IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特開-電磁波加熱装置 図1
  • 特開-電磁波加熱装置 図2
  • 特開-電磁波加熱装置 図3
  • 特開-電磁波加熱装置 図4
  • 特開-電磁波加熱装置 図5
  • 特開-電磁波加熱装置 図6
  • 特開-電磁波加熱装置 図7
  • 特開-電磁波加熱装置 図8
  • 特開-電磁波加熱装置 図9
  • 特開-電磁波加熱装置 図10
  • 特開-電磁波加熱装置 図11
  • 特開-電磁波加熱装置 図12
  • 特開-電磁波加熱装置 図13
  • 特開-電磁波加熱装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157484
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】電磁波加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/80 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
H05B6/80 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061739
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥野 大樹
【テーマコード(参考)】
3K090
【Fターム(参考)】
3K090AA12
3K090AB20
3K090EB40
3K090PA04
(57)【要約】
【課題】加熱炉の外部へのマイクロ波の漏れを抑制する。
【解決手段】電磁波加熱装置10は、発振器によって内部に電磁波が出力される加熱炉の筐体13Aと、筐体13Aに形成された開口部13Aaを介して筐体13Aの内外に移動可能に設けられたデシカントロータ11と、を備え、デシカントロータ11は、貫通孔11Aが形成され、貫通孔11Aが筐体13Aの開口部13Aaに掛かって配置される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振器によって内部に電磁波が出力される加熱炉の筐体と、
前記筐体に形成された開口部を介して前記筐体の内外に移動可能に設けられた被加熱体と、
を備え、
前記被加熱体は、貫通孔が形成され、前記貫通孔が前記筐体の前記開口部に掛かって配置される、電磁波加熱装置。
【請求項2】
前記筐体から外部に延びて筒形状に形成されて前記開口部を含み構成され前記被加熱体の一部を囲う鍔部材をさらに備え、
前記被加熱体は、前記鍔部材がなす前記開口部に前記貫通孔が掛かって配置される、請求項1に記載の電磁波加熱装置。
【請求項3】
前記被加熱体は、前記筐体と前記鍔部材との連通部に前記貫通孔の開口縁が掛かって配置される、請求項2に記載の電磁波加熱装置。
【請求項4】
前記鍔部材は、筒体の内径において前記被加熱体を中央に配置する、請求項2または請求項3に記載の電磁波加熱装置。
【請求項5】
前記鍔部材は、前記被加熱体を囲む内面が前記被加熱体の外面と平行に配置される、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の電磁波加熱装置。
【請求項6】
前記鍔部材は、前記被加熱体を囲む内面と前記被加熱体の外面との間に隙間を有する、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の電磁波加熱装置。
【請求項7】
前記鍔部材は、前記被加熱体を囲む内面と前記被加熱体の外面との間に誘電体が設けられる、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の電磁波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電磁波加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、被加熱物にマイクロ波(電磁波)を放射して誘電加熱する電磁波加熱装置が開示されている。この電磁波加熱装置は、マイクロ波を伝送する伝送部から伝送されるマイクロ波を加熱炉(加熱室)に放射する導波管構造アンテナを備え、導波管構造アンテナの導波管構造を形成する壁面にマイクロ波吸出し開口が形成されている。マイクロ波吸出し開口は、その最大長さが、マイクロ波発生部が発生させるマイクロ波の波長の1/4以上1/2以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/171152号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、マイクロ波の波長の1/4より小さい開口は、マイクロ波を漏らさないことが知られている。しかし、マイクロ波の放射時に加熱炉の内外にマイクロ波の波長の1/4を超える寸法の被加熱体を出し入れする必要が生じた場合、加熱炉にマイクロ波の波長の1/4を超える寸法の開口を設ける必要がある。従って、このような構成であっても、安全性向上のため、加熱炉の外部へのマイクロ波の漏れを抑えることが望まれる。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、加熱炉の外部へのマイクロ波の漏れを抑制することのできる電磁波加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の電磁波加熱装置は、発振器によって内部に電磁波が出力される加熱炉の筐体と、筐体に形成された開口部を介して筐体の内外に移動可能に設けられた被加熱体と、を備え、被加熱体は、貫通孔が形成され、貫通孔が前記筐体の前記開口部に掛かって配置される。
