(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157495
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】真空成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/56 20060101AFI20221006BHJP
B65H 19/22 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C23C14/56 A
B65H19/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061753
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松本 祐司
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐輔
【テーマコード(参考)】
3F064
4K029
【Fターム(参考)】
3F064AA03
3F064CA03
3F064DA01
3F064FA04
4K029AA25
4K029BA43
4K029BA46
4K029BA62
4K029BB02
4K029CA01
4K029CA05
4K029DB06
4K029DC03
4K029DC05
4K029FA05
4K029JA05
4K029JA10
4K029KA03
(57)【要約】
【課題】成膜後のフィルムを巻き取った状態で回収する。
【解決手段】真空成膜装置(100)は、真空状態に保たれるチャンバ(10)と、チャンバ(10)に配置され、回転ドラム(20)と、長尺フィルム(40)を繰り出す巻出ロール(21)と、巻出ロール(21)から繰り出された長尺フィルム(40)の一部を切り出す切断機構(52,62)と、チャンバ(10)に配置され、長尺フィルム(40)から切り出されて回転ドラム(20)の外周に密着した切出フィルム(40a)に膜を形成する成膜部(1)と、膜が所定数の層に形成された切出フィルム(40a)の両端を、切断機構(52,62)による切り出しで分断された長尺フィルム(40)に接続する接続機構(53,63)と、接続機構(53,63)によって接続された長尺フィルム(40)を巻き取る巻取ロール(31)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空状態に保たれるチャンバと、
前記チャンバに配置された回転ドラムと、
長尺フィルムを繰り出す巻出部と、
前記巻出部から繰り出された長尺フィルムの一部を切り出す切出部と、
前記チャンバに配置され、前記長尺フィルムから切り出されて前記回転ドラムの外周に密着した切出フィルムに膜を形成する成膜部と、
前記膜が所定数の層に形成された前記切出フィルムの両端を、前記切出部による切り出しで分断された前記長尺フィルムに接続する接続部と、
前記接続部によって接続された前記長尺フィルムを巻き取る巻取部と、
を備えていることを特徴とする真空成膜装置。
【請求項2】
前記膜が形成される前の前記切出フィルムの両端を接続することにより環状を成す環状フィルムを形成する環状化部と、
前記膜が形成された後の前記環状フィルムを前記切出フィルムに戻すように切断する切断部と、
前記環状フィルムを前記回転ドラムの外周に密着させ、かつ前記回転ドラムの回転と同期して移動させる移動部と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の真空成膜装置。
【請求項3】
前記成膜部は、前記回転ドラムが少なくとも1周回転する間に1層の膜を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の真空成膜装置。
【請求項4】
前記成膜部は、前記回転ドラムが複数回回転する間に複数層の膜を形成することを特徴とする請求項3に記載の真空成膜装置。
【請求項5】
前記回転ドラムは、鉛直方向の軸を中心に回転し、
前記成膜部は、複数の成膜装置を含み、
複数の前記成膜装置は、前記回転ドラムの外周の周囲に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
【請求項6】
前記回転ドラムは、水平方向の軸を中心に回転し、
前記成膜部は、複数の成膜装置を含み、
複数の前記成膜装置は、前記回転ドラムの外周の周囲に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
【請求項7】
真空状態と大気に開放される状態とにおかれ、前記チャンバと遮断可能に設けられた予備室をさらに備え、
前記巻出部および前記巻取部は、前記予備室に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の真空成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺フィルムに膜を形成する真空成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル基材に各種の膜を積層するために、真空下で成膜を行う成膜装置が用いられる。例えば、特許文献1には、ロール状の長尺フレキシブル基材を成膜ドラムに貼り付けて切断する構成が記載されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1には、成膜後のフィルムの扱いについては記載されていない。成膜後のフレキシブル基材を成膜ドラムから剥がして、枚葉の形態で製品化するものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成は、フィルムを繰り出す巻出装置およびフィルムを巻き取る巻取装置を備え、巻出装置および巻取装置の間で成膜を行うRTR(Roll to Roll)成膜装置のように、成膜後のフィルムを巻き取った状態で回収することができない。
【0006】
