受の状態を判定する、
軸受状態診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受状態診断装置及び軸受状態診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の台車を構成する歯車装置等の回転機械に用いられる軸受に異常が発生した場合、振動解析結果に異常状態を示す特徴的な周波数成分が現れる。このため、診断条件として軸受の異常状態を示す特徴周波数成分を抽出する必要がある。特許文献1には、センサで検出された信号をフィルタリング処理して、軸受の異常とは関連性が薄い周波数成分を除去することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5409878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサで検出される信号には、軸受の状態に係る周波数成分だけでなく、電動機又は車軸等の他の構成要素による周波数成分も含まれる。このような外乱による影響や回転数等の諸条件により、センサの検出信号をフィルタリング処理するための最適なフィルタ特性が異なる。このため、特定の周波数帯域でフィルタリング処理を行う上記従来技術では、軸受の損傷等の維持が困難となる場合がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、軸受の診断精度を向上することができる軸受状態診断装置及び軸受状態診断方法を提供すること、を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様に係る軸受状態診断装置は、回転機械の軸受の状態診断を行う軸受状態診断装置であって、前記軸受の振動を検出する振動センサと、前記軸受の異常状態に応じて振動信号に特徴的に現れる特徴周波数成分に応じて、前記軸受の状態を判定する診断部と、を備え、前記診断部は、前記振動センサの検出信号を帯域制限するフィルタを備える複数のフィルタリング処理部と、前記複数のフィルタリング処理部から出力される振動信号のうちの何れかを出力する比較処理部と、前記比較処理部から出力される振動信号の振動解析処理を行う状態判定部と、を備え、前記複数のフィルタリング処理部が備えるフィルタは、それぞれ通過帯域が異なる。
【0007】
上記構成により、複数のフィルタリング処理部がそれぞれ出力する振動信号のうち、軸受の状態診断結果として、より好ましい結果が得られることが期待できる振動信号を用いて、振動解析処理を行うことができる。これにより、軸受の診断精度を向上することができる。
【0008】
軸受状態診断装置の望ましい態様として、前記比較処理部は、前記複数のフィルタリング処理部から出力される振動信号において検出されるピーク成分に応じて、前記状態判定部に出力する振動信号を選択することが好ましい。
【0009】
これにより、振動信号のピーク成分に応じた振動信号の選択が可能となる。
【0010】
軸受状態診断装置の望ましい態様として、前記比較処理部は、前記複数のフィルタリング処理部から出力される振動信号ごとに、前記特徴周波数成分のピーク検出を行い、ピーク検出された前記ピーク成分の振動強度に基づき、前記状態判定部に出力する振動信号を選択することが好ましい。
【0011】
これにより、振動信号のピーク成分の振動強度に応じた高精度な状態診断が可能となる。
【0012】
軸受状態診断装置の望ましい態様として、前記比較処理部は、前記特徴周波数成分の複数の次数のピーク成分を検出し、当該複数の次数のピーク成分の振動強度に基づき、前記状態判定部に出力する振動信号を選択することが好ましい。
【0013】
これにより、複数の次数のピーク成分の振動強度に応じて、より高精度な状態診断が可能となる。
【0014】
軸受状態診断装置の望ましい態様として、前記比較処理部は、前記複数の次数のピーク成分の振動強度をそれぞれ所定の閾値と比較し、当該閾値以上であるか否かに応じて、前記状態判定部に出力する振動信号を選択することが好ましい。
【0015】
これにより、閾値判定による振動信号の選択が可能となる。
【0016】
本発明の一態様に係る軸受状態診断方法は、回転機械の軸受の状態診断を行う軸受状態診断方法であって、振動センサの検出信号を通過帯域が異なる複数のフィルタでそれぞれ帯域制限し、前記複数のフィルタで帯域制限した信号から得られる各振動信号のうちの何れかに基づき、前記軸受の状態を判定する。
【0017】
