(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157487
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ワーク加工用シート、ダイシングダイボンディングシート、及び、裏面保護膜形成用複合シート、並びに、ワーク加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20221006BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221006BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20221006BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J133/06
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061742
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】山口 征太郎
(72)【発明者】
【氏名】若山 洋司
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
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(57)【要約】
【課題】半導体ウエハ等のワークのダイシング工程において、ブレードダイシングを繰り返しても、チッピングサイズの増大を抑制できるワーク加工用シート、前記ワーク加工用シートを備えるダイシングダイボンディングシート、及び、前記ワーク加工用シートを備える裏面保護膜形成用複合シート、並びに、ワーク加工物の製造方法を提供する。
【解決手段】基材フィルム11と、基材フィルム11上に粘着剤層12とを備え、粘着剤層12は、金属石鹸を含有し、粘着剤層12の、面積当たりの金属含有量が、0.0004μg/cm
2以上である、ワーク加工用シート101。前記金属石鹸が、脂肪酸ジルコニウム塩、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸アルミニウム塩又は脂肪酸ニッケル塩であることが好ましく、前記金属石鹸としての脂肪酸金属塩の脂肪酸の炭素数が、5~20であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層は、金属石鹸を含有し、
前記粘着剤層の、面積当たりの金属含有量が、0.0004μg/cm2以上である、ワーク加工用シート。
【請求項2】
前記金属石鹸が、脂肪酸ジルコニウム塩、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸アルミニウム塩又は脂肪酸ニッケル塩である、請求項1に記載のワーク加工用シート。
【請求項3】
前記金属石鹸としての脂肪酸金属塩の脂肪酸の炭素数が、5~20である、請求項1又は2に記載のワーク加工用シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のワーク加工用シートと、
前記粘着剤層の前記基材フィルムとは反対側の第1面上にフィルム状接着剤と、を備えるダイシングダイボンディングシート。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のワーク加工用シートと、
前記粘着剤層の前記基材フィルムとは反対側の第1面上に保護膜形成用フィルムと、を備える裏面保護膜形成用複合シート。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のワーク加工用シートを、ワークの裏面に貼付する工程と、
前記ワークをブレードダイシングして、ワーク加工物を得るダイシング工程と、を有するワーク加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工用シート、前記ワーク加工用シートを備えるダイシングダイボンディングシート、及び、前記ワーク加工用シートを備える裏面保護膜形成用複合シート、並びに、ワーク加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク加工用シートとしてのダイシングシートは、基材フィルム上に粘着剤層を備えて構成され、前記粘着剤層により半導体ウエハ等のワークに貼付し、この状態でダイシングを行うのに使用される。ダイシング後は、必要により、紫外線等のエネルギー線の照射による硬化で前記粘着剤層の粘着力を低下させ、半導体チップ等のワーク加工物をピックアップする。ダイシングシートとしては、その目的によって種々の構成のものがこれまでに提案されている。
【0003】
半導体ウエハ等のワークのダイシング工程では、半導体素子をリードフレームや有機基板などに接合するためのフィルム状接着剤とダイシングシートとが組み合わされたダイシングダイボンディングシートが使用されることがある。また、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置のワークの裏面保護のために、保護膜形成用フィルムとダイシングシートとが組み合わされた裏面保護膜形成用複合シートも使用されている。
【0004】
一方で近年は、電子機器の多機能化、高集積化の進展に伴い、半導体チップ(半導体ウエハ)の薄層化が進んでいる。また、安価な汎用品であるブレードダイサーを使用してダイシングを行うことで、安価な半導体チップを提供することが求められている。このような薄い半導体ウエハを使用した場合には、ダイシングを行ったときにチップ外縁部に欠けが生じる、所謂チッピングが発生し易い(例えば、特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-103655号公報
【特許文献2】特開2009-035717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1~2にも、ダイシングシートを用いて半導体ウエハをブレードダイシングする際には、切断されたチップのダイシングラインに欠け(すなわち、チッピング)が生じることが説明されており、特許文献1では30~150μmの大きさのチッピングが生じたことが説明されており、特許文献2では15μm以上、又は10μm以上の大きさのチッピングが生じないことが説明されている。
しかしながら、新品のブレードを用いてダイシングを開始した後、ブレードダイシングの枚数を繰り返すうちに、徐々に、チッピングの大きさが大きくなる傾向にある。チッピングの大きさが大きいと半導体デバイス自体が故障することもある。
【0007】
そこで本発明は、半導体ウエハ等のワークのダイシング工程において、ブレードダイシングを繰り返しても、チッピングサイズの増大を抑制できるワーク加工用シート、前記ワーク加工用シートを備えるダイシングダイボンディングシート、及び、前記ワーク加工用シートを備える裏面保護膜形成用複合シート、並びに、ワーク加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねたところ、前記粘着剤層に、金属石鹸を含有させると、新品のブレードを用いてダイシングを開始した後、ブレードダイシングする半導体ウエハ等のワークの枚数を増やしても、チッピングサイズの増大を抑制できることを見出して、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた粘着剤層と、を備え、
前記粘着剤層は、金属石鹸を含有し、
前記粘着剤層の、面積当たりの金属含有量が、0.0004μg/cm2以上である、ワーク加工用シート。
[2] 前記金属石鹸が、脂肪酸ジルコニウム塩、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸アルミニウム塩又は脂肪酸ニッケル塩である、前記[1]に記載のワーク加工用シート。
[3] 前記金属石鹸としての脂肪酸金属塩の脂肪酸の炭素数が、5~20である、前記[1]又は[2]に記載のワーク加工用シート。
[4] 前記[1]~[3]のいずれか一項に記載のワーク加工用シートと、
前記粘着剤層の前記基材フィルムとは反対側の第1面上にフィルム状接着剤と、を備えるダイシングダイボンディングシート。
[5] 前記[1]~[3]のいずれか一項に記載のワーク加工用シートと、
記粘着剤層の前記基材フィルムとは反対側の第1面上に保護膜形成用フィルムと、を備える裏面保護膜形成用複合シート。
