(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157457
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ポリイソプレン粒子とその製造方法、および化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20221006BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221006BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20221006BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221006BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20221006BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20221006BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q19/00
A61Q1/00
A61Q5/00
A61Q13/00 100
A61Q17/04
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061690
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 直幸
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 裕一
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 郁子
(72)【発明者】
【氏名】塚本 早紀
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC482
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD262
4C083AD352
4C083CC12
4C083DD32
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】高純度なポリイソプレンを用いて、弾性の高いシリコーンビーズやポリウレタンビーズの代替材料を実現する。
【解決手段】本発明のポリイソプレン粒子は、平均粒子径d1が1~20μm、最大粒子径d2は30μm未満、粒径比(d2/d1)が3.0以下、変動係数が40%未満、真球度が0.80以上、硝子転移温度が-53~10℃である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径d1が1~20μm、最大粒子径d2は30μm未満、粒径比(d2/d1)が3.0以下、変動係数が40%未満、真球度が0.80以上、硝子転移温度が-53~10℃であることを特徴とするポリイソプレン粒子。
【請求項2】
残留モノマーの含有量が100ppm未満であることを特徴とする請求項1に記載のポリイソプレン粒子。
【請求項3】
液状のポリイソプレンと界面活性剤と水を混合して、乳化液滴を含む乳化液を調製する第一工程と、
前記乳化液に電離放射線を照射する第二工程と、
前記第二工程で得られた乳化液を固液分離してポリイソプレン粒子を固形物として得る第三工程と、を備えるポリイソプレン粒子の製造方法。
【請求項4】
前記第一工程で、前記ポリイソプレンを有機溶媒で希釈して乳化液を調製することを特徴とする請求項3に記載のポリイソプレン粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第二工程で、前記乳化液から有機溶媒を除去した水分散体に、前記電離放射線を照射することを特徴とする請求項4に記載のポリイソプレン粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1~2のいずれか一項に記載のポリイソプレン粒子が配合された化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い弾性と良好な生分解性を持つポリイソプレン粒子、およびその製造方法、並びに化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、石油由来の合成高分子(プラスチック)は、さまざまな産業で利用されている。合成高分子は、長期安定性を求めて開発されることが多く、自然環境中で分解されない。そのため、様々な環境問題が起こっている。例えば、水環境に流出したプラスチック製品が長い期間蓄積され、海洋や湖沼の生態系が大きな影響を受けている。また、近年、長さが5mm以下からnmレベルまでのマイクロプラスチックが大きな問題となっている。マイクロプラスチックに該当するものとして、化粧用品等に含まれる微粒子、加工前のプラスチック樹脂の小さな塊、大きな製品が海中で浮遊するうちに微細化した物、等が挙げられている。
【0003】
