(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157237
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/12 20060101AFI20221006BHJP
C01B 33/146 20060101ALI20221006BHJP
C01B 33/141 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C01B33/12 A
C01B33/146
C01B33/141
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061347
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】若宮 義憲
(72)【発明者】
【氏名】中山 和洋
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA36
4G072BB05
4G072BB20
4G072CC01
4G072DD05
4G072DD06
4G072DD07
4G072EE01
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH18
4G072HH21
4G072HH33
4G072JJ34
4G072LL06
4G072MM01
4G072MM06
4G072PP02
4G072PP11
4G072RR05
4G072RR12
4G072TT01
4G072TT05
4G072TT06
4G072TT30
4G072UU30
(57)【要約】
【課題】特異な形状をしたアルミナ-シリカ複合微粒子が分散した金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルを、より効率良く製造できる金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルの製造方法を提供すること。
【解決手段】シリカ微粒子が水系溶媒に分散してなるアルカリ性のシリカゾルに、アルミン酸ナトリウムを温度80℃以上100℃未満の範囲で、シリカ微粒子100質量部に対して、0.02質量部以上1質量部以下のアルミン酸ナトリウムを連続的にまたは断続的に添加し、さらに熟成させることにより、アルミナ-シリカ複合微粒子を含むアルミナ-シリカ複合微粒子分散液を調製し、次に、アルカリ金属珪酸塩を、前記アルミナ-シリカ複合微粒子分散液に添加し、熟成した後、さらに、珪酸液を、連続的にまたは断続的に添加することにより、反応させて、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子を得る、金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET法により測定された比表面積(SA1)から換算された平均粒子径(D1)が3nm以上150nm以下の範囲にあるシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液に、温度80℃以上100℃未満の範囲で、前記シリカ微粒子100質量部に対して、0.02質量部以上1質量部以下のアルミン酸ナトリウムを連続的にまたは断続的に添加し、
さらに、熟成させることにより、アルミナ-シリカ複合微粒子を含むアルミナ-シリカ複合微粒子分散液を調製し、
次に、前記アルミナ-シリカ複合微粒子分散液100質量部(固形分換算)に対し、0.1質量部以上100質量部以下に相当するアルカリ金属珪酸塩を添加し、熟成した後、
さらに、3質量部以上700質量部以下の珪酸液(固形分換算)を、2時間以上24時間以下かけて連続的にまたは断続的に添加することにより、
pH9.5以上12.0以下の範囲で反応させて、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を得る、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
前記アルミナ-シリカ複合微粒子分散液に対し、過剰なイオンを除去する処理を施すことなく、前記アルカリ金属珪酸塩を、添加し、更に珪酸液を添加する
請求項1に記載の金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記アルミナ-シリカ複合微粒子は、BET法により測定された比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.4以上1.8以下の範囲にあり、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)が7nm以上150nm以下の範囲にある、
請求項1または請求項2に記載の金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液(シリカゾル)のうち、シリカ微粒子が球状以外の形状からなるシリカ微粒子分散液としては、シリカ微粒子として鎖状、数珠状または長球状のものが知られている。このようなシリカ微粒子分散液は、例えば、各種研磨剤として使用されている。また、微粒子形状を球状以外の形状とするために、アルミナ-シリカ複合微粒子からなる複合微粒子分散液も検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、球状シリカ粒子の表面にアルミナとシリカとからなる複数の疣状突起を有する複合微粒子が記載されている。また、この複合微粒子は、BET法またはシアーズ法により測定された比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.7~10の範囲にあり、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)が7~150nmの範囲にある金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子であることが記載されている。さらに、この金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子が、溶媒に分散してなる金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾル(金平糖状アルミナ-シリカ微粒子分散液)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾル(金平糖状アルミナ-シリカ微粒子分散液)は、特異な形状をしたアルミナ-シリカ複合微粒子が溶媒に分散してなる金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液であり、研磨材および研磨用組成物の成分として有用である。また、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子は、その特異な構造から、通常の球状シリカ微粒子とは異なる充填性、吸油性、電気特性、光学特性、または物理特性などを有する点で好ましい。
