(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157508
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】2次元物質薄膜の作成方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/28 20060101AFI20221006BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221006BHJP
B05D 7/04 20060101ALI20221006BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D3/00 D
B05D7/04
B05D7/24 303A
B05D7/24 303J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061772
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(72)【発明者】
【氏名】井土 宏
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC43
4D075AC91
4D075AC96
4D075BB05Y
4D075BB18X
4D075BB18Y
4D075CA07
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB31
4D075DB54
4D075EC01
4D075EC23
(57)【要約】
【課題】従来よりも大きな面積の2次元物質薄膜を作成することが可能な2次元物質薄膜の作成方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、2次元物質がポリマーシートに吸着可能な第1温度域で2次元物質をポリマーシートに密着させて引きはがすことで、ポリマーシート上に2次元物質薄膜を転写する工程と、第1温度域よりも高く、且つ2次元物質がポリマーシートから剥離可能な第2温度域でポリマーシート上の2次元物質薄膜を他の物質上に転写する工程と、を含むことを特徴とする、2次元物質薄膜の作成方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元物質がポリマーシートに吸着可能な第1温度域で前記2次元物質を前記ポリマーシートに密着させて引きはがすことで、前記ポリマーシート上に2次元物質薄膜を転写する工程と、
前記第1温度域よりも高く、且つ前記2次元物質が前記ポリマーシートから剥離可能な第2温度域で前記ポリマーシート上の前記2次元物質薄膜を他の物質上に転写する工程と、を含むことを特徴とする、2次元物質薄膜の作成方法。
【請求項2】
前記ポリマーシートはPDMSポリマーシートであることを特徴とする、請求項1に記載の2次元物質薄膜の作成方法。
【請求項3】
前記第1温度域は185K未満の温度域であり、
前記第2温度域は185K以上の温度域であることを特徴とする、請求項2に記載の2次元物質薄膜の作成方法。
【請求項4】
前記2次元物質を155K以下の温度域で前記PDMSポリマーシートに密着させることを特徴とする、請求項3記載の2次元物質薄膜の作成方法。
【請求項5】
前記2次元物質は、グラフェン、MoS2、またはFePS3であることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の2次元物質薄膜の作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元物質薄膜の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンやMoS2に代表される2次元物質(多数の原子が2次元的に結合した原子層が何層にも積層された物質)からは原子レベルで薄くかつ高い結晶性の薄膜(2次元物質薄膜)を単離することができる。単離された2次元物質薄膜は、その特異な物理的性質から、単光子源等の光学応用も含めて注目を集めている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Min Yi and Zhigang Shen , A review on mechanical exfoliation for the scalable production of graphene, J. Mater. Chem. A, 2015,3, 11700-11715
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2次元物質から2次元物質薄膜を単離する代表的な方法として、機械的剥離法が知られている(例えば非特許文献1)。しかし、機械的剥離法では、大面積(例えば20μm2以上)の2次元物質薄膜を単離することは難しかった。なお、化学合成法を用いることで大面積の2次元物質薄膜を生成することができるが、化学合成法で生成された2次元物質薄膜には結晶性が低いという問題があった。
【0005】
