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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157135
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】加飾成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/16 20060101AFI20221006BHJP
   B32B 37/10 20060101ALI20221006BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20221006BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B29C51/16
B32B37/10
B29C51/10
B29C51/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061194
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 明子
(72)【発明者】
【氏名】村上 敦
【テーマコード(参考)】
4F100
4F208
【Fターム(参考)】
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DA20A
4F100DD05A
4F100EJ242
4F100GB31
4F208AC03
4F208AD18
4F208AD24
4F208AG05
4F208AH16
4F208AH17
4F208MA03
4F208MB01
4F208MB11
4F208MC10
4F208MH06
4F208MJ30
4F208MK20
(57)【要約】
【課題】対象物が深絞り形状であっても、対象物の表面に沿って加飾シートを密着させ易くすること。
【解決手段】対象物21の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品100において、加飾シートは、対象物21の所定方向の一方側の領域を外側から被覆する第1加飾シート32と、対象物21の所定方向の他方側の領域を外側から被覆する第2加飾シート33とを備えるようにした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(21)の表面に、真空圧空製法で加飾シート(31)を密着させた加飾成形品において、
前記加飾シート(31)は、前記対象物(21)の所定方向の一方側の領域を外側から被覆する第1加飾シート(32)と、
前記対象物(21)の前記所定方向の他方側の領域を外側から被覆する第2加飾シート(33)と
を備えることを特徴とする加飾成形品。
【請求項2】
前記第1加飾シート(32)と前記第2加飾シート(33)とが接触する部分、又は、重なる部分であるシート合わせ部(31X)を有し、
前記対象物(21)は、前記シート合わせ部(31X)に対応する位置に凹溝(21M)を有することを特徴とする請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項3】
前記第1加飾シート(32)と前記第2加飾シート(33)の少なくともいずれかは、加飾に使用される領域(32A,33A)と、加飾に使用されない領域(32B,33B)とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾成形品。
【請求項4】
前記対象物(21)は、幅に直交する方向に凹む凹み部(21H)を有する深絞り形状を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の加飾成形品。
【請求項5】
前記対象物(21)は、鞍乗り型車両に搭載される部品の周囲を覆うカバー部材であることを特徴とする請求項4に記載の加飾成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、対象物の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品が開示されている。真空圧空製法では、対象物の表面に、熱で軟化した加飾シートを、負圧を利用して密着させるので、加飾シートを対象物の表面に沿って密着させ易く、かつ、対象物の縁から裏側に回り込ませることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/129976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、対象物が、自動二輪車に搭載される燃料タンクを覆うタンクカバーなどの、ある程度の高さを有し、かつ、凹みを有するような深絞り形状などの場合、加飾シートが対象物の表面に追従できない箇所が発生し易くなる。加飾シートが対象物の表面に追従できない場合、加飾シートに皺が発生したり、加飾シートと対象物との間に気泡が発生したりする。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、対象物が深絞り形状であっても、対象物の表面に沿って加飾シートを密着させ易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