特許文献1の金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を製造するための製法は、シリカ微粒子分散液の温度を15℃以上30℃以下の範囲に維持しながらアルミン酸ナトリウムを添加し、その後温度60℃以上98℃以下の範囲に昇温し、続いて熟成させ、アルミナ被覆シリカ微粒子分散液を調製する1段階目のプロセスと、続いて、このアルミナ被覆シリカ微粒子分散液に水硝子を添加し温度75℃以上100℃未満の範囲に昇温した後に、珪酸液を加えてビルドアップ(粒子成長)させるという2段階目のプロセスを含むものであった。しかしながら、係る製造方法においては、次のような問題があった。
1)得られる金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子の表面における疣状突起の配置が不均一になり易い。
2)シリカ微粒子表面との反応に寄与しなかったアルミン酸ナトリウムに由来するアルミン酸イオンが、後の工程で珪酸液と反応し球状粒子を形成することがあり、その様な球状粒子生成を防ぐためには、限外濾過膜法、イオン交換樹脂法、イオン交換膜法などの方法が必要となる。
3)実用上、製造方法全体での操作の簡便化および所用時間の短縮が望まれていた。
【0006】
本発明は、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子が溶媒に分散してなる金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を、より効率良く製造できる金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法を提供することを目的とする。
更に本発明は、従来の金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子に比して、微粒子表面に存在する疣状突起の形状ないし配置の均一性が高い金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、BET法により測定された比表面積(SA1)から換算された平均粒子径(D1)が3nm以上150nm以下の範囲にあるシリカ微粒子が溶媒に分散してなるシリカ微粒子分散液に、温度80℃以上100℃未満の範囲で、前記シリカ微粒子100質量部に対して、0.02質量部以上1質量部以下のアルミン酸ナトリウムを連続的にまたは断続的に添加し、
さらに、熟成させることにより、アルミナ-シリカ複合微粒子を含むアルミナ-シリカ複合微粒子分散液を調製し、
次に、前記アルミナ-シリカ複合微粒子100質量部(固形分換算)に対し、0.1質量部以上100質量部以下に相当するアルカリ金属珪酸塩を添加し、熟成した後、
さらに、3質量部以上700質量部以下の珪酸液(シリカ換算)を、2時間以上24時間以下かけて連続的にまたは断続的に添加することにより、
pH9.5以上12.0以下の範囲で反応させて、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子を得る、金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子が溶媒に分散してなる金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を、より効率良く製造することができる。
特に本発明の製造方法では、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造工程を通じて、同一の温度で処理を進めることが可能であり、工程管理を容易とすることができる。
また、本発明の製造方法により、従来の金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子に比して、微粒子表面に存在する疣状突起が比較的均一である金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1で得られた金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子を示す写真である。
【
図2】実施例1で得られた金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法]
以下、本実施形態に係る金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法について説明する。
所定の原料シリカ微粒子分散液(シリカゾル)に、温度80℃以上100℃未満の範囲で、所定量のアルミン酸ナトリウムを連続的にまたは断続的に添加し、さらに、熟成させることにより、アルミナ-シリカ複合微粒子を含むアルミナ-シリカ複合微粒子分散液を調製し、次に、所定量のアルカリ金属珪酸塩を、前記アルミナ-シリカ複合微粒子分散液に添加し、熟成した後、さらに、所定量の珪酸液を、連続的にまたは断続的に添加することにより、pH9.5以上12.0以下の範囲で反応させて、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を得ることを特徴とする方法である。
なお、本願明細書において「シリカ微粒子分散液」のことを「シリカゾル」ともいう。また、「アルミナ-シリカ複合微粒子分散液」のことを「アルミナ-シリカ複合ゾル」と、「金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液」を「金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾル」ともいう。
【0011】
