IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンリツ株式会社の特許一覧

特開2022-15742伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ
<>
  • 特開-伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ 図1
  • 特開-伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ 図2
  • 特開-伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ 図3
  • 特開-伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ 図4
  • 特開-伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ 図5
  • 特開-伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ 図6
  • 特開-伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ 図7
  • 特開-伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ 図8
  • 特開-伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ 図9
  • 特開-伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015742
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/08 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
H01P5/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118786
(22)【出願日】2020-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100163876
【弁理士】
【氏名又は名称】上藤 哲嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100187045
【弁理士】
【氏名又は名称】梅澤 奈菜
(72)【発明者】
【氏名】倉光 康太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な変換特性を有する、同軸伝送線路ーマイクロストリップ伝送線路変換構造を提供する。
【解決手段】同軸伝送線路ーマイクロストリップ伝送線路変換構造は、マイクロストリップ伝送線路の信号線路11、第1の誘電体層14、第1のグランド12、第2の誘電体層15及び第2のグランド13を順に備える平面伝送線路と、中心導体31、同軸誘電体33及び外部導体32を有する同軸伝送線路とで構成される。第1のグランド12は、金属板10で第2のグランド13に接続される。マイクロストリップ伝送線路の信号線路11は、同軸伝送線路の中心導体31と接続される。第1のグランド12及び第2のグランド13は、同軸伝送線路の外部導体33と接続される。同軸伝送線路の中心導体31の周囲には、誘電体リング34が設置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層からなる基板にマイクロストリップ伝送線路の信号線路(11)、第1の誘電体層(14)、前記マイクロストリップ伝送線路の接地導体グランドである第1のグランド(12)、第2の誘電体層(15)及び前記マイクロストリップ伝送線路の接地導体グランドである第2のグランド(13)を順に備える平面伝送線路と、
中心導体(31)、前記中心導体(31)の周囲に設けられた同軸誘電体(33)及び前記同軸誘電体(33)の周囲に設けられた外部導体(32)を有する同軸伝送線路との伝送線路変換構造であって、
前記第2のグランド(13)は、前記信号線路(11)がある面と反対側の前記基板の裏面に設けられたグランド又は前記第1のグランド(12)から前記基板の裏面側のいずれかの層に設けられたグランドであり、
前記マイクロストリップ伝送線路の信号線路(11)と前記同軸伝送線路の中心導体(31)とが接続され、
前記第1のグランド(12)及び前記第2のグランド(13)と前記同軸伝送線路の外部導体(32)とが接続され、
前記第2の誘電体層(15)と前記同軸誘電体(33)との間に、前記第1のグランド(12)に接続された金属板(10)が設置され、
前記平面伝送線路側の前記中心導体(31)の周囲に、前記第1の誘電体層(14)及び前記同軸誘電体(33)に接するように誘電体リング(34)が設置されていることを特徴とする伝送線路変換構造。
