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特開2022-157299樹脂成形品の洗浄用組成物および樹脂成形品の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157299
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】樹脂成形品の洗浄用組成物および樹脂成形品の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/34 20060101AFI20221006BHJP
   C11D 7/36 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 3/34 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 3/36 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 1/34 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C11D7/34
C11D7/36
C11D3/34
C11D3/36
C11D1/29
C11D1/14
C11D1/34
C11D1/72
C11D3/20
C11D1/722
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061433
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】390014856
【氏名又は名称】日本乳化剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雄太
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB14
4H003AB22
4H003AB27
4H003AB31
4H003AB37
4H003AB43
4H003AB46
4H003AC08
4H003AC23
4H003DA05
4H003DA12
4H003DB01
4H003DB02
4H003DC01
4H003EA06
4H003EB06
4H003EB14
4H003EB21
4H003EB23
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA19
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品の洗浄剤において、洗浄性能をよりいっそう向上させうる手段を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示されるイオン結合性塩を、樹脂成形品の洗浄に用いられる洗浄用組成物として用いる:

上記式(1)中、(Q)は、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオン、およびモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、(T)は、所定の構造を有する硫酸エステルアニオン、リン酸エステルアニオン、またはスルホン酸アニオンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で示されるイオン結合性塩を有効成分として含有する、樹脂成形品の洗浄に用いられる洗浄用組成物:
【化1】

上記式(1)中、
(Q)は、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオン、およびモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
(T)は、下記式(t-1):
【化2】

上記式(t-1)中、
は、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、
は、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、
sは、0~50の整数である、
で示される硫酸エステルアニオン、
下記式(t-2):
【化3】

上記式(t-2)中、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、この際、RおよびRは、同時に水素原子ではなく、
およびAは、それぞれ独立して、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、
tおよびuは、それぞれ独立して、0~50の整数である、
で示されるリン酸エステルアニオン、または、
下記式(t-3):
【化4】

上記式(t-3)中、
は、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、
は、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、
vは、0~50の整数である、
で示されるスルホン酸アニオンである。
【請求項2】
前記式(1)において、
(Q)が、第2級アンモニウムイオンまたは第3級アンモニウムイオンであり、
(T)が、前記式(t-1)で示される硫酸エステルアニオンまたは前記式(t-3)で示されるスルホン酸アニオンである、
請求項1に記載の洗浄用組成物。
【請求項3】
前記式(1)において、
(T)が、以下のいずれかの構造を有するものである、請求項1または2に記載の洗浄用組成物:
【化5】
【請求項4】
組成物の全量100質量%に対して、前記(A)イオン結合性塩の含有量が0.1~5質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄用組成物。
【請求項5】
(B)下記式(2)で示されるエーテル化合物をさらに含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の洗浄用組成物:
【化6】

上記式(2)中、
は、炭素原子数1~8のアルキル基であり、
nは、オキシエチレン基の平均付加モル数を表し、1~3の数である。
【請求項6】
前記(B)エーテル化合物が、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテルまたはトリエチレングリコールモノn-ブチルエーテルである、請求項5に記載の洗浄用組成物。
【請求項7】
組成物の全量100質量%に対して、前記(B)エーテル化合物の含有量が10~99.9質量%である、請求項5または6に記載の洗浄用組成物。
【請求項8】
(C)下記式(3)で示される非イオン性界面活性剤をさらに含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の洗浄用組成物:
【化7】

上記式(3)中、
は、置換または非置換の炭素数4~20の1価の炭化水素基であり、
Aは、炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、
mは、AOの平均付加モル数を表し、4~30の数である。
【請求項9】
前記(C)非イオン性界面活性剤において、(AO)がオキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を含む、請求項8に記載の洗浄用組成物。
【請求項10】
前記(C)非イオン性界面活性剤において、(AO)がオキシエチレン基およびオキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を含む、請求項9に記載の洗浄用組成物。
【請求項11】
