(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157195
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】高剛性ポリプロピレン延伸フィルム用ポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20221006BHJP
C08F 4/654 20060101ALI20221006BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08L23/10
C08F4/654
C08J5/18 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061288
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】597021842
【氏名又は名称】サンアロマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】川原田 博
(72)【発明者】
【氏名】中島 武
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J128
【Fターム(参考)】
4F071AA20
4F071AA20X
4F071AA81
4F071AA81X
4F071AA88
4F071AA88X
4F071AC09
4F071AC15
4F071AE05
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4F071AF20
4F071AF23
4F071AH04
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4F071BB08
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4F071BC12
4F071BC16
4J002BB121
4J002BB151
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4J002EW046
4J002FD038
4J002FD077
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4J128AA02
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4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
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4J128ED01
4J128ED02
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4J128EF01
4J128EF03
4J128EF06
4J128FA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA15
4J128GA21
(57)【要約】
【課題】剛性と延伸性を高めたポリプロピレン延伸フィルムを与えるポリプロピレン組成物を提供する。
【解決手段】プロピレン単独重合体または1.0重量%以下のエチレンに由来する単位を含むプロピレン-エチレン共重合体を含む、延伸フィルム用ポリプロピレン組成物であって、
前記単独重合体または共重合体が、電子供与体化合物としてのスクシネート系化合物を含む固体触媒を含有する触媒を用いて、対応するモノマーを重合して製造された重合体であり、
前記単独重合体または共重合体が以下を満たす:
1)MFR(230℃、荷重2.16kg)が0.3~20g/10分である。
2)キシレン不溶分量(XI)が97.5重量%を超え、99.5重量%以下である。
3)キシレン不溶分の立体規則性(mmmm)が95.5~99%である。
4)GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)が7.0~14である。
延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単独重合体または1.0重量%以下のエチレンに由来する単位を含むプロピレン-エチレン共重合体を含む、延伸フィルム用ポリプロピレン組成物であって、
前記単独重合体または共重合体が、
(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物としてのスクシネート系化合物を含む固体触媒、
(b)有機アルミニウム化合物、および
必要に応じて(c)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて、対応するモノマーを重合して製造された重合体であり、
前記単独重合体または共重合体が以下を満たす:
1)MFR(230℃、荷重2.16kg)が0.3~20g/10分である。
2)キシレン不溶分量(XI)が97.5重量%を超え、99.5重量%以下である。
3)キシレン不溶分の立体規則性(mmmm)が95.5~99%である。
4)GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)が7.0~14である。
延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
【請求項2】
前記MFRが5.0~20g/10分である、請求項1に記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
【請求項3】
前記MFRが9.0~20g/10分である、請求項1または2に記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
【請求項4】
前記エチレンに由来する単位の含有量が、前記共重合体中、0.2~0.8重量%である、請求項1~3のいずれかに記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
【請求項5】
二軸延伸フィルム用である請求項1~4のいずれかに記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
【請求項6】
核剤をさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
【請求項7】
前記単独重合体および共重合体の合計100重量部に対し、0.01~0.2重量部の前記核剤を含む、請求項6に記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
【請求項8】
前記核剤がノニトール系核剤またはリン酸エステル系核剤である、請求項6または7に記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物から製造した延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高剛性ポリプロピレン延伸フィルムを与えるポリプロピレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンの二軸延伸フィルムは幅広い用途に使用されており、性能を向上させるための技術が種々提案されている。例えば特許文献1には、加工性と剛性に優れた二軸延伸フィルムを与えるポリプロピレン樹脂組成物として、特定の触媒で合成された、キシレン不溶分が92.5~97.5重量%であり、多分散指数が4.5~10であり、メルトフローレートが1~8g/10分である樹脂組成物が開示されている。また特許文献2には、耐熱性および機械特性に優れた延伸ポリプロピレンフィルムを与えるポリプロピレン樹脂組成物として、メソペンタッド分率の下限が96%であり、プロピレン以外の共重合モノマー量の上限が0.1mol%であり、かつ特定の分子量分布を有する樹脂組成物が開示されている。さらに特許文献3には、延伸斑の発生が少なく高剛性のフィルムを与えるポリプロピレン樹脂組成物として、アイソタクチックペンタッド指数が0.97以上であり、特定のハード成分量およびMFRを有する樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-000961号公報
