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特開2022-157305湿式排煙脱硫装置の制御方法、湿式排煙脱硫装置の制御装置、この湿式排煙脱硫装置の制御装置を備えた遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システム
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  • 特開-湿式排煙脱硫装置の制御方法、湿式排煙脱硫装置の制御装置、この湿式排煙脱硫装置の制御装置を備えた遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システム 図1
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  • 特開-湿式排煙脱硫装置の制御方法、湿式排煙脱硫装置の制御装置、この湿式排煙脱硫装置の制御装置を備えた遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システム 図7
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  • 特開-湿式排煙脱硫装置の制御方法、湿式排煙脱硫装置の制御装置、この湿式排煙脱硫装置の制御装置を備えた遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システム 図10
  • 特開-湿式排煙脱硫装置の制御方法、湿式排煙脱硫装置の制御装置、この湿式排煙脱硫装置の制御装置を備えた遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システム 図11
  • 特開-湿式排煙脱硫装置の制御方法、湿式排煙脱硫装置の制御装置、この湿式排煙脱硫装置の制御装置を備えた遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システム 図12
  • 特開-湿式排煙脱硫装置の制御方法、湿式排煙脱硫装置の制御装置、この湿式排煙脱硫装置の制御装置を備えた遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システム 図13
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157305
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】湿式排煙脱硫装置の制御方法、湿式排煙脱硫装置の制御装置、この湿式排煙脱硫装置の制御装置を備えた遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20221006BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20221006BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20221006BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
B01D53/50 200
B01D53/78 ZAB
F23J15/00 B
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061440
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】郡司 駿
(72)【発明者】
【氏名】須藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】金森 信弥
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一貴
【テーマコード(参考)】
3K070
4D002
【Fターム(参考)】
3K070DA03
3K070DA16
3K070DA23
4D002AA02
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA07
4D002DA05
4D002DA16
4D002EA13
4D002FA03
4D002GA02
4D002GA05
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB05
4D002GB06
4D002GB08
4D002GB20
(57)【要約】
【課題】湿式排煙脱硫装置の吸収塔において吸収液を循環させるための制御を簡易的に実施する。
【解決手段】湿式排煙脱硫装置は、吸収塔と、循環ポンプと、吸収剤スラリー供給部とを備える。本装置の制御方法では、吸収液の吸収剤濃度、吸収液の循環流量、及び、発電機出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築する。そして発電機出力ごとに、学習モデルによる二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、予測値が基準値以下になるための吸収剤の投入量及び吸収液の循環流量を示すテーブルを作成する。そして当該テーブルに基づいて、発電機の状態に対応する吸収剤の投入量及び吸収液の循環流量の制御目標値を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収塔内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置の制御方法であって、
前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築する工程と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブルに基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブルを作成する工程と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定する工程と
を備える、湿式排煙脱硫装置の制御方法。
【請求項2】
前記テーブルを作成する工程では、予め設定された前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の許容範囲内において、前記吸収塔内に吸収液を循環させるための少なくとも1つの循環ポンプの運用コストが少なくなるように、前記予測値が前記基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を探索する、請求項1に記載の湿式排煙脱硫装置の制御方法。
【請求項3】
前記学習モデルによる前記吸収塔出口における前記排ガスの前記二酸化硫黄濃度の予測値と実測値との誤差に基づいて、前記学習モデルを補正する工程を更に備える、請求項1又は2に記載の湿式排煙脱硫装置の制御方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記出力の外部指令値、前記出力、前記燃焼装置の空気流量、吸収塔入口の二酸化硫黄濃度のうち少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の湿式排煙脱硫装置の制御方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記燃焼装置の空気流量、及び、前記吸収塔入口の二酸化硫黄濃度を含む、請求項4に記載の湿式排煙脱硫装置の制御方法。
