IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一工業製薬株式会社の特許一覧

特開2022-157468フッ素系イオン性液体およびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157468
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】フッ素系イオン性液体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/63 20060101AFI20221006BHJP
   C07D 213/20 20060101ALI20221006BHJP
   C07D 233/58 20060101ALI20221006BHJP
   C07C 311/48 20060101ALI20221006BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C07C211/63
C07D213/20 CSP
C07D233/58
C07C311/48
C09K3/16 104E
C09K3/16 105A
C09K3/16 105D
C09K3/16 105Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061717
(22)【出願日】2021-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】三浦 祐嗣
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢志
(72)【発明者】
【氏名】大西 敏之
【テーマコード(参考)】
4C055
4H006
【Fターム(参考)】
4C055AA04
4C055BA01
4C055CA01
4C055DA06
4C055FA09
4C055GA01
4H006AA01
4H006AB80
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温環境下での着色を抑制し、長期にわたる色相安定性を可能とするフッ素系イオン性液体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】フッ素系イオン性液体は、カチオンKおよびアニオンAの対よりなる下記式(1)で表されるイオン性液体であって、カチオンKがイミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ピロリニウムカチオンおよびモルホリニウムカチオンからなる群から選択される1種又は2種以上であり、アニオンAがフッ素系アニオンであり、電位差滴定法における全アミン価が0.013以下である。
式(1):K
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンKおよびアニオンAの対よりなる下記一般式(1)で表されるイオン性液体であって、前記カチオンKが下記一般式(2)で表される群から選択される1種又は2種以上であり、前記アニオンAがフッ素系アニオンであり、電位差滴定法における全アミン価が0.013以下である、フッ素系イオン性液体。
一般式(1):K
一般式(2):
【化1】
式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換されているかもしくは非置換の炭素数1~20の飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状もしくは環状の脂肪族炭化水素基、置換されているかもしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素数7~31のアリールアルキル基であり、但しR~Rはそれぞれ独立に水素原子でもよく、前記脂肪族炭化水素基、前記アリール基または前記アリールアルキル基が置換されている場合は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アシルオキシ基、アシル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、およびトリメチルシリル基からなる群から選択される少なくとも一種で置換されており、nは1~5の整数であり、式(f)で表される化合物は、Xで表される酸素原子または硫黄原子を1つ以上含む4~7員環の飽和もしくは不飽和の複素環式化合物である。
【請求項2】
光学材料の添加剤として使用される、請求項1に記載のフッ素系イオン性液体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフッ素系イオン性液体の製造方法であって、
前記カチオンKを含む化合物と前記アニオンAを含む化合物とを反応させてフッ素系イオン性液体を生成させ、得られたフッ素系イオン性液体を酸と接触させることを含む、フッ素系イオン性液体の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素系イオン性液体を50℃以上で酸と接触させる、請求項3に記載のイオン性液体の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のフッ素系イオン性液体の製造方法であって、
アミンと4級化剤を反応させて前記カチオンKを含む化合物を生成させ、前記カチオンKを含む化合物を酸と接触させ、その後、前記カチオンKを含む化合物と記アニオンAを含む化合物とを反応させてフッ素系イオン性液体を生成させることを含む、フッ素系イオン性液体の製造方法。
【請求項6】
前記カチオンKを含む化合物を50℃以上で酸と接触させる、請求項5に記載のフッ素系イオン性液体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系イオン性液体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビやパソコン、携帯電話、タッチパネルを搭載したスマートフォン、カーナビゲーションシステムなどフラットパネルディスプレイを用いた電子製品が広く普及している。テレビでは大型化が進み、モバイル・車載用ディスプレイでは高画質、高機能化する傾向にある。この中で静電気の問題はより大きな課題となり、大型であればあるほど帯電のリスクが高まり、高性能な部品であればあるほど故障などのトラブルの影響が大きくなる。このような背景から、今まで以上に静電気を防止する効果の高い、即ち少量添加で低抵抗化が可能な帯電防止剤の開発が、例えば、粘着剤(偏光板、プロテクトフィルム、半導体など)、UV硬化型ハードコート剤(ARフィルム、AGフィルムなど)、OAロールなど、幅広い電子材料分野で求められている。
【0003】
従来の主な帯電防止剤としては、界面活性剤や無機フィラー、導電性高分子が用いられている。これらの材料は湿度依存性や拭き取りなどにより性能持続性が困難であったり、ヘーズが出るなどの外観不良があったり、添加量が多いため樹脂性能が維持できないなどの課題がある。これに対し、イオン性液体は、これらの課題を解決可能な材料として注目されており、電子部材向けに適用されている。
【0004】
しかしながら、イオン性液体は、難揮発性であることから蒸留による精製ができない。従って、その高純度化が大きな課題の一つとされており、イオン性液体の高純度化のため種々の開発がなされている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-184902号公報
【特許文献2】特許第4499594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学的に透明な材料が使用環境や時間とともに黄変したり、ヘーズが出たり、反射性になったりする現象は多くの用途で望ましいことではない。特に光学材料においては高温環境下における変色が大きな課題である。例えば帯電防止剤等として用いられるイオン性液体についても高温環境下での着色抑制が求められており、高純度化が必要となる。
【0007】
従来の高純度化方法は原料の精製や4級化剤の工夫によりなされてきたが、アルキル鎖やアミンの種類により、精製方法が限定的となる上、着色成分を特定し、その除去に特化した精製方法をとることができていない。高温環境下での着色を抑制するためには、イオン性液体中の着色成分を特定し、当該着色成分を除去することが求められる。
