(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157354
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】評価方法、および樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 279/00 20060101AFI20221006BHJP
C08L 55/00 20060101ALI20221006BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08F279/00
C08L55/00
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061529
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松井 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】長岡 優
(72)【発明者】
【氏名】小倉 貴司
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BN12W
4J002BN14W
4J002BN17W
4J002CC03X
4J002CC15X
4J002CD01X
4J002CD02X
4J002CD05X
4J002CD12X
4J002CD13X
4J002CH02X
4J002CH06X
4J026AA45
4J026AA67
4J026AA68
4J026AB44
4J026AC09
4J026AC10
4J026BA05
4J026BA06
4J026BA07
4J026BA27
4J026BA37
4J026BB03
4J026DA04
4J026DA17
4J026DB04
4J026DB13
4J026DB17
4J026EA04
4J026FA04
4J026GA09
(57)【要約】
【課題】樹脂組成物の製造工程の異常を効率的に検知できる評価方法を提供すること。
【解決手段】重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物の製造工程の評価方法であり、樹脂組成物と水系液体との混合物の上面画像を取得する工程と、上面画像から算出された明度の平均値および/またはセグメントグループ数と、所定の基準値とを比較した比較結果に基づいて、混合物中の樹脂組成物および/または重合体微粒子(A)の有無を判定する判定工程を含む評価方法とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物の製造工程を評価する評価方法であって、
前記製造工程は、
前記樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入し、前記樹脂組成物を前記槽内にて沈降させて回収する樹脂組成物回収工程を含み、
前記評価方法は、
前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面を撮像した画像を取得する撮像工程と、
取得された前記画像に基づく、第1比較結果および第2比較結果の少なくとも一方に基づいて、(a)該混合物の液面または液面付近に浮遊した前記樹脂組成物の有無、および/または、(b)該混合物中に浮遊した前記重合体微粒子(A)の有無、を判定する判定工程と、
を含み、
前記第1比較結果は、前記画像のうち前記混合物が写った第1領域の各画素が有する明度の平均値と、所定の第1基準値とを比較した比較結果であり、
前記第2比較結果は、前記第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差と、所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいて前記セグメントのグループ数を算出し、当該セグメントのグループ数と、所定の第3基準値とを比較した比較結果である、
評価方法。
【請求項2】
前記重合体微粒子(A)は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体からなるグラフト部を有するものである、
請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体である、
請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物の比重は900.01kg/m3~5000kg/m3であり、前記水系液体の比重は900kg/m3~1100kg/m3であり、前記樹脂組成物の比重は前記水系液体の比重より大きい、
請求項1~3のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項5】
前記撮像工程では、前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面に対して所定の波長帯の光を照射する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記撮像工程では、前記混合物における前記画像に対応する第2領域に気体を当てる、
請求項1~5のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項7】
前記所定の第1基準値は、前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面を過去に撮像した画像における、前記第1領域に対応する領域の各画素が有する明度の平均値Pであり、
前記第1比較結果が、前記所定の第1基準値よりも前記平均値が大きいという結果である場合、
前記判定工程では、該混合物の前記液面または前記液面付近に浮遊した前記樹脂組成物が存在する、および/または、(b)該混合物中に浮遊した前記重合体微粒子(A)が存在する、と判定する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項8】
前記所定の第2基準値は、前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面を過去に撮像した画像における、前記第1領域に対応する領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差Pであり、
前記所定の第3基準値は、前記セグメント間の明度差Pと、当該所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいて算出されるセグメントのグループ数Pであり、
前記第2比較結果が、前記所定の第3基準値よりも前記セグメントのグループ数が大きいという結果である場合、
前記判定工程では、該混合物の前記液面または前記液面付近に浮遊した前記樹脂組成物が存在する、および/または、(b)該混合物中に浮遊した前記重合体微粒子(A)が存在する、と判定する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項9】
前記画像は、モノクロ画像である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の評価方法を用いた評価工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記判定工程における前記判定に基づいて、温度、流量、インバーター周波数、貯蔵量、濃度、回転数および圧力からなる群から選択される1以上の製造条件を変更する工程をさらに含む、
請求項10に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物の製造工程を評価する評価システムであって、
前記製造工程は、
前記樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入し、前記樹脂組成物を前記槽内にて沈降させて回収する樹脂組成物回収工程を含み、
前記評価システムは、
前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面を撮像した画像を取得する撮像装置と、
取得された前記画像に基づく、第1比較結果および第2比較結果の少なくとも一方に基づいて、(a)該混合物の液面または液面付近に浮遊した前記樹脂組成物の有無、および/または、(b)該混合物中に浮遊した前記重合体微粒子(A)の有無、を判定する評価装置と、
を含み、
前記第1比較結果は、前記画像のうち前記混合物が写った第1領域の各画素が有する明度の平均値と、所定の第1基準値とを比較した比較結果であり、
前記第2比較結果は、前記第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差と、所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいて前記セグメントのグループ数を算出し、当該セグメントのグループ数と、所定の第3基準値とを比較した比較結果である、
評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造工程の評価方法、および樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂は高い耐熱性、機械的強度などの種々の優れた性質を持つため、様々な分野で使用されている。熱硬化性樹脂の中でもエポキシ樹脂は、例えば、電子回路封止剤、塗料、接着剤および繊維強化材料のマトリクス樹脂として幅広い用途に用いられている。エポキシ樹脂は耐熱性、耐薬品性、絶縁性などに優れているが、熱硬化性樹脂の特徴である耐衝撃性が不十分という問題を有している。熱硬化性樹脂の耐衝撃性を改善するために、熱硬化性樹脂にエラストマーを添加する方法が広く用いられている。
【0003】
前記エラストマーとしては、重合体微粒子(例えば架橋重合体微粒子)が挙げられる。重合体微粒子は、一般的に1μmより小さい粒子径を有し得る。ここで、1μmより小さい粒子径を有する重合体微粒子の1次粒子を幾つか集めて作製された重合体微粒子の粉粒体を2次粒子と称する。熱硬化性樹脂中に、重合体微粒子の2次粒子を分散させることは可能であるが、重合体微粒子の1次粒子を熱硬化性樹脂に分散させることは、工業レベルでは非常に難しい。
【0004】
上述のように、重合体微粒子の2次粒子(粉粒体)と熱硬化性樹脂とを機械的に混合して樹脂組成物を得る場合、樹脂組成物中で重合体微粒子の1次粒子同士は凝集したままである。そのため、得られた樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の表面外観が非常に悪いという問題がある。そのため、熱硬化性樹脂へ重合体微粒子を1次粒子の状態で分散させる各種の製造方法が提案されている。
【0005】
特許文献1には、溶剤を使用して重合性有機化合物(H)(熱硬化性樹脂)へゴム状重合体粒子(A)(重合体微粒子)を分散させる製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、脱水樹脂を利用することにより、溶剤を使用することなく、エポキシ基を含有する化合物(熱硬化性樹脂)へ架橋ゴム状共重合体(重合体微粒子)を分散させる製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2005/028546号公報
【特許文献2】特開平5-339471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来技術は、樹脂組成物の製造工程の異常検知という観点からは十分なものでなく、さらなる改善の余地があった。
【0009】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、樹脂組成物の製造工程の異常を効率的に検知できる新規の評価方法と、当該評価方法を備える樹脂組成物の製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物の製造工程を評価する評価方法であって、前記製造工程は、前記樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入し、前記樹脂組成物を前記槽内にて沈降させて回収する樹脂組成物回収工程を含み、前記評価方法は、前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面を撮像した画像を取得する撮像工程と、取得された前記画像に基づく、第1比較結果および第2比較結果の少なくとも一方に基づいて、(a)該混合物の液面または液面付近に浮遊した前記樹脂組成物の有無、および/または、(b)該混合物中に浮遊した前記重合体微粒子(A)の有無、を判定する判定工程と、
を含み、
前記第1比較結果は、前記画像のうち前記混合物が写った第1領域の各画素が有する明度の平均値と、所定の第1基準値とを比較した比較結果であり、
前記第2比較結果は、前記第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差と、所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいて前記セグメントのグループ数を算出し、当該セグメントのグループ数と、所定の第3基準値とを比較した比較結果である、評価方法。
〔2〕前記重合体微粒子(A)は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体からなるグラフト部を有するものである、〔1〕に記載の評価方法。
〔3〕前記樹脂(B)は、25℃において100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、半固体であるか、または固体である、〔1〕または〔2〕に記載の評価方法。
〔4〕前記樹脂組成物の比重は900.01kg/m3~5000kg/m3であり、前記水系液体の比重は900kg/m3~1100kg/m3であり、前記樹脂組成物の比重は前記水系液体の比重より大きい、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の評価方法。
〔5〕前記撮像工程では、前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面に対して所定の波長帯の光を照射する、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の評価方法。
〔6〕前記撮像工程では、前記混合物における前記画像に対応する第2領域に気体を当てる、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の評価方法。
〔7〕前記所定の第1基準値は、前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面を過去に撮像した画像における、前記第1領域に対応する領域の各画素が有する明度の平均値Pであり、前記第1比較結果が、前記所定の第1基準値よりも前記平均値が大きいという結果である場合、前記判定工程では、該混合物の前記液面または前記液面付近に浮遊した前記樹脂組成物が存在する、および/または、(b)該混合物中に浮遊した前記重合体微粒子(A)が存在する、と判定する、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の評価方法。
〔8〕前記所定の第2基準値は、前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面を過去に撮像した画像における、前記第1領域に対応する領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差Pであり、前記所定の第3基準値は、前記セグメント間の明度差Pと、当該所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいて算出されるセグメントのグループ数Pであり、前記第2比較結果が、前記所定の第3基準値よりも前記セグメントのグループ数が大きいという結果である場合、前記判定工程では、該混合物の前記液面または前記液面付近に浮遊した前記樹脂組成物が存在する、および/または、(b)該混合物中に浮遊した前記重合体微粒子(A)が存在する、と判定する、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の評価方法。
〔9〕前記画像は、モノクロ画像である、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の評価方法。
〔10〕〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の評価方法を用いた評価工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
〔11〕前記判定工程における前記判定に基づいて、温度、流量、インバーター周波数、貯蔵量、濃度、回転数および圧力からなる群から選択される1以上の製造条件を変更する工程をさらに含む、
〔10〕に記載の樹脂組成物の製造方法。
〔12〕重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物の製造工程を評価する評価システムであって、前記製造工程は、前記樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入し、前記樹脂組成物を前記槽内にて沈降させて回収する樹脂組成物回収工程を含み、前記評価システムは、前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面を撮像した画像を取得する撮像装置と、取得された前記画像に基づく、第1比較結果および第2比較結果の少なくとも一方に基づいて、(a)該混合物の液面または液面付近に浮遊した前記樹脂組成物の有無、および/または、(b)該混合物中に浮遊した前記重合体微粒子(A)の有無、を判定する評価装置と、を含み、前記第1比較結果は、前記画像のうち前記混合物が写った第1領域の各画素が有する明度の平均値と、所定の第1基準値とを比較した比較結果であり、前記第2比較結果は、前記第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差と、所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいて前記セグメントのグループ数を算出し、当該セグメントのグループ数と、所定の第3基準値とを比較した比較結果である、評価システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、樹脂組成物の製造工程の異常を効率的に検知できる評価方法と、当該評価方法を備える樹脂組成物の製造方法とを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る評価システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る評価システムの構成例を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る評価システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る評価システムが行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る評価システムが行う処理の流れの他の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の別の一実施形態に係る評価システムの構成例を示す概略図である。
【
図7】本発明の別の一実施形態に係る評価システムの構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0015】
〔1.本発明の一実施形態に係る技術的思想〕
重合体微粒子および樹脂を含む樹脂組成物の製造工程において、樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入し、樹脂組成物を槽内にて沈降させて回収する樹脂組成物回収工程が存在する。樹脂組成物回収工程において、槽内にて樹脂組成物と分離された水系液体は、樹脂組成物回収工程後、排水として廃棄される。
【0016】
樹脂組成物回収工程以前の工程において、重合体微粒子が樹脂に十分に取り込まれていない場合、重合体微粒子が排水に混入し、排水が白濁する場合がある。また、樹脂組成物回収工程以前の工程において、樹脂組成物に空気などの気体が混入する場合がある。この場合、樹脂組成物回収工程において、槽内にて樹脂組成物が沈降せず、混合物の液面(水系液体の液面)付近に、樹脂組成物の一定の塊が浮遊し(浮き樹脂)、排水に樹脂組成物が混入する場合がある。また、樹脂組成物回収工程以前の工程において、様々な理由(例えば樹脂組成物の温度上昇)により、樹脂組成物が微細化し、微細樹脂となる場合がある。この場合も、樹脂組成物回収工程において、槽内にて樹脂組成物(微細樹脂)が沈降せず、排水に樹脂組成物(微細樹脂)が混入する場合がある。これらの結果、樹脂組成物の収率低下、および/または品質異常が起こり得る。樹脂組成物の製造において、樹脂組成物の収率低下および/または品質異常を低減させるためには、排水の白濁等を早期に検知し、それらの原因に早急に対処することが重要である。
【0017】
排水の白濁を検知する方法としては、排水の一部を適宜抜き出し(サンプリングし)、当該排水の濁度を濁度計などで測定する方法が挙げられる。また、樹脂組成物の品質異常を検知する方法としては、(a)樹脂組成物の一部を適宜抜き出し(サンプリングし)、(a-1)当該樹脂組成物の温度、粘度および比重および樹脂組成物中の重合体微粒子の含有比率などを測定する方法、(a-2)蛍光X線測定装置を用いて樹脂組成物中の残存夾雑物量を測定する方法、並びに(b)槽の内部を、例えば目視で、観察して、槽中の樹脂組成物および水系液体の様子などを確認する方法、が挙げられる。これらの方法には、(a)(a-1)排水の濁度を測定する間、および(a-2)樹脂組成物の温度、粘度、比重、重合体微粒子の含有比率、および残存夾雑物量、を測定する間、並びに(a-3)槽の内部を観察して、槽中の樹脂組成物および水系液体の様子などを確認する間等に、製造ラインを一旦停止させる必要があり、生産効率が低下すること、並びに(b)作業者の負担が大きいこと、などの課題がある。
【0018】
本発明者は、樹脂組成物の製造ラインを止めることなく、小さい作業負担で排水の白濁等を検知する方法を開発するため、鋭意検討を行った。その結果、排水の配管の一部をガラス製の配管に置換することにより、ガラス製配管内を流れる排水をカメラなどの撮像装置で撮像し、当該画像を分析することにより、排水の濁度を検出する方法を検討した。その結果、排水中に樹脂組成物および/または樹脂組成物の微細樹脂(以下、「樹脂組成物等」と称する場合がある。)が混入した場合、樹脂組成物等がガラス製配管に付着する場合があり、撮像装置で排水を撮像できない場合があることを、本発明者は独自に見出した。また、樹脂組成物等がガラス製配管に付着した場合、樹脂組成物等をガラス製配管から取り除く作業が必要となり、製造ラインを停止する必要もあった。
【0019】
そこで、本発明者は、上記問題点を考慮して、さらに、鋭意検討を行った。その結果、以下のような方法であれば、樹脂組成物の製造ラインを止めることなく、小さい作業負担で排水の白濁等を検知することができることを新規に見出し、本発明を完成させるに至った:樹脂組成物と水系液体との混合物から樹脂組成物を沈降させて回収するための槽の上方から、混合物の上面を撮像した画像(上面画像)を取得し、(1)当該画像(上面画像)から算出した明度の平均値と所定の基準値とを比較することにより、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物等の有無を判定する方法;および(2)当該画像(上面画像)から算出したセグメント明度差と所定の基準値とを比較することによりセグメントグループ数を算出し、得られたセグメントグループ数と所定の基準値とを比較することにより、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物等の有無を判定する方法。
【0020】
〔2.評価方法〕
本発明の一実施形態に係る評価方法は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物の製造工程を評価する評価方法であって、前記製造工程は、前記樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入し、前記樹脂組成物を前記槽内にて沈降させて回収する樹脂組成物回収工程を含み、前記評価方法は、前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面を撮像した画像を取得する撮像工程と、取得された前記画像に基づく、第1比較結果および第2比較結果の少なくとも一方に基づいて、(a)該混合物の液面または液面付近に浮遊した前記樹脂組成物の有無、および/または、(b)該混合物中に浮遊した前記重合体微粒子(A)の有無、を判定する判定工程と、を含み、前記第1比較結果は、前記画像のうち前記混合物が写った第1領域の各画素が有する明度の平均値と、所定の第1基準値とを比較した比較結果であり、前記第2比較結果は、前記第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差と、所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいて前記セグメントのグループ数を算出し、当該セグメントのグループ数と、所定の第3基準値とを比較した比較結果である。
【0021】
本明細書において、「本発明の一実施形態に係る評価方法」を「本評価方法」と称する場合もある。
【0022】
本評価方法は、上述した構成を有するため、製造工程の異常を効率的に検知できるという利点を有する。本評価方法は、製造工程の異常を効率的に検知できる、樹脂組成物の製造方法も提供する。
【0023】
(2-1.評価システム)
本発明の一実施形態において、評価方法は、評価装置を含む複数の装置から構成される評価システムによって実施され得る。本評価方法を実施するための評価システムもまた、本発明の一実施形態といえる。本明細書において、「本発明の一実施形態に係る評価システム」を「本評価システム」と称する場合もある。