[6] 前記[1]~[3]のいずれか一項に記載のワーク加工用シートを、ワークの裏面に貼付する工程と、
前記ワークをブレードダイシングして、ワーク加工物を得るダイシング工程と、を有するワーク加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体ウエハ等のワークのダイシング工程において、ブレードダイシングを繰り返しても、チッピングサイズの増大を抑制できるワーク加工用シート、前記ワーク加工用シートを備えるダイシングダイボンディングシート、及び、前記ワーク加工用シートを備える裏面保護膜形成用複合シート、並びに、ワーク加工物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のワーク加工用シートの一の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明のワーク加工用シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明のダイシングダイボンディングシートの一の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の裏面保護膜形成用複合シートの一の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明のワーク加工物の製造方法の一の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<ワーク加工用シート>>
【0013】
本発明のワーク加工用シートについて、図面を引用しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明のワーク加工用シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示すワーク加工用シート101は、基材フィルム11上に粘着剤層12を備えるダイシングシートであり、粘着剤層12金属石鹸を含有する。
【0015】
ワーク加工用シート101においては、基材フィルム11の一方の表面(以下、「第1面」と称することがある)11aに粘着剤層12が積層されている。
【0016】
図1に示すワーク加工用シート101は、粘着剤層12の、基材フィルム11とは反対側の第1面12aが、半導体ウエハ等のワーク(図示略)の回路が形成されている面とは反対側の面に貼付されて、使用される。
【0017】
ここで、「ワーク」とは。ウエハ又は半導体装置パネルを云う。
「ウエハ」としては、シリコン、ゲルマニウム、セレン等の元素半導体や、GaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiC等の化合物半導体、で構成される半導体ウエハ;サファイア、ガラス等の絶縁体で構成される絶縁体ウエハが挙げられる。
「半導体装置パネル」とは、一個又は二個以上の電子部品が封止樹脂層で封止された二個以上の半導体装置が、平面的に並んで配置された集合体を云う。
これらワークの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側のワークの面を「回路面」と称する。そして、ワークの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークは、ダイシング等の手段により分割され、ワーク加工物となる。本明細書においては、ワークの場合と同様に、回路が形成されている側のワーク加工物の面を「回路面」と称し、ワーク加工物の回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークの回路面とワーク加工物の回路面には、いずれもバンプ、ピラー等の突状電極が設けられている。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
【0018】
ワーク加工用シート101において、粘着剤層12の、面積当たりの金属含有量は、0.0004μg/cm2以上である。粘着剤層12の面積当たりの金属含有量(μg/cm2)は、次式で求められる。
粘着剤層12の面積当たりの金属含有量(μg/cm2)
=粘着剤層12の金属含有量(μg)/粘着剤層12の第1面の面積(cm2)
【0019】
ワーク加工用シート101を用いるワークのダイシング工程において、粘着剤層12が金属石鹸を含有するので、新品のブレードを用いてダイシングを開始した後、ブレードダイシングするワークの枚数を増やしても、チッピングサイズの増大を抑制できる。
粘着剤層に含有する金属石鹸がブレードに粘着剤が付着することを抑制し、ブレード表面が清浄に保たれることで切断面がきれいになり、ワークのブレードダイシングを繰り返して、ダイシング枚数が増えてもチッピングが抑制されるものと考えられる。また、粘着剤層12の面積当たりの金属含有量が、チッピングの抑制の効果に影響する。
【0020】
ワーク加工用シート101を粘着剤層12側の上方から見下ろして平面視したときに、粘着剤層12は、例えば、円形状等の形状を有する。
【0021】
本発明のワーク加工用シートは、
図1に示すワーク加工用シート101に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図1に示すものにおいて一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0022】
例えば、粘着剤層12は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。
図2は、本発明のワーク加工用シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。ここに示すワーク加工用シート101’は、基材フィルム11上に粘着剤層12を備えるダイシングシートである。
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0023】
ワーク加工用シート101’においては、基材フィルム11の一方の表面(以下、「第1面」と称することがある)11aに粘着剤層12が積層されており、粘着剤層12が、基材フィルム11とは反対側の第1の粘着剤層121及び基材フィルム11側の第2の粘着剤層122からなり、第1の粘着剤層121が金属石鹸を含有する。
【0024】
図2に示すワーク加工用シート101’は、粘着剤層12の、基材フィルム11とは反対側の第1面12aが、半導体ウエハ等のワーク(図示略)の回路面とは反対側の裏面に貼付されて、使用される。
【0025】
以下、本発明のワーク加工用シートとして、ダイシングシートを構成する各層について説明する。
【0026】
[基材フィルム]
前記基材フィルムの構成材料は、各種樹脂であることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPEと略すことがある)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPEと略すことがある)、高密度ポリエチレン(HDPE等と略すことがある))、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PETと略すことがある)、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリウレタンアクリレート、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、これらのいずれかの樹脂の水添加物、変性物、架橋物又は共重合物等が挙げられる。切削屑抑制、エキスパンド性の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、エチレン-メタクリル酸(EMAA)共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリレート(EMMA)共重合体フィルムが好ましい。
【0027】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語につても同様であり、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
【0028】
基材フィルムを構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0029】