プラスチック粒子は、真比重が軽いため下水処理場で除去し難く、河川、海洋、池沼等に流れ出やすい。更に、プラスチック粒子は、殺虫剤等の化学物質を吸着し易いため、生物濃縮により人体に影響を与えるおそれがある。このことは国連環境計画等でも指摘されており、各国、各種業界団体が規制を検討している。例えば、化粧品の自然・オーガニック指数表示に関するガイドライン(ISO16128)が制定されている。このガイドラインによれば、製品中の原料を、自然原料、自然由来原料、非自然原料に分類し、各原料の含有量に基づいて指数が算出される。既に、商品にこの指数が表示されるようになっており、自然由来原料、更に、自然原料が要求されている。
【0004】
このような背景から、自然環境中で微生物等により水と二酸化炭素に分解され、自然界の炭素サイクルに組み込まれる生分解性プラスチックが注目されている。特に、植物由来の自然原料であるセルロース粒子は、環境に流出しても水に浮くことがなく、また、良好な生分解性を持つため、環境問題を引き起こす懸念が少ない。例えば、良好な生分解性を持つI型セルロースで形成された多孔質セルロース粒子が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この粒子を化粧料に配合して、良好な感触特性が得られる。また、生分解性、触感および親油性に優れたセルロースアセテートを含む粒子が知られている(例えば、特許文献2を参照)。さらに、アミロペクチンの含有量が90重量%以上の生分解性に優れた澱粉粒子が知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2020/004604号公報
【特許文献2】WO2020/188698号公報
【特許文献3】WO2021/033742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの特許文献に開示された粒子は、生分解に優れ、PMMAやNylon等のプラスチックビーズと同様なソフトで滑らかな感触特性を具備している。しかし、素材そのものが比較的硬質であることから、高い弾性が得られず、シリコーンビーズやポリウレタンビーズの代替材料としては適さない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、高い弾性と良好な生分解性を持つ粒子を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるポリイソプレン粒子は、平均粒子径d1が1~20μm、最大粒子径d2は30μm未満、粒径比(d2/d1)が3.0以下、変動係数が40%未満、真球度が0.80以上、硝子転移温度が-53~10℃である。
【0009】
本発明によるポリイソプレン粒子の製造方法は、液状のポリイソプレンと界面活性剤と水を混合して、乳化液滴を含む乳化液を調製する工程と、乳化液に電離放射線を照射する工程と、この乳化液を固液分離してポリイソプレン粒子を固形物として得る工程と、を備えている。また、液状のポリイソプレンを有機溶媒で希釈して乳化液を調製してもよい。このとき、この乳化液から有機溶媒を除去して得られた水分散体に、電離放射線を照射してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、鎖状ポリイソプレンを架橋させて形成したポリイソプレン粒子に関し、平均粒子径d1が1~20μm、最大粒子径d2は30μm未満、粒径比(d2/d1)が3.0以内、粒子変動係数が40%未満、真球度が0.80以上、硝子転移温度が-53~10℃である。このような粒子は、高い弾性と良好な生分解性を備えている。
【0011】
粒子の形状は粉体の感触特性に影響を与える。平均粒子径d1が20μmより大きい粒子、あるいは、最大粒子径d2が30μm以上の粒子では、ざらつきが感じられ、ソフト感としっとり感が低下する。最大粒子径が平均粒子径の3.0倍を超えると、均一な延び広がり性が低下する。粒子(粉体)を感触改良材として用いる場合、平均粒子径d1は1~20μmが好ましく、5~15μmが最適である。1μm未満では、転がり感、転がり感の持続性、均一な延び広がり性等の感触特性が低下する。平均粒子径d1が0.01~1μm未満の粒子は、光散乱効果が高いため、ソフトフォーカス材料として好適である。
【0012】
また、粒子変動係数(CV値)が40%未満である。粒子変動係数が40%以上では、均一な転がり性が得られないおそれがある。粒子変動係数は、30%以下が好ましい。なお、粒子変動係数は、小さいほど好適であるものの、狭小分布の粒子を得ることは工業的に困難である。概ね3%以上であれば、特に問題なく製造できる。
【0013】
また、硝子転移温度はポリイソプレンの架橋の程度に関係する。硝子転移温度が-53℃より低い状態のポリイソプレンは、架橋が十分進んでおらず、粘着性があるため、粉体(粒子)として取り出すことができない。架橋が進み10℃以上になると弾性が低下すると共に、生分解性が低下してしまう。硝子転移温度は、-50~0℃が好ましく、-40~-10℃が最適である。
【0014】
真球度は0.80以上である。真球度が高いほど粉体(粒子)の転がり感が向上する。真球度は0.90以上が特に好ましい。