前記引用文献1に係る金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の従来の製造方法においては、1段階目のプロセスとして、原料シリカゾルに、温度10℃以上30℃以下でアルミン酸ナトリウムを添加し温度60℃以上98℃以下に昇温して、同温度範囲で熟成した後冷却し、アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を調製していたが、実際には、前記冷却の後に過剰のナトリウムイオンあるいはアルミン酸イオンを限外膜で除去する処理が必要であった。これは過剰なアルミン酸イオンの存在は、アルミナの核粒子の発生を誘発し、後の工程で疣状形成のために添加する珪酸液のシリカ成分と反応し、球状微粒子の生成を招くからである。
このようなイオン除去のための処理について、より詳細には、過剰のNaイオンあるいはアルミン酸イオン等を限外膜で除去するために、限外膜装置で常に液面が一定となるように純水を供給しながら濃縮を、水溶液の電導度が一定となるまで行う必要があり、さらに2段目のプロセスへ進める前に、その後の疣状突起形成のための珪酸の析出を早める目的でシリカ濃度やナトリウム濃度の組成分析し、アルカリ金属の添加量を算定する必要であった。
これに対し、本実施形態においては、原料のシリカ微粒子分散液(シリカゾル)に温度80℃以上100℃未満の範囲でアルミン酸ナトリウムを添加し、熟成した後、所定量のアルカリ金属珪酸塩を、前記分散液に添加し熟成した後、さらに、所定量の珪酸液を、連続的にまたは断続的に添加して金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を得ることができる。本実施形態の製造方法によれば、管理温度範囲同一の温度と設備で効率よく、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を得ることができる。
【0012】
さらに、本実施形態であれば、従来の製造方法と比較して、疣状突起の大きさを均一に制御することができる。
従来の製造方法においては、シリカ微粒子分散液に温度を10℃以上30℃以下と比較的低温条件範囲で維持し、そこにアルミン酸ナトリウムを添加する。この場合、添加されたアルミン酸ナトリウムは、前記低温条件のため反応性に乏しく、アルミン酸ナトリウム由来のアルミン酸イオンは、シリカ微粒子表面に不均一に結合し、下記式(1)のような構造を形成する。
【0013】
【0014】
続いて温度60℃以上98℃未満で熟成を行うことで、シリカ微粒子の表面のアルミナ-シリカ構造(下記式(2))が形成されるものと推察される。
【0015】
【0016】
しかしながら、この構造は不均一に存在しているため、その後の粒子成長による疣状突起形成において、不均一な金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルが得られると考えられる。ここで、疣状突起の成長の基点は、アルミナ-シリカ構造のAl原子付近であり、Si原子付近より、水溶性が高いため、後の工程での粒子成長の際に疣状突起の成長の基点となり、疣状突起が形成された金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子が得られる。
他方、本実施形態では、シリカ微粒子分散液の温度が80℃以上100℃未満と比較的高温の条件範囲のため、シリカ微粒子表面からシリカが溶出する。
ここにアルミン酸ナトリウムを添加することで、その溶出したシリカ成分と、アルミン酸成分が反応して溶解度を下げ、シリカ微粒子表面にアルミナ-シリカ構造が均一に析出される。粒子成長による疣状突起の形成は前述のようにAl原子付近が成長の基点となり、均一な疣状突起が形成された金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子が得られるものと推察される。
この様にして得られた金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルにおいては、後述する表面粗度(SA1)/(SA2)の値が1.4以上1.8以下であることが好ましい。
【0017】
(原料シリカゾル)
本実施形態に用いる原料シリカゾルは、BET法により測定された比表面積(SA1)から換算された平均粒子径(D1)が3nm以上150nm以下の範囲にあるシリカ微粒子が溶媒に分散してなるものである。ここで溶媒としては、通常、水などの水系溶媒が用いられる。なお、原料シリカゾルとしては、特に限定されるものではなく、市販のシリカゾルまたは公知のシリカゾルを使用できる。
【0018】
原料シリカゾルの製造方法としては、例えば、下記の1)~3)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
1)アルカリ金属珪酸塩、第3級アンモニウム珪酸塩、第4級アンモニウム珪酸塩またはグアニジン珪酸塩から選ばれる水溶性珪酸塩を、脱アルカリすることにより得られる珪酸液をアルカリ存在下で加熱することにより珪酸を重合する工程を含むシリカゾルの製造方法
2)珪酸塩を酸で中和して得られるシリカヒドロゲルを洗浄して、塩類を除去し、アルカリを添加した後、加熱することによりシリカヒドロゲルを解膠する工程を含むシリカゾルの製造方法
3)加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解して、得られた珪酸を重合する工程を含むシリカゾルの製造方法
【0019】
原料シリカゾル中のシリカ微粒子の構造は、格別に制限されるものではないが、球状が好ましい。シリカ微粒子の大きさについては、調製しようとする金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子より粒子径の小さいものであれば格別に制限されるものではない。例えば、BET法により測定された比表面積から換算された平均粒子径(D1)が3nm以上150nm以下(画像解析法により求められた平均粒子径(D2)が3nm以上140nm以下の範囲に相当)のシリカ微粒子が溶媒に分散したシリカゾルが好適に使用される。原料シリカゾルとして平均粒子径(D1)が3nm未満のシリカ微粒子が溶媒に分散したシリカゾルを本実施形態の製造方法に適用した場合、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子の生成を確認することができない。平均粒子径(D1)が150nmを越えるシリカ微粒子分散ゾルの場合は、粒子成長に多大な時間を要するため実用性に問題がある。また、原料シリカゾル中のシリカ微粒子については、多孔質状のシリカ微粒子より、非多孔質状のシリカ微粒子の方が、安定して金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子を調製する上で好ましい。
