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  • 特開-切削工具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157276
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23D 77/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B23D77/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061401
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 淳也
(72)【発明者】
【氏名】猿山 真由美
(72)【発明者】
【氏名】小瀧 優策
(72)【発明者】
【氏名】大澤 明浩
(72)【発明者】
【氏名】紺野 孝行
(72)【発明者】
【氏名】黒田 友也
(72)【発明者】
【氏名】田畑 京子
【テーマコード(参考)】
3C050
【Fターム(参考)】
3C050EA00
3C050EB09
(57)【要約】
【課題】切屑の細分化を図った切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具10は、軸線A0を中心に回転される切削工具であって、すくい面14と、切れ刃22と、を有する切削刃部12を備え、軸線を含む仮想平面Fに対してすくい面14を平行に対向させたとき、すくい面14は、仮想平面Fから切削工具10の回転方向Cと逆方向にずれた位置に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心に回転される切削工具であって、
すくい面と、切れ刃と、を有する切削刃部を備え、
前記軸線を含む仮想平面に対して前記すくい面を平行に対向させたとき、前記すくい面は、前記仮想平面から前記切削工具の回転方向と逆方向にずれた位置に配置されている、切削工具。
【請求項2】
請求項1に記載の切削工具において、
前記仮想平面から前記すくい面までの距離は、0.1mm以上、0.7mm以下である、切削工具。
【請求項3】
請求項1または2記載の切削工具において、
前記すくい面には、前記切れ刃に達する一端を有し、並列して配置されて、前記切れ刃に潤滑液を供給するための、複数の溝が形成されている、切削工具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の切削工具において、
前記軸線を中心とする円周に沿って配置される、複数の前記切削刃部を備える、切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転されてワークを切削する切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の部材を作成するために、切削工具を用いて、ワークが切削される。このとき、切削時に生じた切屑が、ワーク内に残留すると、部材の動作の障害となる可能性がある。通例、切削されたワークは溶剤等を用いて洗浄されるが、切屑の形状によっては、ワークの内部に引っ掛かる等して、洗浄によって除去され難いこともある。
【0003】
このため、切屑の形状等を規制して、切屑の除去を容易とする切削工具が開発されている。例えば、特許文献1は、切削工具に、多数の微小縦長溝および/または突条を形成することによって、切屑をゼンマイ状に湾曲させる技術を開示する。しかし、この技術では、切屑の長さ自体を規制することは困難である。切屑が長尺になると、ワークから除去し難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-126904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、切屑の細分化を図った切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る切削工具は、軸線を中心に回転される切削工具であって、すくい面と、切れ刃と、を有する切削刃部を備え、前記軸線を含む仮想平面に対して前記すくい面を平行に対向させたとき、前記すくい面は、前記仮想平面から前記切削工具の回転方向と逆方向にずれた位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、切屑の細分化を図った切削工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る切削工具を表す図である。
図2】先端側から切削工具を見た状態を表す図である。
図3】先端側から切削工具を見た状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る切削工具10を説明する。