【特許文献2】特開2014-055276号公報
【特許文献3】特開2004-315582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、地球環境保護の観点から、従来の石油由来の樹脂ではなくバイオマス由来の樹脂を用いることが増えている。現在市販されているバイオマス由来樹脂は、ポリエチレンベースであり剛性が低いため、より剛性の高い材料をブレンドする必要がある。また、バイオマス由来樹脂の使用はコストアップになることや、包装減容化の観点からフィルム厚さを薄くしたいという要求がある。しかし、薄肉化はフィルムの剛性の低下、および延伸性(製膜性)の低下を招く。これらの点を改善するために、バイオマス由来樹脂にポリプロピレン樹脂をブレンドすることが考えられるが、ブレンド樹脂は延伸性が十分でなく、かつ得られるフィルムの剛性も十分なレベルではなかった。そこで発明者らは、剛性と延伸性をより高めたポリプロピレンフィルムを与えるポリプロピレンと、バイオマス由来樹脂とをブレンドすれば、当該ブレンドから得られるフィルムの剛性の向上および延伸性の低下防止が達成できるとの着想を得た。かかる事情に鑑み、本発明は剛性と延伸性をより高めたポリプロピレン延伸フィルムを与えるポリプロピレン組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、特定のポリプロピレン組成物が前記課題を解決できることを見出した。すなわち、前記課題は、以下の本発明によって解決される。
(態様1)
プロピレン単独重合体または1.0重量%以下のエチレンに由来する単位を含むプロピレン-エチレン共重合体を含む、延伸フィルム用ポリプロピレン組成物であって、
前記単独重合体または共重合体が、
(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物としてのスクシネート系化合物を含む固体触媒、
(b)有機アルミニウム化合物、および
必要に応じて(c)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて、対応するモノマーを重合して製造された重合体であり、
前記単独重合体または共重合体が以下を満たす:
1)MFR(230℃、荷重2.16kg)が0.3~20g/10分である。
2)キシレン不溶分量(XI)が97.5重量%を超え、99.5重量%以下である。
3)キシレン不溶分の立体規則性(mmmm)が95.5~99%である。
4)GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)が7.0~14である。
延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
(態様2)
前記MFRが5.0~20g/10分である、態様1に記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
(態様3)
前記MFRが9.0~20g/10分である、態様1または2に記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
(態様4)
前記エチレンに由来する単位の含有量が、前記共重合体中、0.2~0.8重量%である、態様1~3のいずれかに記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
(態様5)
二軸延伸フィルム用である態様1~4のいずれかに記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
(態様6)
核剤をさらに含む、態様1~5のいずれかに記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
(態様7)
前記単独重合体および共重合体の合計100重量部に対し、0.01~0.2重量部の前記核剤を含む、態様6に記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
(態様8)
前記核剤がノニトール系核剤またはリン酸エステル系核剤である、態様6または7に記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物。
(態様9)
態様1~8のいずれかに記載の延伸フィルム用ポリプロピレン組成物から製造した延伸フィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、剛性と延伸性を高めたポリプロピレン延伸フィルムを与えるポリプロピレン組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0008】
I.ポリプロピレン組成物
1.プロピレン単独重合体またはプロピレン-エチレン共重合体
ポリプロピレン組成物は、プロピレン単独重合体またはプロピレン-エチレン共重合体を主成分として含む。すなわち、ポリプロピレン組成物は、前記単独重合体、前記共重合体、またはこれらの組み合わせを含む。以下、前記単独重合体、前記共重合体、またはこれらの組み合わせをまとめて「ポリプロピレン」ともいう。ポリプロピレン組成物は、一態様において当該ポリプロピレンからなる。すなわち、本発明においてポリプロピレン組成物は、プロピレン単独重合体等の一種類のポリマーからなる態様も含む。ポリプロピレン組成物は、別態様において当該ポリプロピレンと核剤等の成分を含む。
【0009】
前記共重合体におけるエチレンに由来する単位の含有量(単に「エチレン含量」ともいう)は、1.0重量%以下であり、好ましくは0.8重量%以下である。エチレン含量が上限を超えると、フィルムとしたときの剛性が低下しうる。エチレン含量の下限値は、0重量%超であるが、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上である。エチレン含量が下限未満であると、フィルムとするときの製膜性が低下しうる。
【0010】
(1)特性
前記ポリプロピレンは、以下の特性を備える。
1)MFR(230℃、荷重2.16kg)
前記ポリプロピレンのMFRは、0.3~20g/10分である。MFRが下限値未満であると、当該ポリプロピレン自体の製造が困難となる。MFRが上限値を超えると、フィルムとするときの製膜性が低下する。この観点から、MFRの下限値は、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは2.0g/10分以上、さらに好ましくは5.0g/10分以上、特に好ましくは9.0g/10分以上である。また上限値は、好ましくは15g/10分以下であり、より好ましくは10g/10分以下である。
【0011】
2)キシレン不溶分量(XI)
前記ポリプロピレンのキシレン不溶分量(XI)は97.5重量%を超え、99.5重量%以下である。XIは98.0~99.5重量%であることが好ましい。XIが下限値以下であるとフィルムとしたときの剛性が低下する。本発明においてキシレン不溶分とは、25℃のキシレンに不溶な成分である。XIは公知の方法で求められるが、好ましくは以下の方法を挙げることができる。
i)2.5gのポリマーを撹拌しながら135℃において250mlのキシレンに溶解させる。ii)20分後、溶液を撹拌しながら25℃に冷却し、次いで30分間静置する。
iii)沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥させる。
このようにして25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算する。25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%(100-可溶性のポリマーの重量%、キシレン不溶分量(XI)ともいう。)は、ポリマーのアイソタクチック成分の量と考えられる。沈殿物をメタノールで残留したキシレンを十分に洗い流した後、真空下80℃において乾燥させてキシレン不溶分を採取する。
【0012】
3)キシレン不溶分の立体規則性(mmmm)
前記ポリプロピレンのキシレン不溶分の立体規則性(mmmm)は95.5~99%である。mmmmが下限値以下であるとフィルムとしたときの剛性が低下し、上限値を超えるとフィルムとするときの製膜性が低下する。この観点から、mmmmの下限値は好ましくは96.0%以上であり、上限値は好ましくは98.5%以下である。mmmmは公知の方法で測定されるが、好ましくは以下の方法で測定される。
