(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157425
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 21/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G01B21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061633
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智也
(72)【発明者】
【氏名】横山 優樹
(72)【発明者】
【氏名】東方 良介
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】荻原 敦
(72)【発明者】
【氏名】氷治 直樹
(72)【発明者】
【氏名】上村 恭
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA01
2F069AA04
2F069AA14
2F069AA66
2F069GG01
2F069GG72
2F069QQ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】成形品内における、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を視認可能とする情報処理装置及び情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置は、プロセッサを備え、プロセッサは、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を示す関係オブジェクト33を、成形品30の三次元モデル上の関係に対応する位置に表示させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す関係オブジェクトを、
前記成形品の三次元モデル上の前記関係に対応する位置に表示させる
情報処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記関係オブジェクトとして、
前記成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す第1の関係オブジェクトと、
前記第1の関係オブジェクトと前記成形品内の少なくとも一つ以上の測定箇所との位置上の関係を示す第2の関係オブジェクトとを、
前記成形品の三次元モデル上の前記関係に対応する位置に表示させる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記関係オブジェクトとして、
前記成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す第3の関係オブジェクトと、
前記第3の関係オブジェクトとは別に、前記成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す第4の関係オブジェクトと、
前記第3の関係オブジェクトと前記第4の関係オブジェクトとの位置上の関係を示す第5の関係オブジェクトとを、
前記成形品の三次元モデル上の前記関係に対応する位置に表示させる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記関係オブジェクトは、
二つ以上の前記測定箇所を含む線又は面を形成することで、前記位置上の関係を表示させる
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記位置上の関係は、アナログ手法による測定により取得する
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記位置上の関係は、
前記成形品内の二つ以上の前記測定箇所を計測して得た座標位置から取得する
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記成形品の設計に関する設計情報を取得し、
前記設計情報と、前記位置上の関係とを比較した比較情報を取得する
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記位置上の関係と前記設計情報とを比較した結果の、差の量又は差の方向の少なくとも一方を、色彩又は矢印で、
前記関係オブジェクトを表示させる
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記測定箇所は、
前記成形品内における検査対象の形状要素の重心位置から取得する
請求項1~請求項8の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記成形品内における第1の検査対象及び第2の検査対象のそれぞれに複数の前記測定箇所が存在する場合において、
前記第1の検査対象及び前記第2の検査対象の対応する複数の前記測定箇所毎に複数の前記関係オブジェクトを、
前記第1の検査対象上にそれぞれ独立して表示させる
請求項1~請求項9の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記第1の検査対象に対応する前記第2の検査対象が複数存在する場合において、
前記第1の検査対象と前記第2の検査対象とを比較し、小さい方の前記検査対象の重心位置に応じて前記関係オブジェクトの表示位置を決定する
請求項9又は請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記関係オブジェクトが選択された場合、前記関係オブジェクトが有する前記設計情報及び前記比較情報のうち少なくとも一つを表示させる
請求項10又は請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記検査対象に対し実施されており、かつ、前記比較情報とも関連のある、他の検査に関する他の関係オブジェクトも同時に表示させる
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、
複数の前記関係オブジェクトを互いに区別し得る態様で表示させる
請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記プロセッサは、
前記成形品に関するすべての前記関係オブジェクトのうち、前記三次元モデル上に表示させる前記関係オブジェクトをフィルタリングして表示させる
請求項1~請求項14の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、
前記三次元モデルを複数の平面を組み合わせて簡素化したモデルで表示し、
前記簡素化したモデルの対応する位置に前記関係オブジェクトを矢印で表示させる
請求項1~請求項15の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記プロセッサは、
前記設計情報に基づいて算出する、前記成形品の合否判定に用いる基準値を、
ユーザによる選択、又は前記ユーザの有する属性情報に対応させて決定する
請求項1~請求項16の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項18】
コンピュータに、
成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す関係オブジェクトを、
前記成形品の三次元モデル上の前記関係に対応する位置に表示させる
情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、製品の三次元形状と設計値の情報とを有する設計製品モデル(50)を、あらかじめ設定された三次元座標系である製品座標系上において設計する製品設計工程と、前記設計製品モデル(50)に基づき、前記製品を成形する成形型を作成する成形型作成工程と、前記成形型を用いて製品を試作成形する試作成形工程と、試作成形された前記製品における複数の測定点の位置を、あらかじめ設定された三次元座標系である測定座標系上において測定する測定工程と、前記測定工程において測定した前記測定点の測定値と、前記測定点に対応する前記設計製品モデル(50)上の点の設計値とのずれの大きさを算出するずれ情報算出工程と、前記設計製品モデル(50)の前記製品の形状を示す図面と、前記ずれの大きさとを表示部(26)に表示する表示工程と、前記測定点における前記ずれの大きさが小さくなるように、前記製品座標系の位置を調整する基準調整工程と、調整後の前記製品座標系における設計値に対する前記ずれの大きさを算出するずれ情報再算出工程と、前記製品上の前記製品座標系の位置を、前記基準調整工程において調整後の前記製品座標系の位置とするように、前記成形型を修正する成形型修正工程と、を有し、前記基準調整工程において、前記測定点における前記ずれの大きさの和が小さくなるように前記製品座標系を調整し、前記基準調整工程において、選択した前記測定点における前記ずれの大きさの和が小さくなるように前記製品座標系の移動量を算出する部分ベストフィットと、すべての前記測定点における前記ずれの大きさの和が小さくなるように前記製品座標系の移動量を算出する全体ベストフィットと、を有し、前記部分ベストフィットによる前記移動量の値、前記全体ベストフィットによる前記移動量の値、前記部分ベストフィットによる前記移動量と前記全体ベストフィットによる前記移動量との中間値、および、前記部分ベストフィットによる前記移動量と前記全体ベストフィットによる前記移動量とに挟まれる範囲内において、それぞれの前記移動量の重みづけを複数変えた値の算出を同時に行い、その算出結果群の中から、作業員が、成形型の修正方法を勘案して1つの算出結果を選択して、選択された算出結果による値に基づいて前記製品座標系を調整することを特徴とする成形型の修正方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形品を製造する際、設計図面と、検査表に記入された各種検査結果と、三次元モデルとをそれぞれ見比べ、頭の中で成形品の出来映え状態を把握することは煩雑である。特に成形品内における複数の測定箇所同士の関係を基に一つの規格の合否を判定する場合、及び複数の規格同士が相互に影響する場合には、成形品内における複数の測定箇所同士の関係を一目で把握することは非常に困難である。
【0005】
本発明は、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を視認可能とする情報処理装置及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る情報処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す関係オブジェクトを、前記成形品の三次元モデル上の前記関係に対応する位置に表示させる。
【0007】
第2の態様に係る情報処理装置は、前記プロセッサは、前記関係オブジェクトとして、前記成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す第1の関係オブジェクトと、前記第1の関係オブジェクトと前記成形品内の少なくとも一つ以上の測定箇所との位置上の関係を示す第2の関係オブジェクトとを、前記成形品の三次元モデル上の前記関係に対応する位置に表示させる。
【0008】
第3の態様に係る情報処理装置は、前記プロセッサは、前記関係オブジェクトとして、前記成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す第3の関係オブジェクトと、前記第3の関係オブジェクトとは別に、前記成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す第4の関係オブジェクトと、前記第3の関係オブジェクトと前記4の関係オブジェクトとの位置上の関係を示す第5の関係オブジェクトとを、前記成形品の三次元モデル上の前記関係に対応する位置に表示させる。
【0009】
