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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157262
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】再生装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/34 20060101AFI20221006BHJP
   H05B 6/80 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B01J20/34 B
H05B6/80 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061384
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 有理
(72)【発明者】
【氏名】奥野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 健二
【テーマコード(参考)】
3K090
4G066
【Fターム(参考)】
3K090AA02
3K090AB20
3K090BA03
3K090PA04
4G066CA43
4G066GA01
4G066GA08
(57)【要約】
【課題】加熱炉の内部において吸着部材から気化した水蒸気の拡散を防ぎ、結露水を速やかに排出することができ、かつマイクロ波による被加熱物質の加熱効率を向上する。
【解決手段】再生装置1は、水分子を吸着するデシカントロータ11と、デシカントロータ11の少なくとも一部を囲む内部に発振器13Bによって電磁波が出力される金属製の加熱炉13と、加熱炉13の内部においてデシカントロータ11を囲う誘電体で形成された被覆部材15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分子を吸着する吸着部材と、
前記吸着部材の少なくとも一部を囲む内部に発振器によって電磁波が出力される金属製の加熱炉と、
前記加熱炉の内部において前記吸着部材を囲う誘電体で形成された被覆部材と、
を備える、再生装置。
【請求項2】
前記被覆部材は、前記加熱炉の外部に通じる開口部が形成される、請求項1に記載の再生装置。
【請求項3】
前記被覆部材は、誘電損失係数が0.0005以下の材料で形成される、請求項1または請求項2に記載の再生装置。
【請求項4】
前記被覆部材は、前記加熱炉の内部において前記吸着部材を囲む厚みが1mm未満に形成された部分を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ波を使用して液体を気化させる従来技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-236984号公報
【特許文献2】特開2012-081426号公報
【特許文献3】特開2012-088041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は、液体を気化させることが示されているが、気化した水蒸気を回収する技術について示されていない。吸着部材に吸着された水分子をマイクロ波によって加熱し気化した水蒸気を回収する再生装置では、吸着部材を囲んだ内部にマイクロ波が出力される金属製の加熱炉を用い、当該加熱炉から水蒸気を回収することが考えられる。
【0005】
マイクロ波は、誘電体固有の物性値である比誘電率(εr)、誘電正接(tanδ)の値によって誘電損失係数(εr・tanδ)、吸収電力(P)が大きく変わることが知られている([数1]参照。)。例えば、誘電損失係数(εr・tanδ)の大きく異なる2種類の物質(例えば、水とPP(ポリプロピレン)など)を加熱炉内に入れ、同時にマイクロ波を照射すると、誘電損失係数(εr・tanδ)が大きい物質にマイクロ波が集中的に吸収加熱され、小さい物質は吸収せず加熱されない。このように、マイクロ波は、選択的に物質を加熱する特徴があるが、加熱炉内に、被加熱物質と、それとは別の誘電損失係数(εr・tanδ)の大きな物質が共存してしまうと、被加熱物質に吸収される電力(P)が小さくなり、加熱効率が低下するといった課題があった。例えば、加熱炉内に水分子を吸着した吸着部材を入れ、マイクロ波加熱をした際に、吸着部材から脱離した水蒸気が、加熱炉内に拡散し加熱炉内で結露する。このとき、加熱炉内で結露した水が残存した状態で、マイクロ波加熱を行うと、マイクロ波電力が吸着部材内の水分子と残存する結露水へ同時に印加され、本来加熱したかった吸着部材内の水分子の加熱効率が低下する。
【0006】
