(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157288
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20221006BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20221006BHJP
B60K 6/383 20071001ALI20221006BHJP
B60K 6/44 20071001ALI20221006BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20221006BHJP
【FI】
B60K6/40 ZHV
B60K6/445
B60K6/383
B60K6/44
F16H57/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061419
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛郎
【テーマコード(参考)】
3D202
3J063
【Fターム(参考)】
3D202AA01
3D202AA03
3D202DD00
3D202DD18
3D202EE15
3D202EE19
3D202EE23
3J063AA01
3J063AB02
3J063AC01
3J063AC11
3J063BA03
3J063BA11
3J063BB41
3J063CA01
3J063CA05
3J063CB01
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD35
3J063XD64
3J063XD72
(57)【要約】
【課題】軸方向の短縮化やオイルポンプの小型化が可能なハイブリッド駆動装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド駆動装置1
1は、第1軸AX1上に配置された入力軸11と、第2軸AX2上に配置された第1モータMG1と、第3軸AX3上に配置され、軸方向に対して第1モータMG1と重なるように配置された第2モータMG2と、第4軸AX4上に配置され、第2モータMG2に駆動連結されると共に、内径側に貫通孔41aが形成されたドリブン軸41と、第5軸AX5上に配置されたディファレンシャル装置50とを備える。第4軸AX4上には貫通孔41aに貫通してポンプ駆動軸61が配置され、駆動伝達部65により入力軸11の回転をポンプ駆動軸61に伝達する。そして、オイルポンプ60は、第1モータMG1の端部又は第2モータMG2の端部よりも軸方向一方側に配置され、ポンプ駆動軸61の回転により駆動される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸上に配置され、軸方向一方側がエンジンに駆動連結される入力軸と、
前記第1軸と平行な第2軸上に配置され、かつ前記入力軸に対して軸方向他方側に配置され、前記入力軸に駆動連結された第1回転電機と、
前記第1軸と平行な第3軸上に配置され、径方向から視て軸方向に対して前記第1回転電機と重なるように配置された第2回転電機と、
前記第1軸と平行な第4軸上に配置され、かつ前記第2回転電機に対して軸方向一方側に配置され、前記第2回転電機に駆動連結されると共に、内径側に貫通孔が形成された出力軸と、
前記第1軸と平行な第5軸上に配置され、前記出力軸に駆動連結されたディファレンシャル装置と、
前記第4軸上に配置され、前記出力軸の貫通孔に貫通して配置された駆動軸と、
前記入力軸の回転を前記駆動軸に伝達する駆動伝達部と、
前記出力軸よりも前記軸方向他方側に配置され、かつ前記第1回転電機の前記軸方向他方側の端部又は前記第2回転電機の前記軸方向他方側の端部よりも前記軸方向一方側に配置され、前記駆動軸の回転により駆動されるオイルポンプと、を備えた、
車両用駆動装置。
【請求項2】
前記第1軸上に配置され、前記入力軸に駆動連結された第1回転要素、前記第1回転電機に駆動連結された第2回転要素、及び前記第2回転電機に駆動連結された第3回転要素を有する動力分配機構を備えた、
請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記入力軸と前記出力軸とが切離した状態で車両の走行を可能にする、
請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記オイルポンプは、回転を入力するポンプ入力軸を有し、
前記駆動軸と前記ポンプ入力軸との間に介在され、前記ポンプ入力軸の回転速度よりも前記駆動軸の回転速度が高い時に係合する第1ワンウェイクラッチと、
