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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157341
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】抗薬物抗体測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20221006BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20221006BHJP
【FI】
G01N33/53 N ZNA
C12Q1/68
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061507
(22)【出願日】2021-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-06
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関野 哲男
(72)【発明者】
【氏名】大森 茜
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR56
4B063QS33
4B063QX02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来法と比較して、簡便かつ安価な抗薬物抗体の測定法を提供する。
【解決手段】捕獲核酸及びトレーサー核酸を使用する二重抗原架橋イムノアッセイ法を提供する。二重抗原架橋イムノアッセイ法において捕獲核酸及びトレーサー核酸を使用することにより、抗薬物抗体の測定を簡便かつ安価に行うことができる。また、トレーサー核酸を使用することにより、核酸を利用した高感度検出方法を採用することが可能になる。
【選択図】図1-4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて前記捕獲核酸、前記抗薬物抗体、及び前記トレーサー核酸の複合体(「捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体」と呼ぶことがある)を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する; 及び
(ii)前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を検出する工程。
【請求項2】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する; 及び
(ii)増感法を用いて前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を検出する工程。
【請求項3】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する;
(ii)前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブを接触させて、前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとのポリマー複合体を形成する工程; 及び
(iii)前記ポリマー複合体を検出する工程。
【請求項4】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する捕獲核酸と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有するトレーサー核酸とを接触させる工程、
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される;
(ii)前記捕獲核酸を捕捉し、前記複合体の形成に関与せず遊離の状態で存在する前記トレーサー核酸を当該複合体と分離し、除去する工程; 及び
(iii)前記分離・除去工程の後、分離・除去されずに残存するトレーサー核酸を検出することにより、試料中の抗薬物抗体を検出する工程。
【請求項5】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する捕獲核酸と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有するトレーサー核酸とを接触させる工程、
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される;
(ii)前記捕獲核酸を捕捉する工程、
ここで、前記捕捉工程は前記複合体の形成前、形成後、形成途中、又は形成と同時に行われる;
(iii)前記捕獲核酸を捕捉し、前記複合体の形成に関与せず遊離の状態で存在する前記トレーサー核酸を前記複合体と分離し、除去する工程; 及び
(iv)前記分離・除去工程の後、分離・除去されずに残存するトレーサー核酸を検出することにより、試料中の抗薬物抗体を検出する工程。
【請求項6】
捕獲核酸を捕捉する工程が、捕獲核酸の固相への結合であり、分離・除去する工程が、捕獲核酸が結合した固相の洗浄である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
検出される抗薬物抗体は、試料中にIgG、IgM、IgD、IgE、又はIgAのIgクラスの抗体が存在する場合、2以上のIgクラスを一の測定で検出する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
捕獲核酸及びトレーサー核酸における前記抗薬物抗体が結合するエピトープが同じである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
捕獲核酸及びトレーサー核酸は、核酸鎖の鎖長が同一であるか又はトレーサー核酸の核酸鎖の鎖長が捕獲核酸より1mer~60mer長いものである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
トレーサー核酸は、核酸鎖の鎖長が捕獲核酸より10mer~50mer長いものである、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させる工程は、試料と捕獲核酸を接触させる第1の工程と、第1の工程の産物とトレーサー核酸を接触させる第2の工程を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法:
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、第1の工程で捕獲核酸-抗薬物抗体複合体が形成され、第2の工程で捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される。
【請求項12】
前記第1の複合体を形成する工程と第2の複合体を形成する工程が同時に行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記捕獲核酸とトレーサー核酸の一方又は両方が化学修飾された核酸である、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記化学修飾された核酸が、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、モルフォリノオリゴヌクレオチド、ボラノフォスフェートオリゴヌクレオチド、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)、又は2’-F-RNAである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗薬物抗体が抗核酸医薬抗体である請求項1~14のいずれかに記載の方法
【請求項16】
試料が血液由来成分である請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
以下を含む、試料中の抗薬物抗体を検出するキット:
(1)捕獲核酸;
(2)トレーサー核酸; 及び
(3)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ;
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する。
【請求項18】
捕獲核酸及びトレーサー核酸の前記抗薬物抗体に対するエピトープが同じである、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
以下を特徴とする、捕獲核酸とトレーサー核酸とを含む二重抗原架橋イムノアッセイを用いて試料中の抗薬物抗体を免疫学的に測定するための方法:
