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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157211
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】EGRクーラ
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/35 20160101AFI20221006BHJP
   F02M 26/50 20160101ALI20221006BHJP
   F02M 26/30 20160101ALI20221006BHJP
   F02M 26/22 20160101ALI20221006BHJP
   F28F 23/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F02M26/35 A
F02M26/50 321
F02M26/30
F02M26/22
F28F23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061310
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000113942
【氏名又は名称】マルヤス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】榊原 康文
【テーマコード(参考)】
3G062
【Fターム(参考)】
3G062CA01
3G062ED08
3G062ED10
3G062GA08
(57)【要約】
【課題】短時間でEGRシステムを始動可能なEGRクーラを提供することにある。
【解決手段】EGRクーラ1は、ヘッドブロックの排気側と吸気側とを接続するEGR流路に設けられ、アウターケース2内部に、EGR流路を流れる排気が流通する第1流路8と、排気との間で熱交換を行う冷却水が流通する第2流路9とを備え、第2流路9に、相変化によって発熱する酢酸ナトリウム三水和物を貯蔵するための貯蔵タンク10が設けられ、貯蔵タンク10に貯蔵された酢酸ナトリウム三水和物の相変化を促す超音波晶析装置が設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃焼機関の排気側と吸気側とを接続する排気再循環路に設けられ、アウターケース内部に、前記排気再循環路を流れる第1流体が流通する第1流路と、前記第1流体との間で熱交換を行う第2流体が流通する第2流路とを備えるEGRクーラであって、
前記第2流路に、相変化に伴って発熱する潜熱蓄熱材を貯蔵するための貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクに貯蔵された前記潜熱蓄熱材の相変化を促す相変化手段とが設けられることを特徴とするEGRクーラ。
【請求項2】
前記貯蔵タンクは、前記第1流路と離間して設けられることを特徴とする請求項1に記載のEGRクーラ。
【請求項3】
前記貯蔵タンクは、外面に凹部及び凸部の少なくとも何れかが1つ以上形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のEGRクーラ。
【請求項4】
前記貯蔵タンクは、前記潜熱蓄熱材を充填及び排出する充填孔及び排出孔を備え、
前記充填孔及び前記排出孔は、前記アウターケースの外部に延びることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のEGRクーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃焼機関のEGR流路に設けられるEGRクーラに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃焼機関の排気の一部を吸気側へ再循環する排気再循環(EGR,Exhaust Gas Recirculation)システムにおいて、再循環する排気(EGRガス)を冷却するため、内燃焼機関の排気路から分岐して吸気路へ繋がるEGR流路にEGRクーラを設置することがある。EGRクーラは、内燃焼機関の冷却媒体とEGRガスとの間で熱交換を行う熱交換器として構成される。EGRシステムの導入は、燃費改善やNOx低減による排気ガス規制対応等に効果的と言える。