前記出力軸と前記ポンプ入力軸との間に介在され、前記ポンプ入力軸の回転速度よりも前記出力軸の回転速度が高い時に係合する第2ワンウェイクラッチと、を備えた、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記ポンプ入力軸、前記第1ワンウェイクラッチ、及び前記第2ワンウェイクラッチは、前記第4軸と平行な第6軸上に配置された、
請求項4に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1軸乃至第5軸上に、入力軸、第1回転電機、第2回転電機、出力軸、及びディファレンシャル装置を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用駆動装置の一つとして、入力軸に入力されるエンジンの駆動力を動力分配プラネタリギヤによって発電用回転電機(第1モータジェネレータ)と出力軸(カウンタドリブン軸)とに分配すると共に、出力軸に駆動連結された駆動用回転電機(第2モータジェネレータ)によりアシスト或いは回生を行う、所謂シリーズ・パラレル方式(スプリット方式)のハイブリッド駆動装置がある。このようなハイブリッド駆動装置では、特に駆動用回転電機の大型化による性能向上が求められるため、入力軸と同軸上に発電用回転電機を配置すると、軸方向において重なる位置にある駆動用回転電機が入力軸よりも離れた位置となり、入力軸を中心と考えた場合に、全体として径方向に大型化する虞がある。そのため、入力軸とは異なる軸上に発電用回転電機を配置し、さらに、駆動用回転電機、出力軸、ディファレンシャル装置をそれぞれの軸上に配置した、所謂5軸構造のハイブリッド駆動装置も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開第2020/0108708号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のようなハイブリッド駆動装置にあっては、動力分配プラネタリギヤ、発電用回転電機、駆動用回転電機等を潤滑や冷却するための潤滑圧を発生させるオイルポンプを設けることが考えられるが、例えば車両の停車中にエンジンにより発電用回転電機を駆動して充電を行う場合等を考慮すると、オイルポンプをエンジンの駆動回転により駆動できることが好ましい。そのため、オイルポンプを入力軸上に配置することが考えられるが、オイルポンプをエンジンと動力分配プラネタリギヤとの間に配置すると、軸方向の短縮化の妨げになってしまう。また、入力軸はエンジンの駆動力を伝達可能となる外径が必要であるため、入力軸上にオイルポンプを配置すると、オイルポンプの外径が必要以上に大きくなり、効率が良好でなくなると共に、コストダウンの妨げにもなってしまう。
【0005】
そこで本発明は、軸方向の短縮化やオイルポンプの小型化が可能なハイブリッド駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である車両用駆動装置は、
第1軸上に配置され、軸方向一方側がエンジンに駆動連結される入力軸と、
前記第1軸と平行な第2軸上に配置され、かつ前記入力軸に対して軸方向他方側に配置され、前記入力軸に駆動連結された第1回転電機と、
前記第1軸と平行な第3軸上に配置され、径方向から視て軸方向に対して前記第1回転電機と重なるように配置された第2回転電機と、
前記第1軸と平行な第4軸上に配置され、かつ前記第2回転電機に対して軸方向一方側に配置され、前記第2回転電機に駆動連結されると共に、内径側に貫通孔が形成された出力軸と、
前記第1軸と平行な第5軸上に配置され、前記出力軸に駆動連結されたディファレンシャル装置と、
前記第4軸上に配置され、前記出力軸の貫通孔に貫通して配置された駆動軸と、
前記入力軸の回転を前記駆動軸に伝達する駆動伝達部と、
前記出力軸よりも前記軸方向他方側に配置され、かつ前記第1回転電機の前記軸方向他方側の端部又は前記第2回転電機の前記軸方向他方側の端部よりも前記軸方向一方側に配置され、前記駆動軸の回転により駆動されるオイルポンプと、を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、駆動伝達部及び駆動軸を介して入力軸に駆動連結されるオイルポンプを、出力軸の軸方向他方側で第1回転電機又は第2回転電機の軸方向他方側の端部よりも軸方向一方側に配置したので、軸方向の短縮化をはかることができ、かつオイルポンプの小型化も可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置を示すスケルトン図。
【