【0008】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、高温環境下での着色を抑制し、長期にわたる色相安定性を可能とするフッ素系イオン性液体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] カチオンKおよびアニオンAの対よりなる下記一般式(1)で表されるイオン性液体であって、前記カチオンKが下記一般式(2)で表される群から選択される1種又は2種以上であり、前記アニオンAがフッ素系アニオンであり、電位差滴定法における全アミン価が0.013以下である、フッ素系イオン性液体。
一般式(1):K
一般式(2):
【化1】
式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換されているかもしくは非置換の炭素数1~20の飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状もしくは環状の脂肪族炭化水素基、置換されているかもしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素数7~31のアリールアルキル基であり、但しR~Rはそれぞれ独立に水素原子でもよく、前記脂肪族炭化水素基、前記アリール基または前記アリールアルキル基が置換されている場合は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アシルオキシ基、アシル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、およびトリメチルシリル基からなる群から選択される少なくとも一種で置換されており、nは1~5の整数であり、式(f)で表される化合物は、Xで表される酸素原子または硫黄原子を1つ以上含む4~7員環の飽和もしくは不飽和の複素環式化合物である。
[2] 光学材料の添加剤として使用される、[1]に記載のフッ素系イオン性液体。
【0010】
[3] [1]または[2]に記載のフッ素系イオン性液体の製造方法であって、
前記カチオンKを含む化合物と前記アニオンAを含む化合物とを反応させてフッ素系イオン性液体を生成させ、得られたフッ素系イオン性液体を酸と接触させることを含む、フッ素系イオン性液体の製造方法。
[4] 前記フッ素系イオン性液体を50℃以上で酸と接触させる、[3]に記載のフッ素系イオン性液体の製造方法。
【0011】
[5] [1]または[2]に記載のフッ素系イオン性液体の製造方法であって、
アミンと4級化剤を反応させて前記カチオンKを含む化合物を生成させ、前記カチオンKを含む化合物を酸と接触させ、その後、前記カチオンKを含む化合物と記アニオンAを含む化合物とを反応させてフッ素系イオン性液体を生成させることを含む、フッ素系イオン性液体の製造方法。
[6] 前記カチオンKを含む化合物を50℃以上で酸と接触させる、[5]に記載のフッ素系イオン性液体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、高温環境下での着色を抑制し、長期にわたる色相安定性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、高温環境下での着色抑制を得るためには、フッ素系イオン性液体中に残存する不純物を除去する必要があり、微量に残存する1~3級アミンの除去が最も効果的であることを見出した。例えば、原料由来のアミンを不純物として含むフッ素系イオン性液体は、高温下において着色が徐々に起きることが明らかになっている。そこで、本発明者らは、フッ素系イオン性液体中に残存するアミンを極力除去することとし、電位差滴定法における全アミン価の数値が0.013以下であることにより、フッ素系イオン性液体の高温環境下における着色を抑制し、長期にわたって色相安定性を維持できることを見出した。
【0014】
本実施形態に係るフッ素系イオン性液体(以下、単にイオン性液体ということがある。)は、下記一般式(1)で表される化合物であり、カチオンKおよびアニオンAの対よりなる。ここで、イオン性液体とは、融点が100℃以下のイオン対化合物をいう。
一般式(1):K
【0015】
上記カチオンKとしては、下記一般式(2)で表される群から選択される1種又は2種以上が用いられる。
一般式(2):
【化2】
【0016】
式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換されているかもしくは非置換の炭素数1~20の飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状もしくは環状の脂肪族炭化水素基、置換されているかもしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素数7~31のアリールアルキル基である。R~Rは、それぞれ独立に、上記脂肪族炭化水素基、上記アリール基、上記アリールアルキル基、または水素原子である。
【0017】
上記脂肪族炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基などの一価の脂肪族炭化水素基であり、直鎖状や分岐状の鎖式でもよく、環状(即ち、脂環式)でもよく、環状には分岐鎖があってもよい。該脂肪族炭化水素基の炭素数は1~20であり、1~12であることがより好ましい。ここでいう脂肪族炭化水素基の炭素数は、脂肪族炭化水素基が後述する置換基を持つ場合、その置換基に含まれる炭素原子の数を含まない。
【0018】
上記アリール基の炭素数は6~30であり、6~20であることが好ましく、より好ましくは6~10である。ここでいうアリール基の炭素数は、アリール基が後述する置換基を持つ場合、その置換基に含まれる炭素原子の数は含まれない。
【0019】
上記アリールアルキル基の炭素数は7~31であり、7~21であることが好ましく、より好ましくは7~11である。ここでいうアリールアルキル基の炭素数は、アリールアルキル基が後述する置換基を持つ場合、その置換基に含まれる炭素原子の数は含まれない。
【0020】
上記の脂肪族炭化水素基、アリール基およびアリールアルキル基について、「置換されているかもしくは非置換の」とは、それらの基の一以上の水素原子が置換基で置換されていても、置換されていなくてもよいことを意味する。該置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アシルオキシ基、アシル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、およびトリメチルシリル基が挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて置換基として導入されてもよい。
【0021】
式(b)中のnは1~5の整数を表し、そのため、式(2)-(b)で表される化合物は、1つの窒素原子を含む5~9員環の飽和複素環式化合物である。nは1または2であることが好ましい。
【0022】
式(f)中のXは、酸素原子または硫黄原子を示し、式(f)で表される化合物は、Xで表される酸素原子や硫黄原子を1つ以上含む4~7員環(より好ましくは5~6員環)の飽和もしくは不飽和の複素環式化合物である。
【0023】