ところで、機械的剥離法においては、2次元物質と転写対象となるシートとの結合力を増強することで大面積の2次元物質薄膜を単離できることが報告されている。このような観点から、Au膜を用いて2次元物質の一種であるMoS2から大面積のMoS2薄膜を単離する技術が提案されている。しかし、この技術では、Au膜とMoS2薄膜との結合力が強すぎて、Au膜からMoS2薄膜を単離(分離)することが難しいという問題があった。例えばウェットエッチングによってAu膜からMoS2薄膜を単離することができるが、この場合、MoS2薄膜へのダメージが避けられなかった。なお、2次元物質との結合力が強いポリマーシートを用いる技術も提案されているが、このような技術にも上述した問題があった。このような問題は、2次元物質薄膜を単離する場合にのみ限定された問題ではなく、2次元物質薄膜を作成する場合に共通する問題であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、均一な厚さで表面が均質な2次元物質薄膜を、従来よりも大面積に作成することが可能な、2次元物質薄膜の作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、2次元物質がポリマーシートに吸着可能な第1温度域で2次元物質をポリマーシートに密着させて引きはがすことで、ポリマーシート上に2次元物質薄膜を転写する工程と、第1温度域よりも高く、且つ2次元物質がポリマーシートから剥離可能な第2温度域でポリマーシート上の2次元物質薄膜を他の物質上に転写する工程と、を含むことを特徴とする、2次元物質薄膜の作成方法が提供される。
【0008】
ここで、ポリマーシートはPDMSポリマーシートであってもよい。
【0009】
また、第1温度域は185K未満の温度域であり、第2温度域は185K以上の温度域であってもよい。
【0010】
また、2次元物質を155K以下の温度域でPDMSポリマーシートに密着させてもよい。
【0011】
また、2次元物質は、グラフェン、MoS2、またはFePS3であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上述べた通り、本発明の上記観点によれば、均一な厚さで表面が均質な2次元物質薄膜を、従来よりも大面積に作成することが可能な2次元物質薄膜の作成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】各温度におけるPDMSポリマーシートへのMoS
2薄膜の転写状況を示す写真である。
【
図2】本実施形態に係る2次元物質薄膜の作成方法の手順を示す説明図である。
【
図3】本実施形態に係る2次元物質薄膜の作成方法の手順を示す説明図である。
【
図4】本実施形態に係る2次元物質薄膜の作成方法の手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、「~」を用いて表される数値限定範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。「超」または「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。
【0015】
<0.2次元物質薄膜の作成方法の概要>
本実施形態に係る2次元物質薄膜の作成方法は、概略的には、2次元物質がポリマーシートに吸着可能な第1温度域で2次元物質をポリマーシートに密着させて引きはがすことで、ポリマーシート上に2次元物質薄膜を転写する工程と、第1温度域よりも高く、且つ2次元物質がポリマーシートから剥離可能な第2温度域でポリマーシート上の2次元物質薄膜を他の物質上に転写する工程と、を含む。以下、ポリマーシートがPDMS(ポリジメチルシロキサン)ポリマーシートである場合を一例として各工程について詳細に説明する。また、以下の工程はあくまで本発明の一例であり、本発明が以下の工程に限定されるものではない。
【0016】
<1.工程1:試料準備工程>
本工程では、転写の対象となる試料片を準備する。なお、準備した2次元物質にPDMSポリマーシートを直接密着させてもよく、この場合、本工程は省略してよい。
【0017】
まず、2次元物質を準備する。ここで、2次元物質の種類は特に制限されず、任意の2次元物質を使用することができる。2次元物質としては、例えばMoS2、グラフェン、FePS3等が挙げられる。2次元物質は自然産出のものであってもよいし、人工的に合成したものであってもよい。
【0018】
ついで、2次元物質にテープ(例えばUltron Systems Inc,製ブルーテープ、日東電工社製カプトンテープ等)を貼り付けて引きはがす。ここでのテープは、2次元物質を引き剥がすことができるものであればよい。この際、テープに厚さ数百ミクロン程度の薄膜が付着するとともに、薄膜からいくつかの物質片が剥がれ落ちる。そこで、この剥がれ落ちた物質片を回収し、所定のサイズ(例えば2ミリ程度四方のもの)の物質片をスコッチテープ(例えば3M社製スコッチテープ)上に配置する。なお、ここではスコッチテープを使用したが、2次元物質を吸着可能なテープであればどのようなテープを使用してもよい。
図2(a)の例では、2次元物質薄膜10から剥がれ落ちた物質片30をスコッチテープ20上に配置している。
【0019】
