(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157251
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20221006BHJP
H02K 3/51 20060101ALI20221006BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02K3/04 J
H02K3/51 A
H02K15/04 E
H02K15/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061368
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 賢太
(72)【発明者】
【氏名】平松 朋子
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603CA01
5H603CA10
5H603CB11
5H603CB19
5H603EE01
5H603EE03
5H604AA08
5H604CC01
5H604QB01
5H604QB15
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP14
5H615PP15
5H615SS16
5H615SS19
(57)【要約】
【課題】組立時の作業性を向上できるステータを提供する。
【解決手段】同じ相に用いられる異なるコイル線の端部31aにそれぞれ接合される2つの接合部42a~45aと、2つの接合部42a~45a同士を連結する連結部42b~45bと、を有し、接合された端部31a同士を電気的に接続する複数の接続部材42~45を備える。同じ相に用いられるコイル線の端部31a同士を接続する接続部材42~45は、周方向の1周に亘って同一平面上に配置され集合群としての一層のバスリング40を形成し、バスリング40は、相ごとに形成されて、ステータコア10に対して第1側D1に層状に重ねて設けられ、第1側D1から視て、各相のバスリング40の接続部材42~45の接合部42a~45aのそれぞれは、他のバスリング40の接続部材42~45の連結部42b~45bに重ならず、軸方向に露出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機に用いられるステータにおいて、
複数のスロットが周方向に配列された円環形状のステータコアと、
前記スロットに収容された第1スロット収容部と、前記第1スロット収容部に連続して前記ステータコアの中心軸の軸方向一方側に突出した第1突出部と、前記第1スロット収容部が収容された前記スロットとは異なる前記スロットに収容された第2スロット収容部と、前記第2スロット収容部に連続して前記ステータコアの前記軸方向一方側に突出した第2突出部と、前記第1スロット収容部及び前記第2スロット収容部を接続して前記ステータコアの前記軸方向一方側とは反対側の軸方向他方側に配置されたコイルエンド部と、を有するコイル線であって、前記第1突出部及び前記第2突出部のそれぞれに端部を有する複数のコイル線と、
同じ相に用いられる異なる前記コイル線のそれぞれ1つずつの前記端部にそれぞれ接合される2つの接合部と、前記2つの接合部同士を連結する連結部と、を有し、接合された前記端部同士を電気的に接続する複数の接続部材と、を備え、
同じ前記スロットに収容された前記複数のコイル線は同じ相に用いられ、同じ相に用いられる前記スロットは前記周方向に所定間隔を空けて1周に亘って配置され、かつ、異なる相の前記スロットに対して位相を異ならせて配置され、同じ相に用いられる複数の前記スロットに収容された前記複数のコイル線は前記複数の接続部材により接続されることで、前記周方向の1周に亘って波巻きにより巻回されたコイルを形成し、
同じ相に用いられる前記複数のコイル線の前記端部同士を接続する前記複数の接続部材は、前記周方向の1周に亘って同一平面上に配置され集合群としての一層の環状接続部を形成し、
複数の前記環状接続部は、相ごとに形成されて、前記ステータコアに対して前記軸方向一方側に層状に重ねて設けられ、
前記軸方向一方側から視て、各相の前記環状接続部の前記接続部材の前記接合部のそれぞれは、他の前記環状接続部の前記接続部材の前記連結部に重ならず、前記軸方向に露出している、
ステータ。
【請求項2】
それぞれの前記コイル線において、前記第1スロット収容部及び前記第1突出部の合計長さである第1脚部長さと、前記第2スロット収容部及び前記第2突出部の合計長さである第2脚部長さとは、同じ長さであり、
