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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157388
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】反応器、及び、蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
F28D20/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061579
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000108764
【氏名又は名称】タテホ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泰弘
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、反応効率が低下し難い、蓄熱材を有する反応器等を提供する。
【解決手段】本発明は、ガス状及び/又は液状の流体物の吸収及び放出をする蓄熱材を含有する蓄熱体21と、前記蓄熱体を収容する容器とを備えており、前記流体物の流路を確保できる形状に成形された成形体を前記容器内に更に備える、反応器11等である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状及び/又は液状の流体物の吸収及び放出をする蓄熱材を含有する蓄熱体と、前記蓄熱体を収容する容器とを備えており、
前記流体物の流路を確保できる形状に成形された成形体を前記容器内に更に備える、反応器。
【請求項2】
前記成形体は、前記蓄熱体の体積変化によって生じる摩擦を緩衝する成形体である、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記容器に収容されている前記蓄熱体の全体積に対する、前記容器に収容されている前記成形体の全体積の比が、3/100~400/100である、請求項1又は2に記載の反応器。
【請求項4】
前記成形体は、金属、セラミック、及び、樹脂の少なくとも何れか一の材料で形成されている、請求項1~3の何れか1項に記載の反応器。
【請求項5】
前記成形体が、シート体で形成されており、
該シート体は、メッシュ状のシート体、又は、打ち抜き加工されたシート体である、請求項1~4の何れか一項に記載の反応器。
【請求項6】
前記成形体が、不規則充填物及び規則充填物の少なくとも何れか一方の充填物を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の反応器。
【請求項7】
前記成形体が、前記不規則充填物を含み、
該不規則充填物が、ディクソンパッキンを含む、請求項6に記載の反応器。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の反応器と、
前記反応器に熱的に接続され、前記蓄熱材に外部から熱を供給する熱供給部と、
前記反応器に熱的に接続され、前記蓄熱材から生じた熱を外部に取り出す熱回収部と、
前記流体物を貯蔵する貯蔵器と、
前記反応器と前記貯蔵器との間で前記流体物を流通させる接続管とを備える、蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器、及び、蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排熱などの熱を蓄える技術が求められている。
蓄熱法は、蓄熱材を含有する蓄熱体を用いて蓄熱する方法である。蓄熱法としては、例えば、化学蓄熱材を用いる化学蓄熱法等が知られている。
また、該化学蓄熱材を含有する蓄熱体と、該蓄熱体を収容する容器とを有する反応器を備えたケミカルヒートポンプが知られている。
化学蓄熱法としては、例えば、化学蓄熱材に水蒸気を吸脱着させる水蒸気吸脱着法などが知られている。
【0003】
該水蒸気吸脱着法としては、例えば、下記式の可逆反応を利用した方法が知られている。
MgO + HO ⇔ Mg(OH) ΔH=-81.2kJ/モル
すなわち、水酸化マグネシウムを熱(排熱など)で加熱することにより、酸化マグネシウム(蓄熱状態(脱水状態)の化学蓄熱材)及び水蒸気を生成する蓄熱反応と、酸化マグネシウム(蓄熱状態(脱水状態)の化学蓄熱材)及び水蒸気を接触させることにより、水酸化マグネシウム(放熱状態の化学蓄熱材)及び反応熱を得る発熱反応とを利用した方法が知られている。
