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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157147
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車載心拍測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/08 20060101AFI20221006BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221006BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20221006BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20221006BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20221006BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20221006BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20221006BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G01S13/08
G08G1/16 C
B60R21/00 340
B60R21/00 991
G01S13/88
G01S13/931
G01S13/86
A61B5/11 110
A61B5/0245 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061216
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】片山 誠
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
5H181
5J070
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA09
4C017AC40
4C017BB12
4C017BC02
4C017BC11
4C038VA04
4C038VA20
4C038VB32
4C038VC20
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5J070AB01
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC02
5J070AD05
5J070AD13
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK21
5J070BD06
5J070BD08
(57)【要約】
【課題】車両から物体までの距離を測定する車載測定装置を用いて、人である測定対象の心拍を精度良く測定できる車載心拍測定システムを提供すること。
【解決手段】心拍測定システムSのレーダユニット73aは、距離を測定する距離測定モード、又は心拍を測定する心拍測定モードの下で測定対象を測定可能であり、心拍測定モードの心拍測定可能範囲は、距離測定モードの距離測定可能範囲より狭くかつ車両側である。心拍測定システムSの車載センサECU22は、距離測定モードの下でのレーダユニット73aの測定結果に基づいて測定対象は心拍測定可能範囲内に存在することを判定する測定範囲判定部2204と、測定対象は心拍測定可能範囲内に存在すると判定された後、レーダユニット73aの測定モードを距離測定モードから心拍測定モードに切り替える測定モード切替部2205と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されかつ電磁波を送受信することにより前記車両の外の人である測定対象を測定する測定装置と、
前記測定装置を制御する制御装置と、を備える車載心拍測定システムであって、
前記測定装置は、前記車両から前記測定対象までの距離を測定する距離測定モード、又は前記測定対象の心拍を測定する心拍測定モードの下で前記測定対象を測定可能であり、
前記心拍測定モードの心拍測定可能範囲は、前記距離測定モードの距離測定可能範囲より狭くかつ前記車両側であり、
前記制御装置は、前記距離測定モードの下での前記測定装置の測定結果に基づいて前記測定対象は前記心拍測定可能範囲内に存在することを判定する第1判定手段と、前記測定対象は前記心拍測定可能範囲内に存在すると判定された後、前記測定装置の測定モードを前記距離測定モードから前記心拍測定モードに切り替える切替手段と、を備えることを特徴とする車載心拍測定システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記車両が停止していることを判定する第2判定手段をさらに備え、
前記切替手段は、前記測定対象は前記心拍測定可能範囲内に存在すると判定されかつ前記車両が停止していると判定された後、前記測定モードを前記距離測定モードから前記心拍測定モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車載心拍測定システム。
【請求項3】
前記車両の周囲を撮影するカメラをさらに備え、
前記制御装置は、
前記カメラによって撮影された画像に基づいて、事故が発生しかつ当該事故の当事者が倒れて停止した状態であることを判定する事故判定手段と、
事故が発生しかつ前記当事者が倒れて停止した状態であると判定された場合、前記車両の乗員に対し事故が発生したことを通知する事故発生通知手段と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車載心拍測定システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記車両の乗員に対し前記測定対象を救助可能であるか否かを確認する確認手段と、
