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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157280
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20221006BHJP
   B62J 37/00 20060101ALI20221006BHJP
   F02M 37/10 20060101ALI20221006BHJP
   F02M 37/32 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
F02M25/08 L
B62J37/00 B
B62J37/00 Z
F02M37/10
F02M37/32
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061407
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】山崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】安田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】横村 光
(72)【発明者】
【氏名】前田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 康生
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA35
3G144BA39
3G144BA40
3G144DA02
3G144GA02
3G144GA08
3G144GA11
3G144GA22
(57)【要約】
【課題】フレックスフュエール車両である鞍乗型車両においても、過度に車両を大型化することなく、二次フィルタ、燃料配管およびキャ二スタを配置することができる鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】メインフレーム21の下方に配置された内燃機関3および吸気部材50と、それらより上方に設けられた燃料タンク16とを備え、燃料タンクの内側には燃料ポンプ70に接続された内部燃料フィルタ、外側には燃料タンクと供給燃料配管72を介して接続された外付け燃料フィルタ73を、それぞれ少なくとも1つ有する鞍乗型車両1であって、鞍乗型車両は燃料タンクとチャージ燃料配管81を介して接続されたキャニスタ8を備え、キャニスタと外付け燃料フィルタとは、上下方向で互いに吸気部材を挟んで配置された鞍乗型車両。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインフレーム(21)の下方に配置された内燃機関(3)および吸気部材(50)と、それらより上方に設けられた燃料タンク(16)とを備え、同燃料タンク(16)の内側には燃料ポンプ(70)に接続された内部燃料フィルタ、外側には前記燃料タンク(16)と供給燃料配管(72)を介して接続された外付け燃料フィルタ(73)を、それぞれ少なくとも1つ有する鞍乗型車両(1)であって、前記鞍乗型車両(1)は前記燃料タンク(16)とチャージ燃料配管(81)を介して接続されたキャニスタ(8)を備え、同キャニスタ(8)と前記外付け燃料フィルタ(73)とは、上下方向で互いに前記吸気部材(50)を挟んで配置されたことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記キャニスタ(8)は、前記吸気部材(50)および前記外付け燃料フィルタ(73)よりも上方に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記キャニスタ(8)は、前記燃料タンク(16)と、前記メインフレーム(21)に固定され前記吸気部材(50)の上流に接続されて吸気を浄化するエアクリーナケース(55)とによって挟まれた位置に配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記外付け燃料フィルタ(73)は、同外付け燃料フィルタ(73)の車幅方向両側に位置する左右の前記メインフレーム(21)と、前記内燃機関