【0004】
蓄熱反応及び発熱反応のサイクルにおいて、化学蓄熱材の化学変化により、蓄熱体が膨張収縮(体積変化)して微粉化することがある。そして、微粉化した蓄熱体によって、前記容器内において水蒸気の流路が閉塞され、その結果、蓄熱反応及び発熱反応の反応効率が低下してしまうことがある。
【0005】
斯かる問題を解決すべく、化学蓄熱材ペレットと、伸縮性及びガス透過性を有する充填材たる膨張黒鉛が混合充填されたタンクを備えるケミカルヒートポンプが用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-21685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、反応効率が低下し難い、更なるケミカルヒートポンプについては、これまで十分には検討がなされていない。
なお、蓄熱体の微粉化による反応効率の低下は、水蒸気吸脱着法を利用するケミカルヒートポンプだけなく、水蒸気以外の流体物の吸収及び放出をする蓄熱材を備えた蓄熱装置においても生じ得る問題である。
【0008】
そこで、本発明は、反応効率が低下し難い、蓄熱材を有する反応器、及び、該反応器を備える蓄熱装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ガス状及び/又は液状の流体物の吸収及び放出をする蓄熱材を含有する蓄熱体と、前記蓄熱体を収容する容器とを備えており、
前記流体物の流路を確保できる形状に成形された成形体を前記容器内に更に備える、反応器に関する。
好ましくは、前記成形体は、前記蓄熱体の体積変化によって生じる摩擦を緩衝する成形体である。
好ましくは、前記容器に収容されている前記蓄熱体の全体積に対する、前記容器に収容されている前記成形体の全体積の比が、3/100~400/100である。
好ましくは、前記成形体は、金属、セラミック、及び、樹脂の少なくとも何れか一の材料で形成されている。
好ましくは、前記成形体が、シート体で形成されており、
該シート体は、メッシュ状のシート体、又は、打ち抜き加工されたシート体である。
好ましくは、前記成形体が、不規則充填物及び規則充填物の少なくとも何れか一方の充填物を含む。
より好ましくは、前記成形体が、前記不規則充填物を含み、
該不規則充填物が、ディクソンパッキンを含む。
【0010】
本発明は、前記反応器と、
前記反応器に熱的に接続され、前記蓄熱材に外部から熱を供給する熱供給部と、
前記反応器に熱的に接続され、前記蓄熱材から生じた熱を外部に取り出す熱回収部と、
前記流体物を貯蔵する貯蔵器と、
前記反応器と前記貯蔵器との間で前記流体物を流通させる接続管とを備える、蓄熱装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反応効率が低下し難い反応器、及び、該反応器を備える蓄熱装置を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る蓄熱装置の概略図。
図2】不規則充填物の具体例の斜視図(特開平11-319803の図5を引用。)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について、化学蓄熱法で蓄熱する態様であって、蓄熱材として、化学蓄熱材、具体的にはアルカリ土類金属の水酸化物及び酸化物を用い、流体物として水を用いる態様を例に挙げて説明する。
【0014】
(反応器)
まず、本実施形態に係る反応器について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る反応器11は、ガス状及び/又は液状の流体物の吸収及び放出をする蓄熱材を含有する蓄熱体と、前記蓄熱体を収容する容器10とを備える。
また、本実施形態に係る反応器11は、前記流体物の流路を確保できる形状に成形された成形体を前記容器10内に更に備える。
【0015】
前記反応器11は、前記容器10の内部空間21に前記蓄熱体と前記成形体とを備える。
【0016】
<蓄熱体>
前記蓄熱体における蓄熱材は、蓄熱状態及び放熱状態において固体状となっている。
【0017】
前記蓄熱材たる化学蓄熱材は、アルカリ土類金属の水酸化物及び酸化物による以下の可逆反応を利用したものである。なお、以下の反応式では、アルカリ土類金属としてカルシウム又はマグネシウムを用いた場合について示した。
CaO+HO⇔Ca(OH) △H=-109.2kJ/モル
MgO+HO⇔Mg(OH) △H=-81.2kJ/モル
【0018】
各式中、右方向への反応は酸化カルシウム又は酸化マグネシウムの水和発熱反応である。反対に、左方向への反応は水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムの脱水吸熱反応である。すなわち、化学蓄熱材は、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムの脱水反応が進行することによって蓄熱することができ、また、蓄えられた熱エネルギーを、酸化カルシウム又は酸化マグネシウムの水和反応が進行することによって供給することができる。
【0019】
蓄熱状態(脱水状態)の化学蓄熱材は、アルカリ土類金属の酸化物である。
前記アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。これらを1種のみ含むものであってもよく、2種以上を組み合わせて含むものであっても良い。このうち、カルシウム及び/又はマグネシウムが好ましく、マグネシウムがより好ましい。
アルカリ土類金属の酸化物として、好ましくは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、マグネシウムとカルシウムの複合酸化物が挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0020】
なお、蓄熱状態(脱水状態)の化学蓄熱材たるアルカリ土類金属の酸化物は、水和発熱反応により、放熱状態の化学蓄熱材たるアルカリ土類金属の水酸化物となる。
よって、化学蓄熱材は、アルカリ土類金属の水酸化物及びアルカリ土類金属の酸化物いずれかを含むものであればよく、双方を含むものであってもよい。言い換えれば、化学蓄熱材は、アルカリ土類金属の水酸化物及び/又は酸化物である。
【0021】
前記蓄熱体は、蓄熱材が粒子状となったものであってもよい。
なお、本実施形態において、「粒子状」は、細かな粒子の状態たる粉状、粉状よりも粒径が大きい粒子の状態たる顆粒状なども含む概念である。
また、「粒子状」は、棒状(ペレット状)、フレーク状なども含む概念である。
前記蓄熱体は、粉体状の化学蓄熱材を成型して得られる蓄熱体であってもよい。また、粉体状の化学蓄熱材を成型して得られる蓄熱体が粒子状となっていてもよい。
また、前記蓄熱体は、担体に蓄熱材が担持されたものであってもよい。担体に蓄熱材が担持された蓄熱体は、粒子状となっていてもよい。
前記担体としては、ゼオライト、炭素化合物、粘度化合物などが挙げられる。
前記蓄熱体は、粒子状となっていることが好ましい。
【0022】
前記蓄熱体は、金属の化合物(アルカリ金属の化合物等)を更に有してもよい。
例えば、前記蓄熱体は、蓄熱材と前記金属の化合物とが粒子状となったものであってもよい。また、前記蓄熱体は、担体に蓄熱材と前記金属の化合物とが担持されたものであってもよい。
前記蓄熱体は、斯かる構成となっていることにより、蓄熱反応及び発熱反応の反応効率を高めることができる。
【0023】
<成形体>
前記成形体は、前記蓄熱体の体積変化によって生じる摩擦を緩衝する成形体であることが好ましい。
【0024】
前記成形体の形状としては、例えば、直方体状、立方体状、円筒状(「楕円筒状」等も含む概念である。)、多角筒状、円錐状(「楕円錐状」等も含む概念である。)、双円錐状、円錐台状、多角錐状、球状、トーラス状などが挙げられる。
また、前記成形体の形状としては、前記直方体状等の成形体が屈曲されたような形状となっていてもよい。
さらに、前記成形体は、袋状となっていてもよい。
また、前記成形体は、層状となっていてもよい。
【0025】
前記成形体は、シート体で形成されてもよい。
前記シート体としては、メッシュ状のシート体、打ち抜き加工されたシート体などが挙げられる。
メッシュ状のシート体は、メッシュの隙間が前記流体物の流路となるように形成されていることが好ましい。
メッシュ状のシート体としては、金網が挙げられる。
打ち抜き加工されたシート体は、打ち抜き加工で形成された孔が前記流体物の流路となるように形成されていることが好ましい。
打ち抜き加工されたシート体としては、パンチングメタルなどが挙げられる。
前記シート体としては、メッシュ状のシート体が好ましい。
【0026】
また、前記成形体は、多孔質体で形成されていてもよい。
多孔質体の孔は、前記流体物の流路となっていることが好ましい。
【0027】
前記成形体の材質は、蓄熱材の蓄熱時及び放熱時に成形体にかかる熱及び圧力に耐え得る材質であればよく、例えば、金属、セラミック、樹脂などが挙げられる。
前記金属としては、ニッケル、銅、アルミニウム等が挙げられる。また、前記金属としては、合金も挙げられる。合金としては、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。
