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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157136
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】加飾成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/16 20060101AFI20221006BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20221006BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20221006BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B29C51/16
B32B37/00
B29C51/10
B29C51/12
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061195
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 明子
(72)【発明者】
【氏名】村上 敦
【テーマコード(参考)】
4F100
4F208
【Fターム(参考)】
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DA20A
4F100DC00B
4F100DD00A
4F100EJ242
4F100GB31
4F208AC03
4F208AD18
4F208AD24
4F208AG05
4F208AH16
4F208AH17
4F208MA03
4F208MB01
4F208MB11
4F208MC10
4F208MH06
4F208MJ30
4F208MK20
(57)【要約】
【課題】対象物が深絞り形状であっても、対象物の表面に沿って加飾シートを密着させ易くすること。
【解決手段】対象物21は、当該対象物21の表面を二以上に分割可能な分割構造であり、対象物21を分割した分割体21L,21R毎に、各分割体21L,21Rの表面に対応する領域が加飾シート31L、31Rでそれぞれ被覆され、加飾シート31L、31Rで被覆された各分割体21L,21Rが一体化されるようにした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(21)の表面に、真空圧空製法で加飾シート(31)を密着させた加飾成形品において、
前記対象物(21)は、当該対象物(21)の表面を二以上に分割可能な分割構造であり、
前記対象物(21)を分割した分割体(21L,21R)毎に、各分割体(21L,21R)の前記表面に対応する領域が前記加飾シート(31)でそれぞれ被覆され、前記加飾シート(31)で被覆された各分割体(21L,21R)が一体化されていることを特徴とする加飾成形品。
【請求項2】
前記対象物(21)は、格子形状の骨格部(21G)を備え、
前記加飾シート(31)のそれぞれは、前記骨格部(21G)の表面を覆うことを特徴とする請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項3】
前記加飾シート(31)のそれぞれは、前記格子形状の凹凸に追従することを特徴とする請求項2に記載の加飾成形品。
【請求項4】
前記格子形状は、多角形の格子形状であることを特徴とする請求項2又は3に記載の加飾成形品。
【請求項5】
前記対象物(21)は、前記加飾シート(31)で覆う表面として、上面(21U)と、前記上面(21U)の長さよりも短い長さの側面(21S)とを備え、
前記対象物(21)は、前記上面(21U)を、前記側面(21S)の長さと同等の長さ、又は前記側面(21S)の長さよりも短い長さに分割可能に構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の加飾成形品。
【請求項6】
前記分割体(21L,21R)のそれぞれは、前記加飾シート(31)で覆われない領域に、前記分割体(21L,21R)同士を連結可能にする連結構造を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の加飾成形品。
【請求項7】