【0024】
本発明の一実施形態に係る評価システムとしては、以下のような構成が挙げられる:重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物の製造工程を評価する評価システムであって、前記製造工程は、前記樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入し、前記樹脂組成物を前記槽内にて沈降させて回収する樹脂組成物回収工程を含み、前記評価システムは、前記槽内の前記混合物の上方から該混合物の上面を撮像した画像を取得する撮像装置と、取得された前記画像に基づく、第1比較結果および第2比較結果の少なくとも一方に基づいて、(a)該混合物の液面または液面付近に浮遊した前記樹脂組成物の有無、および/または、(b)該混合物中に浮遊した前記重合体微粒子(A)の有無、を判定する評価装置と、を含み、前記第1比較結果は、前記画像のうち前記混合物が写った第1領域の各画素が有する明度の平均値と、所定の第1基準値とを比較した比較結果であり、前記第2比較結果は、前記第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差と、所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいて前記セグメントのグループ数を算出し、当該セグメントのグループ数と、所定の第3基準値とを比較した比較結果である、評価システム。
【0025】
本評価システムは、樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入し、当該樹脂組成物を槽内にて沈降させて回収する樹脂組成物回収工程を有する製造工程において、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物および/または重合体微粒子の有無を判定して、出力するシステムである。
【0026】
樹脂組成物の製造工程において、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物と水系液体との混合物から、樹脂組成物を分離して回収する工程(樹脂組成物回収工程)がある。樹脂組成物は、水系液体より高い比重を有する。そのため、樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に供給すると、樹脂組成物が沈降するため、樹脂組成物を下層に、且つ水系液体を上層に、それぞれ分離し、樹脂組成物を槽下部から回収できる。
【0027】
樹脂組成物の製造工程が正常に進行している場合、樹脂組成物回収工程において、上述したように、樹脂組成物は下層に、且つ水系液体は上層に、それぞれ分離する。そのため、水系液体の層である上層に、すなわち、混合物の液面等に、樹脂組成物および/または重合体微粒子が浮遊することはないか、浮遊しているとしてもわずかである。換言すれば、樹脂組成物回収工程において、槽内の混合物の液面等に樹脂組成物および/または重合体微粒子が多く浮遊している場合、樹脂組成物の製造工程は異常な状態といえる。それ故、本評価システムは、樹脂組成物の製造工程の正常または異常を判定して、出力するシステムともいえる。
【0028】
(評価システム100の概要)
最初に、本評価システムの概要について、
図1を参照して説明する。本発明の一実施形態において、評価システム100の評価装置1は、単独で評価システムとして機能することが可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る評価システム100の構成例を示すブロック図である。
【0029】
評価システム100は、
図1に示すように、評価装置1と、評価装置1と通信可能に接続された撮像装置2と、評価装置1と通信可能に接続された1以上の端末装置3とを備えている。このように、評価システム100は、評価装置1と、評価装置1から出力された判定結果を提示可能な装置(例えば、端末装置3)とを備えていてもよい。
【0030】
[評価装置1]
評価装置1は、以下の(1)~(3)、すなわち本評価方法を実行するコンピュータである。
(1)混合物の上方から該混合物の上面を撮像した画像を撮像装置2から取得。
(2)
(2-A1)取得した画像のうち混合物が写った第1領域の各画素が有する明度の平均値を算出し、
(2-A2)算出した明度の平均値と所定の第1基準値とを比較した第1比較結果に基づいて、(a)混合物の液面または液面付近に浮遊した樹脂組成物の有無、および/もしくは、(b)混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)の有無、を判定して出力;並びに/または
(2-B1)取得した画像のうち混合物が写った第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差を算出し、(2-B2)算出したセグメント間の明度差と、所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいてセグメントのグループ数を算出し、
(2-B3)算出したセグメントのグループ数と、所定の第3基準値とを比較した第2比較結果に基づいて、(a)混合物の液面または液面付近に浮遊した樹脂組成物の有無、および/もしくは、(b)混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)の有無、を判定して出力。
(3)該判定結果を端末装置3に送信。
【0031】
なお、
図1には、評価システム100として、評価方法を実行する評価装置1を個別に備えるシステムを例示したが、評価システムはこれに限定されない。例えば、既存のコンピュータに、アプリケーションをインストールして、該コンピュータを評価装置1として機能させてもよい。以下では、評価方法を実行する評価装置1を個別に備える評価システム100を例に挙げて、本発明の一実施形態を説明する。
【0032】
評価装置1は、
図1に示すように、樹脂組成物の製造施設4のLANに接続されていてもよい。なお、評価装置1の構成例については、後に説明する。
【0033】
本明細書において、「混合物の上面を撮像した画像」を「上面画像」と称する場合がある。また、本明細書において、「混合物の液面または液面付近」を「混合物の液面等」と称する場合がある。
【0034】
(画像(上面画像))
評価装置1が撮像装置2から取得する上面画像、換言すれば撮像装置2が撮像する上面画像は、カラーであってもよく、モノクロであってもよい。カラー画像のデータ量は、モノクロ画像のデータ量の約3倍である。評価装置1が処理するデータ量が小さいほど、評価装置1にかかる負荷は小さくなり、評価装置1の消費電力も小さくなる。また、モノクロ画像はカラー素子およびモノクロ素子の何れか1つを有する撮像装置2により取得可能であるが、カラー画像はカラー素子を有する撮像装置2により取得される。カラー素子を有する撮像装置2は、モノクロ素子を有する撮像装置2に対して、同じ画素数で比較すると高価である。それ故、評価装置1の処理するデータ量を少なくできること、および安価な費用で撮像装置2を導入できることなどから、上面画像は、モノクロ画像であることが好ましい。
【0035】
(第1領域)
第1領域は、上面画像のうち混合物が写っている領域である。第1領域は、上面画像のうち混合物が写っている限り、その他の構成は特に限定されない。撮像装置2によって混合物の上面が撮像される間、照射装置10が混合物の上面に対して所定の波長の光を照射している場合、撮像装置2によって撮像された上面画像には照射装置10が写り込んでいる場合がある。この場合、第1領域は、照射装置10が写り込んでいない領域であってもよい。
【0036】
明度の平均値、セグメント明度差、セグメントグループ数、所定の第1基準値、所定の第2基準値および所定の第3基準値については後述する。
【0037】
[撮像装置2]
撮像装置2は、混合物の上方から該混合物の上面を撮像し、得られた上面画像データを評価装置1に送信する。撮像装置2は、下記のものに限定されないが、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ、裏面照射型CMOSカメラ、およびこれらのイメージセンサを搭載したビデオカメラ等であってもよい。また、撮像装置2としては、赤外線カメラ、紫外線カメラおよびレーザーカメラなどであってもよい。撮像装置2は、カラー素子を有する装置(カラーカメラ)であってもよく、モノクロ素子を有する装置(モノクロカメラ)であってもよい。撮像装置2は、
図1に示すように、製造施設4のLANに接続されていてもよい。
【0038】
なお、
図1には、評価システム100として、撮像装置2を備えるシステムを例示したが、評価システムはこれに限定されない。評価システムは、撮像装置2を備えていなくてもよい。この場合には、評価装置1が、外部の撮像装置あるいは既存の監視装置から画像を取得する構成であってもよい。以下では、撮像装置2を備える評価システム100を例に挙げて、本発明の一実施形態を説明する。
【0039】
[端末装置3]
端末装置3は、評価装置1からの判定結果を受信し、該判定結果を提示する。端末装置3は、製造施設4に所属する作業者などの従業員が使用するコンピュータ等であってもよい。端末装置3は、
図1に示すように、製造施設4のLANに接続されていてもよい。端末装置3は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等であってもよい。端末装置3は、他装置とのデータ送受信を行う通信部、キーボードおよびマイク等の入力部、判定結果を表示可能な表示部等を有している。
【0040】
図1に示す評価システム100では、評価装置1と、端末装置3とが別体として設けられているが、評価装置1と端末装置3とが一体であってもよい。例えば、評価装置1が、判定結果を表示可能な表示部を有することにより、端末装置3の機能を備えていてもよい。
【0041】
[ネットワーク]
図1に示すように、製造施設4内にはネットワークが配設されている。
図1には、ネットワークがLAN(local area network)である例を示しているが、この構成に限定されない。例えば、製造施設4内のネットワークは、インターネット、電話通信回線ネットワーク、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどが適用されていてもよい。製造施設4内のLANは、外部の通信ネットワークと通信可能に接続されていてもよい。この場合、例えば、端末装置3は、製造施設4以外の施設(例えば本社オフィス)に所属する従業員が使用するコンピュータ等であってもよい。
【0042】
図1には、評価装置1、撮像装置2、および端末装置3が、製造施設4内のネットワーク(LAN)に接続されている例を示しているが、この構成に限定されない。評価システム100において、評価装置1と、撮像装置2および端末装置3の少なくとも1つとが、ネットワーク(LAN)を介さずに直接接続されていてもよい。
【0043】
評価システム100において、評価装置1と通信可能な、撮像装置2および端末装置3の数は、複数であってもよい。さらに、評価システム100において、評価装置1が複数導入されてもよい。
【0044】
(評価システム100の構成)
次に、評価システム100の構成について、
図2を用いて説明する。本発明の一実施形態に係る評価システム100の構成例を示す概略図である。説明の便宜上、既に説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0045】
評価システム100は、
図2に示すように、評価装置1と、ケーブル5(例えば、USBケーブル、LANケーブル等)により評価装置1と通信可能に接続された撮像装置2と、評価装置1と通信可能に接続された端末装置3と、槽60とを備えている。
【0046】
[槽60]
槽60は、その内部に混合物が投入され、その内部にて樹脂組成物を沈降させて回収するための装置である。槽60は、胴部および底部を備えていればよく、その他の構成は特に限定されない。例えば、槽60は、
図2に示すように、上部の内径と下部の内径とが同じか略同じである円筒形の形状を有していてもいが、かかる構成に限定されない。
【0047】
槽60に、混合物を投入する方法は特に限定されない。混合物を一括して、すなわち一度で混合物の全量を投入してもよく、混合物の全量をいくつかに分けて、少量ずつ投入してもよい。また、混合物の投入は、後述する樹脂組成物回収工程と同時に行われてもよい。換言すれば、混合物が投入されつつ、樹脂組成物が槽内から回収されてもよい。
【0048】
槽60は、
図2に示すように、上部が覆われておらず、開放されている構造を有していてもよいが、かかる構成に限定されない。槽60は、例えば、上部が覆われており、外気および外部の光などから遮断されていてもよい。槽60の上部が覆われている場合、撮像装置2は、槽60内の空間内に配置され得る。槽60が、槽60内部を観察可能な程度に透明性を有する部材(例えばガラス、アクリル板など)で構成された窓を有する場合、槽60の上部が覆われている場合であっても、槽60の外部に撮像装置2が配置されていてもよい。この場合、窓が曇ることも有り得るが、窓にエアー(気体)をあてつづけることにより、曇りを防止することも可能である。
【0049】
槽60は、混合物を槽内に供給するインレットである供給部、沈降した樹脂組成物を槽外に抜き出すアウトレットである回収部、および水系液体を槽外に抜き出すアウトレットである排水部を備えていてもよい。
【0050】
評価システム100は、照射装置10、および気体放出装置11をさらに備えていてもよい。
【0051】
[照射装置10]
照射装置10は、混合物の上方から、該混合物の上面に対して所定の波長帯の光を照射する装置である。照射装置10は、
図2に示すように、円形照明であってもよいが、混合物の上方から該混合物の上面に対して所定の波長帯の光を照射できる限り、かかる構成に限定されない。照射装置10は、面状照明、および棒状照明等であってもよい。照射装置10は、複数のLED照明から構成される照射装置であってもよい。なお、円形照明とは複数の照明器具が円形に配置されている照射装置を意図し、面状照明とは複数の照明器具が面状に配置されている照射装置を意図し、棒状照明とは複数の照明器具が略直線状に配置されている照射装置を意図している。
【0052】
ここで、(a)槽60の上部が覆われており、槽内部が外気および外部の光などから遮断されている場合、または(b)槽60の上部は覆われていないが、槽60を設置した室内(または槽60の周辺環境)が暗い場合について説明する。この場合、樹脂組成物および/または重合体微粒子(A)が浮遊している混合物を撮像装置2によって撮像した画像は全体的に明度が小さく、該樹脂組成物および/または該重合体微粒子(A)の存在に依存した明度の平均値が小さい場合がある。その結果、評価装置1によって該樹脂組成物および/または該重合体微粒子(A)の存在を検知できず、評価装置1が、混合物中に樹脂組成物および/または重合体微粒子(A)が浮遊していないと判定する場合がある。照射装置10は、撮像装置2によって、混合物の上面が撮像される間、混合物の上面に対して所定の波長帯の光を照射することができる。それ故、評価システム100が照射装置10を備えている場合、外部環境(例えば、光量など)に依存せず、撮像装置2は、評価装置1が判定するために好適な上面画像を撮像することができる。
【0053】
槽60の上部が解放されており、槽60を設置した室内(または槽60の周辺環境)が明るい場合について説明する。この場合であっても、照射装置10の光量を調整することにより、撮像装置2は、評価装置1が判定するために好適な上面画像を撮像することができる。
【0054】
槽60の上部が解放されており、槽60を設置した室内(または槽60の周辺環境)の明るさが、時間帯および季節などの外部環境により変化する場合について説明する。この場合であっても、照射装置10の光量を調整することにより、撮像装置2は、評価装置1が判定するために好適な上面画像を撮像することができる。
【0055】
前期所定の波長帯の光は、特に限定されず、例えば、(a)可視光などの、360nm~830nmの波長帯の光、(b)紫外線などの、10nm~360nmの波長帯の光、(c)近赤外線などの、830nm~1500nmの波長帯の光などがあげられる。一般的に普及しているカメラを用いることができる観点から、所定の波長帯の光は、360nm~830nmの波長帯の可視光であることが特に好ましい。
【0056】
照射装置10による照射光の強さ(照度)は、特に限定されず、外部環境等によって適宜設定すればよい。前記照度を光度(cd、カンデラ)で表す場合、当該光度は、例えば、10cd以上であってもよく、100cd以上であってもよく、1000cd以上であってもよい。また、当該光度は、1000cd以下であってもよく、100cd以下であってもよい。
【0057】
評価システム100では、撮像装置2と照射装置10とが別体として設けられているが、撮像装置2と照射装置10とが一体であってもよい。例えば、撮像装置2が、所定の波長の光を照射可能な照射部を備えており、撮像装置2が照射装置10として機能する構成であってもよい。
【0058】
[気体放出装置11]
気体放出装置11は、混合物における、撮像装置2によって撮像された上面画像に対応する領域(第2領域)に気体を当てる装置である。気体放出装置11は、
図2に示すように、棒状であり、かつ気体放出口を1つ有する装置であってもよいが、混合物における第2領域に気体を当てることができる限り、かかる構成に限定されない。気体放出装置11は、気体放出口を複数有する装置であってもよい。なお、「撮像装置2によって撮像された上面画像に対応する領域」は、「撮像装置2により撮像される領域」ともいえる。
【0059】
気体放出装置11から放出する気体、すなわち混合物における第2領域に当てる気体Aとしては、特に限定されず、空気等が挙げられる。
【0060】
図6に示すように、槽60内で発生した気泡Bが混合物の上面、例えば撮像装置2により撮像される領域(第2領域)を覆う場合がある。第2領域を気泡Bで覆われる場合、撮像装置2により撮像される上面画像に気泡が写り込み、評価装置1による判定が不正確なものになる虞がある(比較例1を参照のこと)。気体放出装置11は、撮像装置2によって混合物の上面が撮像される間、撮像装置2により撮像される領域(第2領域)に気体を当てることができる。それ故、
図6に示すように第2領域を気泡Bが覆う場合において、評価システム100が気体放出装置11を備えている場合には、
図7に示すように、第2領域に気体Aを当てることにより、第2領域に存在していた気泡Bを第2領域の外側に移動させることができる。これにより、撮像装置2は、評価装置1が判定するために好適な上面画像を撮像することができる。
【0061】
槽60には、撹拌翼が設置されていてもよい。撹拌翼としては、例えば、回転するアームにレーキが取り付けられた装置が挙げられる。このような撹拌は、槽60の中央付近に樹脂組成物を集める効果を有する。
【0062】
次に、評価装置1の構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る評価装置1の構成例を示す概略図である。説明の便宜上、既に説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付し、その説明を繰り返さない。なお、
図3には、評価装置1と通信可能に接続された撮像装置2、および評価装置1と通信可能に接続された端末装置3も示している。
【0063】
(評価装置1の構成)
評価装置1は、評価装置1の各部を統括的に制御する制御部80、および、制御部80が使用する各種データを記憶する記憶部90を備える。制御部80は、画像取得部81、明度算出部82、判定部83、および出力制御部84を備えている。記憶部90には、評価装置1の各種制御を行うためのプログラムである制御プログラム91、および所定の第1基準値、所定の第2基準値および所定の第3基準値の各々のデータの集合体である基準値データ92が格納されている。基準値データ92に含まれる第1基準値、所定の第2基準値および所定の第3基準値の各々のデータは、それぞれ1つであってもよく、複数(すなわちデータセット)であってもよい。第1基準値、所定の第2基準値および所定の第3基準値の各々については、後述する。
【0064】
<画像取得部81>
画像取得部81は、撮像装置2から上面画像を取得する。上面画像は、明度算出部82に入力される入力データである。
【0065】
<明度算出部82>
明度算出部82は、上面画像から、(i)上面画像のうち混合物が写った第1領域の各画素が有する明度の平均値を算出するか、および/または、(ii)(ii-1)第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差(以下、「セグメント明度差」とも称する。)を算出し、(ii-2)得られたセグメント明度差と所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいて前記セグメントのグループ数(以下、「セグメントグループ数」とも称する。)を算出する。算出された明度の平均値およびセグメントグループ数は、判定部83に入力される入力データである。
【0066】
<判定部83>
判定部83は、以下の(1)および/または(2)を行う:
(1)(1-a)明度の平均値と所定の第1基準値とを比較する;
(1-b)得られた第1比較結果に基づいて、(a)混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物71の有無、および/または、(b)混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)の有無、を判定して出力する;および/または
(2)(2-a)セグメントグループ数と所定の第3基準値とを比較する;
(2-b)得られた第2比較結果に基づいて、(a)混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物71の有無、および/または、(b)混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)の有無、を判定して出力する。
判定部83が行う判定方法にてついては、後に説明する。
【0067】
<出力制御部84>
出力制御部84は、判定部83から出力された判定結果を、端末装置3に送信する。判定部83は、判定結果と共に、判定に用いた明度の平均値、所定の第1基準値、セグメントグループ数および所定の第3基準値、並びに、明度の平均値またはセグメントグループ数の算出に用いた上面画像、セグメント明度差および所定の第2基準値のうちの少なくともいずれかを、端末装置3に送信してもよい。
【0068】
評価装置1が表示部(不図示)を備える構成であってもよい。その場合、出力制御部84は、表示部に判定結果を表示されてもよい。この場合、出力制御部84は、判定結果と共に、判定に用いた明度の平均値、所定の第1基準値、セグメントグループ数および所定の第3基準値、並びに、明度の平均値またはセグメントグループ数の算出に用いた上面画像、セグメント明度差および所定の第2基準値のうちの少なくともいずれかを、表示部に表示させてもよい。
【0069】
(明度算出方法および判定方法)
次に、明度算出部82が行う明度の平均値、セグメント明度差およびセグメントグループ数の算出方法、並びに判定部83が行う判定の方法について、第1比較結果に基づく判定と、第2比較結果に基づく判定とに分けて説明する。以下では、第1比較結果に基づく判定を第1判定と称し、第2比較結果に基づく判定を第2判定と称する。
【0070】
(第1判定)
第1判定を行う場合、明度算出部82は、上面画像から、第1領域の各画素が有する明度の平均値を算出する。明度算出部82が算出する明度の平均値は、第1領域の各画素が有する明度の平均値であってもよい。この場合、明度算出部82は、第1領域の各画素が有する明度を積算し、得られた和を第1領域中の画素の総数で除すことにより、前記平均値を算出する。明度算出部82により算出された明度の平均値は、判定部83に入力される。
【0071】
次に、判定部83は、明度の平均値と所定の第1基準値とを比較する。ここで、所定の第1基準値は、例えば、槽60内の混合物の上方から混合物の上面を過去に撮像した画像における、第1領域に対応する領域の各画素が有する明度の平均値P(「P」は、本判定方法の撮像工程で撮像し取得された画像ではなく、本判定方法の撮像工程の実施前、すなわち過去に撮像した画像から取得(算出)された明度の平均値であることを示している。)である。過去に撮像される混合物は、判定対象の混合物に含まれる樹脂組成物および水系液体と、同じ組成を有する樹脂組成物および水系液体を含む混合物であることが好ましい。
【0072】
続いて、判定部83は、明度の平均値と所定の第1基準値とを比較し、当該平均値が所定の第1基準値より大きいか、または小さいかといった第1比較結果を算出する。
【0073】
次に、判定部83は、第1比較結果に基づいて、(a)混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物71および/または重合体微粒子(A)の有無、を判定して出力する。ここで、混合物中を浮遊する樹脂組成物71の量が多い(所定量を超える)場合、樹脂組成物に反射した光によって、明度の平均値は所定の第1基準値よりも大きくなる。また、混合物中を浮遊する重合体微粒子(A)の量が多い(所定量を超える)場合、重合体微粒子(A)に反射した光によって、明度の平均値は所定の第1基準値よりも大きくなる。そのため、判定部83は、例えば、第1比較結果が、所定の第1基準値よりも明度の平均値が大きいという結果である場合、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物が存在する、および/または、(b)該混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)が存在する、と判定する。判定部83は、明度の平均値が所定の第1基準値より大きい場合、(a)混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物が存在すること、および(b)該混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)が存在すること、のうちの少なくともいずれかを判定すればよく、樹脂組成物または重合体微粒子(A)の何れが存在するかを判定する必要はない。混合物の液面等または混合物中に、樹脂組成物または重合体微粒子(A)が存在するかは、明度算出に用いた上面画像を目視で確認して、判定すればよい。