【発明の効果】
【0007】
一態様の電磁波加熱装置によれば、加熱炉の外部へのマイクロ波の漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る電磁波加熱装置が適用される再生装置の構成図である。
図2図2は、実施形態1に係る電磁波加熱装置の外観斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る電磁波加熱装置の断面図である。
図4図4は、実施形態1に係る電磁波加熱装置の断面図である。
図5図5は、実施形態1に係る電磁波加熱装置の断面図である。
図6図6は、実施形態1に係る電磁波加熱装置の断面図である。
図7図7は、実施形態1に係る電磁波加熱装置の変形例の断面図である。
図8図8は、実施形態1に係る電磁波加熱装置の変形例の断面図である。
図9図9は、実施形態2に係る電磁波加熱装置の断面図である。
図10図10は、実施形態2に係る電磁波加熱装置の断面図である。
図11図11は、実施形態2に係る電磁波加熱装置の断面図である。
図12図12は、実施形態2に係る電磁波加熱装置の断面図である。
図13図13は、実施形態2に係る電磁波加熱装置の作用をあらわすグラフである。
図14図14は、実施形態に係る再生装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する電磁波加熱装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によって、本願の開示する再生装置が限定されるものではない。
【0010】
[電磁波加熱装置の適用例]
図1は、実施形態に係る電磁波加熱装置が適用される再生装置の構成図である。実施形態の電磁波加熱装置1,10は、図1に示すように、再生装置100に適用できる。再生装置100は、空気中の水分子を吸着し、吸着した水分子を加熱して水蒸気にし、水蒸気を凝縮させて水分子に再生する。この再生装置100は、デシカントロータ11と、送風用ファン12と、加熱炉13と、凝縮器14と、を含む。
【0011】
デシカントロータ11は、円板形状の中心部に板厚方向に貫通孔11Aが形成された円環形状である。デシカントロータ11は、板厚方向に通気空洞が設けられた多孔質ハニカム構造に形成されている。デシカントロータ11は、支持部11Bによって、貫通孔11Aを中心としてデシカントロータ11の厚み方向に延びる軸の廻りに回転自在に支持されている。デシカントロータ11は、図示しない駆動手段によって回転駆動される。このデシカントロータ11は、多孔質ハニカム構造が耐熱性を有する紙(ガラスペーパーなど)で形成され、多孔質ハニカム構造の表面にデシカント材が付着されている。デシカント材は、多数の細孔を有し、その細孔に空気が通過する際、空気中に含まれる水分子を吸着する。このように、被加熱体であるデシカントロータ11は、水分子を吸着する吸着部材として構成される。
【0012】
デシカントロータ11を回転自在に支持する支持部11Bは、図14に示すように、デシカントロータ11の貫通孔11Aに挿通されてデシカントロータ11を回転可能に支持する回転支持部11Baを有している。支持部11Bは、デシカントロータ11の板厚方向に空気を通過させるように貫通して形成されている。従って、支持部11Bは、デシカントロータ11に空気を案内する案内部材としても構成されている。デシカントロータ11は、その外周に歯車11Caが設けられる。支持部11Bは、歯車11Caに噛み合う駆動歯車11Cbを駆動するモータ11Ccが設けられる。これにより、デシカントロータ11は、支持部11Bによって回転自在に支持される。また、支持部11Bは、図には明示しないが、デシカントロータ11に向けて空気を通過させる部分にフィルタが設けられ、デシカントロータ11に向けて案内する空気に含まれる、例えば、PM(Particulate Matter)2.5、砂及び花粉などを捕捉できるように構成されていてもよい。
【0013】
送風用ファン12は、支持部11Bを介してデシカントロータ11に向けて空気を送る。送風用ファン12によって送られた空気は、デシカントロータ11の多孔質ハニカム構造を通過し、その過程で水分子がデシカント材に吸着される。
【0014】
加熱炉13は、デシカントロータ11の一部であって、実施形態ではデシカントロータ11の円環形状の上半部を囲む金属(非磁性金属)、または非金属の少なくとも内面に金属メッキなどにより金属膜が施された筐体13Aで構成される。筐体13Aは、回転するデシカントロータ11の一部が通過して出し入れできる開口部13Aaが形成されている。デシカントロータ11は、自身の回転により開口部13Aaを介して筐体13Aの内部に一部が連続して通過する。即ち、デシカントロータ11は、筐体13Aに形成された開口部13Aaを介して筐体13Aの内外に移動可能に設けられている。デシカントロータ11の一部とは、例えば、デシカントロータ11の円環形状の半部である。加熱炉13は、2,4GHzから2.5GHzなどの特定の周波数帯のマイクロ波(電磁波)を出力する発振器13Bを有する。加熱炉13は、発振器13Bによって筐体13Aの内部にマイクロ波が出力される。発振器13Bが出力するマイクロ波によって加熱炉13の筐体13Aの内部のデシカントロータ11が加熱される。この加熱により、デシカントロータ11のデシカント材に吸着された水分子や、デシカントロータ11の多孔質ハニカム構造に付着した水分子が加熱され蒸発する。
【0015】
発振器13Bは、マイクロ波の発振方式が例えばシリコン(Si)半導体、窒化ガリウム(GaN)半導体などを用いた半導体方式の発振器であり、ISM(Industrial Scientific and Medical)バンドとして認められている915MHzまたは2450MHzなど特定の周波数のマイクロ波を出力できる。発振器13Bは、半導体方式でマイクロ波を出力することから、出力するマイクロ波の周波数の制御が可能である。なお、発振器13Bは、マグネトロン方式によりマイクロ波を発生させるものであってもよい。