【0020】
原料シリカゾルのpHは8以上12以下の範囲にあるものが好適に使用される。原料シリカゾルのpHがこの範囲にある場合、後記したシリカゾルの粒子成長に適した溶解度を維持できる。同様の観点から、pHは、8.5以上、11.0以下が好ましい。
pHが8未満の場合、酸性が強すぎて、シリカゾルの安定性が損なわれる。他方、pHが12を超える場合、この場合もアルカリ性が強くシリカゾルが凝集し易くなり、安定性が低下する。
原料シリカゾルのシリカ固形分濃度は、1質量以上50質量%以下であることが好ましい。固形分濃度がこの範囲にある場合、シリカゾル貯蔵時において、本発明製造方法の工程中においても、シリカゾルの凝集は抑制され、安定性を確保できる。
【0021】
本実施形態においては、原料シリカゾルを必要に応じて、所望のシリカ固形分濃度に調整することができる。希釈する場合は、例えば、純水で希釈することができる。また、濃縮する場合は、限外濾過膜あるいはエバポレータなどを用いて濃縮することができる。原料シリカゾルのシリカ固形分濃度は、1質量%以上30質量%以下の範囲がより好ましく、2質量%以上10質量%以下の範囲が更に好ましい。
【0022】
(アルミン酸ナトリウム)
本実施形態においては、原料シリカゾルに、通常はアルミン酸ナトリウム(NaAlO2)の水溶液を添加して調製する。アルミン酸ナトリウム水溶液の固形分濃度は、例えば0.1 ~5質量%が好ましい。
【0023】
アルミン酸ナトリウムの添加量(固形分濃度)は、原料シリカ微粒子分散液に含まれるシリカ微粒子100質量部に対して、0.02質量部以上1質量部以下であることが必要である。添加量が0.02質量部未満であると形成されるアルミナ-シリカ構造が僅かであるため、疣状突起が形成されず球状となる。一方、添加量が1質量部を超えると、シリカ微粒子から溶出されるシリカ成分よりも過剰なアルミン酸イオンが存在するため、アルミナの核粒子が発生し、その後の疣状形成の際に添加する珪酸液のシリカ成分と反応し、球状微粒子が生じ易くなる。同様の観点から、アルミン酸ナトリウムの添加量は、0.1質量部以上0.8質量部以下であることが好ましく、0.15質量部以上0.6質量部以下であることがより好ましい。
【0024】
アルミン酸ナトリウム水溶液を添加する際の温度は、80℃以上100℃未満の範囲であることが必要である。係る温度範囲が10℃以上、30℃未満の範囲の場合、最終的に生成する金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子の疣状突起の配置あるいは形状が不均一となり易い。
この温度が30℃以上、80℃未満の範囲では、シリカ微粒子からのシリカ成分の溶出量が僅かで上述したようにアルミン酸イオンが過剰となるため、アルミナ核粒子が発生するという問題がある。他方、この温度が100℃以上である場合は、製造設備が圧力容器となり、蒸気などの負荷により製造コストがかかり、現実的でない。また、同様の観点から、この温度は、85℃以上98℃以下であることが好ましく、90℃以上98℃以下であることがより好ましい。
【0025】
アルミン酸ナトリウム水溶液の添加については、連続的にまたは断続的に添加することが必要である。アルミン酸ナトリウム水溶液を連続的に添加する場合は、所定の添加時間内においてアルミン酸ナトリウム水溶液を均等ないしは均等に相当する割合で添加することが望ましい。また、アルミン酸ナトリウムを断続的に添加する場合も、添加時間内において、アルミン酸ナトリウム水溶液を均等量ずつ、ないしはそれに相当する量毎に添加することが望ましい。
また、アルミン酸ナトリウム水溶液の添加時間は、格別に制限されるものではないが、通常は10分間以上2時間以下であることが好ましく、20分間以上60分間以下であることがより好ましい。
【0026】
アルミン酸ナトリウムの添加をする際は、純水で希釈した原料シリカゾルのpHは、9.0以上11.5以下が望ましい。pHが9.0未満だとシリカ微粒子からのシリカ成分量が僅かであり、アルミン酸イオンが過剰となるため、アルミナ核粒子が発生するという問題がある。pHが11.5を超える場合、系中の溶解度が高すぎて、シリカ微粒子表面への析出が制御できず、後の工程で微少球状粒子が発生して疣状突起形成が得られない、または、得られたとしても不均一な突起が形成される。
【0027】
原料シリカ微粒子分散液にアルミン酸ナトリウム水溶液を添加した後は、アルミナ-シリカ複合微粒子を調製するために熟成を行うことが必要である。
熟成は、通常、アルミン酸ナトリウム水溶液を添加したときの温度を保持して実施するが、熟成時の温度が80℃以上、100℃未満の範囲で管理されるならば、該温度は一定でなくともよく、また、一定であっても構わない。
熟成時間は、格別に制限されるものではないが、通常は0.5時間以上の熟成を行なうことが必要である。熟成時間は実用的には、10時間程度で充分である。
【0028】
(珪酸添加工程)
得られたアルミナ-シリカ複合微粒子を含むアルミナ-シリカ複合微粒子分散液について、珪酸液の添加前に、アルカリ金属珪酸塩を添加し、シーディングを行った後、熟成し、次に、珪酸液をpH9.5以上12.0以下の範囲となるように添加して、さらに熟成させて、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子を得る。
この珪酸添加工程で用いるアルカリ金属珪酸塩、シーディング、並びに、珪酸液について、以下に述べる。
【0029】
(アルカリ金属珪酸塩)
本実施形態においては、前工程で得られたアルミナ-シリカ複合微粒子を含むアルミナ-シリカ複合微粒子分散液に、連続してアルカリ金属珪酸塩を添加する。アルカリ金属珪酸塩が加えられていることで、次いで珪酸添加工程用の珪酸液を加える際に、分散媒中に溶解したシリカ濃度が予め高く設定されることになるため、核粒子であるアルミナ-シリカ複合微粒子への珪酸の析出が早くなる傾向にある。
アルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水硝子)、珪酸カリウム、および珪酸リチウムなどが挙げられる。通常、これらのアルカリ金属珪酸塩は水溶液の形態で使用される。
【0030】
アルミナ-シリカ複合微粒子分散液へアルカリ金属珪酸塩を添加する際の温度は、格別に制限されるものではないが、原料シリカ微粒子分散液にアルミン酸ナトリウムを添加し、熟成させた際の温度と同じとすることが好ましい。