対象物の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品において、前記加飾シートは、前記対象物の所定方向の一方側の領域を外側から被覆する第1加飾シートと、前記対象物の前記所定方向の他方側の領域を外側から被覆する第2加飾シートとを備えることを特徴とする。
【0007】
上述の構成において、前記第1加飾シートと前記第2加飾シートとが接触する部分、又は、重なる部分であるシート合わせ部を有し、前記対象物は、前記シート合わせ部に対応する位置に凹溝を有してもよい。
【0008】
また、上述の構成において、前記第1加飾シートと前記第2加飾シートの少なくともいずれかは、加飾に使用される領域と、加飾に使用されない領域とを有してもよい。
【0009】
また、上述の構成において、前記対象物は、幅に直交する方向に凹む凹み部を有する深絞り形状を有してもよい。
【0010】
また、上述の構成において、前記対象物は、鞍乗り型車両に搭載される部品の周囲を覆うカバー部材であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
対象物の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品において、前記加飾シートは、前記対象物の所定方向の一方側の領域を外側から被覆する第1加飾シートと、前記対象物の前記所定方向の他方側の領域を外側から被覆する第2加飾シートとを備える。この構成によれば、対象物が所定方向に直交する方向に凹みを有する深絞り形状であっても、対象物の所定方向の両側から各加飾シートを被覆することによって、各加飾シートを対象物の表面に密着させ易くなる。
【0012】
上述の構成において、前記第1加飾シートと前記第2加飾シートとが接触する部分、又は、重なる部分であるシート合わせ部を有し、前記対象物は、前記シート合わせ部に対応する位置に凹溝を有してもよい。この構成によれば、シート合わせ部を外観視し難くすることができる。
【0013】
また、上述の構成において、前記第1加飾シートと前記第2加飾シートの少なくともいずれかは、加飾に使用される領域と、加飾に使用されない領域とを有してもよい。この構成によれば、各加飾シートを真空圧空製法で対象物に密着させやすいサイズや形状にしたり、対象物被覆装置へセッティングし易い大きさにしたりし易くなる。
【0014】
また、上述の構成において、前記対象物は、幅に直交する方向に凹む凹み部を有する深絞り形状を有してもよい。この構成によれば、対象物の幅方向の両側から各加飾シートを被覆することによって、各加飾シートを対象物の表面に密着させ易くなる。
【0015】
また、上述の構成において、前記対象物は、鞍乗り型車両に搭載される部品の周囲を覆うカバー部材であってもよい。この構成によれば、部品の周囲を覆うためにカバー形状が深絞り形状となる場合であっても、カバー部材の表面に沿って加飾シートを密着させ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】対象物被覆装置の構成例を示す図である。
図2】対象物被覆装置の基本動作を示す図である。
図3図2の続きの基本動作を示す図である。
図4】タンクカバーを示す図である。
図5】第1加飾シートと第2加飾シートを示す図である。
図6】タンクカバーを被覆する工程を模式的に示す図である。
図7】シート合わせ部を凹溝と共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
まず、本発明の実施形態に係る加飾成形品100の製作に使用する対象物被覆装置10を説明する。
図1は、対象物被覆装置10の構成例を示す図である。
対象物被覆装置10は、対象物21K(基材と称する場合もある)に、真空圧空製法で加飾シート31を被覆する装置である。この対象物被覆装置10は、熱を利用して加飾シート31を対象物21Kの表面に沿った形状にするので、熱成型装置と称する場合もある。
図1に示した対象物21Kは、対象物被覆装置10の基本動作を説明するために例示した薄型のカバー部材である。対象物21Kは、高さが低い湾曲形状を有し、樹脂成型によって製作されている。
【0018】
対象物被覆装置10は、対象物21Kを支持する支持台11を備えている。対象物21Kは、治具12を介して支持台11に支持される。治具12は、加飾シート31で被覆する面を覆わずに、対象物21Kを支持可能な部材である。
