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特開2022-157324ピックアップコレット、ピックアップ装置及び実装装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157324
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ピックアップコレット、ピックアップ装置及び実装装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20221006BHJP
   H01L 21/67 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H01L21/68 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061470
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】羽根 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正規
【テーマコード(参考)】
5F047
5F131
【Fターム(参考)】
5F047AA17
5F047FA01
5F047FA08
5F131AA04
5F131BA54
5F131DA03
5F131DB22
5F131DB25
(57)【要約】
【課題】電子部品を非接触でピックアップすることができるピックアップコレット、ピックアップ装置及び実装装置を提供する。
【解決手段】実施形態のピックアップコレット200は、電子部品2を吸引保持してピックアップするピックアップコレット200であって、通気性を有し、内部に供給された気体を、電子部品2に対向する対向面201aの細孔を介して面状に噴出する多孔質部材201を有し、多孔質部材201には、対向面201aに開口201dを有し、負圧により電子部品2を吸引する吸引孔201cが設けられ、対向面201aの外縁に沿って、電子部品2の移動を規制するガイド部201eが設けられている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を吸引保持してピックアップするピックアップコレットであって、
通気性を有し、内部に供給された気体を、前記電子部品に対向する対向面の細孔を介して面状に噴出する多孔質部材を有し、
前記多孔質部材には、前記対向面に開口を有し、負圧により前記電子部品を吸引する吸引孔が設けられ、
前記対向面の外縁に沿って、前記電子部品の移動を規制するガイド部が設けられていることを特徴とするピックアップコレット。
【請求項2】
前記ガイド部は、気体を噴出可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のピックアップコレット。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記電子部品の側面に向けて気体を噴出することを特徴とする請求項2記載のピックアップコレット。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記電子部品の側面に沿う方向に気体を噴出することを特徴とする請求項2又は請求項3記載のピックアップコレット。
【請求項5】
前記ガイド部は、ガイド用多孔質部材を介して気体を噴出することを特徴とする請求項2又は請求項3記載のピックアップコレット。
【請求項6】
前記ガイド部は、前記対向面から突出した突出部分を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のピックアップコレット。
【請求項7】
前記電子部品が貼り付けられたシートから、前記電子部品をピックアップするピックアップ装置であって、
請求項1乃至6のいずれかに記載のピックアップコレットと、
前記ピックアップコレットを、前記シートにおける前記電子部品を吸引保持可能な位置まで接近させ、吸引保持した前記電子部品を前記シートから引き剥がして移送可能とするコレット移動機構と、
を有することを特徴とするピックアップ装置。
【請求項8】
請求項7記載のピックアップ装置と、
前記ピックアップコレットに対して相対的に移動可能に設けられ、前記ピックアップコレットから前記電子部品を受け取るボンディングヘッドと、
前記ボンディングヘッドに保持された前記電子部品を、基板に移送して実装する実装部と、
を有することを特徴とする実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアップコレット、ピックアップ装置及び実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロジック、メモリ、画像センサなどの半導体素子である電子部品を、基板に実装する際には、半導体素子が形成されたウエーハを、切断することにより個片化したチップとする。そして、このチップを一つずつピックアップし、基板へ移送して実装することが行われている。
【0003】
チップの一方の面である表面は、微細な回路が形成された機能面となっている。このチップをウエーハからピックアップする際に、ピックアップする部材が機能面に直接接触すると、回路等が破損する虞があるため、接触を避けたいという要求がある。
【0004】
また、チップの表面の接続端子と、基板の接続端子とを対向させて接合することも行われている。この時、接続端子同士の接合性を確保、向上させるため、チップの表面に対して、プラズマ処理や表面活性化処理などの表面処理が行われる場合がある。このような処理をされたチップの表面の状態を維持するためにも、ピックアップする部材がチップの表面に直接接触することを避けたいという要求がある。
【0005】