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗薬物抗体の測定方法と、そのような測定方法に用いるためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
抗薬物抗体の測定方法として、捕獲薬物抗体とトレーサー薬物抗体を使用する二重抗原架橋イムノアッセイ法が知られている(特許文献1)。特許文献1の方法は、捕獲薬物抗体が、固相に結合される抗体部位が異なる、同じアミノ酸配列を有する少なくとも2つの該薬物抗体を含む該薬物抗体の混合物であること、及び、トレーサー薬物抗体が、検出可能な標識に結合される抗体部位が異なる、同じアミノ酸配列を有する少なくとも2つの該薬物抗体を含む該薬物抗体の混合物であることを特徴としている。
しかし、特許文献1の方法は、上記したように固相又は検出可能な標識に結合される抗体の部位が異なる、同じアミノ酸配列を有する薬物抗体を、捕獲薬物抗体用及びトレーサー薬物抗体用に、それぞれ2種以上ずつ、合計4種以上を調製することが必須であるため、両抗体の調製に高額な費用及び長い時間が必要になる。また、当該薬物抗体を使用したイムノアッセイ法の性能管理及び試薬の品質管理も複雑になる。
したがって、より簡便かつ安価な抗薬物抗体の測定方法に対するニーズが存在する。
本発明者らは、捕獲核酸及びトレーサー核酸を使用することにより、簡便かつ安価に抗薬物抗体を測定できることを見出し、本発明を完成した。捕獲核酸及びトレーサー核酸は、極めて簡便かつ安価に化学合成することが可能であり、かつ、多種多様な修飾も容易に行うことができる。更にアッセイ法の性能管理及び試薬の品質管理も簡便に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4902674号
【特許文献2】特許第3267576号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来法と比較して、簡便かつ安価な抗薬物抗体の測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するために、捕獲核酸及びトレーサー核酸を使用する二重抗原架橋イムノアッセイ法を提供する。即ち、本発明は以下の〔実施態様1〕~〔実施態様19〕の構成からなる。
〔実施態様1〕
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて前記捕獲核酸、前記抗薬物抗体、及び前記トレーサー核酸の複合体(「捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体」と呼ぶことがある)を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する; 及び
(ii)前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を検出する工程。
〔実施態様2〕
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する; 及び
(ii)増感法を用いて前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を検出する工程。
〔実施態様3〕
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する;
(ii)前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブを接触させて、前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとのポリマー複合体を形成する工程; 及び
(iii)前記ポリマー複合体を検出する工程。
〔実施態様4〕
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する捕獲核酸と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有するトレーサー核酸とを接触させる工程、
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される;
(ii)前記捕獲核酸を捕捉し、前記複合体の形成に関与せず遊離の状態で存在する前記トレーサー核酸を当該複合体と分離し、除去する工程; 及び
(iii)前記分離・除去工程の後、分離・除去されずに残存するトレーサー核酸を検出することにより、試料中の抗薬物抗体を検出する工程。
〔実施態様5〕
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する捕獲核酸と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有するトレーサー核酸とを接触させる工程、
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される;
(ii)前記捕獲核酸を捕捉する工程、
ここで、前記捕捉工程は前記複合体の形成前、形成後、形成途中、又は形成と同時に行われる;
(iii)前記捕獲核酸を捕捉し、前記複合体の形成に関与せず遊離の状態で存在する前記トレーサー核酸を前記複合体と分離し、除去する工程; 及び
(iv)前記分離・除去工程の後、分離・除去されずに残存するトレーサー核酸を検出することにより、試料中の抗薬物抗体を検出する工程。
〔実施態様6〕
捕獲核酸を捕捉する工程が、捕獲核酸の固相への結合であり、分離・除去する工程が、捕獲核酸が結合した固相の洗浄である、実施態様4又は5に記載の方法。
〔実施態様7〕
検出される抗薬物抗体は、試料中にIgG、IgM、IgD、IgE、又はIgAのIgクラスの抗体が存在する場合、2以上のIgクラスを一の測定で検出する、実施態様1~6のいずれかに記載の方法。
〔実施態様8〕
捕獲核酸及びトレーサー核酸における前記抗薬物抗体が結合するエピトープが同じである、実施態様1~7のいずれかに記載の方法。
〔実施態様9〕
捕獲核酸及びトレーサー核酸は、核酸鎖の鎖長が同一であるか又はトレーサー核酸の核酸鎖の鎖長が捕獲核酸より1mer~60mer長いものである、実施態様1~8のいずれかに記載の方法。
〔実施態様10〕
トレーサー核酸は、核酸鎖の鎖長が捕獲核酸より10mer~50mer長いものである、実施態様1~9のいずれかに記載の方法。
〔実施態様11〕
試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させる工程は、試料と捕獲核酸を接触させる第1の工程と、第1の工程の産物とトレーサー核酸を接触させる第2の工程を含む、実施態様1~10のいずれかに記載の方法:
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、第1の工程で捕獲核酸-抗薬物抗体複合体が形成され、第2の工程で捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される。
〔実施態様12〕
前記第1の複合体を形成する工程と第2の複合体を形成する工程が同時に行われる、実施態様11に記載の方法。
〔実施態様13〕
前記捕獲核酸とトレーサー核酸の一方又は両方が化学修飾された核酸である、実施態様1~12のいずれかに記載の方法。
〔実施態様14〕
前記化学修飾された核酸が、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、モルフォリノオリゴヌクレオチド、ボラノフォスフェートオリゴヌクレオチド、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)、又は2’-F-RNAである実施態様13に記載の方法。
〔実施態様15〕
前記抗薬物抗体が抗核酸医薬抗体である実施態様1~14のいずれかに記載の方法
〔実施態様16〕
試料が血液由来成分である実施態様1~15のいずれかに記載の方法。
〔実施態様17〕
以下を含む、試料中の抗薬物抗体を検出するキット:
(1)捕獲核酸;
(2)トレーサー核酸; 及び
(3)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ;
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する。
〔実施態様18〕
捕獲核酸及びトレーサー核酸の前記抗薬物抗体に対するエピトープが同じである、実施態様17に記載のキット。
〔実施態様19〕
以下を特徴とする、捕獲核酸とトレーサー核酸とを含む二重抗原架橋イムノアッセイを用いて試料中の抗薬物抗体を免疫学的に測定するための方法:
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する。
【発明の効果】
【0006】
二重抗原架橋イムノアッセイ法において捕獲核酸及びトレーサー核酸を使用することにより、抗薬物抗体の測定を簡便かつ安価に行うことができる。また、トレーサー核酸を使用することにより、PCR法やパルサー法(特許文献2)などの核酸を利用する高感度検出方法を採用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の基本工程の一態様を示す工程模式図である。
図2】実施例1のシグナル値を示すグラフである。
図3】実施例2のシグナル値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において「測定方法」、「検出方法」の用語は、特に断らない限り同一の概念を含む最も広義な用語として使用している。
従って、本発明の方法は、検出されるシグナルの強度を測定することにより、抗薬物抗体の測定方法、検出方法、定量測定方法、又は定性測定方法として使用することが出来る。
【0009】
本明細書において、「抗薬物抗体」という用語は、薬物に対して向けられる抗体を意味する。そのような抗体は、例えば、薬物が投与された患者の免疫原性反応として薬物治療の際に産生される可能性がある。測定対象の「抗薬物抗体」は、生体試料中に含まれるものであれば特に限定はないが、好ましくは、IgG、IgM、IgD、IgE、又はIgAであり、更に好ましくはIgG又はIgMである。
【0010】
上記抗薬物抗体としては、「抗核酸医薬抗体」が挙げられる。当該「抗核酸医薬抗体」における「核酸医薬」としては、公知の「siRNA」、「miRNA」、「アンチセンス」、「アプタマー」、「デコイ」、「リボザイム」、「CpGオリゴ」、「その他 (自然免疫の活性化を目的としたPolyI:PolyC(二本鎖RNA)、アンチジーンなど)」などを挙げることができる。また、当該「核酸医薬」には、「遺伝子治療薬における遺伝子が組み込まれたベクター」や「遺伝子ワクチンに含まれる遺伝子」、更にデフィブロチドナトリウム(CAS 登録番号:83712-60-1)のようなポリデオキシリボヌクレオチド化合物など、有効成分として核酸鎖を含む医薬も含むものとする。また、当該「核酸医薬」は、2以上のヌクレオチドで構成されるオリゴ核酸を意味し、オリゴ核酸を構成する核酸は、天然の構造である以外に非天然の構造(いわゆる核酸アナログなど)であってもよい。ただし、5-FU(5-フルオロウラシル)などの核酸アナログそれ自体は本発明における「核酸医薬」には含まない。本発明の「核酸医薬」は一本鎖核酸であっても二本鎖核酸であってもよい。また、二本鎖核酸の場合には、ヘテロ二本鎖核酸であってもよい。なお本明細書において「核酸」の用語は、ヌクレオチドの重合体を意味するが、文脈によりヌクレオチドそれ自体を指す場合もある。
【0011】
上記「核酸医薬」に対して抗薬物抗体が産生された場合、当該抗薬物抗体が結合する核酸医薬におけるエピトープは、オリゴ核酸中の特定のヌクレオチドの、塩基部分、糖部分、リン酸部分であることができる。また、エピトープを構成する核酸の数は、特定のヌクレオチド単独である場合、2以上のヌクレオチドで構成される核酸(オリゴ核酸)である場合の両方であることができる。また、オリゴ核酸を核酸医薬とするための、相補結合の強弱の調節、生分解耐性の調節、DDSの調節などを目的とする修飾、例えば、後記するヌクレオチド中の糖やリン酸が修飾されていたり、オリゴ核酸が環状構造やヘアピン構造などの構造を有していたり、オリゴ核酸の配列中に核酸以外の分子が含まれていたり、当該核酸以外の分子がオリゴ核酸との間で形成する立体構造が含まれていたり、ポリエチレングリコールの付加などが施されていたりする場合には、エピトープは当該修飾部分であってもよい。
【0012】
本発明の検出方法に使用する「試料」は、生体由来のものであり、抗薬物抗体が存在しうるものであれば特に限定は無く、好ましくは、ヒト、サル、イヌ、ブタ、ラット、モルモット、又はマウスの全血、血清、血漿、リンパ液、又は唾液であり、特に好ましくはヒトの血液由来成分、例えば、全血、血清、又は血漿である。これらは水又は緩衝液で希釈されて用いられることもある。また、本発明の試料には、既知の濃度の抗薬物抗体を水、緩衝液又は抗薬物抗体を含まない生体由来成分(例えば、血液由来成分)で希釈、濃度調整したものも含む。
【0013】
上記した試料は、必要に応じて前処理を行うことができる。例えば、酸や界面活性剤と混合し、試料中の抗薬物抗体の性状を変化させたり、特定の分子量画分を篩い分けられるフィルターでろ過して、試料中の、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体の形成に影響を与える物質を分離、除去することなどが挙げられる。
【0014】
上記緩衝液としては、一般的に使用されるものであればよく、例えばトリス塩酸、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸、グルタル酸、マレイン酸、グリシン及びそれらの塩などや、MES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPESなどのグッド緩衝液などが挙げられ、水としては、RNase, DNase free waterなどが挙げられる。なお、緩衝液の調製などの際に使用される水としてもRNase, DNase free waterが好適である。
【0015】
本発明の検出方法に使用する「捕獲核酸」及び「トレーサー核酸」は、それぞれ、化学的に合成可能なものであれば特に限定はなく、好ましくは、DNA (deoxyribonucleic acid)、RNA(ribonucleic acid)、PNA(peptide nucleic acid)、又は化学修飾された核酸であり、非天然のヌクレオチドや任意の修飾基を含みうる。
【0016】
化学修飾は核酸の塩基部分、糖部分、リン酸部分のいずれの部位も対象となりうる。上記化学修飾された核酸としては、例えば、ホスホロチオエート修飾(S化)、2’-F修飾、2’-O-Methyl(2’-OMe)修飾、2’-O-Methoxyethyl(2’-MOE)修飾、モルフォリノ修飾、LNA修飾、BNACOC修飾、BNANC修飾、ENA修飾、cEtBNA修飾などが挙げられる。
【0017】
このうちでも、好ましくは、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、モルフォリノオリゴヌクレオチド、ボラノフォスフェートオリゴヌクレオチド、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)、又は2’-F-RNAである。
【0018】
上記核酸は一本鎖又は二本鎖の何れでも良い。
【0019】
本発明の検出方法に使用する「捕獲核酸」及び「トレーサー核酸」は、上記した「核酸医薬」それ自体を使用することができる。また、抗薬物抗体が結合するエピトープを構造中に含むことを限度として、それぞれ、任意の配列を含みうる。「捕獲核酸」の配列と「トレーサー核酸」の配列は、互いに同一でも良いし、異なってもよい。
【0020】
本発明の検出方法に使用する「捕獲核酸」及び「トレーサー核酸」が有する抗薬物抗体が結合しうるエピトープは、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を検出原理とするアフィニティーセンサーを使用する方法や、抗原競合法などによって特定することができる。本発明の「捕獲核酸」及び「トレーサー核酸」は、好ましくは、抗薬物抗体に対して同一のエピトープを有する。
【0021】
捕獲核酸は、1種又は2種以上であり、固相に結合される部位が異なる2種以上の組合せであっても良い。また、トレーサー核酸は、1種又は2種以上であり、2種以上の組合せであっても良い。
【0022】
本発明の検出方法に使用する「捕獲核酸」は、後述する固相に結合させるための化学修飾を含んでいてもよく、「トレーサー核酸」は、後述する抗薬物抗体を検出するための標識を結合させるための化学修飾を含んでいてもよい。
【0023】
本発明における「捕獲核酸」及び「トレーサー核酸」の核酸鎖長は、特に限定されない。核酸医薬として十数mer~数十merの鎖長のものが報告されており、本発明の「捕獲核酸」及び「トレーサー核酸」の核酸鎖長は、これと対応させることができる。また、本発明の検出方法に好適な核酸鎖の鎖長は、抗薬物抗体検出における所望の特異性、感度などを考慮し適宜に設計することができる。好ましい一例として、捕獲核酸及びトレーサー核酸の鎖長が同一であるか又はトレーサー核酸の核酸鎖の鎖長が捕獲核酸より1mer~60mer長い場合が挙げられ、更に好ましい例としてトレーサー核酸の核酸鎖の鎖長が捕獲核酸より5mer~55mer、10mer~50mer、15mer~45mer、20mer~40mer、25mer~35mer、25mr~40mer、25mer~45mer、25mer~50mer、30mer~40mer、30mer~45mer、30~50mer、35mer~45mer、35mer~50mer長い場合が挙げられる。