【請求項2】
複数の層からなる基板にコプレーナ伝送線路の信号線路(21)及び前記コプレーナ伝送線路のグランドである第3のグランド(22)、第3の誘電体層(25)、第4のグランド(23)、第4の誘電体層(26)並びに第5のグランド(24)を順に備える平面伝送線路と、
中心導体(31)、前記中心導体(31)の周囲に設けられた同軸誘電体(33)及び前記同軸誘電体(33)の周囲に設けられた外部導体(32)を有する同軸伝送線路との伝送線路変換構造であって、
前記第4のグランド(23)は、前記第3のグランド(22)から前記基板の裏面側のいずれかの層に設けられたグランドであり、
前記第5のグランド(24)は、前記信号線路(21)がある面とは反対側の前記基板の裏面に設けられたグランド又は前記第4のグランド(23)から前記基板の裏面側のいずれかの層に設けられたグランドであり、
前記コプレーナ伝送線路の信号線路(21)と前記同軸伝送線路の中心導体(31)とが接続され、
前記コプレーナ伝送線路の第3のグランド(22)、前記第4のグランド(23)及び前記第5のグランド(24)と前記同軸伝送線路の外部導体(32)とが接続され、
前記第4の誘電体層(26)と前記同軸誘電体(33)との間に、前記第4のグランド(23)に接続された金属板(10)が設置され、
前記平面伝送線路側の前記中心導体(31)の周囲に、前記第3の誘電体層(25)及び前記同軸誘電体(33)に接するように誘電体リング(34)が設置されていることを特徴とする伝送線路変換構造。
【請求項3】
中心導体(31)、前記中心導体(31)の周囲に設けられた同軸誘電体(33)及び前記同軸誘電体(33)の周囲に設けられた外部導体(32)を有し、
基板接続側の前記中心導体(31)の周囲に、前記同軸誘電体(33)に接するように誘電体リング(35)が設置されていることを特徴とする同軸型エンドランチコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平面伝送線路と同軸伝送線路との伝送線路変換構造及び同軸型エンドランチコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板と外部との間で信号を伝搬するために、回路基板の平面伝送線路と外部接続に用いられる同軸伝送線路との間には伝送線路変換構造が用いられる。平面伝送線路と同軸伝送線路とを接続した際に、同軸伝送線路から平面伝送線路の誘電体層に電磁波が侵入してしまう。そのため、平面伝送線路の誘電体層と同軸伝送線路の同軸誘電体との間に金属板を設置することとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再公表WO2002/082578
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、平面伝送線路の誘電体層と同軸伝送線路の同軸誘電体との間に金属板を設置すると、平面伝送線路の回路基板の端面と同軸伝送線路の端面との間にエアギャップが形成され、伝送特性が劣化することが分かった。
【0005】
伝送線路変換構造に対しては、伝送損失を最小化する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の構造は、変換部で信号が外部に放射されたり、反射されたりして透過率が劣化することを防止するものであるが、エアギャップに対しては効果が得られない。
【0006】
そこで、本開示は、平面伝送線路の回路基板の端面と同軸伝送線路の端面との間にエアギャップが形成されても、伝送特性の劣化を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、同軸伝送線路又は同軸型エンドランチコネクタの中心導体の周囲に誘電体リングを設置することとした。
【0008】
具体的には、本開示の伝送線路変換構造は、
複数の層からなる基板にマイクロストリップ伝送線路の信号線路、第1の誘電体層、前記マイクロストリップ伝送線路の接地導体グランドである第1のグランド、第2の誘電体層及び前記マイクロストリップ伝送線路の接地導体グランドである第2のグランドを順に備える平面伝送線路と、
中心導体、前記中心導体の周囲に設けられた同軸誘電体及び前記同軸誘電体の周囲に設けられた外部導体を有する同軸伝送線路との伝送線路変換構造であって、
前記第2のグランドは、前記信号線路がある面と反対側の前記基板の裏面に設けられたグランド又は前記第1のグランドから前記基板の裏面側のいずれかの層に設けられたグランドであり、
前記マイクロストリップ伝送線路の信号線路と前記同軸伝送線路の中心導体とが接続され、
前記第1のグランド及び前記第2のグランドと前記同軸伝送線路の外部導体とが接続され、
前記第2の誘電体層と前記同軸誘電体との間に、前記第1のグランドに接続された金属板が設置され、
前記平面伝送線路側の前記中心導体の周囲に、前記第1の誘電体層及び前記同軸誘電体に接するように誘電体リングが設置されていることを特徴とする。