図2】第2の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置を示すスケルトン図。
【
図3】第3の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置を示すスケルトン図。
【
図4】第4の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置を示すスケルトン図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施の形態>
以下、第1の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置1
1の構成について
図1を用いて説明する。車両用駆動装置としてのハイブリッド駆動装置1
1は、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプ等の、エンジン2の出力軸が進行方向に対して横向き車両に用いて好適なものであり、所謂シリーズ・パラレル方式(スプリット方式)のハイブリッド車両に用いられるものである。
【0010】
詳細には、ハイブリッド駆動装置11は、図示を省略したケースの内部において、大まかに、エンジン2の駆動回転が入力される入力部9、入力部9から入力される駆動回転を分配する分配部10、第1回転電機である第1モータ・ジェネレータ(以下、単に「第1モータ」という)MG1、第2回転電機である第2モータ・ジェネレータ(以下、単に「第2モータ」という)MG2、カウンタ部40、ディファレンシャル装置50、オイルポンプ60を有して構成されている。
【0011】
そして、ハイブリッド駆動装置11においては、これら各部の構成部品が、第1軸AX1、第1軸AX1と平行な異なる軸上の第2軸AX2、同じく第1軸AX1及び第2軸AX2と平行な異なる軸上の第3軸AX3、同じく第1軸AX1乃至第3軸AX3と平行な異なる軸上の第4軸AX4、同じく第1軸AX1乃至第4軸AX4と平行な異なる軸上の第5軸AX5、の5つの軸上にそれぞれ配置されている。
【0012】
上記第1軸AX1上には、入力部9及び分配部10が配置されており、入力部9は、エンジン2の出力軸(不図示)に駆動連結される入力軸1A、フライホイール5、ダンパスプリング6Sを有するダンパ装置6を有しており、分配部10は、入力軸11、詳しくは後述するドライブギヤ12、動力分配プラネタリギヤPR1、第1カウンタ軸15及び第1カウンタギヤ16、第2カウンタ軸17及び第2カウンタギヤ18を有している。
【0013】
上記入力部9において、入力軸1Aにはフライホイール5が固定されており、そのフライホイール5にはダンパ装置6が駆動連結され、さらに、ダンパ装置6には、分配部10の入力軸11が駆動連結されている。従って、エンジン2からの駆動回転が、ダンパ装置6のダンパスプリング6Sによって爆発振動が吸収されつつ分配部10の入力軸11に入力される。換言すると、入力軸11の軸方向一方側(エンジン2側)がエンジン2に駆動連結されている。
【0014】
上記分配部10において、動力分配プラネタリギヤPR1は、第2回転要素であるサンギヤSと、第3回転要素であるリングギヤRと、第1回転要素であり、それらサンギヤS及びリングギヤRに噛合するピニオンギヤPを回転自在に支持するキャリヤCRと、を有して構成されている。キャリヤCRは、入力軸11に一体的に駆動連結されており、つまりエンジン2に駆動連結されている。また、サンギヤSは、第1カウンタ軸15及びその第1カウンタ軸15に固定された第1カウンタギヤ16に一体的に駆動連結されており、第1モータMG1に駆動連結されている。リングギヤRは、第2カウンタ軸17及びその第2カウンタ軸17に固定された第2カウンタギヤ18に一体的に駆動連結されており、後述する第2モータMG2と、後述するカウンタ部40のドリブン軸41とに駆動連結され、つまりディファレンシャル装置50を介して不図示の車輪に駆動連結されている。
【0015】
上記第2軸AX2上には、第1モータMG1、第1モータMG1の出力軸である第1ロータ軸21、その第1ロータ軸21に固定された第1モータギヤ22がそれぞれ配置されている。第1モータMG1は、上記入力軸11に対して軸方向他方側(軸方向のエンジン2とは反対側)に配置されており、不図示のケースに固定支持された固定子であるステータ3Sと、ステータ3Sの内径側で回転する回転子であるロータ3Rと、を有して構成され、ロータ3Rと第1ロータ軸21とが固着されている。第1ロータ軸21に回転不能に固定された第1モータギヤ22は、上記第1カウンタギヤ16に噛合しており、つまり上記サンギヤSに駆動連結されている。
【0016】
