(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157279
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ロボット装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20221006BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20221006BHJP
G05B 11/36 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J19/00 A
G05B11/36 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061406
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智己
(72)【発明者】
【氏名】山下 賢人
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕介
【テーマコード(参考)】
3C707
5H004
【Fターム(参考)】
3C707HS21
3C707HS24
3C707KS37
3C707LV22
3C707LV23
3C707MT02
5H004GA02
5H004GA11
5H004GB16
5H004HB02
5H004HB03
5H004HB14
5H004KA45
5H004KA47
5H004LA06
5H004LA07
(57)【要約】
【課題】電流検出部の検出誤差が積分項に蓄積されるのを抑制して人工筋肉への流体供給のレスポンスをより向上させる。
【解決手段】ロボット装置は、少なくとも1つの人工筋肉と流体供給装置とを含む。流体供給装置は、流体の供給源と、リニアソレノイドバルブの駆動により人工筋肉に供給源側からの流体の圧力または流量を調整して出力する流体調整部と、リニアソレノイドバルブの電磁部を流れる電流を検出する電流検出部と、要求電流と電流検出部により検出される電流との差分に基づく積分項を含むフィードバック演算に基づいてPWM信号を生成して電磁部の通電を制御する制御部と、を備える。制御部は、人工筋肉に流体の供給が要求されていないときには、リニアソレノイドバルブの電磁部への要求電流を、該リニアソレノイドバルブが作動しない範囲で値0よりも大きい所定電流に設定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の供給を受けて作動する少なくとも1つの人工筋肉と、前記人工筋肉に前記流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置であって、
前記流体供給装置は、
前記流体の供給源と、
リニアソレノイドバルブの駆動により前記人工筋肉に前記供給源側からの前記流体の圧力または流量を調整して出力する流体調整部と、
前記リニアソレノイドバルブの電磁部を流れる電流を検出する電流検出部と、
前記リニアソレノイドバルブの前記電磁部に要求される要求電流と前記電流検出部により検出される電流との差分に基づく積分項を含むフィードバック演算に基づいてPWM信号を生成し、前記PWM信号により前記電磁部の通電を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記人工筋肉に前記流体の供給が要求されていないときには、前記リニアソレノイドバルブの前記電磁部への前記要求電流を、該リニアソレノイドバルブが作動しない範囲で値0よりも大きい所定電流に設定する、
ロボット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット装置であって、
前記制御部は、前記人工筋肉に対する前記流体の圧力または流量の要求に応じて前記所定電流を下限として前記要求電流を設定する、
ロボット装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロボット装置であって、
前記少なくとも1つの人工筋肉として、それぞれ対応する前記リニアソレノイドバルブの駆動により前記流体が供給される複数の人工筋肉を含み、
前記制御部は、前記ロボット装置の動作開始の準備として、前記複数の人工筋肉に対して予め定められた順番に前記流体が供給されるように各リニアソレノイドの前記電磁部の通電を制御するものであり、順番待ち状態中の前記人工筋肉の対応する前記リニアソレノイドの前記電磁部に対する前記要求電流を前記所定電流に設定する、
ロボット装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載のロボット装置であって、
前記人工筋肉と対をなすように配置され、前記流体の供給を受けて前記人工筋肉に作用する収縮力とは逆向きに付勢される弾性体を含み、前記弾性体の付勢力と前記人工筋肉の収縮力とにより作動対象を作動させる作動部材を備え、
前記制御部は、前記弾性体の付勢力により前記作動対象を作動させるときに、前記人工筋肉の対応する前記リニアソレノイドバルブの前記電磁部に対する前記要求電流を前記所定電流に設定する、
ロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、流体の供給を受けて作動する少なくとも1つの人工筋肉と、前記人工筋肉に前記流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置について開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のロボット装置としては、基台に立設された支持部材の先端部に軸支されたプーリと、基端部がプーリに固着されプーリの回転に従って回動するアームと、基台に取り付けられた係止ブラケットにそれぞれの一端が連結されると共にプーリに巻き掛けられたロープを介して互いの他端が連結された2つのゴム人工筋と、液圧源からの作動液を対応するゴム人工筋の出入口にそれぞれ供給する2つの圧力制御弁と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアソレノイドバルブ(圧力制御弁)の制御として、人工筋肉に対する圧力指令値または流量指令値に応じて目標電流を設定すると共に当該リニアソレノイドバルブの電磁部を流れる電流を電流検出部により検出し、目標電流と電流検出部により検出された電流との差分に基づく比例項や積分項を含むフィードバック演算によりPWM信号を生成して電磁部の通電を制御する場合、当該電流検出部に含まれる検出誤差によってフィードバック制御が適切に行なわれないおそれがある。例えば、値0の圧力指令値により目標電流に値0を設定してフィードバック演算を行なう場合、電流検出部に正の検出誤差が含まれていると、検出誤差が積分項に蓄積される。このため、次に、人工筋肉に流体を供給しようとした際に、積分項に蓄積された誤差により電磁部への電流の供給が遅れ、人工筋肉の流体供給のレスポンスを悪化させるおそれがある。