本発明の一態様は、成膜後のフィルムを巻き取った状態で回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る真空成膜装置は、真空状態に保たれるチャンバと、前記チャンバに配置された回転ドラムと、長尺フィルムを繰り出す巻出部と、前記巻出部から繰り出された長尺フィルムの一部を切り出す切出部と、前記チャンバに配置され、前記長尺フィルムから切り出されて前記回転ドラムの外周に密着した切出フィルムに膜を形成する成膜部と、前記膜が所定数の層に形成された前記切出フィルムの両端を、前記切出部による切り出しで分断された前記長尺フィルムに接続する接続部と、前記接続部によって接続された前記長尺フィルムを巻き取る巻取部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、成膜後のフィルムを巻き取った状態で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る真空成膜装置の概略構成を示す平面図である。
【
図2】上記真空成膜装置による長尺フィルムへの成膜において長尺フィルムを送る工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図3】上記成膜において上記長尺フィルムを切断する工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図4】上記成膜において上記長尺フィルムから切断された切出フィルムの両端を接続位置に移動させる工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図5】上記成膜において切断された上記切出フィルムを環状に接続する工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図6】上記成膜において環状に接続された環状フィルムを成膜可能な状態に準備する工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図7】上記成膜において成膜に先立って環状に接続された環状フィルムに前処理を行う工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図8】上記環状フィルムにNb
2O
5膜を形成する工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図9】上記環状フィルムにSiO
2膜を形成する工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図10】上記環状フィルムにAF層を形成する工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図11】成膜された上記環状フィルムを切断する工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図12】上記環状フィルムの切断された部分を上記長尺フィルムに接続する位置に移動させる工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図13】上記環状フィルムの切断された部分を上記長尺フィルムに接続する工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図14】上記環状フィルムが接続された上記長尺フィルムを送る工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図15】実施形態1の変形例に係る真空成膜装置であって、上記成膜において上記長尺フィルムから切断された切出フィルムの両端を接続位置に移動させる工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図16】上記変形例に係る真空成膜装置であって、上記切出フィルムを回転ドラムに固定する工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図17】上記変形例に係る真空成膜装置であって、成膜された上記切出フィルムを回転ドラムから剥離する工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図18】上記変形例に係る真空成膜装置であって、上記切出フィルムの剥離された部分を上記長尺フィルムに接続する位置に移動させる工程を示す真空成膜装置の平面図である。
【
図19】本発明の実施形態2に係る真空成膜装置の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態1に係る真空成膜装置100の概略構成を示す平面である。
【0012】
図1に示すように、真空成膜装置100は、チャンバ10と、回転ドラム20と、制御装置30とを備える。また、真空成膜装置100は、成膜部1と、巻出搬送機構2と、巻取搬送機構3と、共通搬送機構4と、切断・接続機構5~7と、ループ搬送機構8と、回転軸9(移動部)とを備えている。成膜部1と、巻出搬送機構2と、巻取搬送機構3と、共通搬送機構4(移動部)と、切断・接続機構5~7と、ループ搬送機構8(移動部)は、チャンバ10の内部に配置されている。
【0013】
チャンバ10は、円筒状に形成されており、内部を真空状態に保つことができるように構成されている。チャンバ10は、周壁の強度が高くなるので周壁を薄く形成することができるだけでなく、デッドスペースを減らすることができるという観点から、円筒状に形成されることが好ましい。しかしながら、チャンバ10の形状は、円筒状に限定されず、直方体、立方体などの、他の形状であってもよい。
【0014】
回転ドラム20は、チャンバ10の内部に配置された円筒形状を成すドラムである。回転ドラム20は、水冷式の冷却装置(図示せず)によって冷却される。回転ドラム20は、図示しないモーターによって駆動されることにより、所定の回転方向に鉛直方向の軸を中心に回転する縦型のドラムである。
【0015】