上記第3軸AX3上には、第2モータMG2、第2モータMG2の出力軸である第2ロータ軸31、その第2ロータ軸31に固定された第2モータギヤ32がそれぞれ配置されている。第2モータMG2は、上記入力軸11に対して軸方向他方側(軸方向のエンジン2とは反対側)に配置されており、その少なくとも一部が径方向から視て軸方向に上記第1モータMG1と重なるように配置されている。また、第2モータMG2は、不図示のケースに固定支持された固定子であるステータ4Sと、ステータ4Sの内径側で回転する回転子であるロータ4Rと、を有して構成されており、ロータ4Rと第2ロータ軸31とが固着されている。第2ロータ軸31に回転不能に固定された第2モータギヤ32は、上記第2カウンタギヤ18に噛合しており、つまり上記リングギヤRと後述するドリブン軸41とに駆動連結されている。
【0017】
上記第4軸AX4上には、カウンタ部40、オイルポンプ60及びその駆動軸としてのポンプ駆動軸61が配置されており、カウンタ部40は、出力軸としてのドリブン軸41、そのドリブン軸41に固定されたドリブン入力ギヤ42及びドリブン出力ギヤ43を有している。ドリブン軸41は、上記第2モータMG2に対して軸方向一方側(エンジン2側)に配置されており、換言すると、その少なくとも一部が径方向から視て軸方向に入力軸11と重なるように配置されている。また、ドリブン軸41は、全体として中空形状に形成されており、その回転の中心軸上に貫通孔41aが形成されている。ドリブン軸41のドリブン入力ギヤ42は、上記第2カウンタギヤ18に噛合しており、ドリブン出力ギヤ43は、ディファレンシャル装置50のデフリングギヤ51に噛合している。なお、オイルポンプ60及びその駆動回転の伝達経路については後述する。
【0018】
上記第5軸AX5上には、ディファレンシャル装置50が配置されている。ディファレンシャル装置50は、図示を省略したデフケースに固定されたデフリングギヤを有しており、デフケースの内部には、図示を省略した作動歯車装置が内蔵されていると共に左右のドライブシャフト59L,59Rが駆動連結され、左右の車輪(不図示)に駆動連結されている。
【0019】
ついで、オイルポンプ60と、オイルポンプ60の駆動回転を伝達する経路について説明する。上述したように入力軸11にはドライブギヤ12が固定されており、そのドライブギヤ12には、ポンプ駆動軸61に固定されたドリブンギヤ62が噛合して、これらにより入力軸11の回転をポンプ駆動軸61に伝達する駆動伝達部65を構成している。また、上述したようにドリブン軸41には貫通孔41aが形成されており、その貫通孔41aを貫通してポンプ駆動軸61が配置されている。そして、軸方向において、ポンプ駆動軸61の駆動伝達部65とは反対側にオイルポンプ60(不図示のオイルポンプのドライブギヤ)が駆動連結されている。
【0020】
このようにポンプ駆動軸61がドリブン軸41の中を通ることで、軸方向において、オイルポンプ60がドリブン軸41に対してエンジン2とは反対側に配置されている。また、オイルポンプ60は、径方向から視て軸方向に第1モータMG1と第2モータMG2との少なくとも一方と重なるように配置されている。さらに、第1モータMG1のエンジン2(入力軸11の入力側)とは反対側の端部と、第2モータMG2とのエンジン2(入力軸11の入力側)とは反対側の端部と、の少なくとも一方(好ましくは両方)よりもエンジン2の側の範囲内に配置され、つまり第1モータMG1や第2モータMG2に対して、エンジン2とは反対側に突出しないように配置され、オイルポンプ60のためにハイブリッド駆動装置11の軸方向の全長を延ばすことを不要としている。
【0021】
[第1の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置の動作]
ついで、第1の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置1
1の動作について
図1を用いて説明する。エンジン2が始動しているハイブリッド走行時には、エンジン2の駆動回転が入力軸11から動力分配機構である動力分配プラネタリギヤPR1のキャリヤCR(第1回転要素)に入力される。キャリヤCRに入力された駆動回転の一部は、サンギヤS(第2回転要素)、第1カウンタ軸15、第1カウンタギヤ16、第1モータギヤ22、及び第1ロータ軸21を介して第1モータMG1に伝達され、第1モータMG1により回生されて不図示のバッテリに充電される(或いは直接第2モータMG2に電力が供給される)。一方、第1モータMG1の回生によりサンギヤSに回生トルクが付与されることで、キャリヤCRに入力された駆動回転の残りは、リングギヤR(第3回転要素)、第2カウンタ軸17、第2カウンタギヤ18、及びドリブン入力ギヤ42を介してドリブン軸41に伝達される。要するに、エンジン2の駆動力は、動力分配プラネタリギヤPR1によって第1モータMG1とカウンタ部40とに分配される。