【0016】
凝縮器14は、筐体13Aの外部に配置され、凝縮部14Aと、回収部14Bと、循環部14Cと、再生ファン14Dとを含む。凝縮部14Aは、加熱炉13の筐体13Aの一側に形成された接続開口部13Aeにパッキン14Eを介して接続されている。回収部14Bは、凝縮部14Aに接続されている。循環部14Cは、加熱炉13の筐体13Aの他側に形成された接続開口部13Adeパッキン14Eを介して接続され、かつ回収部14Bに接続されている。従って、凝縮器14は、凝縮部14A、回収部14B、および循環部14Cが、加熱炉13の筐体13Aを途中に介在して一連の循環経路を構成する。再生ファン14Dは、回収部14Bと循環部14Cとの間に設けられている。再生ファン14Dは、凝縮部14A、回収部14B、循環部14C、および筐体13Aがなす一連の循環経路に循環流を生じさせる。ここで、凝縮部14Aが接続された筐体13Aの一側と、循環部14Cが接続された筐体13Aの他側とは、デシカントロータ11の円板形状の板厚方向で対向する部分である。従って、再生ファン14Dによる循環流は、加熱炉13の筐体13Aの内部において、デシカントロータ11の多孔質ハニカム構造を通過するように流通する。上述したように、加熱炉13の筐体13Aの内部では、マイクロ波によって加熱されたデシカントロータ11の水分子が蒸発する。蒸発した水蒸気は、循環流によって凝縮部14Aに至り凝縮して水になる。なお、送風用ファン12によってデシカントロータ11に向けて送られる空気は、凝縮部14Aの周りにも吹き付けられ凝縮部14Aを冷却することで、凝縮部14Aで水蒸気から水への凝縮促進にも用いられる。また、凝縮した水は、凝縮部14Aから回収部14Bに至り、回収部14Bの回収孔14Baから循環経路の外部に排出される。このように、実施形態の再生装置100は、空気中の水分子を吸着し、吸着した水分子を加熱して水蒸気にし、水蒸気を凝縮して水に再生する。
【0017】
[電磁波加熱装置の実施形態1]
図2は、実施形態1に係る電磁波加熱装置の外観斜視図である。図3から図6は、実施形態1に係る電磁波加熱装置の断面図である。
【0018】
実施形態1の電磁波加熱装置1は、上述したデシカントロータ11と、送風用ファン12と、加熱炉13と、を含み構成される。具体的に、実施形態1の電磁波加熱装置1は、デシカントロータ11と、加熱炉13の筐体13Aとに関係する。
【0019】
加熱炉13の筐体13Aは、鍔部材13Abを有する。ここで、筐体13Aは、6つの壁板からなる直方体形状に形成され、隣接する壁板が直角に交わる直六面体として形成されている。鍔部材13Abは、筐体13Aの1つの壁板から外部に延びる筒体をなしている。鍔部材13Abは、筐体13Aの壁板の一部が開口した連通部13Acを介して筐体13Aに接続されることで、筐体13Aの壁板の一部を外部に開放するように形成されている。そして、鍔部材13Abは、筐体13Aの1つの壁板から外部に延びる筒体の先端において、上述した筐体13Aの開口部13Aaを構成する。このように、鍔部材13Abは、筐体13Aに形成された開口部13Aaを含み、この開口部13Aaを介してデシカントロータ11を筐体13Aの内外に移動可能に配置する。鍔部材13Abは、筒体によりデシカントロータ11の一部を囲む。鍔部材13Abは、図2に示す形態では、筐体13Aの壁板から矩形状に延びる筒体をなしている。鍔部材13Abの筒体は、矩形状に限らず、楕円形状や菱型形状に形成されてもよい。また、鍔部材13Abの筒体は、矩形状の角部が円弧状の加工や面取り加工を施されていてもよい。
【0020】
筒体である鍔部材13Abは、小寸法taの内径と、大寸法tbの内径とを有する。具体的に、鍔部材13Abは、図2に示すように、長方形状の筒体に形成され、その短辺がなす差し渡しの短い側の筒体の内径が小寸法taであり、長辺がなす差し渡しの長い側の筒体の内径が大寸法tbである。また、図には明示しないが、鍔部材13Abは、筒体が楕円形状の場合、その差し渡しの短い側の筒体の内径が小寸法taであり、差し渡しの長い側の筒体の内径が大寸法tbである。
【0021】
このように構成される鍔部材13Abは、筐体13Aの内部に放射される電磁波の管内波長λgに対し、筒体の内径の小寸法taがλg/4以下に形成され、筒体の内径の大寸法tbがλg/4を超えて形成されている。また、鍔部材13Abは、筐体13Aの外部に延びる長さLが、ta≦L≦λg/4の範囲を満たす。
【0022】
尚、λgは矩形導波管断面の1辺をa、1辺をbとした場合、それらと自由空間波長λの関係によって導き出される管内波長である。
詳しくは、次の数式(5)(6)で算出できる。
【数1】
【数2】
【0023】
数式(6)で、aとbによってカットオフ波長λc(カットオフ周波数fc=1/λcという場合もある)が決まる。これは、管内を伝搬することができる電磁波の波長を示しており、λcより大きい波長の電磁波は管内を伝搬しない。そして、このλcを用いて、数式(1)からλgが導出されることが既知である。ここで、mとnは0以上の整数であり、電場モードによって変わる変数である。例えば、TEmnモードと表現され、TE101、TE102、TE103の各モードは、全てm=1、n=0ということになる。TE101モードにおいては、寸法aだけが関わるという意味である。また、3つ目の数値は、導波管の軸方向(電磁波進行方向)に関わる数値であり、カットオフ周波数や管内波長には関係が無い。
【0024】