式(a)で表されるイミダゾリウムカチオンの具体例としては、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1,3-ジエチルイミダゾリウム、1-エチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-3-エチルイミダゾリウム、1-エチル-3-ヘキシルイミダゾリウム、1-エチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-ドデシル-3-エチルイミダゾリウム、1,3-ジプロピルイミダゾリウム、1-ブチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-プロピルイミダゾリウム、1-オクチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ドデシル-3-プロピルイミダゾリウム、1-アリル-3-メチルイミダゾリウム、1,3-ジアリルイミダゾリウム、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-ドデシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,3-ジエチル-2-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-3-エチル-2-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-ヘキシル-2-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2-メチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-ドデシル-3-エチル-2-メチルイミダゾリウム、2-メチル-1,3-ジプロピルイミダゾリウム、1-ブチル-2-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ヘキシル-2-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-オクチル-2-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ドデシル-2-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-アリル-2,3-メチルイミダゾリウム、1,3-ジアリル-2-メチルイミダゾリウム等が挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
式(b)で表されるカチオンの具体例としては、1,1-ジメチルピロリジニウム、1-エチル-1-メチルピロリジニウム、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-メチル-1-ヘキシルピロリジニウム、1-メチル-1-オクチルピロリジニウム、1-ドデシル-1-メチルピロリジニウム、1,1-ジエチルピロリジニウム、1-エチル-1-プロピルピロリジニウム、1-ブチル-1-エチルピロリジニウム、1-エチル-1-ヘキシルピロリジニウム、1-エチル-1-オクチルピロリジニウム、1-ドデシル-1-エチルピロリジニウム、1,1-ジプロピルピロリジニウム、1-ブチル-1-プロピルピロリジニウム、1-プロピル-1-ヘキシルピロリジニウム、1-プロピル-1-オクチルピロリジニウム、1-ドデシル-1-プロピルピロリジニウム、1,1-ジブチルピロリジニウム、1-ブチル-1-ヘキシルピロリジニウム、1-ブチル-1-オクチルピロリジニウム、1-ブチル-1-ドデシルピロリジニウム、1,1-ジヘキシルピロリジニウム、1-ヘキシル-1-オクチルピロリジニウム、1-ドデシル-1-ヘキシルピロリジニウム、1,1-ジオクチルピロリジニウム、1-ドデシル-1-オクチルピロリジニウム、1,1-ジドデシルピロリジニウム等のピロリジニウムカチオン; 1,1-ジメチルピぺリジニウム、1-エチル-1-メチルピぺリジニウム、1-メチル-1-プロピルピぺリジニウム、1-ブチル-1-メチルピぺリジニウム、1-メチル-1-ヘキシルピぺリジニウム、1-メチル-1-オクチルピぺリジニウム、1-ドデシル-1-メチルピぺリジニウム、1,1-ジエチルピぺリジニウム、1-エチル-1-プロピルピぺリジニウム、1-ブチル-1-エチルピぺリジニウム、1-エチル-1-ヘキシルピぺリジニウム、1-エチル-1-オクチルピぺリジニウム、1-ドデシル-1-エチルピぺリジニウム、1,1-ジプロピルピぺリジニウム、1-ブチル-1-プロピルピぺリジニウム、1-プロピル-1-ヘキシルピぺリジニウム、1-プロピル-1-オクチルピぺリジニウム、1-ドデシル-1-プロピルピぺリジニウム、1,1-ジブチルピぺリジニウム、1-ブチル-1-ヘキシルピぺリジニウム、1-ブチル-1-オクチルピぺリジニウム、1-ブチル-1-ドデシルピぺリジニウム、1,1-ジヘキシルピぺリジニウム、1-ヘキシル-1-オクチルピぺリジニウム、1-ドデシル-1-ヘキシルピぺリジニウム、1,1-ジオクチルピぺリジニウム、1-ドデシル-1-オクチルピぺリジニウム、1,1-ジドデシルピぺリジニウム等のピぺリジニウムカチオン等のピペリジニウムカチオン等が挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
式(c)で表されるピリジニウムカチオンの具体例としては、1-メチルピリジニウム、1-エチルピリジニウム、1-プロピルピリジニウム、1-ブチルピリジニウム、1-ペンチルピリジニウム、1-ヘキシルピリジニウム、1-オクチルピリジニウム、1-ドデシルピリジニウム、1-メチル-4-メチルピリジニウム、1-エチル-4-メチルピリジニウム、1-ブチル-4-メチルピリジニウム、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウム、1-オクチル-4-メチルピリジニウム、1-ドデシル-4-メチルピリジニウム、1-メチル-3-メチルピリジニウム、1-エチル-3-メチルピリジニウム、1-ブチル-3-メチルピリジニウム、1-ヘキシル-3-メチルピリジニウム、1-オクチル-3-メチルピリジニウム、1-ドデシル-3-メチルピリジニウム、1-メチル-2-メチルピリジニウム、1-エチル-2-メチルピリジニウム、1-ブチル-2-メチルピリジニウム、1-ヘキシル-2-メチルピリジニウム、1-オクチル-2-メチルピリジニウム、1-ドデシル-2-メチルピリジニウム等が挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
式(d)で表されるアンモニウムカチオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、ブチルエチルジメチルアンモニウム、エチルジメチルオクチルアンモニウム、エチルドデシルジメチルアンモニウム、ジブチルジメチルアンモニウム、ブチルジメチルオクチルアンモニウム、ブチルドデシルジメチルアンモニウム、ドデシルジメチルオクチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、ブチルジエチルメチルアンモニウム、ジエチルメチルオクチルアンモニウム、ドデシルジエチルメチルアンモニウム、ジブチルエチルメチルアンモニウム、ブチルエチルメチルオクチルアンモニウム、ブチルドデシルエチルメチルアンモニウム、エチルメチルジオクチルアンモニウム、ドデシルエチルメチルオクチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、ジブチルメチルオクチルアンモニウム、ジブチルドデシルメチルアンモニウム、ブチルメチルジオクチルアンモニウム、ブチルドデシルメチルオクチルアンモニウム、ブチルジドデシルメチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、ドデシルメチルジオクチルアンモニウム、ジドデシルメチルオクチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムカチオン; ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリオクチルアンモニウム、ベンジルエチルジメチルアンモニウム、ベンジルブチルジメチルアンモニウム、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジエチルメチルアンモニウム、ベンジルブチルエチルメチルアンモニウム、ベンジルエチルメチルオクチルアンモニウム、ベンジルエチルドデシルメチルアンモニウム、ベンジルジブチルメチルアンモニウム、ベンジルブチルメチルオクチルアンモニウム、ベンジルブチルドデシルメチルアンモニウム、ベンジルドデシルメチルオクチルアンモニウム、ベンジルジドデシルメチルアンモニウム、ベンジルブチルジエチルアンモニウム、ベンジルジエチルオクチルアンモニウム、ベンジルドデシルジエチルアンモニウム、ベンジルジブチルエチルアンモニウム、ベンジルブチルエチルオクチルアンモニウム、ベンジルブチルドデシルエチルアンモニウム、ベンジルエチルジオクチルアンモニウム、ベンジルドデシルエチルオクチルアンモニウム、ベンジルジブチルオクチルアンモニウム、ベンジルジブチルドデシルアンモニウム、ベンジルブチルジオクチルアンモニウム、ベンジルブチルドデシルオクチルアンモニウム、ベンジルブチルジドデシルアンモニウム、ベンジルドデシルジオクチルアンモニウム、ベンジルジドデシルオクチルアンモニウム等のベンジルアルキルアンモニウムカチオン; アリルトリメチルアンモニウム、アリルトリエチルアンモニウム、アリルトリブチルアンモニウム、アリルトリオクチルアンモニウム、アリルエチルジメチルアンモニウム、アリルブチルジメチルアンモニウム、アリルジメチルオクチルアンモニウム、アリルジメチルドデシルアンモニウム、アリルジエチルメチルアンモニウム、アリルブチルエチルメチルアンモニウム、アリルエチルメチルオクチルアンモニウム、アリルエチルドデシルメチルアンモニウム、アリルジブチルメチルアンモニウム、アリルブチルメチルオクチルアンモニウム、アリルブチルドデシルメチルアンモニウム、アリルドデシルメチルオクチルアンモニウム、アリルジドデシルメチルアンモニウム、アリルブチルジエチルアンモニウム、アリルジエチルオクチルアンモニウム、アリルドデシルジエチルアンモニウム、アリルジブチルエチルアンモニウム、アリルブチルエチルオクチルアンモニウム、アリルブチルドデシルエチルアンモニウム、アリルエチルジオクチルアンモニウム、アリルドデシルエチルオクチルアンモニウム、アリルジブチルオクチルアンモニウム、アリルジブチルドデシルアンモニウム、アリルブチルジオクチルアンモニウム、アリルブチルドデシルオクチルアンモニウム、アリルブチルジドデシルアンモニウム、アリルドデシルジオクチルアンモニウム、アリルジドデシルオクチルアンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルエチルメチルアンモニウム、ジアリルブチルメチルアンモニウム、ジアリルオクチルアンモニウム、ジアリルドデシルアンモニウム等のアリルアルキルアンモニウムカチオン; 2-アクリロイルオキシエチル-トリメチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-トリエチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-トリブチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-トリオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-エチルジメチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ブチルジメチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ジメチルオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ジメチルドデシルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ジエチルメチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ブチルエチルメチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-エチルメチルオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-エチルドデシルメチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ジブチルメチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ブチルメチルオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ブチルドデシルメチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ドデシルメチルオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ジドデシルメチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ブチルジエチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ジエチルオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ドデシルジエチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ジブチルエチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ブチルエチルオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ブチルドデシルエチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-エチルジオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ドデシルエチルオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ジブチルオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ジブチルドデシルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ブチルジオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ブチルドデシルオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ブチルジドデシルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ドデシルジオクチルアンモニウム、2-アクリロイルオキシエチル-ジドデシルオクチルアンモニウム等の2-アクリロイルオキシエチル-アルキルアンモニウムカチオン; 2-メタクリロイルオキシエチル-トリメチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-トリエチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-トリブチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-トリオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-エチルジメチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ブチルジメチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ジメチルオクチルアンモニウム、2-メタリロイルオキシエチル-ジメチルドデシルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ジエチルメチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ブチルエチルメチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-エチルメチルオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-エチルドデシルメチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ジブチルメチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ブチルメチルオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ブチルドデシルメチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ドデシルメチルオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ジドデシルメチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ブチルジエチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ジエチルオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ドデシルジエチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ジブチルエチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ブチルエチルオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ブチルドデシルエチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-エチルジオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ドデシルエチルオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ジブチルオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ジブチルドデシルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ブチルジオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ブチルドデシルオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ブチルジドデシルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ドデシルジオクチルアンモニウム、2-メタクリロイルオキシエチル-ジドデシルオクチルアンモニウム等の2-メタクリロイルオキシエチル-アルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
式(e)で表されるピロリウムカチオンの具体例としては、1,1-ジメチルピロリウム、1-エチル-1-メチルピロリウム、1-メチル-1-プロピルピロリウム、1-ブチル-1-メチルピロリウム、1-メチル-1-ヘキシルピロリウム、1-メチル-1-オクチルピロリウム、1-ドデシル-1-メチルピロリウム、1,1-ジエチルピロリウム、1-エチル-1-プロピルピロリウム、1-ブチル-1-エチルピロリウム、1-エチル-1-ヘキシルピロリウム、1-エチル-1-オクチルピロリウム、1-ドデシル-1-エチルピロリウム、1,1-ジプロピルピロリウム、1-ブチル-1-プロピルピロリウム、1-プロピル-1-ヘキシルピロリウム、1-プロピル-1-オクチルピロリウム、1-ドデシル-1-プロピルピロリウム、1,1-ジブチルピロリウム、1-ブチル-1-ヘキシルピロリウム、1-ブチル-1-オクチルピロリウム、1-ブチル-1-ドデシルピロリウム、1,1-ジヘキシルピロリウム、1-ヘキシル-1-オクチルピロリウム、1-ドデシル-1-ヘキシルピロリウム、1,1-ジオクチルピロリウム、1-ドデシル-1-オクチルピロリウム、1,1-ジドデシルピロリウム等のピロリウムカチオンが挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
式(f)で表されるカチオンの具体例としては、4,4-ジメチルモルホリニウム、4-エチル-4-メチルモルホリニウム、4-メチル-4-プロピルモルホリニウム、4-ブチル-4-メチルモルホリニウム、4-ヘキシル-4-メチルモルホリニウム、4-メチル-4-オクチルモルホリニウム、4-ドデシル-4-メチルモルホリニウム、4,4-ジエチルモルホリニウム、4-エチル-4-プロピルモルホリニウム、4-ブチル-4-エチルモルホリニウム、4-エチル-4-ヘキシルモルホリニウム、4-エチル-4-オクチルモルホリニウム、4-ドデシル-4-エチルモルホリニウム、4,4-ジプロピルモルホリニウム、4-ブチル-4-プロピルモルホリニウム、4-ヘキシル-4-プロピルモルホリニウム、4-オクチル-4-プロピルモルホリニウム、4-ドデシル-4-プロピルモルホリニウム、4,4-ジブチルモルホリニウム、4-ブチル-4-ヘキシルモルホリニウム、4-ブチル-4-オクチルモルホリニウム、4-ブチル-4-ドデシルモルホリニウム、4,4-ジヘキシルモルホリニウム、4-ヘキシル-4-オクチルモルホリニウム、4-ドデシル-4-ヘキシルモルホリニウム、4,4-ジオクチルモルホリニウム、4-ドデシル-4-オクチルモルホリニウム、4,4-ジドデシルモルホリニウム等のモルホリニウムカチオン; 4,4-ジメチルチオモルホリニウム、4-エチル-4-メチルチオモルホリニウム、4-メチル-4-プロピルチオモルホリニウム、4-ブチル-4-メチルチオモルホリニウム、4-ヘキシル-4-メチルチオモルホリニウム、4-メチル-4-オクチルチオモルホリニウム、4-ドデシル-4-メチルチオモルホリニウム、4,4-ジエチルチオモルホリニウム、4-エチル-4-プロピルチオモルホリニウム、4-ブチル-4-エチルチオモルホリニウム、4-エチル-4-ヘキシルチオモルホリニウム、4-エチル-4-オクチルチオモルホリニウム、4-ドデシル-4-エチルチオモルホリニウム、4,4-ジプロピルチオモルホリニウム、4-ブチル-4-プロピルチオモルホリニウム、4-ヘキシル-4-プロピルチオモルホリニウム、4-オクチル-4-プロピルチオモルホリニウム、4-ドデシル-4-プロピルチオモルホリニウム、4,4-ジブチルチオモルホリニウム、4-ブチル-4-ヘキシルチオモルホリニウム、4-ブチル-4-オクチルチオモルホリニウム、4-ブチル-4-ドデシルチオモルホリニウム、4,4-ジヘキシルチオモルホリニウム、4-ヘキシル-4-オクチルチオモルホリニウム、4-ドデシル-4-ヘキシルチオモルホリニウム、4,4-ジオクチルチオモルホリニウム、4-ドデシル-4-オクチルチオモルホリニウム、4,4-ジドデシルチオモルホリニウム等のチオモルホリニウムカチオン等が挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
上記アニオンAとしては、フッ素系アニオンが用いられる。フッ素系アニオンとしては、特に限定されず、例えば、テトラフルオロボレート(BF )、ヘキサフルオロホスフェート(PF )等の無機フッ素系アニオン; CFSO 等のRSO (式中、Rはフルオロアルキル基を表す)で示されるフルオロアルカンスルホネートアニオン; (CFSO(即ち、TFSIアニオン)、(CSO等の(RSO(式中、Rはフルオロアルキル基を表す)で示されるフルオロアルカンスルホニルイミドアニオン; (FSO(即ち、FSIアニオン); (CFSO等の(RSO(式中、Rはフルオロアルキル基を表す)で示されるフルオロアルカンスルホニルカルボアニオン; CFCO 、CCO 等のRCOO(式中、Rはフルオロアルキル基を表す)で示されるフルオロカルボキシラートアニオン酸等が挙げられる。これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
本実施形態に係るイオン性液体は、電位差滴定法における全アミン価が0.013以下である。全アミン価が0.013以下であることにより、高温環境下における着色を抑制することができ、長期にわたる色相安定性が得られる。イオン性液体の全アミン価は、試料(イオン性液体)1g中に含まれる全塩基性窒素を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数で表し、無名数とする。イオン性液体の全アミン価は0.010以下であることが好ましい。該全アミン価は小さいほど好ましいため、下限は特に限定されない。
【0031】
全アミン価が0.013以下のイオン性液体は、原料由来の不純物である1~3級アミンを除去することにより得ることができる。カチオンKを含む化合物とアニオンAを含む化合物とを反応させて得られるイオン性液体の製造方法において、1~3級アミンの除去方法としては、例えば、イオン性液体の反応生成後、または反応前の原料(即ち、カチオンKを含む化合物)の段階で、残存する1~3級アミンを酸と接触させて1~3級アミンを除去する方法が挙げられる。但し、全アミン価が0.013以下になるように1~3級アミンを除去することができれば、このような酸と接触させる方法に限定されるものではない。
【0032】
一実施形態に係るイオン性液体の製造方法は、カチオンKを含む化合物とアニオンAを含む化合物とを反応させてイオン性液体を生成させ、得られたイオン性液体を酸と接触させることを含む。例えば、下記工程1~3を含む方法が挙げられる。