前記(C)非イオン性界面活性剤において、mが8~20の数である、請求項8~10のいずれか1項に記載の洗浄用組成物。
【請求項12】
組成物の全量100質量%に対して、前記(C)非イオン性界面活性剤の含有量が1~50質量%である、請求項8~11のいずれか1項に記載の洗浄用組成物。
【請求項13】
希釈せずにそのまま、または水もしくは有機溶媒で2~20倍に希釈された希釈液として、樹脂成形品の洗浄に用いられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の洗浄用組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の洗浄用組成物またはその希釈物である洗浄剤を用いて樹脂成形品の表面を洗浄することを含む、樹脂成形品の洗浄方法。
【請求項15】
前記洗浄用組成物を水または有機溶媒で2~20倍に希釈して得られた希釈液である洗浄剤を用いて前記樹脂成形品の表面を洗浄することを含む、請求項14に記載の樹脂成形品の洗浄方法。
【請求項16】
前記洗浄用組成物を水または有機溶媒で希釈して得られた希釈液である洗浄剤を用いて前記樹脂成形品の表面を洗浄することを含み、前記洗浄剤に含まれる前記(A)イオン結合性塩、(B)エーテル化合物および(C)非イオン性界面活性剤の含有量が、前記洗浄剤の全量100質量%に対して、それぞれ0.001~0.1質量%、0.5~50質量%および0.1~5質量%である、請求項14または15に記載の樹脂成形品の洗浄方法。
【請求項17】
前記洗浄剤の温度が10~50℃である、請求項15または16に記載の樹脂成形品の洗浄方法。
【請求項18】
前記洗浄用組成物を水または有機溶媒で希釈して得られた希釈液である洗浄剤を用いて前記樹脂成形品の表面を洗浄することを含み、前記洗浄剤に含まれる(B)エーテル化合物の含有量が、前記洗浄剤の全量100質量%に対して5質量%以上であり、前記希釈液の温度が10~35℃である、請求項16に記載の樹脂成形品の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の洗浄用組成物および樹脂成形品の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品等の表面に付着した機械油、グリース、フラックス、ワックス、インキ、指紋などの有機系の汚れを除去するための洗浄剤として、トリクロロエタン、トリクロロトリフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤が使用されてきた。ハロゲン化炭化水素系溶剤は幅広い汚れを洗浄できるだけでなく、不燃性かつ乾燥性に優れるなど非常に使いやすい溶剤であるが、これらの中のいくつかは大気圏のオゾン層を破壊することが判明しているなど、環境汚染や安全性の点から今ではこれらの溶剤の使用は規制されている。このため、これらのハロゲン化炭化水素系溶剤から非ハロゲン系洗浄剤への代替が産業界において急ピッチで進められた。ここで、非ハロゲン系の代替洗浄剤としては、例えば「オゾン層破壊物質使用削減マニュアル第3版」(オゾン層保護対策産業協議会発行、1993年5月1日)に記載のアルコール系洗浄剤、炭化水素系洗浄剤、水系洗浄剤およびその他の洗浄剤が知られている。
【0003】
このような非ハロゲン系洗浄剤の一例として、例えば特許文献1には、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂といった透明性を有する樹脂からなる樹脂成形品をクリーニングするための洗浄剤が開示されている。具体的に、特許文献1では、脂肪族アミン、グリコールエーテル、非イオン界面活性剤、金属封鎖剤および水を含有するとともに研磨剤を含有しない洗浄剤を、透明性を有する樹脂材の表面に塗布し、汚れを浮かせて拭き取る洗浄工程を実施する技術が開示されている。また、特許文献1では、当該洗浄工程に続いて、石油系溶剤、ワックスおよび研磨剤を含有する保護剤を塗布して磨く仕上げ工程を行うことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6300055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の開示によれば、研磨工程を必須とせず、容易にかつスピーディに、樹脂成形品の透明性および美観性を向上させることができるとされている。
【0006】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1に開示されている洗浄剤を用いて洗浄工程を行ったとしても、その洗浄効果は十分に満足のいくものとは言い難く、依然として改善の余地が残されていることが判明した。
【0007】
そこで本発明は、樹脂成形品の洗浄剤において、洗浄性能をよりいっそう向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明者は鋭意検討を積み重ねた。その結果、驚くべきことに、所定のイオン結合性塩を必須成分として含有する洗浄剤を用いて樹脂成形品を洗浄すると、従来の技術と比較して格段に優れた洗浄性能が発揮されうることを見出した。本発明者は、この知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一形態によれば、(A)下記式(1)で示されるイオン結合性塩を有効成分として含有する、樹脂成形品の洗浄に用いられる洗浄用組成物が提供される:
【0010】
【化1】
【0011】
上記式(1)中、
(Q)は、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオン、およびモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
(T)は、下記式(t-1):
【0012】
【化2】
【0013】
上記式(t-1)中、
は、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、
は、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、
sは、0~50の整数である、
で示される硫酸エステルアニオン、
下記式(t-2):
【0014】
【化3】
【0015】
上記式(t-2)中、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、この際、RおよびRは、同時に水素原子ではなく、
およびAは、それぞれ独立して、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、
tおよびuは、それぞれ独立して、0~50の整数である、
で示されるリン酸エステルアニオン、または、
下記式(t-3):
【0016】
【化4】
【0017】
上記式(t-3)中、
は、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、
は、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、
vは、0~50の整数である、
で示されるスルホン酸アニオンである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹脂成形品の洗浄剤において、洗浄性能をよりいっそう向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<樹脂成形品の洗浄用組成物>