i)前記の方法でキシレン不溶分を準備する。
ii)1,2,4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に前記不溶分を溶解し、13C共鳴周波数(100MHz)を用いて測定したスペクトルから、プロピレンモノマーのメソ(m)結合シークエンスが4つ連続したペンタッドに相当するピークの強度の割合を、A.Zambelli,Macromolecules,6,925(1973)に記載された方法に従って求める。
【0013】
4)分子量分布(Mw/Mn)
前記ポリプロピレンのGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は7.0~14である。分子量分布が下限値以下であるとフィルムとしたときの剛性またはフィルムとするときの製膜性が低下する。分子量分布が上限値を超えると製膜性が低下する。この観点から、分子量分布の下限値は好ましくは、8.0以上、9.0以上、または10以上であり、上限値は好ましくは12以下である。
【0014】
2.ポリプロピレンの製造方法
前記ポリプロピレンは、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物としてのスクシネート系化合物を含む固体触媒、(b)有機アルミニウム化合物、および必要に応じて(c)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて、対応するモノマーを重合して製造される。
【0015】
(1)固体触媒(成分(a))
内部電子供与体化合物としてスクシネート系化合物を含有する触媒(以下「Suc触媒」ともいう)を用いて重合されたポリマーは、広分子量分布を有しかつ高分子量成分と低分子量成分が均一に分散している。分子量分布は物理量であり測定により決定できる。しかしながらこの測定値では、高分子量成分と低分子量成分の分散度合いを表すことはできない。例えば、パウダーやペレット性状で与えられる高分子量成分と低分子量成分とを押出機等を用いて溶融混練する、あるいはSuc触媒以外の触媒を用いて分子量の異なる成分の多段重合を行うことにより、一見、Suc触媒を用いて重合して得たポリマーと同等の分子量分布(測定値)を有するポリマーを得ることも可能である。しかしこのようにして得たポリマーと、Suc触媒を用いて重合して得たポリマーでは高分子量成分と低分子量成分の分散度合いが異なり、後者は均一な分散度合いが達成されている。その差は、例えば剛性、耐衝撃性、加工性、または外観等の性能において顕著である。
【0016】
成分(a)は、公知の方法、例えばマグネシウム(Mg)化合物とチタン(Ti)化合物と電子供与体化合物を相互接触させることにより調製できる。
【0017】
成分(a)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:Ti(OR)gX4-gで表される4価のチタン化合物が好適である。式中、Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4である。チタン化合物として、より具体的にはTiCl4、TiBr4、TiI4等のテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(On-C4H9)Cl3、Ti(OC2H5)Br3、Ti(OisoC4H9)Br3等のトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2、Ti(On-C4H9)2Cl2、Ti(OC2H5)2Br2等のジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)3Cl、Ti(OC2H5)3Cl、Ti(On-C4H9)3Cl、Ti(OC2H5)3Br等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(On-C4H9)4等のテトラアルコキシチタン等が挙げられる。これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、特にテトラハロゲン化チタンであり、特に好ましいものは、四塩化チタンである。
【0018】
成分(a)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、マグネシウム-炭素結合やマグネシウム-水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライド等が挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状であっても固体状であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n-オクトキシマグネシウム、2-エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウムのようなジアルコキシマグネシウム;エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム、フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム等を挙げることができる。
【0019】
成分(a)の調製に用いられる電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体化合物」と称される。本発明においては、広い分子量分布を与えるスクシネート系化合物から選択される内部電子供与体化合物を用いる。
【0020】
スクシネート系化合物とはコハク酸のジエステルまたは置換コハク酸のジエステルをいう。本発明で好ましく使用されるスクシネート系化合物は、以下の式(I)で表される。
【0021】
【0022】
式中、基R1およびR2は、互いに同一かまたは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C1~C20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり;基R3~R6は、互いに同一かまたは異なり、水素、或いは場合によってはヘテロ原子を含む、C1~C20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり、同じ炭素原子または異なる炭素原子に結合している基R3~R6は一緒に結合して環を形成してもよい。
【0023】
R1およびR2は、好ましくは、C1~C8のアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基である。R1およびR2が第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR1およびR2基の例は、C1~C8のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2-エチルヘキシル基である。エチル、イソブチル、およびネオペンチル基が特に好ましい。
【0024】