【0022】
一方、第2モータMG2は、アクセル開度等の要求駆動力に基づき必要に応じてアシストトルク或いは回生トルクを出力し、その駆動力は、第2ロータ軸31、第2モータギヤ32、及びドリブン入力ギヤ42を介してドリブン軸41に伝達される。そして、カウンタ部40のドリブン軸41に入力された駆動回転は、ドリブン出力ギヤ43及びデフリングギヤ51を介してディファレンシャル装置50に伝達され、そのディファレンシャル装置50によって左右の車輪の差回転を吸収しつつ左右の車輪に出力される。
【0023】
また、エンジン2の駆動を停止したEV走行の駆動時には、第2モータMG2の駆動回転が、第2ロータ軸31、第2モータギヤ32、ドリブン入力ギヤ42を介してドリブン軸41に伝達され、さらに、ドリブン出力ギヤ43及びデフリングギヤ51を介してディファレンシャル装置50に伝達され、そのディファレンシャル装置50を介して左右の車輪に出力される。なお、この際、第2モータギヤ32の回転によって、ドリブン入力ギヤ42が回転され、第2カウンタ軸17を介してリングギヤRが回転されるが、エンジン2が停止していることでキャリヤCRが停止しているため、サンギヤS及び第1モータMG1が空転する。また、EV走行の非駆動時には、ディファレンシャル装置50から駆動時とは逆に駆動力が伝達され、その駆動力が第2モータMGによって回生される。
【0024】
また、上記オイルポンプ60は、ハイブリッド走行時において、エンジン2により入力軸11が駆動されるため、駆動伝達部65及びポンプ駆動軸61を介してエンジン2の駆動回転が伝達されることで駆動される。これにより、オイルポンプ60から潤滑油の油圧が発生され、第1モータMG1や第2モータMG2に冷却油として潤滑油が供給され、或いは、動力分配プラネタリギヤPR1、各ギヤ、各軸及びそれらを支持する軸受などにも潤滑油が供給される。また、特に車両が停車しかつエンジン2が始動されているアイドル状態でも、これらの冷却や潤滑を十分に行える。
【0025】
なお、本第1の実施の形態において上記EV走行時は、エンジン2が停止されるため、オイルポンプ60も停止する。このため、例えばオイルポンプ60とは独立して駆動する電動オイルポンプ等を補助的に備えて、エンジン2の停止時に潤滑油を供給可能な構造としておくことが好ましい。
【0026】
[第1の実施の形態のまとめ]
以上説明した第1の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置11によると、エンジン2の出力軸と同軸である第1軸AX1上に第1モータMG1を配置せず、第1軸AX1と平行な第2軸AX2上に第1モータMG1を配置して、所謂5軸構造にしたので、ハイブリッド駆動装置11全体の外径を大きくすることなく、第1モータMG1及び第2モータMG2の大型化を図ることができる。
【0027】
また、このような所謂5軸構造のハイブリッド駆動装置11において、オイルポンプ60を、入力部9と分配部10との間に配置せず、カウンタ部40の軸方向におけるエンジン2とは反対側に配置したので、入力部9と分配部10との間には駆動伝達部65を配置するだけで足り、入力部9と分配部10との間を短縮化することができる。また、オイルポンプ60は、上述したように、第1モータMG1と第2モータMG2との少なくとも一方と径方向から視て軸方向に重なり、かつ第1モータMG1や第2モータMG2に対してエンジン2とは反対側に突出しないように配置されているので、オイルポンプ60を配置するためにハイブリッド駆動装置11の軸方向の全長を延ばすことを不要とすることができる。従って、入力部9と分配部10との間を短縮化できる分、ハイブリッド駆動装置11の軸方向の短縮化を可能とすることができる。
【0028】
さらに、オイルポンプ60を入力部9と分配部10との間に配置した場合は、入力軸11の周囲に配置することが考えられ、その場合は入力軸11の外径に応じてオイルポンプのドライブギヤの内径が大きくなるため、オイルポンプが大型化してしまうが、本ハイブリッド駆動装置11のオイルポンプ60では、ポンプ駆動軸61がオイルポンプ60の駆動力を伝達できる径があれば十分であるので、ポンプ駆動軸61を入力軸11よりも小径に構成することができ、オイルポンプ60を小型化することができて、オイルポンプ60のコストダウンを図ることができる。
【0029】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について