このように構成される実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、鍔部材13Abの筐体13Aから外部に延びる長さLを、電磁波の管内波長λgおよび鍔部材13Abの筒体の内径の小寸法taによって規定することで、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制できる。この結果、実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、安全性を向上できる。
【0025】
実施形態1の電磁波加熱装置1において、鍔部材13Abの筐体13Aから外部に延びる長さLと、鍔部材13Abの筒体の内径の小寸法taの変化による電磁波の漏れ量は、指数関数に比例する関係であることを発見した。鍔部材13Abの長さLが長いほど、電磁波の漏れ量は大きく減っていく。
【0026】
また、指数関数式(a*eb*x)のaに当たる数値は、筐体13Aの内部に放射される電力Pにほぼ比例することが分かり、bに当たる数値は、鍔部材13Abの筒体の内径の小寸法taと対数の関係にあることを見出し、下記数式(3)に示す近似式とすることができる。即ち、鍔部材13Abの長さLは、下記の数式(1)および数式(2)から変換されるを数式(3)の範囲を満たす。
Leak≧P*0.69344*e(A*L)・・・(1)
A=0.2426*Logta-0.993・・・(2)
L≧Log(SLeak/(P*0.69344))/A・・・(3)
Leak≧0・・・(4)
数式(1)および数式(3)において、SLeakは鍔部材13Abから筐体13Aの外部に漏れる電磁波の漏れ量、Pは放射される電磁波の照射電力である。また、taについて、ta<λg/2の場合とする。SLeakは、基準とする法規制や設計思想に応じて柔軟に対応することが好ましく、どのような数値であっても上式に当てはめて得たL以上の寸法に設計することで漏れにくい構造にすることができる。上記数式(1)から数式(3)は、シミュレーションによって、電磁波の漏れ量SLeakを所定範囲に抑えるように、P、L、taの数値を算出した。
【0027】
ここで、製品の寸法等に制約がないのであれば、Lはλg/4を超える寸法であっても漏れを防止する観点では特に問題はない。但し、最小限の構造物寸法で設計を行うため、Lの長さは最適な範囲に定める。ただし、この時、電磁波漏れの起点となる位置から5cmの地点で許容可能な漏れ量SLeak[mW/cm]を1[mW/cm]としているという前提条件があり、許容可能な漏れ量が変わった場合は、ta>Lとなる場合もある。例えば、電気用品安全法によれば、機体表面から5cm離れたあらゆる箇所で1mW/cm以下と規定されているため、その基準に則った場合はta≦L<λg/4に含まれると考えられる。一方で、電波法施工規則によると、漏れ量は5mW/cmであることが規定されているため、この基準に則った場合は、Lの設計に余裕が生まれ、短くしても問題ない場合が出てくる。その結果ta>Lとなるケースもある。
【0028】
また、電気用品安全法に則った設計においても、製品の機体から5cmと、電磁波漏れの起点となる位置から5cmが一致しない場合も考えられる。通常、加熱炉部分は製品の内部部品として構成されることが多いため、製品の機体から5cmの位置は、電磁波漏れの起点となる位置から10cmの場合もあり、20cmの場合の可能性もある。そういった場合もやはり、Lの設計に余裕が生まれ、短くしても問題ない場合がある。あるいは、電磁波の照射電力Pが50Wなど比較的小さい場合においても、Lの設計に余裕が生まれ、ta>Lとなり得ることがある。これは、上記数式(1)から数式(3)にて算出が可能である。従って、実施形態1の電磁波加熱装置1は、筐体13Aの内部に放射される電磁波の管内波長λgに対し、鍔部材13Abがなす筒体の内径の小寸法taがλg/4以下に形成され、筒体の内径の大寸法tbがλg/4を超えて形成され、鍔部材13Abは、筐体13Aの外部に延びる長さLが、ta≦Lの範囲を満たすことで、上記効果を奏することが可能である。また、鍔部材13Abは、筒体の内径の小寸法をtaとし、筒体の内径の大寸法をtbとして、筒体の内径の小寸法taが電磁波の管内波長λgに対してλg/4以下に形成され、筒体の内径の大寸法tbがλg/4を超えて形成され、筐体13Aから外部に延びる長さLが、鍔部材13Abの端面であって加熱炉13の筐体13Aの開口部13Aaとその外部の大気との界面から5cmの位置における任意の許容したい漏れ量SLeakを定めたとき、それ以下とするための近似式として与えられた、上記式(1)-(3)という関係になっていてもよい。即ち、任意の漏れ量以下にしたい場合に、近似式を用いて長さLを決めることができる。
【0029】
更に付け加えると、半導体方式の発振器が出力するマイクロ波とマグネトロン方式の発振器が出力するマイクロ波では含まれる周波数成分に違いがある。半導体方式の発振器では任意の周波数成分だけを出力させるのが容易であるが、マグネトロン方式の発振器では任意の周波数成分に加えてそれ以外の周波数成分も出力されてしまうのが一般的である。LEDと同様で、半導体方式の発振器は非常に鋭い発振スペクトラムを持つ特性であり、その発信スペクトラムの波長を用いた計算で寸法Lを決めるための設計を行うことは容易であるが、マグネトロン方式の発振器はブロードな発振周波数帯域幅(例えば、2.40GHzから2.50GHz)を持つ特性がある。このため、中心周波数(例えば2.45GHz)の波長を用いた計算で寸法Lを算出した場合は電磁波の漏れを抑制するには十分ではない場合があると考えられる。その場合、少なくともその周波数範囲において最も漏れやすくなると考えられる2.50GHz(高周波=波長小)である波長を管内波長λgとして扱い、漏れを防止するための鍔構造寸法Lの設計に反映する。
【0030】