式(I)によって示される化合物の好ましい群の1つは、R3~R5が水素であり、R6が、3~10個の炭素原子を有する、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基であるものである。このような単置換スクシネート化合物の好ましい具体例は、ジエチル-sec-ブチルスクシネート、ジエチルテキシルスクシネート、ジエチルシクロプロピルスクシネート、ジエチルノルボニルスクシネート、ジエチルペリヒドロスクシネート、ジエチルトリメチルシリルスクシネート、ジエチルメトキシスクシネート、ジエチル-p-メトキシフェニルスクシネート、ジエチル-p-クロロフェニルスクシネート、ジエチルフェニルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルスクシネート、ジエチルベンジルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル-t-ブチルスクシネート、ジエチルイソブチルスクシネート、ジエチルイソプロピルスクシネート、ジエチルネオペンチルスクシネート、ジエチルイソペンチルスクシネート、ジエチル(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチルフルオレニルスクシネート、1-エトキシカルボジイソブチルフェニルスクシネート、ジイソブチル-sec-ブチルスクシネート、ジイソブチルテキシルスクシネート、ジイソブチルシクロプロピルスクシネート、ジイソブチルノルボニルスクシネート、ジイソブチルペリヒドロスクシネート、ジイソブチルトリメチルシリルスクシネート、ジイソブチルメトキシスクシネート、ジイソブチル-p-メトキシフェニルスクシネート、ジイソブチル-p-クロロフェニルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルスクシネート、ジイソブチルベンジルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル-t-ブチルスクシネート、ジイソブチルイソブチルスクシネート、ジイソブチルイソプロピルスクシネート、ジイソブチルネオペンチルスクシネート、ジイソブチルイソペンチルスクシネート、ジイソブチル(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチルフルオレニルスクシネート、ジネオペンチル-sec-ブチルスクシネート、ジネオペンチルテキシルスクシネート、ジネオペンチルシクロプロピルスクシネート、ジネオペンチルノルボニルスクシネート、ジネオペンチルペリヒドロスクシネート、ジネオペンチルトリメチルシリルスクシネート、ジネオペンチルメトキシスクシネート、ジネオペンチル-p-メトキシフェニルスクシネート、ジネオペンチル-p-クロロフェニルスクシネート、ジネオペンチルフェニルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチルベンジルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル-t-ブチルスクシネート、ジネオペンチルイソブチルスクシネート、ジネオペンチルイソプロピルスクシネート、ジネオペンチルネオペンチルスクシネート、ジネオペンチルイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチルフルオレニルスクシネートである。
【0025】
式(I)の範囲内の化合物の他の好ましい群は、R3~R6からの少なくとも2つの基が、水素とは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C1~C20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基から選択されるものである。水素とは異なる2つの基が同じ炭素原子に結合している化合物が特に好ましい。具体的には、R3およびR4が水素とは異なる基であり、R5およびR6が水素原子である化合物である。このような二置換スクシネートの好ましい具体例は、ジエチル-2,2-ジメチルスクシネート、ジエチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2-ベンジル-2-イソプロピルスクシネート、ジエチル-2-シクロヘキシルメチル-2-イソブチルスクシネート、ジエチル-2-シクロペンチル-2-n-ブチルスクシネート、ジエチル-2、2-ジイソブチルスクシネート、ジエチル-2-シクロヘキシル-2-エチルスクシネート、ジエチル-2-イソプロピル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2-テトラデシル-2-エチルスクシネート、ジエチル-2-イソブチル-2-エチルスクシネート、ジエチル-2-(1-トリフルオロメチルエチル)-2-メチルスクシネート、ジエチル-2-イソペンチル-2-イソブチルスクシネート、ジエチル-2-フェニル-2-n-ブチルスクシネート、ジイソブチル-2,2-ジメチルスクシネート、ジイソブチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-ベンジル-2-イソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2-シクロヘキシルメチル-2-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-シクロペンチル-2-n-ブチルスクシネート、ジイソブチル-2,2-ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-シクロヘキシル-2-エチルスクシネート、ジイソブチル-2-イソプロピル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-テトラデシル-2-エチルスクシネート、ジイソブチル-2-イソブチル-2-エチルスクシネート、ジイソブチル-2-(1-トリフルオロメチルエチル)-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2-イソペンチル-2-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-フェニル-2-n-ブチルスクシネート、ジネオペンチル-2,2-ジメチルスクシネート、ジネオペンチル-2-エチル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2-ベンジル-2-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2-シクロヘキシルメチル-2-イソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-シクロペンチル-2-n-ブチルスクシネート、ジネオペンチル-2,2-ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-シクロヘキシル-2-エチルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソプロピル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2-テトラデシル-2-エチルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソブチル-2-エチルスクシネート、ジネオペンチル-2-(1-トリフルオロメチルエチル)-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソペンチル-2-イソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-フェニル-2-n-ブチルスクシネートである。
【0026】
さらに、水素とは異なる少なくとも2つの基が異なる炭素原子に結合している化合物も特に好ましい。具体的にはR3およびR5が水素と異なる基である化合物である。この場合、R4およびR6は水素原子であってもよいし水素とは異なる基であってもよいが、いずれか一方が水素原子であること(三置換スクシネート)が好ましい。