本発明の一形態は、所定のイオン結合性塩(A)を必須の有効成分として含有する、樹脂成形品の洗浄に用いられる洗浄用組成物である。また、本形態に係る洗浄用組成物は、エーテル化合物(B)または非イオン性界面活性剤(C)をさらに含むことが好ましく、エーテル化合物(B)および非イオン性界面活性剤(C)をさらに含むことがより好ましい。なお、後述するように、本形態に係る洗浄用組成物は、通常、水または有機溶媒により希釈されて、洗浄剤として用いられる。以下、本形態に係る洗浄用組成物に含まれうる各成分の詳細について、説明する。
【0020】
(A)イオン結合性塩
本形態に係る洗浄用組成物において、上記所定のイオン結合性塩(A)は、下記式(1)で示される構造を有している。
【0021】
【化5】
【0022】
上記式(1)において、(Q)は、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオン、およびモルホリニウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0023】
上記式(1)において、(T)は、下記式(t-1):
【0024】
【化6】
【0025】
で示される硫酸エステルアニオン、下記式(t-2):
【0026】
【化7】
【0027】
で示されるリン酸エステルアニオン、または、下記式(t-3):
【0028】
【化8】
【0029】
で示されるスルホン酸アニオンである。
【0030】
上記式(t-1)中、Rは、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、Aは、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、sは、0~50の整数である。
【0031】
また、上記式(t-2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、この際、RおよびRは、同時に水素原子ではなく、AおよびAは、それぞれ独立して、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、tおよびuは、それぞれ独立して、0~50の整数である。
【0032】
さらに、上記式(t-3)中、Rは、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基であり、Aは、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基であり、vは、0~50の整数である。
【0033】
上述したように、本発明者の検討によれば、上記特許文献1に開示されている洗浄剤(脂肪族アミン、グリコールエーテル、非イオン界面活性剤、金属封鎖剤および水を含有するとともに研磨剤を含有しない洗浄剤)を用いて洗浄工程を行ったとしても、その洗浄効果は十分に満足のいくものとは言い難く、依然として改善の余地が残されていることが判明した。
【0034】
そこで、本発明者は、上述したような課題に鑑み、鋭意研究を積み重ねた。その結果、驚くべきことに、所定のイオン結合性塩を必須成分として含有する洗浄剤を用いて樹脂成形品を洗浄すると、従来の技術と比較して格段に優れた洗浄性能が発揮されうることを見出した。そのメカニズムは明確ではないが、所定のイオン結合性塩に含まれるアミンおよび界面活性剤の構造が他の洗浄剤成分と高い親和性を有している結果、洗浄助剤として高い機能を発現するものと考えられる。
【0035】
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。
【0036】
(カチオン(Q)
上記(Q)は、窒素含有化合物に由来するカチオンである。カチオン(Q)をもたらす窒素含有化合物の具体例としては、例えば、アンモニア(NH)のほか、アミン化合物、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、ピロリジン化合物、ピロール化合物、ピラジン化合物、ピリミジン化合物、トリアゾール化合物、トリアジン化合物、キノリン化合物、イソキノリン化合物、インドール化合物、キノキサリン化合物、ピペラジン化合物、オキサゾリン化合物、チアゾリン化合物、およびモルホリン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の窒素含有有機化合物が挙げられる。ここで、上記(Q)は、特に窒素含有有機化合物に由来するカチオンであると好ましい。
【0037】
上記各窒素含有有機化合物の具体的な例は、特開2012-72130号公報の段落[0071]~[0091]に記載されたものと同様のものを挙げることができるが、入手容易性等の観点からは、上記化合物の中でも、アミン化合物が特に好ましい。
【0038】
そして、アミン化合物のなかでも、ジメチルアミン、ジエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン、メチル(エチル)アミン、メチル(プロピル)アミン、メチル(ブチル)アミン、メチル(ペンチル)アミン、メチル(ヘキシル)アミン、エチル(プロピル)アミン、エチル(ブチル)アミン、エチル(ペンチル)アミン、エチル(ヘキシル)アミンなどのアルキルアミン;モノベンジルアミン、(1-フェネチル)アミン、(2-フェネチル)アミン(別名:モノフェネチルアミン)、ジベンジルアミン、ビス(1-フェネチル)アミン、ビス(2-フェネチル)アミン(別名:ジフェネチルアミン)などの芳香族置換アルキルアミン;モノシクロペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノシクロヘプチルアミン、ジシクロヘプチルアミンなどのシクロアルキルアミン;モノメタノールアミン、ジメタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(n-プロパノール)アミン、ジ(n-プロパノール)アミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン、ジブタノールアミン、モノペンタノールアミン、ジペンタノールアミン、トリペンタノールアミン、モノヘキサノールアミン、ジヘキサノールアミン、モノメチルモノエタノールアミン、モノエチルモノエタノールアミン(別名:N-エチルエタノールアミン)、モノエチルモノプロパノールアミン、モノエチルモノブタノールアミン、モノエチルモノペンタノールアミン、モノプロピルモノエタノールアミン、モノプロピルモノプロパノールアミン、モノプロピルモノブタノールアミン、モノプロピルモノペンタノールアミン、モノブチルモノエタノールアミン、モノブチルモノプロパノールアミン、モノブチルモノブタノールアミン、モノブチルモノペンタノールアミンなどのアルカノールアミンが好ましい。これらアミン化合物は、入手容易性の観点から好ましい。なかでも、特に樹脂成形品に対する優れた洗浄性能を発揮しうる洗浄用組成物および洗浄剤が得られるという理由から、アルカノールアミンを用いると好ましい。
【0039】
(Q)は、上述した各種の窒素含有化合物由来のカチオンでありうるが、なかでも、アミン化合物に由来するカチオンであると好ましく、さらに、アルカノールアミンに由来するカチオンであるとより好ましい。かようなカチオンは、洗浄用組成物および洗浄剤に優れた洗浄性能を付与しやすいという点で好適である。
【0040】
また、上記アミン化合物としては、イオン結合性塩(1)を調製する反応工程の簡略化の観点から、当該化合物中に含まれるアミノ基が1級、2級または3級であるものが好ましい。また、本発明の効果を得やすいという観点からは、2級または3級であるものがより好ましく、2級であるものが特に好ましい。
【0041】
(アニオン(T)