また、実施形態1の電磁波加熱装置1では、図3に示すように、鍔部材13Abは、筒体の内径においてデシカントロータ11を中央に配置することが好ましい。即ち、鍔部材13Abの延びる方向において、鍔部材13Abおよびデシカントロータ11の中心線Cが一致する。
【0031】
この実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、鍔部材13Abの中央にデシカントロータ11を配置することで、デシカントロータ11の外面11Cと、鍔部材13Abの内面13Adとの間隔tcがデシカントロータ11の両外面側で均等になる。このため、この実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、加熱炉13の外部への電磁波の漏れをデシカントロータ11の両外面側でそれぞれ同等にできる。この結果、実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、デシカントロータ11の両外面側で加熱炉13の外部への電磁波の漏れが同等になることで、デシカントロータ11の両外面側で誘電率のバランスが保たれて加熱炉13の外部へ漏れるエネルギーを打ち消し合うため、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果が得られる。なお、加熱炉13の内部は、その中心において電界強度が最も強く、当該中心にデシカントロータ11を置くことで、デシカントロータ11の加熱効率が高まり、そのうえで、中央にデシカントロータ11が中央となるように鍔部材13Abを配置することで、加熱効率を確保しつつ電磁波の漏れを抑制できる。
【0032】
また、実施形態1の電磁波加熱装置1では、図3に示すように、鍔部材13Abは、デシカントロータ11を囲む内面13Adがデシカントロータ11の外面11Cと平行に配置されることが好ましい。
【0033】
この実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、鍔部材13Abの内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとが互いに平行に配置されることで、相互間の間隔tcが鍔部材13Abの延びる方向で均等になる。この結果、この実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、デシカントロータ11の外面側で誘電率のバランスが保たれ、デシカントロータ11の両外面側で加熱炉13の外部へ漏れるエネルギーを打ち消し合う作用が高まるため、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果が得られる。
【0034】
なお、実施形態1の電磁波加熱装置1は、図4および図5に示すように、鍔部材13Abの延びる筒体の先端に向かって筐体13Aから遠ざかるほど窄まるように構成されていてもよい。図4では、鍔部材13Abが筐体13Aから遠ざかるほど連続して窄まる形態を示し、図5では、鍔部材13Abが筐体13Aから遠ざかるほど段階的に窄まる形態を示している。鍔部材13Abの延びる筒体の先端に向かって筐体13Aから遠ざかるほど広がる形態は、窄まる形態と比較して加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果が低く、窄まる形態にすることが好ましい。なお、図4および図5に示す形態では、上述した小寸法taは、鍔部材13Abの延びる筒体の先端における寸法とする。
【0035】
また、実施形態1の電磁波加熱装置1では、図3から図5に示すように、鍔部材13Abは、デシカントロータ11を囲む筒体の内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとの間に隙間tcを有することが好ましい。
【0036】
この実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、鍔部材13Abの筒体の内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとの間に隙間tcがあることで、当該間に空気層が生じる。デシカントロータ11が移動するには、隙間tcは必要である。隙間tcは、鍔部材13Abの筒体の内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとの間で誘電率のバランスを設定できるため、隙間tcの設定によりデシカントロータ11の両外面側で加熱炉13の外部へ漏れるエネルギーを打ち消し合う作用が得られる。この結果、この実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果が顕著に得られる。隙間tcは、デシカントロータ11の誘電率など材料特性に応じて、その寸法の最適化を図ることが望ましい。例えば誘電率が1である空気の場合は、間隔tcを0.1mm~3.0mmで設計することが好ましいが、誘電率が2のテフロン(登録商標)を充填すると、4mm程度まで間隔tcが許容可能になる。別の見方をすると間隔tcがどちらの場合も1mmで同じ場合においては、漏れ量はテフロン(登録商標)を充填している方が50%程度低減できることが解析から分かっている。
【0037】
また、実施形態1の電磁波加熱装置1では、図6に示すように、鍔部材13Abは、デシカントロータ11を囲む筒体の内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとの間に誘電体15が設けられることが好ましい。誘電体15は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂がある。
【0038】
この実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、鍔部材13Abの筒体の内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとの間に誘電体15があることで、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果が顕著に得られる。なお、誘電体15は、図6に示すように、上述した隙間tcの範囲内に設けられ、鍔部材13Abの筒体の内面13Adに設けられることで、デシカントロータ11の外面11Cとの間に空隙が形成されることが、デシカントロータ11の移動を円滑に行える。しかも、隙間tcの設定により、誘電率のバランスを設定でき、デシカントロータ11の両外面側で加熱炉13の外部へ漏れるエネルギーを打ち消し合う作用が得られる。
【0039】
図7および図8は、実施形態1に係る電磁波加熱装置の変形例の断面図である。
【0040】
図7および図8に示す形態の電磁波加熱装置1において、デシカントロータ11は、加熱炉13における筐体13Aの隣接する2つの壁板を跨いで筐体13Aの内部に一部が連続して通過し、筐体13Aの内外に移動可能に設けられている。鍔部材13Abは、デシカントロータ11が跨ぐ筐体13Aの隣接する2つの壁板に跨ってL字形状に形成されている。即ち、鍔部材13Abは、隣接する2つの壁板からデシカントロータ11の外面11Cに沿うように筐体13Aの壁板から外部に延びる筒体をなしている。鍔部材13Abは、筐体13Aの隣接する2つの壁板に繋がって開放された連通部13Acを介して筐体13Aに接続されることで、筐体13Aの隣接する壁板に繋がって外部に開放するように形成されている。そして、鍔部材13Abは、筐体13Aの壁板から外部に延びる筒体の先端において、筐体13Aの開口部13Aaを構成する。このように、鍔部材13Abは、筐体13Aに形成された開口部13Aaを含み、この開口部13Aaを介してデシカントロータ11を筐体13Aの内外に移動可能に配置する。鍔部材13Abは、筒体によりデシカントロータ11の一部を囲む。
【0041】
そして、鍔部材13Abは、筒体の内径が小寸法taの部分と、大寸法tbの部分とを有する。鍔部材13Abは、デシカントロータ11を挟むように、デシカントロータ11の各外面11Cにそれぞれ対向する内面13Adを有し、両内面13Adの間の筒体の内径が小寸法taであり、L字形状に沿う筒体の内径が大寸法tbである。
【0042】
このように構成される鍔部材13Abは、筐体13Aの内部に放射される電磁波の管内波長λgに対し、筒体の内径の小寸法taがλg/4以下に形成され、筒体の内径の大寸法tbがλg/4を超えて形成されている。また、鍔部材13Abは、筐体13Aの外部に延びる長さLが、ta≦Lの範囲を満たし、ta≦L≦λg/4の範囲を満たすことが好ましい。
【0043】
また、図7および図8に示す形態の電磁波加熱装置1は、図3から図6に示す形態と同様に構成される。
【0044】
従って、図7および図8に示す形態の電磁波加熱装置1によれば、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制できる。さらに、図7および図8に示す形態の電磁波加熱装置1によれば、図3から図6に示す形態と同様の効果が得られる。
【0045】
[電磁波加熱装置の実施形態2]
図9から図12は、実施形態2に係る電磁波加熱装置の断面図である。
【0046】
実施形態2の電磁波加熱装置10は、上述した実施形態1の電磁波加熱装置1と同様の構成であり、デシカントロータ11の配置を規定したものである。従って、実施形態2の電磁波加熱装置10の以下の説明において、実施形態1の電磁波加熱装置1と同等部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
実施形態2の電磁波加熱装置10は、図9から図12に示すように、被加熱体であるデシカントロータ11に形成された貫通孔11Aが、加熱炉13における筐体13Aの開口部13Aaに掛かって配置される。貫通孔11Aは、デシカントロータ11の回転の軸に対して平行に貫通して設けられている。
【0048】
図9から図11に示す形態の電磁波加熱装置10は、鍔部材13Abを有する。鍔部材13Abは、実施形態1の電磁波加熱装置1と同様に構成することができる。鍔部材13Abは、実施形態1の電磁波加熱装置1のように、筐体13Aの内部に放射される電磁波の管内波長λgに対し、筒体の内径の小寸法taがλg/4以下に形成され、筒体の内径の大寸法tbがλg/4を超えて形成されていることが好ましく、筐体13Aの外部に延びる長さLが、ta≦Lの範囲や、ta≦L≦λg/4の範囲を満たすことが好ましい。
【0049】
図9に示す実施形態2の電磁波加熱装置10は、デシカントロータ11の貫通孔11Aの開口縁が連通部13Acと同じ位置に配置されている。貫通孔11Aは、デシカントロータ11の回転の軸に対して平行に貫通して設けられているため、デシカントロータ11の両外面11Cにおける貫通孔11Aの両開口縁が、互いに対面する両連通部13Acと同じ位置に配置されている。
【0050】
図10に示す実施形態2の電磁波加熱装置10は、デシカントロータ11の貫通孔11Aの開口縁が連通部13Acに掛かって配置されている。即ち、図10に示す形態の電磁波加熱装置10は、図9に示す形態の電磁波加熱装置10よりも、デシカントロータ11が筐体13Aの内側に配置されている。
【0051】
図11に示す実施形態2の電磁波加熱装置10は、デシカントロータ11の貫通孔11Aの開口縁が連通部13Acに掛からず配置されている。即ち、図11に示す形態の電磁波加熱装置10は、デシカントロータ11の貫通孔11Aの開口縁が開口部13Aaにのみ掛かり、図9に示す形態の電磁波加熱装置10よりも、デシカントロータ11が筐体13Aの外側に配置されている。
