(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157314
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20221006BHJP
【FI】
B23K26/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061450
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】柴田 俊輔
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168CA07
4E168CB04
4E168CB08
4E168CB12
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA28
4E168EA15
(57)【要約】
【課題】XY軸走査部及びZ軸走査部の待機位置を直交座標系の原点とするレーザ加工に要する時間の短縮を、XYZ軸方向の走査の関連事項に着目して行うレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置は、マーキング(印字)加工する際に、3つの印字パターンLP1,LP2,LP3の印字順番と印字方向を決定する。その決定では、XYZ座標系の原点O(待機位置)から3つの印字パターンLP1,LP2,LP3の一端OE1,OE2,OE3又は他端TE1,TE2,TE3までのZ軸方向における距離のうち、最も短い距離の他端TE2を有する印字パターンLP2が最初に抽出される。これにより、印字パターンLP2の印字順番は、1番とされる。また、印字パターンLP2の印字方向は、他端TE2から一端OE2へ向かう方向とされる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印字パターンをワーク表面に印字するレーザ加工を行うためのレーザ光を出射するレーザ光出射部と、
前記レーザ光を直交座標系のXY軸方向で走査するXY軸走査部と、
前記レーザ光を前記直交座標系のZ軸方向で走査するZ軸走査部と、
前記複数の印字パターンをそれぞれ特定するための位置座標を含む印字情報及び前記ワーク表面の三次元形状を示す三次元形状データを受け入れる受入部と、
前記複数の印字パターンの印字順番と、前記複数の印字パターンのそれぞれの印字方向とを前記印字情報及び前記三次元形状データに基づいて決定する決定部と、
前記決定部で決定される前記印字順番と前記印字方向とに基づいて、前記XY軸走査部及び前記Z軸走査部の待機位置を前記直交座標系の原点とする前記レーザ加工を行う制御部と、を備え、
前記複数の印字パターンは、それぞれ、一端と、前記一端とは反対側の他端と、を有し、
前記決定部は、
前記複数の印字パターンのそれぞれについて、前記一端及び前記他端を前記印字情報及び前記三次元形状データに基づいて抽出する第1抽出部と、
前記複数の印字パターンのそれぞれの前記一端及び前記他端のうち、前記Z軸方向のプラス側において、前記Z軸方向で前記直交座標系の原点から最も離れた端をプラス側遠端として抽出すると共に、前記Z軸方向のマイナス側において、前記Z軸方向で前記直交座標系の原点から最も離れた端をマイナス側遠端として抽出する第2抽出部と、
前記プラス側遠端と前記マイナス側遠端のうち、前記Z軸方向で前記直交座標系の原点に最も近い端を第1印字始端として抽出する第3抽出部と、
前記第1印字始端を有する印字パターンを前記印字順番を1番とする第1印字パターンに設定すると共に、前記第1印字パターンの前記印字方向を前記第1印字始端から、前記第1印字始端とは反対側の前記一端又は前記他端に相当する第1印字終端へ向かう方向に設定する第1設定部と、
前記複数の印字パターンのそれぞれの前記一端及び前記他端のうち、前記第1印字パターンの前記一端及び前記他端を除いて、前記Z軸方向で前記第1印字パターンの前記第1印字終端に最も近い端を第2印字始端として抽出する第4抽出部と、
前記第2印字始端を有する印字パターンを前記印字順番を2番とする第2印字パターンに設定すると共に、前記第2印字パターンの前記印字方向を前記第2印字始端から、前記第2印字始端とは反対側の前記一端又は前記他端に相当する第2印字終端へ向かう方向に設定する第2設定部と、
前記第4抽出部及び前記第2設定部を繰り返し行うことによって、前記印字順番が3番以降の印字パターンの前記印字順番及び前記印字方向を設定する繰返部と、を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記第3抽出部は、前記Z軸方向で前記直交座標系の原点に最も近い端が複数ある場合、更に、前記XY軸方向で前記直交座標系の原点に最も近い端を前記第1印字始端として抽出することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第4抽出部は、前記Z軸方向で前記第1印字パターンの前記第1印字終端に最も近い端が複数ある場合、更に、前記XY軸方向で前記第1印字パターンの前記第1印字終端に最も近い端を前記第2印字始端として抽出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
複数の印字パターンをワーク表面に印字するレーザ加工を行うためのレーザ光を出射するレーザ光出射部と、
前記レーザ光を直交座標系のXY軸方向で走査するXY軸走査部と、
前記レーザ光を前記直交座標系のZ軸方向で走査するZ軸走査部と、
前記複数の印字パターンをそれぞれ特定するための位置座標を含む印字情報及び前記ワーク表面の三次元形状を示す三次元形状データを受け入れる受入部と、
前記複数の印字パターンの印字順番と、前記複数の印字パターンのそれぞれの印字方向とを前記印字情報及び前記三次元形状データに基づいて決定する決定部と、
前記決定部で決定される前記印字順番と前記印字方向とに基づいて、前記XY軸走査部及び前記Z軸走査部の待機位置を前記直交座標系の原点とする前記レーザ加工を行う制御部と、を備え、
前記複数の印字パターンは、それぞれ、一端と、前記一端とは反対側の他端と、を有し、
前記決定部は、
前記複数の印字パターンのそれぞれについて、前記一端及び前記他端を前記印字情報及び前記三次元形状データに基づいて抽出する第1抽出部と、
前記複数の印字パターンのそれぞれの前記一端及び前記他端について、前記直交座標系の原点との間における前記XY軸走査部の整定時間と前記Z軸走査部の整定時間のうち、時間が長い方を第1整定時間として関連付ける第1関連付部と、
前記複数の印字パターンのそれぞれの前記一端及び前記他端のうち、前記Z軸方向のプラス側において、前記第1整定時間が最も長い端をプラス側遠端として抽出すると共に、前記Z軸方向のマイナス側において、前記第1整定時間が最も長い端をマイナス側遠端として抽出する第2抽出部と、
前記プラス側遠端と前記マイナス側遠端のうち、前記第1整定時間が最も短い端を第1印字始端として抽出する第3抽出部と、
前記第1印字始端を有する印字パターンを前記印字順番を1番とする第1印字パターンに設定すると共に、前記第1印字パターンの前記印字方向を前記第1印字始端から、前記第1印字始端とは反対側の前記一端又は前記他端に相当する第1印字終端へ向かう方向に設定する第1設定部と、
前記複数の印字パターンのうち前記第1印字パターンを除くそれぞれの前記一端及び前記他端について、前記第1印字パターンの前記第1印字終端との間における前記XY軸走査部の整定時間と前記Z軸走査部の整定時間のうち、時間が短い方を第2整定時間として関連付ける第2関連付部と、
前記複数の印字パターンのそれぞれの前記一端及び前記他端のうち、前記第1印字パターンの前記一端及び前記他端を除いて、前記第2整定時間が最も短い端を第2印字始端として抽出する第4抽出部と、
前記第2印字始端を有する印字パターンを前記印字順番を2番とする第2印字パターンに設定すると共に、前記第2印字パターンの前記印字方向を前記第2印字始端から、前記第2印字始端とは反対側の前記一端又は前記他端に相当する第2印字終端へ向かう方向に設定する第2設定部と、
前記第2関連付部、前記第4抽出部、及び前記第2設定部を繰り返し行うことによって、前記印字順番が3番以降の印字パターンの前記印字順番及び前記印字方向を設定する繰返部と、を備えることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
前記XY軸走査部は、