第4の態様に係る情報処理装置は、前記関係オブジェクトは、二つ以上の前記測定箇所を含む線又は面を形成することで、前記位置上の関係を表示させる。
【0010】
第5の態様に係る情報処理装置では、前記位置上の関係は、アナログ手法による測定により取得する。
【0011】
第6の態様に係る情報処理装置では、前記位置上の関係は、前記成形品内の二つ以上の前記測定箇所を計測して得た座標位置から取得する。
【0012】
第7の態様に係る情報処理装置では、前記プロセッサは、前記成形品の設計に関する設計情報を取得し、前記設計情報と、前記位置上の関係とを比較した比較情報を取得する。
【0013】
第8の態様に係る情報処理装置では、前記プロセッサは、前記位置上の関係と前記設計情報とを比較した結果の、差の量又は差の方向の少なくとも一方を、色彩又は矢印で、前記関係オブジェクトを表示させる。
【0014】
第9の態様に係る情報処理装置では、前記測定箇所は、前記成形品内における検査対象の形状要素の重心位置から取得する。
【0015】
第10の態様に係る情報処理装置では、前記プロセッサは、前記成形品内における第1の検査対象及び第2の検査対象のそれぞれに複数の前記測定箇所が存在する場合において、前記第1の検査対象及び前記第2の検査対象の対応する複数の前記測定箇所毎に複数の前記関係オブジェクトを、前記第1の検査対象上にそれぞれ独立して表示させる。
【0016】
第11の態様に係る情報処理装置では、前記プロセッサは、前記第1の検査対象に対応する前記第2の検査対象が複数存在する場合において、前記第1の検査対象と前記第2の検査対象とを比較し、小さい方の前記検査対象の重心位置に応じて前記関係オブジェクトの表示位置を決定する。
【0017】
第12の態様に係る情報処理装置では、前記プロセッサは、前記関係オブジェクトが選択された場合、前記関係オブジェクトが有する前記設計情報及び前記比較情報のうち少なくとも一つを表示させる。
【0018】
第13の態様に係る情報処理装置では、前記プロセッサは、前記検査対象に対し実施されており、かつ、前記比較情報とも関連のある、他の検査に関する他の関係オブジェクトも同時に表示させる。
【0019】
第14の態様に係る情報処理装置では、前記プロセッサは、複数の前記関係オブジェクトを互いに区別し得る態様で表示させる。
【0020】
第15の態様に係る情報処理装置では、前記プロセッサは、前記成形品に関するすべての前記関係オブジェクトのうち、前記三次元モデル上に表示させる前記関係オブジェクトをフィルタリングして表示させる。
【0021】
第16の態様に係る情報処理装置では、前記プロセッサは、前記三次元モデルを複数の平面を組み合わせて簡素化したモデルで表示し、前記簡素化したモデルの対応する位置に前記関係オブジェクトを矢印で表示させる。
【0022】
第17の態様に係る情報処理装置では、前記プロセッサは、前記設計情報に基づいて算出する、前記成形品の合否判定に用いる基準値を、ユーザによる選択、又は前記ユーザの有する属性情報に対応させて決定する。
【0023】
第18の態様に係る情報処理プログラムでは、コンピュータに、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す関係オブジェクトを、前記成形品の三次元モデル上の前記関係に対応する位置に表示させる。
【発明の効果】
【0024】
第1の態様に係る情報処理装置によれば、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を成形品の三次元モデル上で視認することができる。
【0025】
第2の態様に係る情報処理装置によれば、関係オブジェクトと、成形品内の少なくとも一つ以上の測定箇所との位置上の関係を成形品の三次元モデル上で視認することができる。
【0026】
第3の態様に係る情報処理装置によれば、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係だけでなく、関係オブジェクト同士の位置上の関係についても成形品の三次元モデル上で視認することができる。
【0027】
第4の態様に係る情報処理装置によれば、二つ以上の測定箇所を含む線又は面を形成して関係オブジェクトを表示することで、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係をより明確に成形品の三次元モデル上で視認することができる。
【0028】
第5の態様に係る情報処理装置によれば、アナログ手法による測定結果により得られた成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係も、成形品の三次元モデル上で視認することができる。
【0029】
第6の態様に係る情報処理装置によれば、三次元座標を用いた三次元測定の結果により取得した、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係も、成形品の三次元モデル上で視認することができる。
【0030】
第7の態様に係る情報処理装置によれば、設計上の規格と、実際の成形品の出来映え状態とを比較した結果を得ることで、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係同士の関係をより正確に把握することすることができる。
【0031】
第8の態様に係る情報処理装置によれば、設計上の規格と実際の成形品の出来映え状態を比較した結果を色彩又は矢印で表示することで、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係同士の関係を直感的に把握することができる。
【0032】
第9の態様に係る情報処理装置によれば、測定箇所を、検査対象の形状要素の重心位置によって特定することにより、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係同士の関係をより明確に把握することができる。
【0033】
第10の態様に係る情報処理装置によれば、第1の検査対象と、第1の検査対象に対する複数の第2の検査対象とを検査する場合でも、第1の検査対象と複数の第2の検査対象との位置上の関係を各々成形品の三次元モデル上で視認することができる。
【0034】
第11の態様に係る情報処理装置によれば、小さい方の検査対象の重心位置に応じて関係オブジェクトが配置されるので、複数の関係オブジェクトが同一の三次元モデル上で重なり合って表示されることを防ぎ、成形品の出来映えを明確に確認できる。
【0035】
第12の態様に係る情報処理装置によれば、第1の検査対象と第2の検査対象との関係の有する規格に関する情報、及び実際の出来映え状態に関する情報のうち少なくともいずれか一つについて表示することで、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係同士の関係及び出来映え状態をより容易に把握することができる。
【0036】
第13の態様に係る情報処理装置によれば、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を成形品の三次元モデル上で視認可能とするだけでなく、相互に影響を及ぼす可能性のある他の規格及び関係も同時に表示することで成形品全体の規格同士の関係を把握することができる。
【0037】
第14の態様に係る情報処理装置によれば、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を表す関係オブジェクトと、同一の検査対象が相互に影響を及ぼす可能性のある他の関係オブジェクトとを、それぞれ区別した態様で表示することで、成形品全体の規格の関係をより容易に把握することができる。
【0038】
第15の態様に係る情報処理装置によれば、ユーザによる視認が必要な関係オブジェクトのみを成形品の三次元モデル上に表示することで、三次元モデル上から視認の必要性の薄い情報を削減し、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係及び成形品全体の出来映え状態をより容易に把握することができる。
【0039】
第16の態様に係る情報処理装置によれば、成形品の三次元モデルをさらに簡素化したモデルで表現することにより、成形品全体の出来映え状態を傾向として把握することができるようになる。
【0040】
第17の態様に係る情報処理装置によれば、設計者及び検査担当作業員等、作業を行うユーザの属性に応じて成形品の規格の合否判定に用いる基準値を変更することで、それぞれ異なる作業を行うユーザに適した、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係同士の関係に基づく合否判定を柔軟な態様で表示することができる。
【0041】
第18の態様に係る情報処理プログラムによれば、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を成形品の三次元モデル上で視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】情報処理装置10による関係オブジェクトの表示例を示す図である。
【
図2】情報処理装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】情報処理装置10の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】関係オブジェクト33の表示例を示す図である。
【
図6】関係オブジェクト33の別例を示す図である。
【
図7】関係オブジェクト33のさらに別例を示す図である。
【
図8】第2の関係オブジェクト34の表示例を示す図である。
【
図9】第5の関係オブジェクト35の表示例を示す図である。
【
図10】矢印オブジェクトを用いた関係オブジェクト33の表示例を示す図である。
【
図11】成形品30の合否判定に用いる基準値の一例を示す図である。
【
図12】本実施形態に係る情報処理装置10の処理を表すフローチャート図である。
【
図13】ガイド線36を有する関係オブジェクト33の一例を示す図である。
【
図14】補助情報としての関係オブジェクト33の表示例を示す図である。
【
図15】第1の検査対象31に対する検査の対象として複数の検査対象31が存在する場合の関係オブジェクト33の表示例を示す図である。
【
図16】ある関係オブジェクト33と相互に影響する他の関係オブジェクト33の表示例を示す図である。
【
図17】輪郭度を表す関係オブジェクトXXの表示例を示した図である。
【
図18】情報処理装置40の処理を表すフローチャート図である。
【
図19】成形品30全体を表す三次元モデルの表示例を示す図である。
【
図20】
図19に表した成形品30の検査対象31を簡略化して示した図である。
【
図21】
図19及び
図20に表した成形品30の三次元モデル上に、データムAに垂直な方向の検査項目のみを表示した図である。
【
図22】
図19に示した成形品30の三次元モデル上における、不合格判定を有する関係オブジェクトのみを表示した図である。
【
図23】
図19に表した成形品30の三次元モデル上における、長い寸法を有する関係オブジェクトのみを表示した図である。
【
図24】成形品30の三次元モデルを複数の平面を組み合わせて簡素化したモデルで表示した図である。
【
図25】情報処理装置60の処理を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して開示の技術にかかる実施形態の一例を詳細に説明する。
【0044】
図1は、本実施の形態に係る、情報処理装置10による表示例を示す図である。
【0045】
図1に示す表示例では、成形品の三次元モデル上に、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を表すオブジェクトを重ねて表示している。情報処理装置10は、