アルミナ-シリカ複合微粒子分散液へのアルカリ金属珪酸塩の添加量については、アルカリ金属珪酸塩添加後において、アルミナ-シリカ複合微粒子の合計100質量部に対し、0.1質量部以上100質量部以下に相当する量であることが必要である。また、適切なシーディング効果を得るという観点から、アルカリ金属珪酸塩の添加量は、アルミナ-シリカ複合微粒子の合計100質量部に対し、1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上6質量部以下であることがより好ましい。
【0031】
(シーディング)
アルミナ-シリカ複合微粒子分散液に対して、アルカリ金属珪酸塩を添加後、10分間以上1時間以下程度の熟成を行う。熟成を行う際濃度の温度は、格別に制限されるものではないが、前記アルカリ金属珪酸塩を添加した際の温度と同じとすることが好ましい。
【0032】
(珪酸液)
本実施形態で用いる珪酸液とは、水溶性珪酸塩を脱アルカリすることにより調製されるものである。通常は、珪酸塩の水溶液を陽イオン交換樹脂で処理するなどの方法で脱アルカリして得られる珪酸の低重合物の水溶液である。この種の珪酸液は、通常、pHは2以上4以下で、シリカ濃度約10質量%以下(好ましくは、2質量%以上7質量%以下)のものが使用される。このような珪酸液は、常温でのゲル化が生じ難く、比較的安定であり、実用的な原料である。
【0033】
このような珪酸液の添加速度は、核粒子の平均粒子径や分散液中の濃度によって異なるが、核粒子以外に微粒子が発生しない範囲で添加することが好ましい。また、珪酸液の添加は所望の平均粒子径のアルミナ-シリカ複合微粒子が得られるまで、1回であるいは複数回繰り返して添加することができる。
このような珪酸液を、2時間以上24時間以下の時間をかけて、連続的にまたは断続的に添加する。珪酸液を添加する際の温度は、格別に制限されるものではないが、前記アルカリ金属珪酸塩を添加後、熟成させた際の温度と同じとすることが好ましい。
【0034】
アルミナ-シリカ複合微粒子分散液への珪酸液の添加量については、珪酸液添加後において、アルミナ-シリカ複合微粒子100質量部に対し、3質量部以上700質量部以下に相当する量であることが必要である。また、適切なSiO2析出という観点から、アルカリ金属珪酸塩の添加量は、アルミナ-シリカ複合微粒子100質量部に対し、5質量部以上300質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0035】
珪酸液を添加した後、必要に応じて、0.5時間以上5時間以下の熟成をすることができる。このような熟成を行うと、得られる金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子中のNaイオン含有量がさらに減少することがあり、また粒子径分布がより均一になる傾向がある。さらに必要に応じて、限外濾過膜などを用いて過剰のイオンを除去し、所望の濃度に濃縮または希釈して、金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルを得ることができる。また、限外濾過膜法、蒸留法などで水溶媒を有機溶媒に溶媒置換した金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルを得ることもできる。また、係る熟成時の温度については、格別に制限されるものではないが、前記珪酸液添加時の温度と同じとすることが好ましい。
【0036】
また、本実施形態においては、珪酸液を添加した後のpHは、9.5以上12.0以下であることが好ましく、10.6以上11.3以下であることがより好ましく、10.8以上11.1以下であることが特に好ましい。
さらに、本実施形態においては、珪酸液を添加した後のpHの数値を変更することで、得られる金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子における疣状突起の高さを調整できる。例えば、pHの数値を高くすると、疣状突起の高さを低くできる傾向にある。
【0037】
(金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子)
本実施形態で得られる金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子は、球状シリカ粒子の表面にアルミナとシリカとからなる複数の疣状突起を有する複合微粒子であって、BET法より測定される比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.4以上1.8以下の範囲にあり、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)が7nm以上150nmの範囲にある金平糖状のアルミナ-シリカ複合微粒子である。
【0038】
金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子は、その表面に複数の疣状突起を有する球状のアルミナ-シリカ複合微粒子であり、その構造は概ね金平糖に類似したものである。このような複数の疣状突起を有する表面については表面粗度によりその範囲が規定される。
本実施形態において表面粗度とは、BET法により測定される比表面積[単位質量当りの表面積]の値を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算された比表面積の値を(SA2)としたとき、表面粗度=(SA1)/(SA2)として定義される。
【0039】
ここで、BET法(窒素吸着法)により測定される比表面積(SA1)は、通常、測定対象粒子に液体窒素温度にて、窒素を平衡吸着させ、次に昇温させて吸着した窒素の量を検出するものであり、試料の実際の表面積を反映したものと言える。なお、BET法(窒素吸着法)に代えて、シアーズ法(ナトリウム滴定法)により測定された比表面積を(SA1)として使用しても差し支えない。
【0040】
また、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算された比表面積(SA2)については、走査型電子顕微鏡により、試料シリカゾルを写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最大径(DL)を測定したときの平均値を平均粒子径(D2)とし、次に試料シリカゾルに分散するシリカ微粒子を理想的な球状粒子と仮定して、次式(1)より比表面積(SA2)が算定される。