基材フィルムは1層(すなわち、単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。基材フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。ここで、複数層が互いに異なるとは、各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
なお、本明細書においては、基材フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0030】
基材フィルムの厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、20μm~200μmであることが好ましく、25μm~150μmであることがより好ましく、30μm~100μmであることが特に好ましい。
ここで、「基材フィルムの厚さ」とは、基材フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材フィルムの厚さとは、基材フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。なお、基材フィルムの厚さの測定方法としては、例えば、任意の5箇所において、接触式厚み計を用いて厚さを測定し、測定値の平均を算出する方法等が挙げられる。
【0031】
基材フィルムは、その上に設けられる粘着剤層等の他の層との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理、エンボス加工処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されたものであってもよい。
また、基材フィルムは、表面がプライマー処理を施されたものであってもよい。
また、基材フィルムは、帯電防止コート層、フィルム状接着剤複合シートを重ね合わせて保管する際に、基材フィルムが他のシートに接着することや、基材フィルムが吸着テーブルに接着することを防止する層等を有するものであってもよい。
これらの中でも基材フィルムは、ワークのダイシング時のブレードの摩擦による基材フィルムの断片の発生が抑制される点から、特に表面が電子線照射処理を施されたものが好ましく、一方で、ピックアップを容易に行う観点からは電子線照射処理を施していないものが好ましい。
【0032】
[粘着剤層]
前記粘着剤層は、金属石鹸を含有し、前記粘着剤層の面積当たりの金属含有量が、0.0004μg/cm2以上である。
【0033】
前記粘着剤層には、金属が金属石鹸として含まれている。ワークのダイシング工程において、新品のブレードを用いてダイシングを開始した後、ブレードダイシングするワークの枚数を増やしても、チッピングサイズの増大を抑制できることから、粘着剤層の、面積当たりの金属含有量は、0.0004μg/cm2以上であり、0.001μg/cm2以上であることが好ましく、0.003μg/cm2以上であることがより好ましく、0.005μg/cm2以上であることが特に好ましい。
【0034】
前記粘着剤層の面積当たりの金属含有量は、100000μg/cm2以下であることが好ましく、1000μg/cm2以下であることがより好ましく、100μg/cm2以下であることがさらに好ましく、10μg/cm2以下であることがさらに好ましく、1μg/cm2以下であってもよく、0.5μg/cm2以下であってもよく、0.2μg/cm2以下であってもよい。面積当たりの金属含有量が上限値以下であることで、粘着剤層に接触したデバイスの腐食を防ぐことができる。
【0035】
前記粘着剤層の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。なお、粘着剤層の厚さの測定方法としては、例えば、任意の5箇所において、接触式厚み計を用いて厚さを測定し、測定値の平均を算出する方法等が挙げられる。
【0036】
ワークのブレードダイシングによる、ダイシングシートへのブレードの切り込み深さは、粘着剤層12の前記第1面12aから0~30μmに設定されることが多い。粘着剤層の厚さが20μm未満であるとき、粘着剤層の、面積当たりの金属含有量は、0.0004μg/cm2以上であり、0.001μg/cm2以上であることが好ましく、0.003μg/cm2以上であることがより好ましく、0.005μg/cm2以上であることが特に好ましい。粘着剤層の厚さが20μm以上であるとき、粘着剤層の前記第1面近傍の厚さが20μmまでの、面積当たりの金属含有量が、0.0004μg/cm2以上であることが好ましく、0.001μg/cm2以上であることがより好ましく、0.003μg/cm2以上であることが更に好ましく、0.005μg/cm2以上であることが特に好ましい。例えば、粘着剤層が、基材フィルム11とは反対側の第1の粘着剤層及び基材フィルム11側の第2の粘着剤層からなるとき、第1の粘着剤層の厚さが20μm未満であって、第1の粘着剤層の、面積当たりの金属含有量が、0.0004μg/cm2以上であることが好ましく、0.001μg/cm2以上であることがより好ましく、0.003μg/cm2以上であることが更に好ましく、0.005μg/cm2以上であることが特に好ましい。
【0037】
前記第1の粘着剤層の面積当たりの金属含有量は、100000μg/cm2以下であることが好ましく、1000μg/cm2以下であることがより好ましく、100μg/cm2以下であることが更に好ましく、10μg/cm2以下であることが更に好ましく、1μg/cm2以下であってもよく、0.5μg/cm2以下であってもよく、0.2μg/cm2以下であってもよい。面積当たりの金属含有量が上限値以下であることで、粘着剤層に接触したデバイスの腐食を防ぐことができる。
【0038】
粘着剤層は、これを構成するための各種成分を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。粘着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~30℃の温度等が挙げられる。
【0039】
前記粘着剤層が、エネルギー線硬化性成分を含んでいる場合には、エネルギー線を照射してその粘着性を低下させることで、ワーク加工物のピックアップがより容易となる。粘着剤層にエネルギー線を照射して粘着性を低下させる処理は、ワーク加工用シートを被着体に貼付した後に行ってもよいし、被着体に貼付する前に予め行っておいてもよい。
【0040】
本発明において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、電子線等が挙げられる。
紫外線は、例えば、紫外線源としてUV-LED、高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ又はキセノンランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本発明において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0041】
前記粘着剤組成物で好ましいものとしては、例えば、アクリル重合体とエネルギー線重合性化合物とを含有するもの(以下、「粘着剤組成物(i)」と略記することがある)、水酸基を有し、且つ重合性基を側鎖に有するアクリル重合体(例えば、水酸基を有し、且つウレタン結合を介して重合性基を側鎖に有するもの)と、イソシアネート系架橋剤と、を含有するもの(以下、「粘着剤組成物(ii)」と略記することがある)が挙げられ、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
【0042】
[粘着剤組成物(i)]
粘着剤組成物(i)は、前記粘着剤層の製造原料であり、前記アクリル重合体とエネルギー線重合性化合物とを必須成分として含有する。
以下、各成分について説明する。
【0043】
(アクリル重合体)
粘着剤組成物(i)における前記アクリル重合体で好ましいものとしては、モノマーとして(メタ)アクリル酸エステルと、必要に応じて用いられる非(メタ)アクリル酸エステルとを重合して得られた、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が例示できる。