ついで、このスコッチテープを折り曲げて重ね合わせ、引きはがすという工程を数回(例えば5回)繰り返す。これにより、スコッチテープ上に平坦な表面を持つ結晶(試料片)を配置する。
図2(b)には、スコッチテープ20上に複数の試料片30が配置されている状態を示す。さらに、これらの試料片をカプトンテープ上に転写する。なお、ここではカプトンテープを使用したが、2次元物質を吸着可能であり、かつ、後述する温度状況下でも機能を維持できるテープであればどのようなテープを使用してもよい。以上の工程により試料片を準備する。
【0020】
<2.工程2:PDMSポリマーシートへの転写工程>
ついで、ガラススライド上にPDMSポリマーシートを配置する。ここで、ガラススライドとPDMSポリマーシートとを両面テープ(例えば両面カプトンテープ)で接着する。なお、接着の方法はこれに限られない。ついで、試料片が付着したカプトンテープの試料付着面をPDMSポリマーシート上に密着させる。密着方法は特に制限されず、例えば指で押し付ける方法であってもよい。
図3(a)に示す例では、ガラススライド40上にPDMSポリマーシート50が配置されている。さらに、試料片30が付着したカプトンテープ60の試料付着面がPDMSポリマーシート50上に密着されている。
【0021】
ついで、上記のガラススライドをホルダに装着する。ここで、ホルダは、例えば金属棒の先にねじ止めできるアングルがついたものであればよい。ついで、カプトンテープの試料非付着面上に加圧用のガラススライド(例えば
図3(b)に示すガラススライド70)を配置し、ねじでガラススライドを加圧する(
図3(b)参照)。ここで、加圧は後述する冷却中も継続するようにする。
【0022】
ついで、上記で作成したガラススライド試料(カプトンテープとPDMSポリマーシートとを2枚のガラススライドで押圧したもの)を冷媒で冷却する。ここで、冷媒は、PDMSポリマーシートを第1温度域(2次元物質がポリマーシートに吸着可能な温度域)まで冷却できるものであればどのようなものであってもよい。第1温度域は、ポリマーシートの種類によって変わりうる。今回用いたPDMSポリマーシートでは、例えば第1温度域は185K未満となる。したがって、冷媒は、PDMSポリマーシートを185K未満の温度域まで冷却できるものであればよい。冷媒の具体例としては、例えば液体窒素である。具体的な処理としては、例えば、ガラススライド試料を液体窒素シーベルに挿入する。この状態を所定時間(例えば10秒程度)保持した後、ガラススライド試料を液体窒素シーベルから取り出す。
【0023】
ついで、加圧用のガラススライドを取り外す。そして、PDMSポリマーシートの温度を測定し、185K未満の温度域(すなわち第1温度域)、好ましくは155K以下の温度域、さらに好ましくは115K以下の温度域でカプトンテープをPDMSポリマーシートから引きはがす(
図3(c)参照)。なお、上述したように、第1温度域はポリマーシートの種類によって変動しうる。また、PDMSポリマーシートの温度は、冷却用プローブの先端に温度計(シリコンダイオード)を取り付けたもので測定可能である。これにより、カプトンテープ上の試料片からPDMSポリマーシート上に2次元物質薄膜を転写する。
図3(c)では、PDMSポリマーシート50上に2次元物質薄膜35が転写されている。なお、PDMSポリマーシートがきちんと冷却されている場合、PDMSポリマーシートが硬くなっている。また、PDMSポリマーシート上に2次元物質薄膜が転写されていることは、PDMSポリマーシートを光学顕微鏡で観察することで確認することができる。
【0024】
<3.工程3:2次元物質薄膜の単離(作成)工程>
ついで、第2温度域(第1温度域よりも高く、且つ2次元物質がポリマーシートから剥離可能な温度域)でPDMSポリマーシート上の2次元物質薄膜を他の物質(例えばシリコン基板)上に転写する。PDMSポリマーシートの場合、第2温度域は、例えば185K以上の温度域となる。
図4の例では、PDMSポリマーシート50上の2次元物質薄膜がシリコン基板80上に転写されている。転写方法は特に制限されないが、例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、ガラススライドをμマニピュレータに装着し、わずかに水平面を傾ける。ついで、シリコン基板にプラズマ表面処理を施す。ついで、PDMSポリマーシートの温度が185K以上となっていることを確認したうえで、ガラススライド上のPDMSポリマーシートをシリコン基板上にゆっくりと押し付けて引きはがす。これにより、PDMSポリマーシート上の2次元物質薄膜をシリコン基板上に転写する。シリコン基板上に2次元物質薄膜が転写されていることは、シリコン基板を光学顕微鏡で観察することで確かめられる。これにより、PDMSポリマーシートから2次元物質薄膜を単離する。すなわち、2次元物質薄膜を作成する。以上の工程により作成された2次元物質薄膜は、例えば面積が20μm
2以上でありうる。2次元物質薄膜の厚さは特に薄く、例えば数nm、単原子膜の作成も可能である。さらに、表面が均質であり、厚さも均質となる。したがって、均一な厚さで表面が均質な2次元物質薄膜を、従来よりも大面積に作成することができる。
【0025】