このような化合物の好ましい具体例は、ジエチル-2,3-ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジエチル-2,2-sec-ブチル-3-メチルスクシネート、ジエチル-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルスクシネート、ジエチル-2,3-ビス(2-エチルブチル)スクシネート、ジエチル-2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルジエチル-2,3-ジベンジルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジエチル-2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル-2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソブチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジエチル-2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジエチル-2,3-(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチル-2,3-テトラデシルスクシネート、ジエチル-2,3-フルオレニルスクシネート、ジエチル-2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジエチル-2-tert-ブチル-3-イソプロピルスクシネート、ジエチル-2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジエチル-2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジエチル-2-テトラデシル-3-シクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル-2-シクロヘキシル-3-シクロペンチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジベンジルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル-2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジイソブチル-2,3-(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチル-2,3-テトラデシルスクシネート、ジイソブチル-2,3-フルオレニルスクシネート、ジイソブチル-2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジイソブチル-2-tert-ブチル-3-イソプロピルスクシネート、ジイソブチル-2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル-2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル-2-テトラデシル-3-シクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル-2-シクロヘキシル-3-シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジネオペンチル-2,2-sec-ブチル-3-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ビス(2-エチルブチル)スクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジベンジルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-(1-トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチル-2,3-テトラデシルスクシネート、ジネオペンチル-2,3-フルオレニルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジネオペンチル-2-tert-ブチル-3-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル-2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル-2-テトラデシル-3-シクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル-2-シクロヘキシル-3―シクロペンチルスクシネートである。
【0027】
式(I)の化合物のうち、基R3~R6のうちのいくつかが一緒に結合して環を形成している化合物も好ましく用いることができる。このような化合物として特表2002-542347に挙げられている化合物、例えば、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシアセチル)-2,6-ジメチルシクロヘキサン、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシアセチル)-2,5一ジメチルシクロペンタン、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシアセチルメチル)-2一メチルシクロへキサン、1-(エトキシカルボニル)-1-(エトキシ(シクロヘキシル)アセチル)シクロヘキサンを挙げることができる。他には、例えば国際公開第2009/069483に開示されているような3,6-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル等の環状スクシネート化合物も好適に用いることができる。他の環状スクシネート化合物の例としては、国際公開2009/057747号に開示されている化合物も好ましい。
【0028】
式(I)の化合物のうち、基R3~R6がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は窒素およびリン原子を含む第15族原子あるいは酸素およびイオウ原子を含む第16族原子であることが好ましい。基R3~R6が第15族原子を含む化合物としては、特開2005-306910号に開示される化合物が挙げられる。一方、基R3~R6が第16族原子を含む化合物としては、特開2004-131537号に開示される化合物が挙げられる。
【0029】
(2)有機アルミニウム化合物(成分(b))
成分(b)の有機アルミニウム化合物としては以下が挙げられる。
トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;
トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム:
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシド等のアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
【0030】
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド等のような部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリドのような部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミド等の部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム。
【0031】
(3)電子供与体化合物(成分(c))
必要に応じて、前記触媒は成分(c)として外部電子供与体化合物を含んでもよい。このような化合物としては有機ケイ素化合物が好ましく、具体的には以下の化合物が挙げられる。
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo-トリルジメトキシシラン、ビスm-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン、メチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロペンチル-t-ブトキシジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチル-t-ブトキシジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン-2-イル)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジシクロペンチル-ビス(エチルアミノ)シラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン。t-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルセク-ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2-イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、i-ブチルi-プロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、p-トリルメチルジメトキシシラン