(3)のクランクケース(30)とによって挟まれた位置に配置されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記燃料タンク(16)は下面部に燃料ポンプ(70)を有し、前記キャニスタ(8)は、車両横幅方向に延びる中心軸線を有する円筒形状であり、前記燃料タンク(16)にチャージ燃料配管(81)によって接続されるとともに前記吸気部材(50)とパージ燃料配管(82)によって接続され、左右のメインフレーム(21)を繋ぐクロス部材(26A)に沿って配置され、前記パージ燃料配管(82)に介装されたパージ調節弁(85)が前記燃料タンク(16)の下方且つ前記燃料ポンプ(70)の後方に配置されたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記キャニスタ(8)は外周面(8c)をバンド部材(9)で囲繞され、同キャニスタ(8)上のリブ(87)が前記バンド部材(9)に設けられた切欠き部(91)によって係止されたことを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両、特に、アルコールを含む燃料を使用するフレックスフュエール車両である鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両において、アルコールを含む燃料を使用するフレックスフュエール車両では、例えば下記特許文献1に示されるように、通常のガソリン燃料車両と異なり、燃料濾過のために燃料タンク内の燃料ポンプに接続された内部燃料フィルタ(一次フィルタ)のほかに、燃料ポンプから吸気部材に設けられたインジェクタに繋がる供給燃料配管に外付けの燃料フィルタ(二次フィルタ)を設けるとともに、二次フィルタから燃料を燃料ポンプへ戻すための戻り燃料配管を付ける必要がある。
そのため、通常の燃料車両と比較して各燃料配管の配置が複雑となり、更にそこにキャニスタを追加する場合にはレイアウト上の工夫が課題となる。なお、例えば下記特許文献2にはキャニスタを設けた鞍乗型車両が示されるが、特許文献2のものは二次フィルタを備えず二次フィルタとの位置関係が示されないほか、キャニスタが円筒形状で中心軸線を車両前後方向に向けてメインフレーム上で燃料タンクの下方に設けられており、設置スペース上の課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-216485号公報(図2図3
【特許文献2】特開2020-015450号公報(図1図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる従来技術に鑑みなされたものであり、アルコールを含む燃料を使用するフレックスフュエール車両である鞍乗型車両においても、過度に車両を大型化することなく、二次フィルタ、燃料配管およびキャニスタを配置することができる鞍乗型車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、
メインフレームの下方に配置された内燃機関および吸気部材と、それらより上方に設けられた燃料タンクとを備え、同燃料タンクの内側には燃料ポンプに接続された内部燃料フィルタ、外側には前記燃料タンクと供給燃料配管を介して接続された外付け燃料フィルタを、それぞれ少なくとも1つ有する鞍乗型車両であって、前記鞍乗型車両は前記燃料タンクとチャージ燃料配管を介して接続されたキャニスタを備え、同キャニスタと前記外付け燃料フィルタとは、上下方向で互いに前記吸気部材を挟んで配置されたことを特徴とする鞍乗型車両である。
【0006】
上記構成によれば、
キャニスタと二次フィルタとしての外付け燃料フィルタとを、上下方向で互いに吸気部材を挟んで配置することにより、キャニスタと外付け燃料フィルタのレイアウト自由度を向上させつつ、吸気部材に近接させて配置することができ、燃料タンク、外付け燃料フィルタ、キャニスタに接続する各燃料配管の長さを短く最適化することができる。
【0007】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記キャニスタは、前記吸気部材および前記外付け燃料フィルタよりも上方に配置される。
そのように、キャニスタを車両の高い位置に取り付けることにより、車両が浸水した時にキャニスタ内部に水が入り込むことを防止することができる。