チップの表面に、部材を接触させないという要求に対応するため、従来、チップをピックアップする部材であるコレットにおいて、チップを保持する面をテーパー面として、チップの表面ではなく周縁部のみが、コレットのテーパー面に接触した状態で保持されるようにしていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63-124746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来技術においても、チップの周辺部において、コレットとの接触が存在する。このため、チップの表面の周縁部に接触することによって、チップの欠け、割れが生じる可能性がある。また、そもそもチップとコレットとの接触が生じることが、パーティクルの発生につながる。このため、チップの表面の周縁部に対しても、非接触で保持できるコレットが求められている。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電子部品を非接触でピックアップすることができるピックアップコレット、ピックアップ装置及び実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電子部品を吸引保持してピックアップするピックアップコレットであって、通気性を有し、内部に供給された気体を、前記電子部品に対向する対向面の細孔を介して面状に噴出する多孔質部材を有し、前記多孔質部材には、前記対向面に開口を有し、負圧により前記電子部品を吸引する吸引孔が設けられ、前記対向面の外縁に沿って、前記電子部品の移動を規制するガイド部が設けられている。
【0010】
また、本発明は、前記電子部品が貼り付けられたシートから、前記電子部品をピックアップするピックアップ装置であって、前記ピックアップコレットと、前記ピックアップコレットを、前記シートにおける前記電子部品を吸引保持可能な位置まで接近させ、吸引保持した前記電子部品を前記シートから引き剥がして移送可能とするコレット移動機構と、を有する。
【0011】
また、本発明の実装装置は、前記ピックアップコレットに対して相対的に移動可能に設けられ、前記ピックアップコレットから前記電子部品を受け取るボンディングヘッドと、前記ボンディングヘッドに保持された前記電子部品を、基板に移送して実装する実装部と、
を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のピックアップコレット、ピックアップ装置及び実装装置によれば、電子部品を非接触でピックアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の移送装置及び実装装置を示す正面図である。
図2】実施形態の移送装置及び実装装置を示す平面図である。
図3】ピックアップコレットによる電子部品の保持原理を示す断面模式図(A)、ベースを示す底面側斜視図(B)である。
図4】ピックアップコレット及び着脱部を示す底面側斜視図である。
図5】ピックアップコレット及び着脱部を示す上面側斜視図である。
図6】移送装置及び実装装置の制御装置を示すブロック図である。
図7】実施形態によるピックアップ動作の手順を示すフローチャートである。
図8】実施形態によるピックアップ動作を示す説明図である。
図9】ガイド部を設けた変形例を示す底面側斜視図である。
図10】ガイド部を設けた変形例を示す上面側斜視図である。
図11】ガイド部を設けた変形例を示す断面模式図である。
図12】ガイド用多孔質部材を有するガイド部を設けた変形例を示す断面模式図である。
図13】噴出口を有するガイド部を設けた変形例を示す断面模式図である。
図14】ガイド部が突出している場合のピックアップ動作を示す説明図である。
図15】ガイド部の気体の噴出方向を下方とした変形例を示す断面模式図である。
図16】ガイド部の気体の噴出方向を傾斜させた変形例を示す断面模式図である。
図17】ガイド部の配置の変形例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式図であって、各部のサイズ、比率等は、理解を容易にするために誇張している部分を含んでいる。図1及び図2に示すように、本実施形態のピックアップコレット200は、電子部品2の移送装置1に使用される。移送装置1は、ピックアップ装置20、搭載装置30、及び制御装置50を備え、電子部品2をピックアップ装置20によって搭載装置30へと受け渡す装置である。
【0015】
電子部品2は、例えば、チップ状の部品である。本実施形態では、電子部品2は、ウエーハを個片に分割した半導体チップである。また、実装装置100は、供給装置10から供給された電子部品2を移送装置1による移送を介して基板に実装する装置である。すなわち、実装装置100は、移送装置1の構成に加え、供給装置10、基板を支持する基板ステージ60を備える。
【0016】
供給装置10は、電子部品2をピックアップ装置20へと供給する装置である。供給装置10は、ピックアップ対象の電子部品2を供給位置P1に移動させる。供給位置P1とは、ピックアップ装置20が、ピックアップ対象となる電子部品2をピックアップする位置である。供給装置10は、電子部品2が貼り付けられたシート11を支持する供給ステージ12、供給ステージ12を移動させるステージ移動機構13を備える。このステージ移動機構13は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構である。
【0017】
電子部品2が貼り付けられシート11は、ここでは、図示しないウエーハリングに貼り付けられた粘着性を有するウエーハシートである。シート11上には電子部品2がマトリクス(行列)状に配置されている。本実施形態では、電子部品2は、機能面が上方に露出したフェイスアップ状態で配置されているものとする。