同じ相に用いられる前記複数のコイル線は、前記第1脚部長さ及び前記第2脚部長さが同じである、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記端部は、前記接続部材を前記軸方向から組み付ける際に前記接合部が突き当たって位置決めされる位置決め部を有する、
請求項1又は2に記載のステータ。
【請求項4】
相ごとに形成された前記環状接続部は、同一形状であり、前記接合部が前記軸方向に露出するように、位相をずらして層状に重ねて設けられている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気自動車等の車両に搭載される回転電機に使用されるステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電気自動車等の車両に搭載される回転電機に使用されるステータとしては、複数のスロットが周方向に配列された円環形状のステータコアと、ステータコアに収容されたコイル線とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。このステータでは、コイル線のステータコアから軸方向の両側に突出した突出部は、接続部材(バスバー)により接続され、これらコイル線と接続部材とによりコイルを形成する。このステータでは、同一の相を担うコイル線同士を接続する接続部材を周方向に複数配置し、これらを樹脂製の円環形状のホルダにより保持するようにした円環形状の接続リング(バスリング)が用いられている。
【0003】
ステータの組立時には、コイル線を収容したステータコアに軸方向から接続リングを設置し、接続部材とコイル線とを接合することで、1つの相のコイルを形成する。そして、この接続リングに重ねて別の接続リングを積層して設置し、その接続部材とコイル線とを接合することで、別の相のコイルを形成する。この作業を相の数に応じて繰り返し、全ての相のコイルを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載したステータでは、接続リングを設置してコイル線との接合を行い、また別の接続リングを積層してコイル線との接合を行うことを相の数だけ繰り返す必要があるので、工数が多くなってしまい、組立時の作業性が悪いという課題があった。
【0006】
そこで、組立時の作業性を向上できるステータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るステータは、回転電機に用いられるステータにおいて、複数のスロットが周方向に配列された円環形状のステータコアと、前記スロットに収容された第1スロット収容部と、前記第1スロット収容部に連続して前記ステータコアの中心軸の軸方向一方側に突出した第1突出部と、前記第1スロット収容部が収容された前記スロットとは異なる前記スロットに収容された第2スロット収容部と、前記第2スロット収容部に連続して前記ステータコアの前記軸方向一方側に突出した第2突出部と、前記第1スロット収容部及び前記第2スロット収容部を接続して前記ステータコアの前記軸方向一方側とは反対側の軸方向他方側に配置されたコイルエンド部と、を有するコイル線であって、前記第1突出部及び前記第2突出部のそれぞれに端部を有する複数のコイル線と、同じ相に用いられる異なる前記コイル線のそれぞれ1つずつの前記端部にそれぞれ接合される2つの接合部と、前記2つの接合部同士を連結する連結部と、を有し、接合された前記端部同士を電気的に接続する複数の接続部材と、を備え、同じ前記スロットに収容された前記複数のコイル線は同じ相に用いられ、同じ相に用いられる前記スロットは前記周方向に所定間隔を空けて1周に亘って配置され、かつ、異なる相の前記スロットに対して位相を異ならせて配置され、同じ相に用いられる複数の前記スロットに収容された前記複数のコイル線は前記複数の接続部材により接続されることで、前記周方向の1周に亘って波巻きにより巻回されたコイルを形成し、同じ相に用いられる前記複数のコイル線の前記端部同士を接続する前記複数の接続部材は、前記周方向の1周に亘って同一平面上に配置され集合群としての一層の環状接続部を形成し、複数の前記環状接続部は、相ごとに形成されて、前記ステータコアに対して前記軸方向一方側に層状に重ねて設けられ、前記軸方向一方側から視て、各相の前記環状接続部の前記接続部材の前記接合部のそれぞれは、他の前記環状接続部の前記接続部材の前記連結部に重ならず、前記軸方向に露出している。
【発明の効果】
【0008】
本ステータによると、組立時の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るステータの斜視図であり、(a)は上から視た状態、(b)は下から視た状態である。
