(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157223
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】抗ガン剤効果増強剤
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20221006BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221006BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20221006BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20221006BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20221006BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20221006BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221006BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221006BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221006BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/506
A61K31/551
A61K31/497
A61K31/5377
A61K39/395
A61P35/00
A61K39/395 Y
A61K35/17 Z
A61K47/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061328
(22)【出願日】2021-03-31
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲▲瀬▼ 安希
(72)【発明者】
【氏名】松岡 広
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C084AA19
4C084AA20
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC20
4C084ZC75
4C085AA14
4C085AA22
4C085AA23
4C085AA26
4C085AA27
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC50
4C086BC55
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZC20
4C087ZC75
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、抗ガン剤が直面する種々の薬剤耐性を、少ない薬剤の併用により克服することを目的とする。
【解決手段】GSK3阻害剤を含有する、抗ガン剤効果増強剤を提供すること、GSK3阻害剤が投与された患者、或いは投与される状態の患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤を提供すること、又は上記抗ガン剤効果増強剤と上記抗ガン剤を含有するキットを提供すること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GSK3阻害剤を含有する、抗ガン剤効果増強剤。
【請求項2】
前記GSK3阻害剤が、CHIR99021、LY2090314、AZD2858、BIO、AZD1080、CHIR98014、SB216763、BIO-acetoxime、SB415286、Alsterpaullone、及びA1070722からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【請求項3】
前記抗ガン剤が、抗体含有抗ガン剤又は低分子化合物抗ガン剤である、請求項1又は2に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【請求項4】
前記抗体含有抗ガン剤が、抗体薬物複合体である、請求項3に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【請求項5】
前記抗体薬物複合体に含有される薬物が、エンジイン系薬物(エスペラマイシン、カリケアマイシン、ダイネミシン等)、アウリスタチン系薬物(auristatin F-HPA、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF等)、カンプトテシン系薬物(SN38、イリノテカン、DX-8951、Dxd(デルクステカン)等)、メイタンシン系薬物(メイタンシン、エムタンシン等)、ピロールペンゾジアゼピン系薬物(タリリン、テシリン等)、アントラサイクリン系薬物(ドキソルビシン、ダウノルビシン等)、デュオカルマイシン系薬物(デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、アドゼレシン等)、ハリコンドリン系薬物(エリブリン等)、毒素系薬物(PE38等)及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【請求項6】
前記抗体薬物複合体に含有される抗体と薬物とが、ヒドラゾンリンカー、マレイミドリンカー、チオエーテルリンカー、ペプチドリンカー、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一種を介して結合している、請求項4又は5に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【請求項7】
前記抗体含有抗ガン剤が、キメラ抗原受容体を含有する細胞である、請求項3に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【請求項8】
前記抗体が、CD33、CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16からなる群より選択される少なくとも一種を抗原とする、請求項3~7の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤。
【請求項9】
前記抗体が、二重特異性抗体である、請求項3~8の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤。
【請求項10】
前記低分子化合物抗ガン剤が、抗生物質(DNR、ドキソルビシン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン等)、微小管阻害薬(ビンクリスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、エリブリン等)、白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等)、トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン、ノギテカン、エトポシド等)、サリドマイド関連薬(サリドマイド、レナリミド等)、代謝拮抗薬(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド等)、及び小分子化合物(イマチニブ、レンバチニブ、エベロリムス等)からなる群より選択される少なくとも一種の低分子化合物である、請求項3に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【請求項11】
GSK3阻害剤が投与された患者、又は投与される状態の患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【請求項12】
請求項11に記載する抗ガン剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞におけるリソソームの活性が低い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【請求項13】
請求項11又は12に記載する抗ガン剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞中のBcl-2、Mcl-1、Bcl-xL、Bcl-w、Bcl-B、及びA1からなる群より選択される少なくとも1種の抗アポトーシス遺伝子の発現量が高い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【請求項14】
請求項11~13の何れかに記載する抗ガン剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞におけるABCA2、ABCA3、ABCB1、ABCB2、ABCB5、ABCC1、ABCC2、ABCC3、ABCC4、ABCC5、ABCC6、及びABCG2からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤排出遺伝子の発現量が高い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【請求項15】
請求項1~10の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤と、請求項11~14の何れかに記載する抗ガン剤とを含有する、ガン治療及び/又は予防の為に使用されるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GSK3阻害剤を含有する、抗ガン剤効果増強剤に関する。また、本発明は、GSK3阻害剤が投与された患者、又は投与される状態の患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤に関する。そして、本発明は、上記抗ガン剤効果増強剤及び上記抗ガン剤を含有するガン治療及び/又は予防の為に使用されるキットに関する。
【背景技術】
【0002】
国立がん研究センターがん情報サービス「2020年のがん統計予測」によると、我が国における2020年のガンの罹患予測として、大腸ガンが17%程度、胃ガンが15%程度、肺ガンが14%程度、乳ガンが10%程度、前立腺ガンが10%程度、膵臓ガンが5%程度、肝臓ガンが4%程度、悪性リンパ腫が4%程度、子宮ガンが3%程度、食道ガンが3%程度、胆のう・胆管ガンが2%程度、甲状腺ガンが2%程度、白血病が2%程度、卵巣ガンが1%程度、そして、他のガンが8%程度とされている。白血病の中でも、急性骨髄性白血病(AML)は、10万人に4~5人の割合で罹患することが知られている。米国における2020年のガンの罹患予測として、白血病は、ガンの中でも3.4%程度で罹患することが想定され、その中でAMLは、32.9%であることが報告されている。
【0003】
AMLとは、白血病の中で最も罹患率が高く、AMLの10%に相当する急性前骨髄球性白血病には、有効な治療薬が存在し、5年生存率は約80%であることが知られている。しかしながら、その他の病型では5年生存率は約30%程度で、予後不良であり、高齢者の罹患率が高いことが知られている。
【0004】
現在開発中のAML治療剤として、例えば、CD33を抗原とする抗体であって、これに細胞殺傷能を有する薬剤が担持されるものも含有する、ゲムツズマブオゾガマイシン(GO)、SCB-CD33A、及びAMG-330等;FLT3阻害剤である、Midostaurin、Quizartinib、Crenolanib、及びGiltertinib等;KIT阻害剤である、Enasidenib、Ivosidenib、BAY1436032、及びFT-2102等;BCL2阻害剤である、Venetoclax等;DNMT阻害剤である、Azacytidine、Decitabine、及びGuadecitabine等;DOT1L阻害剤として、Pinometostat等、BET阻害剤として、OTX-015、GSK525762、CPI-0610、及びTEN-010等が知られている。
【0005】
この中で、抗CD33抗体を含有する抗体薬物複合体(ADC)であるGOは、強い殺細胞効果を有するカリケアマイシン誘導体であるオゾガマイシンを結合させた分子標的薬であり、我が国では、2005年に再発・難治性AMLに対する治療薬として承認された。
【0006】
GOの代表的な作用機序は、[1]抗CD33抗体により、CD33抗原に結合すること、[2]当該抗原を有する細胞への内在化すること、[3]当該細胞内のリソソーム内での抗CD33抗体とオソガマイシンとの結合を介するリンカーの分解されること、[4]オゾガマイシンがGSHによって活性化されること、そして[5]前記細胞核内のDNA鎖が切断されることである。しかしながら、GOの投与によるAMLの完全寛解は、約30%弱程度に留まっている。
【0007】
このようなGOの低い完全寛解率は、何らかの薬剤耐性が理由であると考えられ、例えば、(1)リソソーム機能が低下(リソソーム量が低下)していること、(2)標的抗原の発現量の低下していること、(3)BCL-2に代表される抗アポトーシス因子の発現量が上昇していること、及び(4)MDR-1に代表される多剤耐性因子の発現量が上昇していることが考えられる。
【0008】
(1)リソソーム機能の低下に関して、例えば、AML症例の60%に、PIK3-AKT-mTOR経路の活性化が認められ、リソソームに存在するmTORC1は、その生合成を担う転写因子であるTFEBをリン酸化することによって不活性化し(非特許文献1)、その結果、リソソームの発現量の低下を引き起こし、GOが発揮する上記[1]~[5]の代表的な作用機序(特に、[3]及び[4])が十分に達成されない可能性が想定される。
【0009】
(2)標的抗原の低下に関して、例えば、白血病細胞表面の約90%でCD33の発現は認められるものの、その発現量には差があり、AML細胞株の中でも同様に発現量の差が見受けられる(非特許文献2及び3)。これにより、GOが発揮する上記[1]~[5]の代表的な作用機序(特に、[1]及び[2])の機能が十分に達成されない可能性が想定される。
【0010】
(3)抗アポトーシス因子の発現に関して、例えば、AML症例の約70%に、抗アポトーシス因子であるBcl-2及びMcl-1等の発現が上昇していることが知られている(非特許文献4~6)。これにより、GOが発揮する上記[1]~[5]の代表的な作用機序(特に、[5])の機能が十分に達成されない可能性が想定される。また、AMLにおいてBcl-2阻害剤と抗ガン剤の併用は効果が認められる。
【0011】
(4)多剤耐性因子の発現に関して、例えば、原発性AMLの50%に、MDR-1の発現が認められ、特に、二次性AMLでは、その発現量が高くなることが知られている(非特許文献7~9)。これにより、GOが発揮する上記[1]~[5]の代表的な作用機序(特に、[4]及び[5])の機能が十分に達成されない可能性が想定される。
【0012】
これを解消すべく、上記(1)のリソソーム機能の上昇を目的に、GOとmTOR阻害剤とをAML症例に併用することによって、GOによる抗ガン作用(目的とする細胞殺傷作用)の向上が見受けられたことにより、抗ガン剤の耐性を克服することが期待されたが、その併用効果は特定の細胞に限られ、抗ガン作用の向上が見られない細胞株も存在する(特許文献1、非特許文献10及び11)。
【0013】
GSK3とは、グリコーゲン合成酵素をリン酸化して不活性化するセリン/スレオニン蛋白質リン酸化酵素であり、幹細胞の未分化性の維持や、体細胞から幹細胞へのリプログラミング誘導に用いられる。GSK3は、アルツハイマー病に関連するTau蛋白質のリン酸化に関わるため、アルツハイマー病の薬としての開発が進められている。なお、GSK3が様々なガン促進因子をリン酸化し、分解することからガン抑制因子として認識されてきたが、最近ではガンを促進する可能性も示唆されている(非特許文献12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Ballabio, EMBO Mol. Med.,8(2), 73-76 (2016).