【請求項6】
前記学習モデルは線形多項式で表される、請求項1から5のいずれか一項に記載の湿式排煙脱硫装置の制御方法。
【請求項7】
前記基準テーブルは、予め特定された前記パラメータと前記出力との関係を示す関数として規定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の湿式排煙脱硫装置の制御方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの循環ポンプは固定容量式である、請求項1から7のいずれか一項に記載の湿式排煙脱硫装置の制御方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの循環ポンプは可変容量式である、請求項1から7のいずれか一項に記載の湿式排煙脱硫装置の制御方法。
【請求項10】
吸収塔内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置の制御装置であって、
前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築するための学習モデル構築部と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブルに基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブルを作成するためのテーブル作成部と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定するための制御目標値決定部と
を備える、湿式排煙脱硫装置の制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の湿式排煙脱硫装置の制御装置と、
前記湿式排煙脱硫装置の制御装置電気的に接続された遠隔監視装置と
を備える、遠隔監視システム。
【請求項12】
吸収塔内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置の制御に係る処理を実行する情報処理装置であって、
前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築するための学習モデル構築部と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブルに基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブルを作成するためのテーブル作成部と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定するための制御目標値決定部と
を備える、情報処理装置。
【請求項13】
吸収塔内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置の制御に係る処理を実行する情報処理装置と通信可能な端末とからなる情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
前記端末からの要求により、前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築するための学習モデル構築部と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブルに基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブルを作成するためのテーブル作成部と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定するための制御目標値決定部と
を備える、情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、湿式排煙脱硫装置の制御方法、湿式排煙脱硫装置の制御装置、この湿式排煙脱硫装置の制御装置を備えた遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
湿式排煙脱硫装置では、ボイラ等の燃焼装置で発生した排ガスを脱硫装置の吸収塔内に導入し、吸収塔を循環する吸収液と気液接触させる。気液接触の過程で、吸収液中の吸収剤(例えば、炭酸カルシウム)と排ガス中の二酸化硫黄(SO)とが反応することにより、排ガス中のSOは吸収液に吸収され、排ガスからSOが除去(排ガスが脱硫)される。一方、SOを吸収した吸収液は落下して、吸収塔下方の貯留タンク内に溜められる。貯留タンクには吸収剤が供給され、供給された吸収剤で吸収性能を回復した吸収液は循環ポンプによって吸収塔の上方に供給され、排ガスとの気液接触(SOの吸収)に供せられる。吸収液を循環させる循環ポンプは消費電力が大きいため、従来は、消費電力の抑制を目的として、吸収塔に流入する排ガスの流量と排ガス中のSO濃度等に基づいて必要となる吸収液の循環流量を計算し、循環ポンプの運転台数の制御が行われている。
【0003】
特許文献1では、このような湿式排煙脱硫装置の吸収塔において吸収液を循環させるための循環ポンプの運転条件を適切に調節するための技術が開示されている。この文献では、ボイラ等の燃焼装置及び湿式排煙脱硫装置から得られた運転データを用いて、運転データと吸収塔出口におけるSO濃度との相関関係、及び、運転データと吸収液に含まれる吸収剤濃度との相関関係を、それぞれ機械学習によってモデル化し、これら2つの学習モデルによって求められるテーブルに基づいて、吸収液の循環流量や吸収剤濃度を最適化するように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-11163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1では、学習モデルを構築する際に、吸収塔出口におけるSO濃度や吸収剤濃度と相関性の高いパラメータが特定されていない。そのため、予測外乱が発生するおそれがあり、また運転データの学習範囲が広くなることで、演算負担が大きくなるおそれがある。また運転データと吸収塔出口におけるSO濃度との相関関係、及び、運転データと吸収液に含まれる吸収剤濃度との相関関係を、それぞれ機械学習することによって、2つの学習モデルを構築する必要があることからも演算が複雑となる傾向がある。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、湿式排煙脱硫装置の吸収塔において吸収液を循環させるための制御を簡易的に実施可能な湿式排煙脱硫装置の制御方法、制御装置、遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置の制御方法は、上記課題を解決するために、
吸収塔内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置の制御方法であって、