一方、低温環境下等の理由から冷却媒体が低温の時には、EGRガスと冷却媒体との熱交換時に、EGRクーラ内でEGRガス内の水分の凝縮が発生することがある。凝縮水の発生は、EGRクーラやEGR流路等の金属部品の腐食原因、EGR流路を介した内燃焼機関各部(例えばインテークマニホールド等)への凝縮水流入による内燃焼機関の失火原因等になり得る。そのため、現状、EGRクーラの冷却媒体温度が規定温度以上であることがEGRシステムの始動条件の1つとなっている。これにより、内燃焼機関の始動から冷却媒体が規定温度まで昇温する間は、EGRシステムを活用することができなかった。
一方、凝縮水の発生を防止する技術として、例えば、特許文献1には、EGRクーラに供給される冷却水を、EGRクーラへの供給前に排気熱回収器で温めると共に、各種センサによる各部の温度等の計測とEGRクーラへの冷却水の供給量の調節とにより、EGRクーラの適切な温度調整を行い、凝縮水の発生を防止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-76369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、EGRクーラに供給される冷却水を排気熱により加熱することで、凝縮水の発生を防止しているが、排気による冷却水の昇温が必要であるため、内燃焼機関の始動から冷却水の昇温までに一定時間が必要であり、凝縮水の発生防止のためにより効率的な技術が望まれている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、短時間でEGRシステムを始動可能なEGRクーラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、内燃焼機関の排気側と吸気側とを接続する排気再循環路に設けられ、アウターケース内部に、排気再循環路を流れる第1流体が流通する第1流路と、第1流体との間で熱交換を行う第2流体が流通する第2流路とを備えるEGRクーラであって、第2流路に、相変化によって発熱する潜熱蓄熱材を貯蔵するための貯蔵タンクと、貯蔵タンクに貯蔵された潜熱蓄熱材の相変化を促す相変化手段とが設けられることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、貯蔵タンクは、第1流路と離間して設けられることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、貯蔵タンクは、外面に凹部及び凸部の少なくとも何れかが1つ以上形成されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、貯蔵タンクは、潜熱蓄熱材を充填及び排出する充填孔及び排出孔を備え、充填孔及び排出孔は、アウターケースの外部に延びることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、内燃焼機関の始動と共に、潜熱蓄熱材に、相変化手段による強制的な相変化を促して発熱させることで、貯蔵タンクと接する第2流路内部の第2流体を昇温できると共に、この間にEGRクーラ外部の第2流体は内燃焼機関の発熱により昇温されるため、より短時間で第2流体の昇温が可能となる。これにより、EGRシステムの始動までの時間を短縮できる。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加え、第1流路を流通する第1流体の熱の貯蔵タンクへの直接的な伝熱を防止できる。これにより、第1流体の温度に起因する潜熱蓄熱材の熱劣化を防止することができる。
請求項3に記載の発明によれば、上記効果に加え、貯蔵タンクと第2流路との接触面積が増加するため、潜熱蓄熱材の発熱の第2流体への伝熱効率を向上させることができる。また、貯蔵タンクの剛性を低下させることができるため、潜熱蓄熱材の相変化に伴う体積変化に貯蔵タンクが追従し、貯蔵タンク内における負圧の発生を抑制できることから、負圧による貯蔵タンク内への空気の侵入等を防止できる。
請求項4に記載の発明によれば、上記効果に加え、アウターケース外部まで充填孔及び排出孔が延びることで、EGRクーラのEGR流路への組み付け後にも、容易に潜熱蓄熱材の補充、入れ替えが行える。また、充填孔及び排出孔を介することで、EGRクーラ外部のスペースを利用して、種々の相変化手段等を取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】EGRクーラを示す説明図であって、(a)は正面図、(b)は背面図である。
図2】EGRクーラを示す右側面図である。
図3】EGRクーラのアウターケース前面を取り外した状態を示す分解説明図である。
図4】EGRクーラを示す説明図であって、(a)は図1のA-A線断面図、(b)は図2のB-B線断面図である。