また、吸着部材を囲んだ内部にマイクロ波が出力される金属製の加熱炉を用い、当該加熱炉から水蒸気を回収する場合、吸着部材から気化した水蒸気が加熱炉の内部で拡散する。この拡散した水蒸気が、加熱炉内に水蒸気が滞留してしまうと、脱離させた水蒸気が、吸着部材に再度吸着してしまう現象が発生する。これは、加熱脱離させた水蒸気が空間内にとどまっている状態において、例えば加熱ムラや、吸着部材の移動(回転など)により、加熱炉内の吸着部材の温度が低い領域が水蒸気と接することで発生する。すなわち、本来脱離し凝縮させたかった水分量が再吸着で減少し、エネルギー効率の観点から好ましくない。
【0007】
一般的に、室温と脱離水蒸気の温度差にて水蒸気を凝縮させる場合、水蒸気の温度、濃度(水蒸気分圧)が低いと凝縮は難しくなる。加熱炉内の空間体積が大きいほど、水蒸気の濃度が薄まり、また脱離水蒸気が持っている熱エネルギーを加熱炉内空気へ渡しやすくなる。この対策としては、加熱炉内で空間を適切に小さく区切ることが好ましい。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、加熱炉の内部において吸着部材から気化した水蒸気の拡散を防ぎ、結露水を速やかに排出することができ、かつマイクロ波による被加熱物質の加熱効率が高い再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様の再生装置は、水分子を吸着する吸着部材と、吸着部材の少なくとも一部を囲む内部に発振器によって電磁波が出力される金属製の加熱炉と、加熱炉の内部において吸着部材を囲う誘電体で形成された被覆部材と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
一態様の再生装置によれば、加熱炉の内部において吸着部材から気化した水蒸気の飛散を防止でき、かつマイクロ波による被加熱物質の加熱効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る再生装置の構成図である。
図2図2は、実施形態に係る再生装置の加熱炉の外観図である。
図3図3は、実施形態に係る再生装置の他の例の構成図である。
図4図4は、実施形態に係る再生装置の構成図である。
図5図5は、加熱炉のアンテナを示す図である。
図6図6は、加熱炉内の電界分布を示す図である。
図7図7は、加熱炉の内壁を流れる電流の方向を示す図である。
図8図8は、伝熱ルートを説明する図である。
図9図9は、吸着部材と空気温度との関係を説明する図である。
図10図10は、加熱炉の内壁を流れる電流の方向および開口部の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する再生装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によって、本願の開示する再生装置が限定されるものではない。
【0013】
実施形態の再生装置1は、空気中の水分子を吸着し、吸着した水分子を加熱して水蒸気にし、水蒸気を凝縮して水分子に再生する。この再生装置1は、図1に示すように、デシカントロータ11と、送風用ファン12と、加熱炉13と、凝縮器14と、被覆部材15と、を含む。
【0014】
デシカントロータ11は、円板形状の中心部に板厚方向に貫通する貫通孔11Aが形成された円環形状である。デシカントロータ11は、板厚方向に通気空洞が設けられた多孔質ハニカム構造に形成されている。デシカントロータ11は、支持部11Bによって、貫通孔11Aを中心としてデシカントロータ11の厚み方向に延びる軸の廻りに回転自在に支持されている。デシカントロータ11は、図示しない駆動手段によって回転駆動される。このデシカントロータ11は、耐熱性を有する紙(以下基材という、例えばガラスペーパーなど)でハニカム構造が形成され、その基材の表面にデシカント材が接着加工されている。デシカント材は、多数の細孔を有し、その細孔付近を空気が通過する際、空気中に含まれる水分子を吸着する。このように、デシカントロータ11は、水分子を吸着する吸着部材として構成される。
【0015】
デシカントロータ11を回転自在に支持する支持部11Bは、図4に示すように、デシカントロータ11の貫通孔11Aに挿通されてデシカントロータ11を回転可能に支持する回転支持部11Baを有している。支持部11Bは、デシカントロータ11の板厚方向に空気を通過させるように貫通して形成されている。従って、支持部11Bは、デシカントロータ11に空気を案内する案内部材としても構成されている。デシカントロータ11は、その外周に歯車11Caが設けられる。支持部11Bは、歯車11Caに噛み合う駆動歯車11Cbを駆動するモータ11Ccが設けられる。これにより、デシカントロータ11は、支持部11Bによって回転自在に支持される。また、支持部11Bは、図には明示しないが、デシカントロータ11に向けて空気を通過させる部分にフィルタが設けられ、デシカントロータ11に向けて案内する空気に含まれる、例えば、PM(Particulate Matter)2.5、砂及び花粉などを捕捉できるように構成されていてもよい。