前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築する工程と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブルに基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブルを作成する工程と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定する工程と
を備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置の制御装置は、上記課題を解決するために、
吸収塔内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置の制御装置であって、
前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築するための学習モデル構築部と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブルに基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブルを作成するためのテーブル作成部と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定するための制御目標値決定部と
を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る遠隔監視システムは、上記課題を解決するために、
本開示の少なくとも一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置の制御装置と、
前記湿式排煙脱硫装置の制御装置電気的に接続された遠隔監視装置と
を備える。
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態に係る情報処理装置は、上記課題を解決するために、
吸収塔内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置の制御に係る処理を実行する情報処理装置であって、
前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築するための学習モデル構築部と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブルに基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブルを作成するためのテーブル作成部と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定するための制御目標値決定部と
を備える。
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態に係る情報処理システムは、上記課題を解決するために、
吸収塔内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置の制御に係る処理を実行する情報処理装置と通信可能な端末とからなる情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
前記端末からの要求により、前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築するための学習モデル構築部と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブルに基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブルを作成するためのテーブル作成部と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定するための制御目標値決定部と
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、湿式排煙脱硫装置の吸収塔において吸収液を循環させるための制御を簡易的に実施可能な湿式排煙脱硫装置の制御方法、制御装置、遠隔監視システム、情報処理装置、及び、情報処理システムを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置の構成図である。
図2】一実施形態に係る遠隔監視システムの構成図である。
図3】一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置の制御方法を示すフローチャートである。
図4図3のステップS3における学習モデルの目的変数に関する補正演算を示すフロー図である。
図5図3のステップS3における学習モデルの説明変数に関する補正演算を示すフロー図である。
図6図5で算出された補正値を用いた学習モデルの説明変数の補正演算を示すフロー図である。
図7図6で補正演算が実施されるための最適化条件の判定フローを示す図である。
図8】発電機出力ごとに、CaCO濃度と固定容量式の循環ポンプの運転台数を変化させた場合の学習モデルによって算出されたSO濃度の予測値を示す演算例である。
図9図8の演算結果に基づいて作成されたテーブルの例である。
図10】発電機出力ごとに、CaCO濃度と可変容量式の循環ポンプの容量を変化させた場合の学習モデルによって算出されたSO濃度の予測値を示す演算例である。
図11図10の演算結果に基づいて作成されたテーブルの例である。
図12】一実施形態に係る情報処理システムの構成図である。
図13図12の情報処理装置の内部構成を制御装置とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、本発明の範囲をそれにのみ限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0015】
図1は一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置10の構成図である。
湿式排煙脱硫装置10は、燃焼装置1で発生した排ガスを脱硫するための装置である。燃焼装置1は例えば蒸気を生成するためのボイラであり、燃焼装置1で生成された蒸気は発電機5に供給されることにより発電可能な発電プラントの一部として構成されている。湿式排煙脱硫装置10は、燃焼装置1と配管2を介して連通する吸収塔11と、吸収塔11内を循環する吸収液の循環用配管3に設けられた複数の循環ポンプ12a,12b,12c,・・・(図1では、3台の循環ポンプが代表的に例示されており、台数は限定されない。また、これらを総称する場合には適宜「循環ポンプ12」と称する)と、吸収液に含まれる吸収剤である炭酸カルシウム(CaCO)のスラリー(吸収剤スラリー)を吸収塔11内に供給するための吸収剤スラリー供給部13と、吸収液中の石膏を回収するための石膏回収部14とを備えている。吸収塔11には、後述する動作で脱硫された排ガスが吸収塔11から流出ガスとして流出するための流出配管16が設けられ、流出配管16には、流出ガス中のSO濃度を測定するためのガス分析計17が設けられている。
【0016】