図1に示すように、各種検査における成形品内の検査対象の測定箇所の位置に、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所同士の関係を示すオブジェクトを用いて表示するものである。以下、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を表すオブジェクトを関係オブジェクトと表現する。
図1において関係オブジェクトは、成形品の三次元モデル上に、立体的な線、球体や立体的な矢印のオブジェクトを用いた態様で表示している。
【0046】
図1に示す立体的な線で表示された関係オブジェクトで繋がれているのが、検査対象となる成形品の部分であり、測定箇所である。関係オブジェクトは、成形品の設計に係る規格を基に実施された各種検査のうち、ある検査に関する少なくとも二つ以上の測定箇所同士の位置上の関係を表している。
【0047】
成形品の設計に係る規格とは、成形品の設計段階で定められた構造上の定義である。具体的には、成形品全体の基準となるデータム、成形品内の形状要素のサイズや角度を定める基準寸法、基準寸法に対しどれだけ製造時バラつきが許容されるかという公差(普通公差/サイズ公差/幾何公差)、基準寸法の基点を定義するための参照情報、製造上の注記情報、等である。以下、成形品の設計において検査の基準となる点、線、又は面をデータムと表現する。成形品は規格通りに製造されることが望ましく、成形品はこの規格に沿って製造される。規格は後述する設計情報の一部に含まれる情報である。
【0048】
立体的な矢印のオブジェクトは関係オブジェクトの一部として表示されるものであり、例えば、規格が距離もしくは角度であって、対応する検査対象がデータムである場合などの時に、立体的な矢印のオブジェクトが追加表示される。換言すれば、成形品の出来映えに依らない、規格に対して絶対的な基準位置であるデータムに基づく距離もしくは角度である場合に、関係オブジェクトの一部として立体的な矢印のオブジェクトが追加で表示される。もちろん、データムに基づかない相対的な距離もしくは角度の場合に矢印のオブジェクトを表示することを禁ずるものではない。例えば、相対的な距離が近づいているときに内向きの矢印を有する立体的な矢印のオブジェクトを、離れているときに外向きの矢印を有する立体的な矢印のオブジェクトを表示しても良い。以下、立体的な矢印のオブジェクトを矢印オブジェクトと表現する。
【0049】
例えば、矢の先端が垂直方向に成形品に向かっている矢印オブジェクトは、規格で定められた本来の基準寸法と、実際に製造された成形品の寸法とを比較した際に、成形品が矢印オブジェクトの矢印の方向に差があることを表しても良い。また、矢印オブジェクトの大きさは規格で定められた基準寸法との差の量、及び差の大きさと比例しても良い。
【0050】
しかし、矢印オブジェクトだけが検査の結果を示すわけではなく、必ずしもすべての関係オブジェクトに矢印オブジェクトが表示されるわけではない。上述の場合以外においては、関係オブジェクトの色彩で検査の結果が表示される。矢印オブジェクトが表示されない場合の関係オブジェクト単体での結果の示し方についての詳細は後述する。
【0051】
成形品の三次元モデルとは、三次元座標系において設計情報を基に作成された立体的に表現した成形品のモデルである。成形品の三次元モデルは、設計段階で作成した三次元モデルに成形品の検査情報を付与した三次元モデルでも良い。本実施の形態に係る情報処理装置10に表示するために作成されたものではなく、設計段階において作成したいずれかの流用したモデルであっても成形品の検査結果に関する情報を付加した時点で成形品の三次元モデルに含まれる。さらに、成形品の三次元モデルは、製造後の成形品を三次元測定機で計測して作成したモデルでも良い。
【0052】
このように、本実施の形態に係る情報処理装置10は、成形品の三次元モデル上に表示する関係オブジェクトを用いて、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を関係オブジェクトの色彩、又は矢印オブジェクトのうち少なくとも一方で把握可能とするものである。
【0053】
次に、情報処理装置10を含むシステム全体の概略を説明する。図示を省略するが、情報処理装置10は、クライアント端末と、入力装置及び出力装置と接続される。これらの装置は、ネットワークに接続されており、ネットワークを介して互いに通信可能である。このネットワークには、一例として、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等が適用される。
【0054】
情報処理装置10は、入力装置を通じて入力された、成形品の設計に関する情報、及び検査結果に関する情報を取得する。
【0055】
クライアント端末は、情報処理装置10に対して、成形品の三次元モデルの表示に関する各種指示を送信する。この各種指示には、一例として、成形品の設計に関する情報、及び検査結果関する情報の読取りを開始させる指示、及び成形品の設計に関する情報、及び検査結果関する情報を読取った結果を表示させる指示等が含まれる。また、クライアント端末は、受け付けた各種の指示に応じて情報処理装置10が行った各種の情報を表示する。クライアント端末には、一例として、サーバコンピュータ、又はパーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の汎用的なコンピュータ装置が適用される。情報処理装置10に接続されるクライアント端末は一台だけに限らず、クライアント端末が複数台用意されて、一例として、処理別にクライアント端末が使い分けられても良い。
【0056】
入力装置は、成形品の設計に関する情報、及び検査結果関する情報を情報処理装置10に入力する。入力装置には、一例として、サーバコンピュータ、又はPC等の汎用的なコンピュータ装置、並びにスキャン機能、プリンタ機能、及びFAX機能等を有する画像形成装置等が適用される。なお、入力装置に加えて、クライアント端末からも情報処理装置10へ、成形品の設計に関する情報、及び検査結果を含む各種測定結果に関する情報が入力可能であっても良い。入力装置によって入力される検査結果は三次元測定機を用いたデジタル計測に限らず、アナログ計測による検査結果も含む。アナログ計測による検査結果を入力する場合には、検査表を介して入力しても良い。
【0057】
出力装置は、ディスプレイ等であり、情報処理装置10の指示に基づき、成形品の三次元モデルを表示する。なお、出力装置及び入力装置が一体型となったタッチパネルが情報処理装置10に接続されても良い。
【0058】
次に、本実施の形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成について説明する。
図2は、本実施の形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0059】
図2に示すように、情報処理装置10は、CPU(CentralProcessingUnit)11、メモリ12、記憶部13、通信I/F(Interface)14、入出力I/F15、入力部16、出力部17、及び記憶媒体読取装置18を有する。
【0060】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各構成を制御したりする。すなわち、CPU11は、記憶部13からプログラムを読み出し、メモリ12を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、記憶部13に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0061】
メモリ12は、RAM(RandomAccessMemory)により構成され、作業領域として一時的にプログラム及びデータを記憶する。記憶部13は、ROM(ReadOnlyMemory)、HDD(HardDiskDrive)、SSD(SolidStateDrive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0062】
通信I/F14は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI又はWi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0063】
入出力I/F15は、情報処理装置10と外部機器とを接続するインタフェースである。本実施形態では、情報処理装置10は、入出力I/F15を介して、外部の入力装置等と接続される。
【0064】
入力部16は、例えば、キーボードやマウス等の、各種の入力を行うための構成である。出力部17は、例えば、クライアント端末等に対し、成形品の三次元モデルの表示を出力するための構成である。
【0065】
記憶媒体読取装置18は、CD(CompactDisc)-ROM、DVD(DigitalVersatileDisc)-ROM、ブルーレイディスク、USB(UniversalSerialBus)メモリ等の各種の記憶媒体に記憶されたデータの読み込みや、記憶媒体に対するデータの書き込み等を行う。
【0066】
次に、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成について説明する。
図3は、情報処理装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0067】
情報処理装置10は、
図3に示すように、機能構成として、取得部20と、表示部21と、を含む。
【0068】
取得部20は、成形品の設計情報、及び検査結果に関する情報を入力装置により受け付ける。
【0069】
成形品とは、一定の形に加工した製品のことであり、例えば
図1に示すトレイのように、工業的に量産される部品等の物体である。型で密閉された空間に材料を充填して固形化させる射出成形や鋳造、型でシート状の材料を押し付けて形状変形させるプレス成形、切削機による機械加工、アークやレーザーを用いた溶接、3Dプリンタによる付加製造など、様々な型成形があるが、成形された物体であれば、本実施形態に係る情報処理装置10の適用範囲内である。
【0070】
成形品の設計情報とは、成形品を製造するにあたり予め定められる物体の構造に関する情報である。成形品の形状・構造・寸法を一定のきまりに従って記したものであり、上述した構造上の定義である規格を有し、成形品を製造する際の指標となる情報である。
【0071】
図4は設計情報の一例を示した図である。
図4では、ある面に円形の穴を設けた成形品の一部が示されている。成形品を製造する際、この円形の穴の位置をどのように定めるかが設計情報によって定められている。
図4の例において、この穴は加工又は測定を行う場合にデータムAから10mm離れ、かつ、データムBから15mm離れた位置を中心として設けることが規定されている。さらに、
図4においてはこの円形の位置度の幾何公差と円の径に関する情報等も設計情報の一例として定められている。成形品を製造するにあたっては予め定められた設計情報に従って製造されることが望ましく、設計情報に定められた寸法に対する許容誤差から逸脱するとその成形品は不良とされる。
図4に示した設計情報は簡略化した設計情報であり、設計情報は予め三次元座標で表現されたものでも良い。
【0072】
成形品の検査結果に関する情報とは、実際に製造された成形品を検査した結果に関する情報である。検査とは、測定した単独の数値又は複数の数値の組み合わせに基づき、対象形状である検査対象の規格に対する合否を判定する行為である。この合否判定の結果、不合格であった検査対象に対しては成形条件の調整や修正等、次段階の製作に向けたなんらかの措置を講じる必要がある。検査は設計情報に基づいて行われ、成形品の実際の寸法と設計情報で定められた寸法とを比較して、どれほどの差があるかを確認する。
【0073】
成形品の実際の寸法と設計情報で定められた寸法との差には、量と方向がある。検査は検査プローブを検査の対象となる成形品に直接接触させることによって三次元座標を取得する三次元測定機や、光学式で画像取得により非接触で三次元座標を取得する三次元測定機等により三次元座標上で行われたものの他、アナログ手法によって行われたものも含む。アナログ手法による検査の結果の反映については後述する。
【0074】