前記対象物(21)は、鞍乗り型車両に搭載される部品の周囲を覆うカバー部材であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の加飾成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、対象物の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品が開示されている。真空圧空製法では、対象物の表面に、熱で軟化した加飾シートを負圧を利用して密着させるので、加飾シートを対象物の表面に沿って密着させ易く、かつ、対象物の縁から裏側に回り込ませることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/129976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、対象物が、自動二輪車に搭載される燃料タンクを覆うタンクカバーなどの、ある程度の高さを有し、かつ、凹みを有するような深絞り形状などの場合、加飾シートが対象物の表面に追従できない箇所が発生し易くなる。加飾シートが対象物の表面に追従できない場合、加飾シートに皺が発生したり、加飾シートと対象物との間に気泡が発生したりする。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、対象物が深絞り形状であっても、対象物の表面に沿って加飾シートを密着させ易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
対象物の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品において、前記対象物は、当該対象物の表面を二以上に分割可能な分割構造であり、前記対象物を分割した分割体毎に、各分割体の前記表面に対応する領域が前記加飾シートでそれぞれ被覆され、前記加飾シートで被覆された各分割体が一体化されていることを特徴とする。
【0007】
上述の構成において、前記対象物は、格子形状の骨格部を備え、前記加飾シートのそれぞれは、前記骨格部の表面を覆ってもよい。また、上述の構成において、前記加飾シートのそれぞれは、前記格子形状の凹凸に追従してもよい。また、上述の構成において、前記格子形状は、多角形の格子形状であってもよい。
【0008】
また、上述の構成において、前記対象物は、前記加飾シートで覆う表面として、上面と、前記上面の長さよりも短い長さの側面とを備え、前記対象物は、前記上面を、前記側面の長さと同等の長さ、又は前記側面の長さよりも短い長さに分割可能に構成されてもよい。
【0009】
また、上述の構成において、前記分割体のそれぞれは、前記加飾シートで覆われない領域に、前記分割体同士を連結可能にする連結構造を備えてもよい。
【0010】
また、上述の構成において、前記対象物は、鞍乗り型車両に搭載される部品の周囲を覆うカバー部材であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
対象物の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品において、前記対象物は、当該対象物の表面を二以上に分割可能な分割構造であり、前記対象物を分割した分割体毎に、各分割体の前記表面に対応する領域が前記加飾シートでそれぞれ被覆され、前記加飾シートで被覆された各分割体が一体化されている。この構成によれば、対象物が深絞り形状であっても、各分割体を深絞り形状と異なる形状にしたり、サイズを小さくしたりできるので、対象物の表面に沿って加飾シートを密着させ易くなる。
【0012】
上述の構成において、前記対象物は、格子形状の骨格部を備え、前記加飾シートのそれぞれは、前記骨格部の表面を覆ってもよい。この構成によれば、軽量化しつつ、剛性を持った対象物に加飾することができる。
【0013】
また、上述の構成において、前記加飾シートのそれぞれは、前記格子形状の凹凸に追従してもよい。この構成によれば、格子形状に対応する凹凸模様を付加でき、外観性の向上に有利となる。
【0014】
また、上述の構成において、前記格子形状は、多角形の格子形状であってもよい。この構成によれば、加飾成形品を軽量化しつつ剛性を確保し易くなる。また、多角形の格子形状に対応する凹凸模様を付加することで、外観性の向上に有利となる。
【0015】
また、上述の構成において、前記対象物は、前記加飾シートで覆う表面として、上面と、前記上面の長さよりも短い長さの側面とを備え、前記対象物は、前記上面を、前記側面の長さと同等の長さ、又は前記側面の長さよりも短い長さに分割可能に構成されてもよい。この構成によれば、各分割体を、真空圧空製法で加飾シートを密着させ易いサイズや形状にし易くなる。