前記レーザ光を前記X軸方向へ移動させる第1ガルバノミラーと、
前記レーザ光を前記Y軸方向へ移動させる第2ガルバノミラーと、を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記Z軸走査部は、
前記レーザ光が通過する少なくとも1つのレンズと、
前記レーザ光の光軸方向に前記レンズを移動させる移動機構と、を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記複数の印字パターンのうち、少なくとも複数のオブジェクトで構成される印字パターンについて、先行して印字される前記オブジェクトの印字終端と、引き続いて印字される前記オブジェクトの印字始端との間における前記Z軸方向の距離が最小となるように、前記複数のオブジェクトのそれぞれの印字始端及び印字終端を前記印字情報及び前記三次元形状データに基づいて決定することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
複数の印字パターンをワーク表面に印字するレーザ加工を行うためのレーザ光を出射するレーザ光出射部と、前記レーザ光を直交座標系のXY軸方向で走査するXY軸走査部と、前記レーザ光を前記直交座標系のZ軸方向で走査するZ軸走査部と、前記複数の印字パターンをそれぞれ特定するための位置座標を含む印字情報及び前記ワーク表面の三次元形状を示す三次元形状データを受け入れる受入部と、を備えるレーザ加工装置が、前記XY軸走査部及び前記Z軸走査部の待機位置を前記直交座標系の原点とする前記レーザ加工を行う際に、前記複数の印字パターンの印字順番と、前記複数の印字パターンのそれぞれの印字方向とを前記印字情報及び前記三次元形状データに基づいて決定するレーザ加工方法であって、
前記複数の印字パターンは、それぞれ、一端と、前記一端とは反対側の他端と、を有し、
前記複数の印字パターンのそれぞれについて、前記一端及び前記他端を前記印字情報及び前記三次元形状データに基づいて抽出する第1抽出工程と、
前記複数の印字パターンのそれぞれの前記一端及び前記他端のうち、前記Z軸方向のプラス側において、前記Z軸方向で前記直交座標系の原点から最も離れた端をプラス側遠端として抽出すると共に、前記Z軸方向のマイナス側において、前記Z軸方向で前記直交座標系の原点から最も離れた端をマイナス側遠端として抽出する第2抽出工程と、
前記プラス側遠端と前記マイナス側遠端のうち、前記Z軸方向で前記直交座標系の原点に最も近い端を第1印字始端として抽出する第3抽出工程と、
前記第1印字始端を有する印字パターンを前記印字順番を1番とする第1印字パターンに設定すると共に、前記第1印字パターンの前記印字方向を前記第1印字始端から、前記第1印字始端とは反対側の前記一端又は前記他端に相当する第1印字終端へ向かう方向に設定する第1設定工程と、
前記複数の印字パターンのそれぞれの前記一端及び前記他端のうち、前記第1印字パターンの前記一端及び前記他端を除いて、前記Z軸方向で前記第1印字パターンの前記第1印字終端に最も近い端を第2印字始端として抽出する第4抽出工程と、
前記第2印字始端を有する印字パターンを前記印字順番を2番とする第2印字パターンに設定すると共に、前記第2印字パターンの前記印字方向を前記第2印字始端から、前記第2印字始端とは反対側の前記一端又は前記他端に相当する第2印字終端へ向かう方向に設定する第2設定工程と、
前記第4抽出工程及び前記第2設定工程を繰り返し行うことによって、前記印字順番が3番以降の印字パターンの前記印字順番及び前記印字方向を設定する繰返工程と、を備えることを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項9】
複数の印字パターンをワーク表面に印字するレーザ加工を行うためのレーザ光を出射するレーザ光出射部と、前記レーザ光を直交座標系のXY軸方向で走査するXY軸走査部と、前記レーザ光を前記直交座標系のZ軸方向で走査するZ軸走査部と、前記複数の印字パターンをそれぞれ特定するための位置座標を含む印字情報及び前記ワーク表面の三次元形状を示す三次元形状データを受け入れる受入部と、を備えるレーザ加工装置が、前記XY軸走査部及び前記Z軸走査部の待機位置を前記直交座標系の原点とする前記レーザ加工を行う際に、前記複数の印字パターンの印字順番と、前記複数の印字パターンのそれぞれの印字方向とを前記印字情報及び前記三次元形状データに基づいて決定するレーザ加工方法であって、
前記複数の印字パターンは、それぞれ、一端と、前記一端とは反対側の他端と、を有し、
前記複数の印字パターンのそれぞれについて、前記一端及び前記他端を前記印字情報及び前記三次元形状データに基づいて抽出する第1抽出工程と、
前記複数の印字パターンのそれぞれの前記一端及び前記他端について、前記直交座標系の原点との間における前記XY軸走査部の整定時間と前記Z軸走査部の整定時間のうち、時間が長い方を第1整定時間として関連付ける第1関連付工程と、
前記複数の印字パターンのそれぞれの前記一端及び前記他端のうち、前記Z軸方向のプラス側において、前記第1整定時間が最も長い端をプラス側遠端として抽出すると共に、前記Z軸方向のマイナス側において、前記第1整定時間が最も長い端をマイナス側遠端として抽出する第2抽出工程と、
前記プラス側遠端と前記マイナス側遠端のうち、前記第1整定時間が最も短い端を第1印字始端として抽出する第3抽出工程と、
前記第1印字始端を有する印字パターンを前記印字順番を1番とする第1印字パターンに設定すると共に、前記第1印字パターンの前記印字方向を前記第1印字始端から、前記第1印字始端とは反対側の前記一端又は前記他端に相当する第1印字終端へ向かう方向に設定する第1設定工程と、
前記複数の印字パターンのうち前記第1印字パターンを除くそれぞれの前記一端及び前記他端について、前記第1印字パターンの前記第1印字終端との間における前記XY軸走査部の整定時間と前記Z軸走査部の整定時間のうち、時間が短い方を第2整定時間として関連付ける第2関連付工程と、
前記複数の印字パターンのそれぞれの前記一端及び前記他端のうち、前記第1印字パターンの前記一端及び前記他端を除いて、前記第2整定時間が最も短い端を第2印字始端として抽出する第4抽出工程と、
前記第2印字始端を有する印字パターンを前記印字順番を2番とする第2印字パターンに設定すると共に、前記第2印字パターンの前記印字方向を前記第2印字始端から、前記第2印字始端とは反対側の前記一端又は前記他端に相当する第2印字終端へ向かう方向に設定する第2設定工程と、
前記第2関連付工程、前記第4抽出工程、及び前記第2設定工程を繰り返し行うことによって、前記印字順番が3番以降の印字パターンの前記印字順番及び前記印字方向を設定する繰返工程と、を備えることを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の印字パターンの印字順番と印字方向とを決定するレーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記レーザ加工装置に関し、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1に記載のレーザマーキング装置における複数印字ブロックの印字順決定方法は、レーザ光源から発したレーザ光を偏向装置で二次元偏向することによって対象物の表面にレーザ光による印字を行うレーザマーキング装置において、複数の印字ブロックにわたって印字を行う場合の最適印字順を決定する方法であって、(a)各印字ブロックを構成する文字列の最初の文字の外接矩形に対して所定の位置関係にある第1代表点を設定すると共に、前記文字列の最後の文字の外接矩形に対して所定の位置関係にある第2代表点を設定するステップと、(b)前記第1代表点と前記第2代表点とを結ぶ印字ブロック代表直線を印字ブロックごとに設定するステップと、(c)一の印字ブロック代表直線の端点である前記第1代表点又は前記第2代表点から別の印字ブロック代表直線の端点である前記第1代表点又は前記第2代表点への移動経路である印字ブロック間直線を設定するステップと、(d)複数の前記印字ブロック代表直線と1又は複数の前記印字ブロック間直線とを含む全経路の長さを算出するステップと、(e)可能なすべての印字順の組合せについて前記ステップ(c)及び(d)を実行したときに、前記全経路の長さが最短となる印字順を最適印字順として決定するステップとを有することを特徴とする。
【0003】