【非特許文献2】O'Hear et al., Haematologica.,100(3), 336-344 (2015).
【非特許文献3】Olombel et al., Blood,127(17), 2157-2160 (2016).
【非特許文献4】Zhou et al., Diagn. Pathol.,14(1), 68 (2019).
【非特許文献5】Li et al., Onco. Targets Ther.,12 (1), 3295-3304 (2019).
【非特許文献6】DiNardo et al., N. Engl. J. Med.,383(7), 617-629 (2020).
【非特許文献7】Maurizio et al.,Int. J. Oncol.,36(6), 1513-1520 (2010).
【非特許文献8】Kolesnikova et al.,J. Pers. Med., 9(2), 24 (2019).
【非特許文献9】Walter et al., Blood, 109(10), 4168-4170 (2007).
【非特許文献10】Mizutani Y, Int J Hematol. 110(4), 490-499 (2019)
【非特許文献11】Maimaitili Y, Leuk Res. 74, 68-74 (2018)
【非特許文献12】Maurer et al., J. Cell Sci.,127, 1360-1378 (2014).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記するように、GOに代表される抗ガン剤による薬理効果を高めるためには、その薬剤耐性を克服する必要があるが、その全てを克服するために、種々の薬剤を併用すると、それらの使用に基づいて副作用の懸念が増大してしまうので、有効な手段とは言えない。
【0017】
そこで、このような懸念を払拭すべく、本発明は、抗ガン剤が直面する種々の薬剤耐性を、少ない薬剤の併用により克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するべく、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、GO又はDNR等に代表される抗ガン剤と共にGSK3阻害剤を使用することによって、該抗ガン剤による効果を増強することができることを見いだした。本発明は、斯かる知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す態様の発明を広く包含する。
【0019】
項A-1
GSK3阻害剤を含有する、抗ガン剤効果増強剤。
【0020】
項A-2
前記GSK3阻害剤が、CHIR99021、LY2090314、AZD2858、BIO、AZD1080、CHIR98014、SB216763、BIO-acetoxime、SB415286、Alsterpaullone、及びA1070722からなる群より選択される少なくとも一種である、上記項A-1に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0021】
項A-3
前記抗ガン剤が、抗体含有抗ガン剤又は低分子化合物抗ガン剤である、上記項A-1又はA-2に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0022】
項A-4
前記抗体含有抗ガン剤が、抗体薬物複合体である、上記項A-3に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0023】
項A-5
前記抗体薬物複合体に含有される薬物が、エンジイン系薬物(エスペラマイシン、カリケアマイシン、ダイネミシン等)、アウリスタチン系薬物(auristatin F-HPA、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF等)、カンプトテシン系薬物(SN38、イリノテカン、DX-8951、Dxd(デルクステカン)等)、メイタンシン系薬物(メイタンシン、エムタンシン等)、ピロールペンゾジアゼピン系薬物(タリリン、テシリン等)、アントラサイクリン系薬物(ドキソルビシン、ダウノルビシン等)、デュオカルマイシン系薬物(デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、アドゼレシン等)、ハリコンドリン系薬物(エリブリン等)、毒素系薬物(PE38等)及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種である、上記項A-4に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0024】
項A-6
前記抗体薬物複合体に含有される抗体と薬物とが、ヒドラゾンリンカー、マレイミドリンカー、チオエーテルリンカー、ペプチドリンカー、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一種を介して結合している、上記項又はA-4又はA-5に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0025】
項A-7
前記抗体含有抗ガン剤が、キメラ抗原受容体を含有する細胞である、上記項A-3に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0026】
項A-8
前記抗体が、CD33、CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16からなる群より選択される少なくとも一種を抗原とする、上記項A-3~A-7の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0027】
項A-9
前記抗体が、二重特異性抗体である、上記項A-3~A-8の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0028】
項A-10
前記抗体が、リツキシマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、オファツズマブ、モガムリズマブ、ベバシズマブ、ラムシルマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ニボルマブイピリムマブ、ペムブロリズマブ、エロツズマブ、及びブリナツモマブからなる群より選択される少なくとも一種である、上記項A-3~A-9の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0029】
項A-11
前記低分子化合物抗ガン剤が、抗生物質(ダウノルビシン(DNR)、ドキソルビシン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン等)、微小管阻害薬(ビンクリスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、エリブリン等)、白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等)、トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン、ノギテカン、エトポシド等)、サリドマイド関連薬(サリドマイド、レナリミド等)、代謝拮抗薬(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド等)、及び小分子化合物(イマチニブ、レンバチニブ、エベロリムス等)からなる群より選択される少なくとも一種である、上記項A-3に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0030】
項A-12
上記項A-1~A-11の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤であって、該抗ガン剤に対する薬剤耐性を有する患者に対して投与されることを特徴とする、抗ガン剤効果増強剤。
【0031】
項A-13
上記項A-1~A-12の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞のおけるリソソームの活性が低い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤効果増強剤。
【0032】
項A-14
上記項A-1~A-13の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞中のBcl-2、Mcl-1、Bcl-xL、Bcl-w、Bcl-B、及びA1からなる群より選択される少なくとも1種の抗アポトーシス遺伝子の発現量が高い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤効果増強剤。
【0033】
項A-15
上記項A-1~A-14の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞におけるABCA2、ABCA3、ABCB1、ABCB2、ABCB5、ABCC1、ABCC2、ABCC3、ABCC4、ABCC5、ABCC6、及びABCG2からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤排出遺伝子の発現量が高い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤効果増強剤。
【0034】
項A-16
上記項A-1~A-15の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞における、FLT-3遺伝子変異を持たない患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤効果増強剤。
【0035】
項A-17
上記項A-1~A-16の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞における、CD33、CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16の発現量が低い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤効果増強剤。
【0036】
項A-18
前記ガンが、非固形ガンである、上記項A-1~A-17の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0037】
項A-19
前記ガンが、白血病である、上記項A-18に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0038】
項A-20
前記白血病が、前記急性骨髄性白血病である、上記項A-19に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0039】
項A-21
前記急性骨髄性白血病が、二次急性骨髄性白血病である、上記項A-20に記載する抗ガン剤効果増強剤。
【0040】
項B-1
GSK3阻害剤が投与された患者、又は投与される状態の患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【0041】
項B-2
前記GSK3阻害剤が、CHIR99021、LY2090314、AZD2858、BIO、AZD1080、CHIR98014、SB216763、BIO-acetoxime、SB415286、Alsterpaullone、及びA 1070722からなる群より選択される少なくとも一種である、上記項B-1に記載する抗ガン剤。
【0042】
項B-3
前記抗ガン剤が、抗体含有抗ガン剤又は低分子化合物抗ガン剤である、上記項B-1又はB-2に記載する抗ガン剤。
【0043】
項B-4
前記抗体含有抗ガン剤が、抗体薬物複合体である、上記項B-3に記載する抗ガン剤。