【0074】
(第2判定)
本発明者は、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物が小さな塊である場合、例えば微細樹脂である場合、上述した第1判定、すなわち第1比較結果に基づく判定では、樹脂組成物を検知できない場合があることを独自に見出した。混合物の液面等に浮遊した微細樹脂を検知すべく、本発明者は鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、第2比較結果に基づく判定、すなわち以下に説明するような第2判定により、混合物の液面等に浮遊した微細樹脂を検知できることを、新規に見出した。第2判定を行う場合、明度算出部82は、第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差(セグメント明度差)を算出し、セグメント明度差からセグメントグループ数を算出する。以下、具体的に、セグメント明度差およびセグメントグループ数を算出するためのアルゴリズムの一例について説明する。一例において、明度算出部82は、第1領域における画素1つ1つではなく、画素のまとまりをセグメントとして取り扱う。まず、明度算出部82は、第1領域内を、複数の画素のまとまりからなるセグメントという小領域に細分する。ここで、セグメントが含む画素数は特に限定されず、適宜設定され得る。次に、明度算出部82は、1つのセグメントに注目し、当該セグメント内の明度の平均値を算出する。続いて、注目するセグメントを順次変えていき、各セグメント内の明度の平均値を算出し、第1領域内の全てのセグメントの平均値を算出する。
【0075】
その後、明度算出部82は、上面画像の第1領域において水平方向(x方向)、垂直方向(y方向)またはその両方に連続した2つ以上の(例えば4つの)セグメント群について、当該セグメント群に含まれる各セグメントの明度の平均値の最大値と最小値との差、換言すればセグメント間の明度差(セグメント明度差)を算出する。上述したように、樹脂組成物の製造工程が正常に進行している場合、第1領域内に写しだされている混合物の液面等には、浮遊している樹脂組成物および/または重合体微粒子がないか、またはわずかに存在している。一方で、樹脂組成物の製造工程が異常な状態で進行している場合、第1領域内に写しだされている混合物の液面等には、浮遊している樹脂組成物および/または重合体微粒子が一定量以上存在している。ここで、上面画像の第1領域において、(i)樹脂組成物および/または重合体微粒子が浮遊していないか、またはわずかに浮遊している混合物の液面等の画素値と、(ii)当該樹脂組成物および/または重合体微粒子の画素値との間には、一定以上の差が有り得る。それ故、第1領域中のセグメントにおいて、(i)浮遊している樹脂組成物および/または重合体微粒子(例えば微細樹脂)がないか、またはわずかに存在しているセグメントA内の明度の平均値と、(ii)浮遊している樹脂組成物および/または重合体微粒子(例えば微細樹脂)が一定量以上存在しているセグメントB内の明度の平均値との差、すなわちセグメント明度差は、セグメントB内に存在する樹脂組成物および/または重合体微粒子(例えば微細樹脂)の量に依存して大きくなる。
【0076】
次に、明度算出部82は、セグメント明度差と所定の第2基準値とを比較する。ここで、所定の第2基準値は、例えば、槽60内の混合物の上方から該混合物の上面を過去に撮像した画像における、第1領域に対応する領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差P(セグメント明度差P)(「P」は、本判定方法の撮像工程で撮像し取得された画像ではなく、本判定方法の撮像工程の実施前、すなわち過去に撮像した画像から取得(算出)されたセグメント明度差であることを示している。)である。過去に撮像される混合物は、判定対象の混合物に含まれる樹脂組成物および水系液体と、同じ組成を有する樹脂組成物および水系液体を含む混合物であることが好ましい。続いて、明度算出部82は、セグメント明度差が所定の第2基準値よりも大きい隣り合うセグメント群を同じセグメントグループとしてまとめるための処理を施す。この方法としては、特に限定されず、例えば、(i)セグメント明度差が所定の第2基準値よりも大きい隣り合うセグメント同士を線で結び、外周を作成する方法、および(ii)セグメント明度差が所定の第2基準値よりも大きい隣り合うセグメント群を円で囲う方法、などが挙げられる。かかる処理により得られたセグメントグループの個数をセグメントのグループ数(セグメントグループ数)と称する場合がある。明度算出部82により算出されたセグメントグループ数は、判定部83に入力される。
【0077】
続いて、判定部83は、セグメントグループ数と所定の第3基準値とを比較し、セグメントグループ数が所定の第3基準値より多いか、または少ないかといった第2比較結果を算出する。ここで、所定の第3基準値は、例えば、前記セグメント間の明度差Pと、前記所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいて算出されるセグメントのグループ数P(「P」は、本判定方法の撮像工程で撮像し取得された画像ではなく、本判定方法の撮像工程の実施前、すなわち過去に撮像した画像から取得(算出)されたグループ数であることを示している。)である。上述したように、セグメント内に存在する樹脂組成物および/または重合体微粒子(例えば微細樹脂)の量が多いほど、当該セグメントと、当該セグメントに隣接するセグメントとの間の明度差(セグメント明度差)は大きくなる。それ故、第1領域内に存在する樹脂組成物および/または重合体微粒子(例えば微細樹脂)の量が多いほど、セグメントグループ数が多くなる傾向にある。したがって、判定部83は、例えば、第2比較結果が、前記所定の第3基準値よりも前記セグメントのグループ数が大きいという結果である場合、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物が存在する、および/または、(b)該混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)が存在する、と判定する。判定部83は、セグメントグループ数が所定の第3基準値より大きい場合、(a)混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物が存在すること、および(b)該混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)が存在すること、のうちの少なくともいずれかを判定すればよく、樹脂組成物または重合体微粒子(A)の何れが存在するかを判定する必要はない。混合物の液面等または混合物中に、樹脂組成物または重合体微粒子(A)が存在するかは、明度算出に用いた上面画像を目視で確認して、判定すればよい。
【0078】
(評価方法の構成)
次に、本評価システムが行う処理の流れの一例、すなわち本評価方法の一例について、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る評価システム100が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0079】
まず、撮像装置2は、混合物の上方から該混合物の上面を撮像し、上面画像データを評価装置1へ送信する(不図示)。
【0080】
続いて、評価装置1の画像取得部81は、ステップS1において、撮像装置2から、混合物の上面を撮像した上面画像を取得する(撮像工程)。
【0081】
次に、上面画像が入力されたことに応じて、明度算出部82は、ステップS2において、第1領域の各画素が有する明度の平均値を算出する。
【0082】
続いて、判定部は、ステップS3において、算出した明度の平均値と所定の第1基準値とを比較する。
【0083】
さらに、判定部は、ステップS4において、第1比較結果に基づいて、(a)混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物(浮き樹脂)、および/または、(b)混合物の液面等に浮遊した重合体微粒子(A)、の有無を判定し、判定結果を出力する。
【0084】
ステップS1が撮像工程である。なお、本評価方法は、撮像装置2による混合物の上面の撮像は、必須工程としない。本評価方法において、撮像装置2による混合物の上面の撮像が実施されない場合、画像取得部81は、ステップS1において、例えば、任意の時宜に取得された上面画像を記憶している上面画像管理装置(不図示)から、上面画像を取得すればよい。
【0085】
明度算出部82による平均値の算出から、ステップS4までが第1比較結果に基づく判定工程である。すなわち、
図4は、評価システム100が行う、第1比較結果に基づく判定の処理の流れの一例を示すフローチャートともいえる。
【0086】
次に、本評価システムが行う処理の流れの他の一例、すなわち本評価方法の他の一例について、
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る評価システム100が行う処理の流れの他の一例を示すフローチャートである。
【0087】
まず、撮像装置2は、混合物の上方から該混合物の上面を撮像し、上面画像データを評価装置1へ送信する(不図示)。
【0088】
続いて、評価装置1の画像取得部81は、ステップS11において、撮像装置2から、混合物の上面を撮像した上面画像を取得する(撮像工程)。
【0089】
次に、上面画像が入力されたことに応じて、明度算出部82は、ステップS12において、(a)第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差(セグメント明度差)を算出し、さらに(b)算出したセグメント明度差と所定の第2基準値とを比較した比較結果に基づいてセグメントのグループ数(セグメントグループ数)を算出する。
【0090】
続いて、判定部は、ステップS13において、算出したセグメントグループ数と所定の第3基準値とを比較する。
【0091】
さらに、判定部は、ステップS14において、第2比較結果に基づいて、(a)混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物(微細樹脂)、および/または、(b)混合物の液面等に浮遊した重合体微粒子(A)、の有無を判定し、判定結果を出力する。
【0092】
ステップS11が撮像工程であり、明度算出部82によるセグメント明度差の算出から、ステップS14までが第2比較結果に基づく判定工程である。すなわち、
図5は、評価システム100が行う、第2比較結果に基づく判定の処理の流れの一例を示すフローチャートともいえる。
【0093】
以下、重合体微粒子(A)、樹脂(B)、樹脂組成物、水系液体および混合物について、説明する。
【0094】
(2-2.重合体微粒子(A))
重合体微粒子(A)は、重合により得られる微粒子である。重合体微粒子(A)は、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体からなるグラフト部を有することが好ましい。
【0095】
(グラフト部)
本明細書において、「グラフト部」とは、任意の重合体に対してグラフト結合された重合体を意図する。グラフト部を有する重合体微粒子(A)は、グラフト共重合体ともいえる。すなわち、重合体微粒子(A)は、グラフト共重合体であることが好ましい。重合体微粒子(A)がグラフト共重合体であることにより、樹脂組成物またはその硬化物において重合体微粒子(A)が1次粒子の状態で分散し得るという利点を有する。
【0096】
グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体である(を含む)ことが好ましい。前記構成を有するグラフト部は、種々の役割を担うことができる。「種々の役割」とは、例えば、(a)重合体微粒子(A)と後述するマトリクス樹脂との相溶性を向上させること、(b)マトリクス樹脂における重合体微粒子(A)の分散性を向上させること、および(c)樹脂組成物またはその硬化物において重合体微粒子(A)が1次粒子の状態で分散することを可能にすること、などである。
【0097】
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、およびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0098】
ビニルシアン単量体の具体例としては、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0099】
(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意図する。
【0100】
上述した、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体は、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0101】
グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体に由来する構成単位、ビニルシアン単量体に由来する構成単位および(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位を合計で、グラフト部100重量%中に、10~95重量%含むことが好ましく、30~92重量%含むことがより好ましく、50~90重量%含むことがさらに好ましく、60~87重量%含むことが特に好ましく、70~85重量%含むことが最も好ましい。
【0102】
グラフト部は、構成単位として、反応性基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。前記反応性基を有する単量体は、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、アミノ基、イミド基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、環状エステル、環状アミド、ベンズオキサジン基、およびシアン酸エステル基からなる群から選択される1種以上の反応性基を有する単量体であることが好ましく、エポキシ基、水酸基、およびカルボン酸基からなる群から選択される1種以上の反応性基を有する単量体であることがより好ましく、エポキシ基を有する単量体であることが最も好ましい。前記構成によると、樹脂組成物中で重合体微粒子(A)のグラフト部と後述するマトリクス樹脂(例えば熱硬化性樹脂)とを化学結合させることができる。これにより、樹脂組成物中またはその硬化物中で、重合体微粒子(A)を凝集させることなく、重合体微粒子(A)の良好な分散状態を維持することができる。
【0103】
上述した反応性基を有する単量体は、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0104】
グラフト部は、グラフト部100重量%中、反応性基を有する単量体に由来する構成単位を、0.5~90重量%含むことが好ましく、1~50重量%含むことがより好ましく、2~35重量%含むことがさらに好ましく、3~20重量%含むことが特に好ましい。グラフト部が、グラフト部100重量%中、反応性基を有する単量体に由来する構成単位を、(a)0.5重量%以上含む場合、得られる樹脂組成物は、十分な耐衝撃性を有する硬化物を提供することができ、(b)90重量%以下含む場合、得られる樹脂組成物は、十分な耐衝撃性を有する硬化物を提供することができ、かつ、当該樹脂組成物の貯蔵安定性が良好となるという利点を有する。
【0105】
反応性基を有する単量体に由来する構成単位は、グラフト部に含まれることが好ましく、グラフト部にのみ含まれることがより好ましい。
【0106】
グラフト部は、構成単位として、多官能性単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。グラフト部が、多官能性単量体に由来する構成単位を含む場合、(a)樹脂組成物中において重合体微粒子(A)の膨潤を防止することができる、(b)樹脂組成物の粘度が低くなるため、樹脂組成物の取扱い性が良好となる傾向がある、および(c)後述するマトリクス樹脂における重合体微粒子(A)の分散性が向上する、などの利点を有する。
【0107】
グラフト部が多官能性単量体に由来する構成単位を含まない場合、グラフト部が多官能性単量体に由来する構成単位を含む場合と比較して、得られる樹脂組成物は、靱性および耐衝撃性により優れる硬化物を提供することができる。
【0108】
グラフト部は、グラフト部100重量%中、多官能性単量体に由来する構成単位を、1~20重量%含むことが好ましく、5~15重量%含むことがより好ましい。
【0109】
グラフト部の重合において、上述した単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、グラフト部は、構成単位として、上述した単量体に由来する構成単位の他に、他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0110】
また、グラフト部は、後述する弾性体に対してグラフト結合された重合体であることが好ましい。
【0111】
(グラフト部のガラス転移温度)
グラフト部のガラス転移温度は、190℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、140℃以下がより好ましく、120℃以下がより好ましく、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がより好ましく、10℃以下がより好ましく、0℃以下がより好ましく、-20℃以下がより好ましく、-40℃以下がより好ましく、-45℃以下がより好ましく、-50℃以下がより好ましく、-55℃以下がより好ましく、-60℃以下がより好ましく、-65℃以下がより好ましく、-70℃以下がより好ましく、-75℃以下がより好ましく、-80℃以下がより好ましく、-85℃以下がより好ましく、-90℃以下がより好ましく、-95℃以下がより好ましく、-100℃以下がより好ましく、-105℃以下がより好ましく、-110℃以下がより好ましく、-115℃以下がより好ましく、-120℃以下がさらに好ましく、-125℃以下が特に好ましい。
【0112】
グラフト部のガラス転移温度は、0℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。
【0113】
グラフト部のTgは、グラフト部に含まれる構成単位の組成などによって、決定され得る。換言すれば、グラフト部を製造(重合)するときに使用する単量体の組成を変化させることにより、得られるグラフト部のTgを調整することができる。
【0114】
グラフト部のTgは、重合体微粒子(A)からなる平面板を用いて、粘弾性測定を行うことによって得ることができる。具体的には、以下のようにしてTgを測定できる:(1)重合体微粒子(A)からなる平面板について、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御株式会社製、DVA-200)を用いて、引張条件で動的粘弾性測定を行い、tanδのグラフを得る;(2)得られたtanδのグラフについて、tanδのピーク温度をガラス転移温度とする。ここで、tanδのグラフにおいて、複数のピークが得られた場合には、最も高いピーク温度をグラフト部のガラス転移温度とする。
【0115】
(グラフト部の変形例)
本発明の一実施形態において、グラフト部は、同一の組成の構成単位を有する1種のグラフト部のみからなってもよい。本発明の一実施形態において、グラフト部は、それぞれ異なる組成の構成単位を有する複数種のグラフト部からなってもよい。
【0116】
本発明の一実施形態において、グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合について説明する。この場合、複数種のグラフト部のそれぞれを、グラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部nとする(nは2以上の整数)。グラフト部は、それぞれ別々に重合されたグラフト部1、グラフト部2、・・・、およびグラフト部nの複合体を含んでいてもよい。グラフト部は、グラフト部1、グラフト部2、・・・、およびグラフト部nをそれぞれ順に重合して得られる1つの重合体を含んでいてもよい。このように、複数の重合部(グラフト部)をそれぞれ順に重合することを、多段重合とも称する。複数種のグラフト部を多段重合して得られる重合体を、多段重合グラフト部とも称する。多段重合グラフト部の製造方法については、後に詳述する。
【0117】
グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、これら複数種のグラフト部の全てが弾性体に対してグラフト結合されていなくてもよい。少なくとも1種のグラフト部の少なくとも一部が弾性体に対してグラフト結合されていればよく、その他の種(その他の複数種)のグラフト部は、弾性体に対してグラフト結合されているグラフト部にグラフト結合されていてもよい。また、グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、複数種のグラフト部と同じ構成を有する重合体であり、かつ弾性体に対してグラフト結合されていない複数種の重合体(複数種の非グラフト重合体)を有していてもよい。
【0118】
グラフト部1、グラフト部2、・・・、およびグラフト部nからなる多段重合グラフト部について説明する。当該多段重合グラフト部において、グラフト部nは、グラフト部n-1の少なくとも一部を被覆し得るか、またはグラフト部n-1の全体を被覆し得る。当該多段重合グラフト部において、グラフト部nの一部はグラフト部n-1の内側に入り込んでいることもある。
【0119】
多段重合グラフト部において、複数のグラフト部のそれぞれが、層構造を形成していてもよい。例えば、多段重合グラフト部が、グラフト部1、グラフト部2、およびグラフト部3からなる場合、グラフト部1がグラフト部における最内層を形成し、グラフト部1の外側にグラフト部2の層が形成され、さらにグラフト部2の層の外側にグラフト部3の層が最外層として形成される態様も、本発明の一態様である。このように、複数のグラフト部のそれぞれが層構造を形成している多段重合グラフト部は、多層グラフト部ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、グラフト部は、(a)複数種のグラフト部の複合体、(b)多段重合グラフト部および/または(c)多層グラフト部を含んでいてもよい。
【0120】
重合体微粒子(A)の製造において任意の重合体(例えば後述する弾性体)とグラフト部とがこの順で重合される場合、得られる重合体微粒子(A)において、グラフト部の少なくとも一部分は、任意の重合体の少なくとも一部分を被覆し得る。任意の重合体とグラフト部とがこの順で重合されるとは、換言すれば、任意の重合体とグラフト部とが多段重合されるともいえる。任意の重合体とグラフト部とを多段重合して得られる重合体微粒子(A)は、多段重合体ともいえる。
【0121】
重合体微粒子(A)が多段重合体である場合、グラフト部は任意の重合体(例えば後述する弾性体)の少なくとも一部を被覆し得るか、または任意の重合体の全体を被覆し得る。重合体微粒子(A)が多段重合体である場合、グラフト部の一部は任意の重合体の内側に入り込んでいることもある。グラフト部の少なくとも一部分は、弾性体の少なくとも一部分を被覆していることが好ましい。換言すれば、グラフト部の少なくとも一部分は、重合体微粒子(A)の最も外側に存在することが好ましい。
【0122】
重合体微粒子(A)が多段重合体である場合、任意の重合体(例えば後述する弾性体)およびグラフト部が、層構造を形成していてもよい。例えば、弾性体が最内層(コア層とも称する。)を形成し、弾性体の外側にグラフト部の層が最外層(シェル層とも称する。)として形成される態様も、本発明の一態様である。弾性体をコア層とし、グラフト部をシェル層とする構造はコアシェル構造ともいえる。このように、弾性体およびグラフト部が層構造(コアシェル構造)を形成している重合体微粒子(A)は、多層重合体またはコアシェル重合体ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)は、多段重合体であってもよく、かつ/または、多層重合体もしくはコアシェル重合体であってもよい。ただし、グラフト部を有している限り、重合体微粒子(A)は前記構成に制限されるわけではない。
【0123】
(弾性体)
重合体微粒子(A)は、さらに弾性体を有するものであることが好ましい。上述したグラフト部は、弾性体に対してグラフト結合された重合体であることが好ましい。すなわち、重合体微粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体であることがより好ましい。以下、重合体微粒子(A)がゴム含有グラフト共重合体である場合を例に挙げて、本発明の一実施形態を説明する。
【0124】
当該弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。弾性体は、上述したゴム以外に、天然ゴムを含んでいてもよい。弾性体は、弾性部またはゴム粒子と言い換えることもできる。
【0125】
弾性体がジエン系ゴムを含む場合(場合A)について説明する。場合Aにおいて、得られる樹脂組成物は、靱性および耐衝撃性に優れる硬化物を提供することができる。靱性および/または耐衝撃性に優れる硬化物は、耐久性に優れる硬化物ともいえる。
【0126】
前記ジエン系ゴムは、構成単位として、ジエン系単量体に由来する構成単位を含む弾性体である。前記ジエン系単量体は、共役ジエン系単量体と言い換えることもできる。場合Aにおいて、ジエン系ゴムは、構成単位100重量%中、ジエン系単量体に由来する構成単位を50~100重量%、およびジエン系単量体と共重合可能なジエン系単量体以外のビニル系単量体に由来する構成単位を0~50重量%、含むものであってもよい。場合Aにおいて、ジエン系ゴムは、構成単位として、ジエン系単量体に由来する構成単位よりも少ない量において、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0127】