図5】超音波晶析装置を取り付けた状態のEGRクーラを示す説明図であって、(a)は正面図、(b)は右側面図である。
図6】超音波晶析装置を取り付けた状態のEGRクーラを示す説明図であって、図5(b)のC-C線断面図である。
図7】内燃焼機関におけるEGRシステムに関連する部分を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のEGRクーラの実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、EGRクーラを示す説明図であって、(a)は正面図、(b)は背面図である。図2は、EGRクーラを示す右側面図である。
なお、説明の簡単のため、以下、図1(a)における紙面側を前、紙面左側を左、紙面右側を右、紙面上側を上、紙面下側を下として説明する。
EGRクーラ1は、エンジン等の内燃焼機関E(図7)に設けられる排気再循環路としてのEGR流路18(図7)に配置される。EGRクーラ1は、図1(a)に示すように、アウターケース2と、アウターケース2の正面左上に、第2流体としての冷却水の排出孔3が設けられている。アウターケース2の背面右下には、図1(b)に示すように、冷却水の導入孔4が設けられている。アウターケース2の上面には、貯蔵タンク10(図3)への潜熱蓄熱材の充填及び排出を行うための充填孔5及び排出孔6が上方に向けて突出している。後述のように、本発明のEGRクーラ1は、貯蔵タンク10に充填された潜熱蓄熱材の相変化により生じる発熱を利用する。
【0010】
また、図2に示すように、アウターケース2の両側面は開放されており、両側面は、EGR流路18(図7)と接続するための接続部7として機能する。アウターケース2の内部には、第1流体である内燃焼機関Eの排気が流通する第1流路8が設けられている。第1流路8には、左右に延びる多数のフィンFが設けられ、これにより、排気と冷却水との間の熱交換効率が向上できる。
【0011】
図3は、EGRクーラのアウターケース前面を取り外した状態を示す分解説明図である。図4は、EGRクーラを示す説明図であって、(a)は図1のA-A線断面図、(b)は図2のB-B線断面図である。
アウターケース2の内部には、第1流路8に加え、図3,4に示すように、潜熱蓄熱材を貯蔵するための貯蔵タンク10が設けられている。また、図4(a)に示すように、第1流路8及び貯蔵タンク10と、アウターケース2との間は、冷却水が流通するための第2流路9として機能する。
貯蔵タンク10は、前面及び背面に、凹部として左右方向へ延びる凹状のリブ11が複数形成されている。また、貯蔵タンク10の上面には、アウターケース2の外部まで延びる充填孔5及び排出孔6が延設されている。貯蔵タンク10と充填孔5及び排出孔6との連結部には、凸部として上方に向けて突出するリブ12が形成されている。
リブ11,12を設けることで、貯蔵タンク10と第2流路9との接触面積が増加するため、潜熱蓄熱材の発熱の第2流体9への伝熱効率を向上させることができる。また、貯蔵タンク10の剛性が低下させることができるため、潜熱蓄熱材の相変化に伴う体積変化に貯蔵タンク10が追従し、貯蔵タンク10内における負圧の発生を抑制できることから、負圧による貯蔵タンク10内への空気の侵入等を防止できる。さらに、充填孔5及び排出孔6との連結部にリブ12を設ける事で、潜熱蓄熱材の体積変化に貯蔵タンク10が追従し、貯蔵タンク10内における負圧の発生を防止できると共に、潜熱蓄熱材の充填時に、貯蔵タンク10に空気が残留することを防止できる。
【0012】
貯蔵タンク10は、アウターケース2の内部において、4本のステー13によって第1流路8と離間して固定される。ステー13自身は、アウターケース2の両側面において第2流路9を塞ぐキャップ14に固定されている。よって、第1流路8を流通する排気の熱の貯蔵タンク10への直接的な伝熱を防止できる。これにより、排気の温度に起因する潜熱蓄熱材の熱劣化を防止することができる。
また、ステー13には、曲げ点13aが形成され、キャップ14の両側面方向の第2流路9を塞いでいる平板部分には、図示しない曲げ点及びリブが形成されている。このように、排気の熱が伝熱しやすいステー13及びキャップ14に曲げ点及びリブを形成することにより、ステー13及びキャップ14に生じる熱応力を分散させることができるため、熱応力により貯蔵タンク10が受ける機械的ストレスを低減させることができる。
【0013】
図5は、超音波晶析装置を取り付けた状態のEGRクーラを示す説明図であって、(a)は正面図、(b)は右側面図である。図6は、超音波晶析装置を取り付けた状態のEGRクーラを示す説明図であって、図5(b)のC-C線断面図である。