回転ドラム20の外周に後述する長尺フィルム40を密着させる。回転ドラム20は、所定幅の長尺フィルム40を外周に密着させることができるように長尺フィルム40の幅より広い外周幅(高さ)を有している。なお、回転ドラム20は、長尺フィルム40が冷却不要な基材である場合、冷却されない。
【0016】
なお、回転ドラム20は、縦型のドラムに限らず、水平方向の軸を中心に回転する横型のドラムであってもよい。また、図示はしないが、チャンバ10の内壁や回転ドラム20の周壁への膜の付着を防止するための防着板が設けられていてもよい。
【0017】
制御装置30は、回転ドラム20の回転を制御する。また、制御装置30は、成膜部1、巻出搬送機構2、巻取搬送機構3、共通搬送機構4、切断・接続機構5~7、ループ搬送機構8および回転軸9の動作を制御する。また、制御装置30は、チャンバ10を真空状態になるように排気する真空ポンプ(図示せず)の動作を制御する。
【0018】
成膜部1は、長尺フィルム40の一部に膜を形成する。具体的には、成膜部1は、長尺フィルム40からその一部が切り出された後述する切出フィルム40a(
図4参照)が環状に接続された後述する環状フィルム40b(
図5参照)に膜を形成する。成膜部1は、回転ドラム20が少なくとも1周回転する間に1層の膜を形成する。
【0019】
成膜部1は、単層の膜を積層する成膜装置として、第1スパッタ源12と、有機蒸発源13と、第2スパッタ源14とを有している。また、成膜部1は、任意の構成としてプラズマ源11を備えていてもよい。プラズマ源11、第1スパッタ源12、有機蒸発源13および第2スパッタ源14は、縦型の回転ドラム20または横型の回転ドラム20に関わらず、回転ドラム20の外周の周囲に配置されている。また、プラズマ源11、第1スパッタ源12、有機蒸発源13および第2スパッタ源14は、回転ドラム20の回転方向と逆方向に、プラズマ源11、第1スパッタ源12、有機蒸発源13、第2スパッタ源14の順に互いに間隔をおいて配置されている。
【0020】
なお、プラズマ源11、第1スパッタ源12、有機蒸発源13および第2スパッタ源14は、回転ドラム20の回転方向と逆方向に配置されることには限定されない。また、ドラム式の真空成膜装置100において、回転ドラム20の複数回の回転で所定膜厚に環状フィルム40bに成膜させる。このため、1層を成膜させている間は、特定の第1スパッタ源12または第2スパッタ源14もしくは有機蒸発源13を駆動することになる。したがって、有機蒸発源13が配置される位置は上記の位置に限定されない。
【0021】
プラズマ源11は、成膜に先立って環状フィルム40bに前処理を行うためにO2プラズマを発生する。第1スパッタ源12は、スパッタリングによってNb2O5膜を生成するために、スパッタリングの種類に応じたカソードを有している。有機蒸発源13は、AFP(Anti-Finger Print)層を蒸着によって形成するために、成膜材料を蒸発させる蒸発源である。第2スパッタ源14は、スパッタリングによってSiO2膜を生成するために、スパッタリングの種類に応じたカソードを有している。
【0022】
巻出搬送機構2は、長尺フィルム40を繰り出すように搬送する機構である。巻出搬送機構2は、巻出ロール21(巻出部)と、ローラ22とを有している。巻出ロール21は、成膜に供される長尺フィルム40がロール状に巻かれている。ローラ22は、巻出ロール21から繰り出される長尺フィルム40の搬送方向を回転ドラム20側に向けるように、その外周に長尺フィルム40が当てられている。
【0023】
巻取搬送機構3は、長尺フィルム40を巻き取るように搬送する機構である。巻取搬送機構3は、巻取ロール31(巻取部)と、ローラ32とを有している。巻取ロール31は、成膜された長尺フィルム40をロール状に巻き取る。ローラ32は、回転ドラム20から送られてくる長尺フィルム40の搬送方向を巻取ロール31側に向けるように、その外周に長尺フィルム40が当てられている。
【0024】
共通搬送機構4は、長尺フィルム40の搬送および環状フィルム40bの搬送の双方に共通に用いられる機構である。共通搬送機構4は、ローラ41,42を有している。
【0025】
ローラ41は、回転ドラム20の近傍で巻出搬送機構2寄りに配置されている。ローラ41は、長尺フィルム40の搬送時に、ローラ22,41に架け渡された長尺フィルム40の移動方向を回転ドラム20の外周側に転換するように、その外周に長尺フィルム40が当てられている。ローラ42は、回転ドラム20の近傍で巻取搬送機構3寄りに配置されている。ローラ42は、長尺フィルム40の搬送時に、ローラ32,42に架け渡された長尺フィルム40の移動方向を回転ドラム20の外周側に転換するように、その外周に長尺フィルム40が当てられている。
【0026】
切断・接続機構5は、ローラ22,41の間に配置されている。切断・接続機構5は、固定機構51と、切断機構52(切出部)と、接続機構53(接続部)と、ハンドリング機構54とを有している。
【0027】
固定機構51は、長尺フィルム40および切出フィルム40aを固定する機構である。固定機構51の固定手法は、チャンバ10内の真空環境において長尺フィルム40および切出フィルム40aを固定できればよく、静電気を用いる手法、機械的手法(例えばクランプ)などを用いることができる。切断機構52は、成膜前の長尺フィルム40を切断する機構である。接続機構53は、切断された状態の長尺フィルム40の一端部と、長尺フィルム40から切断された状態の切出フィルム40aの一端部とを貼り合わせることによって接続する機構である。真空成膜装置100が可動を開始する初期状態では、接続機構53が切断機構52よりも固定機構51に近い位置に配置されている。ハンドリング機構54は、切出フィルム40aの一端部を切断・接続機構5と切断・接続機構7との間で移動させる機構である。
【0028】
切断・接続機構6は、ローラ32,42の間に配置されている。切断・接続機構6は、固定機構61と、切断機構62(切出部)と、接続機構63(接続部)と、ハンドリング機構64とを有している。
【0029】