前記セラミックは、非金属無機材料である。
前記セラミックとしては、アルミナ、シリカ、ガラス等が挙げられる。前記ガラスとしては、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
前記セラミックは、結晶質のセラミックであってもよい。
前記樹脂としては、耐熱性の観点から、エンジニアリング・プラスチック(「エンプラ」とも呼ばれる。)が好ましい。なお、エンジニアリング・プラスチックは、スーパーエンジニアリング・プラスチック(「スーパーエンプラ」とも呼ばれる。)等も含む概念である。前記エンジニアリング・プラスチックとしては、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
熱交換の効率が高いという観点や、強度が高いという観点から、前記成形体の材質としては金属が好ましい。
【0028】
前記成形体としては、不規則充填物、規則充填物等が挙げられる。
【0029】
前記不規則充填物としては、化学工学のプロセス用のカラム内、蒸留塔内などで用いられている公知の不規則充填物を用いることができる。
前記不規則充填物としては、ラシヒリング、レッシングリング、サドル、テラレット(登録商標)、ポールリング、ヘリパック、コイルパック、ディクソンパッキン(「ディクソンリング」や「ディクソンパッキング」ともいう。)等が挙げられる。
また、前記サドルとしては、ベルルサドル、インタロックスサドル、マクマホンパッキン(「マクマホンパッキング」ともいう。)等が挙げられる。
ディクソンパッキン、及び、マクマホンパッキンは、メッシュ状のシート体で形成され、好ましくは金網で形成されている。
図2には、不規則充填物の具体例の斜視図(特開平11-319803の図5を引用)を示す。
【0030】
前記規則充填物としては、化学工学のプロセス用のカラム内、蒸留塔内などで用いられている公知の不規則充填物を用いることができる。
前記規則充填物としては、スルザー社製の規則充填物(商品名:DX/EXパッキン等)等が挙げられる。
なお、本実施形態においては、規則充填物として市販されている小さい充填物(例えば、ラボ用の規則充填物)を、不規則充填物のような形態で用いてもよい。
【0031】
本実施形態においては、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、蓄熱体と成形体とが容器内で適度に混在していればよく、必ずしも蓄熱体と成形体とが容器内で均一に配されている必要はない。
したがって、本実施形態においては、蓄熱体と成形体とを容器内に充填する際には、蓄熱体と成形体とが容器内で均一に配されるように特別な混合操作を行うことを要しない。
なお、蓄熱体と成形体とが容器内で均一に配されていてもよい。
【0032】
前記容器に収容されている前記蓄熱体の全体積に対する、前記容器に収容されている前記成形体の全体積の比(前記容器に収容されている前記成形体の全体積/前記容器に収容されている前記蓄熱体の全体積)は、好ましくは3/100~400/100、より好ましくは3/100~300/100、更に好ましくは5/100~250/100、特に好ましくは10/100~200/100である。
前記比が3/100以上であることにより、前記成形体による、反応効率の低下を抑制する効果が発揮されやすくなる。
また、前記比が400/100以下であることにより、本実施形態に係る反応器11の蓄熱性が高くなる。
【0033】
本実施形態において、前記容器に収容されている前記蓄熱体の全体積は、「前記容器内に収容されている蓄熱体の全質量」を「前記蓄熱体の充填密度(タップかさ密度)」で除すことで算出することができる。
また、前記容器に収容されている前記成形体の全体積は、「前記容器内に収容されている成形体の全質量」を「前記成形体の充填密度(タップかさ密度)」で除すことで算出することができる。
前記タップかさ密度は、公知の方法で測定することができる。具体的には、前記タップかさ密度は、JIS R1628-1997に記載されている、タップかさ密度の測定方法(定容積測定法、定質量測定法)に準じて測定することができる。
【0034】
<容器>
前記容器10の材質は、蓄熱材の蓄熱時及び放熱時に成形体にかかる熱及び圧力に耐え得る材質であればよい。
【0035】
本実施形態に係る反応器11は、前記容器10内の圧力を変更可能に構成されていることが好ましい。
