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特開2022-157180装置、遠隔監視システム、装置の制御方法、及び、遠隔監視システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157180
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】装置、遠隔監視システム、装置の制御方法、及び、遠隔監視システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20221006BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20221006BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20221006BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
G05B23/02 R
B01D53/50 245
B01D53/78 ZAB
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061268
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】郡司 駿
(72)【発明者】
【氏名】須藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】金森 信弥
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一貴
【テーマコード(参考)】
3C223
4D002
【Fターム(参考)】
3C223AA17
3C223BA03
3C223EB01
3C223FF22
3C223FF25
3C223FF26
3C223FF35
4D002AA02
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA01
4D002DA05
4D002DA16
4D002FA03
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB06
4D002HA10
(57)【要約】
【課題】学習モデルの再構築に用いられる学習データを効率的に選定することで、良好な制御精度を実現可能な装置、遠隔監視システム、及び、制御方法を提供する。
【解決手段】本装置は、学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御を実行するための装置である。本装置は、学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、運転データから学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定する。そして、学習データ及び追加学習データを含む新たな学習データを用いて、学習モデルを再構築する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置であって、
前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定するための追加学習データ選定部と、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む新たな学習データを用いて、前記学習モデルを再構築するための学習モデル構築部と、
を備える、装置。
【請求項2】
再構築された前記新たな学習モデルを用いた予測結果が所定の条件を満たすとき、前記追加学習データ選定部は、前記追加学習データとして選定されていない前記運転データから、前記乖離度が大きなデータを含む前記追加学習データとして更に選定し、前記学習データ構築部は、前記追加学習データ選定部で更に選定された前記追加学習データを含む前記新たな学習データを用いて、前記学習モデルの再構築を実施する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記追加学習データ選定部は、前記追加学習データとして、前記運転データに含まれるパラメータの所定期間における平均値を選定する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記学習モデル構築部は、前記予測結果が所定時間以上、継続して前記所定条件を満たすとき、前記学習モデルの再構築を行う、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記学習データは、前記学習モデルの構築前のデータあるいは前回構築に用いられたデータである、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記追加学習データ選定部は、前記プラントの定常運転時に取得された前記運転データから前記追加学習データを選定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすときは、前記学習モデルを用いて得られた予測値による予測誤差が閾値を満たすときを示す、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記追加学習データ選定部は、前記予測値に対する寄与度に基づいて、前記運転データから前記追加学習データに含めるパラメータを選定する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記プラントは、燃焼装置で発生した排ガスと吸収塔内に循環される吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置であり、
前記予測値は、前記吸収塔の出口部における前記排ガスの二酸化硫黄濃度である、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記学習モデルで算出される前記予測値に基づいて前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記学習モデルで算出される前記予測値に基づいて前記吸収塔に対する吸収剤供給量の制御目標値を決定する、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置と通信可能な端末からなる遠隔監視システムであって、
前記装置は、
前記端末からの要求により、前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定するための追加学習データ選定部と、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む学習データを用いて、前記学習モデルを再構築するための学習モデル構築部と、
を備える、遠隔監視システム。
【請求項13】
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置の制御方法であって、
前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定する追加学習データ選定ステップと、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む学習データを用いて、前記学習モデルを再構築する学習モデル構築ステップと、
を備える、装置の制御方法。
【請求項14】
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置と通信可能な端末からなる遠隔監視システムの制御方法であって、
前記端末からの要求により、前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定する追加学習データ選定ステップと、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む学習データを用いて、前記学習モデルを再構築する学習モデル構築ステップと、