図2を用いて説明する。なお、本第2の実施の形態の説明においては、上記第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付し、その説明を省略する。
【0030】
上記第1の実施の形態のように、オイルポンプ60がエンジン2(入力軸11)のみに駆動連結されている場合は、エンジン2を停止したEV走行時にオイルポンプ60によって潤滑油の供給を行うことができず、別に電動オイルポンプ等を設ける必要がある。一方、例えばオイルポンプ60が車輪(ドリブン軸41)のみに駆動連結されている場合は、車両が停車しかつエンジン2がアイドル状態(第1モータMG1による充電状態)である場合にオイルポンプ60によって潤滑油の供給を行うことができず、この場合も別に電動オイルポンプ等を設ける必要がある。そこで、第2の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置1
2は、
図2に示すように、上記第1の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置1
1に比して、オイルポンプ60にエンジン2の回転と車輪(ドリブン軸41)の回転との高い方を伝達する高回転伝達機構70を備えたものである。
【0031】
詳細には、高回転伝達機構70は、オイルポンプ60に駆動連結されるポンプ入力軸71と、第1ワンウェイクラッチF1と、第2ワンウェイクラッチF2と、を備えて構成されている。第1ワンウェイクラッチF1は、ポンプ駆動軸61とポンプ入力軸71との間に介在され、ポンプ入力軸71の回転速度よりもポンプ駆動軸61の回転速度が高くなると係合して回転を伝達し、反対にポンプ入力軸71の回転速度よりもポンプ駆動軸61の回転速度が低くなると空転して回転を伝達しない。また、第2ワンウェイクラッチF2は、ドリブン軸41とポンプ入力軸71との間に介在され、ポンプ入力軸71の回転速度よりもドリブン軸41の回転速度が高くなると係合して回転を伝達し、反対にポンプ入力軸71の回転速度よりもドリブン軸41の回転速度が低くなると空転して回転を伝達しない。
【0032】
従って、高回転伝達機構70は、ポンプ駆動軸61の回転速度(エンジン2の回転速度をドライブギヤ12及びドリブンギヤ62のギヤ比によって減速した回転速度)と、ドリブン軸41の回転速度(車輪の回転速度をディファレンシャル装置50の減速比と、デフリングギヤ51及びドリブン出力ギヤ43のギヤ比によって減速した回転速度)と、の高い方をポンプ入力軸71に伝達し、それによってオイルポンプ60を駆動する。
【0033】
よって、エンジン2が始動されているハイブリッド走行時にあって、エンジン2や第2モータMG2の駆動力により車輪を駆動する駆動時あっては、分配部10による変速比が駆動伝達部65による変速比(ドライブギヤ12とドリブンギヤ62のギヤ比)よりも大きいと(低速であると)、例えば車両が停車してエンジン2がアイドル状態である場合も含め、ドリブン軸41の回転よりもポンプ駆動軸61の回転が高速となるので、オイルポンプ60はポンプ駆動軸61を介してエンジン2或いは第2モータMG2の駆動力により駆動される。また、分配部10による変速比が駆動伝達部65による変速比よりも小さくなると(高速になると)、ポンプ駆動軸61の回転よりもドリブン軸41の回転が高速となり、ドリブン軸41がエンジン2により駆動されているので、オイルポンプ60はドリブン軸41を介してエンジン2或いは第2モータMG2の駆動力により駆動される。
【0034】
一方、ハイブリッド走行にあっても、エンジン2の駆動力が出力されず、第2モータMG2により回生されている非駆動時にあっては、分配部10による変速比が駆動伝達部65による変速比よりも大きいと(低速であると)、ドリブン軸41の回転よりもポンプ駆動軸61の回転が高速となるので、オイルポンプ60はポンプ駆動軸61を介して車輪の回転(車両の走行慣性力)により駆動される。また、分配部10による変速比が駆動伝達部65による変速比よりも小さくなると(高速になると)、ポンプ駆動軸61の回転よりもドリブン軸41の回転が高速となるが、ドリブン軸41が車輪により駆動されているので、オイルポンプ60はドリブン軸41を介して車輪の回転により駆動される。
【0035】