固定機構61は、長尺フィルム40および切出フィルム40aを固定する機構である。固定機構61も、固定機構51と同様の固定手法を用いることができる。切断機構62は、成膜前の長尺フィルム40を切断する機構である。接続機構63は、切断された状態の長尺フィルム40の他端部と、長尺フィルム40から切断された状態の切出フィルム40aの他端部とを貼り合わせることによって接続する機構である。上記の初期状態では、接続機構63が切断機構62よりも固定機構61に近い位置に配置されている。ハンドリング機構64は、切出フィルム40aの他端部を切断・接続機構6と切断・接続機構7との間で移動させる機構である。
【0030】
切断・接続機構7は、ループ搬送機構8の後述するローラ81,82の間に配置されている。切断・接続機構7は、固定機構はと、接続機構72(環状化部)と、切断機構73(切断部)とを有している。
【0031】
固定機構71は、切出フィルム40aおよび環状フィルム40bを固定する機構である。固定機構71も、固定機構51と同様の固定手法を用いることができる。接続機構72は、成膜前の切出フィルム40aの両端を貼り合わせて直接接続することにより環状を成す環状フィルム40bを形成する機構である。切断機構73は、成膜後の環状フィルム40bを切断する機構である。上記の初期状態では、接続機構72が切断機構73よりも固定機構71に近い位置に配置されている。
【0032】
ループ搬送機構8は、共通搬送機構4とともに、回転ドラム20と同期して環状フィルム40bを移動させる。ループ搬送機構8は、ローラ81,82を有している。ローラ81,82は、ローラ41,42よりもチャンバ10の内壁に近い側に、ローラ41,42に近接し、かつローラ41,42よりも狭い間隔をおいて配置されている。
【0033】
回転軸9は、回転ドラム20およびローラ41の付近で長尺フィルム40または環状フィルム40bの裏面側の位置に配置されている。回転軸9は、長尺フィルム40または環状フィルム40bが静止状態にあるときに、
図1に示す長尺フィルム40または環状フィルム40bに張力を与えない待機位置に配置される。また、回転軸9は、長尺フィルム40または環状フィルム40bを回転ドラム20の回転に合わせて送るときに、長尺フィルム40または環状フィルム40bを回転ドラム20側に押し出す押出位置に移動する。回転軸9は、押出位置にあるときに、長尺フィルム40または環状フィルム40bに張力を与える。
【0034】
回転軸9は、上記の待機位置と押出位置との間で移動可能となるように図示しない駆動機構によって駆動される。また、張力を与えるときに長尺フィルム40または環状フィルム40bを傷付けないように自由回転する。
【0035】
以上のように構成される真空成膜装置100による成膜動作について、
図2~
図14を参照して説明する。
【0036】
図2は、真空成膜装置100による長尺フィルム40への成膜において長尺フィルム40を送る工程を示す真空成膜装置100の平面図である。
図3は、長尺フィルム40を切断する工程を示す。
図4は、長尺フィルム40から切断された切出フィルム40aの両端を接続位置に移動させる工程を示す。
図5は、切出フィルム40aを環状に接続する工程を示す。
図6は、環状に接続された環状フィルム40bを成膜可能な状態に準備する工程を示す。
図7は、環状フィルム40bに成膜に先立って前処理を行う工程を示す。
図8は、環状フィルム40bにNb
2O
5膜を形成する工程を示す。
図9は、環状フィルム40bにSiO
2膜を形成する工程を示す。
図10は、環状フィルム40bにAFP層を形成する工程を示す。
図11は、成膜された環状フィルム40bを切断する工程を示す。
図12は、環状フィルム40bの切断された部分を長尺フィルム40に接続する位置に移動させる工程を示す。
図13は、環状フィルム40bの切断された部分を長尺フィルム40に接続する工程を示す。
図14は、環状フィルム40bが接続された長尺フィルム40を送る工程を示す。
【0037】
(1)フィルム送り工程
図2に示すように、まず、回転軸9が待機位置から押出位置に移動して長尺フィルム40を押し出す。これにより、長尺フィルム40は、張力が与えられて、回転ドラム20の外周に密着する。この状態で、回転ドラム20、巻出ロール21および巻取ロール31が回転駆動される。これにより、長尺フィルム40は、環状フィルム40bを形成する長さだけ、張力が与えられた状態で繰り出し側から巻き取り側に送られる。
【0038】
なお、初期の長尺フィルム40の真空成膜装置100へのセットは、フィルム送り工程に先立って人手によって行われる。そのセットは、具体的には、巻出ロール21から引き出した長尺フィルム40を、ローラ22,41に架け渡し、回転ドラム20の外周に巻き付け、ローラ42,32に架け渡し、さらに長尺フィルム40の先端を巻取ロール31に固定する一連の作業である。
【0039】
(2)長尺フィルム切断工程
図3に示すように、回転ドラム20、巻出ロール21、巻取ロール31およびローラ22,32,41,42の回転が停止するとともに、回転軸9が押出位置から待機位置に移動する。これにより、長尺フィルム40に与えられていた張力が解除される。この状態で、切断・接続機構5,6は、長尺フィルム40を切断する。
【0040】
切断・接続機構5,6において、固定機構51,61が長尺フィルム40の裏面に接する位置まで移動して、長尺フィルム40を固定するとともに、切断機構52,62および接続機構53,63が、それぞれ初期状態の位置から入れ替わるように移動する。切断機構52,62は、この状態から長尺フィルム40に向かって移動する。長尺フィルム40は、固定機構51,61によって固定された状態で、切断機構52,62の刃(図示せず)によって切断される。これにより、長尺フィルム40の一部が切り出される。
【0041】
(3)第1ハンドリング工程
図4に示すように、切断・接続機構5,6において、ハンドリング機構54,64は、それぞれ、長尺フィルム40から切り出された切出フィルム40aの一端と他端とを把持して、切断・接続機構7に移動させる。また、ハンドリング機構54,64は、それぞれ、切出フィルム40aの一端と他端とを、固定機構71と接続機構72との間で重ね合わせる。なお、切出フィルム40aに対して、プラズマ、イオンボンバードメント、UV照射などの前処理が行われることがある。