前記乗員は前記測定対象を救助できることを確認できなかった場合、前記車両の周囲へ前記測定対象の救助を要請する救助要請手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の車載心拍測定システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記測定結果に基づいて前記測定対象の心拍が停止又は微弱であると判定した場合、前記測定対象に対する処置方法及び前記車両の周囲における自動体外式除細動器の設置位置の少なくとも何れかを前記車両の乗員に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の車載心拍測定システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記測定結果に基づいて前記測定対象の心拍が停止又は微弱であると判定した場合、前記車両に搭載された車載通信装置を用いて前記測定結果及び前記車両の現在位置情報を救急窓口へ送信する測定結果送信手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の車載心拍測定システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記測定対象は前記心拍測定可能範囲内に存在しないと判定された場合、前記心拍測定可能範囲内に前記測定対象が含まれるように前記車両を移動させる移動手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の車載心拍測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載心拍測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車に取り付けられたカメラやレーダ等のセンサによって、自車周囲の他車両と自車の間の距離、他車両の速度、及び他車両の位置等を監視し、この監視結果に基づいて自車の運転を支援する運転支援システムの普及が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また非特許文献1には、車載レーダとして用いられることが多いミリ波レーダを用いて人の心拍を測定する技術が示されている。非特許文献1に示された技術では、PN符号位相変調方式に基づいて変調した電磁波を用いることにより、人の心拍による微細な変位を測定可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-130959号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】酒井啓之、福田健志、井上謙一、奥村成皓、阪本卓也、佐藤亨「ミリ波レーダを用いた非接触心拍センシング技術」、Panasonic Technical Journal Vol.63 No.1 May 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような技術を組み合わせれば、車載ミリ波レーダを用いて人の心拍を測定することが可能となる。しかしながら従来では、このような車載ミリ波レーダを具体的にどのような手順で用いればよいかについては十分に検討されていない。
【0007】
本発明は、車両から物体までの距離を測定する車載測定装置を用いて、人である測定対象の心拍を精度良く測定できる車載心拍測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る車載心拍測定システム(例えば、後述の心拍測定システムS)は、車両(例えば、後述の車両1)に搭載されかつ電磁波を送受信することにより前記車両の外の人である測定対象を測定する測定装置(例えば、後述のレーダユニット73a~73e)と、前記測定装置を制御する制御装置(例えば、後述の車載センサECU22)と、を備え、前記測定装置は、前記車両から前記測定対象までの距離を測定する距離測定モード、又は前記測定対象の心拍を測定する心拍測定モードの下で前記測定対象を測定可能であり、前記心拍測定モードの心拍測定可能範囲は、前記距離測定モードの距離測定可能範囲より狭くかつ前記車両側であり、前記制御装置は、前記距離測定モードの下での前記測定装置の測定結果に基づいて前記測定対象は前記心拍測定可能範囲内に存在することを判定する第1判定手段(例えば、後述の測定範囲判定部2204)と、前記測定対象は前記心拍測定可能範囲内に存在すると判定された後、前記測定装置の測定モードを前記距離測定モードから前記心拍測定モードに切り替える切替手段(例えば、後述の測定モード切替部2205)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
(2)この場合、前記制御装置は、前記車両が停止していることを判定する第2判定手段(例えば、後述の停止判定部2202)をさらに備え、前記切替手段は、前記測定対象は前記心拍測定可能範囲内に存在すると判定されかつ前記車両が停止していると判定された後、前記測定モードを前記距離測定モードから前記心拍測定モードに切り替えることが好ましい。
【0010】
(3)この場合、前記車載心拍測定システムは、前記車両の周囲を撮影するカメラ(例えば、後述のカメラユニット71a,71b)をさらに備え、前記制御装置は、前記カメラによって撮影された画像に基づいて、事故が発生しかつ当該事故の当事者が倒れて停止した状態であることを判定する事故判定手段(例えば、後述の事故判定部2200)と、事故が発生しかつ前記当事者が倒れて停止した状態であると判定された場合、前記車両の乗員に対し事故が発生したことを通知する事故発生通知手段(例えば、後述の事故発生通知部2201)と、を備えることが好ましい。
【0011】
(4)この場合、前記制御装置は、前記車両の乗員に対し前記測定対象を救助可能であるか否かを確認する確認手段(例えば、後述の救助可否確認部2207)と、前記乗員は前記測定対象を救助できることを確認できなかった場合、前記車両の周囲へ前記測定対象の救助を要請する救助要請手段(例えば、後述の車外救助要請部2209)と、をさらに備えることが好ましい。
【0012】
(5)この場合、前記制御装置は、前記測定結果に基づいて前記測定対象の心拍が停止又は微弱であると判定した場合、前記測定対象に対する処置方法及び前記車両の周囲における自動体外式除細動器の設置位置の少なくとも何れかを前記車両の乗員に通知する通知手段(例えば、後述の救助情報通知部2208)をさらに備えることが好ましい。
【0013】
(6)この場合、前記制御装置は、前記測定結果に基づいて前記測定対象の心拍が停止又は微弱であると判定した場合、前記車両に搭載された車載通信装置を用いて前記測定結果及び前記車両の現在位置情報を救急窓口へ送信する測定結果送信手段(例えば、後述の測定結果送信部2210)をさらに備えることが好ましい。
【0014】