を備える、遠隔監視システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装置、遠隔監視システム、装置の制御方法、及び、遠隔監視システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの一例である湿式排煙脱硫装置では、ボイラ等の燃焼装置で発生した排ガスを脱硫装置の吸収塔内に導入し、吸収塔を循環する吸収液と気液接触させる。気液接触の過程で、吸収液中の吸収剤(例えば、炭酸カルシウム)と排ガス中の二酸化硫黄(SO)とが反応することにより、排ガス中のSOは吸収液に吸収され、排ガスからSOが除去(排ガスが脱硫)される。一方、SOを吸収した吸収液は落下して、吸収塔下方の貯留タンク内に溜められる。貯留タンクには吸収剤が供給され、供給された吸収剤で吸収性能を回復した吸収液は循環ポンプによって吸収塔の上方に供給され、排ガスとの気液接触(SOの吸収)に供せられる。
【0003】
このような湿式排煙脱硫装置では、吸収液の循環流量や吸収剤濃度の変化が、排ガス中のSO濃度に反映されるまでに少なからず時間を要する。そのため、湿式排煙脱硫装置の制御では、吸収液の循環流量や吸収剤濃度のような制御パラメータと、排ガス中のSO濃度との関係を機械学習によって学習モデルとして構築しておき、当該学習モデルによって予測される排ガス中のSO濃度に基づいて、吸収液の循環流量や吸収剤濃度の制御目標値を決定することで、排ガス中のSO濃度を基準値以下にすることが可能となる。例えば特許文献1では、このような湿式排煙脱硫装置の制御において、吸収液の循環量と排ガス中のSO濃度との関係を表す第1学習モデルを用いて吸収液の循環量に関する制御目標値を求めるとともに、吸収液の吸収剤濃度と排ガス中のSO濃度との関係を表す第2学習モデルを用いて吸収液の吸収剤濃度に関する制御目標値を求めることによって、吸収液の循環流量や吸収剤濃度を制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-11163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようなプラント制御では、制御目標値を予測するための学習モデルが予め用意される。このような学習モデルの構築は、プラントの運転データから選定された学習データを用いた機械学習によって行われるが、運転データには少なからずバラつきがあるため、学習データの選び方によって十分な予測誤差を得ることができないことがある。また当初は学習モデルの予測誤差が十分小さくとも、プラントの運転条件が学習モデルの構築時から変化することにより、後発的に予測誤差が大きくなってしまうこともある。
【0006】
このように学習モデルの予測誤差が十分でない場合には、学習モデルの再構築が必要となる。学習モデルの再構築は、例えば、新たなデータが追加された学習データを用いて行われるが、運転データには少なからずばらつきが含まれるため、追加するデータの選び方によっては予測誤差が大きくなってしまう場合もある。また学習データのもととなる運転データは膨大であるため、学習モデルの再構築によって予測誤差を低減するためのデータを効率的に選定することが求められる。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、学習モデルの再構築に用いられる学習データを効率的に選定することで、良好な制御精度を実現可能な装置、遠隔監視システム、装置の制御方法、及び、遠隔監視システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る装置は、上記課題を解決するために、
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置であって、
前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定するための追加学習データ選定部と、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む新たな学習データを用いて、前記学習モデルを再構築するための学習モデル構築部と、
を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る遠隔監視システムは、上記課題を解決するために、
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置と通信可能な端末からなる遠隔監視システムであって、
前記装置は、
前記端末からの要求により、前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定するための追加学習データ選定部と、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む学習データを用いて、前記学習モデルを再構築するための学習モデル構築部と、
を備える。
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態に係る装置の制御方法は、上記課題を解決するために、
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置の制御方法であって、
前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定するための追加学習データ選定ステップと、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む学習データを用いて、前記学習モデルを再構築するための学習モデル構築ステップと、
を備える。
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態に係る遠隔監視システムの制御方法は、上記課題を解決するために、
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置と通信可能な端末からなる遠隔監視システムの制御方法であって、
前記端末からの要求により、前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定する追加学習データ選定ステップと、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む学習データを用いて、前記学習モデルを再構築する学習モデル構築ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、学習モデルの再構築に用いられる学習データを効率的に選定することで、良好な制御精度を実現可能な装置、遠隔監視システム、装置の制御方法、及び、遠隔監視システムの制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る排煙脱硫装置の構成図である。
図2】一実施形態に係る遠隔監視システムの構成模式図である。
図3】一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置の基本制御を示すフローチャートである。
図4】流出ガス中のSO濃度の予測値と、ガス分析計によるSO濃度の測定値と、SO濃度の予測値の真値とのそれぞれの推移を示すグラフである。
図5】一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置の基本制御において作成される第1関係テーブルの一例を模式的に示す図である。
図6】一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置の基本制御において作成される第2関係テーブルの一例を模式的に示す図である。
図7】一実施形態に係るプラント制御方法を示すフローチャートである。
図8図7のステップS104における追加学習データの選定方法を示すフローチャートである。
図9A図8のステップS204における追加学習データを選定する過程を示す図である。
図9B図8のステップS204における追加学習データを選定する過程を示す図である。
図10】第1学習モデルの再構築に用いられる学習データの分布を再構築の実施回数ごとに示す図である。
図11図10に示す各学習データを用いて再構築された第1学習モデルの予測値の推移を示す図である。
図12】一実施形態に係る情報処理システムの構成図である。