SA2=6000/(D2×ρ) ・・・(1)
【0041】
ただし、式(1)において、ρは試料粒子の密度を表し、シリカでは2.2、アルミナでは3.3~4.0である。なお、本発明はシリカとアルミナとの複合微粒子であるが、シリカとアルミナの質量比率において、シリカが大幅に多いため、前記試料密度としてシリカの密度のみを使用しても差し支えない。
この関係式は、前記仮定に基づくものであるので、この比表面積(SA2)の値は、平均粒子径(D2)に対応した、球状で表面が平滑なシリカ微粒子の比表面積を表すものと言える。
【0042】
ここで、比表面積は単位質量当りの表面積を示すから、表面粗度(SA1)/(SA2)の値については、粒子が球状であって、粒子表面が多くの疣状突起を有するほど、(SA1)/(SA2)の値は大きくなる。他方、粒子表面の疣状突起が少なく、平滑であるほど、(SA1)/(SA2)の値は小さくなり、その値は1に近くなる。
本実施形態においては、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子の表面粗度、1.4以上1.8以下の範囲にあるものが好ましい。表面粗度が1.4未満の場合、疣状突起の割合が少ないかあるいは、疣状突起自体がアルミナ-シリカ微粒子の粒子径に比べて極めて小さくなり、球状微粒子に近くなる。表面粗度の値が1.8を超える場合は、合成が容易ではない。
【0043】
また、本実施形態で得られる金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子は、画像解析法により測定した前記金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子における球状微粒子部分の平均内径(D3)と画像解析法により測定した前記疣状突起の平均高さ(HP)の比(D3/HP)が、100/5以上100/50以下の範囲となるものが好ましい。
この比(D3/HP)が100/5未満の場合は、微粒子表面が平滑である場合に極めて近くなり、例えば、研磨効果などにおいても、効果の違いが生じ難くなる傾向にある。他方、この比(D3/HP)が100/50を超える場合は、合成することが容易ではない。
【0044】
なお、走査型電子顕微鏡により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最小径を測定し、その平均値を金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子の球状微粒子部分の平均内径(D3)とした。
また、任意の金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子50個について、任意の疣状突起の頂点から疣状突起と球状微粒子部分との接点までの距離を3箇所ずつ測定し、その全ての平均値を算出し、疣状突起の平均高さ(HP)とした。
【0045】
金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子は、全体として球状であることが必要であり、棒状、勾玉状、細長い形状、数珠状、卵状など、異形粒子を含まない。金平糖状アルミナ-シリカ微粒子は球状であり、異形アルミナ-シリカ粒子と区別される。
本実施形態において球状とは、真球度が0.8以上1.0以下の範囲にあるものを言う。ここで真球度とは、透過型電子顕微鏡により写真撮影して得られる写真投影図における任意の50個の粒子について、それぞれその最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)との比(DS/DL)の平均値を意味する。真球度が0.8未満の場合は、アルミナ-シリカ微粒子が球状とは云えず、前記の異形粒子に該当する場合が生じる。
【0046】
金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子については、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)の値が7~150nmの範囲にあることが好ましい。
なお、本実施形態に係る金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルの製造方法により、金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルを調製する場合、平均粒子径(D2)が150nmを超える場合は、原料の核微粒子の大きさにもよるが、一般にビルドアップ工程が進行し過ぎるため疣状突起が平坦化する傾向が著しくなる。また、7nm未満の場合は、必要な表面粗度をもったアルミナ-シリカ微粒子を調製することが容易ではない。同様の観点から、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子の平均粒子径は、10nm以上130nm以下であることがより好ましく、50nm以上120nm以下であることが特に好ましい。
【0047】
[研磨材および研磨用組成物]
本実施形態で得られる金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルは、研磨材および研磨用組成物として有用である。
具体的には、本実施形態で得られる金平糖状アルミナ-シリカ複合ゾルは、それ自体で研磨材として適用可能なものであり、更には、他の成分(研磨促進剤など)と共に通常の研磨用組成物を構成することも可能である。
本実施形態に係る研磨用組成物は、前記した金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子が溶媒に分散したものである。溶媒としては通常、水を用いるが、必要に応じてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類を用いることができ、他にエーテル類、エステル類、ケトン類など水溶性の有機溶媒を用いることができる。研磨材中の研磨用シリカ粒子の濃度は、2質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。研磨用シリカ粒子の濃度が2質量%以上であれば、基材や絶縁膜の種類によっては濃度が低すぎて研磨速度が遅くなるという問題は生じにくくなる傾向にある。他方、研磨用シリカ粒子の濃度が50質量%以下であれば、研磨材の安定性が十分となり、また研磨処理のために分散液を供給する工程で乾燥物が生成して付着することがあり傷(スクラッチ)が発生しにくくなる傾向にある。