本実施形態に係る反応器11は、斯かる構成となっていることにより、前記流体物を前記蓄熱材に接触させやすくなるという利点がある。また、本実施形態に係る反応器11は、斯かる構成となっていることにより、容器10内の流体物を容器10外に排出しやすくなる。
よって、本実施形態に係る反応器11は、斯かる構成となっていることにより、蓄熱反応及び発熱反応の反応効率を高めることができる。
【0036】
本実施形態において、前記流体物は水である。
【0037】
本実施形態に係る反応器11では、未利用の熱(例えば工場からの排熱)で放熱状態の蓄熱材たるアルカリ土類金属の水酸化物を加熱することにより、蓄熱状態(脱水状態)の蓄熱材たるアルカリ土類金属の酸化物と、流体物たる水(具体的には水蒸気)とを生成する。
蓄熱状態(脱水状態)の蓄熱材は、乾燥状態に保つことにより容易に蓄熱状態を維持することができる。
また、蓄熱材の蓄熱状態を維持しつつ、蓄熱状態(脱水状態)の蓄熱材を備える反応器11を所望の場所へ持ち運ぶことができる。
そして、本実施形態に係る反応器11の容器10内に水(好ましくは水蒸気)を供給することにより、放熱状態の蓄熱材と、水和反応熱(場合により、水蒸気収着熱)とを得、該水和反応熱を熱エネルギーとして取り出すことができる。
【0038】
なお、図示していないが、本実施形態に係る反応器は、前記容器内を保温する保温部を更に備えてもよい。
本実施形態に係る反応器は、前記保温部により、前記容器内の熱が前記熱回収部を介さずに外部に放出されるのを抑制することができる。
前記保温部は、前記容器たる第1の容器を収容できる第2の容器と、前記第1の容器と前記第2の容器との間に配される放熱抑制材とを有する。
前記放熱抑制材としては、断熱材、熱反射材などが挙げられる。
【0039】
(蓄熱装置)
次に、本実施形態に係る蓄熱装置について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る蓄熱装置30は、本実施形態に係る反応器11と、前記反応器11に熱的に接続され、前記蓄熱材に外部から熱を供給する熱供給部12と、前記反応器11に熱的に接続され、前記蓄熱材から生じた熱を外部に取り出す熱回収部13と、前記流体物を貯蔵する貯蔵器14と、前記反応器11と前記貯蔵器14との間で前記流体物を流通させる接続管15とを備える。
また、本実施形態に係る蓄熱装置30は、前記接続管15内の流路を開閉する開閉弁16を更に備えてもよい。
【0040】
本実施形態に係る蓄熱装置は、蓄熱材として化学蓄熱材を備える。すなわち、本実施形態に係る蓄熱装置は、ケミカルヒートポンプである。
【0041】
前記反応器11には、外部からの熱(例えば、工場からの排熱等)を該反応器11内の放熱状態の蓄熱材に供給するための熱供給部12が熱的に接続されている。
前記熱供給部12から放熱状態の蓄熱材に熱が供給されることによって、蓄熱材の吸熱脱水反応が進行する。
すなわち、放熱状態の蓄熱材たるアルカリ土類金属の水酸化物が熱で加熱されることにより、蓄熱状態(脱水状態)の蓄熱材たるアルカリ土類金属の酸化物及び水を生成して、蓄熱装置に熱が蓄えられる。
【0042】
次いで、蓄熱状態(脱水状態)の蓄熱材たるアルカリ土類金属の酸化物に対して水を供給することで、蓄熱材の水和発熱反応が進行する。
すなわち、当該アルカリ土類金属の酸化物に水が供給されることにより、放熱状態の蓄熱材たるアルカリ土類金属の水酸化物及び反応熱を得ることができる。
該反応熱を外部に取り出すための熱回収部13が、反応器11には熱的に接続されている。熱回収部13によって蓄熱装置から回収された熱は、その後、任意の用途で有効利用することができる。
なお、熱回収部13は、上述した熱供給部12と一体的に構成されていてもよい。
【0043】
反応器11内の蓄熱材から吸熱脱水反応によって生成された水、及び/又は、水和発熱反応を進行させるために蓄熱材に供給する水は、貯蔵器14において貯蔵される。
貯蔵器内の水22は、液体の水であってもよいし、水蒸気であってもよい。
図示していないが、本実施形態に係る蓄熱装置は、貯蔵器内の水を加熱するための第二の熱供給部を備えてもよい。また、本実施形態に係る蓄熱装置は、水の蒸発熱または凝縮熱を外部に取り出すための第二の熱回収部を備えてもよい。
【0044】
反応器11と貯蔵器14とは、当該水を通すための接続管15によって接続されている。
反応器11内の蓄熱材から吸熱脱水反応によって生成された水は、接続管15を通って貯蔵器14に移動する。
また、貯蔵器14に貯蔵された水は、接続管15を通って反応器11に移動し、水和発熱反応を進行させることができる。
水の移動は、加熱または減圧により水を水蒸気に変換した上で行ってもよい。また、重力やポンプなどを利用して、液体のまま水を移動させてもよい。