EGRクーラ1は、貯蔵タンク10へ潜熱蓄熱材を充填した後、図5,6に示すように、貯蔵タンク10の充填孔5に相変化手段としての超音波晶析装置15が取り付けられる。一方、排出孔6には、栓Sが取り付けられ、貯蔵タンク10は封止される。なお、超音波晶析装置15が、排出孔6に取り付けられ、蓋Sが、充填孔5に取り付けられても良い。貯蔵タンク10内部に向けて延びる振動部15aは、超音波振動運動が可能であり、当該超音波振動運動によって、強制的に潜熱蓄熱材の相変化を促進させる。
本実施例のEGRクーラ1では、貯蔵タンク10に充填する潜熱蓄熱材として、酢酸ナトリウム三水和物を使用する。常温において過冷却状態の液相である酢酸ナトリウム三水和物に、超音波振動装置15を用いて超音波振動運動による刺激を与えて、酢酸ナトリウム三水和物の液相から固相への相変化を促し、発生する凝固熱を利用することで、第2流路9内の冷却水を昇温させることができる。
【0014】
続いて、上記のようなEGRクーラ1を用いた内燃焼機関の一例を示す。
図7は、内燃焼機関におけるEGRシステムに関連する部分を示す説明図である。
内燃焼機関Eは、図7に示すように、図示しないシリンダヘッドが収まるヘッドブロック16と、排気流路17aによってヘッドブロック16の排気側に接続する触媒Cと、さらに触媒Cから下流へ延びる排気流路17bとを備える。排気流路17bは、EGR流路18に分岐し、EGR流路18の途中にEGRクーラ1が配置される。EGR流路18は、EGRクーラ1の接続部7に接続される。また、EGRクーラ1から延びるEGR流路18の下流側は、途中にEGRバルブ19が設けられ、さらに下流でヘッドブロック16の吸気側に接続される。これにより、ヘッドブロック16からの排気が循環可能即ちEGRシステムを利用可能な流路となる。なお、EGRバルブ19は、冷却水路21dに冷却水が流通することにより解放され、EGR流路18に排気が流通可能となる。
【0015】
また、内燃焼機関Eでは、冷却水がヘッドブロック16及びEGRクーラ1を循環する。ポンプ20とヘッドブロック16とが、冷却水路21aによって接続され、ヘッドブロック16とEGRクーラ1とが、冷却水路21bによって接続される。冷却水路21bには、サーモスタットを備えるフロートコントローラバルブ22が設けられており、フロートコントローラバルブ22において冷却水路21bは、EGRクーラ1まで延びる冷却水路21cと、ポンプ20へ冷却水を返送するバイパス流路23とに分岐している。フローコントローラバルブ22は、サーモスタッドにより、冷却水路21bを流通する冷却水が、65℃前後の所定温度以下の場合は、EGRクーラ1への流路を閉じ、バイパス流路23に冷却水を誘導する。一方、冷却水路21bを流通する冷却水が所定温度より高い場合は、バイパス流路23への流路を閉じ、冷却水路21cに冷却水を誘導する。
一方、EGRクーラ1の下流には、冷却水路21dが設けられ、冷却水路21dは、バイパス流路23に接続する。これにより、ポンプ20からの冷却水がヘッドブロック16及びEGRクーラ1を介して循環可能な流路となる。また、冷却水路21dは、EGRクーラ1とバイパス流路23への接続点との間で、EGRバルブ19に接続している。
【0016】
続いて、EGRシステム即ちEGR流路18を介した排気の循環について説明する。
内燃焼機関Eの始動と共に、EGRクーラ1に取り付けられた超音波振動装置15が始動し、貯蔵タンク10内の酢酸ナトリウム三水和物の相変化を促し、その凝固熱を利用して貯蔵タンク10と接する第2流路9の冷却水の温度を昇温させる。また、内燃焼機関Eの始動時には、EGRクーラ1へ流入しようとするヘッドブロック16からの冷却水は所定温度以下であるため、冷却水は、フローコントローラバルブ22によりバイパス流路23へ誘導される。そのため、第2流路9内部の冷却水を昇温している間、バイパス流路23を循環する冷却水は、ヘッドブロック16の発熱により昇温される。
バイパス流路23を循環する冷却水が所定温度まで昇温されると、フローコントローラバルブ22は、冷却水路21bの接続先をバイパス流路23から冷却水路21cに切り替える。これにより、EGRクーラ1内の第2流路9にヘッドブロック16から流出する昇温された冷却水が流通することとなる。EGRクーラ1に冷却水が流通したことにより、EGRバルブ19が解放され、冷却水はヘッドブロック16及びEGRクーラ1を介して循環する。また、EGRバルブ19が解放されたことにより、EGR流路18が解放されるため、排気の循環が可能となる。即ち、EGRシステムが始動する。