場合Aにおいて、ジエン系ゴムとしては、1,3-ブタジエンに由来する構成単位からなるブタジエンゴム(ポリブタジエンゴムとも称する。)、または、1,3-ブタジエンとスチレンとの共重合体であるブタジエン-スチレンゴム(ポリスチレン-ブタジエンとも称する。)が好ましく、ブタジエンゴムがより好ましい。前記構成によると、重合体微粒子(A)がジエン系ゴムを含むことによる所望の効果がより発揮され得る。また、ブタジエン-スチレンゴムは、屈折率の調整により、得られる硬化物の透明性を高めることができる点においても、より好ましい。
【0128】
弾性体が(メタ)アクリレート系ゴムを含む場合(場合B)について説明する。場合Bでは、多種の単量体の組合せにより、弾性体の幅広い重合体設計が可能となる。
【0129】
前記(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位として、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位を含む弾性体である。場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位100重量%中、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位を50~100重量%、および(メタ)アクリレート系単量体と共重合可能な(メタ)アクリレート系単量体以外のビニル系単量体に由来する構成単位を0~50重量%、含むものであってもよい。場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位として、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位よりも少ない量において、ジエン系単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0130】
場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムとしては、エチル(メタ)アクリレートゴム、ブチル(メタ)アクリレートゴムおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートゴムからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートゴムがより好ましい。エチル(メタ)アクリレートゴムはエチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位からなるゴムであり、ブチル(メタ)アクリレートゴムはブチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位からなるゴムであり、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートゴムは2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートに由来する構成単位からなるゴムである。当該構成によると、弾性体のガラス転移温度(Tg)が低くなるためTgが低い重合体微粒子(A)および樹脂組成物が得られる。その結果、(a)得られる樹脂組成物は、優れた靱性を有する硬化物を提供でき、かつ(b)当該樹脂組成物の粘度をより低くすることができる。
【0131】
(メタ)アクリレート系単量体と共重合可能な(メタ)アクリレート系単量体以外のビニル系単量体(以下、ビニル系単量体B、とも称する。)としては、前記ビニル系単量体Aにおいて列挙した単量体が挙げられる。ビニル系単量体Bは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ビニル系単量体Bの中でも、特に好ましくはスチレンである。なお、場合Bにおける(メタ)アクリレート系ゴムにおいて、ビニル系単量体Bに由来する構成単位は任意成分である。場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムは、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位のみから構成されてもよい。
【0132】
弾性体がオルガノシロキサン系ゴムを含む場合(場合C)について説明する。場合Cにおいて、得られる樹脂組成物は、十分な耐熱性を有し、かつ低温での耐衝撃性に優れる硬化物を提供することができる。
【0133】
本明細書において、ジメチルシリルオキシ単位から構成される重合体をジメチルシリルオキシゴムと称し、メチルフェニルシリルオキシ単位から構成される重合体をメチルフェニルシリルオキシゴムと称し、ジメチルシリルオキシ単位とジフェニルシリルオキシ単位とから構成される重合体をジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシゴムと称する。場合Cにおいて、オルガノシロキサン系ゴムとしては、(a)得られる樹脂組成物が耐熱性に優れる硬化物または成形体を提供することができることから、ジメチルシリルオキシゴム、メチルフェニルシリルオキシゴムおよびジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシゴムからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、(b)容易に入手できて経済的でもあることから、ジメチルシリルオキシゴムであることがより好ましい。
【0134】
場合Cにおいて、重合体微粒子(A)は、重合体微粒子(A)に含まれる弾性体100重量%中、オルガノシロキサン系ゴムを80重量%以上含有していることが好ましく、90重量%以上含有していることがより好ましい。前記構成によると、得られる樹脂組成物は、耐熱性に優れる硬化物を提供することができる。
【0135】
弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴム以外の弾性体をさらに含んでいてもよい。ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴム以外の弾性体としては、例えば天然ゴムが挙げられる。
【0136】
本発明の一実施形態において、弾性体は、ブタジエンゴム、ブタジエン-スチレンゴム、ブタジエン-(メタ)アクリレートゴム、エチル(メタ)アクリレートゴム、ブチル(メタ)アクリレートゴム、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートゴム、ジメチルシリルオキシゴム、メチルフェニルシリルオキシゴム、およびジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシゴムからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、ブタジエンゴム、ブタジエン-スチレンゴム、ブチル(メタ)アクリレートゴム、およびジメチルシリルオキシゴムからなる群より選択される1種以上であることがより好ましい。
【0137】
(弾性体の架橋構造)
重合体微粒子(A)の後述するマトリクス樹脂(例えば熱硬化性樹脂)中での分散安定性を保持する観点から、弾性体には、架橋構造が導入されていることが好ましい。弾性体に対する架橋構造の導入方法としては、一般的に用いられる手法を採用することができ、例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、弾性体の製造において、弾性体を構成し得る単量体に、多官能性単量体および/またはメルカプト基含有化合物などの架橋性単量体を混合し、次いで重合する方法が挙げられる。本明細書において、弾性体など重合体を製造することを、重合体を重合する、とも称する。
【0138】
また、オルガノシロキサン系ゴムに架橋構造を導入する方法としては、次のような方法も挙げられる:(A)オルガノシロキサン系ゴムを重合するときに、多官能性のアルコキシシラン化合物と他の材料とを併用する方法、(B)反応性基(例えば(a)メルカプト基および(b)反応性を有するビニル基、など)をオルガノシロキサン系ゴムに導入し、その後、得られた反応生成物に、(a)有機過酸化物または(b)重合性を有するビニル単量体などを添加してラジカル反応させる方法、または、(C)オルガノシロキサン系ゴムを重合するときに、多官能性単量体および/またはメルカプト基含有化合物などの架橋性単量体を他の材料と共に混合し、次いで重合を行う方法、など。
【0139】
多官能性単量体としては、上述した(グラフト部)の項で例示した多官能性単量体が挙げられる。
【0140】
(弾性体のガラス転移温度)
弾性体のガラス転移温度は、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下がより好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がより好ましく、20℃以下がより好ましく、10℃以下がより好ましく、0℃以下がより好ましく、-20℃以下がより好ましく、-40℃以下がより好ましく、-45℃以下がより好ましく、-50℃以下がより好ましく、-55℃以下がより好ましく、-60℃以下がより好ましく、-65℃以下がより好ましく、-70℃以下がより好ましく、-75℃以下がより好ましく、-80℃以下がより好ましく、-85℃以下がより好ましく、-90℃以下がより好ましく、-95℃以下がより好ましく、-100℃以下がより好ましく、-105℃以下がより好ましく、-110℃以下がより好ましく、-115℃以下がより好ましく、-120℃以下がさらに好ましく、-125℃以下が特に好ましい。本明細書において、「ガラス転移温度」を「Tg」と称する場合もある。当該構成によると、低いTgを有する重合体微粒子(A)、および、低いTgを有する樹脂組成物を得ることができる。その結果、得られる樹脂組成物は、優れた靱性を有する硬化物を提供できる。また、当該構成によると、得られる樹脂組成物の粘度を、より低くすることができる。弾性体のTgは、重合体微粒子(A)からなる平面板を用いて、粘弾性測定を行うことによって得ることができる。具体的には、以下のようにしてTgを測定できる:(1)重合体微粒子(A)からなる平面板について、動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御株式会社製、DVA-200)を用いて、引張条件で動的粘弾性測定を行い、tanδのグラフを得る;(2)得られたtanδのグラフについて、tanδのピーク温度をガラス転移温度とする。ここで、tanδのグラフにおいて、複数のピークが得られた場合には、最も低いピーク温度を弾性体のガラス転移温度とする。
【0141】
一方、得られる硬化物の弾性率(剛性)の低下を抑制することができる、すなわち十分な弾性率(剛性)を有する硬化物が得られることから、弾性体のTgは、0℃よりも大きいことが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましく、120℃以上であることが最も好ましい。
【0142】
(弾性体の体積平均粒子径)
弾性体の体積平均粒子径は、0.03μm~50.00μmが好ましく、0.05μm~10.00μmがより好ましく、0.08μm~2.00μmがより好ましく、0.10μm~1.00μmがさらに好ましく、0.10μm~0.80μmがよりさらに好ましく、0.10μm~0.50μmが特に好ましい。弾性体の体積平均粒子径が(a)0.03μm以上である場合、所望の体積平均粒子径を有する弾性体を安定的に得ることができ、(b)50.00μm以下である場合、得られる硬化物または成形体の耐熱性および耐衝撃性が良好となる。弾性体の体積平均粒子径は、弾性体を含む水性懸濁液を試料として、動的光散乱式粒子径分布測定装置などを用いて、測定することができる。弾性体の体積平均粒子径の測定方法については、下記実施例にて詳述する。
【0143】
(弾性体の割合)
重合体微粒子(A)中に占める弾性体の割合は、重合体微粒子(A)全体を100重量%として、40~97重量%が好ましく、60~95重量%がより好ましく、70~93重量%がさらに好ましい。弾性体の前記割合が、(a)40重量%以上である場合、得られる樹脂組成物は、靱性および耐衝撃性に優れる硬化物を提供することができ、(b)97重量%以下である場合、重合体微粒子(A)は容易には凝集しないため、樹脂組成物が高粘度となることがなく、その結果、得られる樹脂組成物は取り扱いに優れたものとなり得る。
【0144】
(弾性体のゲル含量)
弾性体は、適切な溶媒に対して膨潤し得るが、実質的には溶解しないものであることが好ましい。弾性体は、使用する後述するマトリクス樹脂(例えば熱硬化性樹脂)に対して、不溶であることが好ましい。
【0145】
弾性体は、ゲル含量が60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。弾性体のゲル含量が前記範囲内である場合、得られる樹脂組成物は、靱性に優れる硬化物を提供できる。
【0146】
本明細書においてゲル含量の算出方法は下記の通りである。先ず、重合体微粒子(A)を含有する水性懸濁液を得、次に、当該水性懸濁液から、重合体微粒子(A)の粉粒体を得る。水性懸濁液から重合体微粒子(A)の粉粒体を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、(a)当該水性懸濁液中の重合体微粒子(A)を凝集させ、(b)得られる凝集物を脱水し、(c)さらに凝集物を乾燥することにより、重合体微粒子(A)の粉粒体を得る方法が挙げられる。次いで、重合体微粒子(A)の粉粒体2.0gをメチルエチルケトン(MEK)50mLに溶解する。その後、得られたMEK溶解物を、MEKに可溶な成分(MEK可溶分)とMEKに不溶な成分(MEK不溶分)とに分離する。具体的には、遠心分離機(日立工機(株)社製、CP60E)を用い、回転数30000rpmにて1時間、得られたMEK溶解物を遠心分離に供し、当該溶解物を、MEK可溶分とMEK不溶分とに分離する。ここで、遠心分離作業は合計3セット実施する。得られたMEK可溶分とMEK不溶分との重量を測定し、次式よりゲル含量を算出する。
ゲル含量(%)=(メチルエチルケトン不溶分の重量)/{(メチルエチルケトン不溶分の重量)+(メチルエチルケトン可溶分の重量)}×100。
【0147】
(弾性体の変形例)
本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、構成単位の組成が同一である1種類の弾性体、のみからなってもよい。この場合、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種類である。
【0148】
本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、構成単位の組成がそれぞれ異なる複数種の弾性体からなってもよい。この場合、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される2種類以上であってもよい。また、この場合、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびオルガノシロキサン系ゴムからなる群より選択される1種類であってもよい。換言すれば、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、構成単位の組成がそれぞれ異なる複数種のジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムまたはオルガノシロキサン系ゴムであってもよい。
【0149】
本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)の「弾性体」が、構成単位の組成がそれぞれ異なる複数種の弾性体からなる場合について説明する。この場合、複数種の弾性体のそれぞれを、弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nとする。ここで、nは2以上の整数である。重合体微粒子(A)の「弾性体」は、それぞれ別々に重合された弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nの複合体を含んでいてもよい。重合体微粒子(A)の「弾性体」は、弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nをそれぞれ順に重合して得られる1つの弾性体を含んでいてもよい。このように、複数の弾性体(重合体)をそれぞれ順に重合することを、多段重合とも称する。複数種の弾性体を多段重合して得られる1つの弾性体を、多段重合弾性体とも称する。多段重合弾性体の製造方法については、後に詳述する。
【0150】
弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nからなる多段重合弾性体について説明する。当該多段重合弾性体において、弾性体nは、弾性体n-1の少なくとも一部を被覆し得るか、または弾性体n-1の全体を被覆し得る。当該多段重合弾性体において、弾性体nの一部は弾性体n-1の内側に入り込んでいることもある。
【0151】
多段重合弾性体において、複数の弾性体のそれぞれが、層構造を形成していてもよい。例えば、多段重合弾性体が、弾性体1、弾性体2、および弾性体3からなる場合、弾性体1が最内層を形成し、弾性体1の外側に弾性体2の層が形成され、さらに弾性体2の層の外側に弾性体3の層が弾性体における最外層として形成される態様も、本発明の一態様である。このように、複数の弾性体のそれぞれが層構造を形成している多段重合弾性体は、多層弾性体ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、重合体微粒子(A)の「弾性体」は、(a)複数種の弾性体の複合体、(b)多段重合弾性体および/または(c)多層弾性体を含んでいてもよい。
【0152】
(表面架橋重合体)
ゴム含有グラフト共重合体は、弾性体、および、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部以外に、表面架橋重合体をさらに有することが好ましい。換言すれば、重合体微粒子(A)は、弾性体、および、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部以外に、表面架橋重合体をさらに有することが好ましい。以下、重合体微粒子(A)(例えばゴム含有グラフト共重合体)が、表面架橋重合体をさらに有する場合を例に挙げて、本発明の一実施形態を説明する。この場合、(a)重合体微粒子(A)の製造において、耐ブロッキング性を改善することができるとともに、(b)後述するマトリクス樹脂(例えば熱硬化性樹脂)における重合体微粒子(A)の分散性がより良好となる。これらの理由としては、特に限定されないが、以下のように推測され得る:表面架橋重合体が弾性体の少なくとも一部を被覆することにより、重合体微粒子(A)の弾性体部分の露出が減り、その結果、弾性体同士が引っ付きにくくなるため、重合体微粒子(A)の分散性が向上する。
【0153】
重合体微粒子(A)が表面架橋重合体を有する場合、さらに以下の効果も有し得る:(a)本樹脂組成物の粘度を低下させる効果、(b)弾性体における架橋密度を上げる効果、および(c)グラフト部のグラフト効率を高める効果。弾性体における架橋密度とは、弾性体全体における架橋構造の数の程度を意図する。
【0154】
表面架橋重合体は、構成単位として、多官能性単量体に由来する構成単位を30~100重量%、およびその他のビニル系単量体に由来する構成単位を0~70重量%、合計100重量%含む重合体からなる。
【0155】
表面架橋重合体の重合に用いられ得る多官能性単量体としては、上述の多官能性単量体と同じ単量体が挙げられる。それら多官能性単量体の中でも、表面架橋重合体の重合に好ましく用いられ得る多官能性単量体としては、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えばジメタクリル酸1,3-ブチレングリコールなど)、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これら多官能性単量体は、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0156】
重合体微粒子(A)は、ゴム含有グラフト共重合体の重合とは独立して重合された表面架橋重合体を含んでいてもよく、または、ゴム含有グラフト共重合体と共に重合された表面架橋重合体を含んでいてもよい。重合体微粒子(A)は、弾性体と表面架橋重合体とグラフト部とをこの順に多段重合して得られる多段重合体であってもよい。これらいずれの態様においても、表面架橋重合体は弾性体の少なくとも一部を被覆し得る。
【0157】
表面架橋重合体は、弾性体の一部とみなすこともできる。換言すれば、表面架橋重合体は、ゴム含有グラフト共重合体の一部とみなすこともでき、表面架橋重合部ともいえる。重合体微粒子(A)が表面架橋重合体を含む場合、グラフト部は、(a)表面架橋重合体以外の弾性体に対してグラフト結合されていてもよく、(b)表面架橋重合体に対してグラフト結合されていてもよく、(c)表面架橋重合体以外の弾性体および表面架橋重合体の両方に対してグラフト結合されていてもよい。重合体微粒子(A)が表面架橋重合体を含む場合、上述した弾性体の体積平均粒子径とは、表面架橋重合体を含む弾性体の体積平均粒子径を意図する。
【0158】
重合体微粒子(A)が、弾性体と表面架橋重合体とグラフト部とをこの順に多段重合して得られる多段重合体である場合(場合D)について説明する。場合Dにおいて、表面架橋重合体は、弾性体の一部を被覆し得るか、または弾性体の全体を被覆し得る。場合Dにおいて、表面架橋重合体の一部は弾性体の内側に入り込んでいることもある。場合Dにおいて、グラフト部は、表面架橋重合体の一部を被覆し得るか、または表面架橋重合体の全体を被覆し得る。場合Dにおいて、グラフト部の一部は表面架橋重合体の内側に入り込んでいることもある。場合Dにおいて、弾性体、表面架橋重合体およびグラフト部が、層構造を有していてもよい。例えば、弾性体を最内層(コア層)とし、弾性体の外側に表面架橋重合体の層が中間層として存在し、表面架橋重合体の外側にグラフト部の層が最外層(シェル層)として存在する態様も、本発明の一態様である。
【0159】
(重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv))
重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)は、所望の粘度を有し、かつ高度に安定した樹脂組成物を得ることができることから、0.03μm~50.00μmが好ましく、0.05μm~10.00μmがより好ましく、0.08μm~2.00μmがより好ましく、0.10μm~1.00μmがさらに好ましく、0.10μm~0.80μmがよりさらに好ましく、0.10μm~0.50μmが特に好ましい。重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)が前記範囲内である場合、後述するマトリクス樹脂(例えば、熱硬化性樹脂)における重合体微粒子(A)の分散性が良好となるという利点も有する。なお、本明細書において、「重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)」とは、特に言及する場合を除き、重合体微粒子(A)の1次粒子の体積平均粒子径を意図する。重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は、重合体微粒子(A)を含む水性ラテックスを試料として、動的光散乱式粒子径分布測定装置などを用いて、測定することができる。
【0160】
(2-3.重合体微粒子(A)の製造方法)
以下、重合体微粒子(A)が、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含む場合を例に挙げて、重合体微粒子(A)の製造方法の一例を説明する。重合体微粒子(A)は、例えば、弾性体を重合した後、当該弾性体の存在下にて当該弾性体に対してグラフト部を構成する重合体をグラフト重合することによって、製造できる。
【0161】
重合体微粒子(A)は、公知の方法、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、マイクロサスペンジョン重合法などの方法により製造することができる。具体的には、重合体微粒子(A)における弾性体の重合、グラフト部の重合(グラフト重合)、および表面架橋重合体の重合は、公知の方法、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、マイクロサスペンジョン重合法などの方法により実施することができる。これらの中でも特に、重合体微粒子(A)の製造方法としては、乳化重合法が好ましい。乳化重合法によると、(a)重合体微粒子(A)の組成設計が容易である、および(b)重合体微粒子(A)の工業生産が容易である、という利点を有する。以下、重合体微粒子(A)に含まれ得る弾性体、グラフト部、および任意の構成である表面架橋重合体の製造方法について、説明する。
【0162】
(弾性体の製造方法)
弾性体が、ジエン系ゴムおよび(メタ)アクリレート系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種以上を含む場合を考える。この場合、弾性体は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができ、その製造方法としては、例えばWO2005/028546号公報に記載の方法を用いることができる。
【0163】
弾性体が、オルガノシロキサン系ゴムを含む場合を考える。この場合、弾性体は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができ、その製造方法としては、例えばWO2006/070664号公報に記載の方法を用いることができる。
【0164】