【0044】
項B-5
前記抗体薬物複合体に含有される薬物が、エンジイン系薬物(エスペラマイシン、カリケアマイシン、ダイネミシン等)、アウリスタチン系薬物(auristatin F-HPA、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF等)、カンプトテシン系薬物(SN38、イリノテカン、DX-8951、Dxd(デルクステカン)等)、メイタンシン系薬物(メイタンシン、エムタンシン等)、ピロールペンゾジアゼピン系薬物(タリリン、テシリン等)、アントラサイクリン系薬物(ドキソルビシン、ダウノルビシン等)、デュオカルマイシン系薬物(デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、アドゼレシン等)、ハリコンドリン系薬物(エリブリン等)、毒素系薬物(PE38等)及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種である、上記項B-4に記載する抗ガン剤。
【0045】
項B-6
前記抗体薬物複合体に含有される抗体と薬物とが、ヒドラゾンリンカー、マレイミドリンカー、チオエーテルリンカー、ペプチドリンカー、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一種を介して結合している、上記項B-4又はB-5に記載する抗ガン剤。
【0046】
項B-7
前記抗体含有抗ガン剤が、キメラ抗原受容体を含有する細胞である、上記項B-3に記載する抗ガン剤。
【0047】
項B-8
前記抗体が、CD33、CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16からなる群より選択される少なくとも一種を抗原とする、上記項B-3~B-7の何れかに記載する抗ガン剤。
【0048】
項B-9
前記抗体が、二重特異性抗体である、上記項B-3~B-8の何れかに記載する抗ガン剤。
【0049】
項B-10
前記抗体が、リツキシマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、オファツズマブ、モガムリズマブ、ベバシズマブ、ラムシルマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ニボルマブイピリムマブ、ペムブロリズマブ、エロツズマブ、及びブリナツモマブからなる群より選択される少なくとも一種である、上記項B-3~B-9の何れかに記載する抗ガン剤。
【0050】
項B-11
前記低分子化合物抗ガン剤が、抗生物質(DNR、ドキソルビシン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン等)、微小管阻害薬(ビンクリスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、エリブリン等)、白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等)、トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン、ノギテカン、エトポシド等)、サリドマイド関連薬(サリドマイド、レナリミド等)、代謝拮抗薬(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド等)、及び小分子化合物(イマチニブ、レンバチニブ、エベロリムス等)からなる群より選択される少なくとも一種である、上記項B-3に記載する抗ガン剤。
【0051】
項B-12
上記項B-1~B-11の何れかに記載する抗ガン剤であって、該抗ガン剤に対する薬剤耐性を有する患者に対して投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【0052】
項B-13
上記項B-1~B-12の何れかに記載する抗ガン剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞のおけるリソソームの活性が低い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【0053】
項B-14
上記項B-1~B-13の何れかに記載する抗ガン剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞中のBcl-2、Mcl-1、Bcl-xL、Bcl-w、Bcl-B、及びA1からなる群より選択される少なくとも1種の抗アポトーシス遺伝子の発現量が高い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【0054】
項B-15
上記項B-1~B-14の何れかに記載する抗ガン剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞におけるABCA2、ABCA3、ABCB1、ABCB2、ABCB5、ABCC1、ABCC2、ABCC3、ABCC4、ABCC5、ABCC6、及びABCG2からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤排出遺伝子の発現量が高い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【0055】
項B-16
上記項B-1~B-15の何れかに記載する抗ガン剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞における、FLT-3遺伝子変異を持たない患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【0056】
項B-17
上記項B-1~B-16の何れかに記載する抗ガン剤であって、該抗ガン剤が標的とする細胞における、CD33、CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16の発現量が低い患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤。
【0057】
項B-18
前記ガンが、非固形ガンである、上記項B-1~B-17の何れかに記載する抗ガン剤。
【0058】
項B-19
前記ガンが、白血病である、上記項B-18に記載する抗ガン剤。
【0059】
項B-20
前記白血病が、前記急性骨髄性白血病である、上記項B-19に記載する抗ガン剤。
【0060】
項B-21
前記急性骨髄性白血病が、二次急性骨髄性白血病である、上記項B-20に記載する抗ガン剤。
【0061】
項C-1
上記項A-1~A-7の何れかに記載する抗ガン剤効果増強剤と、上記項B-1~B-10の何れかに記載する抗ガン剤とを含有する、ガン治療及び/又は予防の為に使用されるキット。
【0062】
項C-2
上記項C-1に記載するキットであって、前記抗ガン剤に対する薬剤耐性を有する患者に対して投与されることを特徴とする、キット。
【0063】
項C-3
上記項C-1又はC-2~B-11に記載する抗キットであって、該抗ガン剤が標的とする細胞のおけるリソソームの活性が低い患者に投与されることを特徴とする、キット。
【0064】
項C-4
上記項C-1~C-3の何れかに記載するキットであって、該抗ガン剤が標的とする細胞中のBcl-2、Mcl-1、Bcl-xL、Bcl-w、Bcl-B、及びA1からなる群より選択される少なくとも1種の抗アポトーシス遺伝子の発現量が高い患者に投与されることを特徴とする、キット。
【0065】
項C-5
上記項C-1~C-4の何れかに記載するキットであって、該抗ガン剤が標的とする細胞におけるABCA2、ABCA3、ABCB1、ABCB2、ABCB5、ABCC1、ABCC2、ABCC3、ABCC4、ABCC5、ABCC6、及びABCG2からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤排出遺伝子の発現量が高い患者に投与されることを特徴とする、キット。
【0066】
項C-6
上記項C-1~C-5の何れかに記載するキットであって、該抗ガン剤が標的とする細胞における、FLT-3遺伝子変異を持たない患者に投与されることを特徴とする、キット。
【0067】
項C-7
上記項C-1~C-6の何れかに記載するキットであって、該抗ガン剤が標的とする細胞における、CD33、CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16の発現量が低い患者に投与されることを特徴とする、キット。
【0068】
項C-8
前記ガンが、非固形ガンである、上記項C-1~C-7の何れかに記載するキット。
【0069】
項C-9
前記ガンが、白血病である、上記項C-8に記載するキット。
【0070】
項C-10
前記白血病が、前記急性骨髄性白血病である、上記項C-9に記載するキット。
【0071】
項C-11
前記急性骨髄性白血病が、二次急性骨髄性白血病である、上記項C-10に記載するキット。
【0072】
項D-1
ガンの治療又は予防方法であって、GSK3阻害剤及び抗ガン剤をガンに罹患した患者に同時に又は順次に投与する工程を含有する方法。
【0073】
項D-2
前記GSK3阻害剤が、CHIR99021、LY2090314、AZD2858、BIO、AZD1080、CHIR98014、SB216763、BIO-acetoxime、SB415286、Alsterpaullone、及びA 1070722からなる群より選択される少なくとも一種である、上記項D-1に記載するガンの治療又は予防方法。
【0074】
項D-3
前記抗ガン剤が、抗体含有抗ガン剤又は低分子化合物抗ガン剤である、上記項D-1又はD-2に記載するガンの治療又は予防方法。
【0075】
項D-4
前記抗体含有抗ガン剤が、抗体薬物複合体である、上記項D-3に記載するガンの治療又は予防方法。
【0076】
項D-5
前記抗体薬物複合体に含有される薬物が、エンジイン系薬物(エスペラマイシン、カリケアマイシン、ダイネミシン等)、アウリスタチン系薬物(auristatin F-HPA、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF等)、カンプトテシン系薬物(SN38、イリノテカン、DX-8951、Dxd(デルクステカン)等)、メイタンシン系薬物(メイタンシン、エムタンシン等)、ピロールペンゾジアゼピン系薬物(タリリン、テシリン等)、アントラサイクリン系薬物(ドキソルビシン、ダウノルビシン等)、デュオカルマイシン系薬物(デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、アドゼレシン等)、ハリコンドリン系薬物(エリブリン等)、毒素系薬物(PE38等)及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種である、上記項D-4に記載するガンの治療又は予防方法。
【0077】
項D-6
前記抗体薬物複合体に含有される抗体と薬物とが、ヒドラゾンリンカー、マレイミドリンカー、チオエーテルリンカー、ペプチドリンカー、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一種を介して結合している、上記項D-4又はD-5に記載するガンの治療又は予防方法。
【0078】
項D-7
前記抗体含有抗ガン剤が、キメラ抗原受容体を含有する細胞である、上記項D-3に記載するガンの治療又は予防方法。
【0079】
項D-8
前記抗体が、CD33、CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16からなる群より選択される少なくとも一種を抗原とする、上記項D-3~D-7の何れかに記載するガンの治療又は予防方法。
【0080】
項D-9
前記抗体が、二重特異性抗体である、上記項A-3~A-8の何れかに記載するガンの治療又は予防方法。
【0081】
項D-10