これにより、複数のフィルタで帯域制限した信号から得られる各振動信号のうち、軸受の状態診断結果として、より好ましい結果が得られることが期待できる振動信号を用いて振動解析処理を行うことができ、軸受の診断精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軸受の診断精度を向上することができる軸受状態診断装置及び軸受状態診断方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態に係る軸受状態診断装置を搭載する鉄道車両の台車を正面方向から見た構成の概要を示す図である。
図2図2は、図1に示す鉄道車両の台車を真下から見た構成の概要を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る軸受状態診断装置の鉄道車両内における配置を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る軸受状態診断装置の一例を示すブロック図である。
図5図5は、フィルタ特性の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る軸受状態診断装置の軸受診断対象となる歯車装置の一例を示す図である。
図7図7は、軸受の振動特性の一例を模式的に示す図である。
図8図8は、エンベロープ処理及びFFT処理後の振動信号の一例を模式的に示す図である。
図9図9は、軸受の異常状態と特徴周波数成分との関係を示す図である。
図10A図10Aは、実施形態に係る軸受状態診断装置のエンベロープ処理及びFFT処理後の振動信号のピーク成分を模式的に示す図である。
図10B図10Bは、実施形態に係る軸受状態診断装置のエンベロープ処理及びFFT処理後の振動信号のピーク成分を模式的に示す図である。
図10C図10Cは、実施形態に係る軸受状態診断装置のエンベロープ処理及びFFT処理後の振動信号のピーク成分を模式的に示す図である。
図11図11は、軸受状態診断処理の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、フィルタリング処理部におけるピーク検出処理及び比較処理部における比較判定処理について説明するための図である。
図13図13は、比較判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
図1は、実施形態に係る軸受状態診断装置を搭載する鉄道車両の台車を正面方向から見た構成の概要を示す図である。図2は、図1に示す鉄道車両の台車を真下から見た構成の概要を示す図である。図1及び図2に示すように、鉄道車両の台車は、歯車装置(「駆動装置」ともいう)111と、電動機113と、台車枠115と、継手117と、車軸119と、車輪121と、軸受123とを主に備える。
【0022】
減速機として機能する歯車装置111は、互いに噛合する小歯車(「ピニオン」ともいう)131及び大歯車133を有する。小歯車131及び大歯車133はそれぞれ平歯車である。また、歯車装置111は、小歯車131の軸を回転自在に支承する軸受135を有する。この軸受135によって、小歯車131の軸の振れ回りが防止される。軸受135のハウジングは、歯車装置111の筐体に固定されている。
【0023】
鉄道車両の駆動源である電動機(モータ)113は、台車枠115に固定されている。電動機(モータ)113の回転軸125は、継手117を介して歯車装置111の小歯車131の軸に連結されている。したがって、電動機(モータ)113の回転力は、継手117を介して歯車装置111の小歯車131に伝達される。歯車装置111の大歯車133は、車軸119と同軸に嵌着されている。また、車軸119には車輪121も嵌着されている。したがって、歯車装置111の小歯車131に伝達された電動機(モータ)113からの回転力は、大歯車133及び車軸119を介して車輪121に伝達される。
【0024】
軸受123は、車軸119を回転自在に支承するものである。軸受123と台車枠115の間には、鉄道車両の走行に伴い発生する振動(以下「走行振動」という)を吸収するための軸ばね127が介設されている。なお、走行振動によって軸ばね127が撓んで台車枠115側と車軸119側とが相対変位しても、継手117が撓むことによってこの変位は吸収される。
【0025】
走行振動に伴う軸ばね127又は継手117の撓みによって、歯車装置111の小歯車131の軸を支承する軸受135には多様な荷重がかかる。さらに、鉄道車両の実走行時に発生する走行振動には、鉄道車両が受ける風等の環境要因や線路状態による要因等の多様な要因が含まれる。こうした荷重を軸受135が受け続けると、軸受135には、クリープ、焼付き又はポケット摩耗等の損傷が発生し得る場合がある。また、軸受135に損傷が発生すると、歯車装置111の小歯車131の軸における振動、温度、トルク、変位、AE(Acoustic Emission)又は回転速度等のパラメータ又はその経時変化が正常時とは異なって表れる。このような軸受135が破損に至る前段階での損傷状態の時点でその実態を検知できた方が望ましい。このため、本実施形態の軸受状態診断装置は、鉄道車両に搭載され、当該鉄道車両の実走行中における軸受135の損傷に応じたパラメータの変化に基づいて、軸受135の損傷に起因する変化を検知する。