【0042】
ここで、固定機構51は、2つの分割部51a,51bに分割され、固定機構61は、2つの分割部61a,61bに分割されている。分割部51a,61aは、それぞれ長尺フィルム40の切断された2つの端部を固定した状態を維持する。一方、分割部51b,61bは、ハンドリング機構54,64の動作を妨げないように後退する。
【0043】
(4)フィルム接続工程
図5に示すように、切断・接続機構7において、固定機構71が切出フィルム40aの一端と他端とが重ね合わされた位置まで移動して、切出フィルム40aの両端を固定する。この状態で、接続機構72は、切出フィルム40aの両端の位置まで移動して、テープによる接着、接着剤による接着、熱圧着などによって切出フィルム40aの両端を直接貼り合わせて接続する。このようにして、
図6に示すような環状フィルム40bが形成される。なお、切出フィルム40aの両端が貼り合わされる箇所は重なっているが、この箇所は製品に供されない捨て代になる。
【0044】
(5)成膜準備工程
図6に示すように、切断・接続機構7において、固定機構71および接続機構72が待機位置に退くと、回転軸9が待機位置から押出位置に移動して、環状フィルム40bに張力を与える。このように、成膜のために環状フィルム40bを送ることが可能な状態で成膜に臨む。
【0045】
(6)AR膜成膜前処理工程
図7に示すように、上述したフィルム送り工程とは異なり、ローラ41,42,81,82および回転ドラム20が回転することにより、環状フィルム40bを送る。この状態では、ローラ41,42,81,82の少なくともいずれか1つが回転駆動されていればよく、他は自由回転する。プラズマ源11は、環状フィルム40bが送られた状態で、O
2プラズマを環状フィルム40bの表面に放射して、環状フィルム40bに前処理(表面処理)を施す。これにより、環状フィルム40bの表面は、有機物が除去されたり、改質されたりして、成膜に適した状態となる。
【0046】
なお、AR膜成膜の前処理工程として用いるプラズマは、環状フィルム40bが送られた状態で、O2プラズマに限らず、N2プラズマ、Arプラズマなどを用いてもよい。また、AR膜成膜の前処理としては、O2、N2、Arまたはこれらの組み合わせによるプラズマ処理だけでなく、イオンボンバードメント、UV照射などを行ってもよい。これは、後述するAFP膜成膜の前処理工程でも同じである。
【0047】
(7)Nb
2O
5成膜(1層目)工程
図8に示すように、第1スパッタ源12は、環状フィルム40bが送られた状態で、1層目となるNb
2O
5を成膜する。
【0048】
(8)SiO
2成膜(2層目)工程
図9に示すように、第2スパッタ源14は、環状フィルム40bが送られた状態で、1層目のNb
2O
5膜の上に2層目となるSiO
2を成膜する。
【0049】
(9)Nb
2O
5成膜(3層目)工程
図8に示すように、第1スパッタ源12は、環状フィルム40bが送られた状態で、2層目となるSiO
2膜の上に3層目となるNb
2O
5を再び成膜する。
【0050】
(10)SiO
2成膜(4層目)工程
図9に示すように、第2スパッタ源14は、環状フィルム40bが送られた状態で、3層目のNb
2O
5膜の上に4層目となるSiO
2を再び成膜する。このようにして、4層の膜が形成されることにより、AR(Anti-Reflection)膜が形成される。
【0051】
環状フィルム40bを1周分送る間に、複数の成膜処理(例えば1層目および2層目)を行うことも可能である。しかしながら、例えば、第1スパッタ源12および第2スパッタ源14によって同時にスパッタを行おうとすると、ガス種や適正な圧力が異なるためにそれぞれのスパッタ領域を区画する必要がある。また、各区画を排気する装置も必要となるので、チャンバが複雑な構成となる。このような不都合を回避するために、環状フィルム40bを1周分送るごとに1層ずつ成膜処理を行う。
【0052】
(8)AFP膜成膜前処理工程
図7に示すように、プラズマ源11は、環状フィルム40bが送られた状態で、O
2プラズマを環状フィルム40bの表面に放射して、環状フィルム40bに前処理(表面処理)を施す。
【0053】
(9)AFP膜成膜工程
図10に示すように、有機蒸発源13は、環状フィルム40bに形成されたAR膜上に、5層目となるAFP膜を成膜する。このようにして成膜処理が完了する。
【0054】
(10)環状フィルム切断工程
図11に示すように、回転ドラム20、ローラ41,42,81,82の回転が停止するとともに、回転軸9が押出位置から待機位置に移動する。これにより、環状フィルム40bに与えられていた張力が解除される。この状態で、切断・接続機構7は、環状フィルム40bを切断する。
【0055】
切断・接続機構7において、固定機構71が環状フィルム40bの裏面に接する位置まで移動して、環状フィルム40bを固定するとともに、接続機構72および切断機構73が、それぞれ初期状態の位置から入れ替わるように移動する。切断機構73は、この状態から環状フィルム40bに向かって移動する。これにより、環状フィルム40bは、固定機構71によって固定された状態で切断機構73の刃(図示せず)によって切断される。このようにして環状フィルム40bがフィルム接続工程で接続された位置で切断される。これにより、切出フィルム40aが形成される。
【0056】
(11)第2ハンドリング工程
図12に示すように、切断・接続機構5,6において、第1ハンドリング工程で後退していた分割部51b,61bが分割部51a,61aに並ぶ位置まで移動する。ハンドリング機構54,64は、この状態で、切断・接続機構7から固定機構51,61まで切出フィルム40aの端部を移動させる。分割部51a,61aは、それぞれ長尺フィルム40の分断された2つの端部を固定し、分割部51b,61bは、それぞれ切出フィルム40aの2つの端部を固定する。この状態で、長尺フィルム40の端部と切出フィルム40aの端部とが重なっている。
【0057】
(12)長尺フィルム復元工程