また、測定とは、その手法がアナログ手法によるものか又はデジタル手法によるものかを問わず、測定機器を使って対象形状である検査対象の、成形品内における位置や長さや角度などの値を取得する行為である。
【0075】
表示部21は、成形品内における少なくとも二つ以上の測定箇所の位置上の関係を示す関係オブジェクトを、成形品の三次元モデル上の関係に対応する位置に表示させる。
【0076】
測定箇所とは、成形品を測定又は検査した結果を三次元モデル上に表示するために使用される成形品内の特定位置を表す点である。成形品の測定又は検査に使用されるデータムの位置を示す点も成形品内における測定箇所に含み、データムは成形品外に定義される場合もある。
【0077】
図5に関係オブジェクトの表示例を示す。
図5には立方体で表した成形品30が示されている。この成形品30について、立方体の面31A及び面31Bとの位置上の関係が設計情報で定められているとする。例えば、面31Aと面31Bとの距離が所定の距離であることが設計情報として定められている場合、面31Aと面31Bとの実際の距離は検査の対象となる。そのため、
図5においては、面31Aと面31Bとの位置上の関係を関係オブジェクト33で表現している。以下、
図5における面31Aを第1の検査対象31A、面31Bを第2の検査対象31Bと表現する。
【0078】
第1の検査対象31Aにおける測定箇所32A(以下、第1の測定箇所32Aとする)と第2の検査対象31Bにおける測定箇所32B(以下、第2の測定箇所32Bとする)はいずれかがデータムであっても良い。測定箇所がデータムである場合、その測定の結果は成形品30全体で共通で使用されることが通例である。例えば、第1の測定箇所32AがデータムAの場合、データムAを基準とする、データム以外の検査対象31はそれぞれ、第1の測定箇所32Aと第N1の測定箇所32N1、第1の測定箇所32Aと第N2の測定箇所32N2、第1の測定箇所32Aと第N3の測定箇所32N3、という対応関係による複数の測定結果に基づき、検査を実施する。
【0079】
関係オブジェクト33は、第1の検査対象31Aにおける測定箇所32Aと第2の検査対象31Bにおける測定箇所32Bとの位置上の関係を示す、成形品30の三次元モデル上に表現されたオブジェクトのことである。ある検査が、どの測定箇所同士の位置上の関係について行われたものであるかを一目で把握できるよう示されている。
【0080】
図6は、関係オブジェクト33の別例を示す図である。ここでは、成形品30の検査対象31に測定箇所32が三つ存在している。この三つの測定箇所32は、それぞれ成形品30の検査対象31である円柱形状の円筒部分の円周を測定するものである。このように、検査対象31は一つであって、その一つの検査対象31上に測定箇所32が複数存在する場合においても、検査対象31上に存在するそれぞれの測定箇所32同士の位置上の関係を示す、関係オブジェクト33を表示させることができる。
図6において、検査対象31は円柱形状の円筒部分の円周であり、関係オブジェクト33は円柱形状の円筒部分の円周に存在する複数の測定箇所32の位置上の関係を表すことから、この場合、検査対象31と、関係オブジェクト33は同一の円周を指していることになる。しかし、検査の対象として部品形状を構成する円と、測定箇所の位置上の関係を表す関係オブジェクトの円はそれぞれ違う意味を持つ。
【0081】
図7は、関係オブジェクト33のさらに別例を示す図である。ここで、複数の測定箇所32を繋いで関係オブジェクト33を表示する際の関係オブジェクト33の形状について説明する。
図7に表しているのは、同一の検査対象31上の測定箇所32を六箇所測定した結果に基づき、検査対象31の面の輪郭度を検査する場合の関係オブジェクト33の表示例である。
図7において表している関係オブジェクト33は四角平面である。このように、関係オブジェクト33は必ずしも測定箇所32同士の位置上の関係をそれぞれ立体的な線で繋いで表すものに限らず、
図7に示す通り、各々の測定箇所32から導かれる近似平面であっても良く、検査対象31の平面そのものでも良い。また、各々の測定箇所32の最小外接矩形であっても良く、検査対象31の平面の一回り小さい形状でも良い。
【0082】
なお、関係オブジェクト33は、上述のように、二つ以上の測定箇所32同士の位置上の関係を示すものに限られない。表示部21は、関係オブジェクトとして、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を示す第1の関係オブジェクト33Aと、第1の関係オブジェクト33Aと成形品30内の少なくとも一つ以上の測定箇所32Bとの位置上の関係を示す第2の関係オブジェクト34とを、表示させてもよい。
【0083】
また、表示部21は、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を示す第1の関係オブジェクト33と、第1の関係オブジェクト33と成形品30内の少なくとも一つ以上の測定箇所32との位置上の関係を示す第2の関係オブジェクト34とを、成形品30の三次元モデル上の関係に対応する位置に表示させる。
【0084】
図8は、第2の関係オブジェクト34の表示例を示す図である。第2の関係オブジェクト34は、第1の関係オブジェクト33と、成形品30内の少なくとも一つ以上の測定箇所32との位置上の関係を示す。
図8には、第1の検査対象31として検査対象31Aと、第2の検査対象31として検査対象31Bとがある。第1の検査対象31Aである円筒部分の円周には、三つの測定箇所32Aの位置上の関係である円周の中心軸を示す第1の関係オブジェクト33Aが表示されている。
図8の例示における第1の関係オブジェクト33Aは破線で示す、検査対象31Aの円周の中心軸を示している。一方、第2の検査対象31Bにおいては一つの測定箇所32Bが存在する。このように、一方は第1の関係オブジェクト33A、他方は測定箇所32Bとの位置上の関係であっても、第2の関係オブジェクト34として表示することができる。
【0085】
関係オブジェクト33としては、更に別の態様も考えられる。表示部21は、関係オブジェクト33として、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を示す第3の関係オブジェクト33Aと、第3の関係オブジェクト33Aとは別に、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を示す第4の関係オブジェクト33Bと、第3の関係オブジェクト33Aと第4の関係オブジェクト33Bとの位置上の関係を示す第5の関係オブジェクト35とを、表示させてもよい。
【0086】
また、表示部21は、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を示す第3の関係オブジェクト33Aと、第3の関係オブジェクト33Aとは別に、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を示す第4の関係オブジェクト33Bと、第3の関係オブジェクト33Aと第4の関係オブジェクト33Bとの位置上の関係を示す第5の関係オブジェクト35とを、成形品30の三次元モデル上の前記関係に対応する位置に表示させる。
【0087】
図9は、第5の関係オブジェクト35の表示例を示す図である。第5の関係オブジェクト35は、第3の関係オブジェクト33Aと第4の関係オブジェクト33Bとの位置上の関係を示す。
図9には、第1の検査対象31として検査対象31Aと、第2の検査対象31として検査対象31Bがある。第1の検査対象31Aである円筒部分の円周には三つの測定箇所32Aの位置上の関係である円周の中心軸を示した第3の関係オブジェクト33Aが表示されている。
図9の例示における第3の関係オブジェクト33Aは破線で示す、検査対象31Aの円周の中心軸を示している。一方、第2の検査対象31Bにおいても円筒部分の円周には三つの測定箇所32Bの位置上の関係である円周の中心軸を示した第4の関係オブジェクト33Bが表示されている。
図9の例示における第4の関係オブジェクト33Bは破線で示す、検査対象31Bの円周の中心軸を示している。このように、一方は第3の関係オブジェクト33A、他方は第4の関係オブジェクト33Bを表示する位置上の関係であっても、第5の関係オブジェクト35として表示することができる。
【0088】
以上の通り、関係オブジェクト33の各種の態様として、第1の関係オブジェクト33A、第2の関係オブジェクト34、及び第5の関係オブジェクト35を説明した。以下では、第1の関係オブジェクト33A、第2の関係オブジェクト34、及び第5の関係オブジェクト35のそれぞれを特に区別して表現する必要のない場合においては、これらを総合して単に「関係オブジェクト33」と表現する。
【0089】
このように、表示部20は、複数測定を行う場合においても関係オブジェクト33を表示することができる。例えば、検査対象31が二つ(第1の検査対象31及び第2の検査対象31)に対し測定箇所32がそれぞれ一つ、つまり測定箇所32が1対1の場合、検査対象31が二つ(第1の検査対31象及び第2の検査対象31)に対し測定箇所32が1対Nの場合、及び検査対象31が二つ(第1の検査対象31及び第2の検査対象31)に対し測定箇所32がN対Nの場合においても、関係オブジェクト33をも通ることで成形品30内の検査対象31における二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を表示することができる。このように、本実施の形態に係る表示部21は、各種関係オブジェクト33同士の組み合わせによる位置上の関係を示すことができる。
【0090】
また、取得部20は、測定箇所32を、成形品30内における検査対象31の形状要素の重心位置から取得する。
【0091】
表示部21は、取得部20が取得した測定箇所32に関係オブジェクト33を表示する。取得部20が取得した測定箇所32は、三次元測定機等を用いた場合は三次元モデル上を測定した三次元座標を測定箇所32として使用しても良い。また、設計情報に基づき測定する位置の指定がある場合はその位置を測定箇所32として使用しても良い。後述するアナログ測定時や、三次元測定機で測定した三次元座標が取得できない場合などは、検査対象31の重心位置を測定箇所32として使用しても良い。測定箇所32の定め方には、検査対象31の重心位置とする場合の他、検査対象31において実際に測定を行った位置とする場合、及び検査対象31において測定位置の指示がある位置とする場合などでも良い。
【0092】
また、表示部21は、二つ以上の測定箇所32を含む線又は面を形成することで、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を表示させる。
【0093】
例えば、
図5における関係オブジェクト33は、第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとの位置上の関係を示しているため、第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとを立体的な線で繋いで示されている。
図5に示す通り、第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとを線で繋ぐ際、関係オブジェクト33は第1の検査対象31Aの測定箇所32A、及び第2の検査対象31Bの測定箇所32Bを線で繋ぐ。
【0094】
表示部21が関係オブジェクト33を表示する際には、
図5に示したように成形品30内の複数の測定箇所32を立体的な線で繋ぐほか、
図7に示したように測定箇所32を含む平面を生成することや、後述する
図17に示すように検査対象31となる形状の線及び面などの部位を複製することなどの表現方法がある。関係オブジェクト33の表示態様については、ここで挙げる例に限定されない。
【0095】
また、取得部20は、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係をアナログ手法による測定により取得することも可能である。
【0096】