下記特許文献1の記載によれば、上記方法は、複数の印字ブロックの代表点に基づいて最適な印字順が決定される。したがって、日付、ランク、シリアル番号の印字のように、印字内容の一部が印字対象ごとに変化する場合であっても、最初に決めた印字順にしたがって効率よく印字を行うことができる。つまり、従来例のように印字内容の一部が変わるたびに印字順を決め直す処理が不要であるので、印字全体に要する時間を効果的に短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記方法は、レーザ光による印字をレーザ光の二次元偏向で行うレーザマーキング装置において行われるものである。しかしながら、レーザ光が直交座標系のXY軸方向に加えてZ軸方向でも走査される場合、XY軸方向の走査よりもZ軸方向の走査の整定時間が長いケースが一般的なため、Z軸方向の走査に着目して、印字全体に要する時間を効果的に短縮する技術開発が求められている。
【0006】
そこで、本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、XY軸走査部及びZ軸走査部の待機位置を直交座標系の原点とするレーザ加工に要する時間の短縮を、XYZ軸方向の走査の関連事項に着目して行うレーザ加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、複数の印字パターンをワーク表面に印字するレーザ加工を行うためのレーザ光を出射するレーザ光出射部と、レーザ光を直交座標系のXY軸方向で走査するXY軸走査部と、レーザ光を直交座標系のZ軸方向で走査するZ軸走査部と、複数の印字パターンをそれぞれ特定するための位置座標を含む印字情報及びワーク表面の三次元形状を示す三次元形状データを受け入れる受入部と、複数の印字パターンの印字順番と、複数の印字パターンのそれぞれの印字方向とを印字情報及び三次元形状データに基づいて決定する決定部と、決定部で決定される印字順番と印字方向とに基づいて、XY軸走査部及びZ軸走査部の待機位置を直交座標系の原点とするレーザ加工を行う制御部と、を備え、複数の印字パターンは、それぞれ、一端と、一端とは反対側の他端と、を有し、決定部は、複数の印字パターンのそれぞれについて、一端及び他端を印字情報及び三次元形状データに基づいて抽出する第1抽出部と、複数の印字パターンのそれぞれの一端及び他端のうち、Z軸方向のプラス側において、Z軸方向で直交座標系の原点から最も離れた端をプラス側遠端として抽出すると共に、Z軸方向のマイナス側において、Z軸方向で直交座標系の原点から最も離れた端をマイナス側遠端として抽出する第2抽出部と、プラス側遠端とマイナス側遠端のうち、Z軸方向で直交座標系の原点に最も近い端を第1印字始端として抽出する第3抽出部と、第1印字始端を有する印字パターンを印字順番を1番とする第1印字パターンに設定すると共に、第1印字パターンの印字方向を第1印字始端から、第1印字始端とは反対側の一端又は他端に相当する第1印字終端へ向かう方向に設定する第1設定部と、複数の印字パターンのそれぞれの一端及び他端のうち、第1印字パターンの一端及び他端を除いて、Z軸方向で第1印字パターンの第1印字終端に最も近い端を第2印字始端として抽出する第4抽出部と、第2印字始端を有する印字パターンを印字順番を2番とする第2印字パターンに設定すると共に、第2印字パターンの印字方向を第2印字始端から、第2印字始端とは反対側の一端又は他端に相当する第2印字終端へ向かう方向に設定する第2設定部と、第4抽出部及び第2設定部を繰り返し行うことによって、印字順番が3番以降の印字パターンの印字順番及び印字方向を設定する繰返部と、を備えることを特徴とするレーザ加工装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、レーザ加工装置は、XY軸走査部及びZ軸走査部の待機位置を直交座標系の原点とするレーザ加工に要する時間の短縮を、XYZ軸方向の走査の関連事項に着目して行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のレーザ加工装置の概略構成が表された図である。
【
図2】同レーザ加工装置の電気的構成が表されたブロック図である。
【
図3】同レーザ加工装置で複数の印字パターンがマーキング(印字)加工される加工対象物の加工面が表された斜視図である。
【
図4】同加工対象物の加工面が表された平面図である。
【
図5】同レーザ加工装置が実行する各処理が表されたフローチャートである。
【
図6】複数の印字パターンの印字順番と印字方向を説明するための斜視図である。
【
図7】同レーザ加工装置が実行する各処理が表されたフローチャートである。
【
図8】印字パターンを構成する複数のオブジェクトについて、それらの書き順の変更を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のレーザ加工装置について、具体化した実施形態に基づき、図面を参照しつつ説明する。以下の説明に用いる
図1及び
図2では、基本的構成の一部が省略されて描かれており、描かれた各部の寸法比等は必ずしも正確ではない。尚、以下の説明において、直交座標系のX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、図面に示された通りである。また、上下方向は、直交座標系のZ軸方向に平行であり、図面に示された通りである。
【0011】
[1.レーザ加工装置の概略構成]
先ず、
図1及び
図2に基づいて、本実施形態のレーザ加工装置1の概略構成について説明する。本実施形態のレーザ加工装置1は、印字情報作成部2及びレーザ加工部3で構成されている。印字情報作成部2は、パーソナルコンピュータ等で構成されている。
【0012】
レーザ加工部3は、加工レーザ光Pを加工対象物7の加工面8上で2次元走査してマーキング(印字)加工を行うものである。レーザ加工部3は、レーザコントローラ6を備えている。尚、以下では、マーキング(印字)加工を、レーザ加工と表記して説明する場合がある。
【0013】
レーザコントローラ6は、コンピュータで構成され、印字情報作成部2と双方向通信可能に接続されている。レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された印字情報67、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工部3を駆動制御する。
【0014】
レーザ加工部3の概略構成について説明する。レーザ加工部3は、レーザ発振ユニット12、ガイド光部15、ダイクロイックミラー101、光学系70、ガルバノスキャナ18、及びfθレンズ19等を備えており、不図示の略直方体形状の筐体カバーで覆われている。
【0015】
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21等で構成されている。レーザ発振器21は、CO2レーザ、YAGレーザ、ファイバレーザ等で構成されており、加工レーザ光Pを出射する。尚、加工レーザ光Pの光径は、不図示のビームエキスパンダで調整(例えば、拡大)される。
【0016】
ガイド光部15は、可視半導体レーザ28等で構成されている。可視半導体レーザ28は、可視可干渉光であるガイド光Q、例えば、赤色レーザ光を出射する。ガイド光Qは、不図示のレンズ群で平行光にされ、更に、2次元走査されることによって、例えば、加工レーザ光Pでマーキング(印字)加工すべき印字パターンの像、その像を取り囲んだ矩形の像、又は所定形状の像等を、加工対象物7の加工面8上に軌跡(時間残像)で描画するものである。つまり、ガイド光Qには、マーキング(印字)加工能力がない。
【0017】
ガイド光Qの波長は、加工レーザ光Pの波長とは異なる。本実施形態では、例えば、加工レーザ光Pの波長は1064nmであり、ガイド光Qの波長は、650nmである。
【0018】
ダイクロイックミラー101では、入射された加工レーザ光Pのほぼ全部が透過する。また、ダイクロイックミラー101では、加工レーザ光Pが透過する略中央位置にて、ガイド光Qが45度の入射角で入射され、45度の反射角で加工レーザ光Pの光路上に反射される。ダイクロイックミラー101の反射率は、波長依存性を持っている。具体的には、ダイクロイックミラー101は、誘電体層と金属層との多層膜構造の表面処理がなされており、ガイド光Qの波長に対して高い反射率を有し、それ以外の波長の光をほとんど(99%)透過するように構成されている。
【0019】
尚、