【0008】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記キャニスタは、前記燃料タンクと、前記メインフレームに固定され前記吸気部材の上流に接続されて吸気を浄化するエアクリーナケースとによって挟まれた位置に配置される。
そのように、キャニスタが燃料タンクとエアクリーナケースとによって挟まれたことにより、キャニスタの保護性が高まる。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記外付け燃料フィルタは、同外付け燃料フィルタの車幅方向両側に位置する左右の前記メインフレームと、前記内燃機関のクランクケースとによって挟まれた位置に配置される。
そのように、剛性の高いメインフレームとクランクケースとによって外付け燃料フィルタを囲うことによって、外付け燃料フィルタの保護性を高めることができる。
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記燃料タンクは下面部に燃料ポンプを有し、前記キャニスタは、車両横幅方向に延びる中心軸線を有する円筒形状であり、前記燃料タンクにチャージ燃料配管によって接続されるとともに前記吸気部材とパージ燃料配管によって接続され、左右のメインフレームを繋ぐクロス部材に沿って配置され、前記パージ燃料配管に介装されたパージ調節弁が前記燃料タンクの下方且つ前記燃料ポンプの後方に配置される。
上記構成によれば、各燃料配管の組付け性が向上し、キャニスタは燃料タンクとのクリアランス確保が容易になり、他の部品で込み合った空間においてもキャニスタをコンパクトに配置することができる。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記キャニスタは外周面をバンド部材で囲繞され、同キャニスタ上のリブが前記バンド部材に設けられた切欠き部によって係止される。
キャニスタを、燃料タンクとエアクリーナケースとの間の狭いスペースに配置する場合、クリアランスの確保が困難であり、車体の振動によってキャニスタが回転方向に移動する場合や、各燃料配管の配置が変化する場合があり、各燃料配管へ過度の負荷が加わることがあるが、上記構成によれば、バンド部材の切欠き部によって係止されるリブをキャニスタ上に設けたことにより、キャニスタの位置が規制されキャニスタと各燃料配管との位置ズレを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の鞍乗型車両によれば、
キャニスタと二次フィルタとしての外付け燃料フィルタとを、上下方向で互いに吸気部材を挟んで配置に配置することにより、キャニスタと外付け燃料フィルタのレイアウト自由度を向上させつつ、吸気部材に近接させて配置することができ、燃料タンク、外付け燃料フィルタ、キャニスタを接続する各燃料配管の長さを短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の、車体カバーを除き一部断面とする左側面概要図である。
図2図1のメインフレームの屈曲部付近において、左側のメインフレームと急傾斜部等を除いて示す、吸気部材の周囲の一部断面とする左側面図である。
図3図2中に示される外付け燃料フィルタとキャニスタ、それらに接続する燃料配管等を取出して示す説明図である。
図4図3中のキャニスタを取出して示す左面図である。
図5図4中V-V矢視によるキャニスタの前面斜視図である。
図6図4中VI-VI矢視によるキャニスタの後面斜視図である。
図7図4中VII-VII矢視によるキャニスタの下面斜視図である。
図8図1中VIII-VIII矢視による、自動二輪車の前面要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図8に基づき、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両につき説明する。
本実施形態において鞍乗型車両は、自動二輪車の場合を示し、特許請求の範囲および本明細書の説明における前後左右上下等の向きは、本実施形態の車両(自動二輪車)の向きに従うものとする。
図中矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