図1の場合、治具12は、対象物21Kの表面のうち、加飾シート31で被覆される面の少なくとも一部である上面21Uを、加飾シート31側である上方に向けた姿勢で対象物21Kを支持する。なお、符号21Sは、対象物21Kの側面を示している。
【0019】
対象物被覆装置10は、支持台11の上方で加熱板17を上方から囲む上枠14と、支持台11を下方から囲む下枠15を備えている。加飾シート31は、上枠14と下枠15の間に狭持され、対象物21Kの上方に配置される。
また、対象物被覆装置10は、上枠14及び下枠15からなる枠体を、上下に昇降させるシリンダ16と、対象物21Kの下方から上昇可能なカッター19とを備えている。対象物被覆装置10の各部の動作は、不図示のコントローラ、又は作業者の操作などによって制御される。
【0020】
加飾シート31は、熱可塑性を有するシートに、印刷、又は塗装などによって加飾されたシートである。加飾シート31は、装飾用シートと称される場合もある。加飾シート31は、加飾、及び保護膜の機能を有している。但し、強度が相対的に高いシート材を使用したり、シート厚を増大させたりすることによって、加飾シート31に、対象物21Kを補強する補強機能などの他の機能を付加するようにしてもよい。この加飾シート31には、真空圧空製法に使用可能なシートを広く適用可能である。
【0021】
図2及び図3は、対象物被覆装置10の基本動作を示す図である。本説明では、対象物被覆装置10が、不図示のコントローラの制御の下、基本動作を自動実行するものとする。なお、コントローラは一つに限定しなくてもよく、複数のコントローラが、対象物被覆装置10の各部をそれぞれ制御するようにしてもよい。また、コントローラが自動実行する場合に限定されず、作業者の操作に基づいて、対象物被覆装置10が各動作を実行するようにしてもよい。
【0022】
まず、対象物被覆装置10は、図2に符号Aで示すように、加飾シート31の上方に位置する加熱板17を発熱させることによって、加飾シート31を軟化させる。また、対象物被覆装置10は、加飾シート71の上下の空間R1,R2を減圧する。加飾シート31の上下の空間R1,R2で真空は確立される。
次に、対象物被覆装置10は、シリンダ16を作動させることによって、図2に符号Bで示すように、加飾シート31を、対象物21Kの上面21Uに被せる。この状態で、対象物被覆装置10は、加飾シート31上側の空間R2を大気に開放する。その結果、図3の符号Aで示すように、加飾シート31は上面21Uの表面に倣って密着する。
【0023】
次いで、対象物被覆装置10は、加飾シート31上方の空間R2に圧縮空気を送り込むことによって加飾シート31上側の空間R2を増圧し、図3に符号Bで示すように、加飾シート31を、対象物21Kの上面21U及び側面21Sにより密着させると共に、加飾シート31を、対象物21Kの縁から対象物21Kの裏側へと回り込ませる。
続いて、対象物被覆装置10は、対象物21Kの下方からカッター19を上昇させることによって、図3の符号Cで示すように、対象物21Kの裏側に進入した加飾シート31の不要部分を切断する。
【0024】
対象物被覆装置10は、加熱板17の発熱を停止することにより、加飾シート31の温度を低下させ、加飾シート31を対象物21Kの表面に沿わせた状態で硬化させる。これにより、対象物21Kが加飾シート31で被覆された状態に保持され、対象物21Kの表面に加飾シート31が密着した加飾成形品100が製作される。
図3の符号Cで示すように、上枠14が加飾成形品100から離れた位置に待避することによって、加飾成形品100を容易に取り出し可能になる。なお、上枠14内の空間にアクセス可能に開閉体を設け、この開閉体を開けることによって、加飾成形品100を取り出し可能にしてもよい。
【0025】
なお、加飾シート31には、対象物21K側の面に予め接着剤が塗布され、又は接着層が設けられている。これにより、加飾シート31が対象物21Kの表面に密着した状態で加飾シート31が対象物21Kに接着される。なお、接着材や接着層を設けなくとも、加飾シート31の熱成形によって加飾シート31と対象物21Kとが一体化される場合には、接着材や接着層を省略してもよい。
【0026】
ところで、対象物21Kの形状やサイズによっては、一枚の加飾シート31で被覆しようとすると、加飾シート31の一部の延伸率が適正範囲を超える事態や、対象物21Kの形状に追従できない事態が発生する。このような事態は、加飾シート31に皺が発生したり、加飾シート31と対象物21Kとの間に気泡が発生したりする原因となる。
【0027】
図4には、自動二輪車に搭載される燃料タンクを上方から覆うタンクカバー21を示している。このタンクカバー21は、上面21Uを構成する上板部21Aと、左右の側面21Sを構成する左右の側壁部21Bとを備え、底面が開口して上方に凹む凹み部21Hが設けられている。この凹み部21H内に燃料タンクが位置することによって、燃料タンクの上方及び左右がタンクカバー21によって覆われる。