図1の一点鎖線は、加工レーザ光Pとガイド光Qの光軸10を示している。また、光軸10の方向は、加工レーザ光Pとガイド光Qの経路方向を示している。
【0020】
光学系70は、第1レンズ72、第2レンズ74、及び移動機構76を備えている。光学系70では、ダイクロイックミラー101を経た加工レーザ光Pとガイド光Qが、第1レンズ72に入射し通過する。その際、第1レンズ72によって、加工レーザ光Pとガイド光Qの各光径が縮小される。また、第1レンズ72を通過した加工レーザ光Pとガイド光Qは、第2レンズ74に入射し通過する。その際、第2レンズ74によって、加工レーザ光Pとガイド光Qが平行光にされる。移動機構76は、光学系モータ80と、光学系モータ80の回転運動を直線運動に変換するラック・アンド・ピニオン(不図示)等を備えており、光学系モータ80の回転制御によって、第2レンズ74を加工レーザ光Pとガイド光Qの経路方向に移動させる。
【0021】
尚、移動機構76は、第2レンズ74に代えて第1レンズ72を移動させる構成であってもよいし、第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が変わるように第1レンズ72と第2レンズ74の双方を移動させる構成であってもよい。また、移動機構76は、ボイスコイルモータ方式であってもよい。
【0022】
ガルバノスキャナ18は、光学系70を経た加工レーザ光Pとガイド光Qとを2次元走査するものである。ガルバノスキャナ18では、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように取り付けられ、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラー18X、18Yが内側で互いに対向している。そして、各モータ31、32の回転制御で、各走査ミラー18X、18Yを回転させることによって、加工レーザ光Pとガイド光Qとを2次元走査する。この2次元走査方向は、X軸方向とY軸方向である。
【0023】
fθレンズ19は、ガルバノスキャナ18によって2次元走査された加工レーザ光Pとガイド光Qとを加工対象物7の加工面8上に集光するものである。従って、加工レーザ光Pとガイド光Qは、各モータ31、32の回転制御によって、加工対象物7の加工面8上でX軸方向とY軸方向に2次元走査される。
【0024】
加工レーザ光Pとガイド光Qとでは、波長が異なる。そのため、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が一定の場合、加工レーザ光Pとガイド光Qが集光する位置(以下、「焦点位置F」という。)は、上下方向(Z軸方向)で異なってしまう。そこで、加工レーザ光Pとガイド光Qの焦点位置Fは、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が調整されることによって、上下方向(Z軸方向)で移動し、加工対象物7の加工面8上に合わせられる。
【0025】
また、加工対象物7の加工面8の位置が上下方向(Z軸方向)で異なる場合も、同様にして、加工レーザ光Pとガイド光Qの焦点位置Fは、光学系70における第1レンズ72と第2レンズ74との間の距離が調整されることによって、上下方向(Z軸方向)で走査され、加工対象物7の加工面8上に合わせられる。
【0026】
次に、レーザ加工装置1を構成する印字情報作成部2とレーザ加工部3の回路構成について
図2に基づいて説明する。先ず、レーザ加工部3の回路構成について説明する。
【0027】
図2に表されるように、レーザ加工部3は、レーザコントローラ6、ガルバノコントローラ35、ガルバノドライバ36、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、及び光学系ドライバ78等から構成されている。レーザコントローラ6は、レーザ加工部3の全体を制御する。レーザコントローラ6には、ガルバノコントローラ35、レーザドライバ37、半導体レーザドライバ38、及び光学系ドライバ78等が電気的に接続されている。また、レーザコントローラ6には、外部の印字情報作成部2が双方向通信可能に接続されている。また、レーザコントローラ6は、印字情報作成部2から送信された各情報(例えば、印字情報67、レーザ加工部3に対する制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等)を受信可能に構成されている。
【0028】
レーザコントローラ6は、CPU41、RAM42、及びROM43等を備えている。CPU41は、レーザ加工部3の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU41、RAM42、及びROM43は、不図示のバス線により相互に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
【0029】
RAM42は、CPU41により演算された各種の演算結果や印字パターンの(XY座標)データ等を一時的に記憶させておくためのものである。
【0030】
ROM43は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、例えば、印字情報作成部2から送信された印字情報67に基づいて印字パターンのXY座標データを算出して、加工データ44としてRAM42に記憶するプログラムや、ガイド光Qの軌跡で描く像のXY座標データを算出してRAM42に記憶するプログラム等が記憶されている。尚、各種プログラムには、上述したプログラムに加えて、例えば、各種のディレイ値、印字情報作成部2から入力された印字情報67に対応する印字パターンの太さ、深さ及び本数、レーザ発振器21のレーザ出力、加工レーザ光Pのレーザパルス幅、ガルバノスキャナ18による加工レーザ光Pを走査する速度、及びガルバノスキャナ18によるガイド光Qを走査する速度等を示す各種制御パラメータをRAM42に記憶するプログラム等がある。更に、ROM43には、歪補正のためのパラメータや、ガルバノスキャナ18、レーザ加工装置1のステータス情報(エラー情報、加工回数、加工時間等)が記憶されている。
【0031】
CPU41は、ROM43に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行う。
【0032】
CPU41は、加工データ44、ガイド光Qの軌跡で描く像の軌跡のXY座標データ、ガルバノスキャナ18によるガイド光Qを走査する速度、及びガルバノスキャナ18による加工レーザ光Pを走査する速度等を示すガルバノ走査速度情報等を、ガルバノコントローラ35に出力する。また、CPU41は、印字情報作成部2から入力された印字情報に基づいて設定したレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Pのレーザパルス幅等を示すレーザ駆動情報を、レーザドライバ37に出力する。
【0033】
CPU41は、可視半導体レーザ28の点灯開始を指示するオン信号又は消灯を指示するオフ信号を半導体レーザドライバ38に出力する。
【0034】
ガルバノコントローラ35は、レーザコントローラ6から入力された各情報(例えば、印字パターンのXY座標データ、ガイド光Qの軌跡で描く像のXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等)に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度及び回転速度を示すモータ駆動情報をガルバノドライバ36に出力する。ガルバノドライバ36は、ガルバノコントローラ35から入力されたモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、加工レーザ光Pとガイド光Qを2次元走査する。
【0035】
レーザドライバ37は、レーザコントローラ6から入力されたレーザ発振器21のレーザ出力、及び加工レーザ光Pのレーザパルス幅等を示すレーザ駆動情報等に基づいて、レーザ発振器21を駆動させる。半導体レーザドライバ38は、レーザコントローラ6から入力されたオン信号又はオフ信号に基づいて、可視半導体レーザ28を点灯駆動又は、消灯させる。
【0036】
光学系ドライバ78は、レーザコントローラ6から入力された情報に基づいて、光学系モータ80を駆動制御して、第2レンズ74を移動させる。
【0037】