前記抗体が、リツキシマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、オファツズマブ、モガムリズマブ、ベバシズマブ、ラムシルマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ニボルマブイピリムマブ、ペムブロリズマブ、エロツズマブ、及びブリナツモマブからなる群より選択される少なくとも一種である、上記項A-3~A-9の何れかに記載するガンの治療又は予防方法。
【0082】
項D-11
前記低分子化合物抗ガン剤が、抗生物質(DNR、ドキソルビシン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン等)、微小管阻害薬(ビンクリスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、エリブリン等)、白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等)、トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン、ノギテカン、エトポシド等)、サリドマイド関連薬(サリドマイド、レナリミド等)、代謝拮抗薬(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド等)、小分子化合物(イマチニブ、レンバチニブ、エベロリムス等)からなる群より選択される少なくとも一種である、上記項D-3に記載するガンの治療又は予防方法。
【0083】
項D-12
上記項D-1~D-11の何れかに記載するガンの治療又は予防方法であって、該抗ガン剤に対する薬剤耐性を有する患者に対して投与されることを特徴とするガンの治療又は予防方法。
【0084】
項D-13
上記項D-1~D-12の何れかに記載するガンの治療又は予防方法であって、該抗ガン剤が標的とする細胞のおけるリソソームの活性が低い患者に投与されることを特徴とするガンの治療又は予防方法。
【0085】
項D-14
上記項D-1~D-13の何れかに記載するガンの治療又は予防方法であって、該抗ガン剤が標的とする細胞中のDcl-2、Mcl-1、Bcl-xL、Bcl-w、Bcl-B、及びA1からなる群より選択される少なくとも1種の抗アポトーシス遺伝子の発現量が高い患者に投与されることを特徴とするガンの治療又は予防方法。
【0086】
項D-15
上記項D-1~D-14の何れかに記載するガンの治療又は予防方法であって、該抗ガン剤が標的とする細胞におけるABCA2、ABCA3、ABCB1、ABCB2、ABCB5、ABCC1、ABCC2、ABCC3、ABCC4、ABCC5、ABCC6、及びABCG2からなる群より選択される少なくとも1種の薬剤排出遺伝子の発現量が高い患者に投与されることを特徴とするガンの治療又は予防方法。
【0087】
項D-16
上記項D-1~D-15の何れかに記載する方ガンの治療又は予防法であって、該抗ガン剤が標的とする細胞における、FLT-3遺伝子変異を持たない患者に投与されることを特徴とするガンの治療又は予防方法。
【0088】
項D-17
上記項D-1~D-16の何れかに記載するガンの治療又は予防方法であって、該抗ガン剤が標的とする細胞における、CD33、CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16の発現量が低い患者に投与されることを特徴とするガンの治療又は予防方法。
【0089】
項D-18
前記ガンが、非固形ガンである、上記項D-1~D-17の何れかに記載するガンの治療又は予防方法。
【0090】
項D-19
前記ガンが、白血病である、上記項D-18に記載するガンの治療又は予防方法。
【0091】
項D-20
前記白血病が、前記急性骨髄性白血病である、上記項D-19に記載するガンの治療又は予防方法。
【0092】
項D-21
前記急性骨髄性白血病が、二次急性骨髄性白血病である、上記項D-20に記載するガンの治療又は予防方法。
【発明の効果】
【0093】
GSK3阻害剤を抗ガン剤と共に使用することにより、抗ガン剤が発揮する効果を増強する。また、GSK3阻害剤を抗ガン剤と共に使用することにより、前記抗ガン剤が直面する薬剤耐性を低減することができる。また、本発明で抗ガン剤と共に使用するGSK3阻害剤は、種々の薬剤耐性を低減することができるため、副作用を少なくする効果が大いに期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】
図1は、GO又はCHIR99021(CHIR)をそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、NB4細胞、HL-60細胞、及びTHP-1細胞に対する殺細胞効果を確認した実施例1の結果を示す。各グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図2】
図2は、GO又はLY2090314(LY)をそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞に対する殺細胞効果を確認した実施例2の結果を示す。各グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図3】
図3は、GO又はAZD2858(A2858)をそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞に対する殺細胞効果を確認した実施例3の結果を示す。各グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図4】
図4は、GO又はAZD1080(A1080)をそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞に対する殺細胞効果を確認した実施例4の結果を示す。各グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図5】
図5は、CHIRによる、リソソーム機能を確認した実施例5の結果を示す。Aは、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、NB4細胞、HL-60細胞、及びTHP-1細胞における、リソソームの蛍光染色像を示す。Controlは、CHIRで処理していない陰性対象実験である。bは、aの結果を基に蛍光強度を算出したものであり、それをbのグラフ縦軸に示す。cは、p70S6Kのリン酸化を、確認したウェスタンブロット像を示す。
【
図6】
図6は、CHIR99021による、CD33の発現量の増加を確認した実施例6の結果を示す。aは、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、及びNB4細胞における、CD33の発現量の増加をフローサイトメトリーにて確認した結果を示すbに示すグラフは、aに示す結果を数値化したものであり、これをbの縦軸として示している。cは、CHIRによる、U937細胞におけるCD33の局在を示す免疫染色像である。
【
図7】
図7は、CHIR99021による、Bcl-2の発現量を確認した実施例7の結果を示す。aに示すグラフは、MARIMO、KO52、U937、NB4、HL-60、及びTHP-1、における、Bcl-2のmRNAの発現を確認した結果である。bに示すグラフは、MARIMO細胞へCHIRを作用させた後の24時間又は48時間における、Bcl-2のmRNAの発現を確認した結果である。cは、MARIMO、KO52、U937、NB4、HL-60、及びTHP-1細胞に、GO及び/又はCHIRを作用させた際の、Bcl-2及びそれに続くアポトーシスイベントであるPARPタンパク質の切断を確認したウエスタンブロット像を示す。
【
図8】
図8は、GO又はVenetoclax(Bcl-2阻害剤;Ven)をそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、MARIMO、KO52、及びU937細胞に対する殺細胞効果を確認した比較例1の結果を示す。各グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図9】
図9は、CHIR99021による、MDR-1(遺伝子名ABCB1)の発現量を確認した実施例8の結果を示す。aは、MARIMO、KO52、U937、NB4、HL-60、THP-1、及びHEL細胞において発現するABCB1を、PT-PCRによって確認した結果である。bは、KO52及びHEL細胞において発現するABCB1を、リアルタイムPCRによって定量した結果を示すグラフであり、その縦軸は、対象のGAPDHに対するMDR1の発現量である。cは、MDR1の活性を確認する実験として、KO52細胞に対してCHIR又はVerapamil(MDR-1阻害剤;vera)を作用させた際のRhodamine123(RH123)の取り込みを、フローサイトメトリーで確認した結果を示す。dに示すグラフは、cに示す結果からRH123の取り込み量を定量化した結果である。
【
図10】
図10は、GO若しくはVeraをそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、MARIMO、KO52、及びU937細胞に対する殺細胞効果を確認した比較例2の結果を示す。各グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図11】
図11は、GO若しくはCHIRをそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、患者から得た単核球細胞に対する殺細胞効果を確認した実施例9の結果を示す。各グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図12】
図12は、GO若しくはLYをそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、患者から得た単核球細胞に対する殺細胞効果を確認した実施例10の結果を示す。各グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図13】
図13は、ダウノルビシン(DNR)若しくはCHIRをそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、MARIMO細胞に対する殺細胞効果を確認した実施例11の結果を示す。グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図14】
図14は、イノツズマブオゾガマイシン(IO)若しくはCHIRあるいはLYをそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、RL細胞に対する殺細胞効果を確認した実施例12の結果を示す。グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図15】
図15は、IO又はLYをそれぞれ単独で、又は、共に使用した時の、Raji細胞に対する殺細胞効果を確認した実施例13の結果を示す。グラフの縦軸は、アポトーシスの程度を百分率で示したものである。
【
図16】
図16は、各種濃度のトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)又はCHIRを単独で、又は共に使用した時の、胃がん細胞であるNCI-N87細胞に対する殺細胞効果を確認した実施例15の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0095】
抗ガン剤の効果増強剤
本発明には、GSK3阻害剤を含有する、抗ガン剤効果増強剤が包含される。
【0096】
上記「抗ガン剤効果増強剤」とは、抗ガン剤が発揮する何らかの薬理効果を増強するため使用される剤を意味する。抗ガン剤が有する薬理効果とは、特に限定されない。例えば、抗ガン剤が抗体を有する場合、該抗体が認識する抗原が存在する細胞に対して結合して中和作用を発揮すること、該抗体が担持する薬物による細胞殺傷効果を発揮すること等を挙げることができる。抗ガン剤が抗体を有しない場合、該抗ガン剤が有する細胞殺傷能力等を挙げることができる。