上記式(1)において、アニオン((T))は、上記式(t-1)で示される硫酸エステルアニオン、式(t-2)で示されるリン酸エステルアニオンまたは式(t-3)で示されるスルホン酸アニオンである。これらアニオンは、上述したカチオンと相互作用することによって樹脂成形品を構成する樹脂との親和性が改善され、結果として、イオン結合性塩(1)を用いることによる洗浄性能の向上に大きく寄与することができる。また、これらアニオンは、上記カチオンのカウンターアニオンとして、ハロゲンを含まない構造のカウンターアニオンを提供するため、ハロゲンを嫌う用途における使用に適している。以下、これらアニオンの構造について具体的に説明する。
【0042】
上記式(t-1)中のA、式(t-2)中のAおよびA、および式(t-3)中のAとしてそれぞれ示される、直鎖状または分枝状の炭素原子数2~4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。入手容易性の観点から、エチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
【0043】
上記式(t-1)中のR、式(t-2)中のRおよびR、および式(t-3)中のRとしてそれぞれ示される、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、3-メチルペンタン-2-イル基、3-メチルペンタン-3-イル基、4-メチルペンチル基、4-メチルペンタン-2-イル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブタン-2-イル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、1-(n-プロピル)ブチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1-エチル-2,2-ジメチルプロピル基、n-オクチル基、2-メチルヘキサン-2-イル基、2,4-ジメチルペンタン-3-イル基、1,1-ジメチルペンタン-1-イル基、2,2-ジメチルヘキサン-3-イル基、2,3-ジメチルヘキサン-2-イル基、2,5-ジメチルヘキサン-2-イル基、2,5-ジメチルヘキサン-3-イル基、3,4-ジメチルヘキサン-3-イル基、3,5-ジメチルヘキサン-3-イル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、2-メチルヘプタン-2-イル基、3-メチルヘプタン-3-イル基、4-メチルヘプタン-3-イル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチル-1-メチルペンチル基、1-エチル-4-メチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1-イソプロピル-1,2-ジメチルプロピル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、n-ノニル基、1-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、1-エチルヘプチル基、1-(n-ブチル)ペンチル基、4-メチル-1-(n-プロピル)ペンチル基、1,5,5-トリメチルヘキシル基、1,1,5-トリメチルヘキシル基、2-メチルオクタン-3-イル基、n-デシル基、1-メチルノニル基、1-エチルオクチル基、1-(n-ブチル)ヘキシル基、1,1-ジメチルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、1-エチルノニル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、1-メチルトリデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基などの直鎖、分岐状のアルキル基が挙げられる。入手容易性や(メタ)アクリル系粘着樹脂に対するイオン結合性塩(1)の配列のしやすさの観点から、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、2-エチルヘキシル基、トリデシル基、1,2-ビス(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)エチル基がより好ましく、2-エチルヘキシル基が特に好ましい。
【0044】
置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~20のシクロアルキル基の例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基が挙げられる。入手容易性や樹脂成形品の表面に対するイオン結合性塩(1)の配列のしやすさの観点から、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数3~10のシクロアルキル基がより好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基がより好ましい。
【0045】
置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基の例としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基などが挙げられる。入手容易性や樹脂成形品の表面に対するイオン結合性塩(1)の配列のしやすさの観点から、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~18のアリール基が好ましく、フェニル基、ジメチルフェニル基(2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基等)、イソプロピルフェニル基(2-イソプロピルフェニル基、3-イソプロピルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基)、ドデシルフェニル基(2-ドデシルフェニル基、3-ドデシルフェニル基、4-ドデシルフェニル基)が特に好ましい。
【0046】
置換されているかもしくは非置換の炭素原子数7~31のアリールアルキル基の例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、2-(1-ナフチル)エチル基、2-(2-ナフチル)エチル基、3-(1-ナフチル)プロピル基、または3-(2-ナフチル)プロピル基などが挙げられる。
【0047】
入手容易性の観点からは、R~Rは、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~20のアルキル基または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~30のアリール基であるとより好ましく、さらに、置換されているかもしくは非置換の炭素原子数1~10のアルキル基または置換されているかもしくは非置換の炭素原子数6~20のアリール基であると特に好ましい。さらに、入手容易性や粘度等の取り扱いの容易性等を考慮すると、好ましくは、n-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ジメチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ドデシルフェニル基である。
【0048】
上記式(t-1)中のs、式(t-2)中のtおよびu、および式(t-3)中のvは、二価の置換基-(OA1~4)-の数を表し、0~50の整数である。粘度の低下などによる取扱い易さ等の観点から、上記s、t、uおよびvは、それぞれ独立して、1~40の整数が好ましく、2~30の整数がより好ましい。ここで、上記s、t、uおよびvが、1以上であるとき、イオン結合性塩(1)は、オキシアルキレン鎖を有する。本発明の効果をより向上させるために、上記s、t、uおよびvは、1以上であると好ましい。このように、イオン結合性塩(1)がオキシアルキレン鎖を含んでいると、樹脂成形品に対する洗浄性能の向上効果をさらに高めることができる。よって、上記s、t、uおよびvは1以上であるとさらに好ましく、2以上であると特に好ましい。一方、オキシアルキレン鎖が長すぎる場合、高粘度となるため、ハンドリング性を考慮すると、上記s、t、uおよびvの上限は、50であると好ましく、40であるとより好ましく、30であると特に好ましい。