【
図2】(a)は実施形態に係るステータの側面図、(b)は模式図である。
【
図3】(a)は実施形態に係るバスリングの平面図であり、(b)は接続ユニットの平面図である。
【
図4】(a)は実施形態に係る層状に重ねたバスリングの斜視図であり、(b)は層状に重ねたバスリングの平面図である。
【
図5】(a)は実施形態に係る端部と接合部との形状を示す分解斜視図、(b)はその接合状態を示す斜視図、(c)は変形例に係る端部と接合部との形状を示す分解斜視図、(d)はその接合状態を示す斜視図である。
【
図6】(a)は他の変形例に係る端部と接合部との形状を示す分解斜視図、(b)はその接合状態を示す斜視図、(c)は更に他の変形例に係る端部と接合部との形状を示す分解斜視図、(d)はその接合状態を示す斜視図である。
【
図7】実施形態に係るコイル線を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、開示の実施形態を、
図1(a)~
図7を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態では、ステータは、例えば回転電機としての三相交流モータに使用されるものとしている。また、この三相交流モータは、相としてU1,U2,V1,V2,W1,W2の6相を有するものとしている。
【0011】
[ステータの構成]
まず、
図1(a)及び
図1(b)を参照して、ステータ1の構成について説明する。ステータ1は、略円環形状に形成され、ステータコア10と、コイルの一例であるコイルセット20と、バスバー端子(不図示)と、硬化したワニス(不図示)とを有している。ステータコア10とコイルセット20とバスバー端子とは、ワニスにより一体的に固定されている。尚、
図1(a)~
図2(b)は、ステータコア10にコイルセット20を形成した後、バスバー端子を設ける前の状態を示している。
【0012】
ステータコア10は、略円環形状の電磁鋼板が積層されて形成されており、その外周側には不図示のモータケースにステータコア10を固定するためのリブ11及びボルト孔12と、内周面側に設けられた周方向に配列された複数のティース13とを有している。隣り合うティース13の間には、コイルセット20を収納するための複数のスロット14が周方向に配列されて形成されている。尚、本実施形態では、
図1(a)における上側をステータ1の中心軸の軸方向一方側として第1側D1とし、図中下側をステータ1の中心軸の軸方向他方側として第2側D2とする。
【0013】
本実施形態では、6相のそれぞれで1つずつの波巻きのコイルを形成しており、コイルセット20は6つのコイルを有している。各コイルは、複数のコイル線30と、環状接続部の一例であるバスリング40とを有している。
【0014】
図7に示すように、各コイル線30は、絶縁塗装が施された断面矩形状の平角導線からなる。1本のコイル線30は、全体として略U字形状を有しており、スロット14に収容された第1スロット収容部33Aと、第1スロット収容部33Aに連続してステータコア10の第1側D1に突出した第1突出部31Aと、第1スロット収容部33Aが収容されたスロット14とは異なるスロット14に収容された第2スロット収容部33Bと、第2スロット収容部33Bに連続してステータコア10の第1側D1に突出した第2突出部31Bと、第1スロット収容部33A及び第2スロット収容部33Bを接続してステータコア10の第2側D2に配置されたコイルエンド部32と、を有している。また、各コイル線30は、第1突出部31A及び第2突出部31Bのそれぞれに端部31aを有している。また、コイルエンド部32は、第1スロット収容部33A及び第2スロット収容部33Bに連続し、第1スロット収容部33A及び第2スロット収容部33Bに対して曲折して設けられている。コイルエンド部32は、例えば、第1スロット収容部33A及び第2スロット収容部33Bを直線状に連結する形状であったり、あるいは、他の相のコイル線30に対してレーンチェンジを可能なように湾曲又は部分的に屈曲した形状を有しており、形状は限定されない。尚、本実施形態では、第1スロット収容部33A及び第2スロット収容部33Bを総括してスロット収容部33とし、第1突出部31A及び第2突出部31Bを総括して突出部31とする。