【0009】
具体的には、本開示の伝送線路変換構造は、
複数の層からなる基板にコプレーナ伝送線路の信号線路及び前記コプレーナ伝送線路のグランドである第3のグランド、第3の誘電体層、第4のグランド、第4の誘電体層並びに第5のグランドを順に備える平面伝送線路と、
中心導体、前記中心導体の周囲に設けられた同軸誘電体及び前記同軸誘電体の周囲に設けられた外部導体を有する同軸伝送線路との伝送線路変換構造であって、
前記第4のグランドは、前記第3のグランドから前記基板の裏面側のいずれかの層に設けられたグランドであり、
前記第5のグランドは、前記信号線路がある面とは反対側の前記基板の裏面に設けられたグランド又は前記第4のグランドから前記基板の裏面側のいずれかの層に設けられたグランドであり、
前記コプレーナ伝送線路の信号線路と前記同軸伝送線路の中心導体とが接続され、
前記コプレーナ伝送線路の第3のグランド、前記第4のグランド及び前記第5のグランドと前記同軸伝送線路の外部導体とが接続され、
前記第4の誘電体層と前記同軸誘電体との間に、前記第4のグランドに接続された金属板が設置され、
前記平面伝送線路側の前記中心導体の周囲に、前記第3の誘電体層及び前記同軸誘電体に接するように誘電体リングが設置されていることを特徴とする。
【0010】
具体的には、本開示の同軸型エンドランチコネクタは、
中心導体、前記中心導体の周囲に設けられた同軸誘電体及び前記同軸誘電体の周囲に設けられた外部導体を有し、
基板接続側の前記中心導体の周囲に、前記同軸誘電体に接するように誘電体リングが設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、平面伝送線路と同軸伝送線路との伝送線路変換構造又は同軸型エンドランチコネクタにおいて、平面伝送線路の回路基板の端面と同軸伝送線路の端面との間にエアギャップが形成されても、伝送特性の劣化を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る伝送線路変換構造の斜視図である。
図2】本実施形態に係る伝送線路変換構造の長軸方向の側面断面図である。
図3】本実施形態に係る伝送線路変換構造の長軸方向の上面断面図である。
図4】本実施形態に係る伝送線路変換構造の長軸方向に垂直な断面図である。
図5】本実施形態に係る伝送線路変換構造の斜視図である。
図6】本実施形態に係る伝送線路変換構造の長軸方向の側面断面図である。
図7】本実施形態に係る伝送線路変換構造の長軸方向の上面断面図である。
図8】本実施形態に係る伝送線路変換構造の長軸方向に垂直な断面図である。
図9】本実施形態に係る同軸型エンドランチコネクタの斜視図である。
図10】本実施形態に係る伝送線路変換構造のシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0014】
本実施形態に係る伝送線路変換構造は、平面伝送線路と同軸伝送線路との伝送線路変換構造である。本実施形態に係る伝送線路変換構造の斜視図を図1に、伝送線路の長軸方向の側面断面図を図2に、上面断面図を図3に、平面伝送線路と同軸伝送線路とが繋がる部分での長軸方向に垂直な断面図を図4に示す。
【0015】
図1から図4において、平面伝送線路は、複数の層からなる基板にマイクロストリップ伝送線路の信号線路11、第1の誘電体層14、第1のグランド12、第2の誘電体層15及び第2のグランド13を順に備える。第1のグランド12は、マイクロストリップ伝送線路の接地導体グランドである。第2のグランド13は、信号線路11のある面と反対側となる基板の裏面に設けられたグランド又は第1のグランド12から基板の裏面側のいずれかの層に設けられたグランドである。
【0016】
図1から図4において、第2のグランド13は、基板の裏面に設けられている。マイクロストリップ伝送線路の信号線路11とマイクロストリップ伝送線路の第1のグランド12との間は第1の誘電体層14が配置され、マイクロストリップ伝送線路の第1のグランド12と第2のグランド13との間は第2の誘電体層15が配置されている。 図1及び図4では、第1の誘電体層14及び第2の誘電体層15は、図示を省略している。
【0017】
第2のグランド13が基板の裏面に設けられている場合は、回路基板内への電磁波侵入を阻止したり、回路へ電力供給したりする目的で利用される。第2のグランド13が第1のグランド12から基板の裏面側のいずれかの層に設けられている場合は、基板の層間の電磁誘導を阻止したり、回路へ電力供給したりする目的で利用される。
【0018】
図1から図4において、同軸伝送線路は、中心導体31、中心導体31の周囲に同軸誘電体33及び同軸誘電体33の周囲に外部導体32を備える。マイクロストリップ伝送線路の信号線路11と同軸伝送線路の中心導体31とが接続されている。マイクロストリップ伝送線路の第1のグランド12及び第2のグランド13と同軸伝送線路の外部導体32とが接続されている。ここで、「接続」という用語は、高周波的に接続されていればよく、必ずしも物理的な接触を要しないことを意味する。特に、断らない限り、以下の実施形態でも同様である。