【0049】
イオン結合性塩(1)において、式(t-1)で示される硫酸エステルアニオン、式(t-2)で示されるリン酸エステルアニオンまたは式(t-3)で示されるスルホン酸アニオンは、その用途によって適宜選択される。
【0050】
なお、本明細書において、ある基が「置換されていてもよい」場合に、当該ある基を置換しうる置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ドデシル基などのアルキル基、フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、p-トリルオキシ基などのアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基などのアシル基、メチルスルファニル基、tert-ブチルスルファニル基などのアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p-トリルスルファニル基などのアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基などのジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p-トリルアミノ基等のアリールアミノ基などの他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基などが挙げられる。ただし、場合によって存在する置換基は、置換される基と同じになることはない。例えば、アルキル基がアルキル基で置換されることはない。
【0051】
(T)の具体例を挙げると、特に洗浄性能の向上効果が高いという観点からは、以下のいずれかの構造を有するものが好ましく挙げられる。
【0052】
【化9】
【0053】
(イオン結合性塩(A)の具体例)
上記式(1)で示されるイオン結合性塩(A)のより好ましい化合物としては、下記化学式(101)~(113)で表されるイオン結合性塩が挙げられる。なお、イオン結合性塩(A)は単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明の効果がより得られやすいという観点から、イオン結合性塩(1)としては、化学式(101)~(103)、(107)~(112)で表されるイオン結合性塩が好ましく、化学式(101)、(107)、(110)、(111)で表されるイオン結合性塩がより好ましい。
【0054】
【化10】
【0055】
【化11】
【0056】
本形態に係る洗浄用組成物における(A)イオン結合性塩の含有量について特に制限はないが、他の洗浄剤成分との親和性を高めるという観点からは、組成物の全量100質量%に対して、(A)イオン結合性塩の含有量が0.1~5質量%であることが好ましく、0.12~1.5質量%であることがより好ましく、0.15~1質量%であることがさらに好ましく、0.2~0.5質量%であることが特に好ましい。
【0057】
(B)エーテル化合物
本形態に係る洗浄用組成物は、エーテル化合物をさらに含有することが好ましい。洗浄用組成物がエーテル化合物を含有することで、洗浄用組成物の脂溶性を高めることができ、被洗浄物における油脂汚れに対する洗浄性を向上させることができる。
【0058】
エーテル化合物の具体的な形態について特に制限はないが、下記式(2)で示されるエーテル化合物であることが好ましい。
【0059】
【化12】
【0060】
ここで、上記式(2)において、Rは、炭素原子数1~8のアルキル基であり、その具体例については上述した通りである。なかでも、炭素原子数1~4のアルキル基が好ましく、炭素原子数2~4のアルキル基がより好ましく、炭素原子数3または4のアルキル基がさらに好ましく、炭素原子数4のアルキル基が特に好ましく、n-ブチル基が最も好ましい。また、上記式(2)において、nは、オキシエチレン基の平均付加モル数を表し、1~3の数である。なかでも、nは2または3であることが好ましく、nは2であることが特に好ましい。
【0061】
上記式(2)で示されるエーテル化合物(B)の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル等が挙げられる。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、本発明の作用効果をよりいっそう発現しうるという観点からは、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル(BDG)、トリエチレングリコールモノn-ブチルエーテル(BTG)、エチレングリコールモノメチルエーテル(MG)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(MTG)が好ましく、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル(BDG)またはトリエチレングリコールモノn-ブチルエーテル(BTG)が特に好ましい。
【0062】
本形態に係る洗浄用組成物における(B)エーテル化合物の含有量について特に制限はないが、洗浄剤の脂溶性を高めて油脂汚れに対する洗浄性を向上させるという観点からは、組成物の全量100質量%に対して、(B)エーテル化合物の含有量が10~99.9質量%であることが好ましく、40~99.7質量%であることがより好ましく、70~99質量%であることがさらに好ましく、90~95質量%であることが特に好ましい。
【0063】
(C)非イオン性界面活性剤
本形態に係る洗浄用組成物は、非イオン性界面活性剤をさらに含有することが好ましい。洗浄用組成物が非イオン性界面活性剤を含有することで、洗浄用組成物の洗浄性をよりいっそう向上させることができる。
【0064】
非イオン性界面活性剤の具体的な形態について特に制限はないが、下記式(3)で示される化合物であることが好ましい。
【0065】
【化13】
【0066】
ここで、上記式(3)において、Rは、置換または非置換の炭素数4~20の1価の炭化水素基である。ここで、「1価の炭化水素基」は、直鎖状、分枝状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基等が挙げられる。これらのうち、アルキル基、シクロアルキル基およびアリール基の例としては、上述したもののうち炭素原子数が4~20のものが挙げられる。また、炭素原子数4~20のアルケニル基としては、例えば、2-ブテニル基、3-ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等が挙げられる。炭素原子数4~20のアルキニル基としては、例えば、2-ブチニル基、3-ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、デシニル基等が挙げられる。炭素原子数4~20のシクロアルケニル基としては、例えば、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基等が挙げられる。炭素原子数4~20のシクロアルキニル基としては、例えば、シクロブチニル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、シクロヘプチニル基、シクロオクチニル基、シクロデシニル基等が挙げられる。なかでも、Rは、置換または非置換の炭素原子数4~20のアルキル基またはシクロアルキル基であることが好ましく、置換または非置換の炭素原子数4~20のアルキル基であることがより好ましく、置換または非置換の炭素原子数8~20のアルキル基であることがさらに好ましく、置換または非置換の炭素原子数10~16のアルキル基であることがいっそう好ましく、置換または非置換の炭素原子数12~14のアルキル基であることが特に好ましく、非置換の炭素原子数12~14のアルキル基であることが最も好ましい。