【0018】
供給ステージ12は、シート11が貼り付けられたウエーハリングを水平に支持する台である。つまり、供給ステージ12は、電子部品2が貼り付けられたシート11を、ウエーハリングを介して支持する。供給ステージ12は、ステージ移動機構13によって、水平方向に移動可能に設けられている。シート11は、供給ステージ12とともにステージ移動機構13に水平に支持されているため、シート11及び当該シート11に載せられた電子部品2もまた、水平方向に移動可能に設けられている。
【0019】
なお、図1に示すように、水平方向のうち、供給装置10と搭載装置30が並ぶ方向をX軸方向、X軸に直交する方向をY軸方向という。また、シート11の平面に直交する方向をZ軸方向または上下方向という。上方向とは、シート11の平面を境界として電子部品2が載せられている側の方向であり、下方向とは、シート11の平面を境界として電子部品2が載せられていない側の方向である。
【0020】
[ピックアップ装置]
ピックアップ装置20は、供給装置10から電子部品2をピックアップし、ピックアップした電子部品2を搭載装置30に受け渡す装置である。このピックアップ装置20は、ピックアップコレット200と、コレット移動機構22と、方向転換部23と、突き上げピン24とを備える。
【0021】
ピックアップコレット200は、図3図5に示すように、電子部品2を吸引保持し、また吸引保持を解除して電子部品2を解放する部材である。ピックアップコレット200は、多孔質部材201、ベース202を有する。
【0022】
多孔質部材201は、通気性を有し、内部に供給された気体を、電子部品2に対向する対向面201aの細孔を介して供給する部材である。本実施形態の多孔質部材201は、直方体の板形状であり、全体として連通する微細な空間が緻密にほぼ均一に形成されている。多孔質部材201は、この構造によって通気性を有するが、そのコンダクタンスは非常に小さい。多孔質部材201は、いずれか一つの面が対向面201aとなり、対向面201aと反対側の背面201bから内部に気体が供給されると、対向面201aの緻密で均等に存在する細孔から気体が噴出する。この噴出は、噴き出した対向面201aの全面に広がった実質的に面状の噴出となる。この噴出は極めて緩やかなもので、いわばにじみ出てくるような感じであり、指を近づけてわずかに気流を感じる程度のものである。なお、対向面201aと背面201b以外の面は、細孔が塞がっていてもよい。
【0023】
多孔質部材201は、前述のように内部の微細な空間である細孔が互いに連通しており、気体が細孔間を通過可能な連続構造体である。このような多孔質部材201としては、焼結金属、セラミック、樹脂などを用いることができる。内部の粒子が分離して流出し難いという観点からは、焼結金属とすることが好ましい。
【0024】
さらに、多孔質部材201には、図3及び図4に示すように、対向面201aに開口201dを有し、負圧により電子部品2を吸引する貫通孔である吸引孔201cが設けられている。本実施形態の吸引孔201cは、背面201bの中央から対向面201aの中央に直線状に貫通している。
【0025】
ベース202は、対向面201a以外の多孔質部材201の面を覆う部材である。本実施形態のベース202は、下方が開口した直方体形状の箱である。多孔質部材201は、ベース202の開口から、底面が対向面201aとなって露出するように挿入され、ベース202内に組み付けられて固定されている。
【0026】
ベース202の天面には、図3及び図5に示すように、給気孔202a、排気孔202b、取付穴202cが設けられている。給気孔202aは、多孔質部材201に給気するための貫通孔である。給気孔202aは、給気孔202aに接続される配管のためにベース202の外縁に寄った位置に形成されている。排気孔202bは、吸引孔201cを介して開口201dに負圧を発生させるための貫通孔である。排気孔202bは下方に延びて、多孔質部材201の吸引孔201cに合うように形成されている。排気孔202bの周囲におけるベース202の内面と多孔質部材201との間には、気体溜まりの空間が形成されている。なお、排気孔202bは、吸引孔201cを貫通して、対向面201aに達していてもよい。この場合、多孔質部材201の吸引孔201c、開口201dは、多孔質部材201の対向面201aに達した排気孔202bの外側に密着するように設けられる。取付穴202cは、コレット移動機構22との接続時に、ずれを防止するための一対の窪み穴である。
【0027】
給気孔202aは、図示しない配管を介して気体の供給回路に接続されている。供給回路は気体の供給源、ポンプ、バルブ等を含み構成されている。ここで、給気孔202aを介して多孔質部材201に供給される気体は、不活性ガスとする。排気孔202bは、図示しない配管を介して、真空ポンプ、バルブ等を含む負圧発生回路と連通している。
【0028】
コレット移動機構22は、供給位置P1と受け渡し位置P2との間でピックアップコレット200を装着したピックアップヘッド21を往復移動させ、また、供給位置P1及び受け渡し位置P2で昇降させる機構である。なお、受け渡し位置P2とは、ピックアップ装置20が、供給位置P1でピックアップした電子部品2を後述する受取部として機能するボンディングヘッド31に受け渡す位置である。供給位置P1及び受け渡し位置P2は、主にXY方向の位置を意味し、必ずしもZ軸方向の位置を意味するものではない。
【0029】
また、Z軸方向の位置(高さ)を意味する場合であっても、その高さには所定の幅があるものとする。所定の幅には、電子部品2の受け渡しの際の、電子部品2の厚み、電子部品2を突き上げる距離、電子部品2を吸着可能な距離などが含まれる。特にZ軸方向の位置(高さ)を意味する場合、供給位置P1において、接近位置における高さをH1、引剥位置における高さをH2とする(図8参照)。