【0005】
本開示のロボット装置は、リニアソレノイドバルブの制御として目標電流と電流検出部により検出された電流との差分に基づくフィードバック制御により電磁部の通電を制御するものにおいて、電流検出部の検出誤差が積分項に蓄積されるのを抑制して人工筋肉への流体供給のレスポンスをより向上させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のロボット装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示のロボット装置は、流体の供給を受けて作動する少なくとも1つの人工筋肉と、前記人工筋肉に前記流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置であって、前記流体供給装置は、前記流体の供給源と、リニアソレノイドバルブの駆動により前記人工筋肉に前記供給源側からの前記流体の圧力または流量を調整して出力する流体調整部と、前記リニアソレノイドバルブの電磁部を流れる電流を検出する電流検出部と、前記リニアソレノイドバルブの前記電磁部に要求される要求電流と前記電流検出部により検出される電流との差分に基づく積分項を含むフィードバック演算に基づいてPWM信号を生成し、前記PWM信号により前記電磁部の通電を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記人工筋肉に前記流体の供給が要求されていないときには、前記リニアソレノイドバルブの前記電磁部への前記要求電流を、該リニアソレノイドバルブが作動しない範囲で値0よりも大きい所定電流に設定することを要旨とする。
【0008】
この本開示のロボット装置では、リニアソレノイドバルブの電磁部を流れる電流を検出する電流検出部と、リニアソレノイドバルブの電磁部に要求される要求電流と電流検出部により検出される電流との差分に基づく積分項を含むフィードバック演算によりPWM信号を生成し、PWM信号により電磁部の通電を制御する制御部と、を備える。そして、制御部は、人工筋肉に流体の供給が要求されていないときには、リニアソレノイドバルブの電磁部への要求電流を、当該リニアソレノイドバルブが作動しない範囲で値0よりも大きい所定電流に設定する。これにより、電流検出部に正の検出誤差が含まれていても、当該検出誤差がフィードバック演算の積分項に蓄積されないようにすることができる。この結果、フィードバック制御を良好に行なうことができ、人工筋肉への流体供給のレスポンスをより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のロボット装置を示す概略構成図である。
【
図3】本開示のロボット装置の流体供給装置を示す系統図である。
【
図4】本開示のロボット装置の制御装置を示すブロック図である。
【
図5】本開示のロボット装置の制御装置に含まれる駆動制御部を中心として示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示のロボット装置1を示す概略構成図であり、
図2は、ロボット装置1を示す拡大図である。これらの図面に示すロボット装置1は、ロボットアーム2と、流体供給装置(液体供給装置)10とを含む。本実施形態において、ロボット装置1は、指定された目的位置まで自走可能な、いわゆる無人搬送車(AGV)である搬送台車20に搭載される。ただし、ロボット装置1は、搬送台車20に搭載されるものに限られず、予め定められた設置箇所に定置されてもよい。
【0012】
ロボットアーム2は、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)J1,J2,J3と、複数(本実施形態では、3つ)のアーム(リンク)3と、関節J1,J2,J3ごとに例えば偶数個(本実施形態では、2つ)ずつ設けられる人工筋肉としての複数の流体アクチュエータ(液圧アクチュエータ)M1,M2,M3,M4,M5,M6と、先端側のアーム3に取り付けられる把持部(手先)としてのハンド部(ロボットハンド)4とを含む多関節アームである。ロボットアーム2のハンド部4は、対象となる物体(以下、「把持対象」という。)を把持するようにロボット装置1の制御装置100(
図3~
図5参照)により制御される。また、流体供給装置10は、当該制御装置100により制御されて各流体アクチュエータM1-M6に流体(作動流体)としての作動油(液体)を給排する。これにより、ロボットアーム2を油圧(液圧)により駆動してハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0013】
ロボットアーム2の各流体アクチュエータM1-M6は、
図2に示すように、作動油の圧力によって膨張および収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含む、いわゆるマッキベン型の人工筋肉である。チューブTは、高い耐油性をもった例えばゴム材等の弾性材により円筒状に形成されており、当該チューブTの両端部は、封止部材Cにより封止されている。チューブTの基端側(流体供給装置10側、
図2中下端側)の封止部材Cには、作動油の出入口IOが形成されている。編組スリーブSは、所定方向に配向された複数のコードを互いに交差するように編み込むことにより円筒状に形成されており、軸方向および径方向に収縮可能である。編組スリーブSを形成するコードとしては、繊維コード、高強度繊維、極細のフィラメントによって構成される金属製コード等を採用することができる。このような流体アクチュエータM1-M6のチューブT内に上記出入口IOから作動油を供給して当該チューブT内の作動油の圧力を高めることで、チューブTは、編組スリーブSの作用により径方向に膨張すると共に軸方向に収縮し、内部の作動油の圧力に応じた収縮力を発生する。
【0014】
図1および