【0067】
上記式(3)において、Aは、炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基である。このようなアルキレン基としては、例えば、エチレン基(-(CH-);n-プロピレン基(-(CH-)、イソプロピレン基(-CH-CH(CH)-、-CH(CH)-CH-)等のプロピレン基;n-ブチレン基(-(CH-)、1-メチルプロピレン基(-CH-CH-CH(CH)-、-CH(CH)-CH-CH-)、2-メチルプロピレン基(-CH-CH(CH)-CH-)、ジメチルエチレン基(-CH-C(CH-、-C(CH-CH-)、エチルエチレン基(-CH-CH(CHCH)-、-CH(CHCH)-CH-)等のブチレン基;等が挙げられる。
【0068】
上記式(3)において、(AO)は、ポリオキシアルキレン鎖を表す。ここで、(AO)は、オキシエチレン基(-O-(CH-)以外のアルキレン基を含むことが好ましく、オキシエチレン基およびオキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を含むことがより好ましい。ここで一般に、洗浄用組成物および洗浄剤における非イオン性界面活性剤の添加量が多くなると洗浄時に泡立ちが発生しやすくなり、発生した泡を洗い流すために大量の溶媒(水)や時間を消費する可能性がある。この点について、非イオン性界面活性剤(C)を上述したような構成とすることで、同程度の量の非イオン性界面活性剤を用いた場合における洗浄時の泡立ちの発生を抑制することができる。なお、洗浄時の泡立ちの抑制の観点から、式(3)の(AO)におけるオキシエチレン基以外のオキシアルキレン基の割合は、好ましくは1~70モル%であり、より好ましくは3~50モル%であり、さらに好ましくは5~30モル%である。なお、(AO)がオキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を2種以上有する場合、上記割合(モル%)は、各構造の割合(モル%)の合計を表す。また、(AO)が2種以上のオキシアルキレン基を有する場合、配列は、ランダム型、ブロック型のいずれでもよい。
【0069】
上記式(3)において、mは、AOの平均付加モル数を表し、4~30の数である。洗浄性能の向上効果の観点から、mは、6~20の数であることが好ましく、8~12の数であることがより好ましく、9~11の数であることが特に好ましい。
【0070】
本形態に係る洗浄用組成物における(C)非イオン性界面活性剤の含有量について特に制限はないが、組成物の全量100質量%に対して、通常は1~80質量%である。また、洗浄時の泡立ちを抑制するという観点からは、組成物の全量100質量%に対して、(C)非イオン性界面活性剤の含有量が1~50質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましく、1~5質量%であることが特に好ましい。
【0071】
本形態に係る洗浄用組成物は、上述した(A)~(C)の各成分以外にも、従来公知の各種の添加剤を1種または2種以上含んでもよい。このような添加剤としては、例えば、相溶化剤、可溶化剤、キレート剤、緩衝剤などのpH調整剤、酵素、粘度調整剤、増粘剤、表面改質剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、防錆剤、高分子化合物などが挙げられる。
【0072】
<洗浄剤>
上述した本発明の一形態に係る洗浄用組成物による洗浄の対象物は、樹脂成形品である。ここで、樹脂成形品の材質について特に制限はなく、表面に機械油、グリース、フラックス、ワックス、インキ、指紋などの有機系の汚れが付着しうる用途に用いられている樹脂成形品が広く対象とされうる。樹脂成形品を構成する材料の一例としては、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン系樹脂(AS樹脂)、ポリアクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、これらの共重合体であるポリアクリレート-スチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられ、好ましくはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン系樹脂(AS樹脂)、ポリアクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、これらの共重合体であるポリアクリレート-スチレン系樹脂が挙げられ、より好ましくはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン系樹脂(AS樹脂)、ポリアクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂が挙げられる。
【0073】
そして、上述した本発明の一形態に係る洗浄用組成物は、水や有機溶媒などの液状媒体で希釈して用いることを目的とした濃縮タイプであってもよいし、希釈せずにそのまま用いることを目的とした非希釈タイプであってもよい。いずれにしても、実際に洗浄処理に供される際の混合物を、本明細書では「洗浄剤」と称する。言い換えれば、上述した本発明の一形態に係る洗浄用組成物は、希釈せずにそのまま樹脂成形品の洗浄に用いられうる。また、本発明の一形態に係る洗浄用組成物は、水もしくは有機溶媒で1倍超20倍以下に希釈された希釈液として、樹脂成形品の洗浄に用いられてもよい。なお、本発明のさらに他の形態によれば、上述した本発明の一形態に係る洗浄用組成物またはその希釈物である洗浄剤を用いて樹脂成形品の表面を洗浄することを含む、樹脂成形品の洗浄方法もまた、提供される。
【0074】
洗浄用組成物を希釈して洗浄剤とする場合において、希釈に用いる液状媒体の種類は、被洗浄物である樹脂成形品の表面に存在する汚れの種類および程度に応じて適宜選択することができる。例えば、液状媒体としては水を主成分とした溶媒としての役割を果たすことができるもの(水系媒体)や、有機溶媒がいずれも好適なものとして挙げられる。水系媒体としては、水、水およびアルコールの混合媒体、水および水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体等が挙げられる。一方、希釈に用いる液状媒体としての有機溶媒としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、およびアミド系溶剤等の極性溶剤や、炭化水素系溶剤等、洗浄で用いることのできる公知の有機溶媒が挙げられる。
【0075】
洗浄用組成物に液状媒体を加えて希釈する際の希釈倍率としては、洗浄用組成物1質量部を、液状媒体を添加して1質量部超100質量部以下(1倍超10倍以下)に希釈することが好ましく、1.5~50質量部(1.5~50倍)に希釈することがより好ましく、2~20質量部(2~20倍)に希釈することが特に好ましく、3~20質量部(3~20倍)に希釈することが最も好ましい。
【0076】