アナログ手法による測定とは、光学式の三次元スキャナや触針式の三次元計測機等による三次元座標を用いた成形品30の測定ではなく、リングゲージ、マイクロメータ、ノギス、ピンゲージ、円筒テーパゲージ、面取ゲージ、アングルゲージ、隙間ゲージ等を用いて、実際の成形品30を測定することである。このようなアナログ手法による測定の結果は、通常、表形式で記録されるため、成形品30の測定箇所32での測定結果との対応付けを頭の中で行うことに長時間を要していた。しかし、表に記録された測定箇所32と、成形品30の三次元モデル上における該当位置とを取得部20に対応させて、各検査対象31の実際の成形品30における位置を特定することで、取得部20は、表形式で記録されたアナログ手法による各種測定結果についても取得する。
【0097】
リングゲージ、ピンゲージは直径の大小を評価する手段であるので、実質的に直径上の複数の測定箇所32を測定しているのと等価である。また、マイクロメータ、ノギス、円筒テーパゲージ、面取ゲージ、アングルゲージ、隙間ゲージも同様に複数の測定箇所32間の距離や角度を測定する手段である。
【0098】
例えば、円の内径又は外径は三次元座標においては最低でも三箇所の測定を行わなければ判断できないが、ゲージを用いた場合、一度の測定で円の内径又は外径を検査できる。隙間は三次元座標だと少なくとも二箇所以上の測定がないと判断できないが、ゲージを用いた場合には一度の測定で隙間を検査できる。このように、アナログ手法による測定においては、一度の測定で複数の検査対象31における複数の測定箇所32を測っていることから、アナログ手法による測定により取得した検査結果も本実施の形態における検査結果に含まれる。
【0099】
また、取得部20は、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を、成形品30内の二つ以上の測定箇所32を計測して得た座標位置から取得することもできる。三次元計測機等による三次元座標を用いた成形品30の測定も同様に、成形品30の三次元モデル上の測定位置と対応させて、関係オブジェクト33を表示させることができる。
【0100】
また、取得部20は、成形品30の設計に関する設計情報を取得し、設計情報と、位置上の関係とを比較した比較情報を取得する。
【0101】
取得部20は、取得した成形品30の設計に関する設計情報と、実際に製造された成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係とを比較し、その比較結果を比較情報として取得する。例えば、
図5において、第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとの位置上の関係が10mm離れていることが設計情報として定められていた場合に、実際に製造された成形品30における第1の検査対象31Aの測定箇所32Aと、第2の検査対象31Bの測定箇所32Bとの位置上の関係が9.8mm離れているとする。このとき、取得部20は、第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとの位置上の関係が、設計情報よりも0.2mm不足した距離にあるという比較情報を取得する。
【0102】
取得部20が取得する比較情報には二種類の情報がある。一つ目が、設計情報と測定結果とを比較した情報のことである。上述の
図5の例示通り、設計情報と実際の測定結果を比較した結果、第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとの位置上の関係が、設計情報よりも0.2mm不足した距離にある、という情報を取得部20は比較情報として取得する。
【0103】
二つ目として、取得部20は、上述した一つ目の比較情報と、許容範囲とを比較した情報も比較情報として取得する。すべての成形品30が設計情報通りに製造されることは極めて稀であり、たいていの場合、設計情報との差に対し許容範囲が設けられている。許容範囲とは、検査による合否判定を行う上で、設計情報と実際の測定結果との差に対し、どの程度の差であれば合格とするかを定めた範囲である。例えば、
図5において第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとの距離の許容範囲が、設計情報の±0.4mmと定められていたとする。この例においては、取得部20は、すでに実際の測定結果を比較した結果、第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとの距離0.2mm不足した距離にあるという比較情報を取得している。そのため、取得部20は、この比較情報によって取得した設計情報と実際の測定結果を比較した結果を基に、第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとの距離の差(0.2mm)が許容範囲(±0.4mm)内であるという比較情報を取得する。許容範囲についての詳細はさらに後述する。
【0104】
また、表示部21は、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係と設計情報とを比較した結果の、差の量又は方向を、色彩又は矢印で、関係オブジェクト33を表示させる。
【0105】
取得部20が取得した、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係と設計情報とを比較した結果に基づき、表示部21は、設計情報と実際に製造された成形品30との差の量又は方向を、色彩又は矢印で、それぞれ関係オブジェクト33を表示させる。
【0106】
図10は矢印オブジェクトを用いた関係オブジェクト33の表示例を示す図である。
図10においては、第1の測定箇所32Aと第2の測定箇所32Bとの位置上の関係を関係オブジェクト33によって表示している。
図10(A)に示す例においては、実際に製造された成形品30と設計情報とを比較した結果、第1の測定箇所32Aと第2の測定箇所32Bとの位置上の関係が、設計情報よりも遠く離れた位置にある場合を表している。この場合、
図10(A)に示す通り、関係オブジェクト33は第2の検査対象31Bから第1の測定箇所32Aとは反対方向に向かう矢印オブジェクトで表示される。第1の測定箇所32Aと第2の測定箇所32Bとの位置上の関係が、設計情報よりも離れすぎていることを視覚的に一目で把握できるようにするためである。
【0107】
一方、
図10(B)に示す例においては、実際に製造された成形品30と設計情報とを比較した結果、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係が設計情報よりも近い位置にある場合を表している。この場合、
図10(B)に示す通り、関係オブジェクト33は第2の検査対象31Bから第1の検査対象31Aの方向に向かう矢印オブジェクトで表示される。第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとの位置上の関係が設計情報よりも近すぎていることを視覚的に一目で把握できるようにするためである。このように、表示部21は、第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとの位置上の関係と、設計情報とを比較した結果の、差の量又は方向を、矢印オブジェクトを用いた関係オブジェクト33を表示させる。
【0108】
さらに、表示部21は、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係と設計情報とを比較した結果の、差の量を関係オブジェクト33に施された色彩で表示しても良い。例えば、設計情報として予め定められた規格値と許容範囲に対して、実際に製造された成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係が許容範囲の上限を超えた場合は赤色、許容範囲の下限を下回る場合は青色で表示する等である。ここで、規格値とは、設計情報としてあらかじめ定められた値のことである。
【0109】
成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係と、設計情報とを比較した結果の差の絶対量の大小を関係オブジェクト33に施された色彩で表現することもあれば、実際に測定した成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係が許容範囲内であるか否かを関係オブジェクト33に施された色彩で表す場合もある。例えば、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係と、設計情報とを比較した結果、その差が許容範囲内であれば青色等寒色、その差が許容範囲を超えたものであれば、ユーザへの注意喚起の意図をもった赤色等暖色で表現しても良い。
【0110】
また、表示部21が、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係と設計情報とを比較した結果を表示する方法は、矢印オブジェクトを用いる方法に限らず、比較した結果がオブジェクト単体で表示されても良い。また、設計情報と比較した差の量に関する比較情報を、関係オブジェクト33の色彩だけで表しても良い。
【0111】
具体的には、実際に測定した成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係と規格値との差、及び実際に測定した成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係が許容範囲からどれほどかけ離れているかの差を、関係オブジェクト33の色彩だけで表しても良い。この場合、例えば、余裕をもった許容範囲内の差であるときは緑色、許容範囲内ではあるが範囲ギリギリの差であるときは注意喚起の意図をもって黄色、少しでも許容範囲を超えた差であるときは閾値を超えたことの警告の意図をもって赤色で表示しても良い。
【0112】
別の例示としては、絶対値としての規格値からかけ離れるほど寒色系から暖色系へグラデーションの色彩で表示しても良い。例えば、規格値を少し超えた場合は橙色、規格値を大きく超えた場合は赤色、あるいは、規格値を少し下回る場合は水色、規格値を大きく下回る場合は青色という具合である。これにより、成形品30内における二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を一目でより正確に把握することすることができ、成形品30の出来映え状態を容易に把握することができるようになる。
【0113】
さらに別の例示としては、絶対値としての規格値からかけ離れるほど直線から波線へ、又は円から多角形へ、といった形状の変形で表示しても良い。例えば、規格値を少し超えた場合は振幅が小さく波長の大きい波線又は凸の鈍角のみの多角形、規格値を大きく超えた場合は振幅が大きく波長の小さい波線又は凸の鋭角と凹の鋭角を組み合わせた星状の多角形、という具合である。もちろん、形状の変形に加え、色彩を組み合わせて表示しても良い。設計情報と実際に製造された成形品30との差の量又は方向についての表現方法はここに挙げる例に限られない。
【0114】
また取得部20が取得する比較情報は、前述した規格値と、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32同士の位置上の関係を比較した情報に限らず、後述する基準値と、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32同士の位置上の関係を比較した情報の場合もある。規格値に関する比較情報と、基準値に関する比較情報の両者が存在する場合、両者を区別できるようそれぞれ表示の方法を設けても良い。ここで、基準値とは、処理上、矢印オブジェクトの方向の決定や、成形品30の検査による合否判定に用いられる数値のことである。
【0115】
また、取得部20は、設計情報に基づいて算出する、成形品30の合否判定に用いる基準値を、ユーザによる選択、又はユーザの有する属性情報に対応させて決定する。
【0116】