【0030】
コレット移動機構22は、ピックアップヘッド21が取り付けられたアーム222aを有し、アーム222aを移動させることにより、ピックアップヘッド21に装着されたピックアップコレット200を移動させる。ピックアップヘッド21の先端には、着脱部222bが設けられている、着脱部222bは、内部に磁石を備え、磁石の吸引力によってピックアップコレット200のベース202を吸着保持する。図4及び図5に示すように、着脱部222bのベース202との接触面には、一対のピン222cが設けられている。ピン222cが、ベース202に設けられた取付穴202cに嵌ることにより、着脱部222bに対するピックアップコレット200のずれが防止される。なお、図示はしないが、排気孔202bに接続される配管は着脱部222b内を通り、給気孔202aに接続される配管は着脱部222bに支持されている。
【0031】
コレット移動機構22は、スライド機構221、昇降機構222を備える。スライド機構221は、ピックアップヘッド21が取り付けられたアーム222aを移動させることにより、ピックアップコレット200を供給位置P1と受け渡し位置P2との間で往復移動させる。ここでは、スライド機構221は、X軸方向と平行に延び、支持フレーム221aに固定されたレール221bと、レール221b上を走行するスライダ221cとを有する。
【0032】
昇降機構222は、ピックアップヘッド21が取り付けられたアーム222aを移動させることにより、ピックアップコレット200を上下方向に移動させる。具体的には、昇降機構222は、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。すなわち、サーボモータの駆動により、ピックアップコレット200がZ軸方向に沿って昇降する。なお、ピックアップコレット200は、着脱部222bを介してピックアップヘッド21に弾性支持されるとともに、上下にピックアップヘッド21に対してZ軸方向にスライド移動可能に設けられている。そして、ピックアップヘッド21は、このスライド移動を検知するセンサを有している。
【0033】
方向転換部23は、ピックアップコレット200とコレット移動機構22の間に設けられている。方向転換部23は、ここでは、ピックアップコレット200の向きを変更するモータ等の駆動源を含んでなるアクチュエータである。ピックアップコレット200の向きとは、ピックアップコレット200のベース202側から、対向面201aへと向かう向きとする。向きを変更するとは、上下方向に0°~180°回転させることである。例えば、対向面201aを供給ステージ12へと向けたピックアップコレット200が供給位置P1で電子部品2を吸着保持する。その後、方向転換部23は、吸着面が上に向くようにピックアップコレット200の向きを変更する。この時、回転角度は180°である。
【0034】
突き上げピン24は、供給装置10のシート11の下方に設けられている。突き上げピン24は、先端の尖った針状の部材である。突き上げピン24は、長さ方向がZ軸方向に平行になるようにバックアップ体241の内部に設けられている。
【0035】
バックアップ体241は、突き上げピン24をその内部から進出またはその内部へと退避させる駆動機構を有する。この進出または退避は、上下方向に行われる。この駆動機構は、例えば、エアシリンダやカム機構によって駆動される。
【0036】
[搭載装置]
搭載装置30は、ピックアップ装置20から受け取った電子部品2を実装位置P3まで搬送し、基板に搭載する装置である。実装位置P3とは、電子部品2を基板に実装する位置である。搭載装置30は、ボンディングヘッド31、ヘッド移動機構32を有する。
【0037】
ボンディングヘッド31は、受け渡し位置P2でピックアップコレット200から電子部品2を受け取る受取部としての機能を有し、また当該電子部品2を実装位置P3で基板に実装する装置である。ボンディングヘッド31は、電子部品2を保持し、また実装後は保持状態を解除して電子部品2を解放する。
【0038】
具体的には、ボンディングヘッド31は、ノズル31aを備える。ノズル31aは、電子部品2を保持し、また保持状態を解除して電子部品2を解放する。ノズル31aは、ノズル孔を備える。ノズル孔は、ノズル31aの先端の吸着面に開口する。ノズル孔は真空ポンプ等の負圧発生回路(図示せず)と連通しており、当該回路が負圧を発生させることによって、ノズル31aの吸着面に電子部品2を吸着保持する。また、負圧を解除することで吸着面から電子部品2の保持状態を解除する。
【0039】
ヘッド移動機構32は、ボンディングヘッド31を、受け渡し位置P2と実装位置P3との間で往復移動させ、また、受け渡し位置P2及び実装位置P3で昇降させる機構である。具体的には、ヘッド移動機構32は、スライド機構321、昇降機構322を備える。
【0040】
スライド機構321は、ボンディングヘッド31を受け渡し位置P2と実装位置P3との間で往復移動させる。ここでは、スライド機構321は、X軸方向と平行に延び、支持フレーム321aに固定された2本のレール321bと、レール321b上を走行するスライダ321cとを有する。
【0041】
なお、図示はしないが、スライド機構321は、ボンディングヘッド31をY軸方向にスライド移動させるスライド機構を有している。このスライド機構も、Y軸方向のレールとレールを走行するスライダによって構成できる。昇降機構322は、ボンディングヘッド31を上下方向に移動させる。具体的には、昇降機構322は、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。すなわち、サーボモータの駆動により、ボンディングヘッド31がZ軸方向に沿って昇降する。
【0042】