なお、図4中、符号UPはタンクカバー21の上方を示し、符号LHはタンクカバー21の左方を示している。タンクカバー21の各方向は自動二輪車を基準とした各方向と一致する。
【0028】
図4に示すように、タンクカバー21は、所定以上の高さと幅を有し、かつ、凹み部21Hを有する断面形状を有するので、深絞り形状、或いは、U字断面形状ということができる。このような深絞り形状の部材を対象物21Kとした場合、対象物被覆装置10を用いて、上面21U及び左右の側面21Sを一枚の加飾シート31で被覆しようとすると、加飾シート31の一部の延伸率が適正範囲を超える事態や、対象物21Kの形状に追従できない事態が発生し、加飾シート31に皺が発生したり、加飾シート31と対象物21Kとの間に気泡が発生したりするおそれがある。
【0029】
そこで、本実施形態では、一枚の加飾シート31でタンクカバー21を被覆するのではなく、複数枚の加飾シート32,33(後述の図5)を利用してタンクカバー21の異なる部位をそれぞれ被覆することによって、加飾シート31に皺が発生したり、加飾シート31と対象物21Kとの間に気泡が発生したりするおそれを抑制するようにしている。
加飾シート32,33、及びシート密着方法について説明する。
【0030】
本実施形態では、加飾シート31として、図5に示すように、タンクカバー21の幅方向一方側(左側に相当)を加飾する加飾領域32Aを有する第1加飾シート32と、タンクカバー21の幅方向他方側(右側に相当)を加飾する加飾領域33Aを有する第2加飾シート33とを使用する。
第1加飾シート32において、符号32Bで示す領域は、加飾に使用されない非加飾領域である。第2加飾シート33において、符号33Bで示す領域は、加飾に使用されない非加飾領域である。
【0031】
非加飾領域32B,33Bを設けることによって、第1及び第2加飾シート32,33を、真空圧空製法でタンクカバー21に密着させやすいサイズや形状に調整することができる。また、第1及び第2加飾シート32,33を大きめのサイズにすることができるので、各加飾シート32,33を対象物被覆装置10へセッティングし易くなる。
なお、加飾領域32A,33Aは、印刷又は塗装などによって加飾された領域であり、非加飾領域32B,33B(加飾領域32A,33Aを除く領域に相当)は、例えば、透明色、又は非透明色とされた領域である。なお、加飾領域32A,33A及び非加飾領域32B,33Bのいずれかに模様や柄を付加してもよい。
【0032】
図6は、第1及び第2加飾シート32,33を使用してタンクカバー21を被覆する工程を模式的に示す図である。なお、タンクカバー21は、樹脂製でも金属製でもよい。金属製の場合、タンクカバー21は、深絞り加工によって形成されたものでもよいし、深絞り加工以外の加工によって形成されたものでもよい。
図6に符号Aで示す第1工程では、被覆前のタンクカバー21(以下、「対象物21」と適宜に表記する)の幅方向一方側である左側の領域を、第1加飾シート32で被覆する。
【0033】
具体的には、図6に符号Aで示すように、対象物21の左側の側面21Sを上方に向けた姿勢となるように、図1に示した対象物被覆装置10の支持台11に、治具12を利用して対象物21を支持し、図2及び図3に示した基本動作を行う。
この場合、第1加飾シート32は、上方凸の断面形状の対象物21を上方から覆うので、対象物21の表面に沿って第1加飾シート32を隙間無く密着させることができる。したがって、第1加飾シート32に皺や気泡が発生する事態を避けやすくなる。
【0034】
図6中の符号CT1は、第1加飾シート32のカット位置を示している。第1加飾シート32のカットは、対象物被覆装置10が備えるカッター19を位置変更してカッター19によって自動切断するようにしてもよいし、作業員が任意の切断工具を使用して手動で切断するようにしてもよい。
【0035】
図6に符号Bで示す第2工程では、対象物21の幅方向他方側である右側の領域を、第2加飾シート33で被覆する。
具体的には、図6に符号Bで示すように、対象物21の右側の側面21Sを上方に向けた姿勢となるように、図1に示した対象物被覆装置10の支持台11に、治具12を利用して対象物21を支持し、図2及び図3に示した基本動作を行う。これにより、第1工程の場合と同様に、対象物21の表面に沿って第2加飾シート33を隙間無く密着させることができる。したがって、第2加飾シート33に皺や気泡が発生する事態を避けやすくなる。
【0036】
図6中の符号CT2は、第2加飾シート33のカット位置を示している。第1加飾シート32のカットと同様に、対象物被覆装置10が備えるカッター19を位置変更して各カット位置CT2をカッター19で自動切断するようにしてもよいし、作業員が任意の切断工具を使用して各カット位置CT2を手動で切断するようにしてもよい。
【0037】
図6中の符号Cは、第2工程が完了した直後の加飾成形品100を示している。