【0015】
さらに、ポリイソプレン粒子に含まれる残留モノマーは100ppm未満が好ましい。残留モノマーが100ppm以上であると都市ガス様の独特の臭気が強く、化粧品材料として許容されない。さらに20ppm未満が好ましい。
【0016】
分子構造がシス型のポリイソプレンを成分として粒子を構成することにより、高い弾性が得られる。シス型のポリイソプレンとして、溶液重合により得られる合成ポリイソプレンや、発酵法により得られるバイオマスポリイソプレン等が例示できる。トランス型のポリイソプレンから得られる粒子では、高い弾性が得られないおそれがある。
【0017】
架橋したポリイソプレンは、未架橋のポリイソプレンに比べて生分解速度が遅い。しかし、本発明のポリイソプレン粒子は、粒径が微細であり、比表面積が大きい。そのため、OECD TG301F(易分解性)による生分解性試験で28日間暴露すると、60%以上が分解される。このようなポリイソプレン粒子は、欧州化学物質庁が提案するマイクロプラスチックスの定義案に該当しない。
【0018】
また、ポリイソプレンの比重は、水よりも軽く、水に浮きやすい。そのため、排水処理設備で除去できず、環境中にそのまま放出されることが懸念される。しかし、ポリイソプレンは光分解性を有しているので、自然界における物質循環のサイクルに組み込まれやすい。
【0019】
また、ポリイソプレン粒子は疎水性であるが、表面処理を行って親水性とすることにより、水系の化粧料に配合することができる。表面処理方法は、ポリイソプレン粒子の表面を親水性に改質できる方法であればよく、例えば、HLB値が8~18のノニオン系またはアニオン系界面活性剤処理、アミノ酸やリポアミノ酸処理、アルギン酸やポリアクリル酸等の水溶性高分子処理などが挙げられる。
【0020】
<ポリイソプレン粒子の製造方法>
まず、液状のポリイソプレンと界面活性剤と水を混合して、乳化液滴を含む乳化液を調製する(第一工程)。これにより、ポリイソプレンが有機溶媒に溶解した溶液が内層、水が外層からなる乳化液滴を含むO/W乳化液が得られる。この乳化液に電離放射線を照射して、ポリイソプレンを架橋させる(第二工程)。これにより、鎖状のポリイソプレンが架橋した三次元の網目構造体が得られる。続いて、この水分散体を固液分離し、更に水洗して、ケーキ状物質を取り出す(第三工程)。このケーキ状物質を乾燥し、解砕してポリイソプレン粒子の粉体が得られる。
【0021】
ここで、液状ポリイソプレンを有機溶媒で希釈してから乳化液を調製してもよい。このとき、有機溶媒を含んだ乳化液に電離放射線を照射してもよいし、乳化液から有機溶媒を除去した後に、電離放射線を照射してもよい。
【0022】
以下、各工程を詳細に説明する。
【0023】
[第一工程]
まず、液状のポリイソプレンと水と界面活性剤を混合する(混合溶液の調製)。界面活性剤は、O/W型の乳化液滴を形成するために添加される。界面活性剤のHLB値は8~18が適している。次に、この混合溶液を乳化装置により乳化させ、乳化液が得られる。この時、平均径が約1~40μmの乳化液滴を含む乳化液が得られるように、乳化条件を設定する。乳化液滴中には液状のポリイソプレンが存在している。乳化装置には、一般的な高速せん断装置を用いることができる。その他、より均一な乳化液滴が得られる膜乳化装置、マイクロチャネル乳化装置等の公知の装置を目的に応じて適用できる。液状のポリイソプレンを有機溶媒で希釈してから混合溶液を調製してもよい。 液状のポリイソプレンには、溶液重合により得られる合成ポリイソプレンや、酵素法により得られるバイオマスポリイソプレンを用いる。なお、合成ポリイソプレンには、天然ゴムに含まれるタンパク質や脂質等の非ゴム成分が含まれていないが、残留モノマー、残留溶媒、重合停止剤が僅かに含まれている。このような液状のポリイソプレンとして、例えば、株式会社クラレ社製クラプレン、日本ゼオン株式会社制Nipol、JSR株式会社製IR等の分子量が1万~5万の市販品が例示できる。必要に応じて、有機溶媒で希釈して用いることができる。
【0024】
なお、乳化液滴の平均径は次のように測定した。乳化液をスライドガラスに滴下し、その上からカバーガラスを被せる。デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-600)により、カバーガラス越しに30倍から2000倍の倍率で撮影し、乳化液滴の写真投影図を得る。この写真投影図から、50個の液滴を任意に選び、付属のソフトウェアにて円相当径を算出する。それら50個の円相当径の平均値を平均径(平均液滴径)とした。
【0025】
[第二工程]
本工程では、この乳化液を金属製容器に入れ、電離放射線を照射する。これにより、乳化液滴に含まれるポリイソプレンを架橋することができる。未架橋のポリイソプレンの硝子転移温度に対して、約10℃上昇する程度に電離放射線を照射すると、粒子の粘着性が抑えられて、粉体として取り出せるようになる。また、電離放射線の照射により、液状のポリイソプレンに僅かに含まれる残留モノマーが重合すると考えられ、照射後、残留モノマーは100ppm以下となり、実質的に臭気を感知できない程度となる。電離放射線は、x線、γ線、電子線のいずれかを適用し、照射線量は、50~500kGyの範囲が好ましい。50kGy未満の場合、架橋が未発達なため、乳液を固液分離した際、ポリイソプレン粒子同士が粘着して固まりとなり、個別の粉体として取り出すことができない。また、500kGyを超えると架橋密度が高すぎて、弾性が低下すると共に、生分解速度が低下する。