【0016】
送風用ファン12は、ダクト12Aおよび支持部11Bを介してデシカントロータ11に向けて空気を送る。送風用ファン12によって送られた空気は、デシカントロータ11のハニカム構造を通過し、その過程で水分子がデシカント材に吸着される。
【0017】
加熱炉13は、実施形態ではデシカントロータ11の円環形状の上半部を囲む金属(非磁性金属)の筐体13Aで構成される。筐体13Aは、回転するデシカントロータ11の一部が通過できる開口13Aaが形成されている。また、その際の、加熱炉のアンテナ13Cの配置は、図5および図6に示すように配置しており、加熱炉内の電界分布は図6のように電界強度のピーク部分が3つ存在する(TE103モード)。デシカントロータ11は、自身の回転により開口13Aaを介して筐体13Aの内部に一部が連続して通過する。加熱炉13は、2,4GHzから2.5GHzなどの特定の周波数帯のマイクロ波(電磁波)を出力する発振器13Bを有する。発振器13Bが出力するマイクロ波によって加熱炉13の筐体13Aの内部のデシカントロータ11が加熱される。この加熱により、デシカントロータ11のデシカント材に吸着された水分子や、デシカントロータ11の基材(ガラスペーパーなど)表面に付着した水分子が加熱され蒸発する。また、筐体13Aには、デシカントロータ11の円板形状の板厚方向で対向する部分に、開口部13Abが形成されている。開口部13Abの孔は、電磁波漏洩防止の観点から、スリット形状の長手方向の寸法Lが、出力されるマイクロ波の最大周波数における、管内波長λgに対してλg/4未満に形成されている。また、その孔の向きは、加熱炉13の内壁を流れる電流の方向に平行方向に開口して配置されている(電流方向に関しては、図7参照。図7は加熱炉13の筐体13Aの一部を切り取って示している。)。なお、電磁波漏洩防止のため、開口部13Abの孔は、出力されるマイクロ波の最大周波数における、管内波長λgに対してλg/4未満のパンチングメタルからなる孔を形成してもよい。実施形態の再生装置1によれば、このような開口部13Abの配置および形状により、電磁波漏れを抑制できる。
【0018】
発振器13Bは、マイクロ波の発振方式が例えばシリコン(Si)半導体、窒化ガリウム(GaN)半導体などを用いた半導体方式の発振器であり、ISMバンドとして認められている915MHzまたは2450MHzなど特定の周波数のマイクロ波を出力できる。発振器13Bは、半導体方式でマイクロ波を出力することから、出力するマイクロ波の周波数の制御が可能である。
【0019】
凝縮器14は、筐体13Aの外部に配置される。凝縮器14は、加熱炉13の筐体13Aの一側に接続されている。回収部14Aは、凝縮器14に接続されている。循環部14Bは、加熱炉13の筐体13Aの他側に接続され、かつ回収部14Aに接続されている。従って、凝縮器14は、回収部14A、および循環部14Bが、加熱炉13の筐体13Aを途中に介在して一連の循環経路を構成する。再生ファン14Cは、回収部14Aと循環部14Bとの間に設けられている。再生ファン14Cは、凝縮器14、回収部14A、循環部14B、および筐体13Aがなす一連の循環経路に湿り空気の循環流を生じさせる。ここで、凝縮器14が接続された筐体13Aの一側と、循環部14Bが接続された筐体13Aの他側とは、デシカントロータ11の円板形状の板厚方向で対向する部分である。従って、再生ファン14Cによる循環流は、加熱炉13の筐体13Aの内部において、デシカントロータ11の多孔質ハニカム構造を通過するように流通する。上述したように、加熱炉13の筐体13Aの内部では、マイクロ波によって加熱されたデシカントロータ11の水分子が蒸発する。蒸発した水蒸気は、循環流によって凝縮器14に至り凝縮して水になる。なお、送風用ファン12によってデシカントロータ11に向けて送られる空気は、凝縮器14の周りにも吹き付けられ凝縮器14を冷却することで、凝縮器14で水蒸気から水への凝縮促進にも用いられる。また、凝縮した水は、凝縮器14から回収部14Aに至り、回収部14Aの回収孔14Aaから循環経路の外部に排出される。このように、実施形態の再生装置1は、空気中の水分子を吸着し、吸着した水分子を加熱して水蒸気にし、水蒸気を凝縮して水に再生する。
【0020】
被覆部材15は、加熱炉13の筐体13Aの内部に設けられている。被覆部材15は、筐体13Aの内部において、デシカントロータ11を覆う。具体的に、被覆部材15は、被覆部15Aと、開口部15Bと、を含む。