【0024】
上記核酸鎖の鎖長のうちには、抗薬物抗体産生の原因となった抗薬物抗体が結合するエピトープを含む核酸医薬に由来する配列を含み、更に抗薬物抗体が結合するエピトープと同一の配列、類似の配列、又は類似の構造を有さない配列が含まれ得る。トレーサー核酸の核酸鎖長が、捕獲核酸の核酸鎖長より長い場合には、当該長い核酸鎖長の部分は、抗薬物抗体が結合するエピトープと同一の配列、類似の配列、又は類似の構造を有さない配列であることが好ましい。
【0025】
本明細書において、「接触させる」、あるいは「接触工程」という用語は、ある物質と他の物質との間で、共有結合、イオン結合、金属結合、非共有結合などの化学結合を形成できるように、これらの物質を互いに近傍に置くことを意味する。本発明の一態様においては、本発明の検出方法における、試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸との「接触」工程は、液体状の試料と、捕獲核酸を含む溶液と、トレーサー核酸を含む溶液を、何れかの組合せで混合することにより行われる。
【0026】
本発明の検出方法に使用する捕獲核酸及びトレーサー核酸が有する「エピトープ」は、上記したとおりであり、抗薬物抗体が結合するエピトープであれば特に限定はないが、好ましくは、核酸、ポリペプチド、糖鎖、タンパク質、高分子化合物、中分子化合物、若しくは低分子化合物、又はそれらの一部である。
【0027】
本発明の検出方法に使用する「増感法」は、例えば、PCR法、チラミドシグナル増幅法、酵素増感法、分岐DNA法、デンドリマー法、パルサー法などが挙げられ、好ましくは、パルサー法である。
【0028】
本明細書において、「自己凝集」という用語は、複数の第1のオリゴヌクレオチドが、第2のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより複合体を形成した状態、及び、複数の第2のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより複合体を形成した状態を意味する。
【0029】
本発明の検出方法に使用する「第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ」は、第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドが互いにハイブリダイズ可能な相補的塩基配列領域を有し、自己凝集反応によるオリゴヌクレオチドポリマーの形成が可能なオリゴヌクレオチドをいう。好ましくは、前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方は、標識物質により標識されている。ここで、「ハイブリダイズ可能」とは、一態様においては、当該相補的塩基配列領域において完全に相補的であることを意味する。また別の一態様においては、1つ又は2つのミスマッチを除いて、当該相補的塩基配列領域において相補的であることを意味する。
【0030】
自己凝集可能な一対のプローブにはあらかじめ検出のための標識物質で標識しておくことも可能である。そのような標識物質として、放射性同位元素、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光物質、発光物質、色素、又は金属錯体などが好適な例として挙げられる。
【0031】
好ましくは、当該標識物質はルテニウム錯体、ビオチン、又はジゴキシゲニンであり、当該オリゴヌクレオチドの標識は、好ましくは5’末端又は3’末端を標識することにより行われる。
【0032】
「自己凝集可能」な一対のプローブをより具体的に説明すると、第1のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含むオリゴヌクレオチドであり、第2のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’、及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含むオリゴヌクレオチドということになる。
【0033】
捕獲核酸を固相に結合させる場合の「固相」としては、不溶性の微粒子、マイクロビーズ、蛍光微粒子、磁気粒子、マイクロプレート、マイクロアレイ、スライドガラス、電気伝導性基板などの基板などが挙げられ、好ましくは、磁気粒子又は電気伝導性基板である。
【0034】
捕獲核酸の固相への結合は、化学結合による方法、生物学的相互作用による方法、物理吸着による方法などが挙げられる。化学結合による方法では、例えば、カルボキシル基でコートされた固相を用いる場合、捕獲核酸に予め標識したアミノ基との間でカップリング反応をさせることができる。生物学的相互作用による方法では、例えば、固相にコートしたストレプトアビジンと、捕獲核酸に予め修飾したビオチンとの間の結合力を利用することができる。また、物理吸着による方法では、例えば、負の電荷を有する固相を用いた場合、捕獲核酸にアミノ基など正の電荷を有する物質を標識することで、静電気的に固相に吸着させることができる。
【0035】
捕獲核酸が結合した固相を「洗浄」する方法は特に限定されず、例えば、固相に任意の量の洗浄液を加え、静置又は緩やかに振盪後、固相内の溶液を分離し、除去することにより行う。溶液の分離・除去方法は、好ましくは、デカント法、遠心分離法、吸引法などが挙げられる。
【0036】
溶液を「デカント法」により分離し、除去する工程は、通常、固相を傾けて溶液を取り除くことにより行う。
【0037】
溶液を「遠心分離」法により分離し、除去する工程は、通常、20~30℃で0.2~5分間、500~3000×gの遠心、23~28℃で0.5~2分間、800~1500×gの遠心、好ましくは、25℃で1分間、1000×gの遠心にて上清を生成させ、それを除去することによりに行う。
【0038】
溶液を「吸引」法により分離し、除去する工程は、通常、マイクロピペット又はアスピレーターを用いて行う。より具体的には、マイクロピペット又はアスピレーターの製造会社の取扱説明書に従えばよい。
【0039】
捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成された後に、当該複合体の形成に関与せず、遊離の状態で存在するトレーサー核酸を捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体から「分離・除去」するためには、好ましくは、デカント法、遠心分離法、吸引法を用いることが挙げられる。具体的な分離、除去方法は、溶液の分離、除去方法と同じである。 トレーサー核酸を検出する方法としては、濁度法、吸光度法、蛍光測定法、電気化学発光法、フローサイトメトリー法が挙げられ、好ましくは、電気化学発光法が挙げられる。
【0040】
電気化学発光法としては、例えば、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が結合した電気伝導性基板に電気エネルギーを加え、トレーサー核酸に予め標識されたルテニウム錯体が還元することにより発する発光を検出することにより行う。
【0041】
本発明において、試料中の抗薬物抗体を検出するキットには、少なくとも以下の構成が含まれる。
(1)捕獲核酸
(2)トレーサー核酸
(3)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する。
各構成については、上述のとおりである。
【0042】
本発明の基本工程の一態様を、図1を参照して説明する。
まず、抗薬物抗体が含まれうる試料、捕獲核酸を準備する。最初に、ビオチン((図1-1)中、星印)で標識された捕獲核酸をストレプトアビジンコーティングプレート(固相)に結合させる。次に、抗薬物抗体と捕獲核酸を接触させる(図1-1)。捕獲核酸のエピトープに抗薬物抗体が結合し、捕獲核酸-抗薬物抗体複合体を形成する。
【0043】
前記捕獲核酸-抗薬物抗体複合体を含む試料に、トレーサー核酸を接触させる(図1-2)。トレーサー核酸は、一実施態様においては、捕獲核酸の3’末端に一対の自己凝集プローブの一方の配列と部分的に同じ配列を含む。トレーサー核酸のエピトープに抗薬物抗体が結合し、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成する。