重合体微粒子(A)の「弾性体」が複数種の弾性体(例えば弾性体1、弾性体2、・・・、弾性体n)からなる場合について説明する。この場合、弾性体1、弾性体2、・・・、弾性体nは、それぞれ別々に上述の方法により重合され、その後混合されて複合化されることにより、複数種の弾性体からなる複合体が製造されてもよい。または、弾性体1、弾性体2、・・・、弾性体nは、それぞれ順に多段重合され、複数種の弾性体からなる1つの弾性体が製造されてもよい。
【0165】
弾性体の多段重合について、具体的に説明する。例えば、以下、(1)~(4)の工程を順に行うことにより、多段重合弾性体を得ることができる:(1)弾性体1を重合して弾性体1を得る;(2)次いで弾性体1の存在下にて弾性体2を重合して2段弾性体1+2を得る;(3)次いで弾性体1+2の存在下にて弾性体3を重合して3段弾性体1+2+3を得る;(4)以下、同様に行った後、弾性体1+2+・・・+(n-1)の存在下にて弾性体nを重合して多段重合弾性体1+2+・・・+nを得る。
【0166】
(グラフト部の製造方法)
グラフト部は、例えば、グラフト部の形成に用いる単量体を、任意の重合体(例えば弾性体)の存在下、公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。(a)弾性体、または(b)弾性体および表面架橋重合体を含む重合体微粒子前駆体、を水性懸濁液として得た場合には、グラフト部の重合は乳化重合法により行うことが好ましい。グラフト部は、例えば、WO2005/028546号公報に記載の方法に従って製造することができる。
【0167】
グラフト部が複数種のグラフト部(例えばグラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部n)からなる場合の、グラフト部の製造方法について説明する。この場合、グラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部nは、それぞれ別々に上述の方法により重合され、その後混合されて複合化されることにより、複数種のグラフト部からなるグラフト部(複合体)が製造されてもよい。または、グラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部nは、それぞれ順に多段重合され、複数種のグラフト部からなる1つのグラフト部が製造されてもよい。
【0168】
グラフト部の多段重合について、具体的に説明する。例えば、以下、(1)~(4)の工程を順に行うことにより、多段重合グラフト部を得ることができる:(1)グラフト部1を重合してグラフト部1を得る;(2)次いでグラフト部1の存在下にてグラフト部2を重合して2段グラフト部1+2を得る;(3)次いでグラフト部1+2の存在下にてグラフト部3を重合して3段グラフト部1+2+3を得る;(4)以下、同様に行った後、グラフト部1+2+・・・+(n-1)の存在下にてグラフト部nを重合して多段重合グラフト部1+2+・・・+nを得る。
【0169】
グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、複数種のグラフト部を有するグラフト部を重合した後、弾性体にそれらグラフト部をグラフト重合して、重合体微粒子(A)を製造してもよい。弾性体の存在下にて、弾性体に対して、グラフト部を構成する複数種の重合体を順に多段グラフト重合して、重合体微粒子(A)を製造してもよい。
【0170】
(表面架橋重合体の製造方法)
表面架橋重合体は、表面架橋重合体の形成に用いる単量体を、任意の重合体(例えば弾性体)の存在下、公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。弾性体を水性懸濁液として得た場合には、表面架橋重合体の重合は乳化重合法により行うことが好ましい。
【0171】
重合体微粒子(A)の製造方法として、乳化重合法を採用する場合、重合体微粒子(A)の製造には、公知の乳化剤(分散剤)を用いることができる。
【0172】
乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体などが挙げられる。アニオン性乳化剤としては、硫黄系乳化剤、リン系乳化剤、ザルコシン酸系乳化剤、カルボン酸系乳化剤などが挙げられる。硫黄系乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(略称;SDBS)などが挙げられる。リン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0173】
重合体微粒子(A)の製造方法として、乳化重合法を採用する場合、重合体微粒子(A)の製造には、熱分解型開始剤を用いることができる。前記熱分解型開始剤としては、例えば、(a)2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、並びに(b)有機過酸化物および無機過酸化物などの過酸化物、などの公知の開始剤を挙げることができる。前記有機過酸化物としては、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、およびt-ヘキシルパーオキサイドなどが挙げられる。前記無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0174】
重合体微粒子(A)の製造には、レドックス型開始剤を使用することもできる。前記レドックス型開始剤は、(a)有機過酸化物および無機過酸化物などの過酸化物と、(b)硫酸鉄(II)などの遷移金属塩や、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤を併用した開始剤である。さらに必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物などを併用してもよい。
【0175】
レドックス型開始剤を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができ、重合温度を広い範囲で設定することができるようになる。そのため、レドックス型開始剤を用いることが好ましい。レドックス型開始剤の中でも、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、およびt-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物を過酸化物として使用したレドックス型開始剤が好ましい。前記開始剤の使用量、並びに、レドックス型開始剤を用いる場合には前記還元剤、遷移金属塩およびキレート剤などの使用量は、公知の範囲で用いることができる。
【0176】
弾性体、グラフト部または表面架橋重合体に架橋構造を導入する目的で、弾性体、グラフト部または表面架橋重合体の重合に多官能性単量体を使用する場合、公知の連鎖移動剤を公知の使用量の範囲で用いることができる。連鎖移動剤を使用することにより、得られる弾性体、グラフト部もしくは表面架橋重合体の分子量および/または架橋度を容易に調節することができる。
【0177】
重合体微粒子(A)の製造には、上述した成分に加えて、さらに界面活性剤を用いることができる。前記界面活性剤の種類および使用量は、公知の範囲である。
【0178】
重合体微粒子(A)の製造において、重合における重合温度、圧力、および脱酸素などの各条件は、公知の数値範囲の条件を適宜適用することができる。
【0179】
(2-4.樹脂(B))
樹脂(B)としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との任意の組み合わせであってもよい。樹脂(B)は、後述するマトリクス樹脂(例えば熱硬化性樹脂)中にて、重合体微粒子(A)の分散性を高める効果を有し得る。
【0180】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、エチレン性不飽和単量体を重合させてなる重合体を含む樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリオール樹脂およびアミノ-ホルムアルデヒド樹脂(メラミン樹脂)からなる群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。樹脂(B)が、上記の群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂を含むことにより、(a)得られる樹脂組成物は耐熱性に優れる硬化物または成形体を提供できるとともに、(b)樹脂組成物中の重合体微粒子(A)の分散性を向上させることができる、という利点を有する。
【0181】
また、熱硬化性樹脂としては、芳香族ポリエステル原料を重合させてなる重合体を含む樹脂も挙げられる。芳香族ポリエステル原料としては、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸誘導体、シアン化ビニル化合物、マレイミド化合物などのラジカル重合性単量体、ジメチルテレフタレート、アルキレングリコールなどが挙げられる。これら熱硬化性樹脂は1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0182】
(エチレン性不飽和単量体)
エチレン性不飽和単量体としては、分子中にエチレン性不飽和結合を少なくとも1個有するものであれば特に限定されない。
【0183】
エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、α-アルキルアクリル酸、α-アルキルアクリル酸エステル、β-アルキルアクリル酸、β-アルキルアクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステル、酢酸ビニル、ビニルエステル、不飽和エステル、多不飽和カルボン酸、多不飽和エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル、無水マレイン酸およびアセトキシスチレンが挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0184】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ結合を少なくとも1個有するものであれば特に限定されない。
【0185】
エポキシ樹脂の具体例としては例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA(もしくはF)型エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、ポリブタジエンもしくはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、p-オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などのような不飽和重合体のエポキシ化物、および含アミノグリシジルエーテル樹脂、などが挙げられる。前記多価アルコールとしては、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、およびグリセリンなどが挙げられる。エポキシ樹脂としては、前記のエポキシ樹脂にビスフェノールA(もしくはF)類、または多塩基酸類などを付加反応させて得られるエポキシ化合物も挙げられる。エポキシ樹脂は、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用され得る。これらのエポキシ樹脂は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0186】
上述したエポキシ樹脂の中でもエポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するものが、樹脂組成物の硬化において、反応性が高く、かつ得られた硬化物が3次元的網目を作りやすいなどの点から好ましい。また、エポキシ樹脂としては、経済性および入手のし易さに優れることから、エポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するエポキシ樹脂の中でもビスフェノール型エポキシ樹脂を主成分とするものが好ましい。
【0187】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られる化合物であれば特に限定されない。フェノール類としては特に限定されないが、例えば、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、キシレノール、パラターシャリーブチルフェノール、パラオクチルフェノール、パラフェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびレゾルシンなどのフェノール類が挙げられる。特に好ましいフェノール類としては、フェノール、およびクレゾールが挙げられる。
【0188】
アルデヒド類としては特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、およびアクロレインなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。アルデヒド類としては、上述したアルデヒド類の発生源となる物質、またはこれらのアルデヒド類の溶液を使用することもできる。アルデヒド類としては、フェノール類とアルデヒド類とを反応させるときの操作が容易であることから、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0189】
フェノール類とアルデヒド類とを反応させるときの、フェノール類(P)とアルデヒド類(F)とのモル比(F/P)(以下、反応モル比とも称する)は特に限定されない。反応において酸触媒を使用する場合、前記反応モル比(F/P)は0.4~1.0であることが好ましく、0.5~0.8であることがより好ましい。反応においてアルカリ触媒を使用する場合、前記反応モル比(F/P)は0.4~4.0であることが好ましく、0.8~2.5であることがより好ましい。反応モル比が前記下限値以上である場合、歩留まりが低くなりすぎず、また、得られるフェノール樹脂の分子量が小さくなる虞がない。一方、反応モル比が前記上限値以下である場合、フェノール樹脂の分子量が大きくなりすぎずかつ軟化点が高くなりすぎないため、加熱時に充分な流動性を得られる。また、反応モル比が前記上限値以下である場合、分子量のコントロールが容易であり、反応条件に起因したゲル化、もしくは部分的なゲル化物が生じる虞がない。
【0190】
(ポリオール樹脂)
ポリオール樹脂は、末端に活性水素を2個以上有する化合物であり、分子量50~20,000程度の2官能以上のポリオールである。ポリオール樹脂としては、脂肪族アルコール類、芳香族アルコール類、ポリエーテル型ポリオール類、ポリエステル型ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、およびアクリルポリオール類などを挙げることができる。
【0191】
脂肪族アルコールは、二価アルコール、または三価以上のアルコール(三価アルコール、四価アルコールなど)のいずれであってもよい。二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール類(特に炭素数が1~6程度のアルキレングリコール類)、当該アルキレングリコール類の2分子以上(例えば、2~6分子程度)の脱水縮合物(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど)などが挙げられる。三価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオールなど(特に炭素数が3~10程度の三価アルコール)が挙げられる。四価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどが挙げられる。また、単糖、オリゴ糖、多糖などの糖類が挙げられる。
【0192】
芳香族アルコールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類;ジヒドロキシビフェニルなどのビフェニル類;ハイドロキノン、フェノールホルムアルデヒド縮合物などの多価フェノール類;ナフタレンジオールなどが挙げられる。
【0193】
ポリエーテル型ポリオールとしては、例えば、活性水素を含有する開始剤、1種類または2種以上の存在下、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどを開環重合して得られるランダム共重合体またはブロック共重合体など、およびこれら共重合体の混合物などが挙げられる。ポリエーテル型ポリオールの開環重合に用いられる、活性水素を含有する開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAなどのジオール類;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類;単糖、オリゴ糖、多糖などの糖類;ソルビトール;アンモニア、エチレンジアミン、尿素、モノメチルジエタノールアミン、モノエチルジエタノールアミンなどのアミン類;などが挙げられる。
【0194】
ポリエステル型ポリオールとしては、例えば(a)マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、アゼライン酸などの多塩基酸および/またはその酸無水物と、(b)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどの多価アルコールとを、エステル化触媒の存在下、150~270℃の温度範囲で重縮合させて得られる重合体が挙げられる。さらに、(a)ポリエステル型ポリオールとしては、ε-カプロラクトン、バレロラクトンなどの開環重合物、および、(b)ポリカーボネートジオール、ヒマシ油などの活性水素を2個以上有する活性水素化合物、などが挙げられる。
【0195】
ポリオレフィン型ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、およびそれらの水添物などが挙げられる。
【0196】
アクリルポリオールとしては、例えば、(a)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびビニルフェノールなどの水酸基含有単量体と、(b)n-ブチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの汎用単量体との共重合体、並びにそれら共重合体の混合物などが挙げられる。
【0197】
これらポリオール樹脂の中でも、得られる樹脂組成物の粘度が低く作業性に優れ、当該樹脂組成物が硬度と靱性とのバランスに優れた硬化物を提供できることから、ポリエーテル型ポリオールが好ましい。また、これらポリオール樹脂の中でも、得られる樹脂組成物が接着性に優れる硬化物を提供できることから、ポリエステル型ポリオールが好ましい。
【0198】
(アミノ-ホルムアルデヒド樹脂)
アミノ-ホルムアルデヒド樹脂は、アミノ化合物とアルデヒド類とをアルカリ性触媒下で反応させて得られる化合物であれば特に限定されない。前記アミノ化合物としては、メラミン;グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどの6-置換グアナミン類;CTUグアナミン(3,9-ビス[2-(3,5-ジアミノ-2,4,6-トリアザフェニル)エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)、CMTUグアナミン(3,9-ビス[(3,5-ジアミノ-2,4,6-卜リアザフェニル)メチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などのアミン置換トリアジン化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素などの尿素類を挙げることができる。また前記アミノ化合物としては、メラミンのアミノ基の水素をアルキル基、アルケニル基、および/またはフェニル基で置換した置換メラミン化合物(米国特許第5,998,573号明細書(対応日本公開公報:特開平9-143238号)に記載されている。)、並びに、メラミンのアミノ基の水素をヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシアルキル基、および/またはアミノアルキル基で置換した置換メラミン化合物(米国特許第5,322,915号明細書(対応日本公開公報:特開平5-202157号)に記載されている。)なども使用することができる。前記アミノ化合物としては、上述した化合物中でも、工業的に生産されており安価であることから、多官能性アミノ化合物である、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、およびベンゾグアナミンが好ましく、メラミンが特に好ましい。上述したアミノ化合物は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。またこれらアミノ化合物に加えて、(a)フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、レゾルシン、ハイドロキノン、およびピロガロールなどのフェノール類、並びに(b)アニリン、などを追加して用いても良い。
【0199】
前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、およびフルフラールなどが挙げられる。前記アルデヒド類としては、安価であり、先に挙げたアミノ化合物との反応性が良いことから、ホルムアルデヒド、およびパラホルムアルデヒドが好ましい。アミノ-ホルムアルデヒド樹脂の製造において、アルデヒド類は、アミノ化合物1モルに対して、有効アルデヒド基当たり1.1~6.0モルを使用することが好ましく、1.2~4.0モルを使用することが特に好ましい。
【0200】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、例えば、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体などが挙げられる。樹脂(B)における熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリウレタンおよびポリ酢酸ビニルなども挙げられる。樹脂(B)において、熱可塑性樹脂は1種類のみ使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0201】
混合対象のマトリクス樹脂が熱硬化性樹脂である場合、樹脂組成物(重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物とマトリクス樹脂との混合物)またはその硬化物の種々の物性へ影響を与える虞がないことから、樹脂(B)はマトリクス樹脂の熱硬化性樹脂と同種類であることが好ましい。つまり、マトリクス樹脂の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、樹脂(B)もエポキシ樹脂であることが好ましい。樹脂(B)がマトリクス樹脂の熱硬化性樹脂と異なる場合、(a)樹脂組成物中で、樹脂(B)とマトリクス樹脂の熱硬化性樹脂とは、相分離していないことが好ましく、(b)樹脂(B)はマトリクス樹脂の熱硬化性樹脂と相溶するものであることが好ましい。
【0202】
(その他)
本明細書では、油脂および脂肪酸エステルもまた、樹脂(B)に含まれる。樹脂(B)として好適に利用できる油脂としては、エポキシ化大豆油およびエポキシ化アマニ油などのエポキシ化油脂、などが挙げられる。エポキシ化大豆油としては市販品を用いることもでき、例えば、ADEKA社製、アデカイザーO-130Pなどを挙げることができる。樹脂(B)として好適に利用できる、脂肪酸エステルとしては、エポキシ化脂肪酸ブチル、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル、エポキシ化脂肪酸オクチルエステルおよびエポキシ化脂肪酸アルキルエステルなどのエポキシ化脂肪酸エステル、などが挙げられる。
【0203】
エポキシ化油脂およびエポキシ化脂肪酸エステルは、エポキシ系可塑剤と称される場合もある。すなわち、本明細書では、エポキシ系可塑剤もまた、樹脂(B)に含まれる。エポキシ化油脂およびエポキシ化脂肪酸エステル以外のエポキシ系可塑剤としては、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエポキシステアリルおよびエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0204】
上述した、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合物、油脂、および脂肪酸エステルの各々は、酸化防止剤と混合して使用することができる。本明細書では、上述した各々の物質と混合して使用する場合に限り、酸化防止剤を樹脂(B)の一部とみなす。酸化防止剤のみを使用する場合には、酸化防止剤は樹脂(B)とはみなされない。
【0205】
酸化防止剤としては、特に限定されない。酸化防止剤としては、例えば、(a)フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤などの一次酸化防止剤、および(b)イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等の二次酸化防止剤、などが挙げられる。
【0206】
前記酸化防止剤としては、その他、従来公知の物質を使用してもよい。酸化防止剤としては、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」(昭和51年10月25日初版発行)、シーエムシー出版発行の「高分子添加剤ハンドブック」(春名徹編著、2010年11月7日第1版発行)などに記載された種々の物質を使用してもよい。
【0207】
(樹脂(B)の物性)
樹脂(B)は、25℃において、(a)100mPa・s~1,000,000mPa・sの粘度を有する液体であるか、(b)半固体であるか、または(c)固体であることが好ましい。
【0208】