吸収剤スラリー供給部13は、吸収剤スラリーを製造するための吸収剤スラリー製造設備21と、吸収剤スラリー製造設備21と吸収塔11とを連通する吸収剤スラリー供給用配管22と、吸収剤スラリー供給用配管22を流通する吸収剤スラリーの流量を制御するための吸収剤スラリー供給量制御弁23とを備えている。石膏回収部14は、石膏分離器25と、石膏分離器25と吸収塔11とを連通する石膏スラリー抜き出し用配管26と、石膏スラリー抜き出し用配管26に設けられた石膏スラリー抜き出し用ポンプ27とを備えている。
【0017】
湿式排煙脱硫装置10には、湿式排煙脱硫装置10の制御装置15が設けられている。制御装置15は、燃焼装置1及び湿式排煙脱硫装置10の各種運転データ(例えば、様々な部位における温度や圧力、各種流体の流量等)を取得するための種々の検出器を含む運転データ取得部20と電気的に接続された運転データ受信部30を備えている。運転データ取得部20には、ガス分析計17が含まれている。
【0018】
制御装置15は、運転データ受信部30に電気的に接続された学習モデル構築部38と、学習モデル構築部38に電気的に接続されたテーブル作成部31と、テーブル作成部31に電気的に接続された制御目標値決定部32と、制御目標値決定部32に電気的に接続された循環ポンプ調節部33と、制御目標値決定部32に電気的に接続された吸収剤スラリー供給制御部34と、学習モデル構築部38に電気的に接続された学習モデル補正部35とを備えている。循環ポンプ調節部33は、各循環ポンプ12のそれぞれに電気的に接続されている。吸収剤スラリー供給制御部34は、吸収剤スラリー供給量制御弁23に電気的に接続されている。
【0019】
図2には、湿式排煙脱硫装置10(図1参照)の制御状態を遠隔監視するための遠隔監視システム40の構成が示されている。遠隔監視システム40は、燃焼装置1(図1参照)及び湿式排煙脱硫装置10(図1参照)を構成する各機器の分散制御システム(DCS)41と、DCS41に電気的に接続されるとともに制御装置15を搭載したエッジサーバー42と、クラウド又はバーチャルプライベートネットワーク(VPN)を介してエッジサーバー42に電気的に通信可能なように接続されたデスクトップパソコンやタブレット型コンピュータ等のような遠隔監視装置43とを備えている。通常はエッジサーバー42から離れた場所に存在する遠隔監視装置43によって、湿式排煙脱硫装置10の制御状態を遠隔監視することができる。
【0020】
次に、燃焼装置1で発生した排ガスを湿式排煙脱硫装置10が脱硫する動作について説明する。
図1に示されるように、燃焼装置1で発生した排ガスは、配管2を流通して吸収塔11に流入し、吸収塔11内を上昇する。循環ポンプ12の少なくとも1台が稼働することによって吸収液が循環用配管3を流通して吸収塔11に流入し、吸収塔11内において吸収液が流下する。吸収塔11内で流下した吸収液は、吸収塔11内に溜まり、循環ポンプ12によって吸収塔11から流出し、循環用配管3を流通する。このようにして、吸収液は吸収塔11内を循環する。
【0021】
吸収塔11内では、上昇する排ガスと流下する吸収液とが気液接触する。排ガスに含まれるSOは、以下の反応式
SO+CaCO+2HO+1/2O→CaSO・2HO+CO
のように、吸収液中のCaCOと反応して、石膏(CaSO・2HO)が吸収液中に析出する。
【0022】
このようにして、排ガス中のSOの一部が吸収液中に石膏として除去されるので、すなわち排ガスが脱硫されるので、流出配管16を介して吸収塔11から流出する流出ガス中のSO濃度は、配管2を介して吸収塔11に流入する排ガス中のSO濃度よりも低くなっている。吸収塔11から流出した流出ガスは、流出配管16を流通して大気中に放出されるが、その途中でガス分析計17によってSO濃度が測定され、その測定結果が制御装置15の運転データ受信部30に伝送される。
【0023】
流出ガス中のSO濃度は、吸収液中のCaCO濃度に大きな変動がなければ、吸収塔11内を循環する吸収液の循環流量が増加するほど低下する傾向がある。後述する制御方法によって制御装置15が循環ポンプ12の稼働台数を制御することで循環流量を制御することにより、流出ガス中のSO濃度を制御すること、例えば予め設定された設定値以下となるように流出ガス中のSO濃度を制御することができる。
【0024】
吸収塔11内で吸収液中に析出した石膏は、石膏スラリーとして石膏スラリー抜き出し用ポンプ27によって吸収塔11から抜き出され、石膏スラリーは、石膏スラリー抜き出し用配管26を流通して石膏分離器25に流入する。石膏分離器25において石膏と水とが分離されて、石膏は回収され、水は、図示しない排水設備に送られる。
【0025】
吸収液中のCaCOは、SOと反応して石膏となるので、排ガスの脱硫が行われるに従い、吸収液中のCaCO濃度は低下する。後述する制御方法によって制御装置15は吸収剤スラリー供給量制御弁23の開度を制御し、吸収剤スラリー製造設備21で製造された吸収剤スラリーを、吸収剤スラリー供給用配管22を介して吸収塔11内に供給する。これにより、吸収液中のCaCO濃度が予め設定された設定範囲内となり、排ガスの脱硫中におけるCaCO濃度の大きな変動が抑制される。
【0026】
次に、制御装置15による湿式排煙脱硫装置10の制御方法について説明する。図3は一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置10の制御方法を示すフローチャートである。
【0027】
まず、ステップS1において燃焼装置1及び湿式排煙脱硫装置10の各種運転データを収集した後、ステップS2において、各種運転データと、吸収塔11から流出する流出ガス中の将来のSO濃度との関係について機械学習により学習モデルを構築する。次に、ステップS3において、ステップS2で構築された学習モデルを補正する。そしてステップS4において、ステップS3で得られた補正後の学習モデルを用いてテーブルを作成する。続くステップS5において、ステップS4で作成されたテーブルに基づいて、流出ガス中のSO濃度が予め設定された設定値以下となる吸収液の循環流量、CaCOの吸収剤スラリーの供給量について制御目標値を決定し、ステップS6において、ステップS5で決定された循環流量の制御目標値に基づいて循環ポンプ12の運転条件を調節し、ステップS7において、ステップS5で決定されたCaCOの吸収剤スラリーの供給量の制御目標値に基づいて吸収剤スラリー供給量制御弁23を制御する。これにより、予め設定された設定値以下となるように流出ガス中のSO濃度が制御される。
【0028】
尚、ステップS3における学習モデルの補正は、補正前の学習モデルの精度が十分である場合には省略してもよい。また図3では、ステップS6の後にステップS7を実施する場合を例示しているが、ステップS6の前にステップS7を実施してもよいし、ステップS6及びS7を同時に実施してもよい。
【0029】
次に、制御装置15による湿式排煙脱硫装置10の制御方法の各ステップについて詳細に説明する。
ステップS1では、図1に示されるように、燃焼装置1及び湿式排煙脱硫装置10の各種運転データを運転データ取得部20が取得した後、取得された各種運転データが制御装置15に伝送されて運転データ受信部30が受信することで、制御装置15が各種運転データを収集する。前述したように、運転データ取得部20はガス分析計17を含んでいるので、各種運転データは流出ガス中のSO濃度を含んでいる。
【0030】