【0032】
中でも、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチルt-ブトキシジメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、i-ブチルセク-ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2-イル)ジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン-2-イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、i-ブチルi-プロピルジメトキシシラン、シクロペンチルt-ブトキシジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi-ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、p-トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(3、3、3-トリフルオロ-n-プロピル)ジメトキシシラン、ケイ酸エチル等が好ましい。
【0033】
(4)重合
上記のとおりに調製した触媒に原料モノマーを接触させて重合する。この際、まず前記触媒を用いて予重合を行うことが好ましい。予重合とは、その後の原料モノマーの本重合の足がかりとなるポリマー鎖を固体触媒成分に形成させる工程である。予重合は公知の方法で行うことができる。予重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。次いで、予重合した触媒(予重合触媒)を重合反応系内に導入して、原料モノマーの本重合を行う。重合は、液相中、気相中または液-気相中で実施してよい。重合温度は常温~150℃が好ましく、40℃~100℃がより好ましい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは0.8~6.0MPaの範囲であり、気相中で行われる場合には好ましくは0.5~3.0MPaの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素またはZnEt2)等の当該分野で公知の慣用の分子量調整剤を用いてもよい。
【0034】
また、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002-520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0035】
3.核剤
ポリプロピレン組成物は前記ポリプロピレン100重量部に対して、0.01~0.2重量部の核剤を含有することが好ましい。核剤を含むことで、得られるフィルムの剛性が向上するが、核剤の量が上限値を超えるとフィルムとするときの製膜性が低下する。この観点から、核剤の量の下限値は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上であり、上限値は、好ましくは0.1重量部以下、より好ましくは0.08重量部以下である。
【0036】
核剤とは、樹脂の結晶化を促進または制御する添加剤である。例えば樹脂中の結晶成分のサイズを小さく制御して透明性を高めるに用いられる透明核剤や、樹脂中の結晶成分の量を増やして剛性を高めるために用いられる剛性核剤等が知られている。本発明においては公知の核剤を使用できる。入手容易性等の観点から、核剤は、ノニトール系核剤、ソルビトール系核剤、リン酸エステル系核剤、トリアミノベンゼン誘導体核剤、カルボン酸金属塩核剤、キシリトール系核剤、およびロジン系核剤から選択されることが好ましく、ノニトール系核剤またはリン酸エステル系核剤であることがより好ましい。
【0037】
ノニトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトール;キシリトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、ビス-1,3:2,4-(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフトアルデヒドベンジリデン)1-アリルキシリトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-プロピルキシリトール;ソルビトール系の構造を有する結晶核剤として、例えば、ビス-1,3:2,4-(4’-エチルベンジリデン)1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’-メチル-4’-フルオロ-ベンジリデン)1-プロピルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1’-メチル-2’-プロペニルソルビトール、ビス-1,3,2,4-ジベンジリデン2’,3’-ジブロモプロピルソルビトール、ビス-1,3,2,4-ジベンジリデン2’-ブロモ-3’-ヒドロキシプロピルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’-ブロモ-4’-エチルベンジリデン)-1-アリルソルビトール、モノ2,4-(3’-ブロモ-4’-エチルベンジリデン)-1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(4’-エチルベンジリデン)1-アリルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-メチルソルビトール、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス-o-(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール等が挙げられる。
【0038】
ノニトール系の市販の結晶核剤として、例えばMillad NX8000(ミリケンジャパン社製)、Millad NX8000J(ミリケンジャパン社製)、Millad NX8000K(ミリケンジャパン社製)、ソルビトール系の市販の結晶核剤として、RiKAFAST R-1(新日本理化社製)、Millad 3988(ミリケンジャパン社製)、ゲルオールE-200(新日本理化社製)、ゲルオールMD(新日本理化社製)等が挙げられる。
【0039】
リン酸エステル系結晶核剤として、リン酸-2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ナトリウム塩、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)アルミニウム塩、リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リチウム塩等が挙げられる。市販のリン酸エステル系結晶核剤として、例えばアデカスタブNA-11(ADEKA社製)、アデカスタブNA-21(ADEKA社製)、アデカスタブNA-71(ADEKA社製)などが挙げられる。
【0040】
トリアミノベンゼン誘導体核剤として、例えば、1,3,5-トリス(2,2-ジメチルプロパンアミド)ベンゼン等が挙げられる。市販のトリアミノベンゼン誘導体結晶核剤として、例えばIRGACLEAR XT386(BASFジャパン社製)、リカクリアPC1(新日本理化株式会社製)などが挙げられる。
【0041】
カルボン酸金属塩核剤として、1,2-シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩等が挙げられる。市販のカルボン酸金属塩核剤として、例えばHyperform HPN-20E(ミリケンジャパン社製)などが挙げられる。
【0042】
キシリトール系核剤としては、例えば、ビス-1,3:2,4-(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフトアルデヒドベンジリデン)1-アリルキシリトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-プロピルキシリトールが挙げられる。