【0044】
これらの複合体形成は、図1で例示した(1)捕獲核酸と抗薬物抗体の複合体を先ず形成させ、さらにトレーサー核酸と複合体を形成させる以外の順序で形成させることもできる。すなわち、(2)抗薬物抗体とトレーサー核酸とを先ず接触させて、抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成した後、当該複合体を含む試料と捕獲核酸を接触させ、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成させたり、(3)捕獲核酸、抗薬物抗体、トレーサー核酸をほぼ同時に接触させて3者の複合体を形成させることもできる。上記の(1)~(3)において、捕獲核酸を固相に結合させる工程は、適宜なタイミングで2者の複合体、又は3者の複合体の形成前、形成後、形成途中、又は形成と同時に行うことができる。前記3者をほぼ同時に接触させて3者の複合体を形成させる工程は、捕獲核酸をプレートなどの固相に結合させる前に行うことが好ましい。
【0045】
一実施態様においては、前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を含む試料に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブを接触させて、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとの複合体を形成する(いわゆるパルサー反応、図1-3)。
【0046】
ここで、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブは、第1のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含むオリゴヌクレオチドであり、第2のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に核酸領域X’、核酸領域Y’、及び核酸領域Z’を含み、XとX’、YとY’、ZとZ’は相互に相補的である(以下、当該核酸領域を単に、X、Y、Z、X’、Y’、Z’ということがある)。また、第1と第2のオリゴヌクレオチドの5’末端はジゴキシゲニン((図1-3)中、ひし形)で標識されている。捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体のトレーサー核酸のY、Zに第2のオリゴヌクレオチドのY’、Z’がハイブリダイズし、第1のオリゴヌクレオチドのX、Y、Zに第2のオリゴヌクレオチドのX’、Y’、Z’がそれぞれハイブリダイズする。そして次々とXとX’、YとY’、ZとZ’がハイブリダイズを繰り返すことで、自己凝集プローブのオリゴヌクレオチドポリマーが形成される。
【0047】
一実施態様においては、前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体及び自己凝集した第1及び第2のオリゴヌクレオチドとの複合体を含む試料とルテニウム錯体標識抗ジゴキシゲニン抗体を接触させる(図1-4)。ルテニウム錯体からの発光を検出することにより、抗薬物抗体の濃度などを測定することができる。
【0048】
なお、パルサー反応を行う前の捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を検出することにより抗薬物抗体を検出することも可能である。
【0049】
パルサー法の具体例は、国際公開2013/172305号の図4図14などに示されており、ダイマー形成用プローブなどを用いて当業者常識にもとづき適宜変形して本発明の自己凝集反応に応用することが可能である。
【0050】
本発明の方法は、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が、抗薬物抗体が結合する捕獲核酸及びトレーサー核酸のエピトープを介して複合体を形成するので極めて特異性が高い。また、複合体の形成に係る抗薬物抗体のIgクラスを選ばない。これより、試料中にIgG、IgM、IgD、IgE、又はIgAのIgクラスの抗薬物抗体が存在する場合、2以上のIgクラスを一の測定で検出することができる。ここで一の測定とは、試料と捕獲核酸及びトレーサー核酸との接触が1回であることを意味する。本発明の検出方法は、この特徴により、薬物(核酸医薬)の投与間隔、期間や、試料の採取時期にかかわらず、Igクラスのスイッチの影響を受けずに抗薬物抗体の存在を鋭敏に検出することができる。
【0051】
これより本発明は、核酸医薬を投与されている個体における核酸医薬の投与方針を決定するためのデータ取得や、核酸医薬を開発する際の、抗核酸医薬抗体産生の可能性確認、当該抗核酸医薬抗体が結合するエピトープの特定による核酸医薬自体の設計にも使用することが可能である。
【0052】
以下、本発明をより理解しやすいように具体的な態様を実施例をもって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0053】
〔実施例1〕
1. 材料及び方法
(1) 標的抗体
測定対象の抗体としては、抗5-メチルシトシン抗体(抗5-mC抗体)(アブカム、製品番号ab10805)を用いた。上記の標的抗体は、抗体希釈液を用いて0.1、0.5、1μg/mLに調製して用いた。標的抗体を含まないブランクサンプルも用意した。
(1-1)抗体希釈液の組成
1xPBS-TP[1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300]、1% BSA(ウシ血清アルブミン)
(2) 捕獲核酸
捕獲核酸としては、Hasegawaら(Anal Sci. 2016;32(6):603-6)が使用したM-DNA1の配列の3′末端がビオチン標識された以下のM-DNA1-3Bを用いた。M-DNA1-3Bの配列は、5′-TACGTTATCAGACTGATGTTGA-3′(配列番号1)である。核酸は日本遺伝子研究所に合成を依頼した(HPLC精製グレード)。上記の核酸は、Hasegawaらと同様に、5′末端から3番目の塩基(シトシン)は5-メチルシトシンである。M-DNA1-3BについてはTE(10mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA(pH8.0))を用いて1pmol/μLに調製して用いた。
(3) トレーサー核酸
トレーサー核酸としては、捕獲核酸と同じ塩基配列(22塩基)及びシグナル増幅用プローブ(HCP-1)の一部と同じ塩基配列からなる、3′末端がアミノ修飾されたトレーサー核酸(AP-ADA-M-DNA1-ZYZ-3N)を用いた。核酸は日本遺伝子研究所に合成を依頼した(HPLC精製グレード)。上記の核酸は、Hasegawaらと同様に、5′末端から3番目の塩基(シトシン)は5-メチルシトシンである。
<AP-ADA-M-DNA1-ZYZ-3Nの配列>
5′- TACGTTATCAGACTGATGTTGAGATATAAGGAGTGGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -(NH2)-3′(塩基部分は配列番号2)
(4) 標的抗体-捕獲核酸-トレーサー核酸複合体の形成(ブリッジング反応)
標的抗体50μLに、ブリッジング反応液を50μL加え、計100μLとし、600rpmで振盪しながら37℃で3時間反応させた。
(4-1)ブリッジング反応液の組成
1xPBS-TP[1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300]49.8μL、10pmol/μL AP-ADA-M-DNA1-ZYZ-3N 0.1μL、1pmol/μL M-DNA1-3B 0.1μL
(5)測定プレートのブロッキング
ストレプトアビジンが固定された測定プレート(Meso Scale Diagnostics、製品番号L45SA-1)に、ブロッキング液を150μL加え、600rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた後、1xPBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(5-1)ブロッキング液の組成
1xPBS-TP[1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300]、3% BSA
(5-2)1xPBS-TPの組成
1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300
(6)測定プレートへの標的抗体-捕獲核酸-トレーサー核酸複合体の固定