【0021】
被覆部15Aは、半円形の筒状に形成され、筐体13Aの内部に配置されるデシカントロータ11の円環形状の上半部の周りを囲うように、デシカントロータ11の貫通孔11Aの一部に通して配置されている。また、実施形態の被覆部15Aは、デシカントロータ11の円環形状の下半部を外部に出し、デシカントロータ11の回転を妨げないように配置されている。また、実施形態の被覆部15Aは、デシカントロータ11の板厚方向をそれぞれ塞ぐ閉塞部15Aaが設けられている。
【0022】
開口部15Bは、加熱炉13の筐体13Aの内部から、開口部13Abを介し外部に通じて設けられている。開口部15Bは、筐体13Aの内部において、被覆部15Aの各閉塞部15Aaに設けられている。開口部15Bは、それぞれの閉塞部15Aaから筐体13Aを貫通して外部に延びる筒形状に形成されている。従って、開口部15Bは、被覆部15Aの各閉塞部15Aaに対応してそれぞれ設けられ、デシカントロータ11の板厚方向で筐体13Aの一側と他側とに貫通して外部に開口して設けられている。また、実施形態の開口部15Bは、複数が筐体13Aの外部に延びて設けられている。なお、開口部15Bは、筐体13Aの一側と他側とでそれぞれ1つ以上設けられていれば良い。
【0023】
このように、被覆部材15は、被覆部15Aと開口部15Bとによって、筐体13Aの内部においてデシカントロータ11を囲い、加熱炉13の筐体13Aの内壁からデシカントロータ11を隔離する隔壁として構成される。また、被覆部材15は、筐体13Aの一側の外部に延びる開口部15Bに凝縮器14が接続される。また、被覆部材15は、筐体13Aの他側の外部に延びる開口部15Bに循環部14Bが接続される。開口部15Bに凝縮器14や循環部14Bが接続される間は、パッキン14Eで密閉される。従って、被覆部材15は、加熱炉13の筐体13Aの内部に配置され、凝縮器14と循環部14Bとが接続されることで、上述した循環経路の一部である密閉された内部流路を構成する。
【0024】
また、被覆部材15は、誘電体で形成されている。実施形態の誘電体は、マイクロ波によって加熱されない材料である。実施形態において半導体式発振器である発振器13Bが出力するマイクロ波に対して加熱されない材料は、誘電体のマイクロ波吸収電力(加熱効率)の数式(1)において、誘電損失が低い、つまり数式(1)におけるεγ・tanδが小さく、Pが小さい材料である。このような材料は、誘電損失係数が0.0005以下の材料が好ましい。誘電損失係数が0.0005以下の材料は、熱変形温度が100℃未満の汎用プラスチックであり、例えば高密度ポリエチレン(HDPE:high density polyethylene)や、ポリプロピレン(PP:polypropylene)や、ポリスチレン(PS:polystyrene)が含まれる。また、誘電損失係数が0.0005以下の材料は、熱変形温度が100℃以上のエンジニアプラスチック(エンジニアリングプラスチック)材料である、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:poly tetra fluoro ethylene)や、ポリアミドイミド(PAI:polyamide-imide)や、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylenesulfide)が含まれる。また、誘電体の材料として、石英ガラスや、硼珪酸ガラスや、アルミナ(Al203)が含まれる。
【0025】
【数1】
【0026】
このように、上述した実施形態の再生装置1は、水分子を吸着する吸着部材であるデシカントロータ11と、デシカントロータ11の少なくとも一部を囲む内部に発振器13Bによって電磁波が出力される金属製の加熱炉13と、加熱炉13の内部においてデシカントロータ11を囲む誘電体で形成された被覆部材15と、を備える。
【0027】
実施形態の再生装置1によれば、被覆部材15によって加熱炉13(筐体13A)の内部においてデシカントロータ11を囲むことで、デシカントロータ11から蒸発した水蒸気が加熱炉13の内部で飛散した場合、被覆部材15が隔壁となって水蒸気が加熱炉13の内壁に付着することを防ぐ。この結果、加熱炉内の被覆部材15内部において吸着部材から気化した水蒸気の濃度、温度は低下が抑えられ、凝縮しやすい状態になる。また、実施形態の再生装置1によれば、被覆部材15を低誘電損失の誘電体で形成しているため、発振器13Bによって出力される電磁波により被覆部材15が加熱されることを防止でき、デシカントロータ11の加熱効率を向上できる。
【0028】
また、実施形態の再生装置1では、被覆部材15は、加熱炉13の外部に通じる開口部15Bが形成されている。