図13図12の情報処理装置の内部構成を制御装置とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0015】
まず図1を参照して、本開示の少なくとも一実施形態に係るプラント制御装置の制御対象であるプラントの一例である湿式排煙脱硫装置10の構成について説明する。図1は一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置10の構成図である。
【0016】
尚、以下の説明ではプラントの一例として湿式排煙脱硫装置10について述べるが、制御対象は湿式排煙脱硫装置10に限定されず、学習モデルを用いて予測される制御目標値に基づいて制御パラメータが制御されるプラントを広く含むことができる。
【0017】
湿式排煙脱硫装置10は、燃焼装置1で発生した排ガスを脱硫するためのプラント設備である。燃焼装置1は例えば蒸気を生成するためのボイラであり、燃焼装置1で生成された蒸気を発電機5に供給することにより発電可能な発電プラントの一部として構成されている。湿式排煙脱硫装置10は、燃焼装置1と配管2を介して連通する吸収塔11と、吸収塔11内を循環する吸収液の循環用配管3に設けられた複数の循環ポンプ12a,12b,12c(これらを総称する場合には適宜「循環ポンプ12」と称する)と、吸収液に含まれる吸収剤である炭酸カルシウム(CaCO)のスラリー(吸収剤スラリー)を吸収塔11内に供給するための吸収剤スラリー供給部13と、吸収液中の石膏を回収するための石膏回収部14とを備えている。吸収塔11には、後述する動作で脱硫された排ガスが吸収塔11から流出ガスとして流出するための流出配管16が設けられ、流出配管16には、流出ガス中のSO濃度を測定するためのガス分析計17が設けられている。
【0018】
吸収剤スラリー供給部13は、吸収剤スラリーを製造するための吸収剤スラリー製造設備21と、吸収剤スラリー製造設備21と吸収塔11とを連通する吸収剤スラリー供給用配管22と、吸収剤スラリー供給用配管22を流通する吸収剤スラリーの流量を制御するための吸収剤スラリー供給量制御弁23とを備えている。石膏回収部14は、石膏分離器25と、石膏分離器25と吸収塔11とを連通する石膏スラリー抜き出し用配管26と、石膏スラリー抜き出し用配管26に設けられた石膏スラリー抜き出し用ポンプ27とを備えている。
【0019】
湿式排煙脱硫装置10には、本開示の少なくとも一実施形態のプラントを制御する装置である制御装置15が設けられている。制御装置15は、燃焼装置1及び湿式排煙脱硫装置10の各種運転データ(例えば、様々な部位における温度や圧力、各種流体の流量等)を取得するための種々の検出器を含む運転データ取得部20と電気的に接続された運転データ受信部30を備えている。運転データ取得部20には、ガス分析計17が含まれている。
【0020】
制御装置15は、運転データ受信部30に電気的に接続された第1学習モデル構築部38と、第1学習モデル構築部38に電気的に接続された第1関係テーブル作成部31と、第1関係テーブル作成部31に電気的に接続された循環流量決定部32と、循環流量決定部32に電気的に接続された循環ポンプ調節部33とを備えている。循環ポンプ調節部33は、循環ポンプ12a,12b,12cのそれぞれに電気的に接続されている。
【0021】
制御装置15は更に、運転データ受信部30に電気的に接続された第2学習モデル構築部39と、第2学習モデル構築部39に電気的に接続された第2関係テーブル作成部35と、第2関係テーブル作成部35に電気的に接続された吸収剤スラリー供給量決定部36と、吸収剤スラリー供給量決定部36に電気的に接続された吸収剤スラリー供給制御部37とを備えている。吸収剤スラリー供給制御部37は、吸収剤スラリー供給量制御弁23に電気的に接続されている。
【0022】
制御装置15は更に、第1学習モデル構築部38及び第2学習モデル構築部39に電気的に接続された予測誤差算出部40と、予測誤差算出部40に電気的に接続された追加学習データ選定部42と、を備えている。
【0023】
図2には、湿式排煙脱硫装置10(図1参照)の制御状態を遠隔監視するための遠隔監視システム44の構成が示されている。遠隔監視システム44は、燃焼装置1(図1参照)及び湿式排煙脱硫装置10(図1参照)を構成する各機器の分散制御システム(DCS)46と、DCS46に電気的に接続されるとともに制御装置15を搭載したエッジサーバー48と、クラウド又はバーチャルプライベートネットワーク(VPN)を介してエッジサーバー48に電気的に接続されたデスクトップパソコンやタブレット型コンピュータ等のような遠隔監視装置50とを備えている。通常はエッジサーバー48から離れた場所に存在する遠隔監視装置50によって、湿式排煙脱硫装置10の制御状態を遠隔監視することができる。
【0024】
次に、燃焼装置1で発生した排ガスを湿式排煙脱硫装置10が脱硫する動作について説明する。
図1に示されるように、燃焼装置1で発生した排ガスは、配管2を流通して吸収塔11に流入し、吸収塔11内を上昇する。循環ポンプ12の少なくとも1台が稼働することによって吸収液が循環用配管3を流通して吸収塔11に流入し、吸収塔11内において吸収液が流下する。吸収塔11内で流下した吸収液は、吸収塔11内に溜まり、循環ポンプ12によって吸収塔11から流出し、循環用配管3を流通する。このようにして、吸収液は吸収塔11内を循環する。
【0025】
吸収塔11内では、上昇する排ガスと流下する吸収液とが気液接触する。排ガスに含まれるSOは、以下の反応式
SO+CaCO+2HO+1/2O→CaSO・2HO+CO
のように、吸収液中のCaCOと反応して、石膏(CaSO・2HO)が吸収液中に析出する。
【0026】
このようにして、排ガス中のSOの一部が吸収液中に石膏として除去されるので、すなわち排ガスが脱硫されるので、流出配管16を介して吸収塔11から流出する流出ガス中のSO濃度は、配管2を介して吸収塔11に流入する排ガス中のSO濃度よりも低くなっている。吸収塔11から流出した流出ガスは、流出配管16を流通して大気中に放出されるが、その途中でガス分析計17によってSO濃度が測定され、その測定結果が制御装置15の運転データ受信部30に伝送される。
【0027】
流出ガス中のSO濃度は、吸収液中のCaCO濃度に大きな変動がなければ、吸収塔11内を循環する吸収液の循環流量が増加するほど低下する傾向がある。後述する制御方法によって制御装置15が循環ポンプ12の稼働台数を制御することで循環流量を制御することにより、流出ガス中のSO濃度を制御すること、例えば予め設定された設定値以下となるように流出ガス中のSO濃度を制御することができる。
【0028】
吸収塔11内で吸収液中に析出した石膏は、石膏スラリーとして石膏スラリー抜き出し用ポンプ27によって吸収塔11から抜き出され、石膏スラリーは、石膏スラリー抜き出し用配管26を流通して石膏分離器25に流入する。石膏分離器25において石膏と水とが分離されて、石膏は回収され、水は、図示しない排水設備に送られる。
【0029】
吸収液中のCaCOは、SOと反応して石膏となるので、排ガスの脱硫が行われるに従い、吸収液中のCaCO濃度は低下する。後述する制御方法によって制御装置15は吸収剤スラリー供給量制御弁23の開度を制御し、吸収剤スラリー製造設備21で製造された吸収剤スラリーを、吸収剤スラリー供給用配管22を介して吸収塔11内に供給する。これにより、吸収液中のCaCO濃度が予め設定された設定範囲内となり、排ガスの脱硫中におけるCaCO濃度の大きな変動が抑制される。
【0030】
次に、制御装置15による湿式排煙脱硫装置10の基本制御について説明する。図3は、図1の制御装置15によって実施される湿式排煙脱硫装置10の基本制御を示すフローチャートである。
【0031】
基本制御では、まずステップS1において燃焼装置1及び湿式排煙脱硫装置10の各種運転データを収集した後、ステップS2において、各種運転データと、吸収塔11から流出する流出ガス中の将来のSO濃度との関係について機械学習により第1学習モデルを構築する。次に、ステップS3において、構築された第1学習モデルを用いて、後述する第1関係テーブルを作成する。続くステップS4において、第1関係テーブルに基づいて、流出ガス中のSO濃度が予め設定された設定値以下となる吸収液の循環流量を決定し、ステップS5において、決定された循環流量に基づいて循環ポンプ12の運転条件を調節する。これにより、予め設定された設定値以下となるように流出ガス中のSO濃度が制御される。