【0097】
上記抗ガン剤効果増強剤に含有されるGSK3阻害剤は、本発明の効果を奏する範囲において、特に限定されない。例えば、公知のGSK3阻害剤とすることができる。より具体的なGSK3阻害剤として、CHIR99021、LY2090314、AZD2858、BIO、AZD1080、CHIR98014、SB216763、BIO-acetoxime、SB415286、Alsterpaullone、及びA1070722等を挙げることができる。これらのGSK3阻害剤の中でも、CHIR99021、LY2090314、AZD2858、BIO、又はAZD1080が好ましく、より好ましくは、CHIR99021、LY2090314、AZD2858、又はBIOであり、CHIR99021、LY2090314、又はAZD2858が最も好ましい。これらのGSK3阻害剤は、公知の方法により作製することもできるし、市場から入手することもできる。以下に、代表的なGSK3阻害剤の化学式を示す。
【0098】
<CHIR99021>
【0099】
【0100】
<AZD2858>
【0101】
【0102】
<AZD1080>
【0103】
【0104】
<LY2090314>
【0105】
【0106】
<CHIR98014>
【0107】
【0108】
<SB216763>
【0109】
【0110】
<BIO>
【0111】
【0112】
<BIO-acetoxime>
【0113】
【0114】
<SB415286>
【0115】
【0116】
<Alsterpaullone>
【0117】
【0118】
<A1070722>
【0119】
【0120】
これらのGSK3阻害剤は、単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0121】
上記抗ガン剤効果増強剤におけるGSK3阻害剤の含有量は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。具体的に、GSK3阻害剤の含有量を、100重量部の抗ガン剤効果増強剤に対して、0.000001~100重量部とすることができる。
【0122】
上記抗ガン剤効果増強剤によって、その効果が増強される具体的な抗ガン剤は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、抗体含有抗ガン剤又は低分子抗ガン剤を挙げることができる。
【0123】
上記の抗体含有抗ガン剤は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、抗体薬物複合体(ADC)又はキメラ抗原受容体を含有する細胞を挙げることができる
上記ADCとは、抗体と薬物とを含有する構造物である範囲において特に限定されない。このようなADCに含有される薬物は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、エンジイン系薬物、アウリスタチン系薬物、カンプトテシン系薬物、メイタンシン系薬物、ピロールペンゾジアゼピン系薬物、アントラサイクリン系薬物、デュオカルマイシン系薬物、ハリコンドリン系薬物、毒物系薬物及びこれらの誘導体を挙げることができる。
【0124】
更に具体的には、エスペラマイシン、カリケアマイシン、タイネミシン、auristatin F-HPA、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、DX-8951、Dxd(デルクステカン)、SN38、イリノテカン、メイタンシン、エムタンシン、タリリン、テシリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、アドゼレシン、エリブリン、PE38、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。これらの薬物は、単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0125】
上記ADCにおける抗体と薬物との結合態様は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、リンカーを介して抗体と薬物とが結合される態様を挙げることができる。
【0126】
上記リンカーとは、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、投与した生体の血中では切断されず、前記抗体が認識する抗原を有する細胞内のリソソームにおいて、切断される態様のリンカーを挙げることができる。このようなリンカーは、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、ヒドラゾンリンカー、マレイミドリンカー、チオエーテルリンカー、及びペプチドリンカー等を挙げることができる。これらのリンカーは、単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0127】
上記抗体含有抗ガン剤の一つの態様である、キメラ抗原受容体細胞に含有されるキメラ抗原受容体とは、細胞外ドメインに設けられた抗原認識部位と共に、細胞膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインが、必要に応じてスペーサーに連結した受容体様の構造を有する。このようなキメラ抗原受容体を有する細胞は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、チサゲンレクルユーセル、アキシカブタゲンシロルユーセル、brexucabtagene autoleucel、及びLisocabtagene Maraleucel等を挙げることができる。これらのキメラ抗原受容体を有する細胞は、単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0128】
上記抗体含有抗ガン剤に含有される抗体が認識する抗原は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、CD33、CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16等を挙げることができる。これらの中でも、CD30、CD19、CD138、CD37、CD70、CD74, CD52、CD20、CD33、CD22、及びCD79bが好ましく、CD33、及びCD22が最も好ましい。これらの抗原は、単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0129】
上記抗体含有抗ガン剤の態様として、https:jjadcreview.comjadc-universityjadc-drugmap又はhttps:jjcl inicaltrials.govjにおいて検索され得る、公知のADCを挙げることができる。このようなADCの中でも、ゲムツズマブオゾガマイシン、卜ラスツズマブエムタンシン、イノツズマブオゾガマイシン、ブレンツキシマブベドチン、ポラツズマブベドチン、エンホルツマブベドチン、ベランタマブマフォドチン、サクツズマブゴビテカン、トラスツズマブデルクステカン、Promiximab-Duocarmycin、SYD983、Pinatuzumab vedotin、Lifastuzumab vedotin、Coltuximab Ravtansine、Glembatumumab vedotin、デパツキシズマブマホドチン、Vadastuximab talirine、Rovalpituzumab tesirine、MORAb-202、及びモキセツモマブパスドトクス等を挙げることができる。より好ましいADCは、ゲムツズマブオゾガマイシン、ブレンツキシマブベドチン、イノツズマブオゾガマイシン、ポラツズマブベドチン、ベランタマブマフォドチン、Pinatuzumab vedotin、Coltuximab Ravtansine、Vadastuximab talirine、及びモキセツモマブパスドトクスであり、ゲムツズマブオゾガマイシン、及びイノツズマブオゾガマイシンが最も好ましい。これらのADCは、単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0130】
なお、上記抗体含有抗ガン剤には、抗体以外に薬物等を担持していない態様も含有されることができる。このような態様の具体例として、単一の抗原を認識する抗体、2個以上の抗原を認識する二重特異性抗体等を挙げることができる。
【0131】
このような薬物を担持していない態様の抗体含有抗ガン剤は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、リツキシマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、オファツズマブ、モガムリズマブ、ベバシズマブ、ラムシルマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ニボルマブイピリムマブ、ペムブロリズマブ、エロツズマブ、又はブリナツモマブを挙げることができる。これらの薬物を担持していない態様の抗体含有抗ガン剤は、単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0132】
上記抗ガン剤の他の態様として、低分子化合物抗ガン剤を挙げることができる。具体的な低分子抗ガン剤は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、抗生物質、微小管阻害薬、白金製剤、トポイソメラーゼ阻害薬、サリドマイド関連薬、代謝拮抗薬、又は小分子化合物等を挙げることができる。より具体的には、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、ビンクリスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、エリブリン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン、ノギテカン、エトポシド、サリドマイド、レナリミド、シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド、イマチニブ、レンバチニブ、及びエベロリムスを挙げることができる。
【0133】
これらの低分子化合物抗ガン剤の中でも、DNR、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、シスプラチン、イリノテカン、エトポシド、サリドマイド、レナリミド、シクロホスファミド、メトトレキサート、フルダラビン、ヒドロキシカルバミド、及びイマチニブ等が好ましく、DNR、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシド、及びイマチニブが最も好ましい。これらの低分子化合物抗ガン剤は、単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0134】
上記する抗ガン剤効果増強剤の投与量は、併用する抗ガン剤の投与量と共に設定することができ、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。一例として、体重60kgの成人に対して、0.01~1000mg/m2の抗ガン剤効果増強剤を投与することを挙げることができる。好ましくは、0.1~100mg/m2の投与量、より好ましくは、1~50mg/m2の投与量とすることができ、10~40mg/m2の投与量とすることが最も好ましい。このような投与量は、一日に一回とすることもできるし、一日に数回に分けて投与することもできる。
【0135】