【0016】
また、上述の構成において、前記分割体のそれぞれは、前記加飾シートで覆われない領域に、前記分割体同士を連結可能にする連結構造を備えてもよい。この構成によれば、加飾シートで覆われた分割体同士を容易に一体化できる。
【0017】
また、上述の構成において、前記対象物は、鞍乗り型車両に搭載される部品の周囲を覆うカバー部材であってもよい。この構成によれば、部品の周囲を覆うためにカバー形状が深絞り形状となる場合であっても、カバー部材の表面に沿って加飾シートを密着させ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】対象物被覆装置の構成例を示す図である。
図2】対象物被覆装置の基本動作を示す図である。
図3図2の続きの基本動作を示す図である。
図4】タンクカバーを示す図である。
図5】分割体を被覆する被覆シートを模式的に示した図である。
図6】分割体の連結構造及び骨格部などの説明に供する図である。
図7】タンクカバーの側壁部に骨格部を設けた場合を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
まず、本発明の実施形態に係る加飾成形品100の製作に使用する対象物被覆装置10を説明する。
図1は、対象物被覆装置10の構成例を示す図である。
対象物被覆装置10は、対象物21K(基材と称する場合もある)に、真空圧空製法で加飾シート31を被覆する装置である。この対象物被覆装置10は、熱を利用して加飾シート31を対象物21Kの表面に沿った形状にするので、熱成型装置と称する場合もある。
図1に示した対象物21Kは、対象物被覆装置10の基本動作を説明するために例示した薄型のカバー部材である。対象物21Kは、高さが低い湾曲形状を有し、樹脂成型によって製作されている。
【0020】
対象物被覆装置10は、対象物21Kを支持する支持台11を備えている。対象物21Kは、治具12を介して支持台11に支持される。治具12は、加飾シート31で被覆する面を覆わずに、対象物21Kを支持可能な部材である。
図1の場合、治具12は、対象物21Kの表面のうち、加飾シート31で被覆される面の少なくとも一部である上面21Uを、加飾シート31側である上方に向けた姿勢で対象物21Kを支持する。なお、符号21Sは、対象物21Kの側面を示している。
【0021】
対象物被覆装置10は、支持台11の上方で加熱板17を上方から囲む上枠14と、支持台11を下方から囲む下枠15を備えている。加飾シート31は、上枠14と下枠15の間に狭持され、対象物21Kの上方に配置される。
また、対象物被覆装置10は、上枠14及び下枠15からなる枠体を、上下に昇降させるシリンダ16と、対象物21Kの下方から上昇可能なカッター19とを備えている。対象物被覆装置10の各部の動作は、不図示のコントローラ、又は作業者の操作などによって制御される。
【0022】
加飾シート31は、熱可塑性を有するシートに、印刷、又は塗装などによって加飾されたシートである。加飾シート31は、装飾用シートと称される場合もある。加飾シート31は、加飾、及び保護膜の機能を有している。但し、強度が相対的に高いシート材を使用したり、シート厚を増大させたりすることによって、加飾シート31に、対象物21Kを補強する補強機能などの他の機能を付加するようにしてもよい。この加飾シート31には、真空圧空製法に使用可能なシートを広く適用可能である。
【0023】
図2及び図3は、対象物被覆装置10の基本動作を示す図である。本説明では、対象物被覆装置10が、不図示のコントローラの制御の下、基本動作を自動実行するものとする。なお、コントローラは一つに限定しなくてもよく、複数のコントローラが、対象物被覆装置10の各部をそれぞれ制御するようにしてもよい。また、コントローラが自動実行する場合に限定されず、作業者の操作に基づいて、対象物被覆装置10が各動作を実行するようにしてもよい。
【0024】
まず、対象物被覆装置10は、図2に符号Aで示すように、加飾シート31の上方に位置する加熱板17を発熱させることによって、加飾シート31を軟化させる。また、対象物被覆装置10は、加飾シート71の上下の空間R1,R2を減圧する。加飾シート31の上下の空間R1,R2で真空は確立される。