【0045】
本実施形態に係る蓄熱装置30は、接続管15における水の移動を適時遮断するために、前記接続管15内の流路を開閉する開閉弁16を更に備えてもよい。
【0046】
本実施形態に係る反応器1は、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0047】
すなわち、本実施形態に係る反応器11は、流体物の吸収及び放出をする蓄熱材を含有する蓄熱体と、前記蓄熱体を収容する容器10とを備える。
また、本実施形態に係る反応器11は、前記流体物の流路を確保できる形状に成形された成形体を前記容器10内に更に備える。
本実施形態に係る反応器11は、斯かる構成となっていることにより、蓄熱体の微粉化が生じても、前記容器10内において流体物の流路が閉塞するのを抑制することができる。
従って、本実施形態によれば、反応効率が低下し難い反応器を提供し得る。
【0048】
また、本実施形態に係る反応器11では、前記成形体が、前記蓄熱体の体積変化によって生じる摩擦を緩衝する成形体である。
本実施形態に係る反応器11は、斯かる構成となっていることにより、前記蓄熱体の体積変化によって生じる摩擦を緩衝することができ、その結果、蓄熱体の微粉化を抑制することができる。
従って、本実施形態に係る反応器11は、斯かる構成となっていることにより、反応効率がより一層低下し難くなる。
【0049】
なお、本発明に係る反応器、及び、蓄熱装置は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る反応器、及び、蓄熱装置は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る反応器、及び、蓄熱装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、本実施形態に係る反応器11では、化学蓄熱材が、アルカリ土類金属の水酸化物及び/又は酸化物であるが、他の実施形態に係る反応器1では、化学蓄熱材として、例えば、金属塩、ゼオライト等を用いることができる。
前記金属塩としては、例えば、アルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、亜鉛のハロゲン化物等が挙げられる。
前記アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム等が挙げられる。
前記アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
前記亜鉛のハロゲン化物としては、塩化亜鉛が挙げられる。
例えば、塩化カルシウム又はゼオライトを蓄熱材として用いる場合は、以下の可逆反応を利用したものである。
CaCl+nHO⇔CaCl・nH
Zeolite+mHO⇔Zeolite・mH
ここで、nは、正の整数である。また、mは、正の整数である。
なお、金属塩は、CaCl・2HO等の水和物も含む概念である。
【0051】
また、本実施形態に係る反応器1では、流体物として水を利用した反応器であるが、他の実施形態に係る反応器は、流体物として、二酸化炭素、水素、アンモニアなどを利用した反応器であってもよい。
流体物として二酸化炭素を利用する場合には、化学蓄熱材としては、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
なお、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムは、以下の可逆反応を利用したものである。
MgO+CO⇔MgCO
流体物として水素ガスを利用する場合には、化学蓄熱材としては、ナトリウム、水素化ナトリウム等が挙げられる。
なお、ナトリウム及び水素化ナトリウムは、以下の可逆反応を利用したものである。
Na+1/2H⇔NaH
流体物としてアンモニアを利用する場合には、化学蓄熱材としては、FeCl・6NH、FeCl・2NH等が挙げられる。
なお、FeCl・6NH及びFeCl・2NHは、以下の可逆反応を利用したものである。
FeCl・2NH+4NH⇔FeCl・6NH
【0052】
また、本実施形態に係る反応器は、蓄熱材として化学蓄熱材を備えるが、他の実施形態に係る反応器は、蓄熱材として、固体間で変化する潜熱蓄熱材を備えてもよい。
なお、蓄熱材としては、化学蓄熱材が好ましい。
【符号の説明】
【0053】
10:容器、11:反応器、12:熱供給部、13:熱回収部、14:貯蔵器、15:接続管、16:開閉弁、21:容器の内部空間(蓄熱体及び成形体)、22:水、30:蓄熱装置
図1
図2