【0026】
また、前述の乳化を希薄系にて行い、これに電離放射線を照射すると、より高い弾性の粒子が得られる。なお、この架橋工程でポリイソプレン粒子の硝子転移温度を調整することができる。金属製容器は200Lドラム缶がハンドリング上も好適である。
【0027】
[有機溶媒除去工程]
なお、有機溶媒で希釈したポリイソプレンを用いて乳化液を調製したときには、架橋工程の前または後で、乳化液から有機溶媒を除去する。常圧または減圧下で加熱することにより、有機溶媒を蒸発させる。これにより、乳化液滴から有機溶媒が除去され、粒子径1~40μm程度のポリイソプレン粒子を含む水分散体が得られる。
【0028】
例えば、常圧下の加熱除去法では、冷却管を備えたセパラブルフラスコを加熱し、有機溶媒を取り除く。また、減圧下の加熱除去法では、ロータリーエバポレーターや蒸発缶等用いて減圧加熱し、有機溶媒を取り除く。
【0029】
[第三工程]
次に、第二工程または、有機溶媒除去工程で得られた水分散体から、公知の濾過、遠心分離等の方法により固形分を分離する。これにより、ポリイソプレン粒子のケーキ状物質が得られる。得られたケーキ状物質を洗浄することにより、界面活性剤を低減できる。ポリイソプレン粒子を乳化物等の液体製剤に配合する場合、界面活性剤が長期安定性を阻害するおそれがある。そのため、ポリイソプレン粒子に含まれる界面活性剤の残留量は100ppm以下が好ましい。界面活性剤を低減するためには、有機溶媒を用いて洗浄すると良い。
【0030】
[乾燥工程]
乾燥工程では、常圧または減圧下での加熱により、固液分離工程で得られたケーキ状物質に含まれる水分を蒸発させる。その後、ミキサー等で解砕することで、平均粒子径1~20μmのポリイソプレン粒子の粉体が得られる。
【0031】
<化粧料>
上述のポリイソプレン粒子と各種化粧料成分を配合して化粧料を調製できる。このような化粧料によれば、シリコーンビーズやポリウレタンビーズと同様な柔軟性が感じられ、同時に、転がり感、転がり感の持続性、および均一な延び広がり性、ソフト感としっとり感を得ることができる。すなわち、化粧料の感触改良材に求められる代表的な感触特性を満たすことができる。
【0032】
具体的な化粧料を表1に分類別に例示する。このような化粧料は、従来の一般的な方法で製造できる。化粧料は、粉末状、ケーキ状、ペンシル状、スティック状、クリーム状、ジェル状、ムース状、液状、クリーム状等の各種形態で使用される。
【0033】
各種化粧料成分として代表的な分類や成分を表2に例示する。さらに、医薬部外品原料規格2006(発行:株式会社薬事日報社、平成18年6月16日)や、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(発行:The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、Eleventh Edition2006)等に収載されている化粧料成分を配合してもよい。
【0034】
【0035】
【実施例0036】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0037】
[実施例1]
液状ポリイソプレン(クラレ社製クラプレンKL-10)200gを、水3346gと界面活性剤(花王社製レオドールTW-O120V)25gの混合溶液に加えた。この混合溶液を、乳化分散機(プライミクス社製T.K.ロボミックス)を用いて12000rpmで10分間撹拌した。これにより乳化され、乳化液滴を含む乳化液が得られた。
【0038】
この乳化液を4L金属角缶(アズワン社製)に約1.8Lを詰めて、線量270kGyのγ線を照射した。
【0039】
この乳化液を、ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。次いで、ヘプタン1Lを用いた洗浄を3回繰り返し、界面活性剤を除去した。このようにして得られたケーキ状物質を、60℃で12時間乾燥した。この乾燥粉体をジューサーミキサーで解砕後、250mesh篩(JIS試験用規格篩)でふるいにかけ、ポリイソプレン粒子を得た。
【0040】
ポリイソプレン粒子の調製条件を表3にまとめた。また、ポリイソプレン粒子の粉体の物性を以下の方法で測定した。他の実施例や比較例についても同様に測定した。その結果を表4に示す。
【0041】
(1)平均粒子径、最大粒子径、粒子変動係数(CV値)
レーザー回折装置(堀場製作所製のLA-950v2)を用いて、ポリイソプレン粒子の粒度分布を測定した。この粒度分布からメジアン値を求め、平均粒子径d1とした。また、粒度分布で検出される最も大きい粒子径を最大粒子径d2とした。さらに、粒度分布(母集団)から標準偏差σと母平均μを求め、粒子変動係数(CV=σ/μ)を得た。表4では百分率で表している。また、最大粒子径d2を平均粒子径d1で除して最大粒子径と平均粒子径の比(d2/d1)を求めた。