実際に製造した成形品30の出来映え状態についての合否判定を行うにあたり、取得部20は、合否判定に用いる基準値を、ユーザによる選択、又はユーザの有する属性情報に対応させて決定する。
図11は、合否判定に用いる基準値の一例を示す図である。
図11(A)は、表示部21によって表示させる、合否判定に用いる基準値の決定方法を選択する表示画面の一例である。ユーザは
図11(A)の画面に基づき、合否判定に用いる基準値として「規格値を使用」するか、「公差中央値を使用」するかを選択する。
【0117】
合否判定に用いる基準値は、設計情報と、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係とを比較する際に用いられる。比較した結果は、矢印オブジェクト、又は色彩によって表現する関係オブジェクト33の表示に影響する。繰り返しとなるが上述の通り、成形品30を製造するにあたり、成形品30は設計情報通りに製造されることが望ましいが、すべての成形品30を寸分の差もなく設計情報通りに製造することは非常に困難であり現実的ではない。そのため、設計段階において成形品30には予め許容範囲が設定される。この許容範囲とは、実際に製造された成形品30が設計情報通りではなくても成形品30として機能すると認められる、設計情報との差の範囲を意味する。許容範囲は公差範囲と言い換えても良い。寸分の差もなく設計情報通りに製造された成形品30でなくとも、この許容範囲内の出来映え状態を有する成形品30は合格品とされ、許容範囲を超える差を有する成形品30は不合格となり、不良品として取り扱われる。
【0118】
この許容範囲を定めるにあたり、
図11(A)に示す通り「規格値」又は「公差中央値」が用いられ、許容範囲には上限と下限が存在する。
図11(B)及び
図11(C)における「公差下限値」及び「公差上限値」である。この「公差下限値」及び「公差上限値」を定めるにあたり用いられる二通りの基準値が「規格値」又は「公差中央値」である。通常、成形品30の三次元モデルは設計対象の規格値に基づいて作成される。このため、設計上の機能発揮を考えた際の基準値は、
図11(B)に示す規格値である。これに対して、量産時の工程能力などばらつきが正規分布に従う場合は、
図11(C)に示す通り、基準値を規格の許容範囲の中央値にすることが望ましい場合がある。そのため、ユーザの利用目的に合わせて、差を算出する基準値をどのようにして決定するかをユーザに指定させ、取得部20は、指定された方法にて基準値を決定する。
【0119】
基準値の選択は、後述する反り・捻じれを可視化する矢印オブジェクトを生成する際や、上述した関係オブジェクト33として設計情報との差を表す矢印オブジェクトを生成する際に、利用する検査表の各規格における差を算出するために、使用する「基準値」を利用目的に応じてユーザが指定して切り替えることができるものである。
【0120】
ユーザの有する属性情報とは、情報処理装置10を利用するユーザが担当する作業内容である。例えば、情報処理装置10を利用するのが設計を担当する作業員であるか、検査を担当する作業員であるかによって成形品30を確認する観点が異なるため、ユーザの有する属性情報に対応させて「基準値」を決定する。検査結果を確認するユーザが設計上の機能について責任を持つ担当部門の場合は
図11(B)を、ユーザが量産時の工程能力や歩留まりについて責任を持つ担当部門の場合は
図11(C)を自動的に表示する、等に予め設定しても良い。また、それぞれの基準値で結果が異なる場合は、基準値を
図11(B)か(C)に指定した場合であっても、警告のために別の基準値での判定結果の確認の必要性を提示するよう予め設定しても良い。「基準値」の決定はこのように、ユーザによって任意の基準値を選択することもでき、また、ユーザの属性情報に応じて予め定めておくこともできる。
【0121】
次に本実施形態に係る情報処理装置10の作用について説明する。
図12は、本実施形態に係る情報処理装置10の処理を表すフローチャート図である。本実施形態に係る情報処理装置10の処理は、CPU11が記憶部13等に記憶された情報処理プログラム読み込んで実行する。
【0122】
ステップS100では、CPU11が、取得部20として、成形品30の設計情報を取得する。
【0123】
ステップS101では、CPU11が、取得部20として、成形品30の検査結果に関する情報を取得する。
【0124】
ステップS102では、CPU11が、取得部20として、ユーザの属性情報を取得する。
【0125】
ステップS103では、CPU11が、取得部20として、実際に製造した成形品30の出来映え状態についての合否判定に用いる基準値を決定する。
【0126】
ステップS104では、CPU11が、取得部20として、取得した成形品30の設計に関する設計情報と、実際に製造された成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係と、を比較する。
【0127】
ステップS105では、CPU11が、表示部21として、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を示す表示位置を特定する。
【0128】
ステップS106では、CPU11が、表示部21として、成形品30の三次元モデル上の、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を示す表示位置に関係オブジェクト33を生成し、表示する。
【0129】
ステップS107では、CPU11が、取得部20として、取得した成形品30の設計に関する設計情報と、実際に製造された成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係と、を比較した結果、実際に製造された成形品30が許容範囲内の出来映えであるか否かを判定する。実際に製造された成形品30が許容範囲内の出来映えである場合には、処理はステップS109へ移行し、実際に製造された成形品30が許容範囲内の出来映えでない場合には、処理はステップS108へ移行する。
【0130】
ステップS108では、CPU11が、表示部21として、取得部20が取得した位置上の関係と設計情報とを比較した結果の、差の方向を表す関係オブジェクト33を生成し、表示する。
【0131】
ステップS109では、CPU11が、表示部21として、取得部20が取得した位置上の関係と設計情報とを比較した結果の、差の量を表す関係オブジェクト33を生成し、表示する。
【0132】
ステップS110では、CPU11が、取得部20が、成形品30の検査結果に関する情報に基づき、成形品30に関するすべての検査について関係オブジェクト33を生成及び表示したか否かを判定する。成形品30に関するすべての検査について関係オブジェクト33を生成及び表示した場合、処理は終了し、成形品30に関するすべての検査について関係オブジェクト33を生成及び表示していない場合には、処理はステップS104へ戻る。
【0133】
以上、説明したように、本実施形態に係る情報処理装置10によれば、成形品30内における、少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を成形品30の三次元モデル上で視認することができる。また、これにより、実際に製造された成形品30の出来映え状態が視認可能となる。
【0134】
なお、関係オブジェクト33は、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係が捻じれている場合、つまり成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係がねじれの位置にある場合にも表示することができる。
【0135】
図13は、ガイド線36を有する関係オブジェクト33の一例を示す図である。
図13における成形品30の第1の検査対象31Aの測定箇所32Aと、第2の検査対象31Bの測定箇所32Bとの位置上の関係は、第1の検査対象31Aと第2の検査対象31Bとを結ぶ線の方向と検査方向が一致しないねじれの位置の関係にある。つまり、第1の検査対象31Aの測定箇所32Aに対し、同一直線上にも同一平面上にもない第2の検査対象31Bの測定箇所32Bとの位置上の関係は、第1の検査対象31Aの測定箇所32Aと第2の検査対象31Bの測定箇所32Bを、頂点とする立方体30のある辺の長さを測定しているという関係となる。
【0136】
図13のような場合においては、第1の検査対象31Aの測定箇所32Aから検査方向に規格に基づく長さ又は角度だけ伸ばした線を主たる関係オブジェクト33とする。しかし、実際の検査対象31を明確に表示するために、その主たる関係オブジェクト33の線の他の端点と第2の検査対象31Bの測定箇所32Bを結ぶ線を点線で表示したガイド線36と組み合わせて表示することができる。第1の検査対象31Aの測定箇所32A又は第2の検査対象31Bの測定箇所32Bのどちらから主たる関係オブジェクト33の線を開始し、どちらからガイド線36を開始するかは、できるだけ三次元モデルに干渉しない方と予め定めておいても良い。
【0137】
なお、関係オブジェクト33と共に表示される矢印オブジェクトの表示は必ずしも各々の検査の結果通りの差の方向を正確に表示しなくても良い。
図14は、補助情報としての関係オブジェクト33の表示例を示す図である。
図14は、
図4に示した設計情報を基に製造された成形品30の三次元モデルを示している。円形が、設計情報よりも第1の検査対象31Aから離れた位置にあり、かつ、第2の検査対象31Bから離れた位置にある場合、関係オブジェクト33は
図14(A)に示す通り、各々の比較情報に基づき二つの矢印オブジェクトを有する。この場合では、一つの検査対象31に対し複数の方向に基づく規格として定義されているということになるため、
図14(B)に示す通り、複数の矢印オブジェクトを合成した方向を持つ矢印オブジェクトを表示しても良い。また、この場合において、関係オブジェクト33を表示する際、
図14(B)に示す通り、円形の位置を把握しやすくするために円形の中心点を関係オブジェクト33の補助情報として表示しても良い。
【0138】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について説明する。本実施の形態では、第1の検査対象31に対する他の検査の対象が複数存在する場合について詳細に説明する。なお、本実施の形態に係る情報処理装置40は、第一実施形態に係る情報処理装置10を基礎とするものであるため、第一実施形態に係る情報処理装置10と共通の構成、機能、作用等については、第一実施形態と同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0139】
本実施の形態に係る情報処理装置40のハードウェア構成は、
図2に示す、第一実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成と共通するため、説明を省略する。
【0140】
本実施の形態に係る情報処理装置40の機能構成についても、
図3に示すように第一実施形態に係る情報処理装置10の機能構成と共通する。情報処理装置40においても、機能部として、取得部50と、表示部51とを含む。ここでは、第一実施形態との差分の機能についてのみ説明し、第一実施形態と共通する機能についての説明は省略する。
【0141】
本実施の形態において情報処理装置40は、第1の検査対象31に対応する複数の関係オブジェクト33を表示する。第1の検査対象31に対する他の検査の対象として複数の検査対象31が存在する場合、関係オブジェクト33も複数表示する必要がある。
【0142】
表示部51は、第1の検査対象31及び第2の検査対象31のそれぞれに複数の測定箇所32が存在する場合において、第1の検査対象31及び第2の検査対象31の対応する複数の測定箇所32毎に複数の関係オブジェクト33を第1の検査対象31上にそれぞれ独立して表示させる。
【0143】
本実施の形態においては、成形品30に対するある検査に関して、検査の対象となる部分が成形品30内に少なくとも二つ以上ある場合において、第1の検査対象31に対し、複数の検査対象31が存在するケースについて説明する。以下、第1の検査対象31に対して複数存在する、他の検査対象31を総称して第2の検査対象31と表現する。