【0032】
また、ステップS1の後、ステップS2~S5とは別に、ステップS12において、各種運転データと、吸収液中の将来のCaCO濃度との関係について機械学習により第2学習モデルを構築する。次に、ステップS13において、構築された第2学習モデルを用いて、後述する第2関係テーブルを作成する。続くステップS14において、第2関係テーブルに基づいて、CaCO濃度が予め設定された設定範囲内となる吸収剤スラリーの供給量を決定し、ステップS15において、吸収剤スラリー供給部13を制御すること、すなわち吸収剤スラリー供給量制御弁23の開度を制御することにより、決定された供給量で吸収剤スラリーを吸収塔11内に供給する。これにより、吸収液中のCaCO濃度が予め設定された設定範囲内となり、排ガスの脱硫中におけるCaCO濃度の大きな変動が抑制される。
【0033】
次に、制御装置15による湿式排煙脱硫装置10の制御方法の各ステップについて詳細に説明する。
ステップS1では、図1に示されるように、燃焼装置1及び湿式排煙脱硫装置10の各種運転データを運転データ取得部20が取得した後、取得された各種運転データが制御装置15に伝送されて運転データ受信部30が受信することで、制御装置15が各種運転データを収集する。前述したように、運転データ取得部20はガス分析計17を含んでいるので、各種運転データは流出ガス中のSO濃度を含んでいる。
【0034】
ステップS2では、第1学習モデル構築部38は、制御装置15が収集した各種運転と、流出ガス中の将来のSO濃度との関係について機械学習により第1モデルを構築する。ステップS3では、構築された第1学習モデルを用いて、第1関係テーブル作成部31は、第1時間における吸収液の循環流量と、第1時間よりも将来の時間である第2時間において流出ガス中のSO濃度の予測値との相関である第1関係テーブルを作成する。機械学習により構築された第1学習モデルを用いて第1関係テーブルを作成するので、迅速に第1関係テーブルを作成することができる。
【0035】
第1関係テーブルにおいて、吸収液の循環流量と流出ガス中のSO濃度の予測値とは時間が異なり、吸収液の循環流量を現在の値とすると、流出ガス中のSO濃度の予測値は、例えば現在から数分後のSO濃度の予測値となる。このため、各種運転データには少なくとも、任意の時間における流出ガス中のSO濃度と、第2時間から第1時間を差し引いた時間間隔だけ任意の時間よりも過去の時間における吸収液の循環流量とが含まれている。任意の時間における流出ガス中のSO濃度と、第2時間から第1時間を差し引いた時間間隔だけ任意の時間よりも過去の時間における吸収液の循環流量とを含む実際の運転データから将来のSO濃度を直接予測しているので、将来のSO濃度の予測性能を向上することができる。尚、第1時間と第2時間との間隔が短いほど、将来のSO濃度の予測性能は向上する。このため、第1時間と第2時間との間隔は、吸収液の循環流量の変化に起因して流出ガス中のSO濃度が変化するまでに要する時間と、ガス分析計17がSO濃度を測定するのに要する時間との和とすることが好ましい。
【0036】
図4には、第1時間と第2時間との間隔を、吸収液の循環流量の変化に起因して流出ガス中のSO濃度が変化するまでに要する時間と、ガス分析計17がSO濃度を測定するのに要する時間との和とした場合における、SO濃度の予測値の推移(a)と、ガス分析計17によるSO濃度の測定値の推移(b)と、SO濃度の真値の推移(c)とを示している。それぞれのグラフにおいて、右側ほど過去の値であり、一番左側が最新値である。ガス分析計17によるSO濃度の測定値の最新値は第1時間における値であり、SO濃度の予測値の最新値は第2時間における値である。ガス分析計17によるSO濃度の測定値の最新値と、SO濃度の真値の最新値との間隔(i)が、ガス分析計17がSO濃度を測定するのに要する時間、すなわち計測遅れに相当し、SO濃度の真値の最新値と、SO濃度の予測値の最新値との間隔(ii)が、吸収液の循環流量の変化に起因して流出ガス中のSO濃度が変化するまでに要する時間に相当する。
【0037】
図5に、第1関係テーブルの一例を示す。この実施形態では第1関係テーブルは、横軸に流出ガス中のSO濃度の予測値をとるとともに縦軸に吸収液の循環流量をとったグラフとして表されているが、必ずしもこのような形態である必要はなく、マトリックスや数式等の形態であってもよい。ステップS4では、循環流量決定部32は、この第1関係テーブルに基づいて、将来における流出ガス中のSO濃度が予め設定された設定値SVとなる吸収液の循環流量Q(制御目標値)を決定する。
【0038】
ステップS5では、図1に示されるように、循環ポンプ調節部33は、決定された循環流量Q(制御目標値)以上になるように循環ポンプ12a~12cの稼働台数を決定し、決定された稼働台数の循環ポンプが稼働するようにする。例えば、3台の循環ポンプ12a~12cそれぞれの稼働時の供給量が同じ場合には、3段階の循環流量の調節が可能である。循環ポンプの台数を増やせば、より細かな循環流量の調節が可能となる。また、例えば、3台の循環ポンプ12a~12cそれぞれの稼働時の供給量が互いに異なる場合には、稼働させる循環ポンプの組み合わせによって最大6段階の循環流量の調節が可能である。さらに、例えば、3台の循環ポンプ12a~12cそれぞれが供給量を調節可能であれば、より細かな循環流量の調節が可能となる。
【0039】
尚、循環流量の調節は、循環ポンプの台数制御によって行うことに限定するものではない。供給量を調節可能な1台の循環ポンプを用いて、循環流量決定部32によって決定された循環流量となるように循環ポンプの供給量を調節するようにしてもよい。
【0040】
このように、吸収塔11内を循環する吸収液の循環流量を調節することにより、将来における流出ガス中のSO濃度が予め設定された設定値以下となるように制御することができるが、このためには、吸収液中のCaCO濃度に大きな変動がないことが必要である。このため、この実施形態では、前述したように、ステップS2~S5とは別に、ステップS12~S15によって、吸収液中のCaCO濃度が予め設定された設定範囲内となるように制御している。次に、ステップS12~S15それぞれを詳細に説明する。
【0041】
ステップS12では、第2学習モデル構築部39は、制御装置15が収集した各種運転データと、吸収塔11内の吸収液中の将来のCaCO濃度との関係について機械学習により第2学習モデルを構築する。ステップS13では、構築された第2学習モデルを用いて、第2関係テーブル作成部35は、第3時間における吸収塔11への吸収剤スラリーの供給量と、第3時間よりも将来の時間である第4時間におけるCaCO濃度の予測値との相関である第2関係テーブルを作成する。機械学習により構築された第2学習モデルを用いて第2関係テーブルを作成するので、迅速に第2関係テーブルを作成することができる。
【0042】
第2関係テーブルにおいて、吸収塔11への吸収剤スラリーの供給量とCaCO濃度の予測値とは時間が異なり、吸収剤スラリーの供給量を現在の値とすると、CaCO濃度の予測値は、例えば現在から数分後のCaCO濃度の予測値となる。このため、各種運転データには少なくとも、任意の時間におけるCaCO濃度と、第4時間から第3時間を差し引いた時間間隔だけ前記任意の時間よりも過去の時間における吸収剤スラリーの供給量とが含まれている。任意の時間におけるCaCO濃度と、第4時間から第3時間を差し引いた時間間隔だけ前記任意の時間よりも過去の時間における吸収剤スラリーの供給量とを含む実際の運転データから将来のCaCO濃度を直接予測しているので、将来のCaCO濃度の予測性能を向上することができる。
【0043】
この実施形態では、任意の時間におけるCaCO濃度は、マスバランス計算によるシミュレーションモデルを用いて算出された値を用いている。CaCO濃度を検出するためのセンサーは一般的に高価であるため、このようなセンサーを設けると湿式排煙脱硫装置10のコストが上昇してしまう。しかし、マスバランス計算によるシミュレーションモデルを用いてCaCO濃度を算出するようにすれば、高価なセンサーが不要になり、湿式排煙脱硫装置10のコストの上昇を抑制することができる。
【0044】