【0048】
本実施形態に係る研磨用組成物には、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素などおよびこれらの混合物を添加して用いることができる。このような過酸化水素などを添加して用いると被研磨材が金属の場合には、効果的に研磨速度を向上できる。また、必要に応じて硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸などの酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩およびこれらの混合物などを添加して用いることができる。この場合、複数種の材質の被研磨材を研磨する際に、特定成分の被研磨材の研磨速度を速めたり、遅くすることによって、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
【0049】
その他の添加剤として、例えば、金属被研磨材表面に不動態層あるいは溶解抑制層を形成して基材の浸食を防止するために、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾールなどを用いることができる。また、上記不動態層を攪乱するためにクエン酸、乳酸、酢酸、シュウ酸、フタル酸、クエン酸などの有機酸あるいはこれらの有機酸塩などの錯体形成材を用いることもできる。研磨材スラリーの分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤を適宜選択して添加することができる。さらに、上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸または塩基を添加して研磨材スラリーのpHを調節できる。
【実施例0050】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における物性測定や評価は、下記の方法により行った。
【0051】
[1]画像解析による平均粒子径(D2)の測定方法および比表面積(SA2)の算定方法
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H-800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最大径(DL)を測定し、その平均値を平均粒子径(D2)とした。また、平均粒子径(D2)の値を前記式(1)に代入して、比表面積(SA2)を求めた。
【0052】
[2]シアーズ法による比表面積測定および平均粒子径測定
1)SiO2として1.5gに相当する試料をビーカーに採取してから、恒温反応槽(25℃)に移し、純水を加えて液量を90mLにする。(以下の操作は、25℃に保持した恒温反応槽中にて行った。)
2)pH3.6になるように0.1モル/L塩酸水溶液を加える。
3)塩化ナトリウムを30g加え、純水で150mLに希釈し、10分間攪拌する。
4)pH電極をセットし、攪拌しながら0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液を滴下して、pH4.0に調整する。
5)pH4.0に調整した試料を0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH8.7~9.3の範囲での滴定量とpH値を4点以上記録して、0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量をX、その時のpH値をYとして、検量線を作る。
【0053】
6)次の式(2)からSiO21.5g当たりのpH4.0~9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の消費量V(mL)を求め、後記式(3)に従って比表面積SA[m2/g]を求める。
【0054】
また、平均粒子径D1(nm)は、式(4)から求める。
V=(A×f×100×1.5)/(W×C)・・・(2)
SA=29.0V-28・・・(3)
D1=6000/(ρ×SA)・・・(4)
(ここで、ρは粒子の密度(g/cm3)を表す。シリカの場合は2.2を代入する。)
【0055】
但し、上記式(2)における記号の意味は次の通りである。
A:SiO21.5g当たりpH4.0~9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)
f:0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の力価
C:試料のSiO2濃度(%)
W:試料採取量(g)
【0056】
[3]BET法(窒素吸着法)による比表面積測定
シリカゾル50mLをHNO3でpH3.5に調整し、1-プロパノール40mLを加え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)を用いて、窒素の吸着量から、BET1点法により比表面積を算出した。
具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%/ヘリウム70v%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検
量線により、シリカゾルの比表面積を算出した。また、得られた比表面積(SA1)を前記式(4)に代入して平均粒子径(D1)を求めた。
【0057】
[4]真球度の測定方法
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H-800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、それぞれその最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)との比(DS/DL)を測定し、それらの平均値を真球度とした。なお、実施例1で得られた金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子を示す写真を
図1および
図2に示す。
【0058】
[5]画像解析による金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子の球状微粒子部分の平均粒子径測定と疣状突起の平均高さ測定