【0010】
図1に示す切削工具10は、例えば、リーマであり、軸部S(Sa~Sd)、および切削刃部12(12a~12d)を備え、軸線A0を中心に回転されて、ワークWを切削する。切削工具10は、4種類の切削刃部12a~12dによって、ドリル等で開けた孔を4段階に拡張することができる。
【0011】
切削工具10の先端側Dおよび基端側Bは、図1に上下の矢印で示される。軸線A0の方向を軸方向Aとする。切削工具10の径方向Rは、軸線A0に直交する方向であり、軸線A0から外周に向かう径方向Rを径方向外側O、外周から軸線A0に向かう径方向Rを径方向内側Iとする。
【0012】
4つの軸部S(軸部Sa~Sd)は、軸線A0に沿って順に接続される。軸部Sの各々には、軸線A0を中心とする円周上に、間隔をおいて、4つの切削刃部12(12a~12d)が取り付けられる。すなわち、軸部Saに4つの切削刃部12aが取り付けられ、同様に、軸部Sb等の各々に4つの切削刃部12b等が取り付けられる。
【0013】
切削刃部12aは、すくい面14a、先端面16a、外周端面18a、斜端面20a、切れ刃22a、および溝24aを有する。すくい面14aは、切削刃部12aがワークWを切削したときに生じた切屑が通過する面である。先端面16aは、すくい面14aの先端側Dに位置する端面である。外周端面18aは、すくい面14aの径方向外側Oに位置する端面である。斜端面20aは、先端面16aと外周端面18aとの間に形成される端面である。
【0014】
切れ刃22aは、すくい面14aと斜端面20aの境界に形成される。複数の溝24aは、すくい面14a上に形成され、切れ刃22aに達する一端を有し、並列に配置されて、切れ刃22aに潤滑液を供給する。溝24aは、軸方向Aに対して、先端側Dに行くにつれて径方向外側Oに向かうように、傾斜している。この結果、溝24aは、切削工具10の回転によって生じる遠心力によって、より効果的に、切れ刃22aに潤滑液を供給できる。
【0015】
本実施形態では、次のようにして、切屑とすくい面14aとの間の摩擦抵抗が軽減される。まず、すくい面14aに溝24aを設けることで、切屑とすくい面14aとの接触面積が低減されることで、摩擦抵抗が軽減される。また、溝24aを通る潤滑液が、切れ刃22aまで到達することで、切屑は、形成された時点から、すくい面14との摩擦抵抗が低減される。
【0016】
このように、切屑とすくい面14aとの間の摩擦抵抗が低減されると、次のように、切屑がカールされ、さらに分断される。すなわち、摩擦抵抗が低減することで、切屑はすくい面14aから離間して、新たに形成された切屑の新生面が酸化され易くなる。切屑は、新生面が酸化されることによって、屈曲され、カールする。そして、酸化の進行に伴って、切屑のカールの径は縮小し、それに伴って、切屑内の応力が大きくなる。この内部応力が、切屑の破断強度に至ることで、切屑は分断される。すなわち、すくい面14aとの摩擦抵抗が低減されることによって、切屑は、カールされ、且つ、分断され易くなる。
【0017】
図2は、先端側Dから切削工具10を見た状態を表す図である。軸線A0を含む仮想平面Fを設定し、仮想平面Fに対してすくい面14aを平行に対向させている。ここで、仮想平面Fを基準として、切れ刃22aの芯高さHが定義される。芯高さHの絶対値は、仮想平面Fからの切れ刃22a(すくい面14a)の距離を意味する。また、芯高さHの正負(プラス、マイナス)は、仮想平面Fおよび回転方向Cに対する、切れ刃22aの位置によって定まる。仮想平面Fに対して回転方向C側に切れ刃22aが位置するとき、芯高さHはプラス(+)である。一方、仮想平面Fに対して回転方向Cと逆方向側に切れ刃22aが位置するとき、芯高さHはマイナス(-)である。
【0018】
図2に示すように、本実施形態では、すくい面14aは、仮想平面Fから切削工具10の回転方向Cと逆方向にずれた位置に配置されている。すなわち、切れ刃22aの芯高さHはマイナス(-)である。すなわち、切れ刃22aは、いわゆる芯下がりの状態にある。後述のように、切屑を径方向内側Iに伸び易くするためには、芯高さHは、例えば、-0.1mm~-0.7mmとすることが好ましい。芯高さHは、-0.2mm~-0.5mmとすることがより好ましい。
【0019】
図3は、先端側Dから切削工具10を見た状態を表す図である。ここでは、仮想平面Fに対して、切削工具10を回転方向Cに回転させ、すくい面14aの外側の辺(外周端面18aとの境界)が仮想平面Fに接した状態を考える。このとき、すくい面14aは、軸線A0に向かうにつれて回転方向Cと逆方向にずれるように傾斜している。
【0020】
切削刃部12aによる切削時を考慮すると、切れ刃22によって形成された切屑は、すくい面14aの傾斜に沿って、径方向内側Iに伸び易くなる。この傾向は、図1に示す切れ刃22aの刃先角度θaを60°より小さくすることで、より強めることができる。刃先角度θaは、軸線A0に垂直な面に対する切れ刃22a(斜端面20a)の傾き(角度)を意味する。刃先角度θaは、45°以下であることが好ましい。