基板ステージ60は、電子部品2を実装するための基板を支持する台である。基板ステージ60は、ステージ移動機構61に設けられている。ステージ移動機構61は、基板ステージ60をXY平面上でスライド移動させ、基板における電子部品2の実装予定位置を実装位置P3に合わせる移動機構である。ステージ移動機構61は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構である。
【0043】
[制御装置]
制御装置50は、供給装置10、ピックアップ装置20、搭載装置30、基板ステージ60の起動、停止、速度、動作タイミング等を制御する。すなわち、制御装置50は、移送装置1及び実装装置100の制御装置である。制御装置50は、例えば、専用の電子回路又は所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。制御装置50には、オペレータが制御に必要な指示や情報を入力する入力装置、装置の状態を確認するための出力装置が接続されている。入力装置は、スイッチ、タッチパネル、キーボード、マウスなどを用いることができる。出力装置は、液晶、有機ELなどの表示部を用いることができる。
【0044】
図6は、制御装置50の機能ブロック図である。図6に示すように、制御装置50は、供給装置制御部51、突き上げピン制御部52、ピックアップ制御部53、ボンディングヘッド制御部54、基板ステージ制御部56、記憶部57を有している。
【0045】
供給装置制御部51は、供給ステージ12の移動を制御する。すなわち、シート11に載せられたピックアップ対象となる電子部品2の移動を制御する。突き上げピン制御部52は、突き上げピン24の移動、すなわちバックアップ体241の動作を制御する。
【0046】
ピックアップ制御部53は、ピックアップコレット200の移動を制御する。すなわちピックアップ制御部53は、コレット移動機構22及び方向転換部23の動作を制御する。また、ピックアップ制御部53は、給気孔202aと連通した供給回路、排気孔202bと連通した負圧発生回路を制御し、電子部品2の保持及び解放を制御する。
【0047】
ボンディングヘッド制御部54は、ボンディングヘッド31の移動、すなわちヘッド移動機構32の動作を制御する。また、ボンディングヘッド制御部54は、ボンディングヘッド31のノズル孔と連通した負圧発生回路を制御し、電子部品2の保持及び解放を制御する。基板ステージ制御部56は、基板ステージ60の移動、すなわちステージ移動機構61の動作を制御する。
【0048】
記憶部57は、各種メモリ、HDDまたはSSDなどを含む記録媒体である。記憶部57には、移送装置1の動作に必要なデータ、プログラムが予め記憶され、また、移送装置1の動作に必要なデータを記憶する。この必要なデータとは、例えば、気体の供給量、排気圧力、供給位置P1、受け渡し位置P2、実装位置P3の位置座標、各移動機構の位置座標である。上述の各移動機構は、これらの座標に基づいて各構成の移動制御を行う。
【0049】
[ピックアップコレットによる吸引保持の原理]
次に、上記のようなピックアップコレット200によって、電子部品2を吸引保持できる原理を説明する。図3(A)に示すように、給気孔202aから供給される気体Gは、対向面201aの細孔から面状に噴出することによって、電子部品2との間に気体の層が形成される。この層は、例えば、2~10μmとなる。そして、負圧発生回路により吸引孔201cに負圧を作用させた状態で、対向面201aを電子部品2に接近させることにより、電子部品2が吸引保持される。このとき、対向面201aと電子部品2との間には、気体の層が形成されているので、対向面201aと電子部品2とは非接触な状態が維持される。また、負圧発生回路による負圧を解除することで、吸引孔201cに負圧が作用しなくなるので、ピックアップコレット200から電子部品2が解放される。
【0050】
[動作]
以上のような移送装置1において、ピックアップ装置20により供給装置10から電子部品2をピックアップし、当該電子部品2を搭載装置30に受け渡す動作を、図1図6に加えて、図7のフローチャート、図8の説明図を参照しつつ、以下に説明する。
【0051】
まず、ピックアップ装置20及び供給装置10によって、ピックアップコレット200を突き上げピン24が位置する供給位置P1に移動させ、ピックアップコレット200の対向面201aと突き上げピン24を対向させる(ステップS01)。このとき、多孔質部材201には給気孔202aを介して、加圧された気体が供給されており、対向面201aから気体が吹き出している。またこのとき、排気孔202bから排気しておらず、開口201dからの吸引はしていない。
【0052】
一方、供給装置10は、供給ステージ12を移動させ、図8(A)に示すように、供給位置P1にピックアップ対象の電子部品2を位置させる(ステップS02)。この後、対向面201aから気体Gが供給されているピックアップコレット200が、ピックアップヘッド21とともに降下して、電子部品2に接近して行く。ピックアップコレット200が電子部品2に近接すると、対向面201aの気体Gが、対向面201aと電子部品2とに挟持されて、気体層を形成する。この時の挟持された気体層は、粘性流層になっていると考えられる。そして、図8(B)に示すように、ピックアップコレット200は、それ以上圧縮されない気体層によって電子部品2に対する下降が停止する(ステップS03)。
【0053】
ここで、ピックアップコレット200が電子部品2に接触すると、ピックアップコレット200自体は停止する。但し、ピックアップコレット200は、ピックアップヘッド21に弾性支持されているため、ピックアップコレット200が停止しても、ピックアップヘッド21は下降を続けて、ピックアップコレット200に対してピックアップヘッド21がスライド移動する。このスライドをセンサで検知すると、ピックアップ制御部53は、ピックアップコレット200が電子部品2に接触したと認識して、ピックアップヘッド21の下降を停止する。このとき、ピックアップコレット200は、電子部品2とは接触していない。しかし、対向面201aと電子部品2との間に気体層が形成されるので、対向面201aは電子部品2にそれ以上近づけなくなり停止する。このときのピックアップコレット200の高さ位置が、接近位置H1となる。つまり、接近位置H1は、あらかじめ特定の停止位置として設定されているわけではない。