図2に示すように、複数のアーム3のうち、最基端側(最も流体供給装置10側)のアーム3は、関節J1を介してリンクとしての支持部材5により回動自在に支持される。また、2つのアーム3同士が、関節J2またはJ3を介して互いに回動自在に連結される。更に、流体供給装置10側の2つのアーム3の先端部(手先側の端部)には、連結部材6が固定されている。図示するように、支持部材5は、最基端側の関節J1に対応した流体アクチュエータM1の基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、当該関節J1に対応した流体アクチュエータM2の基端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。
【0015】
また、各連結部材6は、基端側に位置する関節J1またはJ2に対応した流体アクチュエータM1またはM3の先端側(手先側)の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J1またはJ2に対応した流体アクチュエータM2またはM4の先端側(手先側)の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。更に、各連結部材6は、先端側に位置する関節J2またはJ3に対応した流体アクチュエータM3またはM5の基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J2またはJ3に対応した流体アクチュエータM4またはM6の基端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。
【0016】
これにより、関節J1-J3の関節軸から手先側(ハンド部4側)に延びる各アーム3の両側には、流体アクチュエータM1-M6のうちの対応する2つが当該アーム3と平行に配列される。そして、各アーム3の一側に配置される流体アクチュエータM1,M3,M5は、1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第1の人工筋肉(一方の拮抗筋)を構成し、各アーム3の他側に配置される2つの流体アクチュエータM2,M4,M6は、当該第1の人工筋肉と対をなす1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第2の人工筋肉を構成する。
【0017】
ただし、第1および第2の人工筋肉は、それぞれ2つ以上(同数)の流体アクチュエータにより構成されてもよく、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの数と、第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの数とが異なっていてもよい。更に、本実施形態において、1つの関節J1,J2またはJ3に対して設けられる複数(2つ)の流体アクチュエータM1,M2等は、互いに同一の諸元を有するが、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの諸元と、第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの諸元とが異なっていてもよい。
【0018】
また、本実施形態において、各アーム3は、中空に形成されており、各アーム3の内部には、流体供給管としての複数のホースH(
図2における破線参照)が配置される。各ホースHは、対応する流体アクチュエータM1-M6の基端側の封止部材Cに形成された出入口IOに接続され、各流体アクチュエータM-M6のチューブT内には、ホースHを介して流体供給装置10からの作動油(油圧)が供給される。
【0019】
従って、制御装置100により流体供給装置10を制御することで、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM1等のチューブT内の油圧と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM2等のチューブT内の油圧とを互いに異ならせることができる。これにより、互いに拮抗するように配置された2つの流体アクチュエータM1,M2等すなわち対をなす(1組の)第1および第2の人工筋肉から連結部材6を介して各アーム3に力(回転トルク)を伝達し、支持部材5または基端側のアーム3に対して各アーム3を回動させて関節J1-J3の関節角度を変化させることが可能となる。本実施形態において、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM1等と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM2等とは、チューブTが自然状態から所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮した状態を初期状態として流体供給装置10からの油圧により拮抗駆動される。
【0020】
本実施形態において、ロボット装置1(ロボットアーム2)の作動中、流体アクチュエータM1に対する最大要求出力が、すべての流体アクチュエータM1-M6の中で最大となる。流体アクチュエータM1-M6に対する要求出力は、流体アクチュエータM1-M6に対して要求される収縮力および収縮速度の積(仕事率あるいはパワー)である。
【0021】
上記流体アクチュエータM1-M6等に作動油を供給するロボット装置1の流体供給装置10は、
図1に示すように、作動油貯留部(流体貯留部)を画成するタンク11と、当該タンク11を上下方向に延びる回転軸(
図1における一点鎖線参照)の周りに回転自在に支持するベース部12とを含む。タンク11は、例えば上端および下端が閉鎖された筒体であり、内部に作動油を貯留可能なものである。本実施形態において、ロボットアーム2の支持部材5は、タンク11の回転軸と同軸に延在するように、タンク11の上壁部11uに図示しないボルト等を介して固定される(
図2参照)。すなわち、ロボットアーム2は、流体供給装置10のタンク11(上壁部11u)により支持される。
【0022】
ベース部12は、ロボットアーム2およびタンク11の下方に位置するように搬送台車20に搭載(固定)される。また、ベース部12は、タンク11を上記回転軸の周りに所定角度(例えば360°)だけ回転させる図示しない回転駆動ユニットを支持している。これにより、回転駆動ユニットを作動させることで、ロボットアーム2を当該回転軸の周りにタンク11と一体に回転させることが可能となる。本実施形態において、回転駆動ユニットは、流体供給装置10から供給される油圧により駆動される揺動モータである。ただし、当該回転駆動ユニットは、電動モータやギヤ機構等を含むものであってもよい。
【0023】
更に、流体供給装置10は、