【0019】
図1から図4において、第2の誘電体層15と同軸誘電体33との間に、第1のグランド12に接続された金属板10が設置されている。金属板10を設置することにより、同軸伝送線路の同軸誘電体33を伝搬する電磁波が平面伝送線路の第2の誘電体層15に侵入することを防止する。
【0020】
金属板10は、第2の誘電体層15の端面又は同軸誘電体33の端面に導体となる金属の板を貼り付けたものでもよいし、第2の誘電体層15の端面又は同軸誘電体33の端面に金属メッキを施したものでもよい。金属板の材料は、金、銀、銅、アルミニウム等の導電率の高い金属が望ましい。
【0021】
金属板10は、第2の誘電体層15の端面全体に設置しなくてもよい。例えば、図4に示すように、少なくとも、第2の誘電体層15と同軸誘電体33が重なる部分に設置することでもよい。金属板10は、第2の誘電体層15の端面又は同軸誘電体33の端面に導体となる金属の板を貼り付けたものでもよいし、第2の誘電体層15の端面又は同軸誘電体33の端面に金属メッキを施したものでもよい。少なくとも、第2の誘電体層15と同軸誘電体33が重なる部分に設置すれば、同軸伝送線路の同軸誘電体33を伝搬する電磁波が平面伝送線路の第2の誘電体層15に侵入することを防止できる。
【0022】
平面伝送線路の第2の誘電体層15と同軸伝送線路の同軸誘電体33との間に金属板を設置すると、平面伝送線路の回路基板の端面と同軸伝送線路の端面との間にエアギャップが形成され、伝送特性が劣化する。そこで、平面伝送線路側の中心導体31の周囲に、第1の誘電体層14及び同軸誘電体33に接するように誘電体リング34を設置する。平面伝送線路の回路基板の端面と同軸伝送線路の端面との間にエアギャップが形成されても、誘電体リング34を設置することによって、中心導体31を伝搬する電磁波が反射されたり、放射したりすることを防止できる。
【0023】
誘電体リング34の誘電率は、第1の誘電体層14の誘電率に近いことが好ましい。誘電体リング34の材質としては、テフロン(登録商標)やナイロンが例示できる。誘電体リング34は、同軸誘電体33の一部として、同軸誘電体33をリング状に突起させてもよく、中心導体31の周囲にリング状の誘電体を取り付けた物でもよい。同軸伝送線路を平面伝送線路に圧着した際に、誘電体リング34が金属板10に接する程度まで拡張することが好ましい。
【0024】
本実施形態の平面伝送線路では、第1の誘電体層14上(基板の信号線路11側の面上)で、信号線路11の片側又は両側に表面グランド(不図示)を備えていてもよい。
【0025】
図1から図4までの図面では、同軸伝送線路は、同軸ケーブルとして記載されているが、金属シェルが外部導体を構成する同軸構造のコネクタであってもよい。図9に同軸型エンドランチコネクタの斜視図を示す。図9において、同軸型エンドランチコネクタ30は、中心導体31、中心導体31の周囲に設けられた同軸誘電体33、同軸誘電体33の周囲に設けられた外部導体32を有する。外部導体32は金属シェルと一体となってもよく、金属シェルが外部導体を兼ねてもよい。
【0026】
中心導体31の周囲に、同軸誘電体33に接するように誘電体リング35を設置する。誘電体リング35を設置することによって、同軸型エンドランチコネクタを平面伝送線路に接続した際にエアギャップが形成されても、中心導体31を流れる電磁波が反射されたり、放射したりすることを防止できる。
【0027】
誘電体リング35の誘電率は、同軸誘電体33の誘電率に近いことが好ましい。誘電体リング35の材質としては、テフロン(登録商標)やナイロンが例示できる。誘電体リング35は、同軸誘電体33の一部として、同軸誘電体33をリング状に突起させてもよく、中心導体31の周囲にリング状の誘電体を取り付けた物でもよい。同軸型エンドランチコネクタを平面伝送線路に圧着した際に、誘電体リング35が金属板10に接する程度まで拡張することが好ましい。
【0028】
同軸型エンドランチコネクタを平面伝送線路に接続した場合の反射特性を図10に示す。図10は、誘電体リングのない同軸型エンドランチコネクタに比較して、誘電体リングのある同軸型エンドランチコネクタでは、ほぼ全域に渡って反射特性が改善されていることを示している。この結果から、中心導体の周囲に誘電体リングを設置することが有効であると分かる。
【0029】
本実施形態に係る伝送線路変換構造は、平面伝送線路と同軸伝送線路との伝送線路変換構造である。本実施形態に係る伝送線路変換構造の斜視図を図5に、伝送線路の長軸方向の側面断面図を図6に、上面断面図を図7に、平面伝送線路と同軸伝送線路とが繋がる部分での長軸方向に垂直な断面図を図8に示す。
【0030】