そして、エンジン2が停止されたEV走行時にあっても同様に、分配部10による変速比が駆動伝達部65による変速比よりも大きいと(低速であると)、ドリブン軸41の回転よりもポンプ駆動軸61の回転が高速となるので、オイルポンプ60はポンプ駆動軸61を介して第2モータMG2の駆動力により駆動される。また、分配部10による変速比が駆動伝達部65による変速比よりも小さくなると(高速になると)、ポンプ駆動軸61の回転よりもドリブン軸41の回転が高速となり、ドリブン軸41が第2モータMG2により駆動されているので、オイルポンプ60はドリブン軸41を介して第2モータMG2の駆動力により駆動される。なお、EV走行時における非駆動時は、ハイブリッド走行時と同様に車輪の回転によりオイルポンプ60が駆動される。
【0036】
以上のように本第2の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置12は、エンジン2が始動している場合或いは車両が走行している場合はオイルポンプ60を駆動することができ、例えばオイルポンプ60とは別に電動オイルポンプを設けることを不要としたり、或いはそのような電動オイルポンプの小型化を図ったりすることができる。
【0037】
なお、これ以外の第2の実施の形態における構成、作用、及び効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
<第3の実施の形態>
次に、上記第2の実施の形態を一部変更した第3の実施の形態について
図3を用いて説明する。なお、本第3の実施の形態の説明においては、上記第1及び第2の実施の形態と同様な部分に同符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
本第3の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置1
3は、
図3に示すように、上記第2の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置1
2に比して、オイルポンプ60を第4軸AX4ではなく、それに平行な第6軸AX6上に配置したものである。詳細には、本第3のハイブリッド駆動装置1
3には、ポンプ駆動軸61にポンプカウンタギヤ63が固定されており、一方のドリブン軸41にもドリブンカウンタギヤ45が固定されている。また、高回転伝達機構70において、第1ワンウェイクラッチF1のアウタレースには上記ポンプカウンタギヤ63に噛合する第1ドリブンギヤ72が固定されており、第2ワンウェイクラッチF2のアウタレースには上記ドリブンカウンタギヤ45に噛合する第2ドリブンギヤ73が固定されている。これにより、上記第2の実施の形態と同様に、ポンプ駆動軸61の回転と、ドリブン軸41の回転と、の高い方をポンプ入力軸71に伝達し、それによってオイルポンプ60を駆動する。
【0040】
このように本第3の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置13においては、オイルポンプ60をドリブン軸41が配置された第4軸AX4とは異なる第6軸AX6上に配置できるので、オイルポンプ60の配置の自由度が上がり、特に第1モータMG1や第2モータMG2に第4軸AX4よりもオイルポンプ60を近づけて配置することで、ハイブリッド駆動装置13の後方部分(分配部10に対してエンジン2とは軸方向反対側の部分)における径方向のコンパクト化を図ることができる。
【0041】
なお、これ以外の第3の実施の形態における構成、作用、及び効果は、第1及び第2の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0042】
<第4の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第4の実施の形態について
図4を用いて説明する。なお、本第4の実施の形態の説明においては、上記第1の実施の形態と同様な部分に同符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
本第4の実施の形態に係るハイブリッド駆動装置1
4は、
図4に示すように、第1の実施の形態に比して、動力分配プラネタリギヤPR1の代わりに、変速プラネタリギヤPR2を備え、さらに、クラッチCLを備えたものである。詳細には、変速プラネタリギヤPR2は、入力軸11に駆動連結されたキャリヤCRと、第1カウンタ軸15を介して第1モータMG1に駆動連結されたサンギヤSと、ケース7に対して固定されたリングギヤRと、を備えて構成されている。また、クラッチCLは、入力軸11と第2カウンタギヤ18との間に介在されて、これらを切離し可能(係合/解放可能)に構成されている。
【0044】
このように構成されたハイブリッド駆動装置14は、シリーズ方式のハイブリッド車両に用いられ、基本的にクラッチCLを解放し、入力軸11とドリブン軸41とを切離した状態で車両の走行を可能にするものであり、第2モータMG2の駆動力をカウンタ部40、ディファレンシャル装置50を介して車輪に出力し、或いは、車輪の回転をカウンタ部40、ディファレンシャル装置50を介して第2モータMG2により回生する。
