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  • 特開-端子構造 図1A
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  • 特開-端子構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157330
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】端子構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20221006BHJP
   H01R 43/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01R13/52 Z
H01R43/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061484
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 広明
(72)【発明者】
【氏名】椋本 康敬
(72)【発明者】
【氏名】大橋 政貴
(72)【発明者】
【氏名】田上 耕太郎
【テーマコード(参考)】
5E051
5E087
【Fターム(参考)】
5E051LA04
5E051LB03
5E087FF16
5E087LL02
5E087LL03
5E087LL14
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】端子の防水手段の小型化を図るとともに、電線の配置の自由度を向上させる。
【解決手段】端子構造1は、心線10を有する電線50と、電線50に取り付けられる端子部材20と、を備え、端子部材20は、心線10が接合される接合部21と、接合部21を囲むとともに、接合部21を露出させる開口部31が形成されたシール部30と、を有し、心線10は、開口部3を介して接合部21に接合されるとともに、開口部31の周囲においてシール部30と環状に密着している。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心線を有する電線と、
前記電線に取り付けられる端子部材と、を備え、
前記端子部材は、
前記心線が接合される接合部と、
前記接合部を囲むとともに、前記接合部を露出させる開口部が形成されたシール部と、を有し、
前記心線は、前記開口部を介して前記接合部に接合されるとともに、前記開口部の周囲において前記シール部と環状に密着している、
端子構造。
【請求項2】
前記心線は、素線をより合わせたより線からなり、
前記開口部を覆う領域で、前記素線同士が接合されている、
請求項1に記載の端子構造。
【請求項3】
前記心線の端部は、前記シール部の外縁よりも内側に位置する、
請求項1又は請求項2に記載の端子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の端子には、接続する相手方端子に合わせた形状等を有する端子部材が取り付けられることが多い。端子部材は、電線の心線との間に電気的な接点を有している。端子部材と心線とが異種金属の場合、接点に水が付着すること等によって、電食が発生する可能性がある。電食が発生すると、接点の抵抗が高くなり、端子部材の取付強度が低下する場合がある。このため、水が付着するような環境で端子が使用される場合には、防水用の部材を別に用意して、端子部材等を取り囲んで密閉し、水の浸入を防ぐことが行われている。例えば特許文献1には、電線及び端子部材の一部を防水カバーの中に収容することによって、防水性を高める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-062076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
端子部材を収容する場合、防水用の部材の大きさは、端子部材よりも大きくする必要があり、防水用の部材を含めた端子全体の小型化は制限される。また、防水用の部材は、相手方端子と接続する部分を露出させて設けられる。その露出させる部分との境界で、防水用の部材と端子部材との間を封止する必要がある。このため、端子部材が長くなる等、端子部材の形状が制限され、電線を自由に取り回すことができない場合があった。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたのであり、端子の防水手段の小型化を図るとともに、電線の配置の自由度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明に係る端子構造は、心線を有する電線と、前記電線に取り付けられる端子部材と、を備え、前記端子部材は、前記心線が接合される接合部と、前記接合部を囲むとともに、前記接合部を露出させる開口部が形成されたシール部と、を有し、前記心線は、前記開口部を介して前記接合部に接合されるとともに、前記開口部の周囲において前記シール部と環状に密着している。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、端子の防水手段の小型化を実現し、電線の配置の自由度を向上させ、端子に係る部材を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】実施形態に係る端子構造の上面図である。
図1B図1AのIB-IB線における断面図である。
図2】実施形態に係る端子構造における端子部材の一部を示す上面図である。
図3A図2AのIIIA-IIIA線における断面図であり、実施形態に係る端子構造の製造方法におけるシール部配置工程を示す。
図3B】実施形態に係る端子構造の製造方法における心線配置工程を示す断面図である。
図3C】実施形態に係る端子構造の製造方法における接合工程を示す断面図である。