【0054】
このように、気体層を介してピックアップコレット200が停止し、さらにピックアップヘッド21が停止した状態で、排気孔202bからの排気によって、吸引孔201cによる吸引を開始する(ステップS04)。つまり、ピックアップコレット200が気体層を介して電子部品2を、バックアップ体241に支持されたシート11に押し付けている状態、つまりバックアップ体241との間でシート11及び電子部品2を挟持している状態で、吸引を開始する。
【0055】
この状態で、図8(C)に示すように、ピックアップコレット200が上昇するとともに、これと同期して突き上げピン24の上昇による突き上げが開始する(ステップS05)。これにより、電子部品2の裏面から、シート11が剥離を開始する。さらに、図8(D)に示すように、突き上げピン24は、あらかじめ設定された所定量上昇すると停止する。そして、さらに上昇するピックアップコレット200によって、ピックアップコレット200に、気体の層による隙間を維持した状態で負圧により吸引された電子部品2が、シート11から引き剥がされることにより、ピックアップされる(ステップS06)。このように電子部品2が完全に引き剥がされる高さ位置が引剥位置H2ではあるが、あらかじめ特定の停止位置として設定されているわけではない。
【0056】
ピックアップ装置20は、方向転換部23によって、ピックアップコレット200を反転させる(ステップS07)。すなわち、ピックアップコレット200の向きを上下方向に180°回転させ、ピックアップコレット200の対向面201aを上方へ向ける。なお、ここではステップS07の反転動作は電子部品2をピックアップした直後に行われるが、供給位置P1から受け渡し位置P2までの間のどの地点で行われてもよい。
【0057】
ピックアップ装置20は、コレット移動機構22によって、受け渡し位置P2にピックアップした電子部品2を移動させる(ステップS08)。受け渡し位置P2では、搭載装置30のボンディングヘッド31が待機しており、電子部品2を介してピックアップコレット200の対向面201aと対向する。
【0058】
受け渡し位置P2に位置したピックアップコレット200に向けてボンディングヘッド31を下降させ、ボンディングヘッド31で電子部品2を保持した後、ピックアップコレット200が負圧を解除することにより、ピックアップコレット200からボンディングヘッド31へと電子部品2を受け渡す(ステップS09)。なお、この後、ボンディングヘッド31は、ピックアップコレット200から離間するように上昇、実装位置P3へと移動し、電子部品2を基板に実装する。
【0059】
[効果]
(1)本実施形態のピックアップコレット200は、電子部品2を吸引保持してピックアップするピックアップコレット200であって、通気性を有し、内部に供給された気体を、電子部品2に対向する対向面201aの細孔を介して供給する多孔質部材201を有し、多孔質部材201には、対向面201aに、負圧により電子部品2を対向面201aに吸引する開口201dを有する吸引孔201cが設けられている。
【0060】
また、本実施形態のピックアップ装置20は、ピックアップコレット200を、シート11における電子部品2を吸引保持可能な位置まで接近させ、吸引保持した電子部品2をシート11から引き剥がして移送可能とするコレット移動機構22を有する。
【0061】
さらに、本実施形態の実装装置100は、ピックアップコレット200に対して相対的に移動可能に設けられ、ピックアップコレット200の先端から電子部品2を受け取るボンディングヘッド31と、ボンディングヘッド31に保持された電子部品2を、基板に移送して実装する実装部とを有する。
【0062】
このため、吸引孔201cからの吸引によって電子部品2をピックアップする際に、多孔質部材201の細孔から排出される気体の層によって、電子部品2と対向面201aとを非接触にすることができ、電子部品2にダメージが加わることが抑制される。また、電子部品2の移送時においても、対向面201aに接触して電子部品2にダメージが加わる可能性を低減しつつ、電子部品2を保持して落下等を防止できる。
【0063】
ここで、電子部品2と、電子部品2と対向する面との間に、この空間から排出される気体を流すことにより、大量の気流により生じる負圧を利用して吸引力を生起させるベルヌーイチャックによって、電子部品2を保持する場合を考える。この場合、吸引力が非常に弱く、コレットと一定距離離れた状態で電子部品2を保持できたとしても、シート11に粘着されている電子部品2を引き剥がす吸着力を得ることができない。また、ベルヌーイ効果を得るためには、単位時間当たりの気体の流量を非常に多くする必要があるため、非接触を維持しつつ、保持するための吸引力の調整が非常に困難である。さらに、大量の気体がピックアップ箇所の周囲に吹き出されることにより、パーティクルを発生させるおそれがある。
【0064】
また、コレットの電子部品2と対向する面に、多孔質部材201のような細孔でなく、吸引孔同等のサイズの気体の噴出孔を設け、電子部品2に向かって気体を噴射して電子部品2を浮遊させ、この噴射による電子部品2の浮遊力に抗して電子部品2を吸引孔により吸引しようとする場合も、上述同様に非接触(浮遊)を維持しつつ、保持するための吸引力の調整が非常に困難であり、大量の気体がピックアップ箇所の周囲に吹き出されることにより、パーティクルを発生させるおそれがある。