次に、印字情報作成部2の回路構成について説明する。印字情報作成部2は、制御部51、入力操作部55、液晶ディスプレイ(LCD)56、及びCD-ROMドライブ58等を備えている。制御部51には、不図示の入出力インターフェースを介して、入力操作部55、液晶ディスプレイ56、及びCD-ROMドライブ58等が接続されている。
【0038】
入力操作部55は、不図示のマウス及びキーボード等から構成されており、例えば、各種指示情報をユーザが入力する際に使用される。
【0039】
CD-ROMドライブ58は、各種データ、及び各種アプリケーションソフトウェア等をCD-ROM57から読み込むものである。
【0040】
制御部51は、印字情報作成部2の全体を制御すると共に、CPU61、RAM62、ROM63、及びハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)66等を備えている。CPU61は、印字情報作成部2の全体の制御を行う演算装置及び制御装置である。CPU61、RAM62、及びROM63は、不図示のバス線により相互に接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。更に、CPU61とHDD66とは、不図示の入出力インターフェースを介して接続されており、相互にデータのやり取りが行われる。
【0041】
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラム等を記憶させておくものである。更に、ROM63には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。
【0042】
HDD66には、各種アプリケーションソフトウェアのプログラム、及び各種データファイル等が記憶される。
【0043】
また、RAM62には、三次元形状データ64や、印字情報67が記憶されている。三次元形状データ64は、加工対象物7の加工面8の三次元形状を示すデータであり、入力操作部55でユーザによって入力され、あるいは、CD-ROMドライブ58でCD-ROM57から読み込まれる。もっとも、三次元形状データ64は、レーザ加工装置1が備える三次元計測機能で計測されたものであってもよいし、印字情報作成部2で実行される3次元CADソフトのアプリケーションソフトウェアによって作成されたCADデータであってもよいし、不図示の入出力インターフェースを介してレーザ加工装置1の外部から入力されたCADデータであってもよい。印字情報67は、入力操作部55でユーザによって入力されるが、CD-ROMドライブ58でCD-ROM57から読み込まれてもよいし、不図示の入出力インターフェースを介してレーザ加工装置1の外部から入力されてもよい。尚、印字情報67には、上述したデータに関する事項に加えて、例えば、印字パターンの位置座標等に関する情報が含まれている。尚、印字パターンの位置座標は、例えば、印字パターンの配置位置(左上)の座標を指定するものであってもよい。
【0044】
[2.印字パターン]
次に、印字パターンについて説明する。本実施形態では、
図3及び
図4に表されるように、加工対象物7の加工面8上において、印字パターンLP1、印字パターンLP2、及び印字パターンLP3が、マーキング(印字)加工される。
【0045】
印字パターンLP1は、4つの「A」の英文字がその横方向に並んだものである。印字パターンLP2は、4つの「B」の英文字がその横方向に並んだものである。印字パターンLP3は、4つの「C」の英文字がその横方向に並んだものである。印字パターンLP1には、4つの「A」の英文字がマーキング(印字)加工される際の開始端候補として、一端OE1と他端TE1とが設けられている。他端TE1は、4つの「A」の英文字が並ぶ横方向において、一端OE1とは反対側に設けられている。同様にして、印字パターンLP2には、一端OE2及び他端TE2が設けられ、印字パターンLP3には、一端OE3及び他端TE3が設けられている。
【0046】
以下の説明において、印字パターンLP1、印字パターンLP2、及び印字パターンLP3を区別することなく総称する際は、印字パターンLPと表記する。印字パターンLP1の一端OE1、印字パターンLP2の一端OE2、及び印字パターンLP3の一端OE3を区別することなく総称する際は、印字パターンLPの一端OEと表記する。印字パターンLP1の他端TE1、印字パターンLP2の他端TE2、及び印字パターンLP3の他端TE3を区別することなく総称する際は、印字パターンLPの他端TEと表記する。
【0047】
[3.加工対象物の加工面と直交座標系]
次に、加工対象物7の加工面8と直交座標系とについて説明する。本実施形態では、
図3及び
図4に表されるように、直交座標系として、三次元のXYZ座標系が設けられている。また、加工対象物7の加工面8は、4つの平面8A,8B,8C,8Dを有している。加工対象物7の加工面8の平面視(つまり、XYZ座標系に含まれるXY座標系)において、平面8AはXY座標系の第2象限に位置し、平面8BはXY座標系の第3象限に位置し、平面8CはXY座標系の第4象限に位置し、平面8DはXY座標系の第1象限に位置している。
【0048】
4つの平面8A,8B,8C,8Dのうち、3つの平面8A,8C,8Dは、Z軸方向と直交する平面であって、Z軸方向で異なる位置に延在している。これに対して、一つの平面8Bは、X軸方向及びZ軸方向と交差する傾斜面である。平面8Aは、印字パターンLP1がX軸方向に沿ってマーキング(印字)加工される面である。平面8Bは、その平面視で、印字パターンLP2がX軸方向に沿ってマーキング(印字)加工される面である。平面8Cは、印字パターンLP3がX軸方向に沿ってマーキング(印字)加工される面である。
【0049】
XYZ座標系の原点Oは、XYZ座標系のX軸方向及びY軸方向(つまり、加工対象物7の加工面8の平面視)において、4つの平面8A,8B,8C,8Dが隣り合う位置にあり、更に、XYZ座標系のZ軸方向において、平面8Aが延在する位置にある。尚、本実施形態では、Z軸方向において、原点Oから上側をプラス側とし、原点Oから下側をマイナス側とする。
【0050】
[4.走査位置]
次に、走査位置について説明する。走査位置とは、ガルバノスキャナ18でX軸方向とY軸方向に2次元走査されると共に、光学系70でZ軸方向に走査させられる加工レーザ光Pの位置をいう。従って、レーザ発振器21による加工レーザ光Pの発振が実行されている状態では、走査位置は焦点位置Fと一致する。尚、以下の説明では、走査位置を、加工レーザ光Pの走査位置と表記する。
【0051】
[5.ガルバノスキャナ及び光学系の待機位置]
次に、ガルバノスキャナ18及び光学系70の待機位置について説明する。ガルバノスキャナ18及び光学系70の待機位置とは、レーザマーキング(印字)のスタンバイ状態において、加工レーザ光Pの走査位置が停止している位置をいう。本実施形態において、ガルバノスキャナ18及び光学系70の待機位置は、XYZ座標系の原点Oに設定されている。つまり、レーザ加工装置1では、ガルバノスキャナ18及び光学系70の待機位置をXYZ座標系の原点Oとするレーザマーキング(印字)が行われる。尚、以下の説明では、ガルバノスキャナ18及び光学系70の待機位置を、待機位置と表記する場合がある。
【0052】
[6.ジャンプ距離]
次に、ジャンプ距離について説明する。ジャンプ距離とは、レーザマーキング(印字)中において、加工レーザ光Pの走査位置が、待機位置又は一の印字パターンLPから次の印字パターンLPまで移動する区間(以下、「ジャンプ区間」という。)の距離をいう。ジャンプ区間では、レーザ発振器21による加工レーザ光Pの発振が停止されている状態であるため、加工レーザ光Pは出射されない。
【0053】
[7.整定時間]
次に、整定時間について説明する。整定時間には、ガルバノスキャナ18の整定時間と、光学系70の整定時間とがある。ガルバノスキャナ18の整定時間は、ジャンプ時間と収束時間とで構成される。ジャンプ時間とは、加工レーザ光Pの走査位置がジャンプ区間を移動する際に、ガルバノスキャナ18の走査ミラー18X、18Yが回転している時間をいう。収束時間とは、ガルバノスキャナ18の走査ミラー18X、18Yの回転が停止してから、ガルバノスキャナ18の走査ミラー18X、18Yの機械的振動(リンギング)が許容範囲内に納まるまでに要する時間をいう。
【0054】
ガルバノスキャナ18の整定時間は、ジャンプ区間の距離及び走査ミラー18X、18Yの回転速度等に依存する。従って、ガルバノスキャナ18の整定時間は、通常、ジャンプ区間毎に異なる。