ステップS2では、学習モデル構築部38は、運転データ取得部20によって収集された各種運転データと、流出ガス中の将来のSO濃度との関係について機械学習により学習モデルを構築する。学習モデルは、例えば、重回帰、リッジ回帰、ラッソ回帰或いはElastic Net等の回帰手法を用いた回帰モデルとして構築される。本実施形態では、学習モデルの一例として、次式のように線形多項式で表される回帰モデルが構築される。
吸収塔出口におけるSO濃度=k1×説明変数1+k2×説明変数2+・・・+kn×説明変数n+b (1)
このように学習モデルとして線形多項式を用いることで、複雑なシミュレーションモデルに比べて説明可能性(解釈性)が高く、演算負荷も効果的に軽減できる。尚、nは任意の自然数であり、k1~knは係数であり、bは任意の切片である。
【0031】
機械学習によって得られる学習モデルは、運転データ取得部20によって取得された運転データに含まれる複数のパラメータからなる説明変数と、流出ガス中の将来のSO濃度を目的変数として、両者の相関を示すモデルとして構築される。ここで学習モデルの説明変数に含まれる複数のパラメータの組み合わせは、以下の候補から任意に選択することができる。
i)発電機出力指令値(発電機5に対する外部からの出力指令値)
ii)発電機出力(発電機5の出力)
iii)ボイラ空気流量又はボイラ排ガス流量(燃焼装置1に対する供給空気流量又は燃焼装置1からの排ガス流量)
iv)脱硫入口SO濃度又はボイラ出口SO濃度(吸収塔11入口におけるSO濃度又は燃焼装置1出口におけるSO濃度)
v)脱硫出口SO濃度又は煙突入口SO(吸収塔11出口におけるSO濃度)
vi)吸収液のCaCO濃度又はpH
vii)吸収液循環流量(循環ポンプ12の稼働台数又は吐出流量の制御値)
これらの候補は、通常多くの湿式排煙脱硫装置10で従来から計測可能なパラメータである。
【0032】
本実施形態では学習モデルの説明変数は、上記候補のうち、i)発電機出力指令値(発電機5に対する外部からの出力指令値)、iii)ボイラ空気流量又はボイラ排ガス流量(燃焼装置1に対する供給空気流量又は燃焼装置1からの排ガス流量)、又は、iv)脱硫入口SO濃度又はボイラ出口SO濃度(吸収塔11入口におけるSO濃度又は燃焼装置1出口におけるSO濃度)のうち少なくとも1つが含まれるように選択される。より好ましくは、学習モデルの説明変数は、上記候補のうち、iii)ボイラ空気流量又はボイラ排ガス流量(燃焼装置1に対する供給空気流量又は燃焼装置1からの排ガス流量)、及び、iv)脱硫入口SO濃度又はボイラ出口SO濃度(吸収塔11入口におけるSO濃度又は燃焼装置1出口におけるSO濃度)を含むように選択される。これにより、目的関数である流出ガス中の将来のSO濃度を、良好な精度で予測可能な学習モデルを構築できる。また運転データ取得部20で取得される運転データから、このように一部のパラメータを説明変数として選定することで、学習対象データを効率的に絞り込み、機械学習の演算負担を軽減することができる。
【0033】
ステップS3では、学習モデル補正部35によって、ステップS2で構築された学習モデルの補正が行われる。学習モデルの補正は、学習モデルによって算出されるSO濃度の予測値と実測値との誤差に基づいて行われ、学習モデルの説明変数及び目的関数についてそれぞれ行われる。
【0034】
ここで図4図3のステップS3における学習モデルの目的変数に関する補正演算を示すフロー図である。
【0035】
目的変数に関する補正演算では、まず、補正対象となる学習モデルを用いて算出された予測値Vpに対して、計測遅れ分に相当する補正時間ΔVpが遅れて出力される。学習モデルを用いて算出される予測値Vpには、ガス分析計17で実測値Vmを計測するために必要な時間が含まれていない。補正時間ΔVpは、ガス分析計17で実測値Vmを計測するために必要な時間に対応しており、予測値Vpに対して遅れて出力されることで、ガス分析計17で計測された実測値Vmと比較可能にすることができる。予測値Vpに対して補正時間ΔVpが遅れて出力されることにより、補正後の予測値Vp´が求められる。そして補正後の予測値Vp´と、ガス分析計17の実測値Vmとの比(Vm/Vp´)を算出し、その移動平均を算出することで、目的関数に関する補正値Aが求められる。
【0036】
このように算出された補正値Aは、学習モデルに適用される。例えば上記(1)式で表される学習モデルの場合、補正後の学習モデルは次式となる。
吸収塔出口におけるSO濃度=(k1×説明変数1+k2×説明変数2+・・・+kn×説明変数n+b)×A (2)
【0037】
続いて図5図3のステップS3における学習モデルの説明変数に関する補正演算を示すフロー図である。ここでは、補正演算の一例として、発電機5の出力(発電機出力Y)と相関を有するパラメータである説明変数SGを補正する場合について説明する。
【0038】
発電機出力Yと説明変数SGの値X1~X4との相関を規定する基準テーブルTrが予め用意される。基準テーブルTrは、図5に示すように、発電機出力Yの値ごとに説明変数SGの値X1~X4を規定する。本実施形態では、発電機出力Yが25%MWである負荷点、50%MWである負荷点、75%MWである負荷点、100%MWである負荷点についてそれぞれ説明変数SGの値X1~X4を規定する特性関数を含む基準テーブルTrが示されている。
【0039】
学習モデル補正部35は、このような基準テーブルTrに対して、外部から取得した発電機出力Yを入力することにより、対応する説明変数SGを出力する。一方、学習モデル補正部35は、運転データ受信部30で取得した結果に基づいて説明変数の実測値SGmを求め、基準テーブルTrから出力された説明変数の値SGとの比(SGm/SG)を求める。そして当該比の移動平均を算出することで、説明関数に関する補正値Bが求められる。
【0040】
このように算出された説明変数SGに関する補正値Bは、学習モデルに適用される。図6図5で算出された補正値Bを用いた学習モデルの説明変数SGの補正演算を示すフロー図である。
【0041】
図6に示すように、最適化条件Cが成立した場合に、補正値Bによって基準テーブルTrに規定される特性関数が補正される。最適化条件Cは、補正値Bによる基準テーブルTrを補正するための環境が整っているか否かを判定するための少なくとも1つ(例えば全て)の条件を含み、例えば、湿式排煙脱硫装置10や制御装置15において動作状態が安定しており、且つ、異常などが発生していないことを多角的な観点から判定することができる。
【0042】
図7図6で補正演算が実施されるための最適化条件Cの判定フローを示す図である。図7では、最適化条件Cの一例として、次の5つの条件に基づく判定がなされる。
(条件1)説明変数に異常が監視されていないこと。
(条件2)説明変数の実測値SGmを取得するための計器が調整中でないこと。
(条件3)発電機出力(又はボイラ負荷)が所定値(例えば0%~50%)以上であること。
(条件4)プラントが通煙状態であること。
(条件5)演算ソフトウェアの初期化が完了されていること。
【0043】
このような最適化条件Cが成立した場合、学習モデル補正部35は、基準テーブルTrに規定される特性関数について、発電機出力に対応する説明変数SGの値に対して、補正値Bを乗算することにより、説明変数の補正を行う。このような補正の結果、図6に示すように、基準テーブルTrに規定される特性関数が更新される(一点鎖線は補正前の特性関数を示しており、実線は補正後の特性関数を示している)。