ブリッジング反応後の反応液75μLをブロッキング後の測定プレートへ加え、600rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた後、1xPBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(6-1)1xPBS-TPの組成
1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300
(7)検出補助反応
標的抗体-捕獲核酸-トレーサー核酸複合体固定後の測定プレートに、検出補助反応液を50μL加え、600rpmで振盪しながら40℃で1時間反応させた後、1xPBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(7-1)検出補助液の組成
ハイブリダイゼーション液[189.3mM Tris-HCl (pH7.5)、2.4xPBS[328.8mM Sodium Chloride、19.44mM Disodium Phosphate、6.432mM Potassium Chloride、3.528mM Potassium Dihydrogenphosphate]、3.6mM EDTA(pH8.0)、0.12% Tween20]21μL、10x supplement-T[500mM Tris-HCl(pH8.0)、40mM EDTA(pH8.0)、8% Tween20、1.5ppm ProClin300]8μL、20pmol/μL HCP-2 0.42μL、Nuclease-Free Water 20.46μL
(7-2)1xPBS-TPの組成
1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300
(7-3)HCP-2の塩基配列
本実施例1に使用する核酸プローブ(HCP-2)は、自己凝集可能な一対のプローブのうちAP-ADA-M-DNA1-ZYZ-3Nの塩基配列の一部に相補的な配列を含み、5′末端がジゴキシゲニンで標識されている。
<HCP-2の塩基配列>
5′-(DIG)- GTCCTGATTGTTGCTTCATCGGTATCCACTCCTTATATC -3′(塩基部分は配列番号3)
(8)検出抗体反応
検出補助反応後の測定プレートに、検出抗体反応液を50μL加え、600rpmで振盪しながら30℃で30分間反応させた後、1xPBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(8-1)検出抗体反応液の組成
1xPBS-TP (1% BSA)[1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300、1% BSA]49.7μL、100μg/mL Ru-Anti-DIG, Fab fragment 0.3μL
(8-2)Ru-Anti-DIG, Fab fragmentの調製
Anti-Digoxigenin, Fab fragments(メルク、製品番号11214667001)に、MSD GOLD SULFO-TAG NHS-Ester(Meso Scale Diagnostics、製品番号R91AO-1)を、第一級アミンを介して結合させることにより調製した。結合方法はMeso Scale Diagnostics社の製品添付プロトコールに従った。
(8-3)1xPBS-TPの組成
1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300
(9)検出
検出抗体反応後の測定プレートに0.5xRead Buffer[[MSD GOLD Read Buffer A(Meso Scale Diagnostics、製品番号R92TG-1)]を滅菌精製水で2倍希釈]150μLを加え、Meso QuickPlex SQ 120MMシステム(Meso Scale Diagnostics社製)を用いてRu-Anti-DIG, Fab fragmentからの発光量を測定し、標的抗体のシグナルを検出した。
(10)結果
測定結果を図2に示す。抗5-メチルシトシン抗体の濃度の上昇に応じてシグナルが増大した。
【0054】
〔実施例2〕
1.材料及び方法
(1) 標的抗体
測定対象の抗体としては、実施例1で使用した抗5-メチルシトシン抗体(抗5-mC抗体)(アブカム、製品番号ab10805)を用いた。上記の標的抗体は、抗体希釈液を用いて0.1、0.5、1μg/mLに調製して用いた。標的抗体を含まないブランクサンプルも用意した。
(1-1)抗体希釈液の組成
1xPBS-TP[1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300]、1% BSA
(2) 捕獲核酸
捕獲核酸としては、実施例1で使用したM-DNA1-3Bを使用した。M-DNA1-3BについてはTE(10mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA(pH8.0))を用いて1pmol/μLに調製して用いた。
(3) トレーサー核酸
トレーサー核酸としては、実施例1で使用したAP-ADA-M-DNA1-ZYZ-3Nを用いた。
(4)標的抗体-捕獲核酸-トレーサー核酸複合体の形成(ブリッジング反応)
標的抗体50μLに、ブリッジング反応液を50μL加え、計100μLとし、600rpmで振盪しながら37℃で3時間反応させた。
(4-1)ブリッジング反応液の組成
1xPBS-TP[1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300]49.8μL、10pmol/μL AP-ADA-M-DNA1-ZYZ-3N 0.1μL、1pmol/μL M-DNA1-3B 0.1μL
(5)測定プレートのブロッキング
ストレプトアビジンが固定された測定プレート(Meso Scale Diagnostics、製品番号L45SA-1)に、ブロッキング液を150μL加え、600rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた後、1xPBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(5-1)ブロッキング液の組成
1xPBS-TP[1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300]、3% BSA
(5-2)1xPBS-TPの組成
1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300
(6)測定プレートへの標的抗体-捕獲核酸-トレーサー核酸複合体の固定
ブリッジング反応後の反応液75μLをブロッキング後の測定プレートへ加え、600rpmで振盪しながら25℃で1時間反応させた後、1xPBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(6-1)1xPBS-TPの組成
1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300
(7)自己凝集反応(PALSAR反応)
標的抗体-捕獲核酸-トレーサー核酸複合体固定後の測定プレートに、PALSAR反応液を50μL加え、600rpmで振盪しながら40℃で1時間反応させた後、1xPBS-TP 200μLで2回洗浄した。
本実施例に使用する自己凝集可能な一対のプローブ(シグナル増幅用プローブともいう)の配列は、5′末端がジゴキシゲニンで標識された以下のHCP-1及びHCP-2である。
<HCP-1の配列>
5′-(DIG)- CAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -3′(塩基部分は配列番号4)
<HCP-2の塩基配列>
5′-(DIG)- GTCCTGATTGTTGCTTCATCGGTATCCACTCCTTATATC -3′(塩基部分は配列番号3)
(7-1)PALSAR反応液の組成
ハイブリダイゼーション液[189.3mM Tris-HCl (pH7.5)、2.4xPBS[328.8mM Sodium Chloride、19.44mM Disodium Phosphate、6.432mM Potassium Chloride、3.528mM Potassium Dihydrogenphosphate]、3.6mM EDTA(pH8.0)、0.12% Tween20]21μL、10x supplement-T[500mM Tris-HCl(pH8.0)、40mM EDTA(pH8.0)、8% Tween20、1.5ppm ProClin300]8μL、20pmol/μL HCP-1 0.35μL、20pmol/μL HCP-2 0.42μL、Nuclease-Free Water 20.11μL