次に、対象物被覆装置10は、シリンダ16を作動させることによって、図2に符号Bで示すように、加飾シート31を、対象物21Kの上面21Uに被せる。この状態で、対象物被覆装置10は、加飾シート31上側の空間R2を大気に開放する。その結果、図3の符号Aで示すように、加飾シート31は上面21Uの表面に倣って密着する。
【0025】
次いで、対象物被覆装置10は、加飾シート31上方の空間R2に圧縮空気を送り込むことによって加飾シート31上側の空間R2を増圧し、図3に符号Bで示すように、加飾シート31を、対象物21Kの上面21U及び側面21Sにより密着させると共に、加飾シート31を、対象物21Kの縁から対象物21Kの裏側へと回り込ませる。
続いて、対象物被覆装置10は、対象物21Kの下方からカッター19を上昇させることによって、図3の符号Cで示すように、対象物21Kの裏側に進入した加飾シート31の不要部分を切断する。
【0026】
対象物被覆装置10は、加熱板17の発熱を停止することにより、加飾シート31の温度を低下させ、加飾シート31を対象物21Kの表面に沿わせた状態で硬化させる。これにより、対象物21Kが加飾シート31で被覆された状態に保持され、対象物21Kの表面に加飾シート31が密着した加飾成形品100が製作される。
図3の符号Cで示すように、上枠14が加飾成形品100から離れた位置に待避することによって、加飾成形品100を容易に取り出し可能になる。なお、上枠14内の空間にアクセス可能に開閉体を設け、この開閉体を開けることによって、加飾成形品100を取り出し可能にしてもよい。
【0027】
なお、加飾シート31には、対象物21K側の面に予め接着剤が塗布され、又は接着層が設けられている。これにより、加飾シート31が対象物21Kの表面に密着した状態で加飾シート31が対象物21Kに接着される。なお、接着材や接着層を設けなくとも、加飾シート31の熱成形によって加飾シート31と対象物21Kとが一体化される場合には、接着材や接着層を省略してもよい。
【0028】
ところで、対象物21Kの形状やサイズによっては、一枚の加飾シート31で被覆しようとすると、加飾シート31の一部の延伸率が適正範囲を超える事態や、対象物21Kの形状に追従できない事態が発生する。このような事態は、加飾シート31に皺が発生したり、加飾シート31と対象物21Kとの間に気泡が発生したりする原因となる。
【0029】
図4には、自動二輪車に搭載される燃料タンクを上方から覆うタンクカバー21を示している。このタンクカバー21は、上面21Uを構成する上板部21Aと、左右の側面21Sを構成する左右の側壁部21Bとを備え、底面が開口して上方に凹む凹み部21Hが設けられている。この凹み部21H内に燃料タンクが位置することによって、燃料タンクの上方及び左右がタンクカバー21によって覆われる。
図4中、符号UPはタンクカバー21の上方を示し、符号LHはタンクカバー21の左方を示している。タンクカバー21の各方向は自動二輪車を基準とした各方向と一致している。
【0030】
図4に示すように、タンクカバー21は、所定以上の高さ(図4中、長さH0)と幅(図4中、長さW0)を有し、かつ、凹み部21Hを有する断面形状を有するので、深絞り形状、或いは、U字断面形状ということができる。このような深絞り形状の部材を対象物21Kとした場合、対象物被覆装置10を用いて、上面21U及び左右の側面21Sを一枚の加飾シート31で被覆しようとすると、加飾シート31の一部の延伸率が適正範囲を超える事態や、対象物21Kの形状に追従できない事態が発生するおそれがある。これらの事態が発生すると、加飾シート31に皺が発生したり、加飾シート31と対象物21Kとの間に気泡が発生したりする。
【0031】
そこで、本実施形態では、タンクカバー21を、その表面を二以上に分割可能な分割構造にし、タンクカバー21を分割した分割体21L,21R(図4、後述する図5)毎に、異なる加飾シート31(後述する図5に示す加飾シート31L,31R)で被覆し、分割体21L,21Rを一体化する。
【0032】
図4に示すように、タンクカバー21は、幅方向の中央(左右中心とも言う)に位置する境界LCを境にして左右に分割可能に構成される。このようにタンクカバー21を分割することで、分割体21L,21Rそれぞれの上面の長さ(図4中の長さW1)が、元々のタンクカバー21の上面21Uの長さ(図4中の幅の長さW0)の半分となる。これにより、各分割体21L,21Rが深絞り形状と異なる形状となり、本構成では、図1に示す対象物21Kが有する薄型のカバー形状に類似した形状となる。
【0033】