【0026】
本実施形態に係る軸受状態診断装置における軸受の状態診断対象とする回転機械は、例えば、上述した鉄道車両の台車に用いられる歯車装置である。以下、本実施形態に係る軸受状態診断装置について、図3及び図4を参照して説明する。
【0027】
図3は、実施形態に係る軸受状態診断装置の鉄道車両内における配置を示す図である。本実施形態に係る軸受状態診断装置10は、図3に示すように、例えば上記説明した台車を含む鉄道車両の車体内に設けられる。軸受状態診断装置10は、振動、温度、トルク、変位、AE(Acoustic Emission)及び回転速度等のパラメータの少なくともいずれか一つを検出する検出部20と、検出部20の測定値が入力される診断部30と、を備える。
【0028】
検出部20は、歯車装置111の軸受135近傍に設けられる。なお、検出部20は、歯車装置111の軸受135近傍の音を集音するマイク(図示せず)を含む構成であっても良い。検出部20から軸受状態診断装置10への情報の伝送手段は、有線通信であっても良いし、無線通信であっても良い。
【0029】
図4は、実施形態に係る軸受状態診断装置の一例を示すブロック図である。図4に示す例において、軸受状態診断装置10は、検出部20と診断部30とを含む。検出部20は、振動センサ20aと、軸速度センサ20bと、を備える。診断部30は、複数のフィルタリング処理部31a,31b,31cと、比較処理部32と、状態判定部33と、を備える。
【0030】
フィルタリング処理部31aは、フィルタ311aと、エンベロープ処理部312aと、ピーク検出部313aと、を備える。フィルタリング処理部31bは、フィルタ311bと、エンベロープ処理部312bと、ピーク検出部313bと、を備える。フィルタリング処理部31cは、フィルタ311cと、エンベロープ処理部312cと、ピーク検出部313cと、を備える。
【0031】
振動センサ20aは、軸受における異常状態に応じた振動の検出に用いられる。振動センサ20aの検出信号は、フィルタリング処理部31a,31b,31cのフィルタ311a、フィルタ311b、フィルタ311cに入力される。
【0032】
軸速度センサ20bは、軸受の軸速度の検出に用いられる。軸速度センサ20bの検出信号は、フィルタリング処理部31a,31b,31cのピーク検出部313a、ピーク検出部313b、ピーク検出部313cに入力される。
【0033】
図4では、3つのフィルタリング処理部31a,31b,31cを備える構成を例示したが、フィルタリング処理部31a,31b,31cの数により本開示が限定されるものではない。例えば、2つのフィルタリング処理部を備えた構成であっても良いし、4つ以上のフィルタリング処理部を備えた構成であっても良い。以下の説明では、図4に示す3つのフィルタリング処理部31a,31b,31cを備える構成について説明する。
【0034】
フィルタリング処理部31a,31b,31cでは、それぞれフィルタ311a、フィルタ311b、フィルタ311cのフィルタ特性のみが異なっている。
【0035】
図5は、フィルタ特性の一例を示す図である。図5に示すように、フィルタ311a、フィルタ311b、フィルタ311cは、それぞれ異なる帯域を通過させるバンドパスフィルタ(以下、「BPF」とも称する)である。なお、フィルタ311a,311b,311cは、BPFに限定されず、例えば、フィルタ311aがローパスフィルタ(LPF)であっても良いし、フィルタ311cがハイパスフィルタ(HPF)であっても良い。
【0036】
以下の説明において、フィルタリング処理部31a、フィルタリング処理部31b、フィルタリング処理部31cを、「フィルタリング処理部31」と称する場合がある。また、フィルタ311a、フィルタ311b、フィルタ311cを、「フィルタ311」と称する場合がある。また、エンベロープ処理部312a、エンベロープ処理部312b、エンベロープ処理部312cを、「エンベロープ処理部312」と称する場合がある。また、ピーク検出部313a、ピーク検出部313b、ピーク検出部313cを、「ピーク検出部313」と称する場合がある。
【0037】
フィルタ311は、振動センサ20aの検出信号をフィルタリング処理して、所定の帯域成分以外を除去する。
【0038】
エンベロープ処理部312は、フィルタ311によって帯域制限された信号をエンベロープ処理(包絡検波処理)する。