本実施形態で用いたPDMSポリマーが上記のような物理現象を示す理由はPDMSポリマーのガラス転移点にあるものと考えられる。すなわち、非特許文献「中村「最もTgの低いポリマーは」高分子、46巻、8月号、1997年」によれば、PDMSポリマーのガラス転移点は150K付近である。このことから、PDMSポリマーは、185Kを境に異なる物理的特性を示すものと考えられる。すなわち、185K未満の温度域では2次元物質に対して高い密着力を示し、185K以上の温度域では2次元物質との密着力が低くなり、他の物質への転写が可能となる。このように、本実施形態の処理は、PDMSポリマーのガラス転移点が150K付近にあるというPDMSポリマー特有の特性を用いているため、様々な2次元物質に対して本実施形態を適用できるものと考えられる。なお、密着力が変動する温度域、すなわち第1温度域及び第2温度域は、使用するポリマーシートの種類によって変動しうる。
【実施例0026】
<1.実施例1:MoS2の単離(作成)>
つぎに、本実施形態の実施例について説明する。実施例1では、MoS2単結晶からMoS2薄膜を単離(作成)する試験を行った。MoS2単結晶のサイズは20mm四方程度であり、自然産出のものを用いた。
【0027】
ついで、MoS2単結晶に日東電工社製カプトンテープを貼り付けて引きはがした。この際、テープに厚さ数百ミクロン程度の薄膜が付着するとともに、薄膜からいくつかの物質片が剥がれ落ちた。そこで、この剥がれ落ちた物質片を回収し、2ミリ程度四方の物質片を3M社製スコッチテープ上に配置した。ついで、このスコッチテープを折り曲げて重ね合わせ、引きはがすという工程を5回繰り返した。これにより、スコッチテープ上に平坦な表面を持つ結晶(試料片)を配置した。さらに、これらの試料片をカプトンテープ上に転写した。以上の工程により試料片を準備した。
【0028】
ついで、ガラススライド上にPDMSポリマーシート(2cm角、厚さ3mm程度)(DOW SILICONES CORPORATION社製 「SYLGARD 184 Silicone Elastomer Kit」)を配置した。ここで、ガラススライドとPDMSポリマーシートとを両面カプトンテープで接着した。ついで、試料片が付着したカプトンテープの試料付着面をPDMSポリマーシート上に密着させた。
【0029】
ついで、上記のガラススライドをホルダに装着した。ここで、ホルダは、50cm程度の金属棒の先にねじ止めできるアングルがついたものを使用した。ついで、カプトンテープの試料非付着面上に加圧用のガラススライドを配置し、ねじでガラススライドを加圧した。ここで、加圧は後述する冷却中も継続するようにした。
【0030】
ついで、上記で作成したガラススライド試料(カプトンテープとPDMSポリマーシートとを2枚のガラススライドで押圧したもの)を液体窒素シーベルに挿入した。この状態を10秒程度保持した後、ガラススライド試料を液体窒素シーベルから取り出した。
【0031】
ついで、加圧用のガラススライドを取り外した。そして、PDMSポリマーシートの温度を6点(115K、155K、185K、200K、220K、270K)測定するとともに、各温度においてカプトンテープをPDMSポリマーシートから引きはがした。PDMSポリマーシートの温度は、冷却用プローブの先端に温度計(シリコンダイオード)を取り付けたもので測定した。そして、各温度においてカプトンテープ上の試料片からPDMSポリマーシートにMoS2薄膜が転写できているかを光学顕微鏡による観察で確認した。
【0032】
この結果、
図1に示すように、115K、155KにおいてはPDMSポリマーシートへの転写が成功したのに対して、185K、200KにおいてはPDMSポリマーシートへの転写量が著しく低下した。220K、270Kではほとんど転写がなされなかった。したがって、185K未満ではPDMSポリマーシートの結着力が増すのでカプトンテープ上の試料片からPDMSポリマーシートにMoS
2薄膜が転写された。一方、185K以上ではPDMSポリマーシートの結着力が低下し、転写ができなかった。ただし、このことは、一旦PDMSポリマーシートに転写されたMoS
2薄膜を他の物質に転写できることを意味する。
【0033】
ついで、転写が成功したPDMSポリマーシートを用いてさらに以下の試験を行った。すなわち、ガラススライドをμマニピュレータに装着し、わずかに水平面を傾けた。ついで、シリコン基板にプラズマ表面処理を施した。ついで、PDMSポリマーシートの温度が185K以上となっていることを確認したうえで、ガラススライド上のPDMSポリマーシートをシリコン基板上にゆっくりと押し付けて引きはがした。これにより、PDMSポリマーシート上のMoS2薄膜をシリコン基板上に転写した。シリコン基板上にMoS2薄膜が転写されていることは、シリコン基板を光学顕微鏡で観察することで確かめられた。これにより、PDMSポリマーシートからMoS2薄膜を単離した。すなわち、MoS2薄膜を作成した。以上の工程により作成されたMoS2薄膜は、面積が20μm2以上であり、厚さは数nm程度であった。したがって、数nmと薄く、かつ大きな面積の2次元物質薄膜を作成することができた。さらに、表面は均質であり、厚さも均一であった。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。