(7)この場合、前記制御装置は、前記測定対象は前記心拍測定可能範囲内に存在しないと判定された場合、前記心拍測定可能範囲内に前記測定対象が含まれるように前記車両を移動させる移動手段(例えば、後述の自動移動部2211)をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明に係る車載心拍測定システムは、車両から測定対象までの距離を測定する距離測定モード又は人である測定対象の心拍を測定する心拍測定モードの下で測定対象を測定可能な測定装置と、この測定装置の測定モードを切り替える制御装置と、を備える。本発明によれば、例えば車両の走行中は、測定装置の測定モードを距離測定モードとすることにより、測定装置による測定結果を車両の運転支援機能に利用することができる。また、例えば車両の周囲で事故が発生し負傷者が存在する場合には、測定装置の測定モードを心拍測定モードに切り替えることにより、負傷者の心拍を速やかに測定できるので、この心拍の測定結果を利用して負傷者を救助することができる。ここで心拍測定モードの心拍測定可能範囲は、距離測定モードの距離測定可能範囲より狭くかつ車両側であるため、心拍測定モードの下で測定対象の心拍を精度良く測定するためには、測定対象が心拍測定可能範囲内に存在する必要がある。これに対し本発明に係る制御装置は、距離測定モードの下での測定装置の測定結果に基づいて測定対象は心拍測定可能範囲内に存在することを判定する第1判定手段と、測定対象は心拍測定可能範囲内に存在すると判定された後、測定装置の測定モードを距離測定モードから心拍測定モードに切り替える切替手段と、を備える。よって本発明によれば、適切な位置で測定装置の測定モードを切り替えることができるので、測定対象の心拍を精度良く測定することができる。
【0016】
(2)本発明に係る車載心拍測定システムにおいて、制御装置は、測定対象が心拍測定可能範囲内に存在すると判定されかつ自車が停止していると判定された後、測定モードを距離測定モードから心拍測定モードに切り替える。これにより、測定装置を停止させた状態で心拍測定可能範囲内の測定対象の心拍を測定できるので、測定対象の心拍をさらに精度良く測定することができる。
【0017】
(3)本発明に係る車載心拍測定システムにおいて、制御装置は、カメラによって撮影された画像に基づいて、事故が発生しかつこの事故の当事者が倒れて停止した状態であることを判定する事故判定手段と、事故が発生しかつ当事者が倒れて停止した状態であると判定された場合、車両の乗員に対し事故が発生したことを通知する事故発生通知手段と、をさらに備える。よって本発明によれば、事故が発生した場合には、倒れて停止した状態の当事者の心拍の測定を速やかに開始できるよう、運転者を含む乗員に対し車両の速やかな停止を促すことができる。
【0018】
(4)本発明に係る車載心拍測定システムにおいて、制御装置は、車両の乗員に対し測定対象を救助可能であるか否かを確認する確認手段と、乗員は測定対象を救助できることを確認できなかった場合、車両の周囲へ測定対象の救助を要請する救助要請手段と、を備える。本発明によれば、何らかの理由により乗員が救助できなかった場合であっても、自車の周囲へ測定対象を救助するよう要請することができる。
【0019】
(5)本発明に係る車載心拍測定システムにおいて、通知手段は、測定対象の心拍が停止又は微弱であると判定した場合、測定対象に対する処置方法及び自車周囲における自動体外式除細動器(所謂、AED)の設置位置の少なくとも何れかを車両の乗員に通知する。これにより乗員は、測定対象に対し適切な処置を速やかに施すことができる。
【0020】
(6)本発明に係る車載心拍測定システムにおいて、測定結果送信手段は、測定対象の心拍が停止又は微弱であると判定した場合、車載通信装置を用いて心拍に関する測定結果及び車両の現在位置情報を救急窓口へ送信する。これにより救急窓口では、測定対象を搬送するための救急車及びその搬送先を速やかに手配することができる。また救急窓口では、測定対象の適切な処置方法を速やかに検討することができる。
【0021】
(7)本発明に係る車載心拍測定システムにおいて、移動手段は、測定対象は心拍測定可能範囲内に存在しないと判定された場合、心拍測定可能範囲内に測定対象が含まれるように、自車を移動させる。これにより、自車から離れた位置で事故が発生した場合であっても、この事故による負傷者の心拍を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る心拍測定システム及びこの心拍測定システムを搭載する車両の構成を模式的に示す図である。
図2】心拍測定システムの構成を模式的に示す図である。
図3】心拍測定システムによって測定対象の心拍を測定する手順を示すフローチャートである。
図4】第1測定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。心拍測定システムの構成を模式的に示す図である。
図5】第2測定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
図6】救助支援処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る心拍測定システム及びこの心拍測定システムを搭載する車両の構成について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る心拍測定システムS及びこの心拍測定システムSを搭載する四輪車両1(以下、単に「車両1」という)の構成を模式的に示す図である。図1の上段には車両1の平面図を示し、図1の下段には側面図を示す。
【0025】
車両1は、左右の前輪Wfを操舵する電動パワーステアリング装置31と、駆動輪である前輪Wfを回転させる駆動力を発生するパワープラント32と、前輪Wf及び後輪Wrを停止させる制動力を発生する制動装置33と、車外の通信装置と無線による通信を行う車載通信装置41,42と、運転者が操舵操作を行うステアリングホイール61と、運転者が加減速操作を行うアクセルペダル62と、運転者が減速操作を行うブレーキペダル63と、車体に設けられたセンサユニット7と、センサユニット7の検出信号や運転者による運転操作等に基づいて電動パワーステアリング装置31やパワープラント32等の各種車載装置を制御する制御ユニット2と、を備える。
【0026】
電動パワーステアリング装置31は、ステアリングホイール61から延びるピニオン軸31aと左右の前輪Wfとを連結するギヤボックス31bと、ギヤボックス31bに設けられた電動モータ31cと、ステアリングホイール61の操舵角や操舵速度を検出するステアリングセンサ31dと、を備える。
【0027】