・工程1:アミンと4級化剤を反応させてカチオンKを含む化合物を生成させる工程、
・工程2:得られたカチオンKを含む化合物とアニオンAを含む化合物とを反応させてイオン性液体を生成させる工程、および、
・工程3:得られたイオン性液体を酸と接触させる工程。
【0033】
工程1で用いるアミンとしては、上記カチオンKに対応するアミン、好ましくは3級アミンが挙げられる。アミンを4級化させる4級化剤としては、例えば、塩化メチル、臭化メチル、臭化オクチル等のアルキルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ジプロピル硫酸、ジヘキシル硫酸等のジアルキル硫酸、メタンスルホン酸プロピル、メタンスルホン酸メチル等のメタンスルホン酸アルキル、トリメチルリン酸等のトリアルキルリン酸、ベンジルハライド、グリシジルエーテル化合物、エピクロロヒドリン等が挙げられる。アミンと4級化剤を反応させることにより、カチオンKを含む化合物として第4級アンモニウム塩が得られる。
【0034】
工程2では、カチオンKを含む化合物とアニオンAを含む化合物とを反応させる。具体的には、アニオンAを含む化合物としてアニオンAのアルカリ金属塩を用い、上記4級アンモニウム塩を当モル量の該アルカリ金属塩と水または溶媒中で混合することにより、塩交換することができ、上記一般式(1)で表されるイオン性液体が得られる。
【0035】
工程3では、上記の反応後に分離したイオン性液体層を取り出し、これに酸を加えることにより、イオン性液体と酸とを接触させる。詳細には、イオン性液体と酸の水溶液とを混合することによりイオン性液体中に残存する1~3級アミンを酸と接触させて反応させ、その後、2層に分離させてイオン性液体層を取り出す。このような酸による処理と分離を1回、または2回以上繰り返した後、取り出したイオン性液体を水洗することにより、副生成物を除去することができる。
【0036】
イオン性液体と接触させる酸としては、特に限定されず、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸等のカルボン酸等が挙げられ、これをいずか一種または二種以上組み合わせてもよい。
【0037】
酸による処理と分離との繰り返し回数は、特に限定されず、イオン性液体の全アミン価が0.013以下になるまで酸による処理と分離を繰り返せばよい。
【0038】
イオン性液体と酸とを接触させる際の温度(即ち、酸による処理温度)は50℃以上であることが好ましい。50℃以上で処理することにより、残存する1~3級アミンの除去効率を高めることができ、上記の酸による処理と分離の繰り返し回数を低減することができる。酸による処理温度の上限は特に限定しないが、90℃以下であることが好ましい。
【0039】
上記のように水洗した後、例えば真空乾燥により実施形態に係るイオン性液体を得ることができる。
【0040】
上記実施形態では、カチオンKを含む化合物とアニオンAを含む化合物との反応後に酸を用いて1~3級アミンを除去することとしたが、酸による処理は、反応前の原料の段階で実施してもよく、反応前の原料の段階と反応後の双方の段階で実施してもよい。
【0041】
すなわち、他の実施形態に係るイオン性液体の製造方法は、アミンと4級化剤を反応させてカチオンKを含む化合物を生成させる工程と、得られたカチオンKを含む化合物を酸と接触させる工程と、次いでカチオンKを含む化合物とアニオンAを含む化合物とを反応させてイオン性液体を生成させる工程と、生成したイオン性液体を水洗する工程とを含む。
【0042】
カチオンKを含む化合物を酸と接触させる方法としては、アミンと4級化剤との反応によりカチオンKを含む化合物を生成させた後、カチオンKを含む化合物単体、または、メタノールやイソプロパノール等のアルコール、酢酸エチルや酢酸ブチル等のカルボン酸エステル、トルエン等の有機溶剤希釈条件下、もしくは水希釈条件下で、酸を加えることにより、カチオンKを含む化合物と酸とを接触させる。カチオンKを含む化合物中に残存する1~3級アミンを酸と接触させて反応させた副生成物は、カチオンKを含む化合物とアニオンAを含む化合物とを反応させてイオン性液体を生成させる工程の後、生成したイオン性液体を水洗する工程で除去される。
【0043】
カチオンKを含む化合物と酸とを接触させる際の温度(即ち、酸による処理温度)は50℃以上であることが好ましい。50℃以上で処理することにより、残存する1~3級アミンの除去効率を高めることができる。酸による処理温度の上限は特に限定しないが、90℃以下であることが好ましい。
【0044】
実施形態に係るイオン性液体の用途は、特に限定されず、種々の電気電子材料分野に用いることができる。本実施形態によれば、高温環境下における着色を抑制することができるため、各種電気化学デバイス、特には光学材料向けの用途(例えば、耐熱性が必要な車載用ディスプレイなど)に対し、高い性能を示すフッ素系イオン性液体を提供することができる。
【0045】
一実施形態において、該イオン性液体は、光学材料の添加剤として好ましく用いられる。該添加剤としては、例えば、帯電防止剤、導電付与剤、表面処理剤、難燃剤、可塑剤、殺菌剤、可溶化剤、CO吸収剤、潤滑剤などが挙げられ、これらの添加剤由来の経時的な着色を改善することができる。
【実施例0046】
以下、実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施例及び比較例において使用する原料を以下に示す。
【0048】
[評価方法]
・全アミン価:
試料を酢酸に溶解させ、分析サンプルを作製した。株式会社HIRANUMA製電位差滴定装置COM-1700A(株式会社HIRANUMA製指示電極:ガラス電極GE-101B、株式会社HIRANUMA製参照電極:4M-KCl内部電極RE-201、キシダ化学製滴定液:0.01mol/L過塩素酸/酢酸標準液)にて測定し、下記式により全アミン価を測定した。
全アミン価=56.11×滴定量(mL)×滴定液濃度0.01(mol/L)×滴定液の力価÷試料質量(g)
【0049】
・色数APHA:
試料を比色管にとり、石油製品測定装置OEM-2000(日本電色工業製)にてハーゼン色数(APHA)を測定した。
【0050】
[実施例1]
撹拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した500mL四つ口フラスコにn-オクチルブロマイド100g(0.52mol)とイソプロピルアルコール40gを仕込み、80℃に加熱した。そこにγ-ピコリン48.2g(0.52mol)をゆっくり滴下した。80℃でさらに6時間反応させた後、イオン交換水300gに加え溶解させた。60℃以下で減圧し、イソプロピルアルコールを除去した後、イオン交換水で希釈することで50質量%固形分の1-オクチル-4-メチルピリジニウム・臭化物塩の水溶液281.6gを得た。
【0051】
次いで、得られた1-オクチル-4-メチルピリジニウム・臭化物塩の水溶液281.6gに、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド107.8gをイオン交換水107.8gに溶解させた混合物を加え、室温で撹拌した。二層に分離した下層を分取した。下層に10質量%クエン酸水溶液を加え、50℃で撹拌し二層に分離した下層を再度分取した。この操作を3回実施した後、イオン交換水にて50℃で水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することで1-オクチル-4-メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド171.0gを得た。得られたイオン性液体は、カチオンKが式(2)-(c)で表され(R=n-オクチル、R=メチル、R,R,R,R=H)、アニオンAがFSIアニオンである。イオン性液体について、全アミン価を測定した。また、高温環境下による着色抑制効果を確認するために、85℃の雰囲気下に3週間放置する試験を実施し、試験前(製造直後)と試験後の色数APHAを測定し、両者の差(Δ)と、試験前の色数に対する試験後の色数の比(試験後/試験前)を算出した。結果を下記表1に示す。
【0052】