【0043】
ロジン系核剤とは、ロジン酸と、カルシウム、マグネシウム等の金属との反応で得られるロジン酸金属塩化合物またはロジン酸部分金属塩化合物(例えばロジン酸部分カルシウム塩)が挙げられる。前記ロジン酸としては、ピマル酸、サンダラコピマル酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロアビエチン酸、およびテトラヒドロアビエチン酸等が挙げられる。
【0044】
4.その他の添加剤
前記ポリプロピレン組成物は、さらに酸化防止剤、塩素吸収剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物、油展、滑剤、および他の有機および無機顔料等のオレフィン重合体に通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。また、本発明では、前記ポリプロピレンと、核剤のマスターバッチとを混合することができる。マスターバッチのマトリックスポリマーが前記ポリプロピレンと異なる場合、ポリプロピレン組成物は当該マトリックスポリマーを他の成分として含む。
【0045】
前記ポリプロピレン組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、主成分以外の樹脂またはエラストマーを含有してもよい。ポリプロピレン組成物が含有してもよい樹脂またはエラストマーは1種のみでもよいし、2種以上でもよい。含有量は公知の量としてよい。本発明のポリプロピレン組成物の耐衝撃性を改良する目的でエラストマーを配合する場合、ポリプロピレンとの親和性を考慮してエチレンと炭素数が3以上のα-オレフィンとの共重合体を用いることが好ましい。
【0046】
II.フィルム
1.特性
本発明において、フィルムとは膜状材料の総称であり、特に厚さが150μm未満の部材をフィルム、厚さが150μm以上の部材をシートともいう。フィルムは、前記ポリプロピレン組成物を押出成形することで製造できる。このときの成形温度は公知のとおりとしてよいが、シリンダー設定温度を180~250℃とすることが好ましい。前記ポリプロピレン組成物から得られるフィルムは延伸フィルムであり、好ましくは二軸延伸フィルムである。延伸フィルムの厚さは用途によって適宜調製されるが、例えば、好ましくは10~80μm、より好ましくは10~30μm、さらに好ましくは15~25μmである。厚さが下限値未満であると剛性が不足しやすい。剛性が不足すると、食品包装や繊維包装などに用いられるフィルム材料に適さない。厚さが上限値を超えると単純にコスト増となるため、産業上で大量安価に製造する場合においては現実的ではない。
【0047】
(1)剛性
延伸フィルムのMD方向の引張弾性率(JIS K7161)は、好ましくは1800MPa以上、より好ましくは1900MPa以上、さらに好ましくは2100MPa以上である。当該引張弾性率の上限値は限定されないが、剛性が高すぎると製膜性が低下することがあるので、好ましくは2900MPa以下、より好ましくは2700MPa以下である。
【0048】
(2)耐衝撃性
延伸フィルムの23℃での衝撃強度(ASTM-D3420)は、好ましくは25kJ/m以上、より好ましくは30kJ/m以上、さらに好ましくは40kJ/m以上である。
【0049】
(3)用途
延伸フィルムは種々の用途に使用できる。例えば、打抜加工によりフィルムを所望の形状にでき、あるいは真空成形等によりフィルムを容器等へ二次加工できる。延伸フィルムは弁当、麺類、サラダ、惣菜、冷凍食品、氷、氷菓、冷却飲料等の食品容器および蓋等の包装材料として有用である。また、本発明のポリプロピレン組成物は、バイオマス由来樹脂へのブレンド材料として好適である。当該ブレンドは、剛性と延伸性をより高めた延伸フィルムとすることができる。バイオマス由来樹脂としては、バイオポリエチレン、バイオポリプロピレン、バイオポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、PHBP、熱可塑化デンプン等が挙げられる。
【0050】
延伸フィルムには二次加工が施されてもよい。二次加工における温度も限定されないが、140~170℃であることが好ましい。二次加工とは、一次加工成形体である延伸フィルムに加工を施すことをいい、具体的にはコンプレッション成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等を施して別の形状を持った成形体に加工したり、フィルム同士を融着させて接合したりすることをいう。二次加工によって得られた成形体を二次加工成形体ともいう。
【0051】
2.延伸フィルムの製造方法
延伸フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、前記ポリプロピレン組成物からなる未延伸フィルムまたは未延伸シートを調製し、これを公知の方法で延伸して延伸シートを得ることができる。未延伸フィルムまたは未延伸シートは、押出機で溶融した樹脂を冷却ロールで巻き取ることにより製造することができる。溶融押出方法としてはTダイ押出法が好ましい。冷却工程としては水冷、空冷、ロールやベルトなど、広く一般に知られる冷却方法が挙げられるが、溶融樹脂が均一かつ効率的に急冷されることが好ましく、ベルト法(特許4237275号)、スリーブゴムロール法(特許4472018号)、スイングロール法(特許4701067号)などを組み合わせて用いることもできる。押出機中の溶融樹脂温度は200~250℃が好ましく、冷却ロール温度は20~90℃が好ましい。未延伸シートまたはフィルムを延伸する際の成形温度は140~170℃が好ましく、150~165℃がより好ましく、155~160℃がさらに好ましい。
【実施例0052】
以下のようにして重合体を製造した。
[重合体1]
(1)固体触媒成分の調製
特開2011-500907号の実施例に記載の調製法に従い、固体触媒成分を調製した。具体的には以下の通りである:
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl4を0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl2・1.8C2H5OH、および9.1ミリモルのジエチル-2,3-(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。微細球状MgCl2・1.8C2H5OHは、米国特許4,399,054の実施例2に記載の方法にしたがって、しかしながら10000rpmに代えて3000rpmで運転して製造した。温度を100℃に上昇させ、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した:
250mLの新しいTiCl4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
【0053】
(2)重合体1の製造
上記固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が11でありDCPMS/TEALのモル比が0.03となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を、重合反応器に導入して表1に示す条件でプロピレンおよびエチレンを重合し、重合体1を製造した。得られた重合体における、MFR、エチレン由来単位含有量、キシレン不溶分量(XI)、キシレン不溶分の立体規則性(mmmm)、分子量分布(Mw/Mn)を表1に示す(以下、同様)。
【0054】
[重合体2]
重合体1の製造に用いた固体触媒と、TEALと、ジイソプロピルジメトキシシラン(DIPMS)とを、固体触媒に対するTEALの質量比が11であり、DIPMS/TEALのモル比が0.20となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を、重合反応器に導入して表1に示す条件でプロピレンを重合し、重合体2を製造した。
【0055】
[重合体3]
二段からなる重合反応器を用いて表1に示す条件で多段重合法を行った。一段目の重合反応器に重合体2の製造に用いた予重合物、プロピレンおよび水素を供給して重合体を調製した。得られた重合体を二段目の反応器に移送し、プロピレンおよび水素を供給して重合を行い、MFRの異なる重合体からなる重合体3を得た。
【0056】