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート(ミリスチル(メタ)アクリレート)、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(パルミチル(メタ)アクリレート)、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、イソオクタデシル(メタ)アクリレート(イソステアリル(メタ)アクリレート)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が炭素数1~18の鎖状構造であるアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロアルケニル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のシクロアルケニルオキシアルキル(メタ)アクリレート;イミド(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0044】
前記非(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーであり、好ましいものとしては(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、N-メチロールアクリルアミド等が例示できる。
【0045】
アクリル重合体を構成する前記(メタ)アクリル酸エステル、非(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーは、いずれも1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0046】
粘着剤組成物(i)が含有するアクリル重合体は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0047】
粘着剤組成物(i)のアクリル重合体の含有量は、粘着剤組成物(i)中の溶媒以外の全ての含有成分の総量に対して40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、粘着剤組成物(i)のアクリル重合体の含有量は、粘着剤組成物(i)中の溶媒以外の全ての含有成分の総量に対して99質量%以下であることが好ましく、91質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
(エネルギー線重合性化合物)
前記エネルギー線重合性化合物は、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射により重合して硬化する化合物であり、分子内にエネルギー線硬化性二重結合を有する。
前記エネルギー線重合性化合物としては、エネルギー線重合性基を有する低分子量化合物(単官能又は多官能のモノマー及びオリゴマー)が例示でき、より具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等のアクリレート;ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート等の環状脂肪族骨格含有アクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、イタコン酸オリゴマー等のアクリレート系化合物が例示できる。
前記エネルギー線重合性化合物は、分子量が100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0049】
粘着剤組成物(i)が含有するエネルギー線重合性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0050】
粘着剤組成物(i)のエネルギー線重合性化合物の含有量は、前記アクリル重合体100質量部に対して、1~125質量部であることが好ましく、10~125質量部であることがより好ましい。
【0051】
(光重合開始剤)
粘着剤組成物(i)は、アクリル重合体及びエネルギー線重合性化合物以外に、光重合開始剤を含有していてもよい。
前記光重合開始剤は、公知のものでよく、具体的には、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が例示できる。
【0052】
粘着剤組成物(i)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0053】
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物(i)の光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線重合性化合物100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。光重合開始剤の前記含有量が前記下限値以上であることで、光重合開始剤を用いたことによる効果が十分に得られる。また、光重合開始剤の前記含有量が前記上限値以下であることで、過剰な光重合開始剤からの副生成分の発生が抑制されて、粘着剤層の硬化がより良好に進行する。
【0054】
(架橋剤)
粘着剤組成物(i)は、アクリル重合体及びエネルギー線重合性化合物以外に、架橋剤を含有していてもよい。
前記架橋剤としては、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物等が例示できる。
【0055】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物並びにこれら化合物の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体や、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が例示できる。前記アダクト体は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。
【0056】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて若しくは一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートのいずれか一方又は両方を付加した化合物;リジンジイソシアネート等が例示できる。
【0057】
前記有機多価イミン化合物としては、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が例示できる。
【0058】
架橋剤としてイソシアネート化合物を用いる場合、アクリル重合体としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤がイソシアネート基を有し、アクリル重合体が水酸基を有する場合、これらイソシアネート基と水酸基との反応によって、粘着剤層に架橋構造を簡便に導入できる。
【0059】
粘着剤組成物(i)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0060】
架橋剤を用いる場合、粘着剤組成物(i)の架橋剤の含有量は、前記アクリル重合体100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~16質量部であることがより好ましい。
【0061】
(金属石鹸)
粘着剤組成物(i)に含まれる金属石鹸としては、公知の金属石鹸から適宜に選ぶことが可能である。金属石鹸とは、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オクチル酸などの脂肪酸と、ジルコニウム、アルミニウム、ニッケル、カルシウム、マグネシウム、コバルト、マンガン、ビスマス、カリウム、ネオジム、鉛、亜鉛、銅、鉄などの金属とが結合した脂肪酸金属塩を云う。
【0062】
金属石鹸として、具体的には、ステアリン酸ジルコニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸鉛、ステアリン酸ビスマス、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ネオジム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウムなどのステアリン酸金属塩;ラウリン酸ジルコニウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸アルミニウム、ラウリン酸ニッケル、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウムなどのラウリン酸金属塩;リシノール酸ジルコニウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸アルミニウム、リシノール酸ニッケル、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウムなどのリシノール酸金属塩;オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸アルミニウム、オクチル酸ニッケルなどのオクチル酸金属塩;2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、(2-エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウムなどの脂肪酸と結合した脂肪酸ジルコニウム塩;などが挙げられる。