【0039】
ピーク検出部313は、エンベロープ処理部312によってエンベロープ処理された信号の高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)処理を行うFFT演算部を備え、軸速度センサ20bにより検出される軸速度が、後段の診断部30における診断可能範囲内であるとき、FFT処理後の振動信号のピーク成分を検出する。
【0040】
比較処理部32は、フィルタリング処理部31の出力に応じた比較判定処理を行う。具体的に、比較処理部32は、フィルタリング処理部31a、フィルタリング処理部31b、フィルタリング処理部31cから出力されるFFT処理後の振動信号のピーク成分を所定の閾値と比較判定し、所定の判定条件を満たした振動信号を、後段の状態判定部33に出力する。比較処理部32における比較判定処理の具体例については、後述する実施形態に係る軸受状態診断処理(図11参照)及び比較判定処理(図13参照)において詳細に説明する。
【0041】
状態判定部33は、比較処理部32から出力される振動信号を解析(以下、「振動解析処理」とも称する)して軸受の状態判定を行い、軸受の状態診断結果を出力する。なお、振動解析処理においては、軸受異常音デジタル解析システムとして開発された「ACOUS NAVI」(登録商標)が用いられても良い。なお、この状態判定部33における振動解析手法により本開示が限定されるものではない。また、状態判定部33における軸受の状態判定手法により本開示が限定されるものではない。
【0042】
図6は、実施形態に係る軸受状態診断装置の軸受診断対象となる歯車装置の一例を示す図である。図6に示す例において、歯車装置(「駆動装置」ともいう)111aには、電動機(モータ)113aと、回転機械設備であるポンプ140と、が組み付けられている。
【0043】
歯車装置111aは、減速機として機能し、互いに噛合する小歯車(「ピニオン」ともいう)131aと大歯車133aを有する。小歯車131a及び大歯車133aはそれぞれ平歯車である。歯車装置111aは、小歯車131aの軸を回転自在に支承する2つの軸受135a,135bと、大歯車133aの軸を回転自在に支承する2つの軸受141a,141bとを有する。軸受135a,135bは、小歯車131aを挟むように、その両側に配置されており、軸受141a,141bは、大歯車133aを挟むように、その両側に配置されている。なお、本実施形態では、一例として、歯車装置111aの軸受135aを状態判定の対象とした例を示している。
【0044】
軸受135a,135b及び軸受141a,141bそれぞれのハウジング(図示略)は、歯車装置111aの筐体に固定されている。軸受135a,135bによって、小歯車131aの軸の振れ回りが防止され、軸受141a,141bによって、大歯車133aの軸の振れ回りが防止される。電動機(モータ)113aの回転力は、歯車装置111aの小歯車131aに伝達される。小歯車131aに伝達された電動機(モータ)113aからの回転力は、大歯車133aを介してポンプ140に伝達される。したがって、電動機(モータ)113aが動作することで、ポンプ140が稼働する。
【0045】
振動センサ20aは、歯車装置111aの軸受135aに設けられている。なお、図6に示す例では、軸受135b,141a,141bには振動センサ20aが設けられていないが、これら各軸受135b,141a,141bを状態判定の対象とする場合には、各軸受135b,141a,141bのそれぞれに振動センサ20aを設ける構成であっても良い。
【0046】
軸速度センサ20bは、図6に示す例では、電動機(モータ)113aに軸速度センサ20bを設けた例を例示したが、軸速度センサ20bの取り付け位置はこれに限るものではない。なお、軸受141a,141bを状態判定の対象とする場合には、ポンプ140に軸速度センサ20bを設ける構成であっても良い。
【0047】
図7は、軸受の振動特性の一例を模式的に示す図である。図7に示す例において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は振動の強度(振動強度)[dB]を示している。図7に示す実線は、軸受が正常である場合の波形を示し、図7に示す破線は、軸受損傷時における波形を示している。
【0048】
図8は、エンベロープ処理及びFFT処理後の振動信号の一例を模式的に示す図である。図8において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は振動の強度(振動強度)[dB]を示している。
【0049】