ギヤボックス31bは、車幅方向に沿って延びかつピニオン軸31aと噛合するラック軸や、ラック軸の両端部と左右の前輪Wfとを連結するタイロッド等を備え、運転者の操舵操作によるステアリングホイール61の回転運動を車幅方向に沿った運動に変換することにより、左右の前輪Wfを進行方向へ向けて転舵させる。電動モータ31cは、制御ユニット2の後述のステアリングECU21から出力される制御信号に応じて回転し、運転者による操舵操作をアシストしたり、前輪Wfを自動操舵したりするための駆動力を発生する。ステアリングセンサ31dは、ステアリングホイール61の操舵角や操舵速度を検出し、検出値に応じた信号を制御ユニット2のステアリングECU21へ送信する。
【0028】
パワープラント32は、車両1を進行方向に沿って前進又は後進させるために駆動輪としての前輪Wfを回転させる駆動力を発生する駆動力発生源である。以下では、パワープラント32として、図示しない燃料タンクに貯留された燃料を消費することにより、制御ユニット2から出力される制御信号に応じた駆動力を発生するエンジンや、このエンジンの出力を変速して前輪Wfに伝達する変速機を用いた場合について説明するが、本発明はこれに限らない。パワープラント32としては、エンジンや変速機の他、図示しない高圧バッテリや燃料電池スタックから供給される電力を消費して前輪Wfを回転させる駆動力を発生する駆動モータを用いてもよい。
【0029】
制動装置33は、運転者によるブレーキペダル63の減速操作や制御ユニット2から出力される制御信号等に基づいて、主に走行時に各車輪Wf,Wrの車軸に設けられたディスクを締め付けることによって各車輪Wf,Wrの回転を減速又は停止させるための制動力を発生させるディスクブレーキ装置や、主に駐車時に各車輪Wr,Wfの回転を停止させた状態で維持するための制動力を発生させるパーキングブレーキ等を備える。
【0030】
センサユニット7は、カメラユニット71a,71bと、複数(例えば、5つ)のライダユニット72a,72b,72c,72d,72eと、複数(例えば、5つ)のレーダユニット73a,73b,73c,73d,73eと、ジャイロセンサ74と、GPSセンサ75と、を備える。
【0031】
フロントカメラユニット71aは、車両1の周囲前方側を撮影するカメラである。フロントカメラユニット71aは、例えば車両1のルーフの車室内側のうちフロントウィンドウ寄りの位置に取り付けられている。リアカメラユニット71bは、車両1の周囲後方側を撮影するカメラである。リアカメラユニット71bは、例えば車両1のルーフの車室内側のうちリアウィンドウ寄りの位置に取り付けられている。これらカメラユニット71a,71bによって撮影された画像は、制御ユニット2の後述の車載センサECU22へ送信される。
【0032】
ライダユニット72a~72eは、それぞれパルス状に発光するレーザー照射に対する対象からの散乱光を測定することにより、車両1の周囲の対象を検出するライダ(Light Detection and Ranging(LIDAR))である。第1ライダユニット72aは、車両1の前部のうち進行方向に沿って視て右隅側に設けられ、車両1の周囲の前方やや右側の対象を検出する。第2ライダユニット72bは、車両1の前部のうち進行方向に沿って視て左隅側に設けられ、車両1の周囲の前方やや左側の対象を検出する。第3ライダユニット72cは、車両1の後部のうち車幅方向中央に設けられ、車両1の周囲の後方の対象を検出する。第4ライダユニット72dは、車両1の右側部のうち後部側に設けられ、車両1の周囲の右側方やや後方側の対象を検出する。第5ライダユニット72eは、車両1の左側部のうち後部側に設けられ、車両1の周囲の左側方やや後方側の対象を検出する。これらライダユニット72a~72eの検出信号は、制御ユニット2の車載センサECU22へ送信される。
【0033】
レーダユニット73a~73eは、それぞれ電磁波であるミリ波照射に対する対象物からの反射波を測定することにより、車両1の周囲の対象を検出するミリ波レーダである。第1レーダユニット73aは、車両1の前部のうち進行方向に沿って視て右隅側に設けられ、車両1の周囲の前方やや右側の対象を検出する。第2レーダユニット73bは、車両1の前部のうち進行方向に沿って視て左隅側に設けられ、車両1の周囲の前方やや左側の対象を検出する。第3レーダユニット73cは、車両1の前部のうち車幅方向中央に設けられ、車両1の周囲の前方の対象を検出する。第4レーダユニット73dは、車両1の後部のうち進行方向に沿って視て右隅側に設けられ、車両1の周囲の後方やや右側の対象を検出する。第5レーダユニット73eは、車両1の後部のうち進行方向に沿って視て左隅側に設けられ、車両1の周囲の後方やや左側の対象を検出する。これらレーダユニット73a~73eの検出信号は、制御ユニット2の車載センサECU22へ送信される。
【0034】
ジャイロセンサ74は、車両1の回転運動に応じた信号を制御ユニット2の後述のナビゲーションECU24へ送信する。GPSセンサ75は、車両1の現在位置に応じた信号を制御ユニット2のナビゲーションECU24へ送信する。
【0035】
第1車載通信装置41は、図示しないネットワークを介して、地図情報や交通情報等を提供するサーバや、緊急通報センタの救急窓口等と無線通信を行う。第2車載通信装置42は、車両1の周囲を走行する他車両に搭載された車載通信装置と無線による車車間通信を行い、車両1と他車両との間で情報交換を行う。
【0036】
制御ユニット2は、車内ネットワークにより通信可能に接続された複数のECU20~29を含む。各ECU20~29は、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインターフェース等を含むコンピュータである。各ECU20~29の記憶デバイスにはプロセッサが実行するコンピュータプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECU20~29は、プロセッサ、記憶デバイス及びインターフェース等を複数備えていてもよい。以下、各ECU20~29が担う機能について説明する。なおECUの数や、各ECU20~29の機能については、適宜設計可能であり、本実施形態よりも細分化したり、あるいは統合したりすることが可能である。
【0037】
自動運転ECU20は、主に車両1の自動運転に関わる制御を担うコンピュータである。自動運転においては、車両1の操舵、及び加減速等の少なくとも何れかを自動制御する。ここで自動運転ECU20による自動運転制御の具体例としては、車線維持制御、車線逸脱抑制制御(路外逸脱抑制制御)、車線変更制御、先行車追従制御、衝突軽減ブレーキ制御、誤発進抑制制御、及び測定対象接近制御等が挙げられる。