上記金属石鹸は、一種でもそれ以上でもよい。商品名「DICNATE(登録商標)」(DIC株式会社製)等で市販されている金属石鹸を用いてもよい。
【0063】
金属石鹸として、中でも、脂肪酸ジルコニウム塩、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸アルミニウム塩又は脂肪酸ニッケル塩が好ましく、脂肪酸ジルコニウム塩又は脂肪酸亜鉛塩がより好ましい。
【0064】
金属石鹸としての脂肪酸金属塩の脂肪酸の炭素数は、5~20が好ましく、6~18がより好ましく、7~16が特に好ましい。
【0065】
ブレードの摩耗及びチッピングを防ぐできることから、金属石鹸が、粘着剤層(i)中にフィラー状で存在しているとき、フィラー状の金属石鹸の平均粒子径は、50nm以下であるか、又は、金属石鹸が、粘着剤層(i)中に溶解していることがより好ましい。金属石鹸は、粘着剤層(i)中に均一に分散していることが好ましい。粘着剤層(i)が、基材フィルム11とは反対側の第1の粘着剤層及び基材フィルム11側の第2の粘着剤層からなるとき、金属石鹸は、第1の粘着剤層中に均一に分散していることが好ましい。
【0066】
(溶媒)
粘着剤組成物(i)は、アクリル重合体及びエネルギー線重合性化合物以外に、さらに溶媒を含有することが好ましい。
前記溶媒は、特に限定されないが、好ましいものとしては、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が例示できる。
粘着剤組成物(i)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0067】
粘着剤組成物(i)が溶媒を含有する場合の溶媒の含有量は、40~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
【0068】
(その他の成分)
粘着剤組成物(i)は、アクリル重合体及びエネルギー線重合性化合物以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、光重合開始剤、架橋剤及び溶媒に該当しないその他の成分を含有していてもよい。
前記その他の成分は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、染料、顔料、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等の各種添加剤が例示できる。
粘着剤組成物(i)が含有する前記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい
【0069】
[粘着剤組成物(ii)]
粘着剤組成物(ii)も、前記粘着剤層の製造原料であり、水酸基を有し、且つ重合性基を側鎖に有するアクリル重合体(例えば、水酸基を有し、且つウレタン結合を介して重合性基を側鎖に有するもの)と、イソシアネート系架橋剤と、を必須成分として含有する。
粘着剤組成物(ii)を用いた場合には、アクリル重合体が重合性基を側鎖に有することにより、粘着剤組成物(i)の場合のように、エネルギー線重合性化合物を用いて、エネルギー線の照射により重合反応させた場合よりも、重合反応(硬化)後の粘着剤層の粘着性低下による被着体からの剥離性が向上し、ワーク加工物のピックアップ性が向上する。
なお、本明細書においては、粘着剤組成物(ii)における「アクリル重合体」との記載は、特に断りのない限り、「重合性基を側鎖に有するアクリル重合体」を意味するものとする。
【0070】
(アクリル重合体)
上述の重合性基を側鎖に有するアクリル重合体としては、モノマーとして(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有化合物とを共重合させ、得られた水酸基含有共重合体の水酸基に、イソシアネート基及び重合性基を有する化合物のイソシアネート基を反応させて、ウレタン結合を形成して得られたものが例示できる。
【0071】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、粘着剤組成物(i)における(メタ)アクリル酸エステルのうち、水酸基含有(メタ)アクリレート以外のものと同じものが例示できる。
また、前記水酸基含有化合物としては、粘着剤組成物(i)における水酸基含有(メタ)アクリレートと同じものが例示できる。
前記アクリル重合体を構成する、(メタ)アクリル酸エステル及び水酸基含有化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0072】
前記イソシアネート基及び重合性基を有する化合物としては、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステル等が例示できる。
前記アクリル重合体を構成する、前記イソシアネート基及び重合性基を有する化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0073】
粘着剤組成物(ii)が含有するアクリル重合体は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0074】
粘着剤組成物(ii)のアクリル重合体の含有量は、粘着剤組成物(ii)中の溶媒以外の全ての含有成分の総量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、粘着剤組成物(ii)のアクリル重合体の含有量は、粘着剤組成物(ii)中の溶媒以外の全ての含有成分の総量に対して99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましい。
【0075】
(イソシアネート系架橋剤)
前記イソシアネート系架橋剤としては、粘着剤組成物(i)における架橋剤である前記有機多価イソシアネート化合物と同じものが例示できる。
【0076】
粘着剤組成物(ii)が含有するイソシアネート系架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0077】
粘着剤組成物(ii)中のイソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基のモル数は、粘着剤組成物(ii)中のアクリル重合体が有する水酸基のモル数に対して0.2倍以上であることが好ましい。このようにすることで、硬化後の粘着剤層の粘着性低下による被着体からの剥離性が向上し、ワーク加工物のピックアップ性が向上する。
また、粘着剤組成物(ii)中のイソシアネート系架橋剤が有するイソシアネート基のモル数は、粘着剤組成物(ii)中のアクリル重合体が有する水酸基のモル数に対して3倍以下であることが好ましい。このようにすることで、イソシアネート系架橋剤同士の副生成物の発生をより抑制できる。
【0078】
粘着剤組成物(ii)のイソシアネート系架橋剤の含有量は、イソシアネート基のモル数が上述のような範囲となるように適宜調節すればよいが、このような条件を満たしたうえで、アクリル重合体100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~15質量部であることがより好ましく、0.3~10質量部であることが特に好ましい。
【0079】
(光重合開始剤)
粘着剤組成物(ii)は、アクリル重合体及びイソシアネート系架橋剤以外に、光重合開始剤を含有していてもよい。
前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(i)の場合と同じものが例示できる。
粘着剤組成物(ii)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0080】