【0029】
実施形態の再生装置1によれば、開口部15Bによって、被覆部材15の内部に拡散
した水蒸気や結露水を加熱炉13の外部に移動できる。これにより加熱中のマイクロ波が結露水へ印加されることを防ぐことが出来、加熱効率の維持が可能である。また、水蒸気を通風により加熱炉外へ排出することで、水分子の回収効率を向上できる。
【0030】
ここで、開口部15Bは、一例としては、円板形状のデシカントロータ11の板厚方向に開口して設けられる。また、開口部15Bは、開口部13Abと同様に、加熱炉13の内壁を流れる電流の方向に平行方向に開口して配置されている(図5参照)。また、開口部15Bは、図2に示すように、矩形状のスリット形状の孔として形成されている。開口部15Bの孔の形状は、矩形状に限らず、例えば、円や楕円形状であってもよい。また、実施形態の再生装置1によれば、楕円形状や矩形状の開口部15Bは、円形状で形成した開口部15Bと比較すると、エッジが少なく、開口面積が広く通風抵抗が小さいため、水蒸気や水分子が付着し難く結露の発生が少なく好ましい。また、開口部15Bの数は、デシカントロータ11のハニカム空隙の大きさや、凝縮器14内部の空隙の大きさ等によって決まる圧力損失、及び再生循環用ファンの静圧によって調整すればよい。また、開口部15Bは、加熱炉13の筐体13Aの外部に延びて設けられていることが、筐体13Aの内壁への水蒸気や水分子の付着を防ぎ、かつ凝縮器14への水蒸気の供給を円滑に行ううえで好ましい。
【0031】
開口部13Abは、加熱炉13の加熱炉13の内壁を流れる電流の方向に平行方向に開口して配置されていればよく(図10参照。図10は加熱炉13の筐体13Aの一部を切り取って示している。)、例えば、図1において加熱炉13の筐体13Aの上面に設けるような実施例も考えられる。
【0032】
図6は、加熱炉内のマイクロ波MWの共振モードが、TE(Transverse Electric)103モードの場合を示しているが、例えばTE102やTE101、TM(Transverse Magnetic)010モードなども、実施例としては考えられる。
【0033】
また、実施形態の再生装置1では、被覆部材15は、誘電損失係数が0.0005以下の材料で形成されるのが好ましい。また、被覆部材15は、誘電損失係数が0.0005以下の汎用プラスチック材料、エンジニアリングプラスチック材料で形成されることが好ましい。また、被覆部材15は、石英ガラス、硼珪酸ガラス、アルミナのいずれかで形成されることが好ましい。
【0034】
実施形態の再生装置1によれば、被覆部材15を誘電体で形成するうえで、上記材料を適用することで、発振器13Bによって出力される電磁波により被覆部材15が加熱されることを防止でき、デシカントロータ11の加熱効率を向上できる効果を顕著に得られる。
【0035】
ここで、図3は、実施形態に係る再生装置の他の例の構成図である。
【0036】
上述した再生装置1では、凝縮器14および被覆部材15がなす循環経路において、加熱炉13の筐体13Aの外部に水蒸気を送り出し、筐体13Aの外部の凝縮器14にて筐体13Aの外部の空気(外気または室温)との温度差により凝縮を行う。加熱炉13の筐体13Aの内部の水蒸気を含む空気は、マイクロ波により加熱されて外部と比較して温度が高いが、マイクロ波方式において筐体13Aの外部に送り出される空気は温度が低い。これは、マイクロ波方式における伝熱ルートが、被加熱物質である吸着部材中の水→吸着部材→空気であり(図8参照)、吸着部材であるデシカントロータ11から距離が離れれば離れるほど、空気温度が低くなってしまうことに起因する(図9参照)。図8に示すように、伝熱ルートは、吸着部材であるデシカントロータ11に吸着されている水101がマイクロ波100によって加熱された場合、水101が得た熱をゼオライト102、デシカントロータ11、隙間11a(空気層)に分ける。ゼオライト102が受けた熱がデシカントロータ11が受けた熱以上になると、ゼオライト102から水101がデシカントロータ11の外部の空気103に脱離し始める。例えば、筐体13Aの外部に送り出される空気の温湿度が35℃、90%RHの温湿度である場合、tetens式より露点温度は31.1℃であり、外気温度が33℃以上である場合は、凝縮せず水として回収し難い。これを解消するためにはマイクロ波出力増大などが考えられるが、消費電力が大きくなる。
【0037】
これに対し、図3に示す再生装置3は、再生装置1における凝縮器14を有さず、循環経路を構成しない。また、再生装置3は、再生装置1の被覆部材15に替えて被覆部材16を有する。被覆部材16は、被覆部16Aと、開口部16Bと、を含む。
【0038】