【0044】
ステップS4では、ステップS3で補正された学習モデルに基づいてテーブルTの作成が行われる。テーブルTの作成は、発電機出力ごとに、学習モデルによって算出されるSO濃度の予測値が、予め設定された基準値を満たす(例えば、基準値以下になる)ための吸収剤の投入量及び吸収液の循環流量を算出することにより行われる。
【0045】
ここで図3のステップS4におけるテーブルTの作成方法について具体的に説明する。まず循環ポンプ12が固定容量式であることで、吸収液の循環流量が循環ポンプ12の台数制御によって行われる場合について図8及び図9を参照して説明する。図8は、発電機出力ごとに、CaCO濃度と固定容量式の循環ポンプ12の運転台数を変化させた場合の学習モデルによって算出されたSO濃度の予測値を示す演算例であり、図9図8の演算結果に基づいて作成されたテーブルTの例である。
【0046】
尚、CaCO濃度は吸収剤の投入量に対応するパラメータであり、許容範囲として「2~5」の値を取ることができる。また循環ポンプ12の運転台数は、吸収液の循環量に対応するパラメータであり、許容範囲として「8~10」の値を取ることができる。これらの許容範囲は、例えばプラント設計上の値から事前設定されてもよい。
【0047】
図8において、まず発電機出力が「50%」である場合に着目すると、CaCO濃度が「3」、循環ポンプ運転台数が「8」である場合、学習モデルによるSO濃度の予想値は105ppmであり、基準値(100ppm)を超過している。この場合、テーブル作成部31は、循環ポンプ運転台数より運用コストに影響が低いCaCO濃度を1段階増加させることで「4」に変更する。すると、学習モデルによるSO濃度の予想値は100ppmとなり、基準値(100ppm)以下となる。従って、テーブル作成部31は、発電機出力が「50%」における最適なCaCO濃度は「4」であり、循環ポンプ運転台数は「8」であると特定する。
【0048】
続いて発電機出力が「60%」である場合に着目すると、CaCO濃度が「4」、循環ポンプ運転台数が「8」である場合、学習モデルによるSO濃度の予想値は120ppmであり、基準値(100ppm)を超過している。この場合、テーブル作成部31は、循環ポンプ運転台数より運用コストに影響が低いCaCO濃度を1段階増加させることで「5」に変更する。しかしながら学習モデルによるSO濃度の予想値は110ppmであり、依然として基準値(100ppm)を超過している。この場合、CaCO濃度が許容範囲の上限値「5」に達しても基準値を満足することができないため、循環ポンプ運転台数を「9」に増加させるとともに、CaCO濃度を「3」に減少させる。その結果、学習モデルによるSO濃度の予想値は100ppmとなり、基準値(100ppm)以下となる。従って、テーブル作成部31は、発電機出力が「60%」における最適なCaCO濃度は「3」であり、ポンプ運転台数は「9」であると特定する。
【0049】
テーブル作成部31は、このように発電機出力ごとに、最適なCaCO濃度と循環ポンプ運転台数を特定することで図9に示すテーブルTを作成する。図9では、発電機出力が増加するに従って、循環ポンプ12の運転台数がステップ的に増加するタイミングでCaCO濃度が減少しながら増加するようにテーブルTが作成される。
【0050】
次に循環ポンプ12が可変容量式であることで、吸収液の循環流量が循環ポンプ12の容量制御によって行われる場合について図10及び図11を参照して説明する。図10は、発電機出力ごとに、CaCO濃度と可変容量式の循環ポンプ12の容量を変化させた場合の学習モデルによって算出されたSO濃度の予測値を示す演算例であり、図11図10の演算結果に基づいて作成されたテーブルTの例である。
【0051】
尚、CaCO濃度は吸収剤の投入量に対応するパラメータであり、許容範囲として「2~5」の値を取ることができる。また循環ポンプ容量は、吸収液の循環量に対応するパラメータであり、許容範囲として「10~100」の値を取ることができる。これらの許容範囲は、例えばプラント設計上の値から事前設定されてもよい。
【0052】
図10において、まず発電機出力が「50%」である場合に着目すると、CaCO濃度が「3」、循環ポンプ容量が「10」である場合、学習モデルによるSO濃度の予想値は105ppmであり、基準値(100ppm)を超過している。この場合、テーブル作成部31は、循環ポンプ容量より運用コストに影響が低いCaCO濃度を1段階増加させることで「4」に変更する。すると、学習モデルによるSO濃度の予想値は100ppmとなり、基準値(100ppm)以下となる。従って、テーブル作成部31は、発電機出力が「50%」における最適なCaCO濃度は「4」であり、循環ポンプ容量は「10」であると特定する。
【0053】
続いて発電機出力が「60%」である場合に着目すると、CaCO濃度が「5」、循環ポンプ容量が「10」である場合、学習モデルによるSO濃度の予想値は120ppmであり、基準値(100ppm)を超過している。この場合、テーブル作成部31は、CaCO濃度が許容範囲の上限値である「5」に達しているため、ポンプ容量を「15」に増加するように変更する。しかしながら学習モデルによるSO濃度の予想値は110ppmであり、依然として基準値(100ppm)を超過している。この場合、テーブル作成部31は、循環ポンプ容量を「18」に更に増加するように変更する。その結果、学習モデルによるSO濃度の予想値は100ppmとなり、基準値(100ppm)以下となる。従って、テーブル作成部31は、発電機出力が「60%」における最適なCaCO濃度は「5」であり、循環ポンプ容量は「18」であると特定する。
【0054】
テーブル作成部31は、このように発電機出力ごとに、最適なCaCO濃度と循環ポンプ容量を特定することで図11に示すテーブルを作成する。図11では、発電機出力が増加するに従って、CaCO3濃度の増加では対応しきれなくなったタイミングで、ポンプ容量が増加するようにテーブルTが作成される。
【0055】
尚、図8図11では、テーブルを作成するための最適なCaCO濃度と循環ポンプ運転台数(又は循環ポンプ容量)の探索を、運用コストを最小化するために循環ポンプ運転台数(又は循環ポンプ容量)を極力小さく抑えながら基準値を満たすSO濃度の予測値が得られるように行った場合を示しているが、他の観点から探索を行ってもよい。
【0056】
また本実施形態では図9及び図11のようなグラフ形式のテーブルTを例示したが、テーブルTは必ずしもこのような形態である必要はなく、マトリックスや数式等の形態であってもよい。
【0057】
ステップS5では、制御目標値決定部32は、発電機出力の指令値を取得し、ステップS4で作成したテーブルTに基づいて、当該発電機出力に対応する制御目標値(吸収剤の投入量及び吸収液の循環流量のそれぞれの制御目標値)を決定する。そしてステップS6及びS7は、ステップS5で決定された制御目標値に基づいて、循環ポンプ調節部33によって循環ポンプ12a~12cを制御するとともに、吸収剤スラリー供給制御部34によって吸収剤の供給量を制御する。
【0058】
尚、ステップS5において、循環流量の調節は、循環ポンプ12が固定容量式である場合には図9に示すテーブルに基づいて循環ポンプ台数を制御することによって行われ、循環ポンプ12が可変容量式である場合には図11に示すテーブルTに基づいてポンプ容量を制御することによって行われる。