図3に示すように、タンク11およびベース部12に加えて、流体供給源としてのポンプ13と、タンク11内に配置される図示しないバルブボディと、リリーフ弁(圧力制御弁)RVと、逆止弁CVと、アキュムレータ(蓄圧器)14と、流体調整バルブ(流体調整部)としての複数のリニアソレノイドバルブ151,152,153,154,155,156およびコントロールバルブ(圧力制御弁)16とを含む。
【0024】
ポンプ13は、制御装置100により制御される電動ポンプであり、タンク11内に貯留された作動油を吸入して吐出口から油路L1に吐出(圧送)する。本実施形態において、ポンプ13は、タンク11内に配置されるポンプ部と、電動モータや減速ギヤ機構等を有すると共にタンク11内またはタンク11外に配置される駆動ユニット130とを含む。
【0025】
リリーフ弁RVは、ポンプ13により吐出された作動油の圧力を予め定められた一定の上限圧Plim(上限値、例えば6-7MPa程度)を超えないように制限可能なものである。逆止弁CVは、ポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油を油路LLに流出させると共に、油路LL側からポンプ13(およびリリーフ弁RV)側への作動油の流通を規制する。アキュムレータ14は、逆止弁CVの下流側で油路LLに接続(直結)された作動油の出入口を有しており、ポンプ13側からの油圧を蓄える。また、アキュムレータ14としては、最高作動圧が上記上限圧Plim以上であるものが用いられる。更に、油路LLには、逆止弁CVの下流側かつアキュムレータ14の上流側で当該油路LLにおける作動油の圧力(元圧)を検出する元圧センサPSが設置されている。
【0026】
リニアソレノイドバルブ151-156は、共通の構成を有しており、それぞれバルブボディ内に配置されると共に制御装置100により制御される。本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151は、コントロールバルブ16への信号圧を調整し、リニアソレノイドバルブ152は、流体アクチュエータM2への油圧(駆動圧)を調整する。また、リニアソレノイドバルブ153は、流体アクチュエータM3への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ154は、流体アクチュエータM4への油圧(駆動圧)を調整する。更に、リニアソレノイドバルブ155は、流体アクチュエータM5への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ156は、流体アクチュエータM6への油圧(駆動圧)を調整する。
【0027】
図3に示すように、リニアソレノイドバルブ151-156は、制御装置100により通電制御される電磁部15eと、スリーブ内に軸方向に移動可能に配置されるスプール15sと、スプール15sを電磁部15e側(出力ポート15o側から入力ポート15i側、
図3中上側)に付勢するスプリング15spとを含む。更に、リニアソレノイドバルブ151-156は、入力ポート15iと、出力ポート15oと、出力ポート15oに連通するフィードバックポート15fと、入力ポート15iおよび出力ポート15oと連通可能なドレンポート15dとを含む。リニアソレノイドバルブ151-156の入力ポート15iは、アキュムレータ14の下流側で油路LLにそれぞれ連通する。また、リニアソレノイドバルブ152-156の出力ポート15oは、バルブボディに形成された油路やホースH等を介して対応する流体アクチュエータM2-M6(チューブT)の作動油の出入口IOに連通する。更に、リニアソレノイドバルブ151-156のドレンポート15dは、それぞれ油路LDを介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
【0028】
本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151-156は、電磁部15eに電流が供給される際に開弁する常閉弁であり、各電磁部15eは、印加される電流に応じて入力ポート15iと出力ポート15oとを連通させるようにスプール15sを軸方向に移動させる。これにより、電磁部15e(コイル)への給電により発生する推力と、スプリング15spの付勢力と、出力ポート15oからフィードバックポート15fに供給された油圧(駆動圧)によりスプール15sに作用する電磁部15e側への推力とをバランスさせることで、入力ポート15iに供給されたポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油を所望の圧力に調整して出力ポート15oから流出させることが可能となる。
【0029】
また、流体アクチュエータM1-M6側に供給される油圧(信号圧または駆動圧)をリニアソレノイドバルブ151-156にフィードバックすることで、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6により駆動されるロボットアーム2に当該流体アクチュエータM1-M6以外からの外力が加えられたときに、当該外力による流体アクチュエータM1-M6のチューブTの体積変化に応じた油圧の変動を吸収することができる。加えて、当該外力が無くなった後には、速やかに要求に応じた油圧(駆動圧)を流体アクチュエータM1-M6に供給することが可能となる。
【0030】
コントロールバルブ16は、リニアソレノイドバルブ151からの信号圧に応じて油路LLからの作動油の圧力を調整して上記最大要求出力が最大となる流体アクチュエータM1のチューブTに供給するものである。コントロールバルブ16は、バルブボディ内に配置されるスプール16sおよび当該スプール16sを付勢するスプリング16spを含むスプールバルブである。また、コントロールバルブ16は、
図3に示すように、入力ポート16iと、出力ポート16oと、フィードバックポート16fと、信号圧入力ポート16cと、ドレンポート16dとを含む。
【0031】
入力ポート16iは、アキュムレータ14の下流側で油路LLに連通する。出力ポート16oは、バルブボディに形成された油路やホースH等を介して流体アクチュエータM1(チューブT)の作動油の出入口IOに連通する。フィードバックポート16fは、バルブボディに形成された油路を介して出力ポート16oに連通する。信号圧入力ポート16cは、バルブボディに形成された油路を介してリニアソレノイドバルブ151の出力ポート15oに連通する。ドレンポート16dは、油路LDを介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
【0032】