図4図3Cの一部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。実施形態に係る端子構造1は、図1A、1Bに示すように、心線10を有する電線50と、端子部材20とを備えている。
【0009】
(端子部材)
端子部材20は、電線50の端部に設けられる部材である。端子部材20は、接合部21と、シール部30と、篏合部25とを有している。接合部21及びシール部30は、電線50の心線10が配置される配置面20Aに設けられている。端子部材20の材料は、例えば金属である。
篏合部25は、電線50が接続される相手方端子と篏合する部分であり、相手方端子に合わせた形状等を有している。ここでは、ネジ等で固定しやすいように、貫通孔26が形成され、貫通孔26を囲むように円環状の電極部27が設けられている。電極部27の形状及び材料は、相手方端子との接続に特に適したものとすることができる。
【0010】
(接合部)
接合部21は、端子部材20と心線10との接合体である。接合部21は、端子部材20と心線10とを固定するとともに、電気的に接続している。
接合部21は、シール部30に囲まれた端子部材20の表面付近に形成されている。接合部21は、ここでは上面視で四角形状であるが、端子部材20と心線10とを接合していればよく、例えば円形状や多角形状等の他の形状であってもよい。
【0011】
(シール部)
シール部30は、端子部材20と心線10との隙間に位置し、水等の浸入を防ぐ部材である。シール部30には、図2に示すように、接合部21を囲むとともに、接合部21を露出させる開口部31が形成されている。
シール部30の外縁及び開口部31は、共に上面視で四角形状である。シール部30の外縁及び開口部31の形状は、円形状や多角形状等の他の形状であってもよく、互いに異なる形状であってもよい。
図1Aに示すように、シール部30は、開口部31を囲み、心線10と環状に重なる領域を有している。そして、図1Bに示すように、心線10と環状に重なる領域の一部は、配置面20Aからの厚みが外縁における厚みよりも小さい圧縮部32となっている。シール部30は、圧縮部32の位置で、心線10と端子部材20との間で挟持されている。シール部30は、開口部31の周囲において心線10と環状に密着しており、心線10と端子部材20との隙間を環状に塞いでいる。
【0012】
シール部30は、弾性を有するのが好ましい。シール部30が弾性を有することで、端子部材20と心線10との隙間の形状に合わせて密着することができ、端子構造1の防水性能を高めることができる。
シール部30は、弾性を有する材料、例えばゴム系やアクリル系、シリコン系の弾性を有するシール材で形成することができる。液状ガスケットを塗布して硬化させるFIPG(Formed In Place Gasket)によって形成してもよい。また、心線10の材料によっては、ジオメット(登録商標)による表面処理や防水コーティング剤等の弾性の小さい材料としてもよい。
【0013】
(固定部)
端子部材20は、電線50を固定するための固定部28を有していてもよい。固定部28は、配置面20Aとの間で電線50を挟持している。固定部28は、接合部21から離れた位置で端子部材20に電線50を固定することで、電線50にかかる外力が接合部21に伝わるのを抑え、接合部21を保護することができる。
【0014】
(電線)
電線50は、電流の経路となる部材である。電線50は、心線10と被覆40とを有している。被覆40は絶縁体であり、心線10を被覆し保護している。
【0015】
(心線)
心線10は、導体である素線11をより合わせたより線からなる線状の部材である。心線10の材料は、例えば金属であり、端子部材20と同種の金属でもよく、異種の金属でもよい。心線10は、開口部31を介して接合部21に接合されるとともに、開口部31の周囲においてシール部30と環状に密着している。
心線10は、端子部材20との間でシール部30を挟持して、配置面20Aに配置されている。図1Aに示すように、上面視において、心線10の外縁に開口部31が含まれている。また、心線10の先端部10A及び側面部10Bの外縁は、シール部30の外縁よりも内側に位置している。このため、心線10は、シール部30の外側では、端子部材20と接触していない。
【0016】
心線10は、接合部21において、端子部材20と接合されている。また、心線10は、開口部31を覆う領域で、素線11同士が接合されている中実部12を有している。中実部12は、素線11同士が接合されていることによって、外部からの水の浸入を抑えることができる。
図4に示すように、中実部12の一部であり、中実部12の外周に位置する外周部13は、配置面20Aに垂直な方向の厚みが、接合部21の位置における厚みよりもシール部30の圧縮部32の厚みD1だけ小さくなっている。外周部13は、心線10の延伸方向に垂直な断面において、単位断面積あたりの素線11の本数が、中実部12の中央部付近よりも多く、互いに接合されている素線11の密集度が高くなっている。このため、外周部13は、外部からの水の浸入をさらに抑えることができる。
【0017】
[製造方法]
次に、実施形態に係る端子構造1の製造方法を説明する。端子構造1の製造方法は、電線50に取り付ける端子部材20に、電線50の心線10が接合される接合部21を設ける領域21Rを囲むとともに、領域21Rを露出させる開口部31を有するシール部30を配置するシール部配置工程S1と、シール部30を配置した端子部材20に、開口部31を覆うとともに、開口部31の周囲においてシール部30と環状に重なるように心線10を配置する心線配置工程S2と、超音波を発する面で心線10を端子部材20の向きに押圧し、開口部31を介して心線10を端子部材20に接合するとともに、開口部31の周囲において、心線10とシール部30とを環状に密着させる接合工程S3と、を含む。
【0018】
(シール部配置工程)