各分割体21L,21Rが薄型のカバー形状に類似した形状になるので、図5に示すように、分割体21L,21R毎に、分割体21L,21Rの表面に沿って加飾シート31L,31Rで密着させ易くなる。図6中の符号CT1,CT2は、加飾シート31L,31Rのカット位置を示している。加飾シート31L,31Rのカットは、対象物被覆装置10が備えるカッター19を位置変更してカッター19によって自動切断するようにしてもよいし、作業員が任意の切断工具を使用して手動で切断するようにしてもよい。
【0034】
なお、図5には、対象物被覆装置10において、各分割体21L,21Rを、側面21Sを上方にした姿勢で配置し、上記基本動作によって、各分割体21L,21Rの側面21S及び上面21Uに加飾シート31L,31Rを密着させた場合を例示している。なお、分割体21Lを加飾シート31Lで覆う工程と、分割体21Rを加飾シート31Rで行う工程とは別々に実施される。
【0035】
図4に示すように、タンクカバー21の上面の長さW0は、タンクカバー21の側面の長さH0よりも長く形成されている。このため、加飾シート31で覆う領域となるタンクカバー21の上面21U及び側面21Sのうち、タンクカバー21の上面21Uの方が広い領域となる。
本構成では、相対的に広い領域となる上面21Uを分割する分割構造にしているので、分割体21L,21Rのサイズを効果的に小さくしたり、分割体21L,21Rを薄型のカバー形状に類似した形状にしたりし易くなる。これらにより、対象物被覆装置10に図5に示すように配置したときの分割体21L,21Rの高さを低く抑え易くなり、分割体21L,21Rに加飾シート31L,31Rを密着させ易くなる。したがって、加飾シート31L,31Rに皺が発生したり、加飾シート31L,31Rと対象物21Kとの間に気泡が発生したりする事態を回避し易くなる。
【0036】
なお、分割体21L,21Rに加飾シート31L,31Rを密着させ易い範囲で、タンクカバー21の分割箇所、及び分割数は適宜に変更してもよい。また、対象物被覆装置10において、支持台11に治具12を介して支持する各分割体21L,21Rの姿勢についても適宜に変更してもよい。
【0037】
分割体21L,21Rについて更に説明する。
図6に示すように、分割体21Lの上板部21Aには、分割体21Rに向けて延出する爪部21Xが設けられる。この爪部21Xは分割体21Rに設けられた被係合部に係合する。また、分割体21Rの上板部21Aには、分割体21Lに向けて延出する爪部21Xが設けられる。この爪部21Xは分割体21Lに設けられた被係合部に係合する。これらの係合によって、分割体21R,21L同士が連結される。なお、分割体21L及び分割体21Rの爪部21X同士が違いに係合する構成でもよい。
【0038】
すなわち、これら爪部21Xを含む係合構造は、分割体21L,21R同士を連結する連結構造21LK(図4)として機能する。爪部21Xの形状、位置、及び数は適宜に変更してもよい。また、連結構造21LKは、爪部21Xを有する構造に限定されず、分割体21L,21R同士を連結可能な公知の連結構造を広く適用可能である。なお、各加飾シート31L,31Rは、爪部21Xを含む連結構造21LKの領域を避けて各分割体21L,21Rを覆う。したがって、各加飾シート31L,31Rは、分割体21L,21R同士の連結を妨げない。
【0039】
図6に示すように、分割体21L,21Rの上板部21Aの少なくとも一部は、格子形状の骨格部21Gに形成されている。骨格部21Gは、上板部21Aを貫通する複数の穴部を、間隔を空けて設けること等によって、格子形状に形成された部分である。格子形状にすることによって、タンクカバー21の剛性低下を抑えつつタンクカバー21を軽量化し易くなる。なお、図6中、符号D0は、タンクカバー21の前後方向の長さである。この長さD0は、分割体21L,21Rの前後方向の長さと一致する。
【0040】
骨格部21Gは、加飾シート31L,31Rによって覆われるので、骨格部21Bの穴部への雨水などの浸入を防止できる。
また、加飾シート31L,31Rを、骨格部21Gの格子形状の凹凸に追従させることによって、格子形状に対応する凹凸模様を外観視させることが可能になる。例えば、加飾シート31L,31Rを薄いシートにしたり、柔軟性や伸縮性が相対的に高いシートを採用したりすることによって、凹凸模様を付加することができる。また、格子形状の位置や範囲を適宜に変更することによって、凹凸模様の位置や範囲を適宜に変更することが可能である。
【0041】
一方、加飾シート31L,31Rを厚いシートにしたり、柔軟性や伸縮性が相対的に低いシートにしたりすることによって、凹凸模様を付加しないようにしてもよい。また、骨格部21Gの領域を、分割体21L,21Rの側壁部21Bに設けるようにしてもよい。