(7-2)1xPBS-TPの組成
1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300
(8)検出抗体反応
自己凝集反応後の測定プレートに、検出抗体反応液を50μL加え、600rpmで振盪しながら30℃で30分間反応させた後、1xPBS-TP 200μLで2回洗浄した。
(8-1)検出抗体反応液の組成
1xPBS-TP (1% BSA)[1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300、1% BSA]49.7μL、100μg/mL Ru-Anti-DIG, Fab fragment 0.3μL
(8-2)Ru-Anti-DIG, Fab fragmentの調製
Anti-Digoxigenin, Fab fragments(メルク、製品番号11214667001)に、MSD GOLD SULFO-TAG NHS-Ester(Meso Scale Diagnostics、製品番号R91AO-1)を、第一級アミンを介して結合させることにより調製した。結合方法はMeso Scale Diagnostics社の製品添付プロトコールに従った。
(8-3)1xPBS-TPの組成
1xPBS[137mM Sodium Chloride、8.1mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5ppm ProClin300
(9)検出
検出抗体反応後の測定プレートに0.5xRead Buffer[[MSD GOLD Read Buffer A(Meso Scale Diagnostics、製品番号R92TG-1)]を滅菌精製水で2倍希釈]150μLを加え、Meso QuickPlex SQ 120MMシステム(Meso Scale Diagnostics社製)を用いてRu-Anti-DIG, Fab fragmentからの発光量を測定し、標的抗体のシグナルを検出した。
(10)結果
測定結果を図3に示す。抗5-メチルシトシン抗体の濃度の上昇に応じてシグナルが増大した。
上記実施例1~2より、本発明の方法は抗薬物抗体を検出できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の検出方法は、生体由来の試料に含まれる抗薬物抗体を検出するため、及び当該検出方法を実施するための試薬やキットを設計及び製造するために、簡便かつ安価に使用することができる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3
【配列表】
2022157341000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-10-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて前記捕獲核酸、前記抗薬物抗体、及び前記トレーサー核酸の複合体(「捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体」と呼ぶことがある)を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する; 及び
(ii)前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を検出する工程。
【請求項2】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する; 及び
(ii)増感法を用いて前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を検出する工程。
【請求項3】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する;
(ii)前記複合体の形成後に前記捕獲核酸を固相に結合させる工程;
(iii)前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブを接触させて、前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとのポリマー複合体を形成する工程; 及び
(iv)前記ポリマー複合体を検出する工程。
【請求項4】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する捕獲核酸と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有するトレーサー核酸とを接触させる工程、
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される;
(ii)前記捕獲核酸を捕捉し、前記複合体の形成に関与せず遊離の状態で存在する前記トレーサー核酸を当該複合体と分離し、除去する工程; 及び
(iii)前記分離・除去工程の後、分離・除去されずに残存するトレーサー核酸を検出することにより、試料中の抗薬物抗体を検出する工程。
【請求項5】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する捕獲核酸と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有するトレーサー核酸とを接触させる工程、
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される;
(ii) 前記複合体の形成後に前記捕獲核酸を捕捉し、前記複合体の形成に関与せず遊離の状態で存在する前記トレーサー核酸を前記複合体と分離し、除去する工程; 及び
(iii)捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を含む試料に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブを接触させて、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとのポリマー複合体を形成する工程;
(iv)前記ポリマー複合体を検出することにより、試料中の抗薬物抗体を検出する工程。
【請求項6】
捕獲核酸を捕捉する工程が、捕獲核酸の固相への結合であり、分離・除去する工程が、捕獲核酸が結合した固相の洗浄である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
検出される抗薬物抗体は、試料中にIgG、IgM、IgD、IgE、又はIgAのIgクラスの抗体が存在する場合、2以上のIgクラスを一の測定で検出する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
捕獲核酸及びトレーサー核酸における前記抗薬物抗体が結合するエピトープが同じである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
捕獲核酸及びトレーサー核酸は、核酸鎖の鎖長が同一であるか又はトレーサー核酸の核酸鎖の鎖長が捕獲核酸より1mer~60mer長いものである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
トレーサー核酸は、核酸鎖の鎖長が捕獲核酸より10mer~50mer長いものである、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させる工程は、試料と捕獲核酸を接触させる第1の工程と、第1の工程の産物とトレーサー核酸を接触させる第2の工程を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法:
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、第1の工程で捕獲核酸-抗薬物抗体複合体が形成され、第2の工程で捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される。
【請求項12】
前記第1の複合体を形成する工程と第2の複合体を形成する工程が同時に行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記捕獲核酸とトレーサー核酸の一方又は両方が化学修飾された核酸である、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記化学修飾された核酸が、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、モルフォリノオリゴヌクレオチド、ボラノフォスフェートオリゴヌクレオチド、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)、又は2’-F-RNAである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗薬物抗体が抗核酸医薬抗体である請求項1~14のいずれかに記載の方法