【0015】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、本実施形態では、各スロット14に同じ相の8本のコイル線30が収容されている。また、本実施形態では、コイル線30のスロット収容部33は、位置によって断面形状が異なる異形断面コイルを採用しており、スロット14内での高占積率化を図っている。但し、コイル線30としては異形断面コイルを適用することには限られず、位置によって断面形状が同じであるコイルを適用してもよい。また、コイル線30に対しては、樹脂押出成形による被覆を行うようにしている。これにより、低コスト化を図ることができる。
【0016】
バスリング40は、円環形状であり、相ごとに一層ずつ設けられ、同じ相のコイル線30同士を電気的に接続する。本実施形態では、6つのバスリング40が相ごとに形成されて、ステータコア10に対して第1側D1に層状に重ねて設けられている。バスリング40の詳細な構成については、後述する。
【0017】
同じ相に用いられるスロット14は周方向に所定間隔を空けて1周に亘って配置され、かつ、異なる相のスロット14に対して位相を異ならせて配置されている。そして、同じ相に用いられる複数のスロット14に収容された複数のコイル線30は、バスリング40により接続されることで、周方向の1周に亘って波巻きにより巻回されたコイルを形成している。
【0018】
次に、バスリング40の構成について、
図3(a)~
図4(b)を用いて詳細に説明する。まず、バスリング40の単体について、説明する。
図3(a)に示すように、1つのバスリング40は、複数(本実施形態では8つ)の接続ユニット41の集合体からなり、
図3(b)に示すように、各接続ユニット41は4つの接続部材42~45を有している。これら4つの接続部材42~45は、周方向に沿って並列に配置されており、外径側から第1外径側接続部材42、第2外径側接続部材43、第1内径側接続部材44、第2内径側接続部材45としている。
【0019】
第1外径側接続部材42は、同じ相に用いられる異なるコイル線30のそれぞれ1つずつの端部31aにそれぞれ接合される2つの接合部42aと、2つの接合部42a同士を連結する連結部42bと、を有しており、接合された端部31a同士(端部同士)を電気的に接続する。第1外径側接続部材42は、例えば、プレス成型により平板形状に形成されたアルミ板からなり、接合部42aは端部31aが貫通する穴形状としている。アルミ板の適用により、コスト低減を図っている。第1外径側接続部材42には絶縁塗装が施され、接合部42aのみで塗装が除去されて端部31aに接続できるように露出している。同様に、第2外径側接続部材43は、2つの接合部43aと連結部43bとを有し、第1内径側接続部材44は、2つの接合部44aと連結部44bとを有し、第2内径側接続部材45は、2つの接合部45aと連結部45bとを有している。即ち、これら接続部材42~45は、同じ相に用いられるコイル線30の端部31a同士を接続するものであり、周方向の1周に亘って同一平面上に配置され集合群としての一層のバスリング40を形成する。また、接続部材42~45で電気抵抗が大きくなってしまうことを回避するために、接続部材42~45の断面積はコイル線30の断面積よりも大きくすることが好ましい。
【0020】
また、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、端部31aは、突出部31の先端部が段差部31bを有する段差形状に形成されており、例えば接合部42aは組み付け時に穴部を端部31aに嵌合し、段差部31bで軸方向に支持されるようになっている。組み付け後、第1側D1からレーザ溶接機などを利用し、溶接部50において溶着により接合する。即ち、端部31aは、例えば接続部材42を軸方向から組み付ける際に接合部42aが突き当たって位置決めされる位置決め部の一例としての段差部31bを有している。尚、本実施形態では端部31aと接合部42aとを溶接により接合するようにしているが、これには限られず、例えば、圧入による圧接や、超音波接合による接合であってもよい。
【0021】
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第1外径側接続部材42の連結部42bと、第2外径側接続部材43の連結部43bとは、接合部42aよりも外径側に配置されている。第1内径側接続部材44の連結部44bと、第2内径側接続部材45の連結部45bとは、接合部45aよりも内径側に配置されている。
【0022】
また、同じ形状の8つの接続ユニット41を周方向に並べて配置することで、1つのバスリング40が形成される。同じスロット14に収容される8本のコイル線30については、当該スロット14の周方向一方側に配置された接続ユニット41の接合部42a~45aと、当該スロット14の周方向他方側に配置された接続ユニット41の接合部42a~45aとが、径方向に交互に並んで端部31aに接合される(