【0015】
図1は、本実施形態に係る自動二輪車1の、車体カバーを除き一部断面とする左面立面概要図である。
図1に示されるように、本実施形態の自動二輪車(本発明における「鞍乗型車両」)1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ20から後方へ左右一対のメインフレーム21が、若干下向きに延出した後に、側面視でさらに屈曲部21aを形成して下方に屈曲し、急傾斜部21bを形成してピボットフレーム22に至っている。
また、ヘッドパイプ20から斜め急角度に下方へ左右一対のダウンフレーム23が、側面視でメインフレーム21の急傾斜部21bに略平行に延出している。
メインフレーム21の屈曲部21aからは、左右一対のシートレール24が後方に延出し、シートレール24の後部とピボットフレーム22とを連結した左右一対のバックステー25が、シートレール24を支持している。
左右のメインフレーム21、左右の屈曲部21a、左右の急傾斜部21b、左右のシートレール24は、適宜位置に設けられた複数のクロス部材26で繋がれる。
【0016】
以上のような車体フレーム2において、ヘッドパイプ20にはフロントフォーク11が枢支され、その下端に前輪12が軸支される。
メインフレーム21の急傾斜部21bの下部に接続するピボットフレーム22には、前端を支持されたリヤフォーク13が、後方へ延出し、その後端に後輪14が軸支され、リヤフォーク13と車体フレーム2との間に、リヤクッション15が介装されている。
メインフレーム21の前部には、燃料タンク16が架設され、燃料タンク16の後方に乗員シート17がシートレール24に支持されて設けられている。
【0017】
本実施形態において、自動二輪車1はメインフレーム21の下方でその急傾斜部21bの前方に内燃機関3を搭載している。内燃機関3は、そのクランクケース30の前部をダウンフレーム23の下端に取付けられたブラケット23aに締結され、クランクケース30の後部をピボットフレーム22に締結されて懸架されている。
【0018】
本実施形態の内燃機関3は、クランクケース30内の後部に変速機4を備えて、いわゆるパワーユニットを構成しており、そのクランク軸31を、自動二輪車1の車幅方向、すなわち左右方向に配向させて自動二輪車1に搭載された空冷単気筒の4ストロークサイクル内燃機関である。
【0019】
クランクケース30内の後部には、クランク軸31と平行に変速機4の図示しないメイン軸とカウンタ軸42が設けられており、カウンタ軸42はクランクケース30を左方に貫通して外部に突出して、パワーユニットの最終の出力軸となっており、突出部位に出力スプロケット43をそなえる。出力スプロケット43に巻き掛けられた駆動チェーン44が、後輪14側の被動スプロケット45に架渡されてチェーン伝達機構が構成され、後輪14に動力が伝達される。
【0020】
内燃機関3は、クランクケース30上にシリンダ軸線を若干前傾させて、シリンダブロック32、シリンダヘッド33、シリンダヘッドカバー34を起立させた姿勢で懸架される。
内燃機関3のシリンダヘッド33からは後方に、その吸気ポート35に接続して吸気管51が延出し、吸気管51、スロットルボディ52およびコネクティングチューブ53等からなる吸気部材50を介して吸気系路がエアクリーナケース55に至っている。
シリンダヘッド33から前方には、その排気ポート36に接続して排気管61が延出し下方に屈曲して内燃機関3の下方を後方に延び、排気経路が後輪14の右側のマフラー62に至っている。
【0021】
本実施形態において、内燃機関3は燃料として、アルコールを含む燃料を使用する。
すなわち、本実施形態の自動二輪車1は、アルコールを含む燃料を使用するフレックスフュエール車両である。
図2は、図1のメインフレーム21の屈曲部21a付近において、左側のメインフレーム21と急傾斜部21b等を除いて示す、吸気部材50の周囲の一部断面とする左側面図である。
また、図3は、図2中に明示される後述の外付け燃料フィルタ73とキャニスタ8、それらに接続する燃料配管等を取出して示す説明図である。
【0022】