【0055】
同様にして、光学系70の整定時間は、ジャンプ時間と収束時間とで構成される。ジャンプ時間とは、加工レーザ光Pの走査位置がジャンプ区間を移動する際に、光学系70の第2レンズ74が移動している時間をいう。収束時間とは、光学系70の第2レンズ74の移動が停止してから、光学系70の第2レンズ74の機械的振動(リンギング)が許容範囲内に納まるまでに要する時間をいう。
【0056】
光学系70の整定時間は、ジャンプ区間の距離及び第2レンズ74の移動速度等に依存する。従って、光学系70の整定時間は、通常、ジャンプ区間毎に異なる。
【0057】
[8.印字順番と印字方向の決定]
レーザ加工装置1は、複数の印字パターンLPをマーキング(印字)加工する際、マーキング(印字)加工に要する時間を短縮するために、複数の印字パターンLPの印字順番と印字方向を決定する。その決定には、ジャンプ距離に基づいて決定が行われる第1ケースと、ガルバノスキャナ18の整定時間及び光学系70の整定時間に基づいて決定が行われる第2ケースとがある。
【0058】
[8.-1 第1ケースの制御フロー]
以下、第1ケースの制御フローについて説明する。
図5のフローチャートで表された第1レーザ加工方法200のプログラムは、制御部51のROM63に記憶されており、加工レーザ光Pで加工対象物7の加工面8にマーキング(印字)加工を行う際に、制御部51のCPU61により実行される。尚、本プログラムは、CD-ROM57に保存されており、CD-ROMドライブ58によって読み込まれ、CPU61により実行されてもよい。
【0059】
第1レーザ加工方法200のプログラムでは、先ず、ステップ(以下、単に「S」と表記する。)10の第1抽出処理S10が行われる。この処理では、複数の印字パターンLPのそれぞれについて、一端OE及び他端TEが抽出される。この抽出は、印字情報67に基づいて行われる。すなわち、CPU61は、印字情報67の印字パターンLPに含まれる最初の文字を抽出し、その文字のフォントに対応する始点をROM63から特定する。同様に、CPU61は、印字パターンLPに含まれる最後の文字を抽出し、その文字のフォントに対応する終点をROM63から特定する。更に、CPU61は、特定した始点及び終点について、印字情報67に含まれる印字パターンLPの位置座標及び加工対象物7の加工面8の三次元形状データ64に基づいて、三次元のXYZ座標を算出し、一端OEと他端TEとする。これにより、
図3及び
図4で表される具体例では、印字パターンLP1の一端OE1と他端TE1、印字パターンLP2の一端OE2と他端TE2、及び印字パターンLP3の一端OE3と他端TE3が抽出される。尚、印字パターンLPが図形や画像である場合、始点及び終点は、予め指定されてもよいし、印字情報67に含まれていてもよい。
【0060】
第2抽出処理S11では、複数の印字パターンLPのそれぞれの一端OE及び他端TEのうち、Z軸方向のプラス側において、Z軸方向でXYZ座標系の原点Oから最も離れた端がプラス側遠端として抽出される。更に、複数の印字パターンLPのそれぞれの一端OE及び他端TEのうち、Z軸方向のマイナス側において、Z軸方向でXYZ座標系の原点Oから最も離れた端がプラス側遠端として抽出される。これにより、
図3及び
図4で表される具体例では、印字パターンLP3の一端OE3及び他端TE3がプラス側遠端として抽出され、印字パターンLP2の他端TE2がマイナス側遠端として抽出される。
【0061】
第3抽出処理S12では、プラス側遠端とマイナス側遠端のうち、Z軸方向でXYZ座標系の原点Oに最も近い端が第1印字始端として抽出される。
図3及び
図4で表される具体例では、印字パターンLP2の他端TE2が第1印字始端として抽出される。
【0062】
尚、第3抽出処理S12において、プラス側遠端とマイナス側遠端のうち、Z軸方向でXYZ座標系の原点Oに最も近い端が複数ある場合には、更に、XY軸方向でXYZ座標系の原点Oに最も近い端が第1印字始端として抽出される。
【0063】
第1設定処理S13では、第1印字始端を有する印字パターンLPが、印字順番を1番とする第1印字パターンに設定されると共に、第1印字パターンの印字方向が、第1印字始端から、第1印字始端とは反対側の一端又は他端に相当する第1印字終端へ向かう方向に設定される。これにより、
図3及び
図4で表される具体例では、第1印字始端として抽出されている他端TE2を有する印字パターンLP2が、印字順番を1番とする第1印字パターンに設定される。更に、第1印字パターンに設定された印字パターンLP2の印字方向が、第1印字始端の他端TE2から、他端TE2とは反対側の一端OE2(に相当する第1印字終端)へ向かう方向に設定される。
【0064】
第4抽出処理S14では、複数の印字パターンLPのそれぞれの一端OE及び他端TEのうち、第1印字パターンの一端及び他端を除いて、Z軸方向で第1印字パターンの第1印字終端に最も近い端が第2印字始端として抽出される。但し、第4抽出処理S14において、Z軸方向で第1印字パターンの第1印字終端に最も近い端が複数ある場合には、更に、XY軸方向で第1印字パターンの第1印字終端に最も近い端が第2印字始端として抽出される。
【0065】
図3及び
図4で表される具体例では、印字パターンLP2が第1印字パターンに設定されており、印字パターンLP2の一端OE2が第1印字パターンの第1印字終端に相当している。このような具体例が第4抽出処理S14に適用されると、印字パターンLP1,LP3の一端OE1,OE3及び他端TE1,TE3のうち、Z軸方向で印字パターンLP2の一端OE2に最も近い端は、印字パターンLP1の一端OE1及び他端TE1であり、複数ある場合となる。よって、印字パターンLP1の一端OE1及び他端TE1のうち、XY軸方向で印字パターンLP2の一端OE2に最も近い端である印字パターンLP1の一端OE1が、第2印字始端として抽出される。
【0066】
第2設定処理S15では、第2印字始端を有する印字パターンLPが、印字順番を2番とする第2印字パターンに設定されると共に、第2印字パターンの印字方向が、第2印字始端から、第2印字始端とは反対側の一端又は他端に相当する第2印字終端へ向かう方向に設定される。これにより、
図3及び
図4で表される具体例では、第2印字始端として抽出されている一端OE1を有する印字パターンLP1が、印字順番を2番とする第2印字パターンに設定される。更に、第2印字パターンに設定された印字パターンLP1の印字方向が、第2印字始端の一端OE1から、一端OE1とは反対側の他端TE1(に相当する第2印字終端)へ向かう方向に設定される。
【0067】
引き続き行われる判定処理S16では、全ての印字パターンLPの印字順番と印字方向の決定が完了したかが判定される。ここで、印字順番と印字方向が未決定の印字パターンLPがある場合(S16:NO)、上記第4抽出処理S14及び上記第2設定処理S15が繰り返し行われる。このようにして、印字順番が3番以降の印字パターンLPの印字順番及び印字方向が設定される。これにより、
図3及び
図4で表される具体例では、Z軸方向で印字パターンLP1の他端TE1(第2印字パターンの第2印字終端)に最も近い端である印字パターンLP3の一端OE3が、第3印字始端として抽出される。そして、第3印字始端として抽出されている一端OE3を有する印字パターンLP3が、印字順番を3番とする第3印字パターンに設定される。更に、第3印字パターンに設定された印字パターンLP3の印字方向が、第3印字始端の一端OE3から、一端OE3とは反対側の他端TE3(に相当する第3印字終端)へ向かう方向に設定される。
【0068】
これに対して、全ての印字パターンLPの印字順番と印字方向の決定が完了した場合(S16:YES)、第1レーザ加工方法200は終了する。
【0069】
その後は、このようにして決定された印字パターンLPの印字順番と印字方向に従って、全ての印字パターンLPがマーキング(印字)加工される。その際、CPU61は、印字情報67等に加えて、三次元形状データ64を、レーザコントローラ6に送信する。そして、レーザ加工部3では、加工レーザ光Pの走査位置が、加工データ44に基づいてガルバノスキャナ18でX軸方向とY軸方向に2次元走査されると共に、三次元形状データ64に基づいて光学系70でZ軸方向に走査される。
【0070】
尚、
図3及び
図4で表される具体例について、第1レーザ加工方法200で決定された印字パターンLPの印字順番と印字方向に従って、マーキング(印字)加工が行われると、加工レーザ光Pの走査位置は、以下のようにして、XYZ座標系を移動する。