【0038】
車線維持制御とは、車線に対する車両1の位置の制御の一つであり、車線内に設定した走行軌道上で車両1を自動的に(運転者による運転操作によらずに)走行させる制御である。車線逸脱抑制制御とは、車線に対する車両1の位置の制御の一つであり、白線又は中央分離帯を検出し、車両1がこれら白線や中央分離帯を越えないように自動的に操舵を行うものである。車線逸脱抑制制御と車線維持制御とはこのように機能が異なっている。
【0039】
車線変更制御とは、車両1が走行中の車線から隣接車線へ車両1を自動的に移動させる制御である。先行車追従制御とは、車両1の前方を走行する他車両に自動的に追従する制御である。衝突軽減ブレーキ制御とは、車両1の前方の障害物との衝突可能性が高まった場合に、自動的に制動して衝突回避を支援する制御である。誤発進抑制制御とは、車両1の停止状態で運転者による加速操作が所定量以上である場合に、車両1の加速を制限する制御であり、急発進を抑制する。
【0040】
測定対象接近制御とは、車両1の周囲において、自車を当事者としない事故が発生した場合に、心拍測定システムSによって事故当事者の心拍を測定するために自車を事故当事者の近傍へ移動させる制御である。
【0041】
ステアリングECU21は、主に電動パワーステアリング装置31の制御を担うコンピュータである。ステアリングECU21は、ステアリングセンサ31dによって検出される操舵角や操舵速度に基づいて生成した制御信号を電動モータ31cへ入力することにより、運転者によるステアリングホイール61の操舵操作をアシストする。またステアリングECU21は、車両1の運転状態が自動運転の場合、自動運転ECU20からの指令に応じて生成した制御信号を電動モータ31cへ入力することにより、前輪Wfを自動操舵するための駆動力を発生させ、車両1の進行方向を制御する。
【0042】
車載センサECU22は、センサユニット7のうち車両1の周囲の対象を検出するカメラユニット71a,71b、ライダユニット72a~72e、及びレーダユニット73a~73eの制御並びにこれらユニット71a,71b,72a~72e,73a~73e検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことにより、自車周囲に存在する道路や物体の位置、種類、速度等を認識するコンピュータである。
【0043】
ナビゲーションECU24は、ジャイロセンサ74、GPSセンサ75、及び第1車載通信装置41の制御並びにこれらジャイロセンサ74、GPSセンサ75、及び第1車載通信装置41の検出結果や通信結果の情報処理を行うコンピュータである。より具体的には、ナビゲーションECU24は、ジャイロセンサ74及びGPSセンサ75の検出結果や記憶デバイスに構築された地図情報のデータベース78に基づいて、車両1の現在の進路、及び現在の走行位置等を取得する。またナビゲーションECU24は、第1車載通信装置41を介して取得した地図情報や交通情報等に基づいて、現在位置から目的地へのルート探索等を行うことも可能となっている。またナビゲーションECU24は、第1車載通信装置41を介して緊急通報センタの救急窓口等と各種情報を送受信することが可能となっている。
【0044】
車車間通信ECU25は、主に第2車載通信装置42の制御を担うコンピュータである。車車間通信ECU25は、車両1の周囲に第2車載通信装置42と無線による車車間通信が可能な車載通信装置を搭載する他車両が存在する場合、第2車載通信装置42を介して無線通信によりこれら他車両の車載通信装置と各種情報を送受信する。
【0045】
パワープラントECU26は、主にパワープラント32の制御を担うコンピュータである。パワープラントECU26は、運転者によるアクセルペダル62の加減速操作に基づいてエンジンの出力を制御したり、図示しない車速センサによって検出された車速等の情報に基づいて変速機の変速段を切り替えたりする。またパワープラントECU26は、車両1の運転状態が自動運転の場合、自動運転ECU20からの指令に基づいてパワープラント32を自動制御し、車両1の加減速を制御する。
【0046】
制動装置ECU29は、主に制動装置33や変速機のパーキングロック機構の制御を担うコンピュータである。制動装置ECU29は、運転者によるブレーキペダル63の減速操作に基づいてディスクブレーキ装置を制御する。また制動装置ECU29は、車両1の運転状態が自動運転の場合、自動運転ECU20からの指令に基づいてディスクブレーキ装置を自動制御し、車両1の減速及び停止を制御する。また制動装置ECU29は、車両1の駐車時には、運転者による図示しないパーキングブレーキボタンの操作に基づいてパーキングブレーキを作動させ、運転者による図示しないシフトレバーの操作に基づいて変速機に設けられたパーキングロック機構を作動させる。
【0047】
図2は、本実施形態に係る心拍測定システムSの主な構成を模式的に示す図である。図2に示すように心拍測定システムSは、車両1の複数の構成要素のうち、特に車載センサECU22、カメラユニット71a,71b、及びレーダユニット73a~73eによって構成される。心拍測定システムSは、車載センサECU22、カメラユニット71a,71b、及びレーダユニット73a~73eを用いることによって、人である測定対象の心拍測定、及びこの測定対象の救助支援を行う。
【0048】
図2に示すように、第1レーダユニット73aは、車体に取り付けられたアンテナ731と、このアンテナ731に接続された第1送受信部732及び第2送受信部733と、これら送受信部732,733に接続された信号処理部734と、を備える。
【0049】
第1送受信部732は、FM-CW方式やパルス方式等の遠距離の距離測定に適した変調アルゴリズムに基づいて生成した変調波を、アンテナ731を介して送受信する。第2送受信部733は、第1送受信部732とは別の変調アルゴリズムでありかつ近距離の微細な変位(例えば、人の心拍による変位)を測定可能な変調アルゴリズム、例えばPN符号位相変調方式に基づいて生成した変調波を、アンテナ731を介して送受信する。
【0050】
信号処理部734は、第1送受信部732によって送受信した送信波及び受信波に基づいて車体から物体までの距離を測定する。また信号処理部734は、第2送受信部733によって送受信した送信波及び受信波に基づいて人の心拍を測定する。
【0051】
以上のように第1レーダユニット73aは、第1送受信部732を用いて人を含む測定対象までの距離を測定する距離測定モードと、第2送受信部733を用いて人である測定対象の心拍を測定する心拍測定モードと、の2つの測定モードによって測定対象を測定することが可能となっている。ここで心拍測定モードの心拍測定可能範囲は、距離測定モードの距離測定可能範囲より狭くかつ車体側である。また心拍測定モードの分解能は距離測定モードの分解能よりも高い。