【0059】
このように上記実施形態によれば、将来における流出ガス中のSO濃度が予め設定された基準値以下となる範囲で、吸収塔11への吸収剤の投入量、及び、吸収塔11内を循環する吸収液の循環流量を適切に調節できる。このような制御演算は、単一の学習モデルに基づいて吸収塔11への吸収剤の投入量、及び、吸収塔11内を循環する吸収液の循環流量についてそれぞれ制御目標値を求めることができるため、演算負担が少ない。
【0060】
尚、上記実施形態における制御装置15で実行する各処理をクラウド環境上あるいはVPNを介してエッジサーバー42に電気的に通信可能なように接続された情報処理装置44(図12参照)で実行する構成をとることが可能である。この場合、情報処理装置44は、運転データ受信部30、学習モデル構築部38、学習モデル補正部35、テーブル作成部31、及び制御目標値決定部32を備え、当該制御目標値決定部32で決定した制御目標値を制御装置15における循環ポンプ調節部33及び吸収剤スラリー供給制御部34に対して通信することで、循環ポンプや吸収剤の供給量を制御してもよい。
【0061】
また、運転データ受信部30は、制御装置15の運転データ中継部39(図13)を介して、各種運転データを受信してもよいし、前述したように運転データ取得部20から各種運転データを受信してもよい。とりわけ、クラウド環境上で演算する場合、セキュリティの観点から、循環ポンプや吸収剤の制御目標値を直接制御せず、表示のみとする場合がある。例えば、クラウド環境上で生成した運転指標図を、お客様所有のデバイス(端末45)に専用アプリを通して送信・図示し、現地の運転指標図の更新はお客様の手によって行われる場合がある。一方、情報処理装置44は、循環ポンプ調節部33及び吸収剤スラリー供給制御部34をも備え、遠隔で循環ポンプや吸収剤の供給量を制御してもよい。更に、情報処理装置44は、端末45からの要求により、情報処理装置44において各処理を実行する構成を備えてもよい。
【0062】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0063】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0064】
(1)一実施形態に係る湿式排煙脱硫装置の制御方法は、
吸収塔(例えば上記実施形態の吸収塔11)内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置(例えば上記実施形態の湿式排煙脱硫装置10)の制御方法であって、
前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築する工程と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブル(例えば上記実施形態の基準テーブルTr)に基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブル(例えば上記実施形態のテーブルT)を作成する工程と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定する工程と
を備える。
【0065】
上記(1)の態様によれば、将来における流出ガス中のSO濃度が予め設定された基準値以下となる範囲で、吸収塔への吸収剤の投入量、及び、吸収塔内を循環する吸収液の循環流量を適切に調節できる。このような制御演算は、単一の学習モデルに基づいて吸収塔への吸収剤の投入量、及び、吸収塔内を循環する吸収液の循環流量についてそれぞれ制御目標値を求めることができるため、演算負担が少ない。
【0066】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記テーブルを作成する工程では、予め設定された前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の許容範囲内において、前記吸収塔内に吸収液を循環させるための少なくとも1つの循環ポンプ(例えば上記実施形態の循環ポンプ12)の運用コストが少なくなるように、前記予測値が前記基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を探索する。
【0067】
上記(2)の態様によれば、吸収塔から排出される二酸化硫黄の予測値が基準値以下になる範囲において、運用コストが少なくなるように、吸収剤の投入量及び吸収液の循環流量の制御目標値が探索される。このように探索された制御目標値に基づいて制御を実施することで、吸収塔から排出される二酸化硫黄を必要な範囲で抑制しながら、プラントの運用コストを効果的に低減できる。
【0068】
(3)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記学習モデルによる前記吸収塔出口における前記排ガスの前記二酸化硫黄濃度の予測値と実測値との誤差に基づいて、前記学習モデルを補正する工程を更に備える。
【0069】
上記(3)の態様によれば、学習モデルによって得られる予測値と実測値との誤差に基づいて学習モデルの補正を行うことで、制御精度を向上できる。
【0070】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記少なくとも1つのパラメータは、前記出力の外部指令値、前記出力、前記燃焼装置の空気流量、吸収塔入口の二酸化硫黄濃度のうち少なくとも1つを含む。
【0071】
上記(4)の態様によれば、これらのパラメータのいずれか一つを学習モデルの説明変数に含めることで、学習対象データを効率的に絞り込むことで機械学習の演算負担を軽減しつつ、良好な精度で予測可能な学習モデルを構築できる。
【0072】
(5)他の態様では、上記(4)の態様において、
前記少なくとも1つのパラメータは、前記燃焼装置の空気流量、及び、前記吸収塔入口の二酸化硫黄濃度を含む。
【0073】
上記(5)の態様によれば、これらのパラメータを学習モデルの説明変数に含めることで、学習対象データを効率的に絞り込むことで機械学習の演算負担をより軽減しつつ、より良好な精度で予測可能な学習モデルを構築できる。
【0074】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記学習モデルは線形多項式で表される。
【0075】
上記(6)の態様によれば、学習モデルとして線形多項式を用いることで、複雑なシミュレーションモデルに比べて説明可能性(解釈性)が高く、演算負荷も効果的に軽減できる。
【0076】
(7)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記基準テーブルは、予め特定された前記パラメータと前記出力との関係を示す関数として規定される。
【0077】
上記(7)の態様によれば、発電機出力と相関を有するパラメータは、その相関を示す基準テーブルとして規定される。
【0078】
(8)他の態様では、上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記少なくとも1つの循環ポンプは固定容量式である。
【0079】
上記(8)の態様によれば、固定容量式の循環ポンプを有するプラントにおいて、将来における流出ガス中の二酸化硫黄濃度が予め設定された基準値以下となる範囲で、吸収塔への吸収剤の投入量、及び、吸収塔内を循環する吸収液の循環流量を適切に調節できる。