[重合体4]
水素濃度を表1に示す値に変更した以外は、重合体2の場合と同様の製造方法にて、重合体4を得た。
【0057】
[重合体5]
表1に示す条件でプロピレンおよびエチレンを重合した以外は、重合体2と同様にして重合体5を製造した。
【0058】
[重合体6]
表1に示す条件でプロピレンおよびエチレンを重合した以外は、重合体2と同様にして重合体6を製造した。
【0059】
[重合体7]
(1)固体触媒成分の調製
欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により固体触媒成分を調製した。該固体触媒は、MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。なお、内部電子供与体化合物としてフタレート系化合物を含有する触媒を「Pht触媒」ともいう。
【0060】
(2)重合体7の製造
上記で得られた固体触媒と、TEALおよびシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMMS)を、固体触媒に対するTEALの重量比が8であり、CHMMS/TEALのモル比が0.02となるような量で、-5℃において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を、重合反応器に導入して表1に示す条件でプロピレンを重合し、重合体7を製造した。
【0061】
[重合体8]
重合体7の製造に用いた固体触媒と、TEALと、DIPMSとを、固体触媒に対するTEALの重量比が11であり、DIPMS/TEALのモル比が0.20となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予重合を行った。得られた予重合物を、重合反応器に導入して表1に示す条件でプロピレンを重合し、重合体8を製造した。
【0062】
[重合体9]
表1に示す条件でプロピレンおよびエチレンを重合した以外は、重合体7と同様にして重合体9を製造した。
【0063】
[実施例1]
重合体1を基準として、核剤1(株式会社ADEKA製アデカスタブ NA-11(リン酸エステル系核剤))を0.05重量%、酸化防止剤(BASFジャパン社製B225)を0.2重量%、ならびに中和剤(カルシウムステアレート)を0.05重量%添加し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌、混合した。ナカタニ機械株式会社製NVCφ50mm単軸押出機を用いてシリンダー温度230℃で当該混合物を押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状のポリプロピレン組成物を得た。得られたポリプロピレン組成物から、後述する方法によって二軸延伸フィルムを製造し、評価した。
【0064】
[実施例2、3]
重合体1の代わりに重合体2および3を用い、かつ核剤1の量を表2に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法でそれぞれ二軸延伸フィルムを製造し、評価した。
【0065】
[実施例4]
重合体1の代わりに重合体4を用い、かつ核剤を用いなかった以外は、実施例1と同じ方法で二軸延伸フィルムを製造し、評価した。
【0066】
[実施例5、6]
表2に示す量の核剤を用いた以外は、実施例4と同じ方法で二軸延伸フィルムを製造し、評価した。実施例5では核剤1(株式会社ADEKA製アデカスタブ NA-11(リン酸エステル系核剤))を、実施例6では核剤2(ミリケンジャパン社製 NX8000J(ノニトール系核剤))を用いた。
【0067】
[実施例7]
重合体1の代わりに重合体5を用い、かつ核剤を用いなかった以外は、実施例1と同じ方法で二軸延伸フィルムを製造し、評価した。
【0068】
[実施例8]
表2に示す量の核剤2を用いた以外は、実施例7と同じ方法で二軸延伸フィルムを製造し、評価した。
【0069】
[実施例9]
重合体1の代わりに重合体6を用い、かつ核剤を用いなかった以外は、実施例1と同じ方法で二軸延伸フィルムを製造し、評価した。
【0070】
[実施例10]
表2に示す量の核剤2を用いた以外は、実施例9と同じ方法で二軸延伸フィルムを製造し、評価した。
【0071】
[比較例1~3]
表2に示す重合体と核剤(種類および量)を用いた以外は、実施例1と同じ方法で二軸延伸フィルムを製造し、評価した。
【0072】
【0073】
【0074】
[MFR]
JIS K6921-2に基づき温度230℃および荷重2.16kgの条件下で測定した。重合体のMFR測定は、試料5gに対し、本州化学工業株式会社製H-BHTを0.05g添加し、ドライブレンドにより均一化した後に行った。
【0075】
[キシレン不溶分]
2.5gのポリマーを攪拌しながら135℃において250mlのキシレンに溶解させた。20分後、溶液を撹拌しながら25℃に冷却し、次いで30分間静止させた。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥させた。このようにして25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算した。25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%(100-可溶性のポリマーの重量%、キシレン不溶分量(XI)ともいう。)は、ポリマーのアイソタクチック成分の量と考えられる。キシレン不溶分は、沈殿物をメタノールで残留したキシレンを十分に洗い流した後、真空下80℃において乾燥させて採取する。
【0076】
[エチレン含有量(C2)]
1,2,4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子社製JNM LA-400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、13C-NMR法で測定した値から算出した。
【0077】
[二軸延伸フィルムの製造]
原反シートの作製:サーモプラスティックス工業社製3種3層フィルム成形機(φ25mm×3)を用い、シリンダーおよびダイ温度250℃でTダイより押し出された溶融樹脂膜を30℃に温度調節した金属ロールとエアーナイフエアーで冷却し、0.6m/毎分の速度で引取ることで幅約230mm、厚さ800μmの原反シートを得た。
二軸延伸フィルムの作製:原反シートの幅方向の中央部より、縦100mm、横100mmの延伸用シートを切り出し、ブルックナー社製KARO IVの試料取り付け部にセットし、エアチャックで試料把持部を把持した。装置の延伸区間にて150~165℃で60秒間予熱した後、MD方向(機械軸方向)に5倍延伸し、続いてTD方向(機械軸と直角方向)に9倍延伸した。延伸状態を保持したまま、延伸緩和区間に移動100℃で30秒間徐熱および応力緩和を行った後、試料を試料セット位置まで戻しエアチャックを開放し延伸されたフィルムを取り出し試料を得た。
【0078】
[二軸延伸フィルムの引張弾性率]
JIS K7161に基づき、延伸フィルムの中央部から切り出した試料を、TSE社製テンシロンAuto comで引張速度5mm/毎分の速度で引張り、応力-ひずみ曲線を得た。当該曲線のゼロ点から接線を引き、伸度2%時の荷重を試料の断面積で除した値(×100)を引張弾性率とした。試験は23℃で行い、引張方向がフィルムのMD方向と平行になるようにした。
【0079】
[耐衝撃性]
ASTM-D3420に基づき延伸フィルムの中央部よりTD方向に幅100mm、長さ550mmのサンプルを切り出した。当該サンプルについて、東洋精機製作所製恒温槽付きインパクトテスターを用いて衝撃強度を測定し、得られた値を試料の厚さで除しフィルム衝撃強度を算出した。
【0080】
[厚薄精度]
延伸フィルムから幅80mm、長さ550mmの大きさのサンプルを3枚切り出した。山文電気製連続厚み計で試料の厚さを1mm間隔で測定し3枚の連続厚さの平均値、最大、最小値、および標準偏差(σ)を算出し、厚薄精度の指標とした。
【0081】
[製膜性]
得られたフィルムを目視にて確認し、以下の基準で評価した。
1:均一なフィルムである
2:フィルムに破れはないが不均一である
3:フィルムに破れがある
【0082】
本発明のポリプロピレン組成物は、製膜性に優れ、かつ剛性に優れた延伸フィルムを与えることができる。