上記する抗ガン剤効果増強剤の投与間隔は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、1回、毎日、隔日、毎週、隔週、2~3週毎、毎月、隔月、又は2~3ヶ月毎等とすることができる。
【0136】
上記する抗ガン剤効果増強剤は、上記抗ガン剤に対する薬剤耐性を有する患者に対して投与されることが好ましい。具体的には、抗ガン剤が標的とする細胞におけるリソソーム活性が患者に投与される態様を挙げることができる。リソソーム活性が低いとは、リソソーム数が少ないと言い換えることもできる。
【0137】
上記する薬剤耐性を有する患者に対して投与される他の態様として、該抗ガン剤が標的とする細胞中の抗アポトーシス遺伝子の発現量が高い患者に投与される態様を挙げることができ、該アポトーシス耐性遺伝子とは、Bcl-2、Mcl-1、Bcl-xL、Bcl-w、Bcl-B、及びA1である。このようなアポトーシス耐性遺伝子は、一種又は複数とすることができる。
【0138】
上記する薬剤耐性を有する患者に対して投与される他の態様として、該抗ガン剤が標的とする細胞中の薬剤耐性遺伝子の発現量が高い患者に投与される態様を挙げることができ、該薬剤耐性遺伝子とは、ABCA2、ABCA3、ABCB1、ABCB2、ABCB5、ABCC1、ABCC2、ABCC3、ABCC4、ABCC5、ABCC6、及びABCG2である。このような薬剤耐性遺伝子は、一種又は複数とすることができる。
【0139】
上記する薬剤耐性を有する患者に対して投与される他の態様として、該抗ガン剤が標的とする細胞中のFLT-3遺伝子変異を持たない患者に投与される態様を挙げることができる。より好ましい態様として、FLT-3遺伝子の発現量が低い患者に投与されることを挙げることができる。FLT-3遺伝子変異を持たない患者とは、野生型のFLT3を保持する患者と言い換えることもできる。このようなFLT-3遺伝子とは、fms related receptor tyrosine kinase 3と特定される遺伝子である範囲において、特に限定されない。例えば、アメリカ国立生物工学情報センターのウェブサイト(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)にて、NM_004119.3として収載される遺伝子を挙げることができる。
【0140】
上記する薬剤耐性を有する患者に対して投与される他の態様として、該抗ガン剤が標的とする細胞におけるCD33、CD30、CD22、Nectin-4、TROP2、FOLR1、HER2、DLL3、VEGF、EGFR、CD79b、GPNMB、NaPi2b、CD19、CD56、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、GCC、CCR4、Mesothelin、Mucin 1、Mucin 16、PSMA、及びAGS-16の何れか一種以上の発現量が低い患者に投与する態様を挙げることができる。より好ましくは、CD30、CD19、CD138、CD37、CD70、CD74、CD52、CD20、CD33、CD22、及びCD79bの何れか一種以上の発現量が低い患者に投与する態様を挙げることができる。CD33および/またはCD22の発現量が低い患者に投与する態様が、最も好ましい。
【0141】
上記する細胞中の発現量とはタンパク質または遺伝子に限定されず、当該発現量が低いとは、健常者の発現量と比べて低い傾向であることが臨床的手段(リアルタイムPCR法又は免疫学的測定法)により判断される状態である。
【0142】
上記する抗ガン剤効果増強剤におけるガンとは、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、非固形ガンを挙げることができる。非固形ガンとは、白血病、悪性リンパ腫、又は多発性骨髄腫等を挙げることができる。このような非固形ガンの中でも、白血病が好ましい。
【0143】
上記白血病とは、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、前記急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、又は慢性リンパ性白血病等を挙げることができる。このような白血病の中でも、急性骨髄性白血病(AML)が好ましい。
【0144】
上記急性骨髄性白血病とは、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、原発性急性骨髄性白血病、二次性急性骨髄性白血病、等を挙げることができる。このような急性骨髄性白血病の中でも、二次性急性骨髄性白血病が好ましい。
【0145】
上記する抗ガン剤効果増強剤には、実質的に上記するGSK3阻害剤のみが含有されていてもよいし、GSK3阻害剤以外の、その他の成分が含有されることもできる。
【0146】
上記するその他成分とは、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、薬学的に許容される基剤、担体、添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤、甘味剤、着色剤、矯昧剤、矯臭剤、界面活性剤、保湿剤、保存剤、pH調整剤、粘桐化剤等)等を挙げることができる。このような基材、担体、添加剤等は、例えば医薬品添加物辞典等に具体的に記載されており、これに記載されるもの適宜採用することができる。
【0147】
上記する抗ガン剤効果増強剤の製剤形態は、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。例えば、常法により有効成分であるGSK3阻害剤及びその他の成分を混合し、上記する抗ガン剤効果増強剤の投与形態に沿って、錠剤、被覆錠剤、散剤、頼粒剤、細粒剤、カプセル剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゼリー剤、チュアブル剤、ソフト錠剤等の製剤に適宜調製することができる。
【0148】
上記する抗ガン剤効果増強剤の投与方法は、本発明の効果を発揮できる範囲において、上記する各剤形に最適化される公知の投与方法である限り、特に限定されない。例えば、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、蜘蛛膜下腔内投与、皮内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、肺内投与、眼内投与、腟内投与、頸部内投与、直腸内投与、又は皮下投与等を挙げることができる。例えば、これらの中でも、経口投与又は静脈投与が好ましい。
【0149】
抗ガン剤
本発明には、GSK3阻害剤が投与された患者、又は投与される状態の患者に投与されることを特徴とする、抗ガン剤が包含される。
【0150】
上記抗ガン剤の投与対象として定義するGSK3阻害剤の詳細な説明は、上記抗ガン剤効果増強剤にて説明したものと同様にすることができる。
【0151】
上記抗ガン剤の詳細な説明は、上記抗ガン剤効果増強剤にてその効果が増強される抗ガン剤として説明したものと同様にすることができる。
【0152】
上記する抗ガン剤の投与量は、併用する上記する抗ガン剤効果増強剤の使用量と共に設定することができ、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されない。一例として、体重60kgの成人に対して、0.01~2000mg/m2の抗ガン剤効果増強剤を投与することを挙げることができる。好ましくは、0.01~200mg/m2の投与量、より好ましくは、0.01~100mg/m2の投与量、さらに好ましくは、0.01~50mg/m2の投与量とすることができ、0.01~10mg/m2の投与量とすることが最も好ましい。このような投与量は、一日に一回とすることもできるし、一日に数回に分けて投与することもできる。
【0153】
上記する抗ガン剤の投与対象は、上記する抗ガン剤効果増強剤にて説明した投与対象と同様にすることができる。
【0154】
上記する抗ガン剤には、実質的に上記する抗ガン剤のみが含有されていてもよいし、抗ガン剤以外の、その他の成分が含有されることもできる。その他成分とは、上記抗ガン剤効果増強剤にて説明したものと同様にすることができる。
【0155】
上記する抗ガン剤の製剤形態、投与方法、投与間隔等は、上記抗ガン剤効果増強剤にて説明したものと同様にすることができる。
【0156】
キット
本発明には、上記抗ガン剤効果増強剤及び上記抗ガン剤を含有する、ガン治療及び/又は予防の為に使用されるキットが包含される。
【0157】
上記キットに含有される抗ガン剤効果増強剤及び抗ガン剤は、それぞれ、上記抗ガン剤効果増強剤及び抗ガン剤にて説明したものと同様にすることができる。
【0158】
上記キットの使用対象は、上記抗ガン剤効果増強剤又は抗ガン剤において、投与対象として説明したものと同様にすることができる。
【0159】
ガンの治療又は予防方法
本発明には、GSK3阻害剤及び抗ガン剤をガンに罹患した患者に同時に又は順次に投与する工程を含有する方法が包含される。GSK3阻害剤及び抗ガン剤と順次に投与する場合、どちらを先に投与するのかについては、本発明の効果を発揮できる範囲において、特に限定されないが、GSK3阻害剤を先に投与することが好ましい。
【0160】
上記方法において使用するGSK3阻害剤及び抗ガン剤、およびその投与量、投与方法、投与態様、投与間隔等は、上記抗ガン剤効果増強剤又は抗ガン剤にて説明したものと同様にすることができる。
【0161】
本明細書における、ある成分を「を含む」又は「を含有する」との表現には、当該成分を含み、さらに他の成分を含んでいてもよい意味のほか、当該成分のみを含む「のみからなる」との意味、及び当該成分を必須として含む「から必須としてなる」の意味の概念も包含される。
【0162】
また、本明細書において挙げた文献及びウェブページに記載の内容は、参照により本明細書に組み込むことができる。
【0163】
また、上述した本発明の各実施形態について説明した性質、構造、機能等の各種の特性は、本発明に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本発明には、本明細書で開示する組み合わせることができる各特性からなる主題の全てを包含することができる。
【実施例0164】
以下に、本発明より詳細に説明するための実施例を示す。本発明が下記に示す実施例に限定されないのは言うまでもない。
【0165】
本実施例にて使用した細胞株の入手先は、以下の通りである。
・KO52細胞及びHL-60細胞(JCRB Cell Bank)
・U937細胞、Hs27細胞、RL細胞、及びNCI-N87細胞(ATCC)
・THP-1細胞(ECACC)
・MARIMO細胞(神戸大学南陽介氏(神戸大学)から提供)
・NB4細胞(中熊秀喜氏(中村氏和歌山県立医大)からの提供)
・Raji細胞及びHEL細胞(伊藤光宏氏(神戸大学の)から提供)
【0166】
上記の各細胞メンテナンスは、37℃、5% CO2環境下で、48時間毎に、以下の培地を使用して継代培養した。
【0167】
・MARIMO細胞、HL-60細胞、U937細胞、THP-1細胞、HEL細胞、Raji細胞、及びNCI-N87細胞:10%FBS及び1%ペニシリン・ストレプトマイシンを含有するRPMI1640
・NB4細胞:20%FBS及び1%ペニシリン・ストレプトマイシンを含有するRPMI1640
・KO52細胞:10%FBS及び1%ペニシリン・ストレプトマイシンを含有するMEM
・Hs27細胞:10%FBS及び1%ペニシリン・ストレプトマイシンを含有するDMEM
【0168】
下記実施例にて使用した薬剤の入手先を示す。
・ゲムツズマブオゾガマイシン及びイノツズマブオゾガマイシン:ファイザー
・トラスツズマブエムタンシン:中外製薬
・ダウノルビシン:Tront Research Chemicals
・CHIR99021:Focus Biomolecules
・LY2090314:Cayman Chemical
・AZD1080:AOBIOUS
・AZD2858:BLD Pharmatech Ltd.