フレックスフュエール車両では、通常のガソリン燃料を用いる車両と異なり、燃料濾過のために一次フィルタとしての燃料タンク16内の燃料ポンプ70に接続される内部燃料フィルタのほかに、燃料タンク16の底部に設けられた燃料ポンプ70から吸気部材50に設けられたインジェクタ75に繋がる供給燃料配管72に、二次フィルタとしての外付け燃料フィルタ73が介装される。また、外付け燃料フィルタ73から燃料を燃料ポンプ70へ戻すための戻り燃料配管74が設けられる(図2図3参照)。
【0023】
すなわち、アルコールのようなダストが細かい燃料では、燃料との接触面積を増加させ目を細かくした燃料フィルタを用いる必要があるが、それでは、燃料フィルタの交換サイクルが短くなり、メンテナンス回数が増える。また、燃料ポンプの上流側に目の細かい燃料フィルタが設けられていると、車両の加速時等のように、供給すべき燃料が急に増えた際、燃料フィルタが抵抗になって、即座に必要な量の燃料を供給しにくくなる等の課題がある。
【0024】
それに対し、フレックスフュエール車両では、燃料タンク16内の燃料ポンプ70に接続された内部燃料フィルタ(一次フィルタ)の目を、通常のガソリン燃料車と同程度に粗くして抵抗を減じ、外付け燃料フィルタ(二次フィルタ)73の目は、内部燃料フィルタ(一次フィルタ)の目よりも細かくされている。
【0025】
それにより、内部燃料フィルタ(一次フィルタ)で大きなダストを捕集し、細かいダストは外付け燃料フィルタ(二次フィルタ)73で捕集することで、各フィルタの目が詰まり難くするとともに抵抗が減じられる。
なお、図3に示されるように、供給燃料配管72は、燃料ポンプ70から外付け燃料フィルタ73を繋ぐ上流側燃料供給配管72Aと、外付け燃料フィルタ73からインジェクタ75に繋ぐ下流側燃料供給配管72Bとに分かれている。
外付け燃料フィルタ73の吐出側の下流側供給燃料配管72Bには、三又ジョイント76により戻り燃料配管74が分岐しており、戻り燃料配管74は燃料タンク16内の燃料ポンプ70に付設される図示しないプレッシャレギュレータに接続し、過剰圧の燃料は燃料タンク16内に戻される。
三又ジョイント76を通過した燃料は、さらに下流側供給燃料配管72Bにより、インジェクタ75に送られる。
【0026】
また、図2に示されるように、本実施形態の自動二輪車1は、燃料タンク16で発生した蒸発燃料ガスを直接大気に放出せずガス処理を行うためにキャニスタ8を備えている。
本実施形態において、キャニスタ8は活性炭等の吸着剤を内蔵する円筒形状の容器である。
【0027】
キャニスタ8は、メインフレーム21の屈曲部21aのシートレール24が接続する近傍で
左右のメインフレーム21を接続する第1クロス部材26Aに沿ってその後ろ側に、中心軸線を車両横幅方向に向けて位置し、吸気部材50の上流側を構成するコネクティングチューブ53の上方に配置されている。
また、キャニスタ8は、外付け燃料フィルタ73と、上下方向で互いにコネクティングチューブ53を挟んで配置されて、且つ車体前上方側に位置する燃料タンク16とそれに対して相対的に車体後下方側に位置するエアクリーナケース55とによって車体前後方向で挟まれて位置している。
上記上下方向とは、車体側面視においてキャニスタ8と外付け燃料フィルタ73とが互いに垂直方向に上下関係に配置されていることに限定されず、車体前後方向あるいは左右方向にずれている場合も含まれる。
【0028】
図4は、図3中のキャニスタ8を取出して示す左面図であり、図5図4中V-V矢視によるキャニスタ8の前面斜視図、図6図4中VI-VI矢視によるキャニスタ8の後面斜視図、図7図4中VII-VII矢視によるキャニスタ8の下面斜視図である。
図3図4図5に示されるように、キャニスタ8の右端部8aにはチャージ燃料配管81とパージ燃料配管82が接続する。
【0029】
チャージ燃料配管81は燃料タンク16内の図示しない気液分離器に接続され、燃料タンク16内から蒸発燃料ガスがキャニスタ8に導入され吸着される。
すなわち、自動二輪車1の駐車時等において、燃料タンク16内の燃料が暖められて発生した蒸発燃料ガスはチャージ燃料配管81を経由してキャニスタ8内に送られ、キャニスタ8内の吸着剤に吸着される。
パージ燃料配管82は、図2に示されるように、本実施形態では吸気部材50のスロットルボディ52の図示しないスロットルバルブの下流側に接続され、キャニスタ8内に吸着された蒸発燃料ガスが、内燃機関3の稼働によって生じる吸気部材50内の負圧によってパージされ、パージ燃料配管82を通り吸気部材50の吸気管51内に戻され、内燃機関3において燃焼することで、ガスの浄化がなされる。