【0052】
図12に示す実施形態2の電磁波加熱装置10は、鍔部材13Abが設けられておらず、開口部13Aaが筐体13Aの壁板に形成されている。図12に示す形態の電磁波加熱装置10は、この開口部13Aaに対し、デシカントロータ11の貫通孔11Aの開口縁が掛かって配置されている。
【0053】
図13は、実施形態2に係る電磁波加熱装置の作用をあらわすグラフである。
【0054】
図13のグラフにおいて、電磁波加熱装置10は、図9から図11に示すように、筐体13Aに鍔部材13Abが形成され、筐体13Aの形状および鍔部材13Abの形状や配置を同じくした。また、図13のグラフにおいて、電磁波加熱装置10は、デシカントロータ11の外径を同じくし、デシカントロータ11の回転中心を鍔部材13Abの先端の開口部13Aaに一致させた。また、図13のグラフにおいて、電磁波加熱装置10は、筐体13Aの内部に照射する電磁波の周波数を2.46GHzとした。
【0055】
そして、このような実施形態2の電磁波加熱装置10において、図13のグラフでは、デシカントロータ11の回転中心に配置した円形状の貫通孔11Aの孔径を変えて解析を行った結果を示す。この解析では、開口部13Aaから筐体13Aの外部への電磁波の漏れ量の平均を算出し、貫通孔11Aを設けない孔径0mmの場合の電磁波の漏れ低減効果0%(漏れ量平均0.508)を基準として、孔径に対応した漏れ低減効果をあらわした。
【0056】
図13において、貫通孔11Aの孔径30mmの場合、図9から図11を参照し、貫通孔11Aの開口縁が鍔部材13Abの延びる長さである開口部13Aaから連通部13Acの間(実施形態1の電磁波加熱装置1における長さL)の中央50%に位置している。この貫通孔11Aの孔径30mmの場合、漏れ量平均0.446で漏れ低減効果12.2%であった。
【0057】
また、図13において、貫通孔11Aの孔径40mmの場合、図11に示すように、貫通孔11Aの開口縁が鍔部材13Abの延びる長さである開口部13Aaから連通部13Acの間の連通部13Ac寄り80%に位置している。この貫通孔11Aの孔径40mmの場合、漏れ量平均0.427で漏れ低減効果15.9%であった。
【0058】
また、図13において、貫通孔11Aの孔径60mmの場合、図9に示すように、貫通孔11Aの開口縁が連通部13Acに一致している。言い換えると、貫通孔11Aの開口縁が鍔部材13Abの延びる長さである開口部13Aaから連通部13Acの間の連通部13Ac寄り100%に位置している。この貫通孔11Aの孔径60mmの場合、漏れ量平均0.405で漏れ低減効果20.3%であった。
【0059】
また、図13において、貫通孔11Aの孔径80mmの場合、図10に示すように、貫通孔11Aの開口縁が鍔部材13Abの延びる長さである開口部13Aaから連通部13Acに対して連通部13Acを越えた118%に位置している。この貫通孔11Aの孔径80mmの場合、漏れ量平均0.412で漏れ低減効果18.9%であった。
【0060】
そして、図13のグラフでは、貫通孔11Aの各孔径に対応し漏れ低減効果を近似した曲線を示している。
【0061】
従って、実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、図9から図12に示すように、デシカントロータ11の貫通孔11Aの開口縁が筐体13Aの開口部13Aaに掛かって配置されることで、開口部13Aaから筐体13Aの外部への電磁波の漏れを抑制できる。この結果、実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制できる。
【0062】
また、実施形態2の電磁波加熱装置10では、図9から図11に示すように、筐体13Aから外部に延びて筒形状に形成されて開口部13Aaを含み構成され被加熱体であるデシカントロータ11の一部を囲む鍔部材13Abをさらに備え、デシカントロータ11は、鍔部材13Abがなす開口部13Aaに貫通孔11Aが掛かって配置されることが好ましい。即ち、実施形態2の電磁波加熱装置10は、実施形態1の電磁波加熱装置1の構成を含むことが好ましい。
【0063】
この実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、開口部13Aaから筐体13Aの外部への電磁波の漏れ低減効果を向上できる。この結果、実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果が顕著に得られる。
【0064】
また、実施形態2の電磁波加熱装置10では、図9に示すように、デシカントロータ11は、筐体13Aと鍔部材13Abとの連通部13Acに貫通孔11Aの開口縁が掛かって配置されることが好ましい。
【0065】
この実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、開口部13Aaから筐体13Aの外部への電磁波の漏れ低減効果をより向上できる。この結果、実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果がより顕著に得られる。
【0066】
なお、実施形態2の電磁波加熱装置10において、貫通孔11Aの形状は、デシカントロータ11の中央に設けられて円形状に形成されていることが、デシカントロータ11の回転移動において、貫通孔11Aの開口縁が常に同じ位置で電磁波の漏れを抑制する効果を均等かつ連続して得るうえで好適であるが、上述した条件を満たせば中央配置や円形状に限定されない。
【0067】