・Verapamil及びRhodamin 123:Sigma-Aldrich
・Venetoclax:Abcam
・サイトカイン群(SCF、IL-3、IL-6、TPO、及びFLT3L):Peprotech
【0169】
実施例1 各種細胞株に対してGOとCHIRとを併用した効果を確認する実験
本実施例で使用した細胞株は、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、NB4細胞、HL-60細胞、及びTHP-1細胞である。これらの細胞株を2.5 cells/mlで増殖培地に播種した。
【0170】
これらの細胞に対して、GSK3阻害剤であるCHIR99021(CHIR)の5μM、10μM、又は20μMの単独処理、抗体薬物複合体であるゲムツズマブオゾガマイシン(GO)の単独処理(NB4細胞では0.25μg/mlの濃度、THP-1細胞では0.5μg/mlの濃度、その他の細胞では2.5μg/ml)、及び上記各濃度でのCHIRとGOとの併用処理を行い、48時間後に処理後の各細胞を回収した。
【0171】
回収した細胞を、AnnexinV-FITC Apoptosis Detection Kit(ナカライテスク)を用いて細胞を染色した後に、BD FACSVerse(登録商標)flow cytometer(BD Biosciences)用いて解析を行った。これにより、細胞殺傷(アポトーシス)の程度をSpecific apoptosis(%)として評価した。Specific apoptosisとは、自然な細胞死を差し引いて算出した死細胞割合のことである。この結果を
図1に示す。
【0172】
図1に示すように、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、NB4細胞、HL-60細胞、及びTHP-1細胞の全ての細胞株において、GSK3阻害剤として使用したCHIRは、GOが発揮する細胞殺傷能力を増大させることが明らかとなった。
【0173】
実施例2 各種細胞株に対してGOとLYとを併用した効果を確認する実験
本実施例で使用した細胞株は、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞である。GSK3阻害剤として使用したLY2090314(LY)の処理濃度を250nM、500nM、又は1000nMとした以外は、上記実施例1と同様に実験した。この結果を
図2に示す。
【0174】
図2に示すように、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞の全ての細胞株において、LY2090314は、GOが発揮する細胞殺傷能力を増大させることが明らかとなった。
【0175】
実施例3 各種細胞株に対してGOとA2858とを併用した効果を確認する実験
本実施例で使用した細胞株は、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞である。GSK3阻害剤として使用したAZD2858(A2858)の処理濃度を125nM、250nM、又は500nMとした以外は、上記実施例1と同様に実験した。この結果を
図3に示す。
【0176】
図3に示すように、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞の全ての細胞株において、AZD2858は、GOが発揮する細胞殺傷能力を増大させることが明らかとなった。
【0177】
実施例4 各種細胞株に対してGOとAZD1080とを併用した効果を確認する実験
本実施例で使用した細胞株は、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞である。GSK3阻害剤として使用したAZD1080(A1080)の処理濃度を2.5nM、5nM、又は7.5nMとした以外は、上記実施例1と同様に実験した。この結果を
図4に示す。
【0178】
図4に示すように、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞の全ての細胞株において、AZD1080は、GOが発揮する細胞殺傷能力を増大させることが明らかとなった。
【0179】
実施例5 各種細胞株に対するリソソーム機能を確認する実験
本実施例で使用した細胞株は、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、NB4細胞、HL-60細胞、及びTHP-1細胞である。これらの細胞株を2.5cells/mlで増殖培地に播種し、その後、5μMのCHIR99021で24時間処理した。細胞を300nMのLysoTracker Red DND-99(Thermo Fisher Scientific)により酸性オルガネラ(酸性のリソソーム)を37℃で10分間染色し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。陰性対象実験(Control)として、CHIR99021で処理しない実験を行った。その結果を
図5a及びbに示す。
【0180】
図4A及びBに示す結果から、各細胞において、CHIR処理によりリソソームの量が増加していることが明らかとなった。
【0181】
次いで、上記のAML細胞株を2.5cells/mlで増殖培地に播種し、CHIR99021の5μMで24時間又は48時間の処理を行った。その後、各細胞を回収し、細胞溶解液(25mMのTris-HCl(pH7.5)、1mMのEDTA(pH8.0)、150mMのNaCl、1%のTriton-X、0.1%のSDS、1%のProtease Inhibitor Cocktail、及び1%のPhosSTOP)にて細胞を溶解させた。これをSDS-PAGEに供し、Amersham ECL plus Western Blotting Detection Reagents (GE Healthcare)及びChemiDoc(登録商標)Touch imaging system(Bio-Rad Laboratories)にてウエスタンブロットを行った。
【0182】
使用した抗体は、抗リン酸化p70S6K抗体(CST#9205)、抗P70S6K抗体(CST#9202)、及び抗β-actin抗体(Sigma-Aldrich、A1978)である。この結果を
図5cに示す。
【0183】
図5cに示す結果から、CHIR99021を作用させた全ての細胞株において、作用時間が経過するにつれて、リン酸化p70S6Kの量が減少することが分った。すなわち、CHIR99021は、細胞内のリソソーム量を増加させるシグナルカスケードに関与することが明らかとなった。
【0184】
実施例6 各種細胞株に対するCD33の発現量を確認する実験
本実施例で使用した細胞株は、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、及びNB4細胞である。これらの細胞株を2.5cells/mlで増殖培地に播種し、その後、0、5、10、20μMのCHIR99021で48時間の処理行った(0μMの処理は、陰性対象実験である)。これらの処理後の細胞を回収し、FITCで標識された抗ヒトCD33抗体(eBioscience)及びMouse IgG1 κ-FITC (eBioscience)により、4℃で30分間インキュベートした後に、これらをBD FACSVerse(登録商標)flow cytometerで分析した。この結果を、
図6a及びbに示す。また、U937細胞における免疫染色像を
図6cに示す。
【0185】
図6に示す結果から、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、及びNB4細胞の全ての細胞において、CD33の発現量が増加していることが明らかとなった。
【0186】
実施例7 各種細胞株に対するBcl-2の発現量を確認する実験
本実施例で使用した細胞株は、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、NB4細胞、HL-60細胞、THP-1細胞、及び非ホジキンリンパ種細胞(RL細胞)である。これらの細胞株を2.5cells/mlで増殖培地に播種した48時間後に細胞からRNAを抽出し、One Step TB Green PrimeScript(登録商標) PLUS RT-PCR Kit(Takara)及びThermal Cycler Dice(登録商標)Real Time System(Takara)を使用したリアルタイムPCR法により、Bcl-2のmRNAの発現を確認した。内部標準として、GAPDHを使用した。この結果を
図7aの上段のグラフに示す。なお、mRNAの定量に使用したプライマーの塩基配列は、以下の表1に示す通りである。
【0187】
次いで、MARIMO細胞に対して5μMのCHIR99021を作用させた後の24時間後及び48時間に、上記と同様のリアルタイムPCR法により、Bcl-2のmRNAの発現を確認した。本実験の陰性対象実験は、CHIR99021を作用させない実験である。
【0188】
【0189】
また、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、NB4細胞、HL-60細胞、及びTHP-1細胞に対して2.5μg/mlのGO(NB4細胞の場合は、0.25μg/ml、THP-1は0.5μg/ml)又は5μM及び10μMのCHIR99021を単独で、又はこれらを同時に作用させて48時間インキュベートし、その後、実施例5と同様にタンパク質を回収して、ウエスタンブロットを行った。使用した抗体は、抗BCL-2抗体(CST#2872)、抗PARP抗体(CST#9542)、及び抗β-actin抗体(Sigma-Aldrich、A1978)である。この結果を
図7cに示す。なお、各細胞における、CHIR99021及び又はGOによって作用させる前の結果は、