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物(ii)の光重合開始剤の含有量は、アクリル重合体100質量部に対して、0.05~20質量部であることが好ましい。光重合開始剤の前記含有量が前記下限値以上であることで、光重合開始剤を用いたことによる効果が十分に得られる。また、光重合開始剤の前記含有量が前記上限値以下であることで、過剰な光重合開始剤からの副生成分の発生が抑制されて、粘着剤層の硬化がより良好に進行する。
【0081】
(金属石鹸)
粘着剤組成物(ii)に含まれる金属石鹸としては、粘着剤組成物(i)の場合と同じものが例示できる。
【0082】
ブレードの摩耗及びチッピングを防ぐできることから、金属石鹸が、粘着剤層(ii)中にフィラー状で存在しているとき、フィラー状の金属石鹸の平均粒子径は、50nm以下であるか、又は、金属石鹸が、粘着剤層中に溶解していることがより好ましい。金属石鹸は、粘着剤層(ii)中に均一に分散していることが好ましい。粘着剤層(ii)が、基材フィルム11とは反対側の第1の粘着剤層及び基材フィルム11側の第2の粘着剤層からなるとき、金属石鹸は、第1の粘着剤層中に均一に分散していることが好ましい。
【0083】
(溶媒)
粘着剤組成物(ii)は、アクリル重合体及びイソシアネート系架橋剤以外に、さらに溶媒を含有することが好ましい。
前記溶媒としては、粘着剤組成物(i)の場合と同じものが例示できる。
粘着剤組成物(ii)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0084】
粘着剤組成物(ii)が溶媒を含有する場合の溶媒の含有量は、40~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
【0085】
(その他の成分)
粘着剤組成物(ii)は、アクリル重合体及びイソシアネート系架橋剤に、本発明の効果を損なわない範囲内において、光重合開始剤及び溶媒に該当しないその他の成分を含有していてもよい。
前記その他の成分としては、粘着剤組成物(i)の場合と同じものが例示できる。
粘着剤組成物(ii)が含有する前記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0086】
粘着剤組成物(i)、粘着剤組成物(ii)等の前記粘着剤組成物は、アクリル重合体と、前記アクリル重合体以外の成分と、を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0087】
粘着剤層は、エネルギー線照射による硬化後の弾性率が所定の範囲内となるように、例えば、粘着剤組成物に配合するアクリル重合体等の各成分が有する、(メタ)アクリロイル基等の重合性基の数、架橋剤の種類及び量、アクリル重合体を構成するモノマーの種類等を調節し、粘着剤組成物(i)に限っては、エネルギー線重合性化合物の分子量や、アクリル重合体の配合量に対するエネルギー線重合性化合物の配合量の比等を調節して、形成すればよい。
【0088】
粘着剤層は、前記基材フィルムの表面に粘着剤組成物を塗工し、乾燥させることで形成できる。
このとき必要に応じて、塗工した粘着剤組成物を加熱することで、架橋してもよい。加熱条件は、例えば、100~130℃で1~5分とすることができるが、これに限定されない。
また、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤組成物を塗工し、乾燥させることで形成した粘着剤層を、基材フィルムの表面に貼り合わせ、必要に応じて前記剥離フィルムを取り除くことでも、基材フィルム上に粘着剤層を形成できる。
【0089】
粘着剤組成物の基材フィルムの表面又は剥離材の剥離層表面への塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0090】
<剥離フィルム>
剥離フィルムとしては、特に限定されず、市販の剥離フィルムを使用することができ、たとえばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。
【0091】
剥離フィルムの粘着剤層に接する面の表面張力は、好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは37mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下である。下限値は通常25mN/m程度である。このような表面張力が比較的低い剥離フィルムは、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、また剥離フィルムの表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
【0092】
剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系、ゴム系などが用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0093】
上記の剥離剤を用いて剥離フィルムの基体となるフィルム等の表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、剥離剤が塗布された剥離フィルムを常温下または加熱下に供するか、または電子線により硬化させて剥離剤層を形成させればよい。
【0094】
剥離フィルムの表面粗さ(Ra)としては、10~100nmが好ましく、15~60nmが好ましく、20~50nmが好ましい。
【0095】
<<ワーク加工用シートの製造方法>>
ワーク加工用シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0096】
例えば、基材フィルム上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材フィルム上に粘着剤層を形成し、ワーク加工用シートとすることができる。更に、粘着剤層の露出面に剥離フィルムの剥離処理面を貼り合わせることで、ワーク加工用シートとすることもできる。剥離フィルムは、ワーク加工用シートを使用する際に、必要に応じて取り除けばよい。
【0097】
また、剥離フィルム上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成し、更に、粘着剤層の露出面上を、基材フィルムの一方の表面と貼り合わせることで、ワーク加工用シートとすることができる。このとき、前記粘着剤組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、ワーク加工用シートの形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0098】
<<ダイシングダイボンディングシート>>
図3は、本発明のダイシングダイボンディングシートの一の実施形態を模式的に示す断面図である。ここに示すダイシングダイボンディングシート102は、基材フィルム11の一方の表面11aに粘着剤層12が積層され、さらに、粘着剤層12の基材フィルム11とは反対側の第1面12a上にフィルム状接着剤13を備え、前記フィルム状接着剤13上にワークの裏面を貼付して使用される。
本発明のワーク加工用シートは、ダイシングダイボンディングシート102にも適用が可能である。
【0099】
ダイシングダイボンディングシートを構成する基材フィルム以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、ダイシングダイボンディングシートを製造すればよい。
【0100】
<フィルム状接着剤>
前記フィルム状接着剤は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されず、公知のものを適宜用いることができる。
【0101】
前記フィルム状接着剤は、硬化性を有するものであり、熱硬化性を有するものが好ましく、感圧接着性を有するものが好ましい。熱硬化性及び感圧接着性をともに有するフィルム状接着剤は、未硬化状態では各種被着体に軽く押圧することで貼付できる。また、フィルム状接着剤は、加熱して軟化させることで各種被着体に貼付できるものであってもよい。フィルム状接着剤は、硬化によって最終的には耐衝撃性が高い硬化物となり、この硬化物は、厳しい高温・高湿度条件下においても十分な接着特性を保持し得る。
【0102】
フィルム状接着剤は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。フィルム状接着剤が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0103】