【0080】
(9)他の態様では、上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記少なくとも1つの循環ポンプは可変容量式である。
【0081】
上記(9)の態様によれば、可変容量式の循環ポンプを有するプラントにおいて、将来における流出ガス中の二酸化硫黄濃度が予め設定された基準値以下となる範囲で、吸収塔への吸収剤の投入量、及び、吸収塔内を循環する吸収液の循環流量を適切に調節できる。
【0082】
(10)一態様に係る湿式排煙脱硫装置の制御装置は、
吸収塔(例えば上記実施形態の吸収塔11)内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置(例えば上記実施形態の湿式排煙脱硫装置10)の制御装置(例えば上記実施形態の制御装置15)であって、
前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築するための学習モデル構築部(例えば上記実施形態の学習モデル構築部38)と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブル(例えば上記実施形態の基準テーブルTr)に基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブル(例えば上記実施形態のテーブルT)を作成するためのテーブル作成部(例えば上記実施形態のテーブル作成部31)と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定するための制御目標値決定部(例えば上記実施形態の制御目標値決定部32)と
を備える。
【0083】
上記(10)の態様によれば、将来における流出ガス中のSO濃度が予め設定された基準値以下となる範囲で、吸収塔への吸収剤の投入量、及び、吸収塔内を循環する吸収液の循環流量を適切に調節できる。このような制御演算は、単一の学習モデルに基づいて吸収塔11への吸収剤の投入量、及び、吸収塔内を循環する吸収液の循環流量についてそれぞれ制御目標値を求めることができるため、演算負担が少ない。
【0084】
(11)一態様に係る遠隔監視システムは、
上記(10)の態様の湿式排煙脱硫装置の制御装置と、
前記湿式排煙脱硫装置の制御装置電気的に接続された遠隔監視装置と
を備える。
【0085】
上記(11)の態様によれば、湿式排煙脱硫装置の制御状態を遠隔監視することができる。
【0086】
(12)一態様に係る情報処理装置は、
吸収塔(例えば上記実施形態の吸収塔11)内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置(例えば上記実施形態の湿式排煙脱硫装置10)の制御に係る処理を実行する情報処理装置(例えば上記実施形態の情報処理装置44)であって、
前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築するための学習モデル構築部(例えば上記実施形態の学習モデル構築部38)と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブル(例えば上記実施形態の基準テーブルTr)に基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブル(例えば上記実施形態のテーブルT)を作成するためのテーブル作成部(例えば上記実施形態のテーブル作成部31)と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定するための制御目標値決定部(例えば上記実施形態の制御目標値決定部32)と
を備える。
【0087】
上記(12)の態様によれば、将来における流出ガス中のSO濃度が予め設定された基準値以下となる範囲で、吸収塔への吸収剤の投入量、及び、吸収塔内を循環する吸収液の循環流量を適切に調節できる。このような制御演算は、単一の学習モデルに基づいて吸収塔への吸収剤の投入量、及び、吸収塔内を循環する吸収液の循環流量についてそれぞれ制御目標値を求めることができるため、演算負担が少ない。
【0088】
(13)一態様に係る情報処理システムは、
吸収塔(例えば上記実施形態の吸収塔11)内において、燃焼装置で発生した排ガスと吸収液とを気液接触させて脱硫を行う湿式排煙脱硫装置(例えば上記実施形態の湿式排煙脱硫装置10)の制御に係る処理を実行する情報処理装置(例えば上記実施形態の情報処理装置44)と通信可能な端末(例えば上記実施形態の端末45)とからなる情報処理システム(例えば上記実施形態の情報処理システム46)であって、
前記情報処理装置は、
前記端末からの要求により、前記吸収塔内における、前記吸収液の吸収剤濃度及び循環流量、並びに、前記燃焼装置で生成されたガスで駆動される発電機の出力と相関を有する少なくとも1つのパラメータを含む説明変数と、将来の吸収塔出口における二酸化硫黄濃度である目的変数との関係について機械学習により学習モデルを構築するための学習モデル構築部(例えば上記実施形態の学習モデル構築部38)と、
前記パラメータと前記出力との関係を規定する基準テーブル(例えば上記実施形態の基準テーブルTr)に基づいて、前記出力ごとに、前記学習モデルによる前記二酸化硫黄濃度の予測値を算出し、前記予測値が基準値を満たすための前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量を示すテーブル(例えば上記実施形態のテーブルT)を作成するためのテーブル作成部(例えば上記実施形態のテーブル作成部31)と、
前記テーブルに基づいて、前記発電機の状態に対応する前記吸収剤の投入量及び前記吸収液の循環流量の制御目標値を決定するための制御目標値決定部(例えば上記実施形態の制御目標値決定部32)と
を備える。
【0089】
上記(13)の態様によれば、将来における流出ガス中のSO濃度が予め設定された基準値以下となる範囲で、吸収塔への吸収剤の投入量、及び、吸収塔内を循環する吸収液の循環流量を適切に調節できる。このような制御演算は、単一の学習モデルに基づいて吸収塔への吸収剤の投入量、及び、吸収塔内を循環する吸収液の循環流量についてそれぞれ制御目標値を求めることができるため、演算負担が少ない。
【符号の説明】
【0090】
1 燃焼装置
2 配管
3 循環用配管
5 発電機
10 湿式排煙脱硫装置
11 吸収塔
12 循環ポンプ
13 吸収剤スラリー供給部
14 石膏回収部
15 制御装置
16 流出配管
17 ガス分析計
20 運転データ取得部
21 吸収剤スラリー製造設備
22 吸収剤スラリー供給用配管
23 吸収剤スラリー供給量制御弁
25 石膏分離器
26 石膏スラリー抜き出し用配管
27 石膏スラリー抜き出し用ポンプ
30 運転データ受信部
31 テーブル作成部
32 制御目標値決定部
33 循環ポンプ調節部
34 吸収剤スラリー供給制御部
35 学習モデル補正部
38 学習モデル構築部
39 運転データ中継部
40 遠隔監視システム
42 エッジサーバー
43 遠隔監視装置
44 情報処理装置
45 端末
46 情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
図13