【0045】
そして、不図示のバッテリの充電量が足りなくなると、エンジン2を始動し、エンジン2の駆動回転を、変速プラネタリギヤPR2を介して第1モータMG1により回生して充電する。この際、入力軸11からキャリヤCRに入力されたエンジン2の駆動回転は、回転が固定されたリングギヤRによってサンギヤSから増速されて第1モータMG1に出力され、つまり変速プラネタリギヤPR2によってエンジン2の回転を変速して第1モータMG1に伝達する。また、エンジン2を始動している際にあって、例えば高速走行時には、クラッチCLを係合することでエンジン2の回転をカウンタ部40及びディファレンシャル装置50を介して車輪に出力することが可能であり、つまり、この場合はパラレル方式のハイブリッド車両と同様な走行状態を達成可能である。
【0046】
このように、所謂5軸構造のシリーズ方式のハイブリッド駆動装置14においても、オイルポンプ60を、入力部9と分配部10との間に配置せず、カウンタ部40の軸方向におけるエンジン2とは反対側に配置したので、入力部9と分配部10との間には駆動伝達部65を配置するだけで足り、入力部9と分配部10との間を短縮化することができる。
【0047】
なお、これ以外の第4の実施の形態における構成、作用、及び効果は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0048】
<他の実施の形態の可能性>
なお、以上説明した第1乃至第4の実施の形態においては、オイルポンプ60が例えば内接ギヤポンプ等で構成されているものを想定して説明しているが、これに限らず、外接ギヤポンプでもよく、どのようなオイルポンプであっても構わない。
【0049】
また、第1乃至第4の実施の形態においては、駆動伝達部65がドライブギヤ12とドリブンギヤ62とで構成されているものを説明したが、これに限らず、チェーン及びスプロケットで構成されていたり、ベルト及びプーリで構成されていたりしてもよく、つまりエンジンの回転をポンプ駆動軸に伝達できればどのようなものでもよい。
【0050】
また、第3の実施の形態においては、高回転伝達機構70が第6軸AX6上に配置されているものを説明したが、これに限らず、高回転伝達機構70が第4軸AX4上に配置され、その出力回転がポンプ入力軸71に伝達されるような構成でも構わない。さらに、高回転伝達機構70を備えずに、オイルポンプ60が第6軸AX6上に配置されたもの、換言すると第1の実施の形態や第4の実施の形態のようにエンジン2の回転のみで駆動されるオイルポンプ60であって第6軸AX6上に配置したものであっても構わない。
【0051】
また、第4の実施の形態においては、第1の実施の形態のようにポンプ駆動軸61でエンジン2の回転のみで駆動されるものを説明したが、第4の実施の形態に第2及び第3の実施の形態を組合せたもの、つまり高回転伝達機構70を備えているシリーズ方式のハイブリッド駆動装置であっても構わない。
【0052】
また、第4の実施の形態においては、クラッチCLによってエンジン2の回転をドリブン軸41に伝達できるものを説明したが、クラッチCLを備えずに、入力軸11とドリブン軸41とが完全に切り離されているものであっても構わない。
【0053】
また、第4の実施の形態においては、エンジン2の回転を増速して第1モータMG1に伝達する変速プラネタリギヤPR2を備えたものを説明したが、この変速プラネタリギヤPR2を備えずに、入力軸11から直接的に第1ロータ軸21に回転を伝達するものであっても構わない。この場合、入力軸11に第1カウンタギヤ16が固定され、その第1カウンタギヤ16に噛合する第1モータギヤ22との間で、入力軸11の回転を増速して第1ロータ軸21に伝達するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
11,12,13,14…車両用駆動装置/2…エンジン/11…入力軸/41…出力軸(ドリブン軸)/41a…貫通孔/50…ディファレンシャル装置/60…オイルポンプ/61…駆動軸(ポンプ駆動軸)/65…駆動伝達部/71…ポンプ入力軸/AX1…第1軸/AX2…第2軸/AX3…第3軸/AX4…第4軸/AX5…第5軸/AX6…第6軸/MG1…第1回転電機(第1モータ)/MG2…第2回転電機(第2モータ)/PR1…動力分配機構(動力分配プラネタリギヤ)/CR…第1回転要素(キャリヤ)/S…第2回転要素(サンギヤ)/R…第3回転要素(リングギヤ)/F1…第1ワンウェイクラッチ/F2…第2ワンウェイクラッチ