図4(b)参照)。
【0023】
次に、バスリング40を層状に重ねた構成について、説明する。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、ステータコア10の第1側D1には、バスリング40が6層に重ねて設けられている。ここでは、U1相のバスリング40
U1と、U2相のバスリング40
U2と、V1相のバスリング40
V1と、V2相のバスリング40
V2と、W1相のバスリング40
W1と、W2相のバスリング40
W2とが、順に重ねられている。
【0024】
U1相のバスリング40
U1は、ステータコア10の端面10aに対して、所定間隔S(
図2(a)参照)を空けるようにして端部31aにより支持された状態で接合されている。これにより、U1相のバスリング40
U1が、スロット14に設けられた不図示の絶縁紙の第1側D1の端部に干渉することを抑制できる。U1相のバスリング40
U1よりも第1側D1のバスリング40は、いずれも絶縁塗装を挟んで積層されている。即ち、各バスリング40同士は直接接してはいないが、支持はされている。
【0025】
本実施形態では、コイル線30の端部31aは、ステータコア10の径方向から視て、接合するバスリング40と同じ高さになるようにしている。即ち、同じスロット14に収容された複数のコイル線30の端部31aは、ステータコア10の径方向から視て、それら端部31aに接続される一層のバスリング40に重なるようにしている。また、相ごとにバスリング40とステータコア10の端面10aからの距離が異なるため、
図2(b)に示すように、相ごとにステータコア10の端面10aから端部31aまでの距離、即ち突出部31の長さを異ならせている。
【0026】
本実施形態では、
図7に示すように、それぞれのコイル線30において、第1スロット収容部33A及び第1突出部31Aの合計長さである第1脚部長さL1と、第2スロット収容部33B及び第2突出部31Bの合計長さである第2脚部長さL2とは、同じ長さであるようにしている。そして、同じ相に用いられる複数のコイル線30では、第1脚部長さL1及び第2脚部長さL2が全て同じであるようにしている。
【0027】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、相ごとに形成されたバスリング40は、同一形状であり、位相をずらして層状に重ねて設けられており、配線の平面交差を実現している。また、連結部42b,43bは接合部42aよりも外径側に配置され、連結部44b,45bは、接合部45aよりも内径側に配置されている。これにより、第1側D1から視たときに、各相のバスリング40の接続部材42~45の接合部42a~45aのそれぞれは、他のバスリング40の接続部材42~45の連結部42b~45bに重ならず、軸方向の第1側D1に露出している。
【0028】
ステータ1を組み立てる際は、スロット14に絶縁紙を設け、コイル線30を組み付ける。そして、6層のバスリング40の組立体46を、第1側D1からコイル線30の全ての端部31aに装着し、全ての接合部42a~45aに対して、溶接などにより接合作業を行う。このとき、第1側D1から視たときに、各相のバスリング40の接続部材42~45の接合部42a~45aのそれぞれは軸方向に露出しているので、全ての接合部42a~45aに対して、新たにバスリング40を重ねるなどの他の作業を挟むことなく、1つの方向から一気に行うことができる。これにより、ステータ1の組立時の作業性を向上することができる。その後はバスバーを取り付け、ワニスで固めるようにする。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のステータ1によると、ステータ1を第1側D1からから視て、各相のバスリング40の接続部材42~45の接合部42a~45aのそれぞれは、他のバスリング40の接続部材42~45の連結部42b~45bに重ならず、軸方向に露出している。このため、ステータ1の組立時において、全ての接合部42a~45aに対して、新たにバスリング40を重ねるなどの他の作業を挟むことなく、1つの方向から一気に行うことができる。これにより、バスリングを設置してコイル線との接合を行い、また別のバスリングを積層してコイル線との接合を行うことを相の数だけ繰り返す場合に比べて、作業性を向上することができる。また、組立後は、接合部42a~45aが露出しているので、検査を容易に行うことができる。
【0030】
また、本実施形態のステータ1によると、相ごとに形成されたバスリング40は同一形状であるので、部品の共通化を図ることができる。更に、接続ユニット41も同じ形状であるので、部品の共通化を図ることができる。