加飾成形品100において、図6中の符号31Xは、第1及び第2加飾シート32,33の合わせ部を示している。このシート合わせ部31Xは、第1加飾シート32と第2加飾シート33とが接触する部分であり、少なくとも第2工程の直後において、第2加飾シート33のカットされた端部が第1加飾シート32に重なる部分でもある。なお、図6には、説明の便宜上、各加飾シート32,33を実際よりも厚いシートで示しているので、シート合わせ部Xが実際よりも大きいサイズで表示されている。対象物21には、シート合わせ部Xに対応する位置に凹溝21Mが形成されている。
【0038】
図7は、シート合わせ部31Xを凹溝21Mと共に示す図である。
凹溝21Mは、シート合わせ部31Xを収容可能な凹形状に形成される。また、凹溝21Mは、シート合わせ部31Xに沿って延在し、外観に露出するシート合わせ部31X全体を収容する。これにより、シート合わせ部31Xを外観視し難くすることができる。
【0039】
また、シート合わせ部31Xにて第1加飾シート32の外側に重なる第2加飾シート33を、カッターなどの切断工具19Xを用いて切断するようにしてもよい。切断工具19Xを用いて切断する場合、切断工具19Xを、凹溝21Mに沿って移動させることで、切断工具19Xを第1及び第2加飾シート32,33間の境界に沿って移動させ易くなり、第1加飾シート32の外側に重なる第2加飾シート33を容易に切断し易くなる。つまり、凹溝21Mを切断工具19Xの移動方向をガイドするガイド部材に使用することができる。したがって、切断作業を行い易くなる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、対象物21の表面21U,21Sに真空圧空製法で加飾シート31を密着させた加飾成形品100において、加飾シート31として、対象物21の幅方向一方側の領域を外側から被覆する第1加飾シート32と、対象物21の幅方向他方側の領域を外側から被覆する第2加飾シート33とを使用するようにしている。これにより、対象物21が幅に直交する方向に凹み21Hを有する深絞り形状であっても、対象物21の幅方向両側から各加飾シート32,33を被覆することで、対象物21の表面21U,21Sに沿って各加飾シート32,33を密着させ易くなる。
【0041】
なお、対象物21の幅方向一方側の領域を第1加飾シート32で被覆し、対象物21の幅方向他方側の領域を第2加飾シート33で被覆する場合を例示したが、幅方向に限定しなくてもよい。要するに、第1及び第2加飾シート32,33を対象物21の表面に沿って密着させ易いように、対象物21の所定方向の一方側の領域を第1加飾シート32で被覆し、対象物21の所定方向の他方側の領域を第2加飾シート33で被覆するようにすればよい。所定方向は、対象物21の幅方向、又は、対象物21の前後方向などの適宜な方向を採用できる。
【0042】
また、対象物21が深絞り形状でなくてもよい。つまり、対象物21は、高さ、幅、及び断面形状の少なくともいずれかが、一枚の加飾シート31で表面に沿って密着させることが困難な条件を満たす形状であって、かつ、第1及び第2加飾シート32,33によって、所定方向の両側から対象物21の表面を被覆するようにすれば対象物21の表面に加飾シート31を密着可能な形状であればよい。
より具体的には、加飾成形品100の対象物21の形状は、真空圧空製法を適用した場合に、一枚の加飾シート31では、加飾シート31の延伸率が適正範囲を超える事態や、対象物21Kの形状に追従できない事態が発生する高さ、幅、及び断面形状のいずれかを有し、かつ、第1及び第2加飾シート32,33によって、所定方向の両側から対象物21の表面をそれぞれ被覆するようにすれば各加飾シート32,33を表面に密着させることが可能な形状であればよい。
【0043】
また、対象物21は、シート合わせ部31に対応する位置に凹溝21Mを有するので、シート合わせ部31を外観視し難くなる。これにより、第1及び第2加飾シート32,33間の境界が目立たず、かつ、第1及び第2加飾シート32,33の重なりによって出来る段差も目立たなくなる。また、シート合わせ部31で重なるシート32,33の一方を切断しようとする場合に、凹溝21Mを切断方向のガイドに使用でき、切断作業を行い易くなる。
【0044】
さらに、第1及び第2加飾シート32,33は、加飾領域32A,33Aと非加飾領域32B,33Bとを有している。この構成によれば、各シート32,33を真空圧空製法で対象物21に密着させやすいサイズや形状に調整でき、また、対象物被覆装置10へセッティングし易い大きさにし易くなる。
なお、第1及び第2加飾シート32,33の一方又は両方の非加飾領域32B,33Bを省略しても、真空圧空製法で対象物21に密着させることができ、かつ、対象物被覆装置10へセッティングできる場合には、一方又は両方の非加飾領域32B,33Bを省略してもよい。
【0045】
また、対象物21に、自動二輪車に搭載される燃料タンクの周囲を覆うタンクカバーを採用するので、燃料タンクの周囲を覆うために深絞り形状となるタンクカバー21に対し、表面に沿って加飾シート31を密着させ易くなる。タンクカバー21は自動二輪車の中でも外観視され易い箇所であるため、自動二輪車の外観性向上に寄与する加飾成形品100を提供可能になる。