図7に示す例では、軸受の焼付き等に起因して発生する軸受損傷の初期段階における兆候を示している。図7に示すように、軸受の焼付き等に起因して発生する軸受損傷の初期段階の兆候として、特定の周波数帯域fwで振動強度に大きな差が生じる。
【0050】
図8に示すエンベロープ処理後の振動信号に対してFFT処理を行うことで、軸受の異常状態に応じた複数の特徴周波数成分(ピーク成分)を検出できる(図8参照)。
【0051】
図9は、軸受の異常状態と特徴周波数成分との関係を示す図である。図9に示すように、軸受の異常状態に応じた特徴周波数成分として、例えば、内輪の損傷に起因する振動の特徴周波数成分[Hz]は、Zfiで示す数式で表され、外輪の損傷に起因する振動の特徴周波数成分[Hz]は、Zfcで示す数式で表され、ころ(転動体)の損傷に起因する振動の特徴周波数成分[Hz]は、2fbで示す数式で表される。図9に示す例において、Zはころ(転動体)の数を示し、frは内輪回転速度[Hz]を示し、fbは転動体自転速度[Hz]を示し、dmはピッチ円直径を示し、Daは転動体直径を示し、αは接触角を示している。
【0052】
上述のように、振動センサ20aの検出信号に対し、フィルタリング処理及びエンベロープ処理後にFFTを含む振動解析を行うことで、軸受の各種異常状態を判定可能である。なお、軸受の異常状態を高精度に検知するためには、図6に示す小歯車131aと大歯車133aとのかみ合いにより発生する振動に起因する外乱を除外して振動解析処理を行う必要がある。
【0053】
図10Aは、実施形態に係る軸受状態診断装置のエンベロープ処理及びFFT処理後の振動信号のピーク成分を模式的に示す図である。図10Bは、実施形態に係る軸受状態診断装置のエンベロープ処理及びFFT処理後の振動信号のピーク成分を模式的に示す図である。図10Cは、実施形態に係る軸受状態診断装置のエンベロープ処理及びFFT処理後の振動信号のピーク成分を模式的に示す図である。図10A図10B図10Cにおいて、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸は振動の強度(振動強度)[dB]を示している。また、f1は、特徴周波数の1次成分を示し、f2は、特徴周波数の2次成分を示し、f3は、特徴周波数の3次成分を示し、f4は、特徴周波数の4次成分を示している。
【0054】
図10Aでは、図4に示すフィルタリング処理部31aから出力される振動信号のピーク成分を示している。図10Bでは、図4に示すフィルタリング処理部31bから出力される振動信号のピーク成分を示している。図10Cでは、図4に示すフィルタリング処理部31cから出力される振動信号のピーク成分を示している。
【0055】
本実施形態では、上述したように、フィルタ311a,311b,311cのフィルタ特性を異ならせている(図5参照)。これにより、図10A図10B図10Cに示すように、振動信号に現れるピーク成分の振動強度が異なる。具体的には、例えば、図10Bに示すように、フィルタリング処理部31bから出力される振動信号のピーク成分の振動強度が最も大きくなり、例えば、図10Cに示すように、フィルタリング処理部31cから出力される振動信号のピーク成分の振動強度が最も小さくなる。
【0056】
図10Bに示すように、振動信号のピーク成分の振動強度が最も大きくなる場合、すなわち、図10A図10B図10Cに示す例では、図10Bに示すフィルタリング処理部31bから出力される振動信号に対して、後段の状態判定部33で振動解析処理を行うことで、軸受の状態診断結果の精度を高めることができる。
【0057】
なお、本開示では、特徴周波数の1次成分から4次成分までの4つのピーク成分を検出する例について説明しているが、ピーク成分を検出する特徴周波数の次数はこれに限定されない。例えば、特徴周波数の3次成分までのピーク成分を検出する態様であっても良いし、特徴周波数の5次成分以上のピーク成分まで含めて検出する態様であっても良い。
【0058】
以下、本実施形態に係る軸受状態診断装置10における軸受状態診断手順の具体例について説明する。
【0059】
図11は、軸受状態診断処理の一例を示すフローチャートである。図12は、フィルタリング処理部におけるピーク検出処理及び比較処理部における比較判定処理について説明するための図である。なお、以下に示す軸受状態診断処理の説明では、フィルタリング処理部31のピーク検出部313におけるピーク検出処理、及び、比較処理部32における比較判定処理について詳細に説明する。
【0060】
図11に示す軸受状態診断処理の前提条件として、例えば実施形態に係る軸受状態診断装置10を搭載した鉄道車両(図1参照)が走行中であるものとする。
【0061】