【0030】
図3図4図6に示されるように、キャニスタ8の左端部8bには、大気と連通する外気導入管83とドレイン管84が接続されている。外気導入管83は、吸着剤に吸着された蒸発燃料ガスがパージされるときキャニスタ8内に外気を導入してパージを容易に行わせるものであり。ドレイン管84は、蒸発燃料ガスの吸着時にキャニスタ8内の不要な気体、液体を排出して吸着を容易に行わせるものである。
【0031】
上述のように、キャニスタ8と二次フィルタとしての外付け燃料フィルタ73とは、上下方向で互いに吸気部材50を挟んで配置されているので、左右方向にずれていても、キャニスタ8と外付け燃料フィルタ73とを、そのレイアウト自由度を向上させつつ、吸気部材50に近接させて配置することができる。
また、燃料タンク16の燃料ポンプ70から外付け燃料フィルタ73経由インジェクタ75へ燃料を送る供給燃料配管72(上流側燃料供給配管72Aおよび下流側燃料供給配管72B)、外付け燃料フィルタ73から燃料ポンプ70へ燃料を戻す戻り燃料配管74、燃料タンク16からキャニスタ8へ蒸発燃料ガスを送るチャージ燃料配管81、キャニスタ8から空気部材50へ蒸発燃料ガスを送るパージ燃料配管82等の各燃料配管72、74、81、82の長さを短く最適化することができる。
【0032】
また、キャニスタ8は、吸気部材50および外付け燃料フィルタ73よりも上方に配置されているので、キャニスタ8が車両の高い位置に取り付けられるものとなり、車両が浸水した時にキャニスタ8内部に水が入り込むことを防止される。
さらに、図1に示されるように、キャニスタ8は、燃料タンク16と、メインフレーム21に固定され吸気部材50の上流に接続されて吸気を浄化するエアクリーナケース55とによって挟まれて位置しており、キャニスタ8の保護性が高められている。
【0033】
図8は、図1中VIII-VIII矢視による、自動二輪車1の前面要部断面図である。
図3図8に示されるように、本実施形態において外付け燃料フィルタ73は、円筒形状をしており、その軸線方向を車幅方向に向けて、クランクケース30の後方において、左右のメインフレーム21の急傾斜部21aの間を繋ぐ第2クロス部材26Bの前方に沿ってフィルタステー78を介し取付けられる。
【0034】
すなわち、外付け燃料フィルタ73は、外付け燃料フィルタ73の車幅方向両側に位置する左右のメインフレーム21の急傾斜部21aと、内燃機関3のクランクケース30とによって挟まれた位置に配置されたものとなり、具体的には外付け燃料フィルタ73の下方にクランクケース30の上面が位置し、かつ、車幅方向両側には左右一対のメインフレーム21がそれぞれ位置することで、剛性の高いメインフレーム21とクランクケース30とによって外付け燃料フィルタ73が囲われて、外付け燃料フィルタ73の保護性が高められている。このとき車両側面視でメインフレーム21は外付け燃料フィルタ73の一部と重なる為(図1参照)、より一層保護性が高められる。
【0035】
図2図8に示すように、キャニスタ8は、上述のように、吸気部材50とパージ燃料配管82によって接続される。
パージ燃料配管82はキャニスタ8に近接して設けられたパージ調節弁(PCSV:パージコントロール・ソレノイドバルブ)85を介してキャニスタ8に連通している。
パージ調節弁85は、キャニスタ8から吸気部材50を介して内燃機関3へ吸入されるパージ燃料ガスを、電気的に制御して開閉してキャニスタ8側から吸気部材50側への流入を許すバルブである。
【0036】
また、燃料ポンプ70は、図1に示す燃料タンク16の下面部に備えられ、キャニスタ8は、車両横幅方向に延びる中心軸線を有する円筒形状であり、左右のメインフレーム21を屈曲部21a近傍で繋ぐ第1クロス部材(本発明における「クロス部材」)26Aに沿ってその後方に配置されるととともに、パージ燃料配管82に介装されキャニスタ8に近接して設けられるパージ調節弁85は、燃料タンク16の下方且つ燃料ポンプ70の後方に配置されている。
そのため、キャニスタ8は、燃料タンク16とのクリアランス確保が容易になり、他の部品で込み合った空間においてもコンパクトに配置することができ、キャニスタ8に接続するチャージ燃料配管81、パージ燃料配管82等の各燃料配管81、82の組付け性が向上している。
【0037】