樹脂(B)が25℃において液体である場合、樹脂(B)の粘度は、25℃において、1,000,000mPa・s以下であることが好ましく、750,000mPa・s以下であることがより好ましく、700,000mPa・s以下であることがより好ましく、500,000mPa・s以下であることがより好ましく、350,000mPa・s以下であることがより好ましく、300,000mPa・s以下であることがより好ましく、250,000mPa・s以下であることがより好ましく、100,000mPa・s以下であることがより好ましく、75,000mPa・s以下であることがより好ましく、50,000mPa・s以下であることがより好ましく、30,000mPa・s以下であることがより好ましく、25,000mPa・s以下であることがより好ましく、20,000mPa・s以下であることがさらに好ましく、15,000mPa・s以下であることが特に好ましい。前記構成によると、樹脂組成物は流動性に優れるという利点を有する。
【0209】
また樹脂(B)の粘度は、25℃において、100mPa・s以上であることが好ましく、200mPa・s以上であることがより好ましく、300mPa・s以上であることがより好ましく、400mPa・s以上であることがより好ましく、500mPa・s以上であることがより好ましく、750mPa・s以上であることがさらに好ましく、1000mPa・s以上であることがよりさらに好ましく、1500mPa・s以上であることが特に好ましい。当該構成によると、樹脂(B)は重合体微粒子(A)中に含浸しないが、複数の重合体微粒子(A)の粒子間に入り込むことにより重合体微粒子(A)同士の融着を防ぐことができる。そのため、樹脂(B)によって重合体微粒子(A)同士の融着を防ぐことができる。
【0210】
樹脂(B)の粘度は、25℃において、100mPa・s~750,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~700,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~350,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~300,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~50,000mPa・sがより好ましく、100mPa・s~30,000mPa・sがさらに好ましく、100mPa・s~15,000mPa・sが特に好ましい。
【0211】
樹脂(B)が25℃において半固体である場合、樹脂(B)は25℃において半液体であるともいえ、樹脂(B)は、25℃において1,000,000mPa・sより大きい粘度を有しているともいえる。樹脂(B)が、25℃において、(a)半固体であるか、または(b)固体である場合、樹脂組成物は、べたつきが少なく取り扱いやすいという利点を有する。
【0212】
さらに、混合対象のマトリクス樹脂が熱硬化性樹脂である場合、25℃における樹脂(B)の粘度は、25℃でのマトリクス樹脂(熱硬化性樹脂)の粘度に50000mPa・sを加えた値以下であることが好ましい。樹脂(B)とマトリクス樹脂(熱硬化性樹脂)の均一な混合を容易にするという点から、25℃での樹脂(B)の粘度が25℃での熱硬化性マトリクス樹脂の粘度以上の場合、25℃での樹脂(B)の粘度は、25℃でのマトリクス樹脂(熱硬化性樹脂)の粘度に20000mPa・sを加えた値以下であることがより好ましく、10000mPa・sを加えた値以下であることがより好ましく、5000mPa・sを加えた値以下であることがさらに好ましく、0mPa・sを加えた値以下であることがもっとも好ましい。
【0213】
なお、本明細書において、樹脂(B)、樹脂組成物、水系液体、および混合物の粘度は、粘度計(例えば、BROOKFIELD社製デジタル粘度計DV-II+Pro型)により測定して得られた値とする。
【0214】
樹脂(B)は、示差熱走査熱量測定(DSC)のサーモグラムにて25℃以下の吸熱ピークを有することが好ましく、0℃以下の吸熱ピークを有することがより好ましい。前記構成によると、樹脂(B)は流動性に優れるという利点を有する。
【0215】
(2-5.混合物中に含まれる樹脂組成物)
混合物中に含まれる樹脂組成物は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含み、水系液体より高い比重を有する。
【0216】
樹脂組成物の比重と水系液体の比重との間に比重差が生じ、その結果、槽60内で樹脂組成物と水系液体とを効率よく分離することができることから、樹脂組成物と水系液体との比重の差(比重差)は、25℃において、0.01kg/m3以上であることが好ましく、0.10kg/m3以上であることがより好ましく、1.00kg/m3以上であることがより好ましく、10.00kg/m3以上であることがより好ましく、50.00kg/m3以上であることがより好ましく、100.00kg/m3以上であることがさらに好ましい。樹脂組成物と水系液体との比重の差の上限は特に限定されないが、例えば樹脂組成物回収工程を安定して実施できることから、4000kg/m3以下であることが好ましく、3000kg/m3以下であることがより好ましく、2000kg/m3以下であることがさらに好ましい。
【0217】
(i)樹脂組成物の比重と水系液体の比重との間に比重差が生じ、その結果、槽60内で樹脂組成物と水系液体とを効率よく分離することができること、および(ii)例えば樹脂組成物回収工程を安定して実施できることから、樹脂組成物は、25℃において、900.01kg/m3~5000kg/m3の比重を有することが好ましく、1000kg/m3~4000kg/m3の比重を有することがより好ましく、1050kg/m3~3000kg/m3の比重を有することがさらに好ましい。本明細書において樹脂組成物の比重は、標準比重計を用いて比重標準溶液を作成し、得られた比重標準溶液に対する樹脂組成物の浮沈みの試験を行い、得られた結果から算出して得られた値とする。なお、本明細書において、樹脂組成物および水系液体の比重は、本分離方法により分離された後に得られる樹脂組成物および水系液体について測定して得られた比重であってよい。
【0218】
樹脂組成物における重合体微粒子(A)および樹脂(B)の配合比率は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物に含まれる重合体微粒子(A)と樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、(i)重合体微粒子(A)が1重量%以上、樹脂(B)が99重量%以下であってもよく、(ii)重合体微粒子(A)が2重量%以上、樹脂(B)が98重量%以下であってもよく、(iii)重合体微粒子(A)が5重量%以上、樹脂(B)が95重量%以下であってもよく、(iv)重合体微粒子(A)が10重量%以上、樹脂(B)が90重量%以下であってもよく、(v)重合体微粒子(A)が15重量%以上、樹脂(B)が85重量%以下であってもよく、(vi)重合体微粒子(A)が20重量%以上、樹脂(B)が80重量%以下であってもよく、(vii)重合体微粒子(A)が25重量%以上、樹脂(B)が70重量%以下であってもよく、(viii)重合体微粒子(A)が30重量%以上、樹脂(B)が70重量%以下であってもよく、(ix)重合体微粒子(A)が32重量%以上、樹脂(B)が68重量%以下であってもよい。また、樹脂組成物における重合体微粒子(A)および樹脂(B)の配合比率は、樹脂組成物に含まれる重合体微粒子(A)と樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、(x)重合体微粒子(A)が70%以下、樹脂(B)が30重量%以上であってもよく、(xi)重合体微粒子(A)が65%以下、樹脂(B)が35重量%以上であってもよく、(xii)重合体微粒子(A)が60%以下、樹脂(B)が40重量%以上であってもよく、(xiii)重合体微粒子(A)が55%以下、樹脂(B)が45重量%以上であってもよく、(xiv)重合体微粒子(A)が50%以下、樹脂(B)が50重量%以上であってもよく、(xv)重合体微粒子(A)が45%以下、樹脂(B)が66重量%以上であってもよい。例えば、樹脂組成物における重合体微粒子(A)および樹脂(B)の配合比率は、樹脂組成物に含まれる重合体微粒子(A)と樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、(xvi)重合体微粒子(A)が1~70重量%、樹脂(B)が30~99重量%であることが好ましく、(xvii)重合体微粒子(A)が1~65重量%、樹脂(B)が35~99重量%であることが好ましく、(xviii)重合体微粒子(A)が1~60重量%、樹脂(B)が40~99重量%であることがより好ましく、(xiv)重合体微粒子(A)が1~55重量%、樹脂(B)が45~99重量%であることがより好ましく、(xx)重合体微粒子(A)が1~50重量%、樹脂(B)が50~99重量%であることがさらに好ましく、(xxi)重合体微粒子(A)が1~45重量%、樹脂(B)が55~99重量%であることがよりさらに好ましく、(xxii)重合体微粒子(A)が1~40重量%、樹脂(B)が60~99重量%であることが特に好ましい。また、樹脂組成物における重合体微粒子(A)および樹脂(B)の配合比率は、樹脂組成物に含まれる重合体微粒子(A)と樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、(xxiii)重合体微粒子(A)が10~60重量%、樹脂(B)が40~90重量%であってもよく、(xxiv)重合体微粒子(A)が20~50重量%、樹脂(B)が50~80重量%であってもよく、(xxv)重合体微粒子(A)が25~45重量%、樹脂(B)が55~75重量%であってもよく、(xxvi)重合体微粒子(A)が30~45重量%、樹脂(B)が55~70重量%であってもよく、(xxvii)重合体微粒子(A)が32~45重量%、樹脂(B)が55~68重量%であってもよい。
【0219】
樹脂組成物の粘度は、25℃において、100mPa・s~1,000,000mPa・sであることが好ましく、100mPa・s~500,000mPa・sであることがより好ましく、1,000mPa・s~200,000mPa・sであることがより好ましく、1,000mPa・s~100,000mPa・sであることがさらに好ましく、1,000mPa・s~50,000mPa・sであることがさらに好ましい。上記の範囲の粘度を有する樹脂組成物は、槽内で好適な挙動を示し、槽内で水系液体から効率よく分離することができるという利点を有する。なお、本明細書において、樹脂組成物および水系液体の粘度は、槽を使用して分離された後に得られる樹脂組成物および水系液体について測定して得られた粘度であってよい。
【0220】
樹脂組成物は、必要に応じて、重合体微粒子(A)および樹脂(B)以外の、その他の任意成分を含有してもよい。その他の任意成分としては、ブロッキング防止剤、硬化剤、顔料および染料などの着色剤、体質顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定化剤(ゲル化防止剤)、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、減粘剤、低収縮剤、無機質充填剤、有機質充填剤、熱可塑性樹脂、乾燥剤、並びに分散剤などが挙げられる。
【0221】
樹脂組成物は、樹脂(B)以外の、公知の熱硬化性樹脂をさらに含んでいてもよいし、公知の熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。
【0222】
(2-6.混合物中に含まれる水系液体)
混合物中に含まれる水系液体は、水を含み、樹脂組成物より小さい比重を有する液体である。
【0223】
(i)樹脂組成物の比重と水系液体の比重との間に比重差が生じ、その結果、槽60内で樹脂組成物と水系液体とを効率よく分離することができること、および(ii)例えば樹脂組成物回収工程を安定して実施できることから、水系液体は、25℃において、900kg/m3~1100kg/m3の比重を有することが好ましく、950kg/m3~1050kg/m3の比重を有することがさらに好ましい。本明細書において、水系液体の比重は、標準比重計を用いて測定して得られた値とする。
【0224】
水系液体の粘度は、25℃において100mPa・s未満であることが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、25mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることがより好ましく、4mPa・s以下であることがさらに好ましい。100mPa・s未満の粘度を有する水系液体は、槽内で好適な挙動を示し、槽内で樹脂組成物から効率よく分離することができるという利点を有する。
【0225】
水系液体の粘度の下限は特に限定されないが、(i)主成分が水であること、および(ii)例えば樹脂組成物回収工程を安定して実施できることから、25℃において0.1mPa・s以上であることが好ましく、0.3mPa・s以上であることがより好ましく、0.5mPa・s以上であることがより好ましく、0.7mPa・s以上であることがさらに好ましく、1.0mPa・s以上であることがよりさらに好ましい。なお、水系液体の主成分が水であるとは、水系液体(100重量%)中、50重量%を超える量が水であることを意図する。水系液体(100重量%)中、90重量%以上が水であってもよい。
【0226】
水系液体の粘度は、水系液体中に含まれる水の比率を適宜調整することにより、所望の範囲に調節することができる。
【0227】
水系液体は、樹脂組成物の製造工程、例えば、重合体微粒子(A)の凝集物を調製する工程、当該凝集物の洗浄工程、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析物を調製する工程、当該凝析物の洗浄工程などにおいて樹脂組成物中に混入する、不純物を含んでいてもよい。水系液体に含まれる不純物としては、(i)重合体微粒子(A)の製造において使用される乳化剤、(ii)重合体微粒子(A)の凝集または重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析において使用される、凝集剤または凝析剤(無機塩)、および金属石鹸などに由来する物質、並びに(iii)これらの工程で混入し得る夾雑物(水溶性化合物)が挙げられる。水系液体に含まれる不純物は、元素S、P、Ca、Mg、Fe、Zn、Ba、およびAlなどの量を蛍光X線分析装置SPECTROXEPOS(SPECTRO社製)で測定することにより、検出および定量することができる。なお、水系液体は、水であってもよい。
【0228】
なお、本明細書では樹脂(B)を含まない、重合体微粒子(A)の集合体を「凝集物」と称し、当該凝集物の調製に使用される無機塩等を「凝集剤」と称する。また、本明細書では樹脂(B)を含む重合体微粒子(A)の集合体、換言すれば重合体微粒子(A)および樹脂(B)の集合体を、「凝析物」と称し、当該凝析物の調製に使用される無機塩等を「凝析剤」と称する。
【0229】
(2-7.樹脂組成物と水系液体との混合物)
混合物は、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物、並びに、当該樹脂組成物よりも比重が小さい水系液体を含むものであればよい。混合物に含まれる重合体微粒子(A)、樹脂(B)、樹脂組成物および水系液体については、それぞれ上述した通りである。
【0230】
(2-8.混合物の調製方法)
混合物の調製方法は特に限定されず、種々の方法を利用し得る。例えば、樹脂組成物と水とを混合することにより、混合物を調製することができる。当該調製方法で利用される樹脂組成物の調製方法としても特に限定されず、例えば、以下の(a1)~(a3)の方法が挙げられる:
(a1)重合体微粒子(A)の粉粒体と樹脂(B)とを混合し、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物を得る方法;
(a2)重合体微粒子(A)の水性ラテックスを使用して重合体微粒子(A)の凝集物を得る。得られた重合体微粒子(A)の凝集物と樹脂(B)とを混合し、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物を得る方法;および
(a3)重合体微粒子(A)および樹脂(C)を含む樹脂混合物(D)と、樹脂(B)とを混合し、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む樹脂組成物を得る方法。
【0231】
(a1)にて使用する、重合体微粒子(A)の粉粒体の製造方法としては、特に限定されず、公知のあらゆる方法を用いることができる。
【0232】
(a2)にて使用する重合体微粒子(A)の水性ラテックスは、重合体微粒子(A)を乳化重合で得ることにより得られる。
【0233】
(a2)において、重合体微粒子(A)の水性ラテックスを使用して重合体微粒子(A)の凝集物を得る方法としては、(a3-1)重合体微粒子(A)の水性ラテックスと有機溶媒とを混合し、得られる混合物と水とを接触させる方法、(a3-2)重合体微粒子(A)の水性ラテックスに無機塩等の凝集剤を添加する方法などが挙げられるが、これに限定されず、公知のあらゆる方法を用いることができる。
【0234】
(a3)における樹脂(C)としては、上記(2-4.樹脂(B))の項で説明する種々の樹脂が挙げられる。樹脂(C)は、樹脂(B)と同じ樹脂であってもよく、樹脂(B)と異なる樹脂であってもよい。樹脂混合物(D)の製造方法としては、後述する樹脂組成物の製造方法が挙げられる。
【0235】
また、国際公開公報WO2005/028546の実施例1に記載される方法で得られる混合物も、本評価方法で用いる混合物として利用できる。
【0236】
以下のような方法(a4)によって、混合物を調製してもよいが、かかる製造方法に限定されるものではない:
(a4)重合体微粒子(A)の水性ラテックスおよび樹脂(B)を含む樹脂混合物に無機塩等の凝析剤を添加し、樹脂混合物中の重合体微粒子(A)および樹脂(B)を凝析する;かかる凝析により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝析物である樹脂組成物と水系液体とを含む混合物を得る方法。
【0237】
(a4)にて使用する、重合体微粒子(A)の水性ラテックスおよび樹脂(B)を含む樹脂混合物の製造方法としては、(a1-1)重合体微粒子(A)の重合工程中に樹脂(B)を、直接添加する方法、水性エマルジョン状態にて添加する方法、もしくは溶液状態にて添加する方法、および、(a1-2)重合体微粒子(A)の水性ラテックスに対して樹脂(B)を、直接添加する方法、水性エマルジョン状態にて添加する方法、もしくは溶液状態にて添加する方法、(a1-3)重合体微粒子(A)の存在下で、樹脂(B)を重合する方法、などが挙げられるが、これらに限定されず、公知のあらゆる方法を用いることができる。
【0238】
(a4)のさらに具体的な態様としては、以下(b1)~(b4)の工程を含んでいてもよいが、かかる製造方法に限定されるものではない:(b1)重合体微粒子(A)の水性ラテックスと樹脂(B)とを混合する樹脂混合工程;(b2)前記樹脂混合工程により得られた樹脂混合物に、剪断応力を与える剪断工程;(b3)前記剪断工程により得られた樹脂混合物に対して、無機塩等の凝析剤を添加する凝析剤添加工程;(b4)前記凝析剤添加工程により得られた混合物を、混合する混合工程。
【0239】
(樹脂混合工程)
樹脂混合工程は、重合体微粒子(A)に、樹脂(B)を混合する工程である。樹脂混合工程は、重合体微粒子(A)に樹脂(B)を添加して、混合物を得る工程であると言え、得られた混合物を混ぜ合わせる工程ともいえる。樹脂混合工程は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを混合する工程ともいえる。
【0240】
樹脂混合工程において、重合体微粒子(A)は、(i)粉粒体の状態であってもよく、(ii)溶媒中で分散して存在する状態、すなわち、重合体微粒子(A)を含む(水性)ラテックスの状態であってもよい。重合体微粒子(A)を含むラテックスの製造方法は、上述した通りである。
【0241】
重合体微粒子(A)に樹脂(B)を添加する方法は、種々の方法が利用でき、特に限定されない。当該方法としては、例えば、(i)重合体微粒子(A)に対して樹脂(B)を直接添加する方法、もしくは(ii)樹脂(B)を溶解させた溶液を、重合体微粒子(A)に添加する方法、などが挙げられる。「樹脂(B)を溶解させた溶液」は、「樹脂(B)を水に分散させた乳化物」ともいえる。「乳化物」は、「乳化液」または「水性エマルジョン」とも称される場合もある。
【0242】
また、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを混合する手段も、特に限定されない。例えば、重合体微粒子(A)と樹脂(B)とを撹拌する、ニーダーで混練する、押出機で混練する、自転公転ミキサーで混合する等を挙げることができる。
【0243】
樹脂混合工程において、重合体微粒子(A)の量と、樹脂(B)の量とは、特に限定されない。樹脂混合工程は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、(i)重合体微粒子(A)1重量%以上と、樹脂(B)99重量%以下と、を混合する工程を含んでいてもよく、(ii)重合体微粒子(A)2重量%以上と、樹脂(B)98重量%以下と、を混合する工程を含んでいてもよく、(iii)重合体微粒子(A)5重量%以上と、樹脂(B)95量%以下と、を混合する工程を含んでいてもよく、(iv)重合体微粒子(A)10重量%以上と、樹脂(B)90重量%以下と、を混合する工程を含んでいてもよく、(v)重合体微粒子(A)15重量%以上と、樹脂(B)85重量%以下と、を混合する工程を含んでいてもよく、(vi)重合体微粒子(A)20重量%以上と、樹脂(B)80重量%以下と、を混合する工程を含んでいてもよく、(vii)重合体微粒子(A)25重量%以上と、樹脂(B)75重量%以下と、を混合する工程を含んでいてもよく、(viii)重合体微粒子(A)30重量%以上と、樹脂(B)70重量%以下と、を混合する工程を含んでいてもよく、(ix)重合体微粒子(A)が32重量%以上と、樹脂(B)68重量%以下と、を混合する工程を含んでいてもよい。また、樹脂混合工程は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、(x)重合体微粒子(A)70重量%以下と、樹脂(B)30重量%以上と、を混合する工程を含んでいてもよく、(xi)重合体微粒子(A)65重量%以下と、樹脂(B)35重量%以上と、を混合する工程を含んでいてもよく、(xii)重合体微粒子(A)60重量%以下と、樹脂(B)40重量%以上と、を混合する工程を含んでいてもよく、(xiii)重合体微粒子(A)55重量%以下と、樹脂(B)45重量%以上と、を混合する工程を含んでいてもよく、(xiv)重合体微粒子(A)50重量%以下と、樹脂(B)50重量%以上と、を混合する工程を含んでいてもよく、(xv)重合体微粒子(A)45重量%以下と、樹脂(B)55重量%以上と、を混合する工程を含んでいてもよい。例えば、樹脂混合工程は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、(xvi)重合体微粒子(A)1~70重量%と、樹脂(B)30~99重量%と、を混合する工程を含むことが好ましく、(xvii)重合体微粒子(A)1~65重量%と、樹脂(B)35~99重量%と、を混合する工程を含むことがより好ましく、(xviii)重合体微粒子(A)1~60重量%と、樹脂(B)40~99重量%と、を混合する工程を含むことがより好ましく、(xiv)重合体微粒子(A)1~55重量%と、樹脂(B)45~99重量%と、を混合する工程を含むことがより好ましく、(xx)重合体微粒子(A)1~50重量%と、樹脂(B)50~99重量%と、を混合する工程を含むことがさらに好ましく、(xxi)重合体微粒子(A)1~45重量%と、樹脂(B)55~99重量%と、を混合する工程を含むことがよりさらに好ましく、(xxii)重合体微粒子(A)1~40重量%と、樹脂(B)60~99重量%と、を混合する工程を含むことが特に好ましい。また、樹脂混合工程は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、(xxiii)重合体微粒子(A)10~60重量%と、樹脂(B)40~90重量%と、を混合する工程を含んでいてもよく、(xxiv)重合体微粒子(A)20~50重量%と、樹脂(B)50~80重量%と、を混合する工程を含んでいてもよく、(xxv)重合体微粒子(A)25~45重量%と、樹脂(B)55~75重量%と、を混合する工程を含んでいてもよく、(xxvi)重合体微粒子(A)30~45重量%と、樹脂(B)55~70重量%と、を混合する工程を含んでいてもよく、(xxvii)重合体微粒子(A)32~45重量%と、樹脂(B)55~68重量%と、を混合する工程を含んでいてもよい。
【0244】
樹脂混合工程において添加する重合体微粒子(A)、および樹脂(B)の量が、濃度測定工程の測定対象の混合物に含まれる重合体微粒子(A)、および樹脂(B)の量となる。それゆえ、樹脂混合工程において添加する重合体微粒子(A)、および樹脂(B)の量は、最終的に得られる樹脂組成物中の重合体微粒子(A)の濃度、および当該樹脂組成物の物性等が所望の態様となるよう調整することが好ましい。
【0245】
(剪断工程)
剪断工程は、前記樹脂混合工程により得られた混合物に、剪断応力を与える工程である。
【0246】
混合物に剪断応力を加える方法については特に限定されず、種々の技術を用いることができる。当該方法としては、例えば、ホモミキサーにより混合物を3000rpm~25000rpmで撹拌する方法、高剪断乳化機により混合物を500rpm~12000rpmで撹拌する方法、高圧式ホモジナイザーにより混合物を撹拌する方法、などを挙げることができる。
【0247】