かかるコントロールバルブ16のスプール16sは、電磁部15eは印加される電流に応じたリニアソレノイドバルブ151からの信号圧が作用することで、スプリング16spの付勢力に抗して軸方向に移動する。これにより、信号圧の作用によりスプール16sに付与される推力と、スプリング16spの付勢力と、出力ポート16oからフィードバックポート16fに供給された油圧(駆動圧)によりスプール16sに作用する推力とをバランスさせることで、入力ポート16iに供給されたポンプ13(およびリリーフ弁RV)側からの作動油の一部を適宜ドレンポート16dを介してドレンして出力ポート16oから流体アクチュエータM1のチューブTへと供給される作動油を所望の圧力に調整することができる。これにより、単体のリニアソレノイドバルブよりも体格を小さくしつつ、要求出力が大きい流体アクチュエータM1に要求に応じた油圧を確実に供給することができる。ただし、すべての流体アクチュエータ(人工筋肉)M1-M6に対し、各々に対応したリニアソレノイドバルブから作動油が供給されるように構成されてもよい。また、2つ以上の流体アクチュエータに対し、各々に対応したコントロールバルブから作動油が供給されるように構成されてもよい。
【0033】
なお、流体供給装置10において、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、常開弁であってもよい。この場合、当該常開弁は、電磁部からの推力および当該電磁部からの推力と同方向に作用するようにフィードバックポートに供給された液圧による推力を、スプリングの付勢力とバランスさせるものであってもよい。また、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、専用のフィードバックポートをもたず、スプールを収容するスリーブの内側で出力圧(駆動圧)をフィードバック圧としてスプールに作用させるように構成されたものであってもよい(例えば、特開2020-41687号公報参照)。同様に、コントロールバルブ16も、出力圧(駆動圧)をスプールの内部でフィードバック圧として当該スプールに作用させるように構成されたものであってもよい。
【0034】
ロボット装置1の制御装置100は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータや各種ロジックIC等(何れも図示省略)を含む。制御装置100には、
図4および
図5に示すように、CPUやROM、RAM、ロジックICといったハードウエアと、ROMにインストールされた各種プログラムといったソフトウエアとの少なくともいずれか一方により、演算処理部110と、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e(コイル)に接続される複数のバルブ駆動制御部120a-120fと、ポンプ13の駆動モータに接続されるポンプ駆動制御部130aとが機能ブロック(モジュール)として構築される。なお、
図5には、説明の簡単のために、1つのバルブ駆動制御部のみを示す。
【0035】
また、制御装置100は、上記元圧センサPSや、リニアソレノイドバルブ151-156等の電源Vcの電圧を検出する図示しない電圧センサの検出値等を入力する。また、制御装置100は、元圧センサPSにより検出される油路LLにおける油圧(元圧)が目標値になるように、ポンプ13の駆動ユニット130を制御(デューティ制御)する。更に、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eに供給する電流を制御(デューティ制御)する。
【0036】
制御装置100の各バルブ駆動制御部120a-120fは、
図5に示すように、対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e(コイル)に要求される要求電流Ireqと後述する電流検出部125の検出電流Ieとの差分に基づくフィードバック演算により目標電流Itagを算出する目標電流算出部121と、目標電流算出部121により算出された目標電流Itagに基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成部123と、対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eに接続される駆動回路124と、対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e(コイル)を流れる電流(検出電流Ie)を検出する電流検出部125と、を有する。
【0037】
目標電流算出部121は、演算処理部110からの要求電流Ireqと電流検出部125により検出された電流Ieとの差分に比例ゲインを乗じて比例項を演算する比例項演算部122pと、要求電流Ireqと電流Ieとの差分を所定の演算周期に亘って積算すると共に積算値に積分ゲインを乗じて積分項を演算する積分項演算部122iと、を含み、比例項と積分項との和に基づいて要求電流Ireqを補正した目標電流Itagを算出する。なお、目標電流算出部121は、要求電流Ireqと電流Ieとの差分を時間微分すると共に微分値に微分ゲインを乗じて微分項を演算する微分演算部を更に含み、比例項、積分項および微分項の和に基づいて目標電流Itagを算出するようにしてもよい。
【0038】
PWM信号生成部123は、目標電流算出部121により算出された目標電流Itagに応じた目標電流デューティを設定し、目標電流デューティに基づいてパルス信号(PWM信号)を、予め設定された周期により生成して対応する駆動回路124に出力する。
【0039】
駆動回路124は、例えばMOSFET、バイポーラトランジスタあるいはIGBTにより構成される第1および第2スイッチング素子Tr1,Tr2を含む。第1スイッチング素子Tr1のドレインは、電源Vcに接続され、第1スイッチング素子Tr1のソースと第2スイッチング素子Tr2のドレインとは互いに接続され、第2スイッチング素子Tr2のソースは接地されている。また、駆動回路124に対応したリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eは、互いに接続された第1スイッチング素子Tr1のソースおよび第2スイッチング素子Tr2のドレインと、第2スイッチング素子Tr2のソースとに接続されている。更に、PWM信号生成部123は、第1および第2スイッチング素子Tr1,Tr2のゲートに接続されている。これにより、PWM信号生成部123からのPWM信号により第1スイッチング素子Tr1がオンされると共に第2スイッチング素子Tr2がオフされると、電源Vcの電圧が対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e(コイル)に印加され、当該電磁部15eに起電流が流れる。一方、PWM信号生成部123からのPWM信号により第1スイッチング素子Tr1がオフされると共に第2スイッチング素子Tr2がオンされると、対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15e(コイル)が接地され、当該電磁部15eに逆起電流が流れる。なお、本実施形態において、第1および第2スイッチング素子Tr1,Tr2は、Nチャネル型のトランジスタ(FET)により構成される例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、Pチャネル型のトランジスタとNチャネル型のトランジスタとを組み合わせたものや、Nチャネル型のトランジスタとダイオードとを組み合わせたもの等、PWM信号に基づくスイッチング素子のスイッチングによって電磁部15eへの通電を制御できるものであれば、如何なる構成も採用しうる。