尚、第3時間と第4時間との間隔が短いほど、将来のCaCO濃度の予測性能は向上する。このため、第3時間と第4時間との間隔は、吸収剤スラリーの供給量の変化に起因してCaCO濃度が変化するまでに要する時間とすることが好ましい。吸収剤スラリーの供給量の予測値の推移及び真値の推移はそれぞれ、図4のSO濃度の予測値の推移(a)及び真値の推移(c)と同様の関係になる。この実施形態では、CaCO濃度はマスバランス計算によるシミュレーションモデルを用いて算出しているが、CaCO濃度をセンサーによって測定する場合には、吸収剤スラリーの供給量の予測値の推移とセンサーによる測定値の推移と真値の推移とはそれぞれ、図4のSO濃度の各種推移(a)~(c)と同様の関係になる。
【0045】
一般に、吸収塔11から流出する流出ガス中のSO濃度が変化するのに必要なステップ数は、CaCO濃度が変化するのに必要なステップ数に比べて多いため、CaCO濃度の制御に比べてSO濃度の制御の遅れが大きい。このため、第3時間から第4時間までの時間を、第1時間から第2時間までの時間よりも短くすることで、制御遅れの影響を適切に考慮することができるので、将来のCaCO濃度の予測性能をさらに向上することができる。
【0046】
図6に、第2関係テーブルの一例を示す。この実施形態では第2関係テーブルは、横軸にCaCO濃度の予測値をとるとともに縦軸に吸収剤スラリーの供給量をとったグラフとして表されているが、必ずしもこのような形態である必要はなく、マトリックスや数式等の形態であってもよい。ステップS14では、吸収剤スラリー供給量決定部36は、この第2関係テーブルに基づいて、将来におけるCaCO濃度が予め設定された設定範囲R内となる吸収剤スラリーの供給量F(制御目標値)を決定する。
【0047】
ステップS15では、図1に示されるように、吸収剤スラリー供給制御部37は、吸収剤スラリー供給用配管22を介して吸収塔11内に供給される吸収剤スラリーの供給量が、決定された吸収剤スラリーの供給量F(制御目標値)に近くなるように、吸収剤スラリー供給量制御弁23の開度を制御する。このように、吸収塔11への吸収剤スラリーの供給量を調節することにより、将来におけるCaCO濃度が予め設定された設定範囲内となるように制御することができる。
【0048】
このように、燃焼装置1の運転データ及び湿式排煙脱硫装置10の吸収液の循環流量を含む運転データから、第1時間における吸収液の循環流量と、第1時間よりも将来の時間である第2時間において吸収塔11から流出する流出ガス中のSO濃度との間の第1関係テーブルを作成することにより、実際の運転データから将来のSO濃度を直接予測しているので、将来のSO濃度の予測性能を向上した第1関係テーブルを得ることができ、この第1関係テーブルに基づいて、第2時間における流出ガス中のSO濃度が予め設定された設定値以下となるような第1時間における吸収液の循環流量を決定して、第1時間において、決定された循環流量に基づいて循環ポンプ12a~12cの運転条件を調節するので、循環ポンプ12a~12cの運転条件を適切に調節することができる。
【0049】
この実施形態では、ステップS12~S15によって吸収液中のCaCO濃度が予め設定された設定範囲内となるようにしているが、例えば、吸収液中のCaCO濃度をセンサーによって実測し、この実測値に基づいて吸収塔11への吸収剤スラリーの供給量を随時調節するようにしておけば、ステップS12~S15の各ステップを不要にすることができる。この場合、制御装置15は、第2学習モデル構築部39と第2関係テーブル作成部35と吸収剤スラリー供給量決定部36と吸収剤スラリー供給制御部37とを備えていなくてもよい。
【0050】
続いて図3に示す基本制御に加えて制御装置15で実施される一実施形態に係るプラント制御方法について説明する。図7は一実施形態に係るプラント制御方法を示すフローチャートである。
【0051】
本プラント制御では、図3に示すステップS2~S5とは別に、ステップS100において第1学習モデルの予測値を算出する。次に、ステップS101において、ガス分析計17による分析結果を取得する。続くステップS102において、ステップS100で算出した予測値とステップS101で取得した分析結果とを比較することにより第1学習モデルの予測結果、つまり予測誤差を算出する。続くステップS103において、ステップS102で算出した予測誤差が所定の条件を満たすとき、例えば、予測誤差が閾値より大きいか判定する。予測誤差が閾値より大きい場合(ステップS103:YES)、続くステップS104において追加学習データを選定し、ステップS105においてステップS104で選定された追加学習データを用いて第1学習モデルの再構築を行う。そしてステップS106では、ステップS105で再構築された第1学習モデルについて予測誤差を算出し、ステップS107において当該予測誤差が閾値以下であるかを判定する。ステップS106で算出した予測誤差が依然として閾値より大きい場合(ステップS107:NO)、処理をステップS104に戻して追加学習データの選定と学習モデルの再構築が繰り返し実施される。このような繰り返し処理は、再構築された第1学習モデルの予測値が閾値以下になるまで実施される。
尚、ステップS103で予測誤差が閾値以下である場合(ステップS103:NO)、処理は終了するが、図7に示す一連の処理は所定のタイミングで繰り返し実施されてもよい。
【0052】
次に、図7の各ステップについて詳細に説明する。
ステップS100では、第1学習モデル構築部38で構築された第1学習モデルを用いて流出ガス中のSO濃度の予測値を算出する。ステップS100における第1学習モデルによる予測値の算出は、前述のステップS3において第1関係テーブルを作成するために流出ガス中のSO濃度の予測値を算出した場合と同様であり。第1学習モデルに対して入力される第1時間における吸収液の循環流量に対して、第1時間よりも将来の時間である第2時間における流出ガス中のSO濃度の予測値が算出される。
【0053】
ステップS101では、ガス分析計17による分析結果に基づいて流出ガス中のSO濃度の実測値を取得する。この実測値は、ステップS100で算出された流出ガス中のSO濃度の予測値に対応する第2時間における実際の流出ガス中のSO濃度である。
【0054】
ステップS102では、予測誤差算出部40は、ステップS100で算出された流出ガス中のSO濃度の予測値と、ステップS101で取得された流出ガス中のSO濃度の実測値との差として、予測誤差を算出する。この予測誤差は、第1学習モデル構築部38で構築された第1学習モデルの予測精度に対応する誤差であり、様々な要因が含まれる。例えば、運転データ受信部30によって受信される運転データには少なからずバラつきを有するため、当該運転データを学習データとして機械学習によって構築された第1学習モデルは、当該バラつきに起因する学習誤差がある。またプラントの運転条件がモデル構築時から変化することにより、後発的に予測誤差が大きくなってしまうこともある。
【0055】
ステップS103では、このような予測誤差が、予め設定された閾値εより大きいか否かが判定される。ステップS103における成否判定は、予測誤差が所定時間以上、継続して閾値εより大きくなった場合に成立するように行われてもよい。予測誤差の大きさは湿式排煙脱硫装置10の運転状態によっても変動することがあり、仮に短期的な判定によってステップS103において成立判定を行うと、第1学習モデルの再構築が頻繁に実施されてしまい、モデル管理の負担が増えてしまうおそれがある。そのため、ステップS103では、予測誤差が閾値εより大きくなる状態が所定時間以上にわたって継続した場合に、ステップS103において成立判定を行うことで、第1学習モデルの再構築を適切に実施し、効率的なモデル管理が可能となる。
【0056】
ステップS104では、ステップS103で成立判定がなされた場合に、追加学習データ選定部42によって、第1学習モデルの再構築のために用いられる学習データに含まれる追加学習データが選定される。再構築に用いられる学習データは、前回の第1学習モデルの構築時に用いられた古い初期学習データに対して、新たな追加学習データが含まれる(すなわち、再構築に用いられる学習データ=初期学習データ+追加学習データ)。運転データ受信部30では継続的に運転データの受信が行われており、前回の第1学習モデルが構築された後に受信された運転データから、適切な追加学習データが選定される。