【0065】
これに対して、本実施形態では、対向面201aの微細な孔を介して、対向面201aの全体から面状に吹き出される気体の流量は、極めて僅かである。このため、パーティクルを発生させるおそれはない。対向面201aからの吹き出しは積極的に電子部品2を浮遊させるものでなく、対向面201aと電子部品2とが近接した時に粘性流の気体の層を形成するものである。したがって、対向面201aと電子部品2とを非接触状態に保つことは、吸引力が強いほど容易であり、吸引孔201cからの負圧による吸引力を、電子部品2をシート11から引き剥がすために十分な力としても、対向面201aと電子部品2との間の気体の層により接触を防止できるので、強い吸引力を得ることも、吸引力の調整も容易となる。
【0066】
本願の発明者による検討の結果、例えば、以下の条件であると、ピックアップコレット200により、電子部品2との非接触を維持しつつ、吸引保持できるという結果が得られた。まず、多孔質部材201としては、通気率が、例えば、供給圧力が0.3MPaの時に、多孔質部材201から流出する気体の流量が0.7L/min程度のものを用いた。多孔質部材201に供給するガス(窒素ガス)の圧力は、0.1~0.7MPa程度の範囲で良く、この時に、多孔質部材201を介して流れるガスの流量は0.3~1.5L/min程度の範囲で、確実に、ピックアップコレット200と電子部品2の非接触を維持できた。また、吸引の圧力としては、-10~-90kPaの範囲で、確実に、電子部品2をシート11からピックアップすることができた。この時、電子部品2と対向面201aとの間の気体層での圧力は0.1~0.5MPaが得られた。
【0067】
比較例として、上記のピックアップコレット200と同サイズで、素材として細孔を有しないステンレス(SUS)製のコレットを用いた。このコレットに、直径0.3mmの孔50個を行列に配設して、孔から0.02MPaの圧力で供給したガスを噴き出させた場合、吸引の圧力が-50kPaで、電子部品2と対向面201aとが非接触を維持できる電子部品2と対向面201aの間の圧力は、0.025~0.035MPaと極めて小さく、その幅も狭いものであった。つまり、多孔質部材201の細孔とは異なり、コレットに形成した複数の孔によるガスの吹き出しでは、僅かな押圧力あるいは吸引力であっても、また僅かでも押圧力あるいは吸引力が変化してしまうと、電子部品2が容易に対向面と接触してしまうことが判明した。さらに、電子部品2と対向面201aとの間での圧力を増やすために、供給圧力を増やすと、容易に電子部品2が脱落してしまった。
【0068】
(2)電子部品2に対向面201aが対向している状態で、開口201dが電子部品2の投影面内、つまり電子部品2に重なる位置に設けられている。本実施形態では、対向面201aの中央に、吸引孔201cに連通した1つの開口201dが設けられている。このため、電子部品2の外縁からの気体の流入がなく、大気圧を利用して強い吸引力を確保することができる。なお、開口201dは複数であってもよく、その位置は、対向面201aが電子部品2に重なる位置であれば、中央には限定されない。
【0069】
[変形例]
本発明は、上記の実施形態には限定されない。上記の実施形態と基本的な構成は同様として、以下のような変形例も適用可能である。
(1)上記のようなピックアップコレット200の場合、保持された電子部品2が、水平な対向面201a内で移動しやすい。特に、電子部品2の反転時、移送時、受け渡し時等において、動作の加減速を大きくするような場合、位置ずれが生じる可能性がある。さらに、保持を維持できずに、脱落してしまう虞もある。
【0070】
これに対処するため、対向面201aの外縁に沿って、電子部品2の移動を規制するガイド部を設けてもよい。例えば、図9図10及び図11に示すように、ガイド部201eを、ベース202の4側面に設ける矩形の板状体とする。各ガイド部201eは、対向面201aよりも突出した突出部分を有している。ガイド部201eが対向面201aから突出する距離(突出量)は、気体層を介して対向面201aに保持される電子部品2の移動が規制できればよく、少なくとも対向面201aから、気体層を介して保持される電子部品2にかかる程度以上であれば良い。ただし、このガイド部201eの突出部分が、気体層を介して対向面201aに保持される電子部品2を超えて突出する距離となる場合、ウエーハからピックアップする際に、ピックアップする電子部品2の周囲の電子部品2に接触しないよう考慮する必要がある。したがって、ガイド部201eの突出部分が対向面201aから突出する距離は、気体層を介して対向面201aに保持される電子部品2の側面内とするのが好ましい。ただし、後述のように、ピックアップの際に突き上げピン24を制御することで、様々な突出量に対応して周囲の電子部品2に接触しないようにすることができる。
【0071】
このような変形例では、反転時等の電子部品2の移動にともなう慣性力で、電子部品2が非接触で保持される対向面201a上で水平に移動したとしても、ピックアップコレット200から外れることを防止できる。また、ガイド部201eに囲まれる領域内で電子部品2の位置がずれたとしても、開口201dによる吸引が電子部品2の投影面内であれば、開口201dの位置によらず、吸引保持が可能となる。
【0072】
但し、電子部品2がガイド部201eに接触すると、電子部品2が影響を受ける可能性がある。そこで、ガイド部201eが気体を噴出することによって、電子部品2と非接触となるようにすることで、ピックアップコレット200からの逸脱を防止しつつ、ガイド部201eへの接触による電子部品2に与えるダメージの発生を無くすことができる。
【0073】