あるいは、希釈により得られる洗浄剤に含まれる各成分の最終濃度を考慮して希釈倍率を決定することも好ましい。具体的には、例えば、希釈後の洗浄剤に含まれる前記(A)イオン結合性塩、(B)エーテル化合物および(C)非イオン性界面活性剤の含有量が、前記洗浄剤の全量100質量%に対して、それぞれ0.001~0.1質量%、0.5~50質量%および0.1~5質量%となるように希釈することも好ましい実施形態である。すなわち、本発明の好ましい実施形態によれば、上述した本発明の一形態に係る洗浄用組成物を水または有機溶媒で希釈して得られた希釈液である洗浄剤を用いて樹脂成形品の表面を洗浄することを含み、前記洗浄剤に含まれる前記(A)イオン結合性塩、(B)エーテル化合物および(C)非イオン性界面活性剤の含有量が、前記洗浄剤の全量100質量%に対して、それぞれ0.001~0.1質量%、0.5~50質量%および0.1~5質量%である樹脂成形品の洗浄方法もまた、提供される。上述した洗浄剤における(A)~(C)成分の最終濃度は、それぞれ0.005~0.05質量%、2~30質量%および0.1~1.5質量%であることがより好ましい。
【0077】
洗浄時には洗浄剤を加温することなく常温でそのまま用いてもよいし、洗浄剤を加温して用いてもよい。具体的に、洗浄に供される洗浄剤の温度は、好ましくは20~50℃である。ここで、本発明者の検討によれば、洗浄用組成物を水や有機溶媒等の液状媒体で希釈して得られた希釈液である洗浄剤を用いて樹脂成形品の表面を洗浄する際に、希釈液(洗浄剤)に含まれるエーテル化合物の含有量が比較的多い場合には、洗浄時の洗浄剤の温度が常温(20~30℃)であっても、十分に優れた洗浄性能が発揮されることが判明した。したがって、本発明の一形態に係る洗浄用組成物を水や有機溶媒等の液状媒体を用いて希釈して洗浄剤として用いる際には、エーテル化合物の含有量が比較的高めになるように希釈することで、洗浄時の保温に要する装置や光熱費等の各種ユーティリティーの削減が可能となるため、工業的な優位性が非常に高いと言える。
【実施例0078】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
【0079】
《イオン結合性塩の合成》
[合成例1:[MEM][EHDG-S]の合成;イオン結合性塩の合成]
ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名:2-エチルヘキシルジグリコール、略称:EHDG)150.0質量部にトルエン150.0質量部を加え、110℃に昇温した。これにスルファミン酸80.2質量部を加え3時間反応させた。反応後、過剰のスルファミン酸を濾別して、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:EHDG-SF;アンモニウムイオンはNH )のトルエン溶液を得た。
【0080】
上記で得られたEHDG-SFの50%トルエン溶液100.0質量部に、N-エチルエタノールアミン(日本乳化剤株式会社製、商品名:アミノアルコールMEM、略称:MEM)を21.2質量部加え、120℃で3時間反応させた。(EHDG-SFとMEMとのモル比は1:1.5)
反応終了後、トルエンおよび未反応のMEMを減圧留去し(温度:150℃、減圧度:1.33kPa(10mmHg))、目的とするイオン結合性塩(略称:[MEM][EHDG-S];前記化学式(101)で表される化合物)を61.2質量部得た。
【0081】
[合成例2:[MEM][1305-S]の合成;イオン結合性塩の合成]
EHDG-SFの代わりに、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(略称:1305-SF;アンモニウムイオンはNH )100.0質量部を用いたことを除いては、上記合成例1と同様にして、目的とするイオン結合性塩(略称:[MEM][1305-S];前記化学式(107)で表される化合物)を12.9質量部得た。
【0082】
[合成例3:[MEM][DOSS]の合成;イオン結合性塩の合成]
EHDG-SFの代わりに、アンモニウムジオクチルスルフォサクシネート(略称:DOSS-NH4)100.0質量部を用いたことを除いては、上記合成例1と同様にして、目的とするイオン結合性塩(略称:[MEM][DOSS];前記化学式(111)で表される化合物)を30.4質量部得た。
【0083】
[合成例4:[MEM][Cum-SO]の合成;イオン結合性塩の合成]
EHDG-SFの代わりに、クメンスルホン酸(o-,m-,p-クメンスルホン酸異性体混合物)(略称:Cum-SOH)100.0質量部を用いたことを除いては、上記合成例1と同様にして、目的とするイオン結合性塩(略称:[MEM][Cum-SOH];前記化学式(110)で表される化合物)を66.8質量部得た。
【0084】
《洗浄用組成物および洗浄剤の調製》
[実施例1]
エーテル化合物であるジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル(nBu-O-(CHCH-OH;BDG)2.5質量部、非イオン性界面活性剤(1)(炭素数12~13の直鎖アルコールにオキシエチレン基およびオキシプロピレン基がブロック付加したもの(平均付加モル数=10;オキシエチレン基とオキシプロピレン基との付加モル数の比=4:1))2.5質量部、並びに、上記合成例1で合成したイオン結合性塩([MEM][EHDG-S])0.02質量部を混合し、均一になるまで撹拌して、本実施例の洗浄用組成物を調製した。
【0085】
次いで、上記で調製した洗浄用組成物5.0質量部と、水95.0質量部とを混合し、均一になるまで撹拌して、本実施例の洗浄剤を調製した。
【0086】
[実施例2]
非イオン性界面活性剤(1)に代えて、非イオン性界面活性剤(2)(炭素数12~13の直鎖アルコールにオキシエチレン基が付加したもの(平均付加モル数=10))2.5質量部を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本実施例の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。
【0087】
[実施例3]
[MEM][EHDG-S]に代えて、上記合成例2で合成したイオン結合性塩([MEM][1305-S])0.02質量部を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本実施例の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。
【0088】
[実施例4]
[MEM][EHDG-S]に代えて、上記合成例3で合成したイオン結合性塩([MEM][DOSS])0.02質量部を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本実施例の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。
【0089】
[実施例5]
[MEM][EHDG-S]に代えて、上記合成例4で合成したイオン結合性塩([MEM][Cum-SO])0.02質量部を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本実施例の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。
【0090】
[実施例6~実施例7]
各成分の配合量(質量部)を、下記の表1に示すように変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、実施例6~実施例7の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。
【0091】
[比較例1]