【0052】
なお第2レーダユニット73b、第3レーダユニット73c、第4レーダユニット73d、及び第5レーダユニット73eも第1レーダユニット73aと同様の構成により、距離測定モードと心拍測定モードとの2つの測定モードの下で測定対象を測定可能であるので、詳細な説明及び図示を省略する。
【0053】
車載センサECU22は、測定対象の心拍測定及び測定対象の救助支援に関わるモジュールとして、事故判定部2200と、事故発生通知部2201と、停止判定部2202と、使用レーダ決定部2203と、測定範囲判定部2204と、測定モード切替部2205と、心拍測定部2206と、救助可否確認部2207と、救助情報通知部2208と、車外救助要請部2209と、測定結果送信部2210と、自動移動部2211と、を備える。
【0054】
事故判定部2200は、カメラユニット71a,71bによって撮影された画像や図示しない衝突検知ユニットの検出信号等に基づいて、自車の周囲で事故が発生したか否か、この事故の当事者が倒れて停止した状態であるか否か、及びこの事故の当事者に自車が含まれているか否か、を判定する。なお本実施形態では、事故判定部2200は、当事者の少なくとも一人に歩行者、自転車の運転者、又は鞍乗型車両の運転者を含む事故を対象とするが、本発明はこれに限らない。また以下では、事故判定部2200によって倒れて停止した状態であると判定された事故当事者を、測定対象という。
【0055】
事故発生通知部2201は、事故判定部2200によって事故が発生しかつこの事故の当事者である測定対象が倒れて停止した状態であると判定された場合、車両の乗員に対し、自車の周囲で事故が発生したことを、車載モニタや車載スピーカ等を介して通知する。なおこの際、事故発生通知部2201は、自車の周囲で事故が発生したことを通知する際、自車を速やかに停止させるよう要請することが好ましい。
【0056】
停止判定部2202は、車両が停止しているか否かを判定する。
【0057】
使用レーダ決定部2203は、複数のレーダユニット73a~73eのうち1つを使用レーダとして決定する。より具体的には、使用レーダ決定部2203は、カメラユニット71a,71bによって撮影された画像に基づいて、測定対象と自車との相対位置関係を把握することにより、複数のレーダユニット73a~73eのうち測定対象の心拍測定に最も適したもの、具体的には例えば最も測定対象に近いものを使用レーダとして決定する。
【0058】
測定範囲判定部2204は、事故判定部2200によって特定された測定対象は、使用レーダ決定部2203によって決定された使用レーダの心拍測定可能範囲内に存在するか否かを判定する。より具体的には、測定範囲判定部2204は、距離測定モードの下での使用レーダの測定結果に基づいて測定対象は使用レーダの心拍測定可能範囲内に存在するか否かを判定する。
【0059】
測定モード切替部2205は、使用レーダ決定部2203によって決定された使用レーダの測定モードを距離測定モードから心拍測定モードに切り替える。より具体的には、測定モード切替部2205は、測定範囲判定部2204によって測定対象は使用レーダの心拍測定可能範囲内に存在すると判定されかつ停止判定部2202によって車両が停止していると判定された後、使用レーダの測定モードを距離測定モードから心拍測定モードに切り替える。
【0060】
心拍測定部2206は、測定モードが心拍測定モードに切り替えられた後の使用レーダを用いることにより、測定対象の心拍を測定する。
【0061】
救助可否確認部2207は、心拍測定部2206による心拍の測定結果に応じて、自車の乗員に対し測定対象を救助可能であるか否かを、車載モニタや車載スピーカ等を介して確認する。
【0062】
救助情報通知部2208は、測定対象に対する処置方法及び自車の周囲におけるAEDの設置位置の少なくとも何れかを自車の乗員に、車載モニタや車載スピーカ等を介して通知する。ここで救助情報通知部2208は、心拍測定部2206による心拍の測定結果に応じた適切な応急処置方法を通知することが好ましい。また救助情報通知部2208は、自車の周囲におけるAEDの設置位置を、ナビゲーションECU24から取得する。
【0063】
車外救助要請部2209は、救助可否確認部2207によって乗員は測定対象を救助できることを確認できなかった場合、自車の周囲へ測定対象の救助を要請する。より具体的には、車外救助要請部2209は、車車間通信ECU25及び第2車載通信装置42を用いた車車間通信により、自車の周囲に存在する他車両に対し測定対象の救助を要請する。
【0064】
測定結果送信部2210は、第1車載通信装置41を用いることにより、心拍測定部2206による心拍の測定結果、自車の現在位置情報、及びカメラユニット71a,71bによって撮影された画像等を、緊急通報センタの救急窓口へ送信する。
【0065】
自動移動部2211は、測定範囲判定部2204によって測定対象は使用レーダの心拍測定可能範囲内に存在しないと判定された場合、心拍測定可能範囲内に測定対象が存在するように自動運転ECU20による測定対象接近制御を利用して自車を自動で移動させる。
【0066】
図3は、以上のような心拍測定システムSによって測定対象の心拍を測定する手順を示すフローチャートである。図3に示す各ステップは、車両1の走行中、図示しない記憶デバイスに格納されたコンピュータプログラムを車載センサECU22によって実行することで実現される。
【0067】
始めにステップST1では、事故判定部2200は、カメラユニット71a,71bによって撮影された自車周囲の画像を取得し、ステップST2に移る。ステップST2では、事故判定部2200は、ステップST1で取得した自車周囲の画像に基づいて自車周囲において事故が発生したか否かを判定する。上述のように本実施形態では、事故判定部2200は、当事者の少なくとも一人に歩行者、自転車の運転者、又は鞍乗型車両の運転者(以下、「歩行者等」という)を含む事故を対象とする。事故判定部2200は、ステップST2における判定結果がNOである場合、ステップST1に戻り、YESである場合、ステップST3に移る。
【0068】
ステップST3では、事故判定部2200は、この事故の当事者である歩行者等が倒れて停止した状態であるか否かを判定する。事故判定部2200は、ステップST3における判定結果がNOである場合、ステップST1に戻り、YESである場合、ステップST4に移る。ステップST4では、事故判定部2200は、衝突検知ユニットの検出信号に基づいて、この事故の当事者に自車が含まれているか否かを判定する。事故判定部2200は、ステップST4の判定結果がYESである場合、ステップST5に移り、NOである場合、ステップST6に移る。