【0071】
図6に表されるように、マーキング(印字)加工が開始すると、加工レーザ光Pの走査位置は、待機位置であるXY座標系の原点Oから、印字順番が1番である印字パターンLP2の他端TE2に移動する。その移動の区間は、ジャンプ区間に相当するため、加工レーザ光Pは出射されない。印字パターンLP2において、加工レーザ光Pの走査位置は、印字パターンLP2の印字方向である、他端TE2から一端OE2に向かう方向へ移動する。その移動中は、レーザ発振器21による加工レーザ光Pの発振が実行されている状態であるため、印字パターンLP2を構成する4つの「B」の英文字がマーキング(印字)加工される。
【0072】
次に、加工レーザ光Pの走査位置は、印字パターンLP2の一端OE2から、印字順番が2番である印字パターンLP1の一端OE1に移動する。その移動の区間は、ジャンプ区間に相当するため、加工レーザ光Pは出射されない。印字パターンLP1において、加工レーザ光Pの走査位置は、印字パターンLP1の印字方向である、一端OE1から他端TE1に向かう方向へ移動する。その移動中は、レーザ発振器21による加工レーザ光Pの発振が実行されている状態であるため、印字パターンLP1を構成する4つの「A」の英文字がマーキング(印字)加工される。
【0073】
次に、加工レーザ光Pの走査位置は、印字パターンLP1の他端TE1から、印字順番が3番である印字パターンLP3の一端OE3に移動する。その移動の区間は、ジャンプ区間に相当するため、加工レーザ光Pは出射されない。印字パターンLP3において、加工レーザ光Pの走査位置は、印字パターンLP3の印字方向である、一端OE3から他端TE3に向かう方向へ移動する。その移動中は、レーザ発振器21による加工レーザ光Pの発振が実行されている状態であるため、印字パターンLP3を構成する4つの「C」の英文字がマーキング(印字)加工される。
【0074】
その後、加工レーザ光Pの走査位置は、印字パターンLP3の他端TE3から、待機位置であるXY座標系の原点Oに戻る。その戻りの区間は、ジャンプ区間に相当するため、加工レーザ光Pは出射されない。このようにして、マーキング(印字)加工が終了する。
【0075】
[8.-2 第2ケースの制御フロー]
以下、第2ケースの制御フローについて説明する。
図7のフローチャートで表された第2レーザ加工方法202のプログラムは、制御部51のROM63に記憶されており、加工レーザ光Pで加工対象物7の加工面8にマーキング(印字)加工を行う際に、制御部51のCPU61により実行される。尚、本プログラムは、CD-ROM57に保存されており、CD-ROMドライブ58によって読み込まれ、CPU61により実行されてもよい。
【0076】
第2レーザ加工方法202のプログラムでは、先ず、第1抽出処理S20が行われる。この処理では、複数の印字パターンLPのそれぞれについて、一端OE及び他端TEが抽出される。この抽出は、印字情報67に基づいて行われる。すなわち、この処理は、上記第1抽出処理S10と同様である。これにより、
図3及び
図4で表される具体例では、印字パターンLP1の一端OE1と他端TE1、印字パターンLP2の一端OE2と他端TE2、及び印字パターンLP3の一端OE3と他端TE3が抽出される。
【0077】
第1関連付処理S21では、複数の印字パターンLPのそれぞれの一端OE及び他端TEについて、XYZ座標系の原点Oとの間におけるガルバノスキャナ18の整定時間と光学系70の整定時間のうち、時間が長い方が第1整定時間として関連付けられる。
【0078】
ガルバノスキャナ18の整定時間と光学系70の整定時間は、印字情報67等を用いて算出される。尚、この算出に必要な印字情報67以外の情報は、制御部51のROM63又はレーザコントローラ6のROM43に予め記憶されており、例えば、第2レーザ加工方法202のプログラムが実行される際に、CPU61によって読み出される。この点は、後述する第2関連付処理S25においても、同様である。
【0079】
第2抽出処理S22では、複数の印字パターンLPのそれぞれの一端OE及び他端TEのうち、Z軸方向のプラス側において、第1整定時間が最も長い端がプラス側遠端として抽出される。更に、複数の印字パターンLPのそれぞれの一端OE及び他端TEのうち、Z軸方向のマイナス側において、第1整定時間が最も長い端がマイナス側遠端として抽出される。これにより、
図3及び
図4で表される具体例では、印字パターンLP3の他端TE3がプラス側遠端として抽出され、印字パターンLP2の他端TE2がマイナス側遠端として抽出される。
【0080】
第3抽出処理S23では、プラス側遠端とマイナス側遠端のうち、第1整定時間が最も短い端が第1印字始端として抽出される。
図3及び
図4で表される具体例では、印字パターンLP2の他端TE2が第1印字始端として抽出される。
【0081】
第1設定処理S24では、第1印字始端を有する印字パターンLPが、印字順番を1番とする第1印字パターンに設定されると共に、第1印字パターンの印字方向が、第1印字始端から、第1印字始端とは反対側の一端又は他端に相当する第1印字終端へ向かう方向に設定される。すなわち、この処理は、上記第1設定処理S13と同様である。これにより、
図3及び
図4で表される具体例では、第1印字始端として抽出されている他端TE2を有する印字パターンLP2が、印字順番を1番とする第1印字パターンに設定される。更に、第1印字パターンに設定された印字パターンLP2の印字方向が、第1印字始端の他端TE2から、他端TE2とは反対側の一端OE2(に相当する第1印字終端)へ向かう方向に設定される。
【0082】
第2関連付処理S25では、複数の印字パターンLPのうち第1印字パターンを除くそれぞれの一端OE及び他端TEについて、第1印字パターンの第1印字終端との間におけるガルバノスキャナ18の整定時間と光学系70の整定時間のうち、時間が短い方が第2整定時間として関連付けられる。
【0083】
第4抽出処理S26では、複数の印字パターンLPのそれぞれの一端OE及び他端TEのうち、第1印字パターンの一端及び他端を除いて、第2整定時間が最も短い端が第2印字始端として抽出される。
図3及び
図4で表される具体例では、印字パターンLP1の一端OE1が第2印字始端として抽出される。
【0084】
第2設定処理S27では、第2印字始端を有する印字パターンLPが、印字順番を2番とする第2印字パターンに設定されると共に、第2印字パターンの印字方向が、第2印字始端から、第2印字始端とは反対側の一端又は他端に相当する第2印字終端へ向かう方向に設定される。すなわち、この処理は、上記第2設定処理S15と同様である。これにより、
図3及び
図4で表される具体例では、第2印字始端として抽出されている一端OE1を有する印字パターンLP1が、印字順番を2番とする第2印字パターンに設定される。更に、第2印字パターンに設定された印字パターンLP1の印字方向が、第2印字始端の一端OE1から、一端OE1とは反対側の他端TE1(に相当する第2印字終端)へ向かう方向に設定される。
【0085】
引き続き行われる判定処理S28では、全ての印字パターンLPの印字順番と印字方向の決定が完了したかが判定される。ここで、印字順番と印字方向が未決定の印字パターンLPがある場合(S28:NO)、上記第2関連付処理S25、上記第4抽出処理S26、及び上記第2設定処理S27が繰り返し行われる。このようにして、印字順番が3番以降の印字パターンLPの印字順番及び印字方向が設定される。これにより、
図3及び
図4で表される具体例では、第3整定時間が最も短い端である印字パターンLP3の一端OE3が、第3印字始端として抽出される。そして、第3印字始端として抽出されている一端OE3を有する印字パターンLP3が、印字順番を3番とする第3印字パターンに設定される。更に、第3印字パターンに設定された印字パターンLP3の印字方向が、第3印字始端の一端OE3から、一端OE3とは反対側の他端TE3(に相当する第3印字終端)へ向かう方向に設定される。
【0086】
これに対して、全ての印字パターンLPの印字順番と印字方向の決定が完了した場合(S28:YES)、第2レーザ加工方法202は終了する。
【0087】