【0057】
またステップS104における追加学習データの選定は、プラントの定常運転時に取得された運転データを対象に実施されてもよい。例えばプラントの異常発生時、運転起動時、運転停止時などの非定常運転時に取得された運転データは、追加学習データの選定対象から除外される。また運転データに、これらの非定常運転時に取得されたデータが含まれる場合には、運転データに対して前処理を実施することで除外してもよい。
【0058】
ここで図8を参照して、追加学習データ選定部42による追加学習データの選定方法について具体的に説明する。図8図7のステップS104における追加学習データの選定方法を示すフローチャートである。
【0059】
ステップS200では、まず運転データ受信部30で受信された運転データを解析することにより、運転データに含まれる複数のパラメータから、第1学習モデルの説明変数を少なくとも1つ選択する。このような説明変数の選択は、例えば、運転データに含まれる複数の運転データの各々について、第1学習モデルの目的変数である流出ガス中のSO濃度に対して重回帰等の手法によって寄与度をそれぞれ算出し、当該寄与度に基づいて行われてもよい。例えば、寄与度が大きな順にZ個のパラメータが説明変数として選択されてもよい。このように運転データに含まれる複数のパラメータの一部を、第1学習モデルの説明変数として選択することで、運転データに含まれる全パラメータを学習対象にする場合に比べて、学習精度の低下を抑えながら、学習時の演算量を効果的に低減できる。
【0060】
ステップS201では、初期学習データとして、第1学習モデルの前回構築に用いられた学習データ(運転データ)のうちステップS200で選択された説明変数を選定する。このとき、初期学習データとして、第1学習モデルの前回構築に用いられた学習データ(運転データ)から選定されたV個についてW時間にわたった平均値を用いてもよい。この場合、運転データに含まれる特定のパラメータについて所定時間にわたった平均値を学習データとすることで、学習精度の低下を抑えながら、学習時の演算量を効果的に低減できる。
【0061】
ステップS202では、ステップS200で選定された説明変数について、運転データ受信部30で受信された運転データから追加学習データ候補が選定される。追加学習データ候補は、第1学習モデルの前回構築時から現在に至るまでの間に、運転データ受信部30で受信した新たな運転データから選定され、ステップS201で選定される初期学習データに対応するパラメータを含む。例えば、初期学習データとして上述のようにW時間にわたった平均値が用いられる場合、追加学習データ候補もまたW時間にわたった平均値が用いられる。
【0062】
ステップS203では、ステップS201で選定された初期学習データと、ステップS202で選定された追加学習データ候補について乖離度を算出する。乖離度の算出には、例えばk近傍法、マハラノビス距離など、乖離度を評価するための各種手法を用いることができる。そしてステップS204では、ステップS203で算出された乖離度に基づいて、学習データに追加すべき追加学習データを選定する。
【0063】
ここで図9A及び図9B図8のステップS204における追加学習データを選定する過程を示す図である。
【0064】
図9Aの態様では、第1学習モデルの説明変数に含まれる任意の変数1、変数2で規定される空間において、ある初期学習データDsに対して、複数の追加学習データ候補Dc1、Dc2、Dc3、、・・・が示されており、初期学習データDsと各追加学習データ候補Dc1、Dc2、Dc3、、・・・との乖離度を示す距離がそれぞれ算出されている。この例では、追加学習データ選定部42は、複数の追加学習データ候補のうち当該距離が最大である追加学習データ候補Dc5を追加学習データとして選定する。
【0065】
また図9Bの態様では、第1学習モデルの説明変数に含まれる任意の変数1、変数2で規定される空間において、ステップS202で選定された複数の追加学習データ候補Dc1、Dc2、Dc3、、・・・に対して、ステップS201で選定された複数の初期学習データDs1、Ds2、・・・が示されている。そして、各追加学習データ候補Dc1、Dc2、Dc3、、・・・に対して、最も近い初期学習データまでの距離が算出されている。追加学習データ選定部42は、複数の追加学習データ候補のうち当該距離が最大であるものを追加学習データとして選定する。図9A及び図9Bにおいて、学習データの追加判定に用いる変数の数は2個としたが、本発明の範囲を限定するものではなく、実施時には1個あるいは3個以上としても良い。
【0066】
追加学習データ選定部42は、このように初期学習データと追加学習データ候補との乖離度を算出し、当該乖離度に基づいて、第1学習モデルを再構築するための学習データに追加すべき学習データ候補を選定する。新たに追加される追加学習データの数は任意でよく、例えば、乖離度が所定値以上となる追加学習データが運転データから選定することにより、乖離度が大きいものから決められた個数(A個)の追加学習データを選定することができる。
【0067】
尚、本実施形態では、第1学習モデル構築部38によって第1学習モデルが既に構築されていることを前提に、第1学習モデルの前回構築時に用いられた学習データを初期学習データとして取り扱っているが、第1学習モデルの構築履歴が無い場合(例えば第1学習モデルの初回構築時)には、運転データから任意に選定された1個以上のパラメータを初期学習データとして取り扱ってもよい。この場合、第1学習モデルの初回構築時においても、予測誤差が少ない学習モデルの構築が可能となる。
【0068】
図7に戻って、ステップS105では、ステップS104で選定された追加学習データを初期学習データに追加することで新たな学習データを作成し、第1学習モデルを再構築する。これにより、第1学習モデルの前回構築時に用いられた初期学習データに対して、その後得られた運転データから選定された追加学習データを加えた新たな学習データを用いて、第1学習モデルの再構築を行うことができる。
【0069】
そしてステップS106では、ステップS105で再構築された第1学習モデルを用いて予測誤差を算出する。ステップS106における予測誤差の算出は、前述のステップS102と同様である。
【0070】
ステップS107では、ステップS103と同様に、ステップS106で算出された予測誤差が閾値ε以下であるか否かが判定される。すなわち、第1学習モデルの予測誤差が、再構築によって十分に改善されたかが判定される。その結果、第1学習モデルの予測誤差が閾値ε以下に改善された場合には、第1学習モデルの予測精度を改善できたとして処理を終了する。一方、第1学習モデルの予測誤差が依然として閾値εより大きい場合(ステップS107:NO)、処理がステップS104に戻される。つまり、再構築によっても第1学習モデルの予測誤差の改善が十分でない場合には、再びステップS104で追加学習データの選定が行われることによって、学習データの見直しが行われた上で、第1学習モデルの構築が繰り返し実施される。このような第1学習モデルの再構築は、ステップS107で予測誤差が閾値ε以下になるまで繰り返し実施される。
【0071】
ここで再構築の実施回数に伴う第1学習モデルの予測値の変化について具体的に説明する。図10は第1学習モデルの再構築に用いられる学習データ(目的変数である流出ガス中のSO濃度と学習モデルに用いる説明変数Xとの学習データ)の分布を再構築の実施回数ごとに示す図であり、図11図10に示す各学習データを用いて再構築された第1学習モデルの予測値の推移を示す図である。
【0072】
図10では、再構築の実施回数が増えるに従って、ステップS104で新たな追加学習データが選定されることで、学習データに含まれるデータ数が増加している様子が示されている。このような学習データを用いて再構築される第1学習モデルの予測誤差は、図11に示されるように、再構築の実施回数が増えるに従って減少する。これは、再構築のたびに追加学習データが適切に選定されることで、第1学習モデルの予測精度が改善されていることを示している。
【0073】
尚、再構築の実施回数が多くなると、第1学習モデルの予測誤差は所定値(図11の例では、0.7近傍)に収束する。そのため、ステップS107では、第1学習モデルの予測値について閾値以下になることに加えて、又は、代えて、予測誤差が十分に収束したか否かに基づいて、ステップS104以降の繰り返し処理の終了判定を行ってもよい。