図13に示すように、切断・接続機構5,6において、切断機構52,62および接続機構53,63は、それぞれ入れ替わるように移動する。接続機構53,63は、この状態から、長尺フィルム40の端部と切出フィルム40aの端部とが重なる位置まで移動して、長尺フィルム40の端部と切出フィルム40aの端部とを接続する。このようにして、長尺フィルム40は、分断された箇所に切出フィルム40aが継ぎ足されることにより、元の長尺フィルム40に復元される。
【0058】
(13)フィルム送り工程
図14に示すように、切断・接続機構5,6において、切断機構52,62および接続機構53,63は初期位置に戻る。また、回転軸9は、押出位置に移動して、長尺フィルム40に張力を与える。この状態で、最初のフィルム送り工程(
図2参照)と同様、長尺フィルム40を送る。これにより、長尺フィルム40は、環状フィルム40bを形成する長さだけ、繰り出し側から巻き取り側に送られる。
【0059】
このような(1)~(13)の一連の工程を繰り返すことにより、長尺フィルム40における複数の一定の範囲にそれぞれ、2層のSiO2膜および2層のNb2O5膜が交互に積層されたAR膜が形成されるとともに、AR膜上にAFP膜が形成される。
【0060】
なお、本実施形態では、上記のように長尺フィルム40にAR膜およびAFP膜を形成する真空成膜装置100について説明したが、長尺フィルム40に形成する膜については、AR膜およびAFP膜に限定されない。真空成膜装置100は、成膜部1に設けられる成膜装置を適宜選択することにより、各種の膜を長尺フィルム40に形成することができる。これは、後述する実施形態2でも同様である。
【0061】
また、本実施形態では、AR膜の形成をスパッタリングで行い、AFP膜の形成を真空蒸着で行うことを説明した。しかしながら、AR膜およびAFP膜の形成については、スパッタリングおよび真空蒸着に限らず、CVD、イオンプレーティングなどの方法を組み合わせて行ってもよい。
【0062】
また、本実施形態では、環状フィルム40bに膜を形成するが、切出フィルム40aに膜を形成してもよい。例えば、切出フィルム40aの両端同士を、環状フィルム40bを形成するようには直接接続せずに、テープなどの接続部材を介して接続する。このため、真空成膜装置100は、接続機構72に代えて、接続機構72が配置された位置で切出フィルム40aの両端を接続部材で接続する接続機構を備える。あるいは、真空成膜装置100は、切出フィルム40aを回転ドラム20に密着させた状態で回転ドラム20に固定してもよい。これにより、両端が直接接続されていない切出フィルム40aにも、膜を形成することができる。
【0063】
以下に、切出フィルム40aを回転ドラム20に固定する真空成膜装置100の変形例について説明する。
【0064】
図15は、実施形態1の変形例に係る真空成膜装置100Aであって、成膜において長尺フィルム40から切断された切出フィルム40aの両端を接続位置に移動させる工程を示す真空成膜装置100Aの平面図である。
図16は、成膜において切出フィルム40aを回転ドラム20に固定する工程を示す真空成膜装置100Aの平面図である。
図17は、成膜された切出フィルム40aを回転ドラムから剥離する工程を示す真空成膜装置100Aの平面図である。
図18は、切出フィルム40aの剥離された部分を長尺フィルム40に接続する位置に移動させる工程を示す真空成膜装置100Aの平面図である。
【0065】
図15に示すように、真空成膜装置100Aにおいて、固定機構71は、ローラ41,42のほぼ中間の位置に、回転ドラム20の内周に接する固定位置と、回転ドラム20の内周から離れた待機位置とで移動可能となるように設けられている。固定機構71は、回転ドラム20の回転時に待機位置に配置され、切出フィルム40aの両端を回転ドラム20に固定するときに固定位置に配置される。
【0066】
また、真空成膜装置100Aは、ニップロール23,24を備えている。ニップロール23はローラ41の付近に配置され、ニップロール24はローラ42の付近に配置されている。ニップロール23,24は、切出フィルム40aを回転ドラム20に密着させるように、切出フィルム40aを回転ドラム20の外周に押圧する回転可能なローラである。
【0067】
なお、真空成膜装置100Aにおいて、接続機構72は、切出フィルム40aの両端を回転ドラム20の外周に固定する機能を兼ね備えている。また、真空成膜装置100Aにおいて、切断機構73は、切出フィルム40aの両端を回転ドラム20の外周から剥離する機能を兼ね備えている。
【0068】
図15に示すように、ハンドリング機構54,64が、切出フィルム40aの両端を回転ドラム20の外周に移動させる。この状態では、ニップロール23,24が切出フィルム40aを回転ドラム20の外周に押圧しているので、切出フィルム40aが回転ドラム20の外周から外れることはない。
【0069】
続いて、
図16に示すように、固定機構71が回転ドラム20の内周に接する位置に配置されると、接続機構72は、切出フィルム40aの両端の位置まで移動して、テープによる接着、接着剤による接着などによって切出フィルム40aの両端を回転ドラム20の外周に固定する。固定機構71は、接続機構72による切出フィルム40aの回転ドラム20への固定時に、接続機構72から回転ドラム20に加わる力を回転ドラム20の内周側で受け止めている。
【0070】
なお、
図16には、1つずつ設けられた固定機構71および接続機構72によって、切出フィルム40aの両端を回転ドラム20に固定する構成を示したが、この構成には限定されない。例えば、真空成膜装置100Aにおいて、固定機構71および接続機構72が2組設けられ、それぞれが切出フィルム40aの一端を回転ドラム20の外周に固定するようにしてもよい。これにより、切出フィルム40aの両端を間隔が空いた状態で回転ドラム20の外周に固定する場合、切出フィルム40aの両端の間隔に応じて、2組の固定機構71および接続機構72の間隔を調整することができる。
【0071】
このような状態で切出フィルム40aに対して所定の成膜処理が行われると、
図17に示すように、切断機構73は、切出フィルム40aの両端の位置まで移動して、切出フィルム40aの両端を回転ドラム20から剥離する。そして、