【0040】
電流検出部125は、電磁部15eに対して直列に接続されたシャント抵抗と、当該シャント抵抗の電圧差を検出するオペアンプと、オペアンプの出力をデジタル信号に変換するA/D変換器等を含む。電流検出部125により検出された検出電流Ieは、目標電流算出部121に出力される。
【0041】
制御装置100の演算処理部110は、各流体アクチュエータM1-M6の油圧指令値に基づいて対応するリニアソレノイド151-156の電磁部15eに要求される要求電流Ireqを設定し、設定した要求電流Ireqを対応するバルブ駆動制御部120a-120fの目標電流算出部121側へ出力する。更に、本実施形態では、演算処理部110と各バルブ駆動制御部120a-120fとの間には下限ガード処理部111が設けられ、演算処理部110からの要求電流Ireqは、当該下限ガード処理部111により下限電流Iminで下限ガードされる。すなわち、下限ガード処理部111は、演算処理部110からの要求電流Ireqと下限電流Iminとのうち大きい方を新たな要求電流Ireqとして設定し、設定した要求電流Ireqを対応するバルブ駆動制御部120a-120fに出力する。ここで、下限電流Iminは、電磁部15eからの推力(とフィードバック圧との和の力)がスプリング15spの付勢力を超えない範囲で値0よりも大きい値が定められる。これにより、流体アクチュエータM1-M6への油圧の要求がなくても、要求電流Ireqには値0が設定されることはなく、各リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eには、基本的には、スプール15sが動かない程度の微少な電流(例えば、0.1A~0.2A程度)が常時、流れ続けることとなる。
【0042】
次に、こうして構成されるロボット装置1の動作について説明する。
【0043】
図示しない起動スイッチがオフされてロボット装置1の動作が完全に停止している際、ハンド部4は、図示しない支持台に形成された係止部により保持される。これにより、ロボットアーム2の姿勢は、予め定められた待機姿勢に強制的に保持される。また、ロボット装置1の起動スイッチがオンされてシステム起動が完了すると、制御装置100は、元圧センサPSの検出値に基づいて、リニアソレノイドバルブ151-156に供給される油路LLにおける油圧(元圧)が予め定められた比較的低い待機圧Pst(700-900kPa程度)になるようにポンプ13を制御する。
【0044】
次いで、制御装置100は、予め定められた順番で流体アクチュエータM1-M6のチューブTに作動油を充填して各チューブTを上記初期状態とするようにリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの電流を制御する。これにより、流体アクチュエータM1-M6のチューブTには、コントロールバルブ16およびリニアソレノイドバルブ152-156の対応する何れかから作動油が供給され、各チューブTは、自然状態から所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮する。これ以後、ハンド部4が上記支持台等に載置されてロボット装置1の動作が停止されるまで、リニアソレノイドバルブ151-156の各電磁部15eには継続して電流が供給され、リニアソレノイドバルブ151-156は、ポンプ13側からの作動油の圧力を電磁部15eに供給される電流に応じて調整する。
【0045】
上述のようなロボット装置1の作業開始準備の完了後、ロボットアーム2およびハンド部4を用いた作業の開始が指示されると、制御装置100は、元圧センサPSの検出値に基づいて、油路LLにおける油圧(元圧)が上記上限圧Plimよりも低く、かつアキュムレータ14の最低作動圧以上に定められた比較的高い常用圧Pw(例えば5-6MPa程度)になるようにポンプ13を制御する。更に、制御装置100は、外部(支持台)からの強制力無しにロボットアーム2を上記待機姿勢に保持するのに要求される油圧を予め定められた順番で流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給するようにリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの電流を制御する。
【0046】
そして、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156から各流体アクチュエータM1-M6に対してロボットアーム2への要求に応じた油圧が供給されるように各電磁部15eへの要求電流Ireqを設定し、当該要求電流Ierqに基づいて各電磁部15eに供給される電流を制御する。これにより、流体アクチュエータM1-M6のチューブTに対し、コントロールバルブ16およびリニアソレノイドバルブ152-156により要求に応じて調整された油圧(駆動圧)を供給することが可能となる。この結果、複数の流体アクチュエータM1-M6により各アーム3を回動させてロボット装置1のハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0047】