走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H-800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最小径を測定し、その平均値を金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子の球状微粒子部分の平均内径(D3)とした。
また、任意の金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子50個について、任意の疣状突起の頂点から疣状突起と球状微粒子部分との接点までの距離を3箇所ずつ測定し、その全ての平均値を算出し、疣状突起の平均高さ(HP)とした。
【0059】
[6]金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液などの固形分測定
試料(金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液など)2gをルツボにて蒸発乾固し、得られた固形物を1000℃にて1時間焼成後、デシケーターに入れ冷却して秤量する。これらの質量差より金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子などの含有量を求めた。
【0060】
[実施例1]
シリカ微粒子を含む原料シリカゾル(窒素吸着法により測定される比表面積から換算された平均粒子径80nm、品名:カタロイドSI-80P、製造元:日揮触媒化成株式会社、pH、シリカ濃度、比表面積および形状は表1に記載)833.3gに純水を加えて、シリカ濃度4.1質量%に調整した。このシリカゾル8192.3gを98℃に昇温し、アルミン酸ナトリウム[化学式:NaAlO2]の0.9質量%水溶液216.0g(シリカゾルのシリカ分100質量部に対して、アルミン酸ナトリウム0.58質量部に相当)を攪拌しながら30分かけて均等に添加し、1時間熟成して、アルミナ-シリカ複合微粒子を含むアルミナ-シリカ複合微粒子分散液を調製し、次いで、3号水硝子(シリカ濃度24.3質量%)を65.6g(アルミナ-シリカ複合微粒子100質量部に対して、水硝子のシリカ分4.7質量部に相当)添加した後30分熟成し、シリカ濃度4.5質量%の珪酸液1182.0g(アルミナ-シリカ複合微粒子100質量部に対して、珪酸液のシリカ分が15.7質量部に相当)を7時間かけて撹拌しながら均等に添加した。添加完了後、98℃にて1時間熟成した。
その後、限外膜(SIP-1013)にて、シリカ濃度が12質量%になるまで濃縮し、次いで、固形分濃度が40質量%になるまでロータリーエバポレーターで濃縮して、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を得た。
なお、この金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法における各条件等について、表1に示した。
【0061】
[実施例2~5および比較例2]
表1に示す各条件等に従い各工程を行い、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を得た。
なお、実施例5において、珪酸液を添加した後でのpH調整剤として、塩酸水溶液(濃度5質量%)を用いた。
【0062】
[比較例1]
原料シリカゾル(窒素吸着法により測定される比表面積から換算された平均粒子径80nm、品名:カタロイドSI-80P、製造元:日揮触媒化成株式会社、pH、シリカ濃度、比表面積および形状は表1に記載)2500gに純水を加えて、シリカ濃度15.4質量%に調整した。
このシリカゾル6500gに、14℃にて、アルミン酸ナトリウム[化学式:NaAlO2]の0.9重量%水溶液482g(シリカゾルのシリカ分100質量部に対して、アルミン酸ナトリウム0.43質量部に相当)を攪拌しながら2時間かけて均等に添加した。そして、90℃に昇温して、3時間熟成し、アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を得た。
得られたアルミナ-シリカ複合微粒子分散液について前記[7]の固形分測定方法により固形分(アルミナ-シリカ複合微粒子)の含有量を測定したところ14.4質量%であった。このアルミナ-シリカ複合微粒子分散液1463gに純水を加えて、濃度2.7質量%に調製した。
このアルミナ-シリカ複合微粒子分散液7163gに、3号水硝子(シリカ濃度24重量%)を41g(アルミナ-シリカ複合微粒子100質量部に対して、水硝子のシリカ分3.7質量部に相当)添加し、98℃まで昇温した後30分熟成し、シリカ濃度3重量%の珪酸液2641g(前記熟成終了後のアルミナ-シリカ複合微粒子分散液100質量部(アルミナ-シリカ複合微粒子換算)に対して、珪酸液のシリカ分が10.9質量部に相当)を7時間かけて撹拌しながら均等に添加した。添加完了後、98℃にて1時間熟成した。
その後、限外膜(SIP-1013)にて、シリカ濃度が12質量%になるまで濃縮し、次いで固形分濃度が30質量%になるまでロータリーエバポレーターで濃縮して、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液を得た。
なお、この金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法における各条件等について、表1に示した。
【0063】
[金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法の評価]
まず、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液の製造方法における各条件等について、表1に纏めた。
また、得られた金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子分散液について、上記の方法により測定または評価を行った。具体的には、窒素吸着法による平均粒子径(D1)および比表面積(SA1)、画像解析法による平均粒子径(D2)および比表面積(SA2)、表面粗度(SA1)/(SA2)、真球度(DS/DL)、固形分濃度、金平糖状アルミナ-シリカ複合微粒子における球状微粒子部分の平均内径(D3)、画像解析法により測定した疣状突起の平均高さ(HP)、および比(D3/HP)を、測定または評価した。得られた結果を表2に示す。
【0064】