[実施例2]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄回数を2回とし、その他は実施例1と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、85℃×3週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例3]
実施例1において1-オクチル-4-メチルピリジニウム・臭化物塩の水溶液を得た後、硝酸を1質量%になるように加え、50℃での反応を実施し、このようにして酸処理した1-オクチル-4-メチルピリジニウム・臭化物塩の水溶液を用いた点、および、10質量%クエン酸水溶液での洗浄を実施しなかった点を除き、その他は実施例1と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、85℃×3週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表1に示す。
【0054】
[比較例1]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄を実施せず、その他は実施例1と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、85℃×3週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例4]
撹拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した200四つ口フラスコに1-メチルイミダゾール32.8g(0.40mol)とトルエン40mLを仕込み、40℃に加熱した。そこにジエチル硫酸61.6g(0.40mol)をゆっくり滴下した。50℃でさらに1時間反応させた後、イオン交換水150gに加え溶解させた。70℃以下で減圧し、トルエンを除去した後、イオン交換水で希釈することで50質量%固形分のイオン交換水で希釈することで50質量%固形分の1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・エチル硫酸塩の水溶液175.6gを得た。
【0056】
次いで得られた1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・エチル硫酸塩の水溶液175.6gに、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド81.4gをイオン交換水81.4gに溶解させた混合物を加え、室温で撹拌した。二層に分離した下層を分取した。下層に10質量%クエン酸水溶液を加え、50℃で撹拌し二層に分離した下層を再度分取した。この操作を3回実施した後、イオン交換水にて50℃で水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することで1-エチル-3-メチルイミダゾリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド75.7gを得た。得られたイオン性液体は、カチオンKが式(2)-(a)で表され(R=エチル、R=メチル、R=H)、アニオンAがFSIアニオンである。イオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、85℃×3週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例5]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄回数を2回とし、その他は実施例4と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、85℃×3週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表1に示す。
【0058】
[比較例2]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄を実施せず、その他は実施例4と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、85℃×3週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例6]
50質量%固形分のトリn-ブチルベンジルアンモニウム塩化物塩の水溶液200.0gに、酢酸エチル100mL、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド60.0gをイオン交換水60.0gに溶解させた混合物を加え、室温で撹拌した。二層に分離した下層を分取した。下層に10質量%クエン酸水溶液を加え、50℃で撹拌し二層に分離した下層を再度分取した。この操作を3回実施した後、イオン交換水にて50℃で水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することでアルキルベンジルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドを得た。得られたイオン性液体は、カチオンKが式(2)-(d)で表され(R=ベンジル、R、R、R=n-ブチル)、アニオンAがFSIアニオンである。イオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、85℃×3週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表1に示す。
【0060】
[比較例3]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄を実施せず、その他は実施例6と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、85℃×3週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例7]
n-オクチルブロマイド100g(0.52mol)の代わりにn-ヘキシルブロマイド85.9g(0.52mol)、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド107.8gの代わりにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド141.2gを用いた以外は実施例2と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体は、カチオンKが式(2)-(c)で表され(R=n-ヘキシル、R=メチル、R,R,R,R=H)、アニオンAがTFSIアニオンである。イオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、115℃×2週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を下記表2に示す。
【0062】
[比較例4]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄を実施せず、その他は実施例7と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、115℃×2週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表2に示す。
【0063】
[実施例8]
カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド81.4gの代わりにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド106.6gを用いた以外は実施例4と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体は、カチオンKが式(2)-(a)で表され(R=エチル、R=メチル、R=H)、アニオンAがTFSIアニオンである。イオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、115℃×2週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を下記表2に示す。
【0064】