【0144】
図15は、第1の検査対象31に対する検査の対象として、複数存在する他の検査対象31A、31B、及び31Cが存在する場合の各々の関係オブジェクト33の表示例を示す図である。第1の検査対象31は、成形品30そのものの基準位置であるデータム面である場合や、複数の第2の検査対象31の基準面と成り得る広い面の場合等がある。
【0145】
図15における第1の検査対象31には(A)、(B)、及び(C)という三つの対応する検査対象31が存在する。それぞれ(A)を第2の検査対象31A、(B)を第2の検査対象31B、及び(C)を第2の検査対象31Cとする。
図15においては、第2の検査対象31A、第2の検査対象31B、及び第2の検査対象31Cという三つの検査対象それぞれに対し、関係オブジェクト33A、関係オブジェクト33B、及び関係オブジェクト33Cが、第1の検査対象31上にそれぞれ独立して表示されている。このように、第1の検査対象31における測定箇所32と、第2の検査対象31における測定箇所32との関係は必ずしも1対1の関係でなくても良い。
【0146】
表示部51は、第1の検査対象13に対応する第2の検査対象31が複数存在する場合において、第1の検査対象31と第2の検査対象31A~31Cとを比較し、小さい方の検査対象31の重心位置に応じて関係オブジェクト33の表示位置を決定する。
【0147】
図15に示す(A)、(B)、及び(C)という三つの第2の検査対象31に対応する関係オブジェクト33が三次元モデル用ですべて第1の検査対象31の測定箇所32上に重なって表示されると、(A)、(B)、及び(C)という三つの第2の検査対象31と、第1の検査対象31との関係が視覚的に把握しづらくなる。そこで本実施の形態における情報処理装置40では、第1の検査対象31に対する検査の対象として複数の第2の検査対象31が存在する場合、小さい方の検査対象31の配置位置を優先する。
【0148】
図15においては、第1の検査対象31が一番大きく、第2の検査対象31Aが第2の検査対象31B及び第2の検査対象31Cに比べて小さいため、第2の検査対象31Aの関係オブジェクト33Aが優先的に、第1の検査対象31上に配置される。第2の検査対象31B及び第2の検査対象31Cを比較すると、第2の検査対象31Bが第2の検査対象31Cよりも小さいため、第2の検査対象31Bの関係オブジェクト33Bが第2の検査対象31Cに優先して配置される。大小の比較の基準は、面積であっても体積であっても良い。関係オブジェクト33A、関係オブジェクト33B、及び関係オブジェクト33Cは、それぞれ第2の検査対象31A、第2の検査対象31B、及び第2の検査対象31Cの重心位置である測定箇所32からの垂直の位置に配置される。
【0149】
また、表示部51は、関係オブジェクト33が選択された場合、関係オブジェクト33が有する設計情報及び比較情報のうち少なくとも一つを表示する。
【0150】
成形品30の三次元モデル上に表示された複数の関係オブジェクト33のうち、ユーザがいずれかひとつの関係オブジェクト33を選択すると、表示部51は、その関係オブジェクト33が有する設計情報、及び比較情報のうち少なくとも一つを、矢印オブジェクト等他のオブジェクトとして表示する他、数値情報等の別形式の表示画面において表示する。
【0151】
また、表示部51は、検査対象31に対し実施されており、かつ、比較情報とも関連のある、他の検査に関する他の関係オブジェクト33も同時に表示させる。
【0152】
図16は、ある関係オブジェクト33と相互に影響する他の関係オブジェクト33の表示例を示す図である。
図16においては、成形品30の一部において、
図16の中央部に表示される関係オブジェクト33がユーザにより選択されている。この関係オブジェクト33には、同一の第1の検査対象31に対し実施されており、かつ、相互に影響を及ぼす、他の検査対象31に関する他の関係オブジェクトA、B、及びCが存在する。
図16において、関係オブジェクト33には矢印オブジェクトが示されており、図面右方向に向かって設計情報よりも短いことを表している。これを基にこの関係オブジェクト33に対応する第1の検査対象31の位置等を修正しようとすると、修正には他の関係オブジェクトA、B、及びCへの影響についても考慮する必要があることを示している。
【0153】
例えば射出成形の型修正時など、同一の成形品30内において同じ検査対象31を基準としている複数の規格がある場合、その検査対象31を修正すると関連する他の規格も変化する。従来はユーザが設計図面等を見ながら複数の検査に関する関係を頭の中で辿っていたが、頭の中でそれぞれの複数の検査に関する関係を把握する範囲にも限界があり、見落としなどのミスが起きやすい。そのため、成形品30の三次元モデル上における、ある関係オブジェクト33を選択した際、その設計情報に関連する他の検査対象31を基準としている他の関係オブジェクト33を抽出して表示することで、ユーザは複数の検査結果に関する関係を視覚的に把握することができる。
【0154】
また、関係オブジェクト33は検査対象31の輪郭度を示しても良い。
図17は、成形品30の輪郭度を表す関係オブジェクトXXの表示例を示す図である。
図17においては、四角形の吹き出しYYで囲まれた中に、
図17に示す検査対象31の幾何公差の輪郭度についての規格が定義されている。このように、関係オブジェクトXXには、輪郭度を定義するための参照情報YYが定義されている。参照情報とは、
図17において四角形の吹き出しYYで囲まれている[1.5][RO.1][1][RO.1]の部分である。これら参照情報YYは、ベーシック寸法、理想寸法、理論寸法、イグザクト寸法、又は、JIS B0420―1:2016では、「理論的に正確な寸法(TED:theоretically exact dimensiоn)」とも呼ばれる。ある検査対象31の形状の輪郭度を検査するためには複数の参照箇所32を測定する必要があり、これら複数の測定箇所32の位置上の関係を把握するための関係オブジェクトXXが表示されることが望ましい。
【0155】
図17に示すように、輪郭度を示す関係オブジェクトXXを選択した際、関連する参照箇所の測定箇所32の関係オブジェクトXX及び参照情報YYを抽出して表示することで、ユーザは複数の参照箇所に基づき定義される輪郭度に関する関係を視覚的に把握することができる。輪郭度以外の、平面度、位置度、平行度、等の他の幾何公差の規格についても同様であることは言うまでもない。また、幾何公差以外の角度やサイズに関しても、参照情報が定義される場合であれば同様である。
【0156】
また、表示部51は、成形品30の三次元モデル上において表示された複数の関係オブジェクト33を互いに区別し得る態様で表示させる。表示部51は、ユーザが選択した関係オブジェクト33と、ユーザが選択した関係オブジェクト33以外の他の関係オブジェクト33とを区別し得る態様で表示させる。例えば、関係オブジェクト33の立体的な線の太細、関係オブジェクト33の線の色彩などにより、ユーザが選択した関係オブジェクト33と、関連する他の関係オブジェクト33が同時に表示された際にもそれぞれが明確に区別できるよう表示する。なお、区別し得る態様は本実施の形態で挙げる例に限定されない。
【0157】
図18は、本実施の形態に係る情報処理装置40の処理を表すフローチャート図である。
図12に示す処理と、本実施の形態に係る情報処理装置40の基本処理と共通する点については説明を省略する。
図18では、第1の検査対象31に対応する複数の検査対象31が存在する場合の、情報処理装置40の処理を説明する。
【0158】
ステップS200では、CPU11が、取得部50として、第1の検査対象31に対応する第2の検査対象31をすべて抽出する。
【0159】
ステップS201では、CPU11が、取得部50として、抽出したすべての第2の検査対象31と、第1の検査対象31とを比較する。
【0160】
ステップS202では、CPU11が、取得部50として、抽出したすべての第2の検査対象31と、第1の検査対象31とを比較した結果、一番小さい検査対象31を抽出する。
【0161】
ステップS203では、CPU11が、表示部51として、抽出した一番小さい検査対象31の重心位置から関係オブジェクト33を生成し表示する。
【0162】
ステップS204では、CPU11が、取得部50として、ステップS200で抽出したすべての検査対象31について関係オブジェクト33を表示したか否かを判定する。判定した結果、ステップS200で抽出したすべての検査対象31について関係オブジェクト33を表示した場合には、処理はステップS205へ移行する。一方、ステップS200で抽出したすべての検査対象31について関係オブジェクト33を表示していない場合、処理はステップS201へ戻り、ステップS200で抽出したすべての検査対象31について関係オブジェクト33を表示するまで同様の処理を繰り返す。
【0163】
ステップS205では、CPU11が、取得部50として、ユーザがある関係オブジェクト33を選択した情報を取得する。
【0164】
ステップS206では、CPU11が、表示部51として、前ステップでユーザにより選択された関係オブジェクト33に関する設計情報及び比較情報のうち少なくとも一つを表示する。
【0165】
ステップS206では、CPU11が、取得部50として、前ステップでユーザにより選択された関係オブジェクト33に関する他の関係オブジェクト33が存在するか否かを判定する。前ステップでユーザにより選択された関係オブジェクト33に関する他の関係オブジェクト33が存在する場合、処理はステップS208へ移行する。前ステップでユーザにより選択された関係オブジェクト33に関する他の関係オブジェクト33が存在しない場合、処理は終了する。
【0166】
ステップS208では、CPU11が、表示部51として、前ステップでユーザにより選択された関係オブジェクト33に関する他の関係オブジェクト33を互いに区別し得る態様で表示させる。
【0167】
以上、説明したように、本実施形態に係る情報処理装置40によれば、第1の検査対象31に対する検査の対象として複数の検査対象31が存在する場合でも、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係を成形品30の三次元モデル上で同時に視認することができる。また、これにより成形品30内における複数の検査対象31同士、及び測定箇所32同士の複雑な関係も一目で把握することができるため、実際に製造された成形品30の出来映え状態がより明確に視認可能となる。
【0168】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態について説明する。本実施の形態では、成形品30内の関係オブジェクト33すべてを表示する場合について詳細に説明する。なお、本実施の形態に係る情報処理装置60は第一実施形態に係る情報処理装置10及び情報処理装置40を基礎とするものであるため、第一実施形態に係る情報処理装置10と共通の構成、機能、作用等については、第一実施形態と同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0169】
本実施の形態に係る情報処理装置60のハードウェア構成は、
図2に示す、第一実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成と共通するため、説明を省略する。
【0170】
本実施の形態に係る情報処理装置60の機能構成についても、
図3に示すように第一実施形態に係る情報処理装置10の機能構成と共通する。情報処理装置60においても、機能部として、取得部70と、表示部71とを含む。ここでは、第一実施形態及び第二実施形態との差分の機能についてのみ説明し、第一実施形態及び第二実施形態と共通する機能についての説明は省略する。
【0171】
本実施の形態において情報処理装置60は、成形品30内の関係オブジェクト33すべてを表示する場合に、ユーザにとって必要な情報のみ抽出し表示する。
【0172】