【0074】
このように、第1学習モデルを構築するための学習データに追加学習データを選定して追加することで新たな学習データを作成し、当該学習データを用いて第1学習モデルの再構築が行われる。この際、学習データに追加される追加学習データを、従来から学習データに含まれる初期学習データとの乖離度に基づいて適切に選定することで、第1学習モデルの予測誤差を効果的に低減できる。これにより、第1学習モデルの予測誤差が何らかの要因により低下した場合であっても、第1学習モデルの再構築によって良好な予測精度を得ることができる。
【0075】
制御装置15は、第1学習モデル構築部38において、このように予測精度が改善された第1学習モデルを再構築することで、第1学習モデルの予測値に基づいて循環流量に関する制御目標値を精度よく設定できる。その結果、循環ポンプ調節部33は、当該制御目標値に基づいて循環ポンプ12の台数を調整することで循環流量を好適に制御することができる。
【0076】
このような学習モデルの再構築による予測誤差の低減は、第2学習モデル構築部39で取り扱われる第2学習モデルについても同様に行うことができる。すなわち、予測誤差算出部40によって算出される第2学習モデルの予測誤差が閾値以下となった場合には、追加学習データ選定部42によって、第2学習モデルを再構築するための学習データに追加される追加学習データの選定が行われ、当該追加学習データを含む新たな学習データを用いた第2学習モデルの再構築が行われる。この際、学習データに追加される追加学習データを、従来から学習データに含まれる初期学習データとの乖離度に基づいて適切に選定することで、第2学習モデルの予測誤差を効果的に低減できる。これにより、第2学習モデルの予測誤差が何らかの要因により低下した場合であっても、第2学習モデルの再構築によって良好な予測精度を得ることができる。
【0077】
制御装置15は、第2学習モデル構築部39において、このように予測精度が改善された第2学習モデルを再構築することで、第2学習モデルの予測値に基づいて吸収剤スラリー供給量に関する制御目標値を精度よく設定できる。その結果、吸収剤スラリー供給制御部37は、当該制御目標値に基づいて吸収剤スラリー供給量制御弁23を制御することで吸収剤スラリーの供給量を好適に制御することができる。
【0078】
尚、上記実施形態では、SOの吸収剤としてCaCOを用いているが、CaCOに限定するものではない。SOの吸収剤として、例えば水酸化マグネシウム(Mg(OH))等を用いることもできる。
【0079】
尚、制御装置15における各処理を実行する装置として図12に示す情報処理装置52を、クラウド環境上あるいはVPNを介してエッジサーバー42に電気的に通信可能なように接続する構成をとることが可能である。この場合、情報処理装置52は、運転データ受信部30、第1関係テーブル作成部31、循環流量決定部32、第2関係テーブル作成部35、吸収剤スラリー供給量決定部36、第1学習モデル構築部38、第2学習モデル構築部39、予測誤差算出部40、及び追加学習データ選定部42を備え、循環流量決定部32及び吸収剤スラリー供給量決定部36で決定した制御目標値を制御装置15における循環ポンプ調節部33及び吸収剤スラリー供給制御部37に対して通信することで、循環ポンプや吸収剤の供給量を制御してもよい。
また、運転データ受信部30は、制御装置15の運転データ中継部43を介して、各種運転データを受信しても良いし、前述したように運転データ取得部20から各種運転データを受信してもよい。
【0080】
とりわけ、クラウド環境上で演算する場合、セキュリティの観点から、循環ポンプや吸収剤の制御目標値を直接制御せず、表示のみとする場合がある。例えば、クラウド環境上で生成した運転指標図を、お客様所有のデバイス(端末54)に専用アプリを通して送信・図示し,現地の運転指標図の更新はお客様の手によって行われる場合がある。
一方、情報処理装置52は、循環ポンプ調節部33及び吸収剤スラリー供給制御部37をも備え、遠隔で循環ポンプや吸収剤の供給量を制御してもよい。
更に、情報処理装置52は、端末54からの要求により、情報処理装置52において各処理を実行する構成を備えてもよい。
【0081】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0082】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0083】
(1)一実施形態に係る装置は、
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置であって、
前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定するための追加学習データ選定部と、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む新たな学習データを用いて、前記学習モデルを再構築するための学習モデル構築部と、
を備える。
【0084】
上記(1)の態様によれば、学習モデルを構築するための学習データに追加学習データを選定して追加することで新たな学習データを作成し、当該学習データを用いて学習モデルの再構築が行われる。この際、新たな学習データに追加される追加学習データを、学習データとの乖離度が大きなものを含むように選定することで、学習モデルの再構築を適切に実施できる。そして、このように適切に再構築された学習モデルの予測結果に基づいてプラントの制御に係る処理を実行することで、良好な制御精度が得られる。
【0085】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
再構築された前記新たな学習モデルを用いた予測結果が所定の条件を満たすとき、前記追加学習データ選定部は、前記追加学習データとして選定されていない前記運転データから、前記乖離度が大きなデータを含む前記追加学習データとして更に選定し、前記学習データ構築部は、前記追加学習データ選定部で更に選定された前記追加学習データを含む前記新たな学習データを用いて、前記学習モデルの再構築を実施する。
【0086】
上記(2)の態様によれば、再構築された新たな学習モデルを用いた予測結果が所定の条件を満たすとき、新たな追加学習データを学習データに更に追加して新たな学習データを作成し、当該新たな学習データを用いて学習モデルの再構築を再び実施する。このような追加学習データの選定と学習モデルの再構築とを繰り返し実施することで、学習モデルの予測誤差を十分に低減できる。
【0087】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記追加学習データ選定部は、前記追加学習データとして、前記運転データに含まれるパラメータの所定期間における平均値を選定する。
【0088】
上記(3)の態様によれば、追加学習パラメータとして所定期間における平均値を用いることで、学習精度を確保しながら、学習モデルの再構築時における演算量を効果的に低減できる。
【0089】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記学習モデル構築部は、前記予測結果が所定時間以上、継続して前記所定条件を満たすとき、前記学習モデルの再構築を行う。
【0090】
上記(4)の態様によれば、予測結果が所定条件を満たすか否かの判定は、予測結果が所定時間にわたって継続的に所定条件を満たすか否かに基づいて行われる。予測結果はプラントの運転状態によっても変動することがあり、仮に短期的な判定を行うと学習モデルの再構築が頻繁に実施されてしまい、モデル管理の負担が増えてしまうおそれがある。そのため本態様のように所定時間にわたる継続的な判定を行うことで、学習モデルの再構築を適切に実施し、効率的なモデル管理が可能となる。
【0091】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記学習データは、前記学習モデルの構築前のデータあるいは前回構築に用いられたデータである。
【0092】
上記(5)の態様によれば、学習モデルの構築前のデータあるいは学習モデルの前回構築に用いられた学習データに対して、追加学習データを追加して作成された新たな学習データを用いて、学習モデルの再構築が実施される。