シール部配置工程S1は、端子部材20の配置面20Aにシール部30を配置する工程である。図2、3Aに示すように、シール部30は、端子部材20と心線10とが接合される接合部21を設ける領域21Rを囲み、接合部21を設ける領域21Rを露出させる開口部31を有するように配置する。
なお、開口部31の大きさは、接合部21よりも大きく、後記するホーン60の当接面60Aよりも小さくなるように形成する。
【0019】
(心線配置工程)
心線配置工程S2は、端子部材20の配置面20Aに心線10を配置する工程である。図3Bに示すように、心線10は、端子部材20との間にシール部30を挟むように、端子部材20及びシール部30に重ねて配置する。
心線10は、開口部31を覆うとともに、開口部31の周囲においてシール部30と環状に重なるように配置する。このとき、上面視において、心線10の外縁に開口部31が含まれている。また、図1Aに示すように、心線10の先端部10A及び側面部10Bの外縁は、シール部30の外縁よりも内側に位置させる。
【0020】
(接合工程)
接合工程S3は、所定の振動数の超音波を発するホーン60を心線10に当接させて、押圧しながら超音波接合を行う工程である。所定の振動数は、例えば30kHzである。接合工程S3は、開口部31を介して心線10を端子部材20に接合させて、接合部21を形成するとともに、開口部31の周囲において、心線10とシール部30とを環状に密着させる。
接合工程S3は、図3Cに示すように、超音波を発するホーン60の当接面60Aを心線10に押し当てて、端子部材20の向きに押圧する。ホーン60は、上面視において、心線10の外縁に当接面60Aが含まれ、当接面60Aの外縁に開口部31が含まれるように位置させる。
【0021】
図3Cに示すホーン60を当接させている状態における心線10の先端部10A付近の一部80を図4に拡大して示す。矢印L1、L2、L3は、超音波が伝わる方向の一例を示している。ホーン60からの超音波は、素線11同士を接合させながら、接合部21へ到達する。互いに接合された素線11は、中実部12を形成する。また、心線10を介して押圧されたシール部30は、圧縮部32を形成する。そして、中実部12のホーン60と圧縮部32との間の位置には、外周部13が形成される。外周部13は、配置面20Aに垂直な方向の厚みが、接合部21の位置における厚みよりもシール部30の圧縮部32の厚みD1だけ小さい。このため、素線11の密集度が高められ、心線10の延伸方向に垂直な断面において、単位断面積あたりの素線11の本数が、中実部12の中央部付近よりも多くなっている。
接合工程S3は、端子部材20と心線10との間にシール部30を挟んだ状態で超音波接合することで、一回の超音波接合の操作で、端子構造1を製造することができる。
【0022】
本発明に係る端子構造1は、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、端子構造1の作用効果について説明する。
【0023】
本発明に係る端子構造1は、心線10を有する電線50と、電線50に取り付けられる端子部材20と、を備え、端子部材20は、心線10が接合される接合部21と、接合部21を囲むとともに、接合部21を露出させる開口部31が形成されたシール部30と、を有し、心線10は、開口部31を介して接合部21に接合されるとともに、開口部31の周囲においてシール部30と環状に密着している。
【0024】
この構成によれば、端子構造1は、端子部材20が、心線10が接合される接合部21と、接合部21を囲むとともに、接合部21を露出させる開口部31が形成されたシール部30を有することで、防水の対象となる接合部21のみを囲む位置に、シール部30を配置することができる。また、心線10が、開口部31を介して接合部21に接合されるとともに、開口部31の周囲においてシール部30と環状に密着していることで、開口部31の周囲から接合部21への被水を抑えることができる。
【0025】
本発明に係る端子構造1は、心線10は、素線11をより合わせたより線からなり、開口部31を覆う領域で、素線11同士が接合されているのが好ましい。
この構成によれば、開口部31を覆う領域で、より合わされている素線11同士が接合されていることで、素線11同士の隙間を塞ぎ、心線10自身によって外部から接合部21への水の浸入を抑えることができる。このため、素線11同士が接合されている領域における防水用の部材が不要となり、部材及び工数を削減し、端子を小型化することができる。
【0026】
本発明に係る端子構造1は、心線10の端部は、シール部30の外縁よりも内側に位置するのが好ましい。
この構成によれば、心線10の端部が、シール部30の外縁よりも内側に位置することで、シール部30の外側における心線10と端子部材20との接触を抑え、電食を抑制することができる。
【0027】
端子構造1は、端子部材を覆う防水用のカバー等を不要とすることで、端子を小型化することができる。そして、端子部材が長くなる等の端子部材の形状に関する制限を緩和させて、電線の配置の自由度を向上させることができる。端子構造1は、防水用の部材及び工数を削減し、端子部材20と心線10とが異種金属の場合でも、効果的に電食を抑制することができる。
【0028】
以上、本実施形態に係る端子構造1について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、心線10は単線であってもよい。心線10が単線の場合、配置面20Aの形状は、心線10の外面の形状に合わせた形状とすればよい。
【符号の説明】
【0029】
1 端子構造
10 心線
10A 先端部(心線)
10B 側面部(心線)
11 素線
12 中実部
13 外周部
20 端子部材
20A 配置面
21 接合部
25 篏合部
26 貫通孔
27 電極部
28 固定部
30 シール部
31 開口部
32 圧縮部
40 被覆
50 電線
60 ホーン
60A 当接面
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4