実施形態に係る軸受状態診断装置10を搭載した鉄道車両が走行中であるとき、フィルタリング処理部31a,31b,31cの各構成部は、それぞれ、振動センサ20aの検出信号のフィルタリング処理、エンベロープ処理(包絡検波処理)、FFT処理を行う。
【0062】
フィルタリング処理部31は、軸速度センサ20bにより検出される軸速度が後段の診断部30における診断可能範囲内であるか否かを判定する(ステップS101)。軸速度センサ20bにより検出される軸速度が診断可能範囲外である場合(ステップS101;No)、フィルタリング処理部31は、軸速度センサ20bにより検出される軸速度が診断可能範囲内となるまで(ステップS101;Yes)、ステップS101の処理を繰り返す。
【0063】
フィルタリング処理部31は、軸速度センサ20bにより検出される軸速度が診断可能範囲内であるとき(ステップS101;Yes)、FFT処理後の振動信号のピーク成分を検出する(ステップS102)。以下、実施形態に係る軸受状態診断装置10のフィルタリング処理部31におけるピーク検出処理について、図12を参照して説明する。
【0064】
具体的に、フィルタリング処理部31のピーク検出部313は、図12に示すように、特徴周波数の1次成分f1、2次成分f2,3次成分f3,4次成分f4のそれぞれを含む所定範囲内(例えば、特徴周波数成分の周波数を中心とする10[Hz]幅)の第1周波数帯域幅bw1、第2周波数帯域幅bw2、第3周波数帯域幅bw3、第4周波数帯域幅bw4において、ピーク振動強度V1、ピーク振動強度V2、ピーク振動強度V3、ピーク振動強度V4を検出する。
【0065】
比較処理部32は、フィルタリング処理部31の出力に応じた比較判定処理を行う(ステップS103)。図13は、比較判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0066】
図13に示す比較判定処理の前提条件として、比較処理部32には、図12に示すように、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1に対する第1閾値Vth1が設定されている。また、比較処理部32には、図12に示すように、特徴周波数の2次成分f2のピーク振動強度V2に対する第2閾値Vth2が設定されている。また、比較処理部32には、図12に示すように、特徴周波数の3次成分f3のピーク振動強度V3に対する第3閾値Vth3が設定されている。また、比較処理部32には、図12に示すように、特徴周波数の4次成分f4のピーク振動強度V4に対する第4閾値Vth4が設定されている。また、比較処理部32は、以下のステップS201からステップS208までの処理が完了したフィルタリング処理部31の数nをカウントする機能を有し、このnの値がリセット(n=0)されているものとする。また、比較処理部32には、フィルタリング処理部31a,31b,31cから出力される各振動信号のうち、何れの振動信号を出力するかを判定するための所定の判定条件が設定されているものとする。
【0067】
なお、図12では、第1閾値Vth1、第2閾値Vth2、第3閾値Vth3、第4閾値Vth4がそれぞれ異なる値である例を示したが、これに限定されない。例えば、第1閾値Vth1、第2閾値Vth2、第3閾値Vth3、第4閾値Vth4が同じ値であっても良いし、第1閾値Vth1、第2閾値Vth2、第3閾値Vth3、第4閾値Vth4のうちの複数が同じ値であっても良い。第1閾値Vth1、第2閾値Vth2、第3閾値Vth3、第4閾値Vth4は、後段の状態判定部33における軸受の状態診断結果がより好ましい結果となるように、すなわち、高精度な状態診断が可能となるように設定されていれば良い。
【0068】
比較処理部32は、まず、フィルタリング処理部31aから出力される振動信号について、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1、特徴周波数の2次成分f2のピーク振動強度V2、特徴周波数の3次成分f3のピーク振動強度V3、特徴周波数の4次成分f4のピーク振動強度V4の閾値判定を行う。
【0069】
具体的に、比較処理部32は、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1の第1閾値Vth1に対する比較判定を行い(ステップS201)、当該比較判定結果を保持する(ステップS202)。比較結果は、比較処理部32が保持しても良いし、不図示の記憶部に記憶する態様であっても良い。
【0070】
図12では、ピーク振動強度V1が第1閾値Vth1以上(V1≧Vth1)である例を示している。この場合、比較処理部32は、ピーク振動強度V1が第1閾値Vth1以上(V1≧Vth1)であることを、比較判定結果として保持する。