【請求項16】
試料が血液由来成分である請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
以下を含む、試料中の抗薬物抗体を検出するキット:
(1)捕獲核酸;
(2)トレーサー核酸; 及び
(3)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ;
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する。
【請求項18】
捕獲核酸及びトレーサー核酸の前記抗薬物抗体に対するエピトープが同じである、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
以下を特徴とする、捕獲核酸とトレーサー核酸とを含む二重抗原架橋イムノアッセイを用いて試料中の抗薬物抗体を免疫学的に測定するための方法:
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて前記捕獲核酸、前記抗薬物抗体、及び前記トレーサー核酸の複合体(「捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体」と呼ぶことがある)を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する; 及び
(ii)前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を検出する工程。
【請求項2】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する; 及び
(ii)増感法を用いて前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を検出する工程。
【請求項3】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させて捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を形成させる工程、
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する;
(ii)前記複合体の形成後に前記捕獲核酸を固相に結合させる工程;
(iii)前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブを接触させて、前記捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとのポリマー複合体を形成する工程; 及び
(iv)前記ポリマー複合体を検出する工程。
【請求項4】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する捕獲核酸と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有するトレーサー核酸とを接触させる工程、
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される;
(ii)前記捕獲核酸を捕捉し、前記複合体の形成に関与せず遊離の状態で存在する前記トレーサー核酸を当該複合体と分離し、除去する工程; 及び
(iii)前記分離・除去工程の後、分離・除去されずに残存するトレーサー核酸を検出することにより、試料中の抗薬物抗体を検出する工程。
【請求項5】
以下の工程を含む試料中の抗薬物抗体を検出する方法:
(i)試料と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する捕獲核酸と、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有するトレーサー核酸とを接触させる工程、
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される;
(ii) 前記複合体の形成後に前記捕獲核酸を捕捉し、前記複合体の形成に関与せず遊離の状態で存在する前記トレーサー核酸を前記複合体と分離し、除去する工程; 及び
(iii)捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体を含む試料に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブを接触させて、捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとのポリマー複合体を形成する工程;
(iv)前記ポリマー複合体を検出することにより、試料中の抗薬物抗体を検出する工程。
【請求項6】
捕獲核酸を捕捉する工程が、捕獲核酸の固相への結合であり、分離・除去する工程が、捕獲核酸が結合した固相の洗浄である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
検出される抗薬物抗体は、試料中にIgG、IgM、IgD、IgE、又はIgAのIgクラスの抗体が存在する場合、2以上のIgクラスを一の測定で検出される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
捕獲核酸及びトレーサー核酸における前記抗薬物抗体が結合するエピトープが同じである、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
捕獲核酸及びトレーサー核酸は、核酸鎖の鎖長が同一であるか又はトレーサー核酸の核酸鎖の鎖長が捕獲核酸より1mer~60mer長いものである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
トレーサー核酸は、核酸鎖の鎖長が捕獲核酸より10mer~50mer長いものである、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
試料と、捕獲核酸と、トレーサー核酸とを接触させる工程は、試料と捕獲核酸を接触させる第1の工程と、第1の工程の産物とトレーサー核酸を接触させる第2の工程を含む、請求項1~10のいずれかに記載の方法:
ここで、前記試料中に前記抗薬物抗体が含まれる場合には、第1の工程で捕獲核酸-抗薬物抗体複合体が形成され、第2の工程で捕獲核酸-抗薬物抗体-トレーサー核酸複合体が形成される。
【請求項12】
前記第1の複合体を形成する工程と第2の複合体を形成する工程が同時に行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記捕獲核酸とトレーサー核酸の一方又は両方が化学修飾された核酸である、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記化学修飾された核酸が、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、モルフォリノオリゴヌクレオチド、ボラノフォスフェートオリゴヌクレオチド、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)、又は2’-F-RNAである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗薬物抗体が抗核酸医薬抗体である請求項1~14のいずれかに記載の方法
【請求項16】
試料が血液由来成分である請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
以下を含む、試料中の抗薬物抗体を検出するキット:
(1)捕獲核酸;
(2)トレーサー核酸; 及び
(3)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ;
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する。
【請求項18】
捕獲核酸及びトレーサー核酸の前記抗薬物抗体に対するエピトープが同じである、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
以下を特徴とする、捕獲核酸とトレーサー核酸とを含む二重抗原架橋イムノアッセイを用いて試料中の抗薬物抗体を免疫学的に測定するための方法:
ここで、捕獲核酸及びトレーサー核酸は、前記抗薬物抗体が結合するエピトープを有する。