【0069】
ステップST5では、車載センサECU22は、後に図4を参照して説明する第1測定処理を実行することにより、ステップST3において特定した歩行者等(以下、「測定対象」という)の心拍を測定した後、ステップST7に移る。またステップST6では、車載センサECU22は、後に図5を参照して説明する第2測定処理を実行することにより、測定対象の心拍を測定した後、ステップST7に移る。ステップST7では、車載センサECU22は、後に図6を参照して説明する救助支援処理を実行することにより、測定対象の救助を支援し、図3に示す処理を終了する。
【0070】
図4は、第1測定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
始めにステップST11では、事故発生通知部2201は、事故判定部2200によって事故が発生し、かつこの事故の当事者である測定対象が倒れて停止した状態であると判定されたことに応じて、車両の乗員に対し、自車の周囲で事故が発生したことを通知するとともに、自車を速やかに停止させるよう要請し、ステップST12に移る。
【0071】
ステップST12では、停止判定部2202は、車両が停止しているか否かを判定する。停止判定部2202は、ステップST12の判定結果がYESである場合にはステップST13に移り、NOである場合にはステップST11に戻る。
【0072】
ステップST13では、使用レーダ決定部2203は、カメラユニット71a,71bによって撮影された画像に基づいて、測定対象と自車との相対位置関係を把握することにより、複数のレーダユニット73a~73eのうち測定対象の心拍測定に最も適したものを使用レーダとして決定し、ステップST14に移る。
【0073】
ステップST14では、測定範囲判定部2204は、距離測定モードの下での使用レーダの測定結果に基づいて、測定対象は使用レーダの心拍測定可能範囲内に存在するか否かを判定する。測定範囲判定部2204は、ステップST14の判定結果がYESである場合にはステップST15に移り、NOである場合には図4に示す処理を終了する。
【0074】
ステップST15では、測定モード切替部2205は、上述のように車両は停止した状態でありかつ測定対象は使用レーダの心拍測定可能範囲内であると判定されたことに応じて、使用レーダの測定モードを距離測定モードから心拍測定モードに切り替え、ステップST16に移る。
【0075】
ステップST16では、心拍測定部2206は、心拍測定モードに切り替えれた使用レーダを用いることにより、測定対象の心拍を測定し、図4に示す処理を終了する。
【0076】
図5は、第2測定処理の具体的な手順を示すフローチャートである。なお図5に示す処理のうち、ステップST21~ST26に示す処理は、それぞれ第1測定処理におけるステップST11~ST16に示す処理と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0077】
測定範囲判定部2204は、ステップST24の判定結果がNOである場合、すなわち測定対象は使用レーダの心拍測定可能範囲内に存在しないと判定した場合、ステップST27に移る。
【0078】
ステップST27では、自動移動部2211は、使用レーダの心拍測定可能範囲内に測定対象が存在するように、自動運転ECU20による測定対象接近制御を利用して自車を自動で移動させる。
【0079】
ステップST28では、停止判定部2202は、車両が停止しているか否かを判定する。停止判定部2202は、ステップST28における判定結果がNOである場合、ステップST27に戻り、自車の移動を継続し、YESである場合には、ステップST24に戻る。
【0080】
上述のように第1測定処理では、事故発生後、車両を停止させたときに、測定対象が使用レーダの心拍測定可能範囲外である場合、この測定対象の心拍を測定することができない。これに対し第2測定処理では、事故発生後、車両を停止させたときに、測定対象が使用レーダの心拍測定可能範囲外である場合、測定対象が心拍測定可能範囲内に存在するように、自車を自動で移動させる。これにより、自車からやや離れた位置で事故が発生した場合であっても、この事故によって負傷した歩行者等の心拍を測定することができる。
【0081】
図6は、救助支援処理の具体的な手順を示すフローチャートである。
始めにステップST31では、心拍測定部2206は、測定対象の心拍を測定できたか否かを判定する。心拍測定部2206は、ステップST31の判定結果がNOである場合、ステップST32に移り、YESである場合、ステップST33に移る。
【0082】
ステップST32では、測定結果送信部2210は、自車の現在位置情報、及びカメラユニット71a,71bによって撮影された画像等を、第1車載通信装置41を用いることによって緊急通報センタの救急窓口へ送信する。
【0083】
ステップST33では、心拍測定部2206は、使用レーダを用いて取得した測定結果に基づいて、測定対象の心拍は停止又は微弱であるか否かを判定する。心拍測定部2206は、ステップST33の判定結果がYESである場合、ステップST34に移る。
【0084】
ステップST34では、救助可否確認部2207は、自車の乗員に対し測定対象を救助可能であるか否かを確認し、ステップST35に移る。ステップST35では、救助可否確認部2207は、所定時間内に乗員から、測定対象を救助可能である旨の意思を示す応答があったか否かを判定する。救助可否確認部2207は、ステップST35における判定結果がYESである場合、ステップST36に移り、NOである場合、ステップST37に移る。
【0085】
ステップST36では、救助情報通知部2208は、乗員により測定対象を救助可能である旨の意思を示す応答があったことに応じて、測定対象に対する処置方法及び自車周囲におけるAEDの設置場所を自車の乗員に通知し、ステップST40に移る。
【0086】
ステップST37では、車外救助要請部2209は、救助可否確認部2207によって乗員は測定対象を救助できることを確認できなかったことに応じて、車車間通信により、自車の周囲に存在する他車両の乗員に対し測定対象の救助を要請し、ステップST38に移る。
【0087】