図7a下段に示す。
【0190】
図7aに示す結果から、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、NB4細胞、HL-60細胞、THP-1細胞、及びRL細胞の全てにおいて、Bcl-2のmRNAが発現していることが明らかとなった。そして、
図7bより、MARIMO細胞では、CHIR90021により、Bcl-2のmRNAの発現量が低くなっていることが明らかとなった。
【0191】
また、
図7cに示す結果から、GOと共にCHIR99021を作用させることによって、Bcl-2が関与するアポトーシスシグナルが進行し、細胞死がより誘導されることが明らかとなった。
【0192】
比較例1 各種細胞株に対してGOとVenとを併用した効果を確認する実験
本実施例で使用した細胞株は、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞である。GSK3阻害剤ではなく、Bcl-2阻害剤であるVenetoclax(Ven)の処理濃度を1nM、5nM、又は10nMとした以外は、上記実施例1と同様に実験した。この結果を
図8に示す。
【0193】
図8に示すように、MARIMO細胞及びKO52細胞では、Bcl-2阻害剤であるVenetoclaxにより、GOが発揮する細胞殺傷能力を増大させるものの、U937細胞では、増大させないことが明らかとなった。
【0194】
実施例8 各種細胞株のMDR-1(遺伝子名ABCB1)の発現量を確認する実験
本実施例で使用した細胞株は、MARIMO細胞、KO52細胞、U937細胞、NB4細胞、HL-60細胞、THP-1細胞、HEL細胞である。これらの細胞株を2.5cells/mlで増殖培地に播種し、48時間後にNucleoSpin(登録商標)RNA(Macherey-Nage)を用いてプロトコルに従いRNAを抽出した。これらをテンプレートにして、PrimeScript(登録商標)RT reagent Kit(タカラバイオ)を用いてプロトコルに従いcDNAを合成し、合成したcDNAを、MDR-1の遺伝子名であるABCB1のプライマーを用いてRT-PCRを行った。内部標準としてGAPDHを用いた。使用したABCB1のプライマーの塩基配列を下記の表2に示す。内部標準として使用したGAPDHプライマーの塩基配列は、上記表1に記載のものと同じである。また、当該RT-PCRの結果を
図9aに示す。
【0195】
【0196】
次いで、KO52細胞を2.5cells/mlで増殖培地に播種し、CHIR99021を5μMで24時間又は48時間作用させた。これと同様に、HEL細胞に対して、CHIR99021を2.5μMで24時間又は48時間インキュベートさせ、各細胞からRNAを抽出し、実施例7と同様の方法により、ABCB1のmRNAの発現量を確認した。内部標準として、実施例7と同様に、GAPDHを使用した。使用したABCB1及びGAPDHプライマーの塩基配列は、表3に記載の通りである。この結果を
図9bに示す。
【0197】
そして、増殖培地に播種したKO52細胞を5μMのCHIR99021で24時間又は48時間の処理を行い、その後200ng/mlのRh123に加え、37℃で1時間インキュベートさせた。これらの細胞を実施例6と同様に、フローサイトメトリーにて確認した。その結果を
図9cに示す。そしてこの結果を
図9dにて定量化した。また、CHIR99021に代えてMDR-1阻害剤であるVerapamilを、10、20、30、40、及び50μMで48時間作用させ、同様にRh123に加えてフローサイトメトリーにて確認した結果も、
図9c及びdに示す。
【0198】
図9aに示す結果から、KO52細胞及びHEL細胞にはMRD-1が発現していることが明らかとなった。また、これらの細胞に対してCHIR99021を作用させると、MRD-1の発現量が低下することも分った。
【0199】
また、
図9c及びdに示す結果から、CHIR99021により、薬物をミミックするローダミン123の取り込み量が増加していることが明らかとなった。
【0200】
比較例2 各種細胞株に対してGOとVeraとを併用した効果を確認する実験
本実施例で使用した細胞株は、MARIMO細胞、KO52細胞、及びU937細胞である。GSK3阻害剤ではなく、MDR-1阻害剤であるVerapamil(Vera)の処理濃度を1nM、5nM、又は10nMとした以外は、上記実施例1と同様に実験した。この結果を
図10に示す。
【0201】
図10に示すように、MARIMO細胞及びKO52細胞では、MDR-1阻害剤であるVerapamilにより、GOが発揮する細胞殺傷能力を増大させるものの、U937細胞では、増大させないことが明らかとなった。
【0202】
実施例10 患者骨髄由来単核球細胞に対してGOとCHIRとを併用した効果を確認する実験
本実施例で使用した細胞は、急性骨髄性白血病患者から得た、単核球細胞である。当該細胞は、AML(AML-MRC)又はMDSの患者のインフォームドコンセントの後、通常の診断検体から採取した骨髄穿刺液から得た。これは、神戸大学の倫理委員会(#170216及び#180288)から承認を受け、ヘルシンキ宣言に従って実施した。
【0203】
当該単核球細胞は、SepMate(STEMCELL Technologies、BC、Canada)を用い、製造元のプロトコルに従って骨髄サンプルから分離後、使用するまで凍結保存した。凍結保存された細胞を迅速に解凍し、15%のFBS、2mMのL-グルタミン、並びに各種サイトカインとして50ng/mlのSCF、10ng/mlのIL-3、20ng/mlのIL-6、10ng/mlのTPO、及び10ng/mlのFLT3Lを含むIMDM培地で培養し、次いでMMC処理したHs27フィーダー細胞上に播種し、37℃、5%CO2環境下で実験するまで維持した。本実施例にて使用した患者由来細胞の各情報を下記の表3に示す。
【0204】
【0205】
実施例1に記載する方法と同様に、このように準備した細胞における細胞殺傷(アポトーシス)の程度を、Specific apoptosis(%)として評価した。なお、使用したCHIR99021の使用濃度は、各細胞によって異なっており、5又は10μMである。
【0206】
次いで、CI値を算出した。CI値は、CI=(EA+EB)/EABとして算出し、EAとEBは個々の薬剤の効果(死細胞割合)を表し、EABは、2つの薬の組み合わせから生じる効果(死細胞割合)を表す。CI=1であれば相加的、CI<1であれば相乗的、そしてCI>1であれば拮抗的として評価した。この結果を、
図11に示す。
【0207】
図11に示す結果から、GSK3阻害剤であるCHIR99021は、ほぼ全ての患者由来細胞に対して、GOによる殺細胞効果を相乗的に上昇させることが明らかとなった。
【0208】
実施例11 患者骨髄由来単核球細胞に対してGOとLYとを併用した効果を確認する実験
上記実施例10に記載するCHIR99021に代えて、500又は1000nMのLY2090314を使用した実験を行った。その結果を、
図11に示す。
【0209】
図12に示す結果から、GSK3阻害剤であるLY2090314は、ほぼ全ての患者由来細胞に対して、GOによる殺細胞効果を相乗的に上昇させることが明らかとなった。
【0210】
実施例12 MARIMO細胞に対してDNRとCHIRとを併用した効果を確認する実験
5、10、又は20μMの濃度でのCHIR99021の単独処理、100nMのダウノルシビン(NDR)での単独処理、及び上記各濃度のCHIR99021とDNRとの併用処理をMARIMO細胞に行い、上記実施例1と同様に実験した。この結果を
図13に示す。
【0211】
図13に示す結果から、CHIR99021は、MARIMO細胞に対してDNRが発揮する細胞殺傷能力を増大させることが明らかとなった。
【0212】
実施例13 RL細胞に対してIOとCHIR又はLYとを併用した効果を確認する実験
2μM若しくは4μMの濃度でのCHIR99021又は250nM若しくは500nMの濃度でのLY2090314単独処理と、5ng/mlの濃度でのイノツズマブオゾガマイシン(IO)の単独処理、及び上記各濃度でのCHIR又はLYとIOとの併用処理をRL細胞に行い、上記実施例1と同様に実験した。この結果を
図14に示す。
【0213】
図14に示す結果から、CHIR99021もLY2090314も共に、RL細胞に対してIOが発揮する細胞殺傷能力を増大させることが明らかとなった。
【0214】
なお、RL細胞において、MARIMO細胞と同様に、Bcl-2のmRNAは発現していることを確認している(データ示さず)。したがって、上記実施例7と同様の機序によって、CHIR99021はIOによる細胞殺傷能力を増大させることが強く示唆される。
【0215】
実施例14 Raji細胞に対してIOとLYとを併用した効果を確認する実験
25nM又は50nMの濃度でのLY2090314の単独処理、150ng/mlの濃度でのIOの単独処理、及び上記各濃度でのLY2090314とIOとの併用処理をRaji細胞に行い、上記実施例1と同様に実験した。この結果を
図15に示す。
【0216】
図15に示す結果から、LY2090314は、Raji細胞に対してIOが発揮する細胞殺傷能力を増大させることが明らかとなった。
【0217】
実施例15 NCI-N87細胞に対してT-DM1とCHIRとを併用した効果を確認する実験
5μM又は10μMの濃度でのCHIR99021の単独処理、62.5、125、又は250ng/mlの濃度でのT-DM1の単独処理、又はこれらの併用処理を、3x10
5個のNCI細胞に行い、その48時間後に、上記実施例7に示す方法にて、PARPの切断を確認するウエスタンブロットに供した。この結果を
図16に示す。
【0218】
図16に示す結果から、CHIR99021はT-DM1による細胞殺傷能力を増大させることが明らかとなった。