【0093】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記追加学習データ選定部は、前記プラントの定常運転時に取得された前記運転データから前記追加学習データを選定する。
【0094】
上記(6)の態様によれば、追加学習データの選定は、プラントの定常運転時に取得された運転データを対象に実施される。例えばプラントの異常発生時、運転起動時、運転停止時などの非定常運転時に取得された運転データは、追加学習データの選定対象から除外されることによって、学習モデルの予測結果を適切に求めることができる。また運転データに、これらの非定常運転時に取得されたデータが含まれる場合には、運転データに対して前処理を実施することにより除外してもよい。
【0095】
(7)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすときは、前記学習モデルを用いて得られた予測値による予測誤差が閾値を満たすときを示す。
【0096】
上記(7)の態様によれば、予測結果が所定条件を満たすか否かの判定が、学習モデルを用いて得られた予測値による予測誤差が閾値を満たすか否かに基づいて行われる。これにより、学習モデルの予測誤差が何らかの要因により低下した場合であっても、効率的に選定された追加学習データを含む新たな学習データを用いて学習モデルを再構築し、良好な予測精度が得られる。そして、このように予測精度が改善された学習モデルの予測値に基づいてプラントの制御に係る処理を実行することで、良好な制御精度が得られる。
【0097】
(8)他の態様では、上記(7)の態様において、
前記追加学習データ選定部は、前記予測値に対する寄与度に基づいて、前記運転データから前記追加学習データに含めるパラメータを選定する。
【0098】
上記(8)の態様によれば、運転データから選定された一部のパラメータを追加学習データに含めることで、学習精度を確保しながら、学習モデルの再構築時における演算量を効果的に低減できる。
【0099】
(9)他の態様では、上記(7)又は(8)の態様において、
前記プラントは、燃焼装置で発生した排ガスと吸収塔内に循環される吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置であり、
前記予測値は、前記吸収塔の出口部における前記排ガスの二酸化硫黄濃度である。
【0100】
上記(9)の態様によれば、湿式排煙脱硫装置の吸収塔出口部における排ガスの二酸化硫黄濃度を予測するため学習モデルについて、予測誤差が所定値より大きくなった場合に再構築を実施することで、学習モデルによる予測精度を好適に確保できる。
【0101】
(10)他の態様では、上記(9)の態様において、
前記学習モデルで算出される前記予測値に基づいて前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定する。
【0102】
上記(10)の態様によれば、再構築によって予測誤差が低減された学習モデルを用いて予測値を算出し、当該予測値に基づいて吸収液の循環量の制御目標値を決定することで、良好な制御精度が得られる。
【0103】
(11)他の態様では、上記(9)又は(10)の態様において、
前記学習モデルで算出される前記予測値に基づいて前記吸収塔に対する吸収剤供給量の制御目標値を決定する。
【0104】
上記(11)の態様によれば、再構築によって予測誤差が低減された学習モデルを用いて予測値を算出し、当該予測値に基づいて供給剤供給量の制御目標値を決定することで、良好な制御精度が得られる。
【0105】
(12)一態様に係る遠隔監視システムは、
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置と通信可能な端末からなる遠隔監視システムであって、
前記装置は、
前記端末からの要求により、前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定するための追加学習データ選定部と、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む学習データを用いて、前記学習モデルを再構築するための学習モデル構築部と、
を備える。
【0106】
上記(12)の態様によれば、学習モデルを構築するための学習データに追加学習データを選定して追加することで新たな学習データを作成し、当該学習データを用いて学習モデルの再構築が行われる。この際、新たな学習データに追加される追加学習データを、学習データとの乖離度が大きなものを含むように選定することで、学習モデルの再構築を適切に実施できる。そして、このように適切に再構築された学習モデルの予測結果に基づいてプラントの制御に係る処理を実行することで、良好な制御精度が得られる。
【0107】
(13)一態様に係る装置の制御方法は、
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置の制御方法であって、
前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定する追加学習データ選定ステップと、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む学習データを用いて、前記学習モデルを再構築する学習モデル構築ステップと、
を備える。
【0108】
上記(13)の態様によれば、学習モデルを構築するための学習データに追加学習データを選定して追加することで新たな学習データを作成し、当該学習データを用いて学習モデルの再構築が行われる。この際、新たな学習データに追加される追加学習データを、学習データとの乖離度が大きなものを含むように選定することで、学習モデルの再構築を適切に実施できる。そして、このように適切に再構築された学習モデルの予測結果に基づいてプラントの制御に係る処理を実行することで、良好な制御精度が得られる。
【0109】
(14)一態様に係る遠隔監視素ステムの制御方法は、
学習モデルを用いた予測結果に基づいてプラントの制御にかかる処理を実行するための装置と通信可能な端末からなる遠隔監視システムの制御方法であって、
前記端末からの要求により、前記学習モデルを用いた予測結果が所定条件を満たすとき、前記運転データから前記学習モデルの構築に用いられた学習データからの乖離度が大きなデータを追加学習データとして選定する追加学習データ選定ステップと、
前記学習データ及び前記追加学習データを含む学習データを用いて、前記学習モデルを再構築する学習モデル構築ステップと、
を備える。
【0110】
上記(14)の態様によれば、学習モデルを構築するための学習データに追加学習データを選定して追加することで新たな学習データを作成し、当該学習データを用いて学習モデルの再構築が行われる。この際、新たな学習データに追加される追加学習データを、学習データとの乖離度が大きなものを含むように選定することで、学習モデルの再構築を適切に実施できる。そして、このように適切に再構築された学習モデルの予測結果に基づいてプラントの制御に係る処理を実行することで、良好な制御精度が得られる。
【符号の説明】
【0111】
1 燃焼装置
2 配管
3 循環用配管
5 発電機
10 湿式排煙脱硫装置
11 吸収塔
12 循環ポンプ
13 吸収剤スラリー供給部
14 石膏回収部
15 制御装置
16 流出配管
17 ガス分析計
20 運転データ取得部
21 吸収剤スラリー製造設備
22 吸収剤スラリー供給用配管
23 吸収剤スラリー供給量制御弁
25 石膏分離器
26 石膏スラリー抜き出し用配管
27 石膏スラリー抜き出し用ポンプ
30 運転データ受信部
31 第1関係テーブル作成部
32 循環流量決定部
33 循環ポンプ調節部
35 第2関係テーブル作成部
36 吸収剤スラリー供給量決定部
37 吸収剤スラリー供給制御部
38 第1学習モデル構築部
39 第2学習モデル構築部
40 予測誤差算出部
42 追加学習データ選定部
43 運転データ中継部
44 遠隔監視システム
48 エッジサーバー
50 遠隔監視装置
52 情報処理装置
54 端末
55 情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13