前記フィルム状接着剤の厚さは、特に限定されないが、1~50μmであることが好ましく、3~40μmであることがより好ましい。フィルム状接着剤の厚さが前記下限値以上であることにより、被着体(半導体チップ等のワーク加工物)に対してより高い接着力が得られる。一方、フィルム状接着剤の厚さが前記上限値以下であることにより、後述するダイシング工程においてフィルム状接着剤をより容易に切断でき、また、ダイシングブレードを用いたダイシング時において、切削屑の発生量をより低減できる。
ここで、「フィルム状接着剤の厚さ」とは、フィルム状接着剤全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるフィルム状接着剤の厚さとは、フィルム状接着剤を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0104】
好ましいフィルム状接着剤としては、例えば、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)を含有するものが挙げられる。エポキシ系熱硬化性樹脂(b)としては、例えば、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)からなるものが挙げられる。
また、フィルム状接着剤としては、その各種物性を改良するために、重合体成分(a)及びエポキシ系熱硬化性樹脂(b)以外に、さらに必要に応じて、これらに該当しない他の成分を含有していてもよい。前記他の成分で好ましいものとしては、例えば、硬化促進剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、エネルギー線硬化性樹脂(g)、光重合開始剤(h)、汎用添加剤(i)等が挙げられる。汎用添加剤(i)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0105】
フィルム状接着剤は、その構成材料を含有する接着剤組成物を用いて形成できる。例えば、フィルム状接着剤の形成対象面に接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位にフィルム状接着剤を形成できる。接着剤組成物の組成や製造方法、接着剤組成物を用いるフィルム状接着剤の製造方法に関しては、特開2016-135856号公報や、国際公開2016/140248号等に記載の例を参考に実施することができる。
【0106】
また、ダイシングダイボンディングシートは、フィルム状接着剤にプリカット加工を施して、既知の形状のリングフレームに固定できるよう、複数個のフィルム状接着剤が長尺状のシートに所定間隔で配置された、複数シート巻のロールとして製造することもできる。
【0107】
<<裏面保護膜形成用複合シート>>
図4は、本発明の裏面保護膜形成用複合シートの一の実施形態を模式的に示す断面図である。ここに示す裏面保護膜形成用複合シート103は、基材フィルム11の一方の表面11aに粘着剤層12が積層され、さらに、粘着剤層12の基材フィルム11とは反対側の第1面12a上に保護膜形成用フィルム14を備え、前記保護膜形成用フィルム14上にワークの裏面を貼付して使用される。
本発明のワーク加工用シートは、裏面保護膜形成用複合シート103にも適用が可能である。
【0108】
保護膜形成フィルムの組成や製造方法、保護膜形成フィルムを備える裏面保護膜形成用複合シートの製造方法に関しては、特開2016-015456号公報や、特開2016-141749号公報等に記載の例を参考に実施することができる。
【0109】
<<ワーク加工物の製造方法>>
本発明のワーク加工物の製造方法は、前記ワーク加工用シートを、ワークに貼付する工程と、前記ワークをブレードダイシングして、ワーク加工物を得るダイシング工程と、を有する。前記ワーク加工用シートが基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層が金属石鹸を含有するので、ワークのダイシング工程において、ブレードダイシングを繰り返しても、チッピングサイズの増大を抑制できる。
【0110】
例えば、
図5は、本発明のワーク加工物の製造方法の一の実施形態を模式的に示す断面図である。本実施形態のワーク加工物の製造方法において、ワーク加工用シート101は、基材フィルム11上に粘着剤層12を備えるダイシングシートである。本実施形態のワーク加工物の製造方法は、ワーク加工用シート101の粘着剤層12を、ワーク9の裏面9bに貼付する工程(a)と、ワーク9をブレードダイシングして、ワーク加工物9’を得るダイシング工程(b)とを有する。粘着剤層12が金属石鹸を含有するので、ワーク9をブレードダイシングする際に、ブレードダイシングを繰り返しても、チッピングサイズの増大を抑制できる。
【0111】
本発明のワーク加工物の製造方法の他の実施形態のワーク加工物の製造方法は、基材フィルムの一方の表面に粘着剤層が積層されたワーク加工用シートと、さらに、粘着剤層の基材フィルムとは反対側の第1面上にフィルム状接着剤とを備えるダイシングダイボンディングシートを用いる。本実施形態のワーク加工物の製造方法は、前記ワーク加工用シートを、フィルム状接着剤を介して、ワークの裏面に貼付する工程と、前記ワークをブレードダイシングして、フィルム状接着剤付きのワーク加工物を得るダイシング工程とを有する。前記粘着剤層が金属石鹸を含有するので、ワークのダイシング工程において、ブレードダイシングを繰り返しても、チッピングサイズの増大を抑制できる。
【0112】
本発明のワーク加工物の製造方法の他の実施形態のワーク加工物の製造方法は、基材フィルムの一方の表面に粘着剤層が積層されたワーク加工用シートと、さらに、粘着剤層の基材フィルムとは反対側の第1面上に保護膜形成用フィルムとを備える裏面保護膜形成用複合シートを用いる。本実施形態のワーク加工物の製造方法は、前記ワーク加工用シートを、保護膜形成用フィルムを介して、ワークの裏面に貼付する工程と、前記ワークをブレードダイシングして、裏面保護膜付きのワーク加工物を得るダイシング工程とを有する。前記粘着剤層が金属石鹸を含有するので、ワークのダイシング工程において、ブレードダイシングを繰り返しても、チッピングサイズの増大を抑制できる。
【実施例0113】
以下、ワーク加工用シートとしてのダイシングシートの実施例により、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0114】
[実施例1]
(ダイシングシート)
剥離フィルム(SP-PET381031、リンテック製)の剥離処理面に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、紫外線硬化型の粘着剤層(厚さ5μm)を形成した。その後、粘着剤層の露出面と基材フィルム(厚さ80μmのポリプロピレンフィルム、三菱樹脂社製)とを貼合して、実施例1のダイシングシートを得た。
粘着剤組成物は、ブチルアクリレート91質量部と、アクリル酸9質量部と、とを共重合させて得られたアクリル共重合体(Mw:80万)33.6質量部(固形分)と、紫外線硬化性樹脂として、5~9官能ペンタエリスリトール系ウレタンアクリレート(商品名「セイカビーム(登録商標)14-29B」、大日精化工業社製、Mw=2300、Mw/エネルギー線硬化性基数の比=328~460)40質量部(固形分)と、トリレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」)5.625質量部(固形分)と、光重合開始剤として、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(商品名「OMNIRAD184」、IGM Resins社製)1.008質量部(固形分)と、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.06質量部(固形分)と、を含有し、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒を用いて、固形分濃度を30質量%に調節したものである。
実施例1のダイシングシートにおいて、粘着剤層(厚さ5μm)の1cm2当たりの金属含有量は、0.1058μg/cm2である。
【0115】
[実施例2]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.06質量部(固形分)を、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.03質量部(固形分)に変更した他は、実施例1と同様にして、実施例2のダイシングシートを得た。