図3に示されるように、新気導入管83は、キャニスタ8の後方に延出した後、下方に向けて屈曲し、開口を下方に向け、メインフレーム21より上方、エアクリーナケース55の前方で乗員シート17下の空間に大気開放している(図1参照)。そのため、新気導入において塵埃の混入と内燃機関3の熱の影響を抑制している。
また、ドレイン管84は、図示しないが下方に延設されてクランクケース30の後部下方に至り、車体下部において下端が下方に開口しており、ドレインされる気体、液体による車体および乗員への影響を抑制している。
【0038】
図4図7に示されるように、キャニスタ8は外周面8cがバンド部材9で囲繞され、キャニスタ8の外周面8c上に設けられたリブ87が、バンド部材9に設けられた切欠き部91によって係止されている。
なお、バンド部材9には外周側に突起部92があり、突起部92にはキャニスタ8の周方向に係合孔93が設けられ、左右のメインフレーム21を繋ぐ第1クロス部材2Aからステー95が延設され、その先端95aを係合孔93に貫入させることで、キャニスタ8がその中心軸線を車幅方向に向けて第1クロス部材26Aに沿って配設される(図4図5参照)。
また、バンド部材9の外周側には第2の突起部96があり、第2の突起部96にはキャニスタ8の軸線方向に係合孔97が設けられ、係合孔97に先端98aを貫入させた弁支持ステー98にパージ調節弁85が締結され、パージ調節弁85がキャニスタ8に近接して設けられる(図4、5参照)。
【0039】
キャニスタ8を、燃料タンク16とエアクリーナケース55との間の狭いスペースにおいて第1クロス部材26Aに沿って配置する場合、クリアランスの確保が困難であり、キャニスタ8に接続されたチャージ燃料配管81、パージ燃料配管82等の各燃料配管81、82の脈動や車体の振動によって、キャニスタ8がその軸線回りに回転移動する場合や、各燃料配管81、82の配置が変化する場合があり、各燃料配管81、82へ過度の負荷が加わるおそれがあるが、外周面8a上にバンド部材9の切欠き部91によって係止されるリブ87を設けたことにより、キャニスタ8の位置が規制されキャニスタ8と各燃料配管81、82の位置ズレを防ぐことができる。
【0040】
以上、本発明に係る一実施形態の鞍乗型車両につき説明したが、本発明の態様が上記実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むことは勿論である。
例えば、本発明の鞍乗型車両は、実施形態の自動二輪車に限らず例えば、3輪、4輪のバギー車等、多様な鞍乗型車両であってよく、請求項1の要件を備える鞍乗型車両であればよい。
内燃機関は、実施形態の空冷単気筒の4ストロークサイクル内燃機関に限定されず他種の多気筒内燃機関であってもよい。
また、各機器の左右の配置は、説明の便宜上、図示のものに特定して記載したが、上記実施形態に示すものと左右逆となる配置のものであってもよく、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1…自動二輪車(本発明における「鞍乗型車両」)、2…車体フレーム、3…内燃機関、4…変速機、8…キャニスタ、8c…外周面、9…バンド部材、16…燃料タンク、17…乗員シート、20…ヘッドパイプ、21…メインフレーム、21a…屈曲部、21b…急傾斜部、22…ピボットフレーム、23…ダウンフレーム、24…シートレール、25…バックステー、26…クロス部材、26A…第1クロス部材(本発明における「クロス部材」)、26B…第2クロス部材、30…クランクケース、31…クランク軸、33…シリンダヘッド、35…吸気ポート、50…吸気部材、51…吸気管、52…スロットルボディ、53…コネクティングチューブ、55…エアクリーナケース、70…燃料ポンプ、72…供給燃料配管、72A…上流側供給燃料配管、72B…下流側供給燃料配管、73…外付け燃料フィルタ(二次フィルタ)、74…戻り燃料配管、75…インジェクタ、76…三又ジョイント、78…フィルタステー、81…チャージ燃料配管、82…パージ燃料配管、83…外気導入管、84…ドレイン管、85…パージ調節弁、87…リブ、91…切欠き部、92…突起部、93…係合孔、95…ステー、96…第2の突起部、98…弁支持ステー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8