[MEM][EHDG-S]に代えて、モノエタノールアミン(NH-CHCH-OH)0.02質量部を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本比較例の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。
【0092】
[比較例2]
モノエタノールアミンに代えて、メチルエタノールアミン(CH-NH-CHCH-OH)0.02質量部を用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、本比較例の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。
【0093】
[比較例3]
モノエタノールアミンに代えて、エチルエタノールアミン(CHCH-NH-CHCH-OH)0.02質量部を用いたこと以外は、上述した比較例1と同様の手法により、本比較例の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。
【0094】
《洗浄剤の評価》
[洗浄性能の評価]
以下の方法により、上記で調製した洗浄剤について、樹脂成形品に付着した油脂汚れに対する洗浄性能を評価した。
【0095】
まず、テストピースとして、ABS樹脂の成形品(サイズ:7.5cm×15cm×0.2cm)を準備した。
【0096】
次いで、上記で準備したテストピースを40℃に保温した状態で、三名のパネラーのそれぞれの手の親指から指紋を1箇所ずつ、合計で3箇所に付着させた。また、テストピース表面の指紋付着部から離れた部位に離型剤を塗布し、被洗浄サンプルとした。
【0097】
このようにして作製された被洗浄サンプルの指紋付着部および離型剤塗布部に、上記で調製した洗浄剤のそれぞれを40℃に保温したものを10秒間流しかけた。その後、指紋および離型剤による汚れが洗浄された程度を目視にて観察し、以下の基準による4段階で評価した。結果を下記の表1に示す。なお、評価が「◎」または「○」であれば実用上問題なく使用可能である。
【0098】
(洗浄試験の評価基準)
◎:汚れが十分に洗い流されており、汚れの残りは観察されなかった;
○:汚れはほとんど洗い流されたが、汚れがわずかに残存した;
△:汚れの一部は洗い流されたが、かなりの汚れが残存した。
【0099】
[泡立ちの評価]
上述した洗浄試験を実施した際の泡立ちの程度を目視にて観察し、以下の基準による3段階で評価した。結果を下記の表1に示す。
【0100】
(泡立ちの評価基準)
◎:洗浄試験の際に泡立ちはほとんど観察されなかった;
○:洗浄試験の際に泡立ちが多少観察された;
△:洗浄試験の際にかなりの泡立ちが観察された。
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示す結果から、所定のイオン結合性塩ではないアミン化合物を含む洗浄用組成物と比較して、所定のイオン結合性塩を含む本発明に係る洗浄用組成物は、樹脂成形品に付着した油脂汚れに対する優れた洗浄性能を有していることがわかる。
【0103】
また、表1に示す結果によれば、非イオン性界面活性剤の使用量を1質量%まで低減させても十分な洗浄性能が発揮され、この場合には泡立ちを十分に抑制することもできたことがわかる(実施例6)。一方、非イオン性界面活性剤の使用量が4質量%と比較的多い実施例7では、かなりの泡立ちが観察された。さらに、非イオン性界面活性剤として、オキシエチレン基のみを含むものを用いた場合(実施例2)と比較して、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基(ここではオキシプロピレン基)も含むものを用いた実施例1では、泡立ちが抑制されたこともわかる。また、実施例1で用いた非イオン性界面活性剤におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基との付加モル数の比を4:1から3:1または7.5:1に変更して同様に実施した実験においても、実施例1と同等の結果が得られることが確認された。
【0104】
[実施例8~実施例13]
エーテル化合物であるジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル(nBu-O-(CHCH-OH;BDG)と、上記合成例4で合成したイオン結合性塩([MEM][Cum-SO])とを、9:1の質量比で混合して、混合物Aを調製した。
【0105】
次いで、この混合物Aと、水と、BDGと、非イオン性界面活性剤(1)とを混合し、均一になるまで撹拌して、実施例8~実施例13の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。なお、各実施例について最終的に得られた洗浄剤における各成分の配合量(質量部)を下記の表2に示す。また、下記の表2に略語で記載されているエーテル化合物の名称は以下の通りである。
【0106】
BTG:トリエチレングリコールモノn-ブチルエーテル
MG:エチレングリコールモノメチルエーテル
MDG:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
MTG:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
続いて、上記で調製した洗浄剤について、上記と同様の評価を行った。結果を下記の表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
表2に示す結果から、エーテル化合物としてBDGまたはBTGを用いた実施例8~実施例10では、その他のエーテル化合物を用いた実施例11~13と比較して、より優れ洗浄性能が発揮されたことがわかる。また、実施例8等の結果から、非イオン性界面活性剤の使用量を0.15質量%まで低減させたとしても、十分な洗浄性能が確保されることもわかる。
【0109】
[実施例14~実施例15]
各成分の配合量(質量部)を、下記の表3に示すように変更したこと以外は、上述した実施例8と同様の手法により、実施例14~実施例15の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。すなわち、まず、エーテル化合物であるBDGと、上記合成例4で合成したイオン結合性塩([MEM][Cum-SO])とを、9:1の質量比で混合して、混合物Aを調製した。次いで、この混合物Aと、水と、BDGと、非イオン性界面活性剤(1)とを混合し、均一になるまで撹拌して、実施例14~実施例15の洗浄用組成物および洗浄剤を調製した。なお、各実施例について最終的に得られた洗浄剤における各成分の配合量(質量部)を下記の表3に示す。
【0110】
続いて、上記で調製した洗浄剤について、上記と同様の評価を行った。ただし、ここでは、評価の際にテストピースおよび洗浄剤を40℃に保温することなく、いずれも常温(25℃)の状態で評価を行った。結果を下記の表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
表3に示す結果から、洗浄用組成物と水との質量比が30:70となるように希釈することで、常温においても十分な洗浄性能が得られることがわかる。なお、上述した実施例8および実施例9において調製された洗浄剤(洗浄剤組成物と水との質量比が5:95)を用いて、同様に常温での洗浄試験を行ったところ、いずれも評価結果は「〇」であった。このため、本発明に係る洗浄用組成物を水や有機溶媒等の液状媒体を用いて希釈して洗浄剤として用いる際には、洗浄用組成物の濃度が比較的高めになるように希釈することで、洗浄時の保温に要する装置や光熱費等の各種ユーティリティーの削減が可能となるため、工業的な優位性が非常に高いと言える。