図18示すように、ハンドリング機構54,64は、回転ドラム20の外周から固定機構51,61まで切出フィルム40aの端部を移動させる。その後、上述した「(12)長尺フィルム復元工程」以降の処理が行われる。
【0072】
なお、上述したような接続部材による切出フィルム40aの両端の接続については、真空成膜装置100Aにおいて行われてもよい。具体的には、
図15に示すように、切出フィルム40aを回転ドラム20に密着させた状態で、切出フィルム40aの両端をテープなどの接続部材を介して接続する。
【0073】
以上のように、本実施形態の真空成膜装置100は、チャンバ10と、回転ドラム20と、巻出ロール21と、切断機構52,62と、成膜部1と、接続機構53,63接続部と、巻取ロール31とを備えている。チャンバ10は、真空状態に保たれる。巻出ロール21は、巻かれた長尺フィルム40を繰り出す。切断機構52,62は、前記巻出部から繰り出された長尺フィルム40の一部を切り出す。成膜部1は、チャンバ10に配置され、長尺フィルム40から切り出されて回転ドラム20の外周に密着した切出フィルム40aに膜を形成する。接続機構53,63は、膜が所定数の層に形成された切出フィルム40aの両端を、切断機構52,62による切り出しで分断された長尺フィルム40に接続する。巻取ロール31は、接続機構53,63によって接続された長尺フィルム40を巻き取る。
【0074】
上記の構成では、成膜後の切出フィルム40aを長尺フィルム40に接続することにより、巻取ロール31によって巻き取ることができる。これにより、成膜後の長尺フィルム40を巻き取った状態で回収することができる。
【0075】
また、真空成膜装置100は、接続機構72と、切断機構73と、共通搬送機構4と、ループ搬送機構8と、回転軸9とを備えている。固定機構71は、膜が形成される前の切出フィルム40aの両端を接続することにより環状を成す環状フィルム40bを形成する。切断機構73は、膜が形成された後の環状フィルム40bを切出フィルム40aに戻すように切断する。共通搬送機構4、ループ搬送機構8および回転軸9は、環状フィルム40bを回転ドラム20の外周に密着させ、かつ回転ドラム20の回転と同期して移動させる。
【0076】
上記構成によれば、回転ドラム20の複数の回転によって複数層の膜を長尺フィルム40上に形成するために、切出フィルム40aから環状フィルム40bが作成される。環状フィルム40bは、回転ドラム20の外周に密着しながら回転ドラム20の回転に合わせて移動する。また、成膜後の環状フィルム40bは、分断された長尺フィルム40に接続されて連続した状態に戻る。これにより、回転ドラム20に切出フィルム40aを直接貼り付ける場合と比べて、回転ドラム20へのフィルムの装着と取り外しとを容易に行うことができる。
【0077】
また、真空成膜装置100においては、成膜部1は、回転ドラム20が少なくとも1周回転する間に1層の膜を形成してもよい。また、真空成膜装置100においては、成膜部1は、回転ドラム20が複数回回転する間に複数層の膜を形成してもよい。
【0078】
上記構成によれば、長尺フィルム40上に成膜条件が異なる複数の膜を形成するために、回転ドラム20が少なくとも1周回転するごとにチャンバ10内で成膜条件が変更される。これにより、回転ドラム20を少なくとも1周させる間に長尺フィルム40上に成膜条件が異なる複数の膜を形成するためにチャンバ10内を複数の成膜室で区画する必要がなくなる。したがって、複数層の膜を形成するためのチャンバの構造を簡素化することができる。
【0079】
また、真空成膜装置100においては、回転ドラム20は、鉛直方向の軸を中心に回転し、成膜部1は、単層の膜を積層する成膜装置として、第1スパッタ源12、有機蒸発源13および第2スパッタ源14を含んでいる。また、成膜部1は、任意の構成としてプラズマ源11を備えていてもよい。プラズマ源11、第1スパッタ源12、有機蒸発源13および第2スパッタ源14は、回転ドラム20の外周の周囲に配置されている。
【0080】
上記構成によれば、回転ドラム20のドラム長またはドラム高さを適宜設定することにより、広い幅の長尺フィルム40に成膜することができる。これにより、大型の成膜フィルム製品を製造することが可能になる。
【0081】
また、真空成膜装置100においては、回転ドラム20は、水平方向の軸を中心に回転し、成膜部1は、単層の膜を積層する成膜装置として、第1スパッタ源12、有機蒸発源13および第2スパッタ源14を含んでいてもよい。また、成膜部1は、任意の構成としてプラズマ源11を備えていてもよい。プラズマ源11、第1スパッタ源12、有機蒸発源13および第2スパッタ源14は、回転ドラム20の外周の周囲に配置されている。
【0082】
上記構成によれば、回転ドラム20の外周の幅を適宜設定することにより、広い幅の長尺フィルムに成膜することができる。これにより、大型の成膜フィルム製品を製造することが可能になる。
【0083】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0084】
図19に示すように、真空成膜装置200は、実施形態1の真空成膜装置100と同じく、成膜部1と、巻出搬送機構2と、巻取搬送機構3と、共通搬送機構4と、切断・接続機構5~7と、ループ搬送機構8と、回転軸9と、チャンバ10と、回転ドラム20とを備える。また、真空成膜装置200は、ロードロック室50(予備室)と、ゲートバルブ60と、共通搬送機構70と、制御装置80とを備えている。
【0085】
成膜部1、共通搬送機構4、回転軸9および回転ドラム20は、チャンバ10の内部に配置されている。
【0086】
ロードロック室50は、真空状態と大気に開放される状態とにおかれ、チャンバ10と遮断可能に設けられている。ロードロック室50は、初期の長尺フィルム40の真空成膜装置200へのセットが行われるとき、および巻取ロール31に完全に巻き取られた長尺フィルム40を巻取ロール31から取り外すときに、大気に開放される。また、ロードロック室50は、上述したフィルム送り工程から長尺フィルム40が巻取ロール31に完全に巻き取られるまでの期間に、チャンバ10とともに真空状態に保たれる。