【0046】
なお、対象物21は、タンクカバーに限定しなくてもよく、自動二輪車に搭載された各種部品を覆うカバー部材などを採用可能である。また、対象物21に、自動二輪車以外の二輪タイプ、三輪タイプ、及び四輪タイプなども含む鞍乗り型車両に搭載される部品を覆う様々なカバー部材などを適用してもよい。
【0047】
上記実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。例えば、本発明を鞍乗り型車両用の加飾成形品100に適用する場合を例示したが、本発明を、鞍乗り型車両用以外の用途に使用する加飾成形品に適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 対象物被覆装置
21 対象物(タンクカバー、カバー部材)
21K 基本動作説明用の対象物
21A 上板部
21B 側壁部
21U 上面
21S 側面
21H 凹み部
31 加飾シート
32 第1加飾シート
32A,33A 加飾領域
32B,33B 非加飾領域
33 第2加飾シート
100 加飾成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(21)の表面に、真空圧空製法で加飾シート(31)を密着させた加飾成形品において、
前記対象物(21)は、上面(21U)を構成する上板部(21A)と、左右の側面(21S)を構成する左右の側壁部(21B)とを備え、底面が開口して上方に凹む凹み部(21H)が設けられた深絞り形状であり、
前記加飾シート(31)は、前記対象物(21)の幅方向一方側の領域を外側から被覆する第1加飾シート(32)と、
前記対象物(21)の幅方向他方側の領域を外側から被覆する第2加飾シート(33)とを備え、
前記上板部(21A)に対応する領域に、前記第1加飾シート(32)と前記第2加飾シート(33)とが重なる部分であるシート合わせ部(31X)を有し、
前記上板部(21A)は、前記シート合わせ部(31X)よりも広い幅で凹む凹溝(21M)を有することを特徴とする加飾成形品。
【請求項2】
前記第1加飾シート(32)と前記第2加飾シート(33)の少なくともいずれかは、加飾に使用される領域(32A,33A)と、加飾に使用されない領域(32B,33B)とを有することを特徴とする請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項3】
前記対象物(21)は、幅に直交する方向に凹む凹み部(21H)を有する深絞り形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾成形品。
【請求項4】
前記対象物(21)は、鞍乗り型車両に搭載される部品の周囲を覆うカバー部材であることを特徴とする請求項3に記載の加飾成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
対象物の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品において、前記対象物は、上面を構成する上板部と、左右の側面を構成する左右の側壁部とを備え、底面が開口して上方に凹む凹み部が設けられた深絞り形状であり、前記加飾シートは、前記対象物の幅方向一方側の領域を外側から被覆する第1加飾シートと、前記対象物の幅方向他方側の領域を外側から被覆する第2加飾シートとを備え、前記上板部に対応する領域に、前記第1加飾シートと前記第2加飾シートとが重なる部分であるシート合わせ部を有し、前記上板部は、前記シート合わせ部よりも広い幅で凹む凹溝を有することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
対象物の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品において、前記対象物は、上面を構成する上板部と、左右の側面を構成する左右の側壁部とを備え、底面が開口して上方に凹む凹み部が設けられた深絞り形状であり、前記加飾シートは、前記対象物の幅方向一方側の領域を外側から被覆する第1加飾シートと、前記対象物の幅方向他方側の領域を外側から被覆する第2加飾シートとを備え、前記上板部に対応する領域に、前記第1加飾シートと前記第2加飾シートとが重なる部分であるシート合わせ部を有し、前記上板部は、前記シート合わせ部よりも広い幅で凹む凹溝を有する。この構成によれば、対象物が所定方向に直交する方向に凹みを有する深絞り形状であっても、対象物の所定方向の両側から各加飾シートを被覆することによって、各加飾シートを対象物の表面に密着させ易くなる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、シート合わせ部を外観視し難くすることができる。