実施例2のダイシングシートにおいて、粘着剤層(厚さ5μm)の1cm2当たりの金属含有量は、0.0529μg/cm2である。
【0116】
[実施例3]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.06質量部(固形分)を、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.01質量部(固形分)に変更した他は、実施例1と同様にして、実施例3のダイシングシートを得た。
実施例2のダイシングシートにおいて、粘着剤層(厚さ5μm)の1cm2当たりの金属含有量は、0.0176μg/cm2である。
【0117】
[実施例4]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.06質量部(固形分)を、Znを20質量%含有する金属石鹸(商品名「Zn-OCTOATE 20%T」、DIC株式会社製)0.07質量部(固形分)に変更した他は、実施例1と同様にして、実施例4のダイシングシートを得た。
実施例4のダイシングシートにおいて、粘着剤層(厚さ5μm)の1cm2当たりの金属含有量は、0.1029μg/cm2である。
【0118】
[実施例5]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.06質量部(固形分)を、Alを4.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Al-100」、DIC株式会社製)0.36質量部(固形分)に変更した他は、実施例1と同様にして、実施例5のダイシングシートを得た。
実施例5のダイシングシートにおいて、粘着剤層(厚さ5μm)の1cm2当たりの金属含有量は、0.1054μg/cm2である。
【0119】
[実施例6]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.06質量部(固形分)を、Niを10.0質量%含有する金属石鹸(商品名「Ni-OCTOATE 10%H」、DIC株式会社製)0.14質量部(固形分)に変更した他は、実施例1と同様にして、実施例6のダイシングシートを得た。
実施例6のダイシングシートにおいて、粘着剤層(厚さ5μm)の1cm2当たりの金属含有量は、0.1028μg/cm2である。
【0120】
[実施例7]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.06質量部(固形分)を、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.0005質量部(固形分)に変更した他は、実施例1と同様にして、実施例7のダイシングシートを得た。
実施例7のダイシングシートにおいて、粘着剤層(厚さ5μm)の1cm2当たりの金属含有量は、0.0009μg/cm2である。
【0121】
[比較例1]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.06質量部(固形分)を、用いなかった他は、実施例1と同様にして、比較例1のダイシングシートを得た。
比較例1のダイシングシートにおいて、粘着剤層(厚さ5μm)の1cm2当たりの金属含有量は、0.0000μg/cm2である。
【0122】
[比較例2]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、ジルコニウムを24.0質量%含有する金属石鹸(商品名「DICNATE(登録商標)Zr24%」、DIC株式会社製)0.06質量部(固形分)を、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)(商品名「アルミキレート D」、川研ファインケミカル株式会社製)0.2質量部(固形分)に変更した他は、実施例1と同様にして、比較例2のダイシングシートを得た。
比較例2のダイシングシートにおいて、粘着剤層(厚さ5μm)の1cm2当たりの金属含有量は、0.0698μg/cm2である。
【0123】
[ダイシング時のチッピング評価]
実施例1のダイシングシートを下記ワーク(被着体)に貼付した10枚の積層体を準備し、ダイシング装置(ディスコ社製,DFD-6361)に新品のブレードを装着して、以下の条件でダイシングし、チップ(すなわち、ワーク加工物)を得た。
・ワーク(被着体):#2000研磨ウエハ(ワークサイズ:12インチ径,厚さ200μm)
・ダイシングブレード:ディスコ社製27HECC
・ブレード回転数:30000rpm
・ダイシングスピード:50mm/s
・切り込み深さ:基材フィルムを粘着剤層との界面から20μmの深さまで切り込み
・ダイシングサイズ:3mm×3mm
【0124】
続いて、基材フィルム側から紫外線を照射(160mJ/cm2)した後、ワーク加工物のダイシングシートが貼付されていない面に転写テープ(リンテック社製「ADWILL D-210」)を貼付して、ワーク加工物をダイシングシートから前記転写テープへ転写させた。
次いで、ワーク加工物のダイシングシートが貼付されていた面側から、光学顕微鏡を用いてワーク加工物を観察し、チッピングの有無及び大きさを評価した。より具体的には、新品のブレードを装着してダイシングを行った積層体のうち、3枚目の積層体から転写されたワーク加工物400片、及び、10枚目の積層体から転写されたワーク加工物400片について、縦および横のダイシングラインに発生した最も大きな欠け(チッピング)の長さを、デジタル顕微鏡(キーエンス社製,VE-9800)を用いて測定した。測定結果を表1に示した。
【0125】
実施例2~7及び比較例1~2のダイシングシートを前記ワーク(被着体)に貼付した積層体についても、それぞれ、新品のブレードを用いて、上記のダイシング条件にてダイシングを行い、上記と同様に、紫外線を照射し、ワーク加工物を剥離して、最も大きな欠け(チッピング)の長さを測定した。測定結果を表1~表3に示した。
【0126】
以上の測定結果に基づき、耐チッピング性を次の評価基準により評価した。評価結果を表1~表3に示した。
【0127】
<結果>
◎:新品のブレードを用いてダイシングを開始し、ダイシング3枚目のウエハ(ワーク)のチッピングの最大長さに対する10枚目のウエハ(ワーク)のチッピングの最大長さの増加率が5%未満。
○:新品のブレードを用いてダイシングを開始し、ダイシング3枚目のウエハ(ワーク)のチッピングの最大長さに対する10枚目のウエハ(ワーク)のチッピングの最大長さの増加率が15%未満。
△:新品のブレードを用いてダイシングを開始し、ダイシング3枚目のウエハ(ワーク)のチッピングの最大長さに対する10枚目のウエハ(ワーク)のチッピングの最大長さの増加率が15%以上30%未満。
×:新品のブレードを用いてダイシングを開始し、ダイシング3枚目のウエハ(ワーク)のチッピングの最大長さに対する10枚目のウエハ(ワーク)のチッピングの最大長さの増加率が30%以上。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
表1~表3に示された通り、本発明のワーク加工用シートとしてのダイシングシートは、基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた粘着剤層と、を備え、前記粘着剤層は、金属石鹸を含有し、前記粘着剤層の、面積当たりの金属含有量が、0.0004μg/cm2以上であるので、ワークのダイシング工程において、新品のブレードを用いてダイシングを開始した後、ブレードダイシングを繰り返しても、チッピングサイズの増大を抑制できたことが分かる。
本発明のワーク加工用シート、前記ワーク加工用シートを備えるダイシングダイボンディングシート、及び、前記ワーク加工用シートを備える裏面保護膜形成用複合シートは、半導体装置の製造のために利用可能である。本発明のワーク加工用シートは、バックグラインドテープとしても、利用が可能である。
101,101’・・・ワーク加工用シート(ダイシングシート)、102・・・ダイシングダイボンディングシート、103・・・裏面保護膜形成用複合シート、11・・・基材フィルム、11a・・・基材フィルムの第1面、12・・・粘着剤層、12a・・・粘着剤層の第1面、13・・・フィルム状接着剤、14・・・保護膜形成用フィルム、9・・・ワーク、9a・・・ワークの回路面、9b・・・ワークの裏面、9’・・・ワーク加工物、9a’・・・ワーク加工物の回路面