【0087】
ゲートバルブ60は、チャンバ10とロードロック室50との間に設けられている。ゲートバルブ60は、真空状態に保たれたチャンバ10と大気状態のロードロック室50とを隔離してシールする。ゲートバルブ60は、チャンバ10とロードロック室50との間で長尺フィルム40または環状フィルム40bが通過するための2つの通過室60aを有している。
【0088】
通過室60aは、ロードロック室50の内部が大気に開放されている状態で、長尺フィルム40または環状フィルム40bを挟むようにして閉じ、ロードロック室50の内部が真空状態に保たれている状態で開く。通過室60aが閉じている状態では、チャンバ10の温度が遮断されるので、ロードロック室50に伝わらない。
【0089】
ゲートバルブ60は、通過室60aにおいて、図示はしないが、長尺フィルム40または環状フィルム40bを挟む第1挟持体および第2挟持体を有している。第1挟持体および第2挟持体は、ともに、長尺フィルム40を弾性体で挟み込むことにより、真空成膜装置200においてロードロック室50とチャンバ10とを独立して気密を維持させることができる。
【0090】
ロードロック室50には、巻出搬送機構2、巻取搬送機構3、切断・接続機構5~7、ループ搬送機構8および共通搬送機構70が配置されている。ループ搬送機構8は、ロードロック室50におけるゲートバルブ60が接する壁面と対向する壁面の付近に配置されている。ループ搬送機構8を構成するローラ81,82は、回転ドラム20の中心と、ゲートバルブ60の中間位置とを通る直線Lに対してそれぞれ対称に配置されている。なお、ローラ81,82は、必ずしも、直線Lに対してそれぞれ対称に配置されていなくてもよい。
【0091】
共通搬送機構70は、上述した共通搬送機構4と同じく、長尺フィルム40および環状フィルム40bの搬送に共通して用いられる機構である。共通搬送機構70は、ローラ70a~70hを有している。
【0092】
ローラ70a,70c,70e,70g,81と、ローラ70b,70d,70f,70h,82とは、上記の直線Lに対してそれぞれ対称に配置されている。ローラ70a,70bの間隔と、ローラ70c,70dの間隔と、ローラ70h,70gの間隔とは、同じであり、かつローラ81,82の間の間隔よりもやや広い。これらのローラ間の間隔は、一例であって、この例に限定されない。
【0093】
ローラ70a,70c,70gは、ローラ81とロードロック室50のチャンバ10側の壁面との間に間隔をおいて並ぶように配置されている。ローラ70b,70d,70hは、ローラ82とロードロック室50のチャンバ10側の壁面との間に間隔をおいて並ぶように配置されている。ローラ70e,70fは、ローラ70c,70dとローラ70g,70hとの間で、ローラ70c,70dの間隔よりも広い幅を有する位置に配置されている。
【0094】
制御装置80は、回転ドラム20の回転を制御するほか、巻出搬送機構2、巻取搬送機構3、切断・接続機構5~7、ループ搬送機構8、ゲートバルブ60および共通搬送機構70の動作を制御する。また、制御装置80は、チャンバ10およびロードロック室50を真空状態になるように排気する真空ポンプ(図示せず)の動作を制御する。
【0095】
以上のように、本実施形態の真空成膜装置200は、真空状態と大気に開放される状態とにおかれ、チャンバ10と遮断可能に設けられたロードロック室50をさらに備えている。また、真空成膜装置200において、巻出ロール21および巻取ロール31は、ロードロック室50に配置されている。
【0096】
上記のように構成される真空成膜装置200は、真空成膜装置100と同様に、上述した(1)~(13)の一連の工程を繰り返して行うことにより、長尺フィルム40に膜を形成することができる。
【0097】
また、巻出ロール21および巻取ロール31がロードロック室50に配置されるので、環状フィルム40bのループ長を長くすることができる。これにより、1回の成膜処理で成膜される環状フィルム40bの長さを長くすることができる。したがって、成膜フィルムの生産効率を向上させることができる。
【0098】
また、成膜中に有機蒸発源13が高温となるチャンバ10と、ロードロック室50とが遮断される。これにより、ロードロック室50において巻取ロール31によって巻き取られた成膜後の長尺フィルム40を有機蒸発源13の温度を低下させずに取り出すことができる。
【0099】
また、新たな長尺フィルム40を巻出ロール21にセットし、ロードロック室50に残された環状フィルム40bと新たな長尺フィルム40とを接続するとともに、巻取ロール31に空のコアをセットして、ロードロック室50に残された環状フィルム40bの端部を空のコアに巻き取らせた後、ロードロック室50を真空状態にすることで成膜処理を継続させることができる。したがって、チャンバ10に巻取ロール31が配置される構成のように、成膜後の長尺フィルム40を取り出すために成膜処理を中断してチャンバ10内の温度の低下を待つ必要がない。
【0100】
また、真空成膜装置100と異なり、巻出搬送機構2、巻取搬送機構3、共通搬送機構4、切断・接続機構5~7およびループ搬送機構8がチャンバ10に配置されない。これにより、チャンバ10を小型に構成することができる。
【0101】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1 成膜部
4 共通搬送機構(移動部)
8 ループ搬送機構(移動部)
9 回転軸(移動部)
10 チャンバ
11 プラズマ源
12 第1スパッタ源(成膜装置)
13 有機蒸発源(成膜装置)
14 第2スパッタ源(成膜装置)
20 回転ドラム
21 巻出ロール(巻出部)
31 巻取ロール(巻取部)
40 長尺フィルム
40a 切出フィルム
40b 環状フィルム
50 ロードロック室(予備室)
52,62 切断機構(切出部)
53,63 接続機構(接続部)
72 接続機構(環状化部)
73 切断機構(切断部)
100,100A,200 真空成膜装置