【0042】
図7は、タンクカバー21の側壁部21Bに骨格部21Gを設けた場合を例示する図である。
図7の符号Aは、骨格部21Gをハニカムの格子形状にした場合を示している。また、図7の符号Bは、骨格部21Gを四角の格子形状にした場合を示している。また、図7の符号Cは、骨格部21Gをトラスの格子形状にした場合を示している。加飾シート31Lを格子形状に追従するように密着させることで、タンクカバー21の側面に格子形状の凹凸模様を付加することが可能になる。
【0043】
タンクカバー21の側面は、自動二輪車の中でも外観視され易い箇所であるため、上記凹凸模様を付加することによって、自動二輪車の外観性を向上させ易くなる。なお、格子形状の種類は、図7に例示した形状に限定されず、様々な多角形の格子形状を適用可能である。また、格子形状の穴部についても、貫通孔に形成する場合に限定されず、有底穴に形成してもよい。
【0044】
以上説明したように、本実施形態では、対象物の表面に真空圧空製法で加飾シート31を密着させた加飾成形品100において、対象物となるタンクカバー21を、表面を二以上に分割可能な分割構造に構成している。そして、タンクカバー21を分割した分割体21L,21R毎に、各分割体21L,21Rの表面に対応する領域を加飾シート31L,31Rでそれぞれ被覆し、各分割体21L,21Rを一体化している。これにより、タンクカバー21が幅に直交する方向に凹み21Hを有するような深絞り形状であっても、各分割体21L,21Rを深絞り形状と異なる形状にしたり、サイズを小さくしたりできる。したがって、タンクカバー21の表面に沿って加飾シート31L,31Rを密着させ易くなる。
【0045】
また、タンクカバー21は、格子形状の骨格部21Gを備え、加飾シート31L,31Rのそれぞれは骨格部21Gの表面を覆っている。この構成によれば、軽量化しつつ、剛性を持ったタンクカバー21に加飾することができる。また、加飾シート31L,31Rを格子形状の凹凸に追従させることにより、格子形状に対応する凹凸模様を付加でき、外観性の向上に有利となる。
【0046】
また、骨格部21Gの格子形状に、多角形の格子形状を採用するので、タンクカバー21を軽量化しつつ剛性をより確保し易くなる。また、多角形状の格子形状に対応する凹凸模様を付加することで、外観性の向上に有利となる。
【0047】
また、タンクカバー21は、加飾シート31L,31Rで覆う表面として、上面21Uと、上面21Uの長さW0よりも短い長さH0の側面21Sとを備えている。このタンクカバー21は、上面21Uを、側面21Sの長さと同等の長さ、又は側面21Sの長さH0よりも短い長さに分割可能に構成される。この構成によれば、相対的に広い領域となる上面21Uを分割できるので、各分割体21L,21Rを、真空圧空製法で加飾シート31L,31Rを密着させ易いサイズや形状にし易くなる。
【0048】
また、分割体21L,21Rのそれぞれは、加飾シート31L,31Rで覆われない領域に、分割体21L,21R同士を連結可能にする連結構造21LKを備えている。この構成によれば、加飾シート31L,31Rで覆われた分割体21L,21R同士を容易に一体化できる。
【0049】
また、加飾シート31で覆われる対象物にタンクカバー21を採用するので、燃料タンクの周囲を覆うために深絞り形状となるタンクカバー21に対し、表面に沿って加飾シート31を密着させ易くなる。タンクカバー21は自動二輪車の中でも外観視され易い箇所であるため、自動二輪車の外観性向上に寄与する加飾成形品100を提供可能になる。
【0050】
なお、対象物は、タンクカバー21に限定しなくてもよく、自動二輪車に搭載された各種部品を覆うカバー部材などを採用可能である。また、対象物に、自動二輪車以外の二輪タイプ、三輪タイプ、及び四輪タイプなども含む鞍乗り型車両に搭載される部品を覆う様々なカバー部材などを適用してもよい。
【0051】
また、対象物が深絞り形状でなくてもよい。つまり、対象物は、高さ、幅、及び断面形状の少なくともいずれかが、一枚の加飾シート31で表面に沿って密着させることが困難な条件を満たす形状であって、かつ、対象物の表面を二以上に分割した分割構造を採用することによって、各分割体の表面に沿って加飾シート31をそれぞれ密着可能な形状であればよい。
【0052】