樹脂(B)の粘度が高い場合は、樹脂(B)の粘度を最適な粘度になるように調整することが好ましい。例えば、樹脂(B)の最適な粘度としては、100mPa・s~750,000mPa・sが好ましく、150mPa・s~700,000mPa・sがより好ましく、200mPa・s~350,000mPa・sがより好ましく、250mPa・s~300,000mPa・sがより好ましく、300mPa・s~50,000mPa・sがより好ましく、350mPa・s~30,000mPa・sがさらに好ましく、400mPa・s~15,000mPa・sが特に好ましい。樹脂(B)の粘度を調整する方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂(B)の温度を調節する方法を挙げることができる。樹脂(B)の粘度を最適な値とすることにより、移送時の圧力が高くなり過ぎることを防止でき、剪断工程を効率よく実施できる。
【0248】
また、剪断工程における混合物の温度は、特に限定されない。剪断工程に供するときの混合物の温度は、例えば、10℃~90℃が好ましく、15℃~80℃がより好ましく、20℃~70℃がさらに好ましく、20℃~60℃が特に好ましい。剪断工程により得られた混合物の温度は、例えば、10℃~90℃が好ましく、15℃~80℃がより好ましく、20℃~70℃がさらに好ましく、20℃~60℃が特に好ましい。剪断工程に供するときの混合物の温度および/または剪断工程により得られた混合物の温度が前記範囲内である場合、重合体微粒子(A)の劣化を抑えることができるという利点を有する。なお、「剪断工程に供するときの混合物の温度」は、「剪断工程前の混合物の温度」ともいえる。また、「剪断工程により得られた混合物の温度」は「剪断工程後の混合物の温度」ともいえ、「剪断工程後であり、かつ第一の分離工程前の混合物の温度」ともいえる。第一の分離工程については、後述する。
【0249】
剪断工程は、種々の実施態様で行うことができ、特に限定されない。例えば、(i)前記樹脂混合工程により得られた混合物を投入した容器内に剪断装置(乳化機等)を設置してバッチ式で行う態様、(ii)剪断工程で得られた混合物を循環させることにより、当該混合物を剪断装置(乳化機等)に通す工程を複数回実施する態様、(iii)樹脂混合工程と剪断工程とを連続的に行う態様(iv)混合物を通す流路と樹脂(B)を通す流路との合流後に、剪断装置(乳化機等)を設置して、前記樹脂混合工程により得られた混合物に剪断を付与する工程、(v)前記(iv)の態様において、剪断工程で得られた混合物を複数回、剪断装置(乳化機等)を通す態様、などを挙げることができる。
【0250】
(第一の分離工程)
剪断工程において、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含有する凝析物が得られる場合がある。この場合、剪断工程の後に、剪断工程で得られた混合物を、凝析物とラテックス(重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含有している)とに分離する第一の分離工程を実施してもよい。
【0251】
第一の分離工程の具体的態様は特に限定されず、例えば、ろ過、圧搾脱水等の方法が挙げられる。
【0252】
(凝析剤添加工程)
凝析剤添加工程は、剪断工程により得られた混合物に対して、凝析剤を添加する工程である。第一の分離工程を実施する場合、凝析剤添加工程は、第一の分離工程により得られたラテックスに対して、凝析剤を添加する工程であってもよい。
【0253】
凝析剤としては、特に限定されない。凝析剤としては、例えば、ラテックス中の重合体微粒子(A)および樹脂(B)を凝析および凝固し得る性質を有する物質であればよい。凝析剤としては、例えば、(i)無機酸(塩)および/または有機酸(塩)、(ii)無機酸(塩)および/または有機酸(塩)の水溶液、および(iii)高分子凝析剤などが挙げられる。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、塩化バリウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバン等などが挙げられる。有機酸としては、酢酸、ギ酸等が挙げられる。有機酸塩(有機塩)としては、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム等が挙げられる。高分子凝析剤としては、親水基と疎水基とを有する高分子化合物であればよく特に限定されない。高分子凝析剤としては、例えば、アニオン系高分子凝析剤、カチオン系高分子凝析剤、ノニオン系高分子凝析剤のいずれであってもよい。高分子凝析剤としては、本発明の一実施形態の作用効果をより高めることができることから、カチオン系高分子凝析剤が好ましい。カチオン系高分子凝析剤としては、分子内にカチオン性基を有する高分子凝析剤、すなわち水に溶解させた際にカチオン性を示す高分子凝析剤が挙げられる。カチオン系高分子凝析剤として具体的には、ポリアミン類、ポリジシアンジアミド類、カチオン化デンプン、カチオン系ポリ(メタ)アクリルアミド、水溶性アニリン樹脂、ポリチオ尿素、ポリエチレンイミン、第4級アンモニウム塩類、ポリビニルピリジン類、キトサン等が挙げられる。上述した凝析剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。凝析剤としては、上述した中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウム、塩酸、硫酸等の一価若しくは二価の無機塩または無機酸の水溶液が好適に使用できる。凝析剤の添加方法に特に制限は無く、(a)添加する凝析剤の全量を短時間に一気に添加する方法、(b)添加する凝析剤の全量を幾つかに分けて、一定期間を開けて数回に分けて分割して添加する方法、または(c)添加する凝析剤の全量を少量ずつ連続的に添加する方法、などを挙げることができる。
【0254】
添加する凝析剤の量は、混合物100重量部に対して、1重量部~50重量部であることを挙げることができるが、2重量部~30重量部であることが好ましく、3重量部~20重量部であることがより好ましい。なお、添加する凝析剤の量は、重合体微粒子(A)の種類等に応じて適宜変更することができる。
【0255】
なお、上述した凝析剤は、前記(a2)にて重合体微粒子(A)の凝集物を得るときに、凝集剤としても利用できる。なお、本明細書において、凝集剤としては、例えば、ラテックス中の重合体微粒子(A)を凝集し得る性質を有する物質であれば、上述した凝析剤に限定されず、使用できる。
【0256】
(混合工程)
本製造方法は、混合工程を含んでもよい。混合工程は、凝析剤添加工程により得られた混合物を混合する工程である。混合工程は、凝析剤添加工程により得られた混合物を使用して、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝析物である樹脂組成物と水系液体とを含む混合物を調製する工程、とも換言できる。
【0257】
凝析剤添加工程により得られた混合物を混合する方法については特に限定されず、種々の技術を用いることができる。当該方法としては、例えば、ホモミキサーにより混合物を3000rpm~25000rpmで撹拌する方法、高剪断乳化機により混合物を500rpm~12000rpmで撹拌する方法、高圧式ホモジナイザーにより混合物を撹拌する方法、ピンミキサーにより混合物を100rpm~2000rpmで撹拌する方法などを挙げることができる。重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝析物である樹脂組成物をより多く得るために、ホモミキサーを使用する場合は、混合物を、5000rpm~25000rpmで撹拌することが好ましく、7000rpm~20000rpmで撹拌することが好ましく、8000rpm~20000rpmで撹拌することがより好ましい。重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝析物である樹脂組成物をより多く得るために、高剪断乳化機により混合物を撹拌する場合は、混合物を、1000rpm~12000rpmで撹拌することが好ましく、2000rpm~20000rpmで撹拌することが好ましく、2500rpm~20000rpmで撹拌することがより好ましい。ピンミキサーにより混合物を撹拌する場合は、混合物を、150rpm~1500rpmで撹拌することが好ましく、150rpm~1000rpmで撹拌することが好ましく、150rpm~500rpmで撹拌することがより好ましい。
【0258】
樹脂(B)の粘度が高い場合は、樹脂(B)の粘度を最適な粘度になるように調整することが好ましい。例えば、樹脂(B)の最適な粘度としては、100mPa・s~750,000mPa・sが好ましく、150mPa・s~700,000mPa・sがより好ましく、200mPa・s~350,000mPa・sがより好ましく、250mPa・s~300,000mPa・sがより好ましく、300mPa・s~50,000mPa・sがより好ましく、350mPa・s~30,000mPa・sがさらに好ましく、400mPa・s~15,000mPa・sが特に好ましい。樹脂(B)の粘度を調整する方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂(B)の温度を調節する方法(例えば凝析剤添加工程により得られた混合物の温度を調節する方法)を挙げることができる。樹脂(B)の粘度を最適な値とすることにより、移送時の圧力が高くなり過ぎることを防止でき、混合工程を効率よく実施できる。その結果、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝析物である樹脂組成物をより多く、かつより効率よく取得することができる。
【0259】
また、混合工程は、気液界面の存在下で実施することが好ましい。当該構成によると、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝析物である樹脂組成物をより多く、かつより効率よく得ることができる。混合工程を気液界面の存在下で実施するためには、凝析剤添加工程により得られた混合物中に気泡(エアーまたはバブルとも称する。)が存在すればよい。換言すれば、混合工程は、凝析剤添加工程により得られた混合物と気体(例えば、空気、二酸化炭素および窒素)とを混合しつつ、実施することが好ましい。
【0260】
また、混合工程における混合物の温度は、特に限定されない。混合工程に供するときの混合物の温度は、例えば、10℃~90℃が好ましく、15℃~80℃がより好ましく、20℃~70℃がさらに好ましく、20℃~60℃が特に好ましい。混合工程により得られた混合物の温度は、例えば、10℃~90℃が好ましく、15℃~80℃がより好ましく、20℃~70℃がさらに好ましく、20℃~60℃が特に好ましい。混合工程に供するときの混合物の温度および/または混合工程により得られた混合物の温度が前記範囲内である場合、(a)重合体微粒子(A)の劣化を抑えることができるという利点、および(b)重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝析物である樹脂組成物をより多く得ることができるという利点、を有する。なお、「混合工程に供するときの混合物の温度」は、「混合工程前の混合物の温度」ともいえる。また、「混合工程により得られた混合物の温度」は「混合工程後の混合物の温度」ともいえ、「混合工程後であり、かつ第二の分離工程前の混合物の温度」ともいえる。第二の分離工程については、後述する。
【0261】
混合工程は、種々の実施態様で行うことができ、特に限定されない。例えば、(i)凝析剤添加工程により得られた混合物を投入した容器内に混合装置(乳化機等)を設置してバッチ式で行う態様、(ii)混合工程で得られた混合物を循環させることにより、当該混合物を混合装置(乳化機等)に通す工程を複数回実施する態様、(iii)凝析剤添加工程と混合工程とを連続的に行う態様(iv)剪断工程により得られた混合物を通す流路と凝析剤を通す流路との合流後に、混合装置(乳化機等)を設置して、前記凝析剤添加工程により得られた混合物を混合する工程、(v)前記(iv)の態様において、混合工程で得られた混合物を複数回、混合装置(乳化機等)に通す態様、(vi)前記(iii)~(v)において混合装置(乳化機等)を通した混合物を凝析物と水系液体とに分離した後、当該水系液体を1回以上混合装置に通す態様、などを挙げることができる。
【0262】
上述した樹脂混合工程、剪断工程、凝析剤添加工程および混合工程により、樹脂組成物と水系液体とを含む混合物を調製することができる。得られた混合物を、後述する樹脂組成物回収工程に供することができる。
【0263】
(第二の分離工程)
上述した混合工程の後、当該混合工程で得られた混合物を、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含有する凝析物である樹脂組成物と水系液体とに分離する第二の分離工程を実施してもよい。当該第二の分離工程は、混合工程により得られた混合物中の水を取り除いて、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝析物である樹脂組成物を得る工程、とも換言できる。
【0264】
凝析物と水系液体とを分離する方法については特に限定されない。例えば、ろ過、圧搾脱水等の方法が挙げられる。混合工程後の第二の分離工程において、水系液体とは、水を主たる成分とするが、乳化剤、凝析しなかった重合体微粒子(A)、樹脂(B)等を含む混合物である。
【0265】
なお、第一の分離工程または第二の分離工程の少なくとも一方を、後述する樹脂組成物回収工程および水系液体回収工程に置き換えてもよい。すなわち、第一の分離工程または第二の分離工程の代わりに、樹脂組成物回収工程および水系液体回収工程を行ってもよい。
【0266】
(第一の洗浄工程)
上述した混合工程の後、当該混合工程で得られた混合物中の凝析物(樹脂組成物)を洗浄する第一の洗浄工程を実施してもよい。混合工程で得られた混合物中の凝析物(樹脂組成物)、を洗浄することにより、夾雑物等の含有量が少ない凝析物が得られる。第一の洗浄工程では、凝析物を、水で洗浄することがより好ましく、イオン交換水または純水で洗浄することがさらに好ましい。
【0267】
第一の洗浄工程は、混合工程後の第二の分離工程を行うことなく、当該混合工程で得られた混合物に洗浄水を添加して、混合物中の凝析物を洗浄してもよい。または、第一の洗浄工程は、混合工程後に実施される第二の分離工程後に、当該第二の分離工程で得られた凝析物に洗浄水を添加して、凝析物を洗浄してもよい。
【0268】
第一の洗浄工程は、当該第一の洗浄工程により得られる混合物を洗浄後の凝析物(樹脂組成物)と水系液体とに分離して得られる前記洗浄後の凝析物中の、前記凝析剤および乳化剤由来の元素SおよびPの量が、当該洗浄後の凝析物の重量に対して5000ppm以下となるように、前記凝析物と洗浄水との混合物を混合する工程を含むことが好ましい。当該構成によると、夾雑物等の含有量がより少ない凝析物が得られるという利点を有する。
【0269】
洗浄後の凝析物中の凝析剤および乳化剤由来の元素SおよびPの量は少ないほど好ましく、当該洗浄後の凝析物の重量に対して、例えば、5000ppm以下であることが好ましく、4000ppm以下であることがより好ましく、3000ppm以下であることがさらに好ましく、2000ppm以下であることが特に好ましい。
【0270】
第一の洗浄工程において得られる、凝析物(樹脂組成物)と洗浄水(水系液体)との混合物を、後述する樹脂組成物回収工程に供することができる。
【0271】
(2-9.樹脂組成物回収工程)
以下、樹脂組成物回収工程について説明するが、以下に詳説した事項以外は、適宜上述した記載を援用する。
【0272】
樹脂組成物回収工程は、樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入し、樹脂組成物を槽内にて沈降させて回収する工程である。樹脂組成物回収工程は、樹脂組成物と水系液体との比重差により、沈降して槽の下部(底部)に到達した樹脂組成物を、前記回収部等から槽外に抜き出す工程ともいえる。
【0273】
樹脂組成物を回収する方法は、種々の方法が利用でき、特に限定されない。当該方法としては、例えば、回収部の開閉を制御する開閉手段(例えば、バルブ)を開けて、引き抜き手段(例えば、ポンプ)を用いて樹脂組成物を吸引することにより、樹脂組成物を槽外に抜き出し、回収する方法が挙げられる。
【0274】
樹脂組成物回収工程において、槽内の混合物、樹脂組成物および水系液体の好適な温度は、特に限定されない。
【0275】
樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入してから、樹脂組成物を槽外に抜き出し、回収するまでの時間、換言すれば樹脂組成物の槽内での滞留時間は、特に限定されない。
【0276】
樹脂組成物回収工程および後述する水系液体排水工程は、バッチ式、セミバッチ式、連続式、およびこれらの組合せのいずれの方式で行ってもよい。なお、本明細書において、「バッチ式」とは、本分離方法に供する混合物の全量を槽内に供給した後、沈殿した樹脂組成物を槽の下部から回収し、上澄みである水系液体を槽の上部または下部から回収する方式を指す。また、「セミバッチ式」とは、(a)混合物を連続的に槽内に供給しつつ、水系液体を槽の上部から連続的に回収し、混合物の全量を槽内に供給した後、沈殿した樹脂組成物を槽の上部または下部から回収する方式、または、(b)混合物を連続的に槽内に供給しつつ、沈殿した樹脂組成物を槽の下部から連続的に回収し、混合物の全量を槽内に供給した後、上澄みである水系液体を槽の上部または下部から回収する方式、を指す。また、「連続式」とは、混合物を連続的に槽内に供給しつつ、水系液体を槽の上部から連続的に回収し、沈殿した樹脂組成物を連続的に、または一定の時間を空けて断続的に槽の下部から回収する方式を指す。
【0277】
樹脂組成物の製造をバッチ式またはセミバッチ式で行う場合、樹脂組成物の回収は、混合物の全量を槽内に供給し、槽内の樹脂組成物が沈殿した後に行う。樹脂組成物の製造を連続式で行う場合、樹脂組成物の回収は、連続して行ってもよく、一定の時間を空けて断続的に行ってもよい。
【0278】
(2-10.水系液体排水工程)
樹脂組成物の製造工程は、槽の上部から水系液体を排水する水系液体排水工程をさらに含んでもよい。水系液体排水工程は、樹脂組成物から分離した水系液体を、水系液体抜き出し口から槽外に抜き出す工程ともいえる。
【0279】
水系液体を排水する方法は、種々の方法が利用でき、特に限定されない。当該方法としては、例えば、(a)槽60の上部に配置された排水部から、水系液体を溢流させることにより水系液体を排水する方法、および、(b)排水部の開閉を制御する開閉手段(例えば、バルブ)を開けて、引き抜き手段(例えば、ポンプ)を用いて吸引することにより、水系液体を槽外に抜き出し、排水する方法、などが挙げられる。
【0280】
樹脂組成物と水系液体との混合物を槽内に投入してから、水系液体を槽外に抜き出し、排水するまでの時間、換言すれば水系液体の槽内での滞留時間は、特に限定されない。
【0281】
上述した樹脂組成物回収工程、および任意で実施される水系液体排水工程の間、本評価方法が実施される。
【0282】
樹脂組成物の製造をバッチ式で行う場合、水系液体の排水は、混合物の全量を槽内に供給し、槽内の樹脂組成物が沈殿した後に行う。樹脂組成物の製造をセミバッチ式または連続式で行う場合、水系液体の排水は、連続して行ってもよく、一定の時間を空けて断続的に行ってもよい。
【0283】
(2-11.第二の洗浄工程)
樹脂組成物の製造工程では、樹脂組成物回収工程で回収された樹脂組成物を、洗浄する第二の洗浄工程を実施してもよい。樹脂組成物を洗浄することにより、夾雑物等の含有量が少ない樹脂組成物が得られる。第二の洗浄工程では、樹脂組成物を、水で洗浄することがより好ましく、イオン交換水または純水で洗浄することがさらに好ましい。
【0284】
第二の洗浄工程は、樹脂組成物を洗浄する工程であればよく、具体的な方法について特に限定されない。例えば、樹脂組成物と水とを混合して攪拌機により攪拌する方法、樹脂組成物と水とをニーダーを用いて混練する方法、樹脂組成物と水とを自転公転ミキサーで混合する方法、水を樹脂組成物に噴霧する方法、および加圧ろ過機によりケーキ洗浄する方法等を挙げることができる。ニーダーとしては、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、押出式ニーダー等、各種利用できる。
【0285】
洗浄する対象物としては、樹脂組成物中に含まれる不純物全般を意図し、特に限定されない。例えば、乳化剤(例えば、リン系乳化剤、スルホン酸系乳化剤)由来の夾雑物のほか、凝集剤または凝析剤由来の夾雑物等を挙げることができる。
【0286】
第二の洗浄工程は、当該第二の洗浄工程により得られる樹脂組成物を洗浄後の樹脂組成物と水系液体とに分離して得られる前記洗浄後の樹脂組成物中の、前記凝析剤および乳化剤由来の元素SおよびPの量が、当該洗浄後の樹脂組成物の重量に対して5000ppm以下となるように、前記樹脂組成物と洗浄水との混合物を混合する工程を含むことが好ましい。当該構成によると、夾雑物等の含有量がより少ない凝析物が得られるという利点を有する。
【0287】
洗浄後の樹脂組成物中の凝析剤および乳化剤由来の元素SおよびPの量は少ないほど好ましく、当該洗浄後の樹脂組成物の重量に対して、例えば、5000ppm以下であることが好ましく、4000ppm以下であることがより好ましく、3000ppm以下であることがさらに好ましく、2000ppm以下であることが特に好ましい。
【0288】
第二の洗浄工程により得られる洗浄後の樹脂組成物と水系液体とを含む混合物を、再度、樹脂組成物回収工程に供してもよい。再度実施する樹脂組成物回収工程において、本評価方法を実施してもよい。
【0289】
〔3.樹脂組成物の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、〔2.評価方法〕の項にて説明された評価方法を一工程として含む。本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、当該構成を有するため、製造工程の異常を効率的に検知できるという利点を有する。また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、生産効率が高く、作業者の負担が小さいという利点も有する。
【0290】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、評価方法の項にて説明した樹脂組成物の製造工程を含み得る。それ故、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法に関して、下記に詳述する事項以外は、適宜、〔2.評価方法〕の記載を援用する。
【0291】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、判定工程における判定に基づいて、温度、流量、インバーター周波数、貯蔵量、濃度、回転数および圧力からなる群から選択される1以上の製造条件を変更する工程をさらに含むことが好ましい。当該構成によると、生産効率がより高く、作業者の負担がより小さい樹脂組成物の製造方法を提供できる。
【0292】
製造条件における「温度」とは、重合体微粒子(A)を取り扱う際の温度、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析物を取り扱う際の温度、および樹脂組成物を取り扱う際の温度などを意図する。製造条件における温度としては、例えば、樹脂組成物と混合する水系液体の温度、または、樹脂組成物の剪断もしくは混合により樹脂組成物が呈する温度、などが挙げられる。
【0293】
製造条件における「流量」とは、樹脂組成物の製造方法で使用する種々の原料または中間生成物の流量を意図する。製造条件における流量としては、(i)例えば前記樹脂混合工程における、重合体微粒子(A)の水性ラテックスの流量および樹脂(B)の流量、(ii)例えば前記剪断工程、前記分離工程、前記凝析剤添加工程および前記混合工程等における、混合物の流量および凝析剤(水溶液)の流量、並びに(iii)例えば前記樹脂組成物混合工程における、樹脂組成物と水系液体との混合物の流量、などが挙げられる。
【0294】
製造条件における「インバーター周波数」とは、樹脂組成物の製造方法で使用する種々の装置の運転条件(回転数など)を変化させるパラメーターを意図する。インバーター周波数は、装置によって変化し得る。
【0295】
製造条件における「貯蔵量」とは、樹脂組成物の製造方法で使用する種々の原料または中間生成物の貯蔵量を意図する。製造条件における貯蔵量としては、(i)重合体微粒子(A)の水性ラテックスの貯蔵量および樹脂(B)の貯蔵量、並びに(ii)例えば前記剪断工程、前記分離工程、前記凝析剤添加工程および前記混合工程等における、混合物の貯蔵量および凝析剤(水溶液)の貯蔵量、などが挙げられる。
【0296】
製造条件における「濃度」とは、樹脂組成物の製造方法で使用する種々の原料の濃度を意図する。製造条件における濃度としては、(i)重合体微粒子(A)の水性ラテックス中の重合体微粒子(A)の濃度、(ii)当該水性ラテックス中の乳化剤の濃度、(iii)重合体微粒子(A)および樹脂(B)のラテックス中の重合体微粒子(A)の濃度、(iv)当該ラテックス中の乳化剤の濃度、および(v)凝析剤水溶液中の、凝析剤(無機塩)の濃度、などが挙げられる。
【0297】
製造条件における「回転数」とは、樹脂組成物の製造方法で使用する種々の装置が備える回転部材の回転数を意図する。製造条件における回転数としては、例えば、前記剪断工程、前記混合工程および前記分離工程における、各装置が備える回転部材の回転数が挙げられる。
【0298】
製造条件における「圧力」とは、樹脂組成物の製造方法で使用する種々の装置内部の圧力を意図する。製造条件における圧力としては、例えば、前記剪断工程、前記混合工程および前記分離工程における、各装置内部の圧力が挙げられる。
【0299】
ここで、判定工程における判定結果と、各製造条件と、製造工程の各異常の状態との関係について、幾つか例に挙げて説明する。なお、以下に説明する以外の事項については、当業者の技術常識に基づき、判定結果から製造工程の各異常の状態を推察し、各製造条件を変更すればよい。
【0300】