[実施例9]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄回数を2回とし、その他は実施例8と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、115℃×2週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表2に示す。
【0065】
[比較例5]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄を実施せず、その他は実施例8と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、115℃×2週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表2に示す。
【0066】
[実施例10]
50質量%固形分のトリn-ブチルベンジルアンモニウム塩化物塩の水溶液200.0gの代わりに50質量%固形分のトリn-ブチルメチルアンモニウム塩化物塩の水溶液151.2g、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド60.0gの代わりにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド92.1gを用い、10質量%クエン酸水溶液での洗浄回数を3回とした以外は実施例6と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体は、カチオンKが式(2)-(d)で表され(R、R、R=n-ブチル、R=メチル)、アニオンAがTFSIアニオンである。イオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、115℃×2週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表2に示す。
【0067】
[実施例11]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄回数を2回とし、その他は実施例10と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、115℃×2週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表2に示す。
【0068】
[比較例6]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄を実施せず、その他は実施例10と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について、全アミン価を測定するとともに、115℃×2週間の試験前後での色数APHAを測定した。結果を表2に示す。
【0069】
[比較例7]
10質量%クエン酸水溶液での洗浄操作を50℃から25℃に変更した以外は実施例2と同様の操作でイオン性液体を調製した。得られたイオン性液体について全アミン価を測定した結果、0.029であり、実施例2と比べて洗浄効果は低下した。洗浄回数を増やせば、全アミン価を0.013以下にすることはできると考えられるが、25℃で洗浄する場合、50℃で洗浄する場合に比べて洗浄効率が低いことが分かった。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1および表2に示すように、実施例1~11の酸洗浄を実施したイオン性液体は、比較例1~6の酸洗浄を実施していないイオン性液体と比べて、いずれも高温下で長期間保存後での色数変化が小さく、着色が抑制されていた。その傾向はイオン性液体の全アミン価(微量に残存する1~3級アミン)に関係しており、全アミン価を0.013以下にすることで着色の経時変化を抑制する効果が得られた。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンKおよびアニオンAの対よりなる下記一般式(1)で表されるイオン性液体であって、前記カチオンKが下記一般式(2)で表される群から選択される1種又は2種以上であり、前記アニオンAフルオロアルカンスルホニルイミドアニオンまたは(FSO の少なくとも一方であり、電位差滴定法における全アミン価が0.013以下である、フッ素系イオン性液体。
一般式(1):K
一般式(2):
【化1】
式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換されているかもしくは非置換の炭素数1~20の飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状もしくは環状の脂肪族炭化水素基、置換されているかもしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素数7~31のアリールアルキル基であり、但しR~Rはそれぞれ独立に水素原子でもよく、前記脂肪族炭化水素基、前記アリール基または前記アリールアルキル基が置換されている場合は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アシルオキシ基、アシル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、およびトリメチルシリル基からなる群から選択される少なくとも一種で置換されており、nは1~5の整数であり、式(f)で表される化合物は、Xで表される酸素原子または硫黄原子を1つ以上含む4~7員環の飽和もしくは不飽和の複素環式化合物であり、式(d)において、R ~R の少なくとも1つが、置換されているかもしくは非置換の炭素数6~30のアリール基または置換されているかもしくは非置換の炭素数7~31のアリールアルキル基である。
【請求項2】
光学材料の添加剤として使用される、請求項1に記載のフッ素系イオン性液体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフッ素系イオン性液体の製造方法であって、
前記カチオンKを含む化合物と前記アニオンAを含む化合物とを反応させてフッ素系イオン性液体を生成させ、得られたフッ素系イオン性液体を酸と接触させることを含む、フッ素系イオン性液体の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素系イオン性液体を50℃以上で酸と接触させる、請求項3に記載のイオン性液体の製造方法。
【請求項5】
カチオンK およびアニオンA の対よりなる下記一般式(1)で表されるイオン性液体であって、前記カチオンK が下記一般式(2)で表される群から選択される1種又は2種以上であり、前記アニオンA がフッ素系アニオンであり、電位差滴定法における全アミン価が0.013以下である、フッ素系イオン性液体の製造方法であって、
アミンと4級化剤を反応させて前記カチオンKを含む化合物を生成させ、前記カチオンKを含む化合物を酸と接触させ、その後、前記カチオンKを含む化合物と記アニオンAを含む化合物とを反応させてフッ素系イオン性液体を生成させることを含む、フッ素系イオン性液体の製造方法。
一般式(1):K
一般式(2):
【化2】
式(2)中、R ~R は、それぞれ独立に、置換されているかもしくは非置換の炭素数1~20の飽和もしくは不飽和の直鎖状、分枝状もしくは環状の脂肪族炭化水素基、置換されているかもしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換されているかもしくは非置換の炭素数7~31のアリールアルキル基であり、但しR ~R はそれぞれ独立に水素原子でもよく、前記脂肪族炭化水素基、前記アリール基または前記アリールアルキル基が置換されている場合は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アシルオキシ基、アシル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、およびトリメチルシリル基からなる群から選択される少なくとも一種で置換されており、nは1~5の整数であり、式(f)で表される化合物は、Xで表される酸素原子または硫黄原子を1つ以上含む4~7員環の飽和もしくは不飽和の複素環式化合物である。
【請求項6】
前記カチオンKを含む化合物を50℃以上で酸と接触させる、請求項5に記載のフッ素系イオン性液体の製造方法。