例えば、図12に示すように、ガイド部201eにおける突出部分の電子部品2の側面に対向する位置に、ガイド用多孔質部材201fを設ける。ガイド部201eの内部には、外部とガイド用多孔質部材201fを連通する通気路201gが設けられている。通気路201gは、図示しない配管を介して気体の供給回路に接続されている。
【0074】
ガイド部201eは、ガイド用多孔質部材201fを介して気体Gを噴出する。これにより、電子部品2の側面に沿って気体Gの層が形成されるので、電子部品2のずれや外れが抑制されるとともに、ガイド部201eに対しても電子部品2の非接触を維持できる。したがって、電子部品2の欠け、割れが低減し、接触によるパーティクルの発生も抑えることができる。気体Gの噴出量も少なくて済むので、気流によるパーティクルの発生も抑えることができる。さらに、移送時における電子部品2のずれや落下も低減できる。
【0075】
また、図13に示すように、ガイド用多孔質部材201fを設けずに、通気路201gに連通した噴出口201hから、電子部品2の側面に向かって気体Gを噴出することによっても、電子部品2のずれや外れ、電子部品2との接触の抑制が可能となる。この場合にも、電子部品2との接触を避ける気体Gの層が形成されればよいので、噴出量は少なくて済む。
【0076】
なお、上記のように、対向面201aから突出するガイド部201eがある場合、ピックアップ時に、ガイド部201eがシート11上のピックアップ対象の周囲の電子部品2に接触しないようにする必要がある。そこで、ピックアップ時に、あらかじめ電子部品2を突き上げておくと良い。つまり、図14に示すように、周囲の電子部品2にガイド部201eが当たらないよう、ガイド部201eの対向面201aからの突出量に応じて、ピックアップコレット200の下降開始とともに、突き上げピン24が上昇してピックアップ対象の電子部品2を突き上げることにより、ガイド部201eが周囲の電子部品2に当たらない高さまで上昇させておく。この状態でピックアップコレット200が近接し、気体層を介して停止した後、吸引を開始することにより、上記のようにピックアップを行うことができる。
【0077】
さらに、ガイド部201eは、対向面201aから突出させなくてもよい。例えば、図15に示すように、ガイド部201eの下端をベース202、対向面201aと面一又はこれより上として、噴出口201hをガイド部201eの下面に設ける。そして、噴出口201hから気体Gを噴出する。このように、ガイド部201eが、電子部品2の側面に沿う方向に気体Gを噴出することにより、気体Gによる壁が形成されるので、電子部品2のずれや外れが抑制される。また、電子部品2の側面に対向する位置に、突出部分がないため、電子部品2の側面に接触することがなく、ピックアップ時に他の電子部品2に接触することもない。
【0078】
なお、図16に示すように、噴出口201hからの気体Gの噴出方向が、電子部品2の側面に向かう方向となるように、通気路201gを傾斜させてもよい。この場合、電子部品2の側面に対して気体Gをより強く当てることができるので、気体Gの噴出量を抑えることができる。
【0079】
上記のようなガイド部201eは、電子部品2の移動が規制できるように、対向面201aの外縁に沿って設けられていればよい。このため、対向面201aの全周に設けなくても、一部であってもよい。例えば、図17(A)に示すように角部に沿って、又は図17(B)に示すように角部を挟んでガイド部201eを配置することにより、4方から挟む方向に気体Gが噴出されるので、位置決め効果を高めることができる。
(2)吸引孔201c及び開口201dの数やサイズは、上記の態様には限定されない。多孔質部材201の対向面201aにおいて、電子部品2が気体の層に支持される面積と開口201dの総面積とのバランスによって、吸引保持状態と非接触状態の維持を実現できる。
【0080】
(3)吸引孔201c及び開口201dの位置や形状も、上記の態様には限定されない。例えば、開口201dの形状は、上記のように、円形、矩形であってもよく、その他の楕円形、多角形、角丸多角形、星形等であってもよい。
【0081】
(4)ピックアップコレット200は交換可能に設けることにより、電子部品2の形状、サイズに応じて交換することができる。この交換可能とする構成としては、磁石によって吸引保持できる構造が簡単であり、交換作業も容易となる。但し、ピックアップコレット200を交換可能な構成であれば良い。例えば、負圧を使った吸着保持でも良いし、機械的に保持する構造でも良い。
【0082】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1 移送装置
2 電子部品
10 供給装置
11 シート
12 供給ステージ
13 ステージ移動機構
20 ピックアップ装置
21 ピックアップヘッド
22 コレット移動機構
23 方向転換部
24 突き上げピン
30 搭載装置
31 ボンディングヘッド
31a ノズル
32 ヘッド移動機構
50 制御装置
51 供給装置制御部
52 突き上げピン制御部
53 ピックアップ制御部
54 ボンディングヘッド制御部
56 基板ステージ制御部
57 記憶部
60 基板ステージ
61 ステージ移動機構
100 実装装置
200 ピックアップコレット
201 多孔質部材
201a 対向面
201b 背面
201c 吸引孔
201d 開口
201e ガイド部
201f ガイド用多孔質部材
201g 通気路
201h 噴出口
202 ベース
202a 給気孔
202b 排気孔
202c 取付穴
221 スライド機構
221a 支持フレーム
221b レール
221c スライダ
222 昇降機構
222a アーム
222b 着脱部
222c ピン
241 バックアップ体
321 スライド機構
321a 支持フレーム
321b レール
321c スライダ
322 昇降機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17