被覆部16Aは、半円形の筒状に形成され、筐体13Aの内部に配置されるデシカントロータ11の円環形状の上半部の周りを囲うように、デシカントロータ11の貫通孔11Aの一部に通して配置されている。また、実施形態の被覆部16Aは、デシカントロータ11の円環形状の下半部を外部に出し、デシカントロータ11の回転を妨げないように配置されている。また、実施形態の被覆部16Aは、デシカントロータ11の板厚方向をそれぞれ塞ぐ閉塞部16Aaが設けられている。開口部16Bは、被覆部16Aの下部において上下方向に貫通して形成されている。
【0039】
被覆部材16は、被覆部16Aによって、筐体13Aの内部において、デシカントロータ11を囲い、加熱炉13の筐体13Aの内壁からデシカントロータ11を隔離する隔壁として構成される。また、被覆部材16は、再生装置1の被覆部材15と同じく誘電体で形成されている。
【0040】
また、再生装置3は、加熱炉13の筐体13Aの内部に冷却風を送る冷却ファン17を有する。加熱炉13の筐体13Aは、冷却風を内部に送り込まれ送り出すそれぞれの通風孔13Acが形成されている。冷却ファン17は、ダクト17Aが各通風孔13Acに接続され、冷却風が筐体13Aの内部であって閉塞部16Aaに沿って通過する経路を構成する。送風方向は、図3に図示したような、装置の鉛直下向き方向でも、図3とは逆対向でも構わない。
【0041】
また、再生装置3は、加熱炉13の筐体13Aに、排水口13Adが形成されている。排水口13Adは、上下方向に貫通して形成され、被覆部材16の開口部16Bの直下に配置されている。従って、被覆部材16の開口部16Bは、排水口13Adを介して加熱炉13の筐体13Aの内部から外部に通じて設けられている。なお、加熱炉13の筐体13Aに形成される孔である通風孔13Ac、排水口13Adは、電磁波漏れを抑制するうえで、長手方向の寸法Lが出力されるマイクロ波の最大周波数における、管内波長λgに対してλg/4未満に形成され、かつ加熱炉13の内壁を流れる電流の方向に平行方向に開口して配置されている。
【0042】
このように、実施形態の再生装置3は、被覆部材16によって加熱炉13(筐体13A)の内部においてデシカントロータ11を囲うことで、デシカントロータ11で吸着された水分子や水分子の蒸発した水蒸気が加熱炉13の内部で飛散した場合、被覆部材16が隔壁となって水分子や水蒸気が加熱炉13の内壁に付着することを防ぐ。この結果、実施形態の再生装置3によれば、加熱炉13の内部において吸着部材であるデシカントロータ11から気化した水蒸気の飛散を防止でき、かつマイクロ波による被加熱物質であるデシカントロータ11の加熱効率を向上できる。また、実施形態の再生装置3によれば、被覆部材16を誘電損失の小さな誘電体で形成しているため、発振器13Bによって出力される電磁波により被覆部材16が加熱されることを防止でき、デシカントロータ11の加熱効率を向上できる。
【0043】
また、実施形態の再生装置3は、冷却風が加熱炉13の筐体13Aの内部を通過する経路を構成することで、外部と比較して温度の高い筐体13Aの内部に温度の低い外気を送り込んで温度差を確保し、筐体13Aの内部において、被覆部材16の内部空気と熱交換を行える。従って、実施形態の再生装置3によれば、被覆部材16の内部で水蒸気を水に凝縮でき、水の回収効率を向上できる。また、再生装置3において、冷却風が通過する部分である閉塞部16Aaは、厚みを1mm未満とすることが好ましい。これは、閉塞部16Aaは、熱伝導率が低い誘電体で形成されており、金属と比べ熱交換がしにくい状態である。熱交換では閉塞部16Aaに金属を使うのが好ましいが、マイクロ波照射下中では金属エッジ部分に電界集中する可能性があり安全性への懸念が存在する。よって緩和策として誘電体である閉塞部16Aaの厚みを減らし(熱抵抗を減らし)熱交換を促進する狙いである。そして、被覆部材16の内部で凝縮された水は、被覆部材16の開口部16Bから筐体13Aの排水口13Adを介して筐体13Aの外部に排水され、回収される。
【0044】
また、実施形態の再生装置3によれば、再生装置1で示した循環経路が不要となり、循環経路を構成する部品点数を削減し、コストを低減でき、装置の小型化を図れる。
【0045】
以上で説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0046】
1,3 再生装置
11 デシカントロータ(吸着部材)
13 加熱炉
13A 加熱炉筐体
13Ac 通風孔
13Ad 排水口
13B 発振器
15 被覆部材
15A 被覆部
15Aa 閉塞部
15B 開口部
16 被覆部材
16A 被覆部
16Aa 閉塞部
16B 開口部
図1
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