ステップST38では、車外救助要請部2209は、所定時間内に周囲の他車両の乗員から、測定対象を救助可能である旨の意思を示す応答があったか否かを判定する。車外救助要請部2209は、ステップST38における判定結果がYESである場合、ステップST39に移り、NOである場合、ステップST40に移る。ステップST39では、車外救助要請部2209は、測定対象に対する処置方法及び自車周囲におけるAEDの設置場所を、ステップST38において応答を検出した他車両の乗員に通知し、ステップST40に移る。
【0088】
ステップST40では、測定結果送信部2210は、心拍測定部2206による心拍の測定結果、自車の現在位置情報、及びカメラユニット71a,71bによって撮影された画像等を、第1車載通信装置41を用いることによって緊急通報センタの救急窓口へ送信する。緊急通報センタの救急窓口では、心拍測定システムSから送信される心拍の測定結果、現在位置情報、及び画像等を用いることにより、測定対象を搬送するための救急車、及びその搬送先、並びに測定対象の適切な処理方法を速やかに検討することができる。
【0089】
本実施形態に係る心拍測定システムSによれば、以下の効果を奏する。
(1)心拍測定システムSは、車両1から測定対象までの距離を測定する距離測定モード又は人である測定対象の心拍を測定する心拍測定モードの下で測定対象を測定可能なレーダユニット73a~73eと、これらレーダユニット73a~73eの測定モードを切り替える車載センサECU22と、を備える。本実施形態によれば、例えば車両1の走行中は、レーダユニット73a~73eの測定モードを距離測定モードとすることにより、レーダユニット73a~73eによる測定結果を車両1の運転支援機能に利用することができる。また、例えば車両1の周囲で事故が発生し負傷者が存在する場合には、これらレーダユニット73a~73eの測定モードを心拍測定モードに切り替えることにより、負傷者の心拍を速やかに測定できるので、この心拍の測定結果を利用して負傷者を救助することができる。ここで心拍測定モードの心拍測定可能範囲は、距離測定モードの距離測定可能範囲より狭くかつ車両側であるため、心拍測定モードの下で測定対象の心拍を精度良く測定するためには、測定対象が心拍測定可能範囲内に存在する必要がある。これに対し車載センサECU22は、レーダユニット73a~73eのうち使用レーダとして決定されたものの距離測定モードの下での測定結果に基づいて測定対象は心拍測定可能範囲内に存在することを判定する測定範囲判定部2204と、測定対象は心拍測定可能範囲内に存在すると判定された後、使用レーダの測定モードを距離測定モードから心拍測定モードに切り替える測定モード切替部2205と、を備える。よって本実施形態によれば、適切な位置で使用レーダの測定モードを切り替えることができるので、測定対象の心拍を精度良く測定することができる。
【0090】
(2)心拍測定システムSにおいて、測定モード切替部2205は、測定対象が心拍測定可能範囲内に存在すると判定されかつ自車が停止していると判定された後、使用レーダの測定モードを距離測定モードから心拍測定モードに切り替える。これにより、使用レーダを停止させた状態で心拍測定可能範囲内の測定対象の心拍を測定できるので、測定対象の心拍をさらに精度良く測定することができる。
【0091】
(3)心拍測定システムSにおいて、車載センサECU22は、カメラユニット71a,71bによって撮影された画像に基づいて、事故が発生しかつこの事故の当事者が倒れて停止した状態であることを判定する事故判定部2200と、事故が発生しかつ当事者が倒れて停止した状態であると判定された場合、車両の乗員に対し事故が発生したことを通知する事故発生通知部2201と、をさらに備える。よって本実施形態によれば、事故が発生した場合には、倒れて停止した状態の当事者の心拍の測定を速やかに開始できるよう、運転者を含む乗員に対し車両の速やかな停止を促すことができる。
【0092】
(4)心拍測定システムSにおいて、車載センサECU22は、車両の乗員に対し測定対象を救助可能であるか否かを確認する救助可否確認部2207と、乗員は測定対象を救助できることを確認できなかった場合、車両1の周囲へ測定対象の救助を要請する車外救助要請部2209と、を備える。本実施形態によれば、何らかの理由により乗員が救助できなかった場合であっても、自車の周囲へ測定対象を救助するよう要請することができる。
【0093】
(5)心拍測定システムSにおいて、救助情報通知部2208は、測定対象の心拍が停止又は微弱であると判定した場合、測定対象に対する処置方法及び自車周囲におけるAEDの設置位置の少なくとも何れかを車両1の乗員に通知する。これにより乗員は、測定対象に対し適切な処置を速やかに施すことができる。
【0094】
(6)心拍測定システムSにおいて、測定結果送信部2210は、測定対象の心拍が停止又は微弱であると判定した場合、第1車載通信装置41を用いて心拍に関する測定結果、車両1の現在位置情報、及びカメラユニット71a,71bによって撮影された画像等を救急窓口へ送信する。これにより救急窓口では、測定対象を搬送するための救急車及びその搬送先を速やかに手配することができる。また救急窓口では、測定対象の適切な処置方法を速やかに検討することができる。
【0095】
(7)心拍測定システムSにおいて、自動移動部2211は、測定対象は心拍測定可能範囲内に存在しないと判定された場合、心拍測定可能範囲内に測定対象が含まれるように、自車を移動させることができる。これにより、自車から離れた位置で事故が発生した場合であっても、この事故による負傷者の心拍を精度良く測定することができる。
【0096】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0097】
S…心拍測定システム(車載心拍測定システム)
1…車両
7…センサユニット
71a,71b…カメラユニット(カメラ)
72a~72e…ライダユニット
73a~73e…レーダユニット(測定装置)
731…アンテナ
732…第1送受信部
733…第2送受信部
734…信号処理部
2…制御ユニット
22…車載センサECU22(制御装置)
2200…事故判定部(事故判定手段)
2201…事故発生通知部(事故発生通知手段)
2202…停止判定部(第2判定手段)
2203…使用レーダ決定部
2204…測定範囲判定部(第1判定手段)
2205…測定モード切替部(切替手段)
2206…心拍測定部
2207…救助可否確認部(確認手段)
2208…救助情報通知部(通知手段)
2209…車外救助要請部(救助要請手段)
2210…測定結果送信部(測定結果送信手段)
2211…自動移動部(移動手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6