【0031】
また、本実施形態のステータ1によると、同じスロット14に収容されるコイル線30の長さを同じにしている。これにより、同じ相でのコイルの長さを同じにできるので、抵抗値の差の発生を抑制できる。
【0032】
また、本実施形態のステータ1によると、各バスリング40を平面状として、かつ、相ごとに突出部31の長さを変えているので、全体として軸方向の高さを低く抑えることができる。即ち、異なるバスリング40間でのクロスポイントが無く、多層化しても層の厚さを足しただけの厚さに抑えることができる。このため、ステータ1の小型化を図ることができる。また、平面状のバスリング40を第1側D1から取り付けているので、突出部31を曲げたり捩ったりする必要がなく、端部31aの位置精度やコイル線30の被膜の剥がれを考慮する必要がない。また、バスリング40を平面状にすることで、全ての接合部42a~45aの形状を統一することができる。
【0033】
また、本実施形態のステータ1によると、組み付け時において、接合部42aは穴部を端部31aに嵌合し、段差部31bで軸方向に支持される。このため、段差部31bが無くバスリング40を何らかの治具によって保持した状態で接合作業を行う場合に比べて、作業性を向上することができる。
【0034】
上述した本実施形態のステータ1では、バスリング40、即ち接続部材42~45としてはプレス成型により平板形状に形成されたアルミ板を適用した場合について説明したが、これには限られず、銅製などの他の材質でもよく、あるいは、線状部材を切断して形成されたものとしてもよい。例えば、アルミ線、被覆付きアルミ線、銅板、銅線、銅被覆線などを適用することができる。
【0035】
また、本実施形態のステータ1では、バスリング40の配策として、外径側と内径側との両方に設けた場合について説明したが、これには限られず、スロット14に収容されるコイル線30の本数などに応じて適宜変更することができる。例えば、スロット14に収容されるコイル線30が4本である場合、外径側のみ、あるいは、内径側のみに設けるようにしてもよい。
【0036】
また、本実施形態のステータ1では、6層の重なり順は、U1,U2,V1,V2,W1,W2としたが、これには限られない。例えば、U1,V1,W1,W2,V2,U2とすることで、UVW相の相ごとのコイル線30の長さを同じにできるので、UVW相間の抵抗値の差分を小さくすることができる。
【0037】
また、本実施形態のステータ1では、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、端部31aは突出部31の厚さ方向両側を切除した形状にした場合について説明したが、これには限られず、
図5(c)及び
図5(d)に示すように、端部131aは突出部131の厚さ方向両側及び幅方向両側を切除した形状にしてもよい。この場合も、段差部131bによって第1外径側接続部材142の接合部142aを支持して、溶接部150において溶接することができる。又は、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、端部231aは第2突出部231の幅方向一方側を切除した形状にしてもよい。この場合も、段差部231bによって第1外径側接続部材242の接合部242aを支持して、溶接部250において溶接することができる。あるいは、
図6(c)及び
図6(d)に示すように、端部331aは第2突出部331の幅方向一方側及び厚さ方向一方側を切除した形状にしてもよい。この場合も、段差部331bによって第1外径側接続部材342の接合部342aを支持して、溶接部350において溶接することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…ステータ、10…ステータコア、14…スロット、20…コイルセット(コイル)、30…コイル線、31…突出部(第1突出部、第2突出部)、31A…第1突出部、31a,131a,231a,331a…端部、31B…第2突出部、31b,131b,231b,331b…段差部(位置決め部)、33…スロット収容部(第1スロット収容部、第2スロット収容部)、33A…第1スロット収容部、33B…第2スロット収容部、40…バスリング(環状接続部)、42…第1外径側接続部材(接続部材)、42a,43a,44a,45a,142a,242a,342a…接合部、42b,43b,44b,45b…連結部、43…第2外径側接続部材(接続部材)、44…第1内径側接続部材(接続部材)、45…第2内径側接続部材(接続部材)、D1…第1側(軸方向一方側)、D2…第2側(軸方向他方側)