【0042】
(2)真球度
透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H-8000)により、2000倍から25万倍の倍率で撮影し、写真投影図を得る。この写真投影図から、任意の50個の粒子を選び、それぞれの最大径DLと、これに直交する短径DSを測定し、比(DS/DL)を求めた。それらの平均値を真球度とした。
【0043】
(3)硝子転移温度
示差走査熱量計(リガク社製 DSC8230L)を用い、-80℃から80℃まで、10℃/分で昇温させて測定した。
【0044】
(4)残留モノマー
分光光度計(日立ハイテクサービス社製U-2900)を用いて、簡易的に光電比色法にて、定性を行った。具体的には、酢酸第二水銀(特級試薬)0.01~3.5g、1%酢酸酸性メチルアルコール10ml、および測定試料5mgを試験管に採取して密栓し、これを70℃の水浴に50分間浸漬させて酢酸第二水銀を完全に溶解させた後、水冷して呈色溶液を定性濾紙で濾過して、濾液を採取した。この濾液の440~445nmの最大吸光度と、予め用意したイソプレン濃度100ppmのTHF溶液の吸光度と比較した。
○:100ppm未満
×:100ppm以上
【0045】
(5)生分解性
ポリイソプレン粒子の粉末をOECD TG301F(易分解性)に基づいて生分解性試験を行い、28日間の暴露による分解率を測定した。本実施例では、この分解率は80%であった。
【0046】
[実施例2]
乳化分散機の回転数を8000rpmとした以外は、実施例1と同様に調製した。
【0047】
[実施例3]
乳化分散機の回転数を13000rpmとした以外は、実施例1と同様に調製した。
【0048】
[実施例4]
液状ポリイソプレン200gにシクロヘキサン200gを加えて希釈したこと、乳化分散機の回転数を10000rpmとしたこと、γ線照射量を160kGyとしたこと以外は、実施例1と同様に調製した。
【0049】
[実施例5]
γ線照射量を400kGyとした以外は、実施例4と同様に調製した。
【0050】
[実施例6]
液状ポリイソプレンとしてクラレ社製クラプレンLIR-30を200g用い、シクロヘキサン200gを加えて希釈したこと、乳化分散機の回転数を11000rpmとしたこと以外は、実施例1と同様に調製した。
【0051】
[比較例1]
乳化分散機の回転数を4000rpmとした以外は、実施例1と同様にしてポリイソプレン粒子の粉体を得た。
【0052】
[比較例2]
乳化分散機の回転数を16000rpmで60分間とした以外は、実施例1と同様に調製した。
【0053】
[比較例3]
架橋工程(γ線の照射)を行わないこと以外は、実施例1と同様な操作を行ったところ、乾燥品はシート状となり、ジューサーミキサーで解砕できなかった。そのため、ポリイソプレン粒子が得られなかった。
【0054】
[比較例4]
γ線照射量を600kGyとした以外は、実施例1と同様に調製した。
【0055】
[比較例5]
γ線照射量を40kGyとした以外は、実施例1と同様な操作を行ったところ、乾燥品はシート状となり、ジューサーミキサーで解砕できなかった。そのため、ポリイソプレン粒子が得られなかった。
【0056】
【0057】
【0058】
〈ポリイソプレン粒子の粉体の感触特性〉
次に、各実施例と比較例で得られた粉体の感触特性を評価した。各粉体について、20名の専門パネラーによる官能テストを行い、さらさら感、しっとり感、転がり感、均一な延び広がり性、肌への付着性、転がり感の持続性、およびソフト感の7つの評価項目に関して聞き取り調査を行った。評価点基準(a)に基づく各人の評価点を合計し、評価基準(b)に基づき感触特性を評価した。結果を表5に示す。
評価点基準(a)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
評価基準(b)
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未満
【0059】
【0060】
〈リキッドファンデーションの使用感〉
ポリイソプレン粒子の粉体を用いて表6に示す配合比率(重量%)となるようにW/O型リキッドファンデーションを作製した。すなわち、各例の粉体を成分(10)とし、成分(2)~(14)と共にディスパーにて均一に分散させた後、成分(1)と混合した。さらに、成分(15)~(19)を同様に均一混合した。これらを70℃に加熱し成分を融解した後、ディスパーで乳化・冷却・脱泡し、W/O型リキッドファンデーションを得た。この様にして得られたリキッドファンデーションについて、20名の専門パネラーによる官能テストを行った。肌への塗布中の均一な延び、しっとり感、滑らかさ、および、肌に塗布後の化粧膜の均一性、しっとり感、やわらかさの6つの評価項目に関して聞き取り調査を行った。前述の評価点基準(a)に基づく各人の評価点を合計し、前述の評価基準(b)に基づきファンデーションの使用感を評価した。結果を表7に示す。実施例による化粧料は、塗布中でも塗布後でも、使用感が優れている。しかし、比較例の化粧料は、使用感がよくない。
【0061】
【0062】