図5から図8において、平面伝送線路は、複数の層からなる基板にコプレーナ伝送線路の信号線路21及び第3のグランド22、第3の誘電体層25、第4のグランド23、第4の誘電体層26並びに第5のグランド24を順に備える。第3のグランド22は、コプレーナ伝送線路のグランドである。第4のグランド23は、第3のグランド22に対して、第3のグランド22のある面と反対側となる基板の裏面側のいずれかの層に設けられたグランドである。第5のグランド24は、基板の裏面に設けられたグランド又は第4のグランド23から基板の裏面側のいずれかの層に設けられたグランドである。図5から図8において、第5のグランド24は、基板の裏面に設けられている。
【0031】
コプレーナ伝送線路と第4のグランド23との間は第3の誘電体層25が配置され、第4のグランド23と第5のグランド24との間は第4の誘電体層26が配置されている。図5及び図8では、第3の誘電体層25及び第4の誘電体層26は、図示を省略している。コプレーナ伝送線路の第3のグランド22は、信号線路21の片側に配置されていても、両側に配置されていてもよい。第4のグランド23を備えると、伝送特性の設計が容易になり、また、伝送特性の向上が期待できる。
【0032】
第5のグランド24が基板の裏面に設けられている場合は、回路基板内への電磁波侵入を阻止したり、回路へ電力供給したりする目的で利用される。第5のグランド24が第4のグランドから基板の裏面側のいずれかの層に設けられている場合は、基板の層間の電磁誘導を阻止したり、回路へ電力供給したりする目的で利用される。
【0033】
図6から図9において、同軸伝送線路は、中心導体31、中心導体31の周囲に同軸誘電体33及び同軸誘電体33の周囲に外部導体32を備える。コプレーナ伝送線路の信号線路21と同軸伝送線路の中心導体31とが接続されている。コプレーナ伝送線路の第3のグランド22、第4のグランド23及び第5のグランド24と同軸伝送線路の外部導体32とが接続されている。
【0034】
図5から図8において、第4の誘電体層26と同軸誘電体33との間に、第4のグランド23に接続された金属板10が設置されている。金属板10を設置することにより、同軸伝送線路の同軸誘電体33を伝搬する電磁波が平面伝送線路の第4の誘電体層26に侵入することを防止する。
【0035】
金属板10は、第4の誘電体層26の端面又は同軸誘電体33の端面に導体となる金属の板を貼り付けたものでもよいし、第4の誘電体層26の端面又は同軸誘電体33の端面に金属メッキを施したものでもよい。金属板の材料は、金、銀、銅、アルミニウム等の導電率の高い金属が望ましい。
【0036】
金属板10は、第4の誘電体層26の端面全体に設置しなくてもよい。例えば、図8に示すように、少なくとも、第4の誘電体層26と同軸誘電体33が重なる部分に設置することでもよい。金属板10は、第4の誘電体層26の端面又は同軸誘電体33の端面に導体となる金属の板を貼り付けたものでもよいし、第4の誘電体層26の端面又は同軸誘電体33の端面に金属メッキを施したものでもよい。少なくとも、第4の誘電体層26と同軸誘電体33が重なる部分に設置すれば、同軸伝送線路の同軸誘電体33を伝搬する電磁波が平面伝送線路の第4の誘電体層26に侵入することを防止できる。
【0037】
平面伝送線路の第4の誘電体層26と同軸伝送線路の同軸誘電体33との間に金属板を設置すると、平面伝送線路の回路基板の端面と同軸伝送線路の端面との間にエアギャップが形成され、伝送特性が劣化する。そこで、平面伝送線路側の中心導体31の周囲に、第3の誘電体層25及び同軸誘電体33に接するように誘電体リング34を設置する。平面伝送線路の回路基板の端面と同軸伝送線路の端面との間にエアギャップが形成されても、誘電体リング34を設置することによって、中心導体31を伝搬する電磁波が反射されたり、放射したりすることを防止できる。
【0038】
誘電体リング34の誘電率は、第3の誘電体層25の誘電率に近いことが好ましい。誘電体リング34の材質としては、テフロン(登録商標)やナイロンが例示できる。誘電体リング34は、同軸誘電体33の一部として、同軸誘電体33をリング状に突起させてもよく、中心導体31の周囲にリング状の誘電体を取り付けた物でもよい。同軸伝送線路を平面伝送線路に圧着した際に、誘電体リング34が金属板10に接する程度まで拡張することが好ましい。
【0039】
図5から図8までの図面では、同軸伝送線路は、同軸ケーブルとして記載されているが、金属シェルが外部導体を構成する同軸構造のコネクタであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10:金属板
11:信号線路
12:第1のグランド
13:第2のグランド
14:第1の誘電体層
15:第2の誘電体層
21:信号線路
22:第3のグランド
23:第4のグランド
24:第5のグランド
25:第3の誘電体層
26:第4の誘電体層
30:同軸型エンドランチコネクタ
31:中心導体
32:外部導体
33:同軸誘電体
34、35:誘電体リング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10