その後は、このようにして決定された印字パターンLPの印字順番と印字方向に従って、全ての印字パターンLPがマーキング(印字)加工される。その際、CPU61は、印字情報67等に加えて、三次元形状データ64を、レーザコントローラ6に送信する。そして、レーザ加工部3では、加工レーザ光Pの走査位置が、加工データ44に基づいてガルバノスキャナ18でX軸方向とY軸方向に2次元走査されると共に、三次元形状データ64に基づいて光学系70でZ軸方向に走査される。
【0088】
尚、
図3及び
図4で表される具体例について、第2レーザ加工方法202で決定された印字パターンLPの印字順番と印字方向に従って、マーキング(印字)加工が行われると、加工レーザ光Pの走査位置は、
図6に表されたように、第1レーザ加工方法200で決定された場合と同様にして、XYZ座標系を移動する。
【0089】
[9.まとめ]
以上詳細に説明したように、本実施の形態のレーザ加工装置1は、第1レーザ加工方法200を実行することによって、ガルバノスキャナ18及び光学系70の待機位置をXYZ座標系の原点Oとするレーザ加工に要する時間の短縮を、XYZ軸方向の走査の関連事項の一つであるジャンプ距離に着目して行うことが可能である。
【0090】
また、本実施の形態のレーザ加工装置1は、第2レーザ加工方法202を実行することによって、ガルバノスキャナ18及び光学系70の待機位置をXYZ座標系の原点Oとするレーザ加工に要する時間の短縮を、XYZ軸方向の走査の関連事項の一つである整定時間に着目して行うことが可能である。
【0091】
ちなみに、加工対象物7の加工面8は、「ワーク表面」の一例である。レーザ発振ユニット12は、「レーザ光出射部」の一例である。ガルバノスキャナ18は、「XY軸走査部」の一例である。走査ミラー18Xは、「第1ガルバノミラー」の一例である。走査ミラー18Yは、「第2ガルバノミラー」の一例である。CPU41は、「制御部」の一例である。入力操作部55は、「受入部」の一例である。CD-ROMドライブ58は、「受入部」の一例である。CPU61は、「決定部」の一例である。光学系70は、「Z軸走査部」の一例である。第2レンズ74は、「レンズ」の一例である。加工レーザ光Pは、「レーザ光」の一例である。待機位置は、XY軸走査部及びZ軸走査部の待機位置の一例である。
【0092】
第1レーザ加工方法200は、請求項8の「レーザ加工方法」の一例である。第1抽出処理S10は、「第1抽出部」及び「第1抽出工程」の一例である。第2抽出処理S11は、「第2抽出部」及び「第2抽出工程」の一例である。第3抽出処理S12は、「第3抽出部」及び「第3抽出工程」の一例である。第1設定処理S13は、「第1設定部」及び「第1設定工程」の一例である。第4抽出処理S14は、「第4抽出部」及び「第4抽出工程」の一例である。第2設定処理S15は、「第2設定部」及び「第2設定工程」の一例である。第4抽出処理S14、第2設定処理S15、及び判定処理S16は、「繰返部」及び「繰返工程」の一例である。
【0093】
第2レーザ加工方法202は、請求項9の「レーザ加工方法」の一例である。第1抽出処理S20は、「第1抽出部」及び「第1抽出工程」の一例である。第1関連付処理S21は、「第1関連付部」及び「第1関連付工程」の一例である。第2抽出処理S22は、「第2抽出部」及び「第2抽出工程」の一例である。第3抽出処理S23は、「第3抽出部」及び「第3抽出工程」の一例である。第1設定処理S24は、「第1設定部」及び「第1設定工程」の一例である。第2関連付処理S25は、「第2関連付部」及び「第2関連付工程」の一例である。第4抽出処理S26は、「第4抽出部」及び「第4抽出工程」の一例である。第2設定処理S27は、「第2設定部」及び「第2設定工程」の一例である。第2関連付処理S25、第4抽出処理S26、第2設定処理S27、及び判定処理S28は、「繰返部」及び「繰返工程」の一例である。
【0094】
[10.その他]
尚、本開示は、本実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0095】
例えば、XYZ座標系の原点Oは、加工対象物7の加工面8上のいずれの位置に設定されてもよいし、加工対象物7内のいずれの位置に設定されてもよいし、加工対象物7外のいずれの位置に設定されてもよい。
【0096】
また、本実施の形態のレーザ加工装置1では、CPU61が、第1レーザ加工方法200又は第2レーザ加工方法202の実行中において、印字パターンLPを構成する複数のオブジェクトの書き順を変更してもよい。尚、複数のオブジェクトは、
図3及び
図4で表される具体例では、「A」「B」「C」の各英文字が相当する。
【0097】
このような場合、CPU61は、第1レーザ加工方法200又は第2レーザ加工方法202の実行中において、印字パターンLPの印字方向が設定される際に、書き順変更処理を行う。この処理では、複数の印字パターンLPのうち、少なくとも複数のオブジェクトで構成される印字パターンLPについて、先行してマーキング(印字)加工されるオブジェクトの印字終端と、引き続いてマーキング(印字)加工されるオブジェクトの印字始端との間におけるZ軸方向の距離が最小となるように、複数のオブジェクトのそれぞれの印字始端及び印字終端が、印字情報67に基づいて決定される。
【0098】
以下、
図8に表されるように、加工対象物7の加工面8上において、矢印103が示す印字方向で、印字パターンLP4がマーキング(印字)加工される場合を想定して説明する。印字パターンLP4は、4つのオブジェクトOB1,OB2,OB3,OB4で構成されている。各オブジェクトOB1,OB2,OB3,OB4は、「M」の英文字であって、マーキング(印字)加工される際の開始端候補として、一端SE1,SE2,SE3,SE4と、他端FE1,FE2,FE3,FE4が設けられている。
【0099】
尚、以下の説明において、オブジェクトOB1,OB2,OB3,OB4を区別することなく総称する際は、オブジェクトOBと表記する。一端SE1,SE2,SE3,SE4を区別することなく総称する際は、一端SEと表記する。他端FE1,FE2,FE3,FE4を区別することなく総称する際は、他端FEと表記する。
【0100】
印字パターンLP4におけるオブジェクトOBの書き順について、そのデフォルトは、一端SEから他端FEへ向かう方向に設定されている。つまり、オブジェクトOB1,OB2,OB3,OB4において、一端SE1,SE2,SE3,SE4が印字始端であり、他端FE1,FE2,FE3,FE4が印字終端である。尚、書き順のデフォルトは、ROM63に予め記憶されている。
【0101】
しかしながら、そのような書き順が示す方向は、矢印103が示す印字方向とは逆である。従って、加工レーザ光Pの走査位置は、例えば、先行してマーキング(印字)加工されるオブジェクトOB4の印字終端である他端FE4から、引き続いてマーキング(印字)加工されるオブジェクトOB3の印字始端である一端SE3まで移行する場合、2つのオブジェクトOB4,OB3を横断する必要がある。
【0102】
そこで、CPU61は、上記書き順変更処理を行うことによって、印字パターンLP4におけるオブジェクトOBの書き順を、他端FEから一端SEへ向かう方向に変更する。つまり、オブジェクトOB1,OB2,OB3,OB4において、他端FE1,FE2,FE3,FE4が印字始端端に変更され、一端SE1,SE2,SE3,SE4が印字終端に変更される。
【0103】
これにより、先行してマーキング(印字)加工されるオブジェクトOBの印字終端と、引き続いてマーキング(印字)加工されるオブジェクトOBの印字始端との間におけるZ軸方向の距離が最小となるので、ガルバノスキャナ18及び光学系70の待機位置をXYZ座標系の原点Oとするレーザ加工に要する時間が短縮される。
【符号の説明】
【0104】
1:レーザ加工装置、8:加工対象物の加工面、12:レーザ発振ユニット、18:ガルバノスキャナ、18X:走査ミラー、18Y:走査ミラー、41:CPU、55:入力操作部、58:CD-ROMドライブ、61:CPU、67:印字情報、70:光学系、74:第2レンズ、76:移動機構、200:第1レーザ加工方法、202:第2レーザ加工方法、LP:印字パターン、O:直交座標系(XYZ座標系)の原点、OB:オブジェクト、OE:印字パターンの一端、P:加工レーザ光、S10:第1抽出処理、S11:第2抽出処理、S12:第3抽出処理、S13:第1設定処理、S14:第4抽出処理、S15:第2設定処理、S20:第1抽出処理、S21:第1関連付処理、S22:第2抽出処理、23:第3抽出処理、S24:第1設定処理、S25:第2関連付処理、S26:第4抽出処理、S27:第2設定処理、TE:印字パターンの他端。