【0021】
図2および図3に示したように、切れ刃22aを芯下がり(マイナスの芯高さH)とすることで、径方向内側Iに伸びた切屑は、例えば、切削工具10の軸部SあるいはワークWに設けられた孔部の内壁Wa等に当接して、破断、細分化され易くなる。すなわち、切屑が径方向内側Iに伸び続けると軸部S等に当接して、分断される可能性が高い。また、一旦、径方向内側Iに伸びた切屑の先端が径方向外側Oに戻ってくることもある。この場合、切屑はワークWの内壁Waに当接して、分断される可能性が高い。いずれにしても、少なくとも一旦は、切屑が径方向内側Iに伸びることで、切削工具10またはワークWに当接して、細分化される可能性が大きくなる。
【0022】
これに対して、切屑が径方向外側Oに伸びると、切削工具10およびワークW等に当接し難くなり、その結果、長尺化し易くなる。切屑は、切削刃部12aの最外周の近傍で形成されることが多いため、形成された切屑が径方向外側Oに伸びると、切削工具10等に当接せず、長尺化する可能性が高い。
【0023】
図1において、切削刃部12b~12dも、切削刃部12aと対応する構成を有する。すなわち、切削刃部12bは、すくい面14b、先端面16b、外周端面18b、切れ刃22b、および溝24bを有し、斜端面20を有しない。切れ刃22bは、すくい面14bと先端面16bの境界に形成され、刃先角度θbはゼロとなる。溝24bは、軸方向Aに沿って形成される。切削刃部12cは、すくい面14c、先端面16c、外周端面18c、切れ刃22c、および溝24cを有し、斜端面20を有しない。切れ刃22cは、すくい面14cと先端面16cの境界に形成され、刃先角度θcはゼロとなる。切削刃部12dは、すくい面14d、外周端面18d、斜端面20d、切れ刃22d、および溝24dを有する。切れ刃22dは、すくい面14dと斜端面20dの境界に形成される。本実施形態においては、刃先角度θdは45°よりも小さいものとする。
【0024】
ここで、切れ刃22b、22c、および22dは、切れ刃22aと同様、芯下がりの状態にあるものとする。この結果、切れ刃22b、22c、および22dにおいても、切屑は径方向内側Iに伸び、切削工具10あるいはワークWに当接し、破断、細分化され易くなる。また、既述のように、刃先角度θb、θc、およびθdは45°より小さいことから、切屑が径方向内側Iに伸びる傾向は一層強くなる。
【0025】
以上のように、本実施形態では、軸線A0を含む仮想平面Fに対してすくい面14を平行に対向させたとき、すくい面14は、仮想平面Fから切削工具10の回転方向Cと逆方向にずれた位置に配置されている。これにより、切屑を切削工具10の径方向内側Iに向かって伸び易くなる。この結果、切屑が切削工具10自体またはワークWの内壁Waに接触して、細分化され易くなる。
【0026】
[変形実施形態]
本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。本実施形態では、切削刃部12a~12d各々の個数を4としたが、1~3、または5以上としてもよい。
【0027】
〔実施形態から得られる発明〕
上記各実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0028】
[1]切削工具(10)は、軸線(A0)を中心に回転される切削工具であって、すくい面(14)と、切れ刃(22)と、を有する切削刃部(12)を備え、前記軸線を含む仮想平面(F)に対して前記すくい面を平行に対向させたとき、前記すくい面は、前記仮想平面から前記切削工具の回転方向と逆方向にずれた位置に配置されている。これにより、切れ刃によって形成された切屑がすくい面に沿って、切削工具の径方向内側(I)に向かって伸び易くなる。この結果、切屑が切削工具またはワークに接触して、分断され易くなる。
【0029】
[2]前記仮想平面から前記すくい面までの距離は、0.1mm以上、0.7mm以下である。切れ刃によって形成された切屑がすくい面に沿って、切削工具の径方向内側に向かって、より伸び易くなる。この結果、切屑が切削工具またはワークに接触して、分断され易くなる。
【0030】
[3]前記すくい面には、前記切れ刃に達する一端を有し、並列して配置されて、前記切れ刃に潤滑液を供給するための、複数の溝が形成されている。これにより、切屑とすくい面との接触抵抗を低減し、切屑がカールし易くなる。
【0031】
[4]前記軸線を中心とする円周に沿って配置される、複数の前記切削刃部を備える。これにより、複数の切削刃部によって、ワークを切削することができる。
【符号の説明】
【0032】
10…切削工具 12(12a~12d)…切削刃部
14(14a~14d)…すくい面 22(22a~22d)…切れ刃
24(24a~24d)…溝
図1
図2
図3