【0071】
続いて、比較処理部32は、特徴周波数の2次成分f2のピーク振動強度V2の第2閾値Vth2に対する比較判定を行い(ステップS203)、当該比較判定結果を保持する(ステップS204)。
【0072】
図12では、ピーク振動強度V2が第2閾値Vth2以上(V2≧Vth2)である例を示している。この場合、比較処理部32は、ピーク振動強度V2が第2閾値Vth2以上(V2≧Vth2)であることを、比較判定結果として保持する。
【0073】
続いて、比較処理部32は、特徴周波数の3次成分f3のピーク振動強度V3の第3閾値Vth3に対する比較判定を行い(ステップS205)、当該比較判定結果を保持する(ステップS206)。
【0074】
図12では、ピーク振動強度V3が第3閾値Vth3未満(V3<Vth3)である例を示している。この場合、比較処理部32は、ピーク振動強度V3が第3閾値Vth3未満(V3<Vth3)であることを、比較判定結果として保持する。
【0075】
続いて、比較処理部32は、特徴周波数の4次成分f4のピーク振動強度V4の第4閾値Vth4に対する比較判定を行い(ステップS207)、当該比較判定結果を保持する(ステップS208)。
【0076】
図12では、ピーク振動強度V4が第4閾値Vth4未満(V4<Vth4)である例を示している。この場合、比較処理部32は、ピーク振動強度V4が第4閾値Vth4未満(V4<Vth4)であることを、比較判定結果として保持する。
【0077】
ステップS208の後、比較処理部32は、ステップS201からステップS208までの処理が完了したフィルタリング処理部31の数nをカウントアップ(インクリメント)する(ステップS209)。
【0078】
比較処理部32は、特徴周波数の全てのピーク振動成分の比較判定が完了したか否かを判定する。具体的に、比較処理部32は、ステップS201からステップS208までの処理が完了したフィルタリング処理部31の数nが、診断部30が備えるフィルタリング処理部31の数N(ここでは、3)となったか否か(n=N)を判定する(ステップS210)。
【0079】
ステップS201からステップS208までの処理が完了したフィルタリング処理部31の数nがN未満(n<N)である場合(ステップS210;No)、ここでは、例えばn=1である場合、上述したステップS201の処理に戻り、フィルタリング処理部31bから出力される振動信号について、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1、特徴周波数の2次成分f2のピーク振動強度V2、特徴周波数の3次成分f3のピーク振動強度V3、特徴周波数の4次成分f4のピーク振動強度V4の閾値判定を行う(ステップS201~S208)。
【0080】
また、例えばn=2である場合、上述したステップS201の処理に戻り、フィルタリング処理部31cから出力される振動信号について、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1、特徴周波数の2次成分f2のピーク振動強度V2、特徴周波数の3次成分f3のピーク振動強度V3、特徴周波数の4次成分f4のピーク振動強度V4の閾値判定を行う(ステップS201~S208)。
【0081】
ステップS201からステップS208までの処理が完了したフィルタリング処理部31の数nがN(n=N)となると(ステップS210;Yes)、比較処理部32は、ステップS201からステップS208をフィルタリング処理部31a,31b,31cごとに繰り返すことにより得た比較判定結果に基づき、振動信号の選択判定処理を行う(ステップS211)。当該選択判定処理では、フィルタリング処理部31a,31b,31cから出力される各振動信号のうち、何れの振動信号を出力するかを判定するために予め設定された所定の判定条件を用いる。以下、選択判定処理における判定条件について説明する。
【0082】
比較処理部32による選択判定処理における判定条件としては、例えば、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1、特徴周波数の2次成分f2のピーク振動強度V2、特徴周波数の3次成分f3のピーク振動強度V3、特徴周波数の4次成分f4のピーク振動強度V4が全てそれぞれの閾値(第1閾値Vth1、第2閾値Vth2、第3閾値Vth3、第4閾値Vth4)以上である振動信号を選択する態様であっても良い。
【0083】