このように、内燃焼機関Eの始動と共に、酢酸ナトリウム三水和物に、超音波晶析装置15による強制的な相変化を促して凝固熱を発生させることで、貯蔵タンク10と接する第2流路9内部の冷却水を昇温でき、この間に、バイパス流路23を循環するEGRクーラ1外部の冷却水がヘッドブロック16の発熱により昇温されるため、より短時間で冷却水の昇温が可能となる。これにより、EGRシステムの始動までの時間を短縮できる。
【0017】
上記形態のEGRクーラ1は、ヘッドブロック16の排気側と吸気側とを接続するEGR流路18に設けられ、アウターケース2内部に、EGR流路18を流れる排気が流通する第1流路8と、排気との間で熱交換を行う冷却水が流通する第2流路9とを備え、第2流路9に、相変化によって発熱する酢酸ナトリウム三水和物を貯蔵するための貯蔵タンク10が設けられ、貯蔵タンク10に貯蔵された酢酸ナトリウム三水和物の相変化を促す超音波晶析装置15が設けられる。
このようにして構成されるEGRクーラ1によれば、内燃焼機関Eの始動と共に、酢酸ナトリウム三水和物に、超音波晶析装置15による強制的に相変化を促して凝固熱を発生させることで、貯蔵タンク10と接する第2流路9内部の冷却水を昇温できると共に、この間に、バイパス流路23を循環するEGRクーラ1外部の冷却水はヘッドブロック16の発熱により昇温されるため、より短時間で冷却水の昇温が可能となる。これにより、EGRシステムの始動までの時間を短縮できる。
【0018】
また、貯蔵タンク10は、第1流路8と離間して設けられる。
よって、第1流路8を流通する排気の熱の貯蔵タンク10への直接的な伝熱を防止できる。これにより、排気の温度に起因する酢酸ナトリウム三水和物の熱劣化を防止することができる。
【0019】
また、貯蔵タンク10は、外面に凹部及び凸部としての複数のリブ11,12が形成される。
よって、貯蔵タンク10と第2流路9との接触面積が増加するため、酢酸ナトリウム三水和物の発熱の冷却水への伝熱効率を向上させることができる。また、貯蔵タンク10の剛性を低下させることができるため、酢酸ナトリウム三水和物の相変化に伴う体積変化に貯蔵タンク10が追従し、貯蔵タンク10内における負圧の発生を抑制できることから、負圧による貯蔵タンク10内への空気の侵入等を防止できる。
【0020】
また、貯蔵タンク10は、酢酸ナトリウム三水和物を充填及び排出する充填孔5及び排出孔6を備え、充填孔5及び排出孔6は、アウターケース2の外部に延びる。
よって、アウターケース2の外部まで充填孔5及び排出孔6が延びることで、EGRクーラ1のEGR流路18への組み付け後にも、容易に酢酸ナトリウム三水和物の補充、入れ替えが行える。また、充填孔5及び排出孔6を介することで、EGRクーラ1外部のスペースを利用して、超音波晶析装置15等を取り付けることが可能である。
【0021】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、EGRクーラは、内燃焼機関の排気再循環路に配置されていればよく、排気再循環路自体の流路設計及び接続先は、限定されない。
また、第1流路及び第2流路は、それらの間で熱交換が可能であればその構造、設置数、接続先等は任意に設定可能である。
また、潜熱蓄熱材は、相変化に伴って発熱するものであればよく、酢酸ナトリウム三水和物に限定されず、例えば、ミョウバン、硫酸ナトリウム等を適用しても良い。
また、貯蔵タンクの凸部及び凹部は、その形状、形成箇所、形成数を任意に設定可能である。
また、充填孔及び排出孔は、アウターケース外部に延びていれば良く、アウターケース上部から突出することに限定されない。例えば、アウターケースの側面から延びていても良い。
また、充填孔及び排出孔に取り付けられる装置は、相変化手段以外にも、温度センサ等であっても良い。
また、相変化手段は、潜熱蓄熱材の相変化を促進できればよく、超音波晶析装置以外にも、機械的及び電気的刺激を与えるものであれば公知の手段を利用できる。添加剤によって相変化を促すものであってもよい。
また、EGRクーラを構成する各部の材質は、限定されない。
また、EGRシステムを構成する流路構成、及び接続先は、EGRシステムとして使用可能であれば任意に設計可能である。
【符号の説明】
【0022】
1・・EGRクーラ、2・・アウターケース、5・・充填孔、6・・排出孔、8・・第1流路、9・・第2流路、10・・貯蔵タンク、11・・リブ(凹部)、12・・リブ(凸部、15・・超音波晶析装置(相変化手段)、18・・EGR流路、E・・内燃焼機関。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7