(1)判定工程において、判定部83により、混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)が存在すると判定される場合、混合物中の水系液体72は重合体微粒子(A)に由来して白濁しており、結果として、排水が白濁し得る。排水への重合体微粒子(A)の流出は環境負荷を引き起こし得る。また、排水へ重合体微粒子(A)が流出している場合、樹脂組成物(最終製品)の収率が悪化している傾向がある。排水の白濁は、様々な理由により重合体微粒子(A)と樹脂(B)が十分に凝析していない結果、すなわち樹脂(B)に重合体微粒子(A)が十分に取り込まれていない場合に生じ得る。
【0301】
例えば、前記凝析剤添加工程で使用する凝析剤水溶液中の凝析剤の濃度(量)が、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含むラテックス中の重合体微粒子(A)の濃度(量)および/または乳化剤の濃度(量)に対して十分でない場合、重合体微粒子(A)および樹脂(B)が十分に凝析しない。その結果、槽に供給する混合物中の水系液体72中に重合体微粒子(A)が存在し、最終的には、回収される排水が白濁し得る。また、例えば、前記凝析剤添加工程で使用する種々の原料(重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含むラテックス、並びに凝析剤水溶液など)の流量が適切でない(異常である)場合も、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析が不十分になり得る。また、例えば、前記凝析剤添加工程後に行われる前記混合工程における混合装置が備える回転部材の回転数が適切でない(異常である)場合も、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析が不十分になり得る。また、混合装置内部の圧力が不適切な値まで上昇した場合、混合装置に供給する原料(例えば混合物および凝析剤水溶液)の流量が不適切となり、その結果、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析が不十分になり得る。なお、種々の原料の流量、および混合装置が備える回転部材の回転数は、種々の原料の輸送ポンプ、および混合装置のインバーター周波数によっても影響を受ける。換言すれば、輸送ポンプおよび混合装置のインバーター周波数が適切でない(異常である)場合も、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析が不十分になり得る。重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析が不十分となる結果、槽に供給する混合物中の水系液体72中に重合体微粒子(A)が存在し、最終的には、回収される排水が白濁し得る。
【0302】
従って、判定工程において、判定部83により、混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)が存在すると判定された場合、
(a)例えば前記凝析剤添加工程における、(a-i)重合体微粒子(A)および樹脂(B)のラテックス中の重合体微粒子(A)の濃度、(a-ii)当該ラテックス中の乳化剤の濃度、および(a-iii)凝析剤水溶液中の、凝析剤(無機塩)の濃度が適切であるか、すなわち、凝析剤の濃度(量)が、ラテックス中の重合体微粒子(A)および/または乳化剤の濃度(量)に対して十分であるか、を確認し、必要に応じてそれらの濃度を変更することが好ましく、
(b)例えば、前記凝析剤添加工程における、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含むラテックス、並びに凝析剤水溶液の流量が、重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析にとって適切であるかを確認し、必要に応じてそれらの流量を変更することが好ましく、
(c)例えば、前記混合工程における、混合装置が備える回転部材の回転数が重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析にとって適切であるかを確認し、必要に応じて混合装置が備える回転部材の回転数を変更することが好ましく、
(d)例えば、前記混合工程における、混合装置内部の圧力が重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析にとって適切であるかを確認し、必要に応じて混合装置内部の圧力を変更する(例えば、混合装置に設置されたバルブを開けて、混合装置内部の圧力を下げる)ことが好ましく、および/または、
(e)例えば、前記凝析剤添加工程および前記混合工程における、輸送ポンプおよび混合装置のインバーター周波数が重合体微粒子(A)および樹脂(B)の凝析にとって適切であるかを確認し、必要に応じてそれらのインバーター周波数を変更することが好ましい。
【0303】
(2)判定工程において、判定部83により、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物が存在すると判定される場合、混合物の液面には浮き樹脂が存在し得る。混合物の液面等に浮遊している樹脂組成物(浮き樹脂)は、排水へ流出し得る。排水への樹脂組成物の流出は、環境負荷および樹脂組成物(最終製品)の収率低下を引き起こし得る。浮き樹脂は、樹脂組成物に空気などの気体が過剰に混入した場合に生じる。樹脂組成物の貯蔵容器から、樹脂組成物を次の工程へ移送するとき、貯蔵容器内の樹脂組成物の量が少ない場合、貯蔵容器下部からポンプで樹脂組成物を吸い込む際に、樹脂組成物と一緒に空気も吸い込んでしまう。これにより、樹脂組成物に空気が混入する。従って、判定工程において、判定部83により、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物が存在すると判定された場合、樹脂組成物の貯蔵容器内の貯蔵量が適切な量であるか、すなわち、樹脂組成物の貯蔵容器内の貯蔵量が空に近い量ではないことを確認し、必要に応じて樹脂組成物の貯蔵容器内の貯蔵量を変更(調節)することが好ましい。
【0304】
(3)判定工程において、判定部83により、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物が存在すると判定される場合、混合物の液面には微細樹脂が存在する場合もある。混合物の液面等に浮遊している樹脂組成物(微細樹脂)は、排水へ流出し得る。排水への樹脂組成物の流出は、環境負荷および樹脂組成物(最終製品)の収率低下を引き起こし得る。微細樹脂は、様々な理由により、樹脂組成物が微細化した結果、生じ得る。例えば、樹脂組成物の製造過程(例えば前記剪断工程)で、樹脂組成物を取り扱う際の温度が上昇すると、樹脂組成物が微細化し得る。従って、判定工程において、判定部83により、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物が存在すると判定された場合、例えば剪断工程において、樹脂組成物を取り扱う際の温度が適切な温度であるかを確認し、必要に応じて当該温度を変更することが好ましい。
【0305】
(その他の工程)
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、上述した工程以外に、得られた凝析物である樹脂組成物を加熱し、脱揮・乾燥させる工程を備えていてもよい。かかる工程も種々の方法を利用でき、特に限定されない。当該方法としては、例えば、加熱および真空脱揮等が挙げられる。
【0306】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法により得られる樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、重合体微粒子(A)の分散安定性が高く、不純物が少ない。当該硬化物もまた、本発明の一実施形態である。
【0307】
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法により得られる樹脂組成物は、様々な用途に使用することができ、それらの用途は特に限定されない。当該樹脂組成物は、例えば、接着剤、コーティング材、強化繊維のバインダー、複合材料、3Dプリンターの造形材料、封止剤、電子基板、インキバインダー、木材チップバインダー、ゴムチップ用バインダー、フォームチップバインダー、鋳物用バインダー、床材用およびセラミック用の岩盤固結材、ウレタンフォームなどの用途に好ましく用いられる。ウレタンフォームとしては、自動車シート、自動車内装部品、吸音材、制振材、ショックアブソーバー(衝撃吸収材)、断熱材、工事用床材クッションなどが挙げられる。当該樹脂組成物は、上述した用途の中でも、接着剤、コーティング材、強化繊維のバインダー、複合材料、3Dプリンターの造形材料、封止剤、および電子基板として用いられることがより好ましい。
【実施例0308】
以下、実施例および比較例によって本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の一実施形態は、前記または後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更して実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0309】
[評価方法]
先ず、製造例によって製造した樹脂組成物の評価方法、並びに、実施例および比較例によって回収された樹脂組成物および水系液体の評価方法について、説明する。
【0310】
<体積平均粒子径の測定>
水性ラテックスに分散している弾性体または重合体微粒子(A)の体積平均粒子径(Mv)は、Nanotrac WaveII-EX150(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定した。水性ラテックスを脱イオン水で希釈したものを測定試料として用いた。測定は、水、および、各製造例で得られた弾性体または重合体微粒子(A)の屈折率を入力し、計測時間120秒、ローディングインデックス1~20の範囲内になるように試料濃度を調整して行った。
【0311】
<粘度>
以下の実施例および比較例において使用した樹脂(B)〔液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、JER828)〕、水系液体の粘度測定を行った。使用した装置は、BROOKFIELD社製デジタル粘度計DV-II+Pro型であった。また、粘度領域によってスピンドルCPE-52Zを用い、測定温度25℃にてShear Rate(ずり速度)を必要に応じ変化させて、粘度を測定した。その結果、樹脂(B)である液状エポキシ樹脂(JER828)の粘度は25℃において12,000mPa・sであった。
【0312】
<樹脂組成物の比重>
樹脂組成物の25℃における比重は、標準比重計を用いて比重標準溶液を作成し、得られた比重標準溶液に対する樹脂組成物の浮沈みの試験を行い、得られた結果から算出して得られた値とした。比重標準溶液としては、硫酸ナトリウム水溶液を使用した。
【0313】
<水系液体の比重>
水系液体の25℃における比重は、標準比重計を用いて測定した。
【0314】
[製造例]
(製造例1)重合体微粒子(A)の製造
1.弾性体の重合
製造例1-1;ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体を含む水性ラテックス(R-1)の調製
耐圧重合器中に、脱イオン水200重量部、リン酸三カリウム0.03重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.002重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、および乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)1.55重量部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、ブタジエン(Bd)100重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、パラメンタンハイドロパーオキサイド(PHP)0.03重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.10重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から15時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTAおよび硫酸第一鉄・7水和塩のそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体を含む水性ラテックス(R-1)を得た。得られた水性ラテックス(R-1)に含まれる弾性体の体積平均粒子径は90nmであった。
【0315】
製造例1-2;ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体を含む水性ラテックス(R-2)の調製
耐圧重合器中に、前記で得た水性ラテックス(R-1)を固形分で7重量部、脱イオン水200重量部、リン酸三カリウム0.03重量部、EDTA0.002重量部、及び硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、Bd93重量部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、PHP0.02重量部を耐圧重合器内に投入し、続いてSFS0.10重量部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から30時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTA、硫酸第一鉄・7水和塩およびSDBSのそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体を含む水性ラテックス(R-2)を得た。得られた水性ラテックス(R-2)に含まれる弾性体の体積平均粒子径は195nmであった。
【0316】
2.重合体微粒子(A)の調製(グラフト部の重合)
製造例1-3;重合体微粒子を含む水性ラテックス(L-1)の調製
ガラス製反応器に、前記水性ラテックス(R-2)250重量部(ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体87重量部を含む)、および、脱イオン水50重量部を投入した。ここで、前記ガラス製反応器は、温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、および単量体の添加装置を有していた。ガラス製反応器中の気体を窒素で置換し、60℃にて投入した原料を撹拌した。次に、EDTA0.004重量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001重量部、およびSFS0.20重量部をガラス製反応器内に加え、10分間撹拌した。その後、メチルメタクリレート(MMA)12.5重量部、スチレン(St)0.5重量部、およびt-ブチルハイドロパーオキサイド(BHP)0.035重量部の混合物をガラス製反応器内に、80分間かけて連続的に添加した。その後、BHP0.013重量部をガラス製反応器内に添加し、さらに1時間、ガラス製反応器内の混合物の撹拌を続けて重合を完結させた。以上の操作により、重合体微粒子(A)および乳化剤を含む水性ラテックス(L-1)を得た。単量体成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックス(L-1)に含まれる重合体微粒子(A)の体積平均粒子径は200nmであった。得られた水性ラテックス(L-1)100重量%における固形分濃度(重合体微粒子(A)の濃度)は、30重量%であった。
【0317】
(製造例2:樹脂組成物と水系液体を含む混合物の調整)
以下の通り、サンプル番号1~4の混合物を作製した。重合体微粒子(A)の水性ラテックス(L-1)および樹脂(B)である液状エポキシ樹脂を、各々、表1に示す量で混合し、樹脂混合物を調製した。続いて、得られた樹脂組成物に(i)濃度15%(重量/重量)の硫酸ナトリウム水溶液と、空気とを、各々、表1に記載の量添加し、得られた混合物を混合することにより、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を凝析した。かかる凝析により、重合体微粒子(A)および樹脂(B)を含む凝析物である樹脂組成物と水系液体と含む混合物を調製した。凝析物(樹脂組成物)100重量%中の重合体微粒子(A)の含有量は29.6重量%であった。一方、凝析物(樹脂組成物)の含水率は26重量%であった。また、凝析物(樹脂組成物)は、重合体微粒子(A)と樹脂(B)との合計を100重量%とした場合に、重合体微粒子(A)を40重量%、前記樹脂(B)を60重量%含むものであった。
【0318】
(実施例)
(サンプル1 正常時の評価)
[樹脂組成物回収工程]
供給部、回収部および排水部を備える槽を使用した。表1に示す方法で作成した混合物(サンプル1)の温度を、表1に記載の温度に調整した後、槽に混合物を投入した。
【0319】
樹脂組成物の比重は、25℃において1050kg/m3であった。また、樹脂組成物の粘度は、25℃において50,000mPa・sであった。水系液体の比重は、脱イオン水(E)の比重とほぼ同じであり、25℃において1010kg/m3であった。水系液体の粘度は、脱イオン水(E)の粘度とほぼ同じであり、25℃において1mPa・sであった。
【0320】
混合物100重量%中、樹脂組成物の量は62重量%であり、水系液体の量は38重量%であった。また、混合物における、樹脂組成物と水系液体との比重の差は、25℃において40kg/m3であった。
【0321】
[評価工程]
樹脂組成物の製造における樹脂組成物回収工程において、以下の評価工程を実施した。照射装置としてリング状のライトを使用した。また、撮像装置として、モノクロCMOS素子を有するIP68対応の耐環境カメラを使用した。照射装置および撮像装置の下端が、槽の上端から300mm、液面から400mmの距離となる位置に、照射装置および撮像装置を設置した。撮像装置の測定条件はシャッタースピード:1/1000秒、ライト照度:150、感度:3、室内照明:有とした。樹脂組成物回収工程を実施するとともに、撮像装置による混合物の撮像を開始した(撮像工程)。なお、撮像装置により撮像される領域には、撮像中、大きい気泡を除去するため、気体放出装置(エアーノズル)で空気を当てた。続いて、撮像装置により得られた画像について、画像のうち混合物が写った第1領域の各画素が有する明度の平均値を算出した。次いで、算出された明度の平均値と所定の第1基準値とを比較した。なお、第1基準値は120とした。得られた第1比較結果に基づいて、(a)該混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物の有無、および/または、(b)該混合物中に浮遊した重合体微粒子(A)の有無、を判定した(判定工程)。
【0322】
供給部から樹脂組成物を投入後、算出された明度の平均値は65であり、判定結果は「樹脂組成物および/または重合体微粒子(A)は無し」であった。このとき、槽から排水された水系液体中の固形分濃度は0.05%であり、排水(水系液体)中の重合体微粒子(A)は極少量であることが確認された。
【0323】
(サンプル2 白濁の評価)
[樹脂組成物回収工程]
表1に示す方法で作成した混合物(サンプル2)の温度を、表1に記載の温度に調整した後、槽に混合物を投入した。使用した槽、樹脂組成物の比重、樹脂組成物の粘度、水系液体の比重、水系液体の粘度、混合物中の樹脂組成物および水系液体の量、並びに樹脂組成物と水系液体との比重差は、それぞれ、サンプル1と同じであった。
[評価工程]
樹脂組成物の製造における樹脂組成物回収工程において、以下の評価工程を実施した。撮像装置の測定条件はシャッタースピード:1/1000秒、ライト照度:150、感度:3、室内照明:有とした。次いで、サンプル1と同じ方法により、撮像工程、および第1比較結果に基づく判定工程を実施した。
【0324】
供給部から混合物を投入後、算出された明度の平均値は130を示し、「樹脂組成物および/または重合体微粒子(A)は有り」と判定された。このとき、槽から排水された水系液体中の固形分濃度は0.12%であり、排水(水系液体)中に重合体微粒子(A)が多量に混入していること、および排水(水系液体)が白濁していることが確認された。
【0325】
(サンプル3 浮き樹脂の評価)
[樹脂組成物回収工程]
表1に示す方法で作成した混合物(サンプル3)の温度を、表1に記載の温度に調整した後、槽に混合物を投入した。樹脂組成物の比重、樹脂組成物の粘度、水系液体の比重、水系液体の粘度、混合物中の樹脂組成物および水系液体の量、並びに樹脂組成物と水系液体との比重差は、それぞれ、サンプル1と同じであった。また、気泡を含有した樹脂組成物(浮き樹脂)の比重は1000kg/m3であり、浮き樹脂と水系液体の比重差は10kg/m3であった。
[評価工程]
樹脂組成物の製造における樹脂組成物回収工程において、以下の評価工程を実施した。撮像装置の測定条件はシャッタースピード:1/1000秒、ライト照度:150、感度:3、室内照明:有とした。次いで、サンプル1と同じ方法により、撮像工程、および第1比較結果に基づく判定工程を実施した。
【0326】
混合物を槽に投入後、算出された明度の平均値が250まで上昇し、「樹脂組成物および/または重合体微粒子(A)は有り」と判定された。このとき、槽内の混合物を目視したところ、混合物の液面等における撮像装置により撮像された領域に、樹脂組成物(浮き樹脂)が存在することが確認された。
【0327】
(サンプル4 微細樹脂の評価)
[樹脂組成物回収工程]
表1に示す方法で作成した混合物(サンプル4)の温度を、表1に記載の温度に調整した後、槽に混合物を投入した。樹脂組成物の比重、樹脂組成物の粘度、水系液体の比重、水系液体の粘度、混合物中の樹脂組成物および水系液体の量、並びに樹脂組成物と水系液体との比重差は、それぞれ、サンプル1と同じであった。
[評価工程]
樹脂組成物の製造における樹脂組成物回収工程において、以下の評価工程を実施した。撮像装置の測定条件はシャッタースピード:1/1000秒、ライト照度:150、感度:3、室内照明:有とした。樹脂組成物回収工程を実施するとともに、撮像装置による混合物の撮像を開始した(撮像工程)。なお、撮像装置により撮像される領域には、撮像中、大きい気泡を除去するため、気体放出装置(エアーノズル)で空気を当てた。続いて、撮像装置により得られた画像について、画像のうち混合物が写った第1領域において隣接する画素のまとまりであるセグメント間の明度差(セグメント明度差)を算出した。具体的には、まず、第1領域内を、複数の画素のまとまりからなるセグメントに細分し、第1領域内の全てのセグメントの平均値を算出した。次に、水平方向に連続した4つのセグメント群について、当該セグメント群に含まれる各セグメントの明度の平均値の最大値と最小値との差を算出し、得られた値を「セグメント明度差」とした。次に、セグメント明度差が所定の第2基準値よりも大きいか否かを比較した。なお、第2基準値は20とした。続いて、セグメント明度差が所定の第2基準値よりも大きい隣り合うセグメント群を同じセグメントグループとしてまとめるための処理を施した。かかる処理により得られたセグメントグループの個数をセグメントのグループ数(セグメントグループ数)とした。次に、算出されたセグメントグループ数と所定の第3基準値とを比較した。なお、第3基準値は5個とした。得られた第2比較結果に基づいて、混合物の液面等に浮遊した樹脂組成物の有無を判定した(判定工程)。
【0328】
供給部から混合物を投入後、セグメントグループ数は8個まで上昇し、「樹脂組成物は有り」と判定された。このとき、槽内の混合物を目視したところ、混合物の液面等であり、撮像装置により撮像された領域に、樹脂組成物(微細樹脂)が存在することが確認された。
【0329】
【0330】
(比較例1) サイトグラスを用いた測定
[樹脂組成物回収工程]
供給部、回収部および排水部を備え、排水部近傍にサイトグラス(透明配管)を設置している槽を使用した。表1に示す方法で作成した混合物(サンプル1)の温度を、表1に記載の温度に調整した後、槽に混合物を投入した。樹脂組成物の比重、樹脂組成物の粘度、水系液体の比重、水系液体の粘度、混合物中の樹脂組成物および水系液体の量、並びに樹脂組成物と水系液体との比重差は、それぞれ、サンプル1と同じであった。続いて(a)水系液体を排水部から溢水として自重にて排水し、(b)樹脂組成物を回収部から回収し、樹脂組成物回収工程を実施した。
【0331】
前記サイトグラスの下部に照射面を上向きにした板状LEDライトを設置し、サイトグラスの上部に下向きにカメラを設置した。当該カメラは、実施例1で使用したカメラと同一のカメラとした。カメラで、サイトグラス内を通過する排水(水系液体)を透過する光の明度を測定した。排水された水系液体を再度投入することで排水を循環させ、サイトグラスの通過を1時間行った。1時間経過後、算出された明度の平均値は150であり、判定結果は「樹脂組成物および/または重合体微粒子(A)は有り」と判定された。しかしこの時、槽から排水された水系液体中の固形分濃度は0.05%であり、排水(水系液体)中の重合体微粒子(A)はごく少量であることが判定された。その後、純水をサイトグラスに通過させてサイトグラスを洗浄した。その結果、サイトグラスの上部(カメラで撮像する位置)に、純水を通過させたのみでは取りきれない樹脂組成物が付着していることが分かった。すなわち、サイトグラスを観察する方法では、長時間、サイトグラス内を通過する排水(水系液体)の状態をモニタリングすることができないことが分かった。
本発明の一実施形態によると、樹脂組成物の製造工程の異常を効率的に検知するための評価方法、および、製造工程の異常を効率的に検知できる、樹脂組成物の製造方法を提供することができる。そのため、本発明の一実施形態は、接着剤、コーティング材、強化繊維のバインダー、複合材料、3Dプリンターの造形材料、封止剤、電子基板、インキバインダー、木材チップバインダー、ゴムチップ用バインダー、フォームチップバインダー、鋳物用バインダー、床材用およびセラミック用の岩盤固結材、ウレタンフォームなどの用途に好ましく用いられる樹脂組成物の製造のために、好適に利用できる。