また、実施形態2の電磁波加熱装置10では、実施形態1の電磁波加熱装置1と同様に、図3に示すように、鍔部材13Abは、筒体の内径においてデシカントロータ11を中央に配置することが好ましい。即ち、鍔部材13Abの延びる方向において、鍔部材13Abおよびデシカントロータ11の中心線Cが一致する。
【0068】
この実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、鍔部材13Abの中央にデシカントロータ11を配置することで、デシカントロータ11の外面11Cと、鍔部材13Abの内面13Adとの隙間tcがデシカントロータ11の両外面側で均等になる。このため、この実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、加熱炉13の外部への電磁波の漏れをデシカントロータ11の両外面側でそれぞれ同等にできる。この結果、実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、デシカントロータ11の両外面側で加熱炉13の外部への電磁波の漏れが同等になることで、デシカントロータ11の両外面側で誘電率のバランスが保たれて加熱炉13の外部へ漏れるエネルギーを打ち消し合うため、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果が得られる。なお、加熱炉13の内部は、その中心において電界強度が最も強く、当該中心にデシカントロータ11を置くことで、デシカントロータ11の加熱効率が高まり、そのうえで、中央にデシカントロータ11が中央となるように鍔部材13Abを配置することで、加熱効率の確保しつつ電磁波の漏れを抑制できる。
【0069】
また、実施形態2の電磁波加熱装置10では、実施形態1の電磁波加熱装置1と同様に、図3に示すように、鍔部材13Abは、デシカントロータ11を囲む内面13Adがデシカントロータ11の外面11Cと平行に配置されることが好ましい。
【0070】
この実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、鍔部材13Abの内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとが互いに平行に配置されることで、相互間の隙間tcが鍔部材13Abの延びる方向で均等になる。この結果、この実施形態1の電磁波加熱装置1によれば、デシカントロータ11の外面側で誘電率のバランスが保たれ、デシカントロータ11の両外面側で加熱炉13の外部へ漏れるエネルギーを打ち消し合う作用が高まるため、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果が得られる。
【0071】
また、実施形態2の電磁波加熱装置10では、実施形態1の電磁波加熱装置1と同様に、図3から図5に示すように、鍔部材13Abは、デシカントロータ11を囲む筒体の内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとの間に隙間tcを有することが好ましい。
【0072】
この実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、鍔部材13Abの筒体の内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとの間に隙間tcがあることで、当該間に空気層が生じる。デシカントロータ11が移動するには、隙間tcは必要である。隙間tcは、鍔部材13Abの筒体の内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとの間で誘電率のバランスを設定できるため、隙間tcの設定によりデシカントロータ11の両外面側で加熱炉13の外部へ漏れるエネルギーを打ち消し合う作用が得られる。この結果、この実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果が顕著に得られる。
【0073】
また、実施形態2の電磁波加熱装置10では、実施形態1の電磁波加熱装置1と同様に、図6に示すように、鍔部材13Abは、デシカントロータ11を囲む筒体の内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとの間に誘電体15が設けられることが好ましい。誘電体15は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂がある。
【0074】
この実施形態2の電磁波加熱装置10によれば、鍔部材13Abの筒体の内面13Adとデシカントロータ11の外面11Cとの間に誘電体15があることで、加熱炉13の外部への電磁波の漏れを抑制する効果が顕著に得られる。なお、誘電体15は、図6に示すように、上述した隙間tcの範囲内に設けられ、鍔部材13Abの筒体の内面13Adに設けられることで、デシカントロータ11の外面11Cとの間に空隙が形成されることが、デシカントロータ11の移動を円滑に行える。しかも、隙間tcの設定により、誘電率のバランスを設定でき、デシカントロータ11の両外面側で加熱炉13の外部へ漏れるエネルギーを打ち消し合う作用が得られる。
【0075】
以上で説明した各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
1 電磁波加熱装置
11 デシカントロータ(被加熱体)
11C 外面
13 加熱炉
13A 筐体
13Aa 開口部
13Ab 鍔部材
13Ad 内面
13B 発振器
15 誘電体
ta 小寸法
tb 大寸法
tc 隙間
λg 電磁波の管内波長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14