また、比較処理部32による選択判定処理における判定条件としては、例えば、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1、特徴周波数の2次成分f2のピーク振動強度V2、特徴周波数の3次成分f3のピーク振動強度V3、特徴周波数の4次成分f4のピーク振動強度V4の何れか、例えば特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1が第1閾値Vth1以上である振動信号を選択する態様であっても良い。
【0084】
また、比較処理部32による選択判定処理における判定条件としては、例えば、複数の振動信号において、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1、特徴周波数の2次成分f2のピーク振動強度V2、特徴周波数の3次成分f3のピーク振動強度V3、特徴周波数の4次成分f4のピーク振動強度V4が全てそれぞれの閾値(第1閾値Vth1、第2閾値Vth2、第3閾値Vth3、第4閾値Vth4)以上である場合に、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1が最も大きい振動信号を選択する態様であっても良い。
【0085】
また、比較処理部32による選択判定処理における判定条件としては、例えば、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1、特徴周波数の2次成分f2のピーク振動強度V2、特徴周波数の3次成分f3のピーク振動強度V3、特徴周波数の4次成分f4のピーク振動強度V4がそれぞれの閾値(第1閾値Vth1、第2閾値Vth2、第3閾値Vth3、第4閾値Vth4)以上であるピーク成分の数が最も多い振動信号を選択する態様であっても良い。
【0086】
さらには、上記した判定条件を複数組み合わせた態様であっても良い。
【0087】
なお、比較処理部32による選択判定処理における判定条件は上記に限定されない。比較処理部32による選択判定処理における判定条件は、上述した第1閾値Vth1、第2閾値Vth2、第3閾値Vth3、第4閾値Vth4と同様に、後段の状態判定部33における軸受の状態診断結果がより好ましい結果となるように、すなわち、高精度な状態診断が可能となるように設定されていれば良い。
【0088】
そして、比較処理部32は、上述したような判定条件を満たす振動信号、例えば、特徴周波数の1次成分f1のピーク振動強度V1、特徴周波数の2次成分f2のピーク振動強度V2、特徴周波数の3次成分f3のピーク振動強度V3、特徴周波数の4次成分f4のピーク振動強度V4が全てそれぞれの閾値(第1閾値Vth1、第2閾値Vth2、第3閾値Vth3、第4閾値Vth4)以上である、図10Bに示すフィルタリング処理部31bから出力される振動信号を、後段の状態判定部33に出力し(ステップS212)、図11に示す軸受状態診断処理に戻る。
【0089】
図11に示す軸受状態診断処理に戻ると、状態判定部33は、比較処理部32から出力される振動信号の振動解析処理を行う(ステップS104)。状態判定部33は、当該振動解析処理結果に基づいて、軸受の状態判定を行い、当該軸受状態診断結果を出力して(ステップS105)、軸受状態診断処理を終了する。
【0090】
上述した軸受状態診断処理(図11)において実行される比較判定処理(図13)により、振動信号のピーク成分の振動強度が大きく、軸受の状態診断結果として、より好ましい結果が得られることが期待できる振動信号を用いて、軸受の状態診断を行うことができ、軸受の状態診断結果の精度を高めることができる。
【0091】
このように、本実施形態によれば、軸受の診断精度を向上することができる軸受状態診断装置及び軸受状態診断方法が得られる。
【0092】
なお、上述した実施形態では、鉄道車両の台車を構成する歯車装置の軸受の状態を検知する例を示したが、適用範囲はこれに限るものではなく、例えば、軸受を有する構成であれば、各種の回転機械設備に適用可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 軸受状態診断装置
20 検出部
20a 振動センサ
20b 軸速度センサ
30 診断部
31,31a,31b,31c フィルタリング処理部
32 比較処理部
33 状態判定部
311,311a,311b,311c フィルタ
312,312a,312b,312c エンベロープ処理部
313,313a,313b,313c ピーク検出部
111,111a 歯車装置
113,113a 電動機(モータ)
115 台車枠
117 継手
119 車軸
121 車輪
123 軸受
131,131a 小歯車
133,133a 大歯車
135,135a,135b 軸受
140 ポンプ
141a,141b 軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13