上記実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。例えば、本発明を鞍乗り型車両用の加飾成形品100に適用する場合を例示したが、本発明を、鞍乗り型車両用以外の用途に使用する加飾成形品に適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 対象物被覆装置
21 タンクカバー(対象物、カバー部材)
21K 基本動作説明用の対象物
21A 上板部
21B 側壁部
21U 上面
21S 側面
21H 凹み部
21L,21R 分割体
21G 骨格部
21X 爪部
21LK 連結構造
31、31L,31R 加飾シート
100 加飾成形品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(21)の表面に、真空圧空製法で加飾シート(31)を密着させた加飾成形品において、
前記対象物(21)は、当該対象物(21)の表面を二以上に分割可能な分割構造であり、
前記対象物(21)を分割した分割体(21L,21R)毎に、各分割体(21L,21R)の前記表面に対応する領域が前記加飾シート(31)でそれぞれ被覆され、前記加飾シート(31)で被覆された各分割体(21L,21R)が一体化され
前記対象物(21)は、格子形状の骨格部(21G)を備え、
前記加飾シート(31)のそれぞれは、前記骨格部(21G)の表面を覆うと共に前記格子形状の凹凸に追従することを特徴とする加飾成形品。
【請求項2】
前記格子形状は、多角形の格子形状であることを特徴とする請求項1に記載の加飾成形品。
【請求項3】
前記対象物(21)は、前記加飾シート(31)で覆う表面として、上面(21U)と、前記上面(21U)の長さよりも短い長さの側面(21S)とを備え、
前記対象物(21)は、前記上面(21U)を、前記側面(21S)の長さと同等の長さ、又は前記側面(21S)の長さよりも短い長さに分割可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の加飾成形品。
【請求項4】
前記分割体(21L,21R)のそれぞれは、前記加飾シート(31)で覆われない領域に、前記分割体(21L,21R)同士を連結可能にする連結構造を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の加飾成形品。
【請求項5】
前記対象物(21)は、鞍乗り型車両に搭載される部品の周囲を覆うカバー部材であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の加飾成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
対象物の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品において、前記対象物は、当該対象物の表面を二以上に分割可能な分割構造であり、前記対象物を分割した分割体毎に、各分割体の前記表面に対応する領域が前記加飾シートでそれぞれ被覆され、前記加飾シートで被覆された各分割体が一体化され、前記対象物は、格子形状の骨格部を備え、前記加飾シートのそれぞれは、前記骨格部の表面を覆うと共に前記格子形状の凹凸に追従することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
た、上述の構成において、前記格子形状は、多角形の格子形状であってもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
対象物の表面に、真空圧空製法で加飾シートを密着させた加飾成形品において、前記対象物は、当該対象物の表面を二以上に分割可能な分割構造であり、前記対象物を分割した分割体毎に、各分割体の前記表面に対応する領域が前記加飾シートでそれぞれ被覆され、前記加飾シートで被覆された各分割体が一体化され、前記対象物は、格子形状の骨格部を備え、前記加飾シートのそれぞれは、前記骨格部の表面を覆うと共に前記格子形状の凹凸に追従する。この構成によれば、対象物が深絞り形状であっても、各分割体を深絞り形状と異なる形状にしたり、サイズを小さくしたりできるので、対象物の表面に沿って加飾シートを密着させ易くなる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、軽量化しつつ、剛性を持った対象物に加飾することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
た、格子形状に対応する凹凸模様を付加でき、外観性の向上に有利となる。