ここで、本実施形態では、上述したように、各バルブ駆動制御部120a-120fの目標電流算出部121には、演算処理部110からの要求電流Ireqと電流検出部125の検出電流Ieとの差分に基づいて積分項を演算する積分項演算部122iが含まれる。電流検出部125には、多少の検出誤差が含まれているのが通常であり、電流検出部125に正の検出誤差が含まれている場合に、要求電流Ireqに値0が設定されていると、電磁部15eに供給する電流は値0よりも小さくできないから、積分項演算部122iにより演算される積分項には、電流検出部125の正の検出誤差が蓄積されていく。そして、積分項に正の検出誤差が蓄積された状態で流体アクチュエータM1-M6(人工筋肉)に対して油圧が要求され、当該油圧の要求に応じて要求電流Ireqが上昇しても、検出誤差が蓄積された積分項によって目標電流Itagの上昇が抑制され、対応する流体アクチュエータM1-M6への油圧の供給に遅れが生じることとなる。そこで、本実施形態では、演算処理部110により、流体アクチュエータM1-M6への油圧の要求がなくても、下限電流Iminを下限として値0よりも大きな要求電流Ireqを設定することにより、電流検出部125に正の検出誤差が含まれている場合にはフィードバック制御の作用により電磁部15eに供給される電流が下限電流Iminよりも小さくなる方向に目標電流Itagが算出されるため、積分項演算部122iにより演算される積分項に電流検出部125の検出誤差が蓄積されるのを抑制することができる。したがって、次に、流体アクチュエータM1-M6に対して油圧が要求された際には、積分項によって目標電流Itagの上昇が抑制されることがなく、流体アクチュエータM1-M6(人工筋肉)への油圧の要求に素早く応答することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、ロボット装置1の作業開始準備において、上述したように、予め定められた順番で流体アクチュエータM1-M6のチューブTに作動油が充填され、各流体アクチュエータM1-M6は、順番が来るまで順番待ち状態となり、当該順番待ち状態中の流体アクチュエータには油圧は要求されない。この場合、順番待ち状態中の流体アクチュエータの対応するリニアソレノイドバルブの電磁部15eに対して値0の要求電流Ireqが設定されると、充填の順番が遅い流体アクチュエータほど、対応するソレノイドバルブのフィードバック制御において積分項に大きな検出誤差が蓄積されるおそれが生じる。本実施形態では、油圧が要求されていなくても、要求電流Ireqには値0よりも大きい下限電流Iminが設定されるため、フィードバック制御において積分項に電流検出部125の検出誤差が蓄積されるのを抑制することができる。これにより、作動油を充填する際には、要求に応じた油圧を素早く供給することができるため、作業開始準備を早期に完了させることが可能となる。
【0049】
更に、ロボット装置1のハンド部4の駆動部分が、
図6に示すように流体アクチュエータM7を含む場合においては、同様に、当該流体アクチュエータM7に油圧が要求されていないときには、対応するリニアソレノイドバルブ157の電磁部に対する要求電流Ireqを下限電流Iminに設定してもよい。すなわち、ハンド部4は、ロボットアーム2の先端に設けられる支持部4bと、支持部4bに対して互いに近接および離間する方向にスライド可能な一対の把持爪4ca,4cbと、一対の把持爪4ca,4cbの間に設けられる人工筋肉としての流体アクチュエータM7と、流体アクチュエータM7と対をなすように一対の把持爪4ca,4cbの間に当該流体アクチュエータM7と並列に設けられるスプリング4sp(弾性体)と、を備えて構成される。一対の把持爪4ca,4cbは、互いの爪先が外側を向くように当該一対の把持爪4ca,4cbのスライド方向に延在すると共にスプリング4spの付勢力により互いに離間する方向に付勢され、流体アクチュエータM7のチューブTに作動油が供給された際に当該チューブTに供給された作動油に応じた油圧により収縮力が発生することで互いに近接する。すなわち、一対の把持爪4ca,4cbの爪先は、流体供給装置10により流体アクチュエータM7に油圧を供給することにより内側に引き込まれ、流体アクチュエータM7に作用する油圧を解除することにより外側へ突出する。流体供給装置10には、流体アクチュエータM7に対して油圧を調整して出力するリニアソレノイドバルブ157が含まれ、制御装置100には、当該リニアソレノイドバルブ157の電磁部に接続されるバルブ駆動制御部120gが含まれ、当該バルブ駆動制御部120gは、比例項や積分項を含む上記フィードバック演算によりPWM信号を生成して当該リニアソレノイドバルブ157の電磁部への通電を制御する。こうして構成されたハンド部4を備えるロボット装置1は、例えば、
図7に示すように、上方が開口した箱形に形成されると共に互いに向かい合う両側面に取手穴Ha,Hbを有するワークWをハンド部4で把持し、当該ワークWを搬送するのに用いることができる。ワークWの把持は、流体アクチュエータM7に油圧を供給して一対の把持爪4ca,4cbを内側に引き込み、この状態でハンド部4をワークWの内部に進入させて一対の把持爪4ca,4cbの爪先を取手穴Ha,Hbに位置合わせし、流体アクチュエータM7に作用する油圧を解除して当該爪先を取手穴Ha,Hbに係合させることにより行なうことができる。なお、ワークWの把持の解除は、把持の手順とは逆の手順、すなわち、流体アクチュエータM7に油圧を供給して一対の把持爪4ca,4cbを内側に引き込むことで爪先の取手穴Ha,Hbへの係合を解除し、この状態でハンド部4をワークWの内部から引き抜き、流体アクチュエータM7に作用する油圧を解除することにより行なうことができる。ワークWを把持している間は、当該把持の状態は、スプリング4spの付勢力によって維持されるため、流体アクチュエータM7には油圧が要求されない。この場合でも、リニアソレノイドバルブ157の電磁部への要求電流Ireqには値0よりも大きい下限電流Iminが設定されるため、フィードバック制御において積分項に電流検出部125の検出誤差が蓄積されるのを抑制することができる。したがって、ワークWの把持を開始するときやワークWの把持を解除するときに、要求に応じた油圧を素早く供給することができるため、把持開始動作や把持解除動作を素早く行なうことが可能となる。
【0050】
以上説明したように、ロボット装置1では、リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eを流れる検出電流Ieを検出する電流検出部125と、電磁部15eに要求される要求電流Ireqと電流検出部125の検出電流Ieとの差分に基づく比例項や積分項を含むフィードバック演算によりPWM信号を生成し、PWM信号により電磁部15eへの通電を制御するバルブ駆動制御部120a-120fと、含む制御装置100を備える。制御装置100は、流体アクチュエータM1-M6の油圧が要求されていないときには、対応するリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの要求電流Ireqを、スプール15sが動かない範囲で値0よりも大きい下限電流Imin(所定電流)に設定する。