表示部71は、成形品30に関するすべての関係オブジェクト33のうち、三次元モデル上に表示させる関係オブジェクト33をフィルタリングして表示させる。
【0173】
図19は、成形品30内の関係オブジェクト33すべてを表示した例を表す図である。
図19に示すように、成形品30には多くの検査が行われるため、成形品30内のすべての関係オブジェクト33を表示させると、現在判断したい箇所とは無関係の箇所の関係オブジェクト33まで表示されるため、煩雑で見づらい。そこで、本実施の形態に係る情報処理装置60は、ユーザの作業に必要な関係オブジェクト33のみを表示させる。
【0174】
図20は、
図19に表した成形品30の検査対象31をそれぞれ簡略化して示した図である。
図19に表した成形品30の検査対象31となるデータムは三つあり、それぞれ、底面をデータムA、図面左側のデータムAに垂直に設けられた面をデータムB、データムBと直角に交わりデータムAに垂直に設けられた面をデータムCとする。
【0175】
図21は、
図19及び
図20に表した成形品30の三次元モデル上に、データムAに垂直な方向の検査項目のみを表示した図である。このように、表示部71は、ユーザにとって見たい情報以外を省き、ユーザが確認すべき関係オブジェクト33のみを表示する。図示は省略するが、同様にデータムBに垂直な方向の検査項目のみ、及びデータムCに垂直な方向の検査項目のみを表示することも可能である。検査項目の基準となるデータムの方向別にフィルタリングして表示することで、成形品30の膨張及び収縮、反り及び捩れの傾向、出来映えに問題の多い個所の分布などを把握しやすくなる。
【0176】
図22は
図19に示した成形品30の三次元モデル上における、不合格判定を有する関係オブジェクト33のみを表示した図である。上述したように、関係オブジェクト33はそれぞれ比較情報を有しており、ユーザによって決定された基準値に基づき合否判定が行われる。その合否判定の結果、許容範囲から逸脱し不合格と判定された関係オブジェクト33のみを抽出して表示することで、比較的問題のない関係オブジェクト33の表示を省き、問題のある判定結果のみに注意を向けることができる。合格と判定されたものであっても、基準値等あらかじめ定めた閾値を超える場合、少しの変化で不合格となる可能性があるとして、注意喚起が必要という判定としてフィルタリングしても良い。例えば、許容範囲の90%を超える検査結果を有する関係オブジェクト33のみのフィルタリングである。
【0177】
図23は、
図19に表した成形品30の三次元モデル上における、長い寸法を有する関係オブジェクト33のみを表示した図である。このように、成形品30内の長い寸法を有する関係オブジェクト33のみを表示することで、成形品30全体の膨張、収縮などの傾向を確認しやすくなる。
【0178】
フィルタリングの基準としては、上述の例に挙げた基準の他にも、設計を担当するユーザが重要視する基準であると明確にフラグを付けた個所や、機能及び組立に重要な規格となることが多い幾何公差に関する箇所などに該当する関係オブジェクト33のみを表示しても良い。あるいは、普通公差より厳しい公差設定されたものをフィルタリング、又は、測定補助のために測定手段ごと、測定者ごと、測定日ごとにフィルタリングしても良い。なお、フィルタリングの基準については、ここに挙げた例に限られない。
【0179】
ユーザが成形品30の三次元モデル上に表示されたすべての関係オブジェクト33から表示したい関係オブジェクト33を選択する場合、フィルタリングを選択する画面の表示には様々なバリエーションがある。例えば、成形品30の三次元モデルが表示されている画面の外に表示される表示部71が別途表示する選択画面によって選択しても良い。別例においては、表示させたい関係オブジェクト33に関連するキーワードをチェックボックス形式にしても良い。もしくは、成形品30の三次元モデルが表示されている画面上に成形品30内の位置ごと、矢印オブジェクトの大きさ、色彩別等の基準を設けることも考えられる。なお、フィルタリングの際に表示部71が別途表示する選択画面については、ここに挙げた例に限られない。
【0180】
また、表示部71は、成形品30の三次元モデルを複数の平面を組み合わせて簡素化したモデルで表示し、簡素化したモデルの対応する位置に関係オブジェクト33を矢印オブジェクトで表示させる。
【0181】
図24は、成形品30の三次元モデルを複数の平面を組み合わせて簡素化したモデルで表示した図である。成形品30全体の反り・捻じれを可視化するために、出来映え判断をする対象の成形品30の三次元モデルのバウンディングボックス(三次元モデルに外接する境界ボックス)を格子状に分割した対応する位置に関係オブジェクト33を三次元モデルとともに表示する。
【0182】
検査表の規格値と公差範囲(許容範囲)、測定値から各検査項目における差を算出し、算出した差から分割された各ブロックの三次元モデル上の位置に属する検査項目の同一軸方向の差の量及び方向の平均値を算出し、三次元モデルのバウンディングボックスの表面上の対応する位置に算出した差の平均値に基づく矢印オブジェクトを関係オブジェクト33として表示する。三次元モデルのバウンディングボックスの表面上の対応する位置に表示する矢印オブジェクトは、矢印オブジェクトが三次元モデルのバウンディングボックスの外側に表示されるようにする。
【0183】
また、
図24に示す通り、成形品30の三次元モデルを複数の平面を組み合わせて簡素化したモデルで表示し、簡素化したモデルの対応する位置に関係オブジェクト33を矢印で表示させる場合には、差の方向は矢印オブジェクトの向きで表現し、差の量は矢印オブジェクトの長さ、もしくは、差の量に応じて定められた色で表示する。さらに、差の量の大きさを表す数値を矢印オブジェクトと一緒に表示しても良いし、差の量を矢印オブジェクトの長さと色の両方で表示しても良い。ブロックの三次元モデル上の位置に属する検査項目がない場合と、差の量が0の場合とを区別するために、差の量が0の場合には例えば小球などを表示するようにしてもよく、差の量を示す矢印の長さや色の凡例を表示するようにしても良い。
【0184】
図25は、本実施の形態に係る情報処理装置60の処理を表すフローチャート図である。
図12及び
図18に示す処理と、本実施の形態に係る情報処理装置60の基本処理と共通する点については説明を省略する。
図25では、成形品30全体について複数の平面を組み合わせて簡素化したモデルで表示する場合の、情報処理装置60の処理を説明する。
【0185】
ステップS300では、CPU11が、取得部70として、成形品30の三次元モデルのバウンディングボックスを指定された分割サイズLで割り切れる大きさに膨張させた膨張バウンディングボックスを計算する。具体的には、バウンディングボックスの幅、奥行、高さきをw0,d0,h0、バウンディングボックスの基準点座標をx0,y0,z0とすると、膨張バウンディングボックスの幅、奥行き、高さ:w,d,hと、基準点座標(x,y,z)は以下のようになる。なお、INT(x)は、xの小数点以下を切り捨てる関数であるとする。
【0186】
w=(INT(w0/L)+1)*L,x=x0+(w0-w)/2
【0187】
d=(INT(d0/L)+1)*L,y=y0+(d0-d)/2
【0188】
h=(INT(h0/L)+1)*L,z=z0+(h0-h)/2
【0189】
ステップS301では、CPU11が、取得部70として、ブロックの方向ごとに差の量を記憶する。具体的には、データム基準のサイズ公差の始点座標が属する膨張バウンディングボックスのブロック(w×d×h個のブロックのいずれか)のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向ごとに差の量を記憶する。
【0190】
ステップS302では、CPU11が、取得部70として、処理対象のブロックの方向を順に選択する。
【0191】
ステップS303では、CPU11が、取得部70として、前ステップS302で選択したブロックの方向が表示可能であるか否かを判定する。表示可能であるか否かは、前ステップS302で選択したブロックの面のうち、膨張バウンディングボックスの表面上にあり、かつ、ブロックの面の外側方向であるか否かを判定するものである。前ステップS302で選択したブロックの方向が表示可能である場合には、処理はステップS304へ移行する。前ステップS302で選択したブロックの方向が表示可能でない場合、処理はステップS302へ戻る。
【0192】
ステップS304では、CPU11が、取得部70として、前ステップS302で選択したブロックの方向の差の量の平均を算出する。
【0193】
ステップS305では、CPU11が、表示部71として、前ステップS302で選択したブロックの方向に対応する矢印オブジェクトを生成し表示する。前ステップS302で選択した個々のブロックの方向ごとに記憶した差の量を順に処理して矢印オブジェクトの向きと大きさを決定する。前ステップS302で選択した対象ブロックにおいて表示することが可能な方向を決定し、ブロックの面の中心位置から表示することが可能な方向に矢印オブジェクトを生成して表示する。矢印オブジェクトの向きは差の量の正負に合わせて決定する。例えば、差の量が負である場合、矢印オブジェクトの方向は膨張バウンディングボックス内部に向かう方向、差の量が正である場合、矢印オブジェクトの方向は膨張バウンディングボックスから外側に向かう方向である。
【0194】
ステップS306では、CPU11が、取得部70として、前ステップS305ですべてのブロックの方向処理が完了したか否かを判定する。前ステップS305ですべてのブロックの方向処理が完了した場合、処理は終了する。一方、前ステップS305ですべてのブロックの方向処理が完了していない場合、処理はステップS302へ戻り、同様の処理を繰り返す。
【0195】
以上、説明したように、本実施形態に係る情報処理装置60によれば、関係オブジェクト33を表示した成形品30全体の三次元モデルを表示する場合において、ユーザにとって不必要な関係オブジェクト33を省いた状態で、成形品30内における少なくとも二つ以上の測定箇所32の位置上の関係をより容易に成形品30の三次元モデル上で視認することができる。また、成形品30の三次元モデルのバウンディングボックスを格子状に分割した対応する位置に関係オブジェクト33を三次元モデルとともに表示することにより、個々の詳細な規格に対する合否ではなく、成形品30全体の反り・捻じれと言った傾向を可視化することができ、実際に製造された成形品30の出来映え状態がより明確に視認可能となる。
【0196】
本実施形態では、情報処理プログラムが記憶部13にインストールされている形態を説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態に係る情報処理プログラムを、コンピュータ読取可能な記憶媒体に記録した形態で提供しても良い。例えば、本実施形態に係る情報処理プログラムを、CD(CompactDisc)-ROM及びDVD(DigitalVersatileDisc)-ROM等の光ディスクに記録した形態、若しくはUSB(UniversalSerialBus)メモリ及びメモリカード等の半導体メモリに記録した形態で提供しても良い。また、本実施形態に係る情報処理プログラムを、通信I/F14に接続された通信回線を介して外部装置から取得するようにしても良い。
【0197】
上記実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0198】
また上記実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであっても良い。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更しても良い。
【符号の説明】
【0199】
10、40、60 情報処理装置
11 CPU
12 メモリ
13 記憶部
14 通信I/F
15 入出力I/F
16 入力部
17 出力部
18 記憶媒体読取装置
20、50、70 取得部
21、51、71 表示部
30 成形品
31 検査対象
32 測定箇所
33~35 関係オブジェクト
36 ガイド線
XX 輪郭度を示す関係オブジェクト