【0051】
これにより、電流検出部125に正の検出誤差が含まれていても、当該検出誤差がフィードバック演算の積分項に蓄積されないようにすることができる。この結果、フィードバック制御を良好に行なうことができ、人工筋肉への流体供給のレスポンスをより向上させることができる。
【0052】
また、制御装置100(下限ガード処理部111)は、流体アクチュエータM1-M6に対する油圧の要求(油圧指令値)に応じた電流と下限電流Iminとのうち大きい方を要求電流Ireqに設定する。これにより、流体アクチュエータM1-M6に対する油圧の要求に対応しつつ、油圧の要求がなくなった際にフィードバック演算の積分項に電流検出部125の検出誤差が蓄積されるのを抑制することができる。
【0053】
さらに、バルブ駆動制御部120a-120fは、ロボット装置1の作業開始準備として、予め定められた順番で複数の流体アクチュエータM1-M6(人工筋肉)のチューブTに作動油を充填するものにおいて、順番待ち状態中の流体アクチュエータの対応するリニアソレノイドの電磁部15eへの要求電流Ireqを下限電流Iminに設定する。これにより、 順番待ち状態中の流体アクチュエータの対応するリニアソレノイドバルブのフィードバック制御において積分項に電流検出部125の検出誤差が蓄積されるのを抑制することができ、作業開始準備を早期に完了させることが可能となる。
【0054】
また、ハンド部4は、一対の把持爪4ca,4cbを作動させる作動部材としての流体アクチュエータM7およびスプリング4sp(弾性体)を有し、スプリング4spの付勢力により一対の把持爪4ca,4cb(作動対象)を作動させているときに、流体アクチュエータM7の対応するリニアソレノイドバルブ157の電磁部15eへの要求電流Ireqを下限電流Iminに設定する。これにより、スプリング4spの付勢力により一対の把持爪4ca,4cb(作動対象)を作動させているときに、流体アクチュエータM7の対応するリニアソレノイドバルブ157のフィードバック制御において積分項に電流検出部125の検出誤差が蓄積されるのを抑制することができ、ハンド部4(一対の把持爪4ca,4cb)を素早く動作させることが可能となる。
【0055】
また、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【0056】
例えば、上述した実施形態では、流体供給装置10は、流体調整バルブ(流体調整部)として、例えば圧力センサにより検出される液圧(流体圧)が要求に応じた圧力になるように流体アクチュエータM1-M6への液体(流体)の流量を制御する流量制御弁を含むものであってもよい。そして、流体供給装置10は、水等の作動油以外の液体や空気等の気体を流体アクチュエータM1-M7に供給するものであってもよい。
【0057】
更に、ロボット装置1は、関節を1つだけ含むものであってもよく、人工筋肉としての流体アクチュエータを1つまたは2つだけ含むものであってもよい。また、ロボット装置1は、少なくとも1つの流体アクチュエータM1等とハンド部4とを有するロボットアーム2を含むものに限られず、少なくとも1つの流体アクチュエータと、例えばドリルビット等の工具や例えばスイッチ等を押圧する押圧部材といったハンド部4以外の要素が手先に取り付けられたロボットアームとを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1は、歩行ロボットや、ウェアラブルロボット等であってもよい。
【0058】
また、ロボット装置1のロボットアーム2は、アーム3を駆動する流体アクチュエータとして揺動モータ(例えば、ハンド部4の根元(手首部)を回転させる揺動モータ)を含むものであってもよい。すなわち、ロボット装置1のロボット本体は、人工筋肉としての流体アクチュエータと揺動モータとの少なくとも何れか1つを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1のロボットアーム2は、流体アクチュエータとしてエアシリンダや油圧シリンダといった流体圧シリンダを含むものであってもよい。また、関節J1-J3を介して連結された2つのアーム3等のすべてに必ずしも対をなす複数の流体アクチュエータ(人工筋肉)Mが設けられる必要はなく、何れか1組の2つのアーム3等に、1つまたは複数の流体アクチュエータと、当該流体アクチュエータと拮抗するように配置されるスプリングやゴム材等の弾性体とが連結されてもよい。加えて、ロボット装置1において、タンク11がロボットアーム2といったロボット本体により支持されてもよい。
【0059】
更に、上記実施形態において、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M7は、内部に作動油が供給されると共に当該内部の油圧の上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含むマッキベン型の人工筋肉であるが、ロボット装置1における流体アクチュエータM1-M7の構成は、これに限られるものではない。すなわち、流体アクチュエータM1-M7は、流体が供給された際に径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブを含むものであればよく、例えば弾性体により形成された内側筒状部材と、弾性体により形成されると共に内側筒状部材の外側に同軸に配置され外側筒状部材と、内側筒状部材と外側筒状部材との間に配置された繊維層とを含む軸方向繊維強化型の流体アクチュエータ(例えば、特開2011-137516号参照)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の発明は、流体の供給を受けて作動する少なくとも1つの人工筋肉を含むロボット装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ロボット装置、2 ロボットアーム、3 アーム、4 ハンド部(手先)、4ca,4cb 把持爪(作動対象)、4sp スプリング(弾性体)、10 流体供給装置、13 ポンプ(流体の供給源)、15e 電磁部、16 コントロールバルブ、100 制御装置(制御部)、111 下限ガード処理部、120a,120b,120c,120d,120e,120f,120g バルブ駆動制御部、151,152,153,154,155,156,157 リニアソレノイドバルブ、J1,J2,J3 関節、M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7 流体アクチュエータ(人工筋肉)。