(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157527
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20221006BHJP
B01D 61/12 20060101ALI20221006BHJP
B01D 61/10 20060101ALI20221006BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/12
B01D61/10
B01D65/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061806
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敦行
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA17
4D006KA01
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4D006KE01P
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4D006KE12P
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4D006KE19P
4D006KE22P
4D006KE24Q
4D006KE30P
4D006PB02
(57)【要約】
【課題】膜分離装置を適切に制御して処理効率を向上できる水処理システムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る水処理システム1は、原水を一次処理することにより一次処理水を得る前処理装置10と、前記一次処理水を分離膜で膜分離することにより二次処理水を生成する膜分離装置20と、前記前処理装置10の状態を検知する前処理状態検知部44と、前記前処理状態検知部44が検知した前記前処理装置10の状態に応じて前記膜分離装置20を制御する膜分離制御部46と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を一次処理することにより一次処理水を得る前処理装置と、
前記一次処理水を分離膜で膜分離することにより二次処理水を生成する膜分離装置と、
前記前処理装置の状態を検知する前処理状態検知部と、
前記前処理状態検知部が検知した前記前処理装置の状態に応じて前記膜分離装置を制御する膜分離制御部と、
を備える、水処理システム。
【請求項2】
前記一次処理水の水質を検知する一次処理水検知部をさらに備え、
前記前処理状態検知部は、前記一次処理水検知部が検知した前記一次処理水の水質を考慮して前記前処理装置の状態を判定する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記前処理状態検知部は、前記前処理装置の差圧、流量及び薬剤消費量の少なくともいずれかを検出する、請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記原水の水質を検知する原水検知部をさらに備え、
前記前処理状態検知部は、前記原水検知部が検知した前記原水の水質を考慮して前記前処理装置の状態を判定する、請求項1から3のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項5】
前記膜分離制御部は、前記前処理状態検知部が検知した前記前処理装置の状態の経時変化に応じて前記膜分離装置を制御する、請求項1から4のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項6】
前記膜分離装置は、分離膜を洗浄する洗浄ユニットを有し、
前記洗浄ユニットによる前記分離膜の洗浄の複数の洗浄手順を記憶する洗浄手順記憶部と、
前記前処理状態検知部が検知した前記前処理装置の状態に応じていずれかの前記洗浄手順を選択する洗浄手順選択部と、
をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項7】
前記膜分離装置の状態を検知する膜処理状態検知部と、
前記二次処理水の水質を検知する二次処理水検知部と、
前記膜処理状態検知部が検知した前記膜分離装置の状態、及び前記二次処理水検知部が検知した前記二次処理水の水質に基づいて、前記洗浄ユニットによる前記分離膜の洗浄を評価する洗浄評価部と、
前記洗浄評価部の評価結果に基づいて、前記洗浄手順選択部における前記洗浄手順の選択基準を修正する選択基準修正部と、
をさらに備える、請求項6に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記膜分離装置は、前記分離膜を洗浄する洗浄ユニットを有し、
前記洗浄ユニットによる前記分離膜の洗浄手順を構成する要素情報を記憶する要素情報記憶部と、
前記前処理状態検知部が検知した前記前処理装置の状態に応じて、前記要素情報を用いて前記洗浄ユニットによる前記分離膜の洗浄手順を作成する洗浄手順作成部と、
をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項9】
前記膜分離装置の状態を検知する膜処理状態検知部と、
前記二次処理水の水質を検知する二次処理水検知部と、
前記膜処理状態検知部が検知した前記膜分離装置の状態、及び前記二次処理水検知部が検知した前記二次処理水の水質に基づいて、前記洗浄ユニットによる前記分離膜の洗浄を評価する洗浄評価部と、
前記洗浄評価部の評価結果に基づいて、前記洗浄手順作成部における前記洗浄手順の作成基準を修正する作成基準修正部と、
をさらに備える、請求項8に記載の水処理システム。
【請求項10】
前記洗浄評価部の評価結果に基づいて、前記洗浄ユニットによる前記分離膜の次回の洗浄のタイミングを予測する洗浄予測部をさらに備える、請求項7又は9に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原水を濾過、薬注等を行う前処理装置で処理してから、膜分離装置によって処理する水処理システムが利用されている(例えば、特許文献1参照)。前処理装置によって膜分離装置に供給される水の水質を一定以上に維持することによって、分離膜の劣化やファウリングによる閉塞を抑制し、水処理システムの処理効率を向上している。
【0003】
特許文献1には、原水の砂濾過を行う砂濾過装置と、砂濾過したろ液の膜分離を行う膜分離装置とを備える水処理システムにおいて、原水に凝集剤を添加する凝集剤供給装置を設けると共に、砂濾過装置のろ液の流路に設けた凝集剤を検出する検出部からの信号に基づいて、凝集剤の添加量を制御することによって、砂濾過装置の状態を加味して膜分離装置への悪影響をリアルタイムに低減することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
膜分離装置の前段に砂濾過装置等の前処理装置を設け、膜分離装置に供給する前処理水の水質を一定に維持する試みがなされているが、前処理水の水質を一定に維持することは難しい。特許文献1に記載されるように、前処理装置処理水の水質を検出しそれに基づいて前処理装置の運転を制御したとしても、前処理装置の水質は一定に範囲で変動する。膜分離装置に供給される水質は変動することから、膜分離装置に対する水質の影響を評価し適切な運転を行うためには、前処理装置処理水の水質変動のデータだけでなく、原水の水質及び前処理装置の運転状態履歴(洗浄後処理水量等などの履歴を含む)等も考慮することが必要となる。
【0006】
原水の水質の変動も検出し考慮して前処理装置の運転を制御したとしても、前処理水の水質を一定に維持することは難しい。また、前処理装置処理水の水質項目(濁度、硬度、色度、有機物量等)の検出結果に基づいて膜分離装置が受ける影響を評価するためには、一定期間の検出値が必要となるだけでなく、原水の水質及び前処理装置の運転履歴(洗浄後処理水量等)等も考慮することが必要となり、膜分離装置の運転状態を供給される水質から評価(洗浄時期の設定など)することは容易ではない。
【0007】
前処理装置は、その運転履歴を反映して、前処理装置の差圧あるいは薬液消費(積算)が変動する。例えば、砂濾過装置において水源の切替え等で一時的に原水の濁度が上昇し処理水の濁度も上昇した場合、元の水源に戻せば処理水の濁度は元に戻るが、一時的な濁度上昇により砂濾過装置が一時的に多くの濁度成分を捕捉したことは差圧変化として記録に反映される。また、原水の濁度に応じて凝集剤を添加する前処理装置では、一時的な濁度上昇は薬剤消費量の増加として記録に反映される。
【0008】
従って、本発明は、膜分離装置を適切に制御して処理効率を向上できる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る水処理システムは、原水を一次処理することにより一次処理水を得る前処理装置と、前記一次処理水を分離膜で膜分離することにより二次処理水を生成する膜分離装置と、前記前処理装置の状態を検知する前処理状態検知部と、前記前処理状態検知部が検知した前記前処理装置の状態に応じて前記膜分離装置を制御する膜分離制御部と、を備える。
【0010】
上述の水処理システムは、前記一次処理水の水質を検知する一次処理水検知部をさらに備え、前記前処理状態検知部は、前記一次処理水検知部が検知した前記一次処理水の水質を考慮して前記前処理装置の状態を判定してもよい。
【0011】
上述の水処理システムにおいて、前記前処理状態検知部は、前記前処理装置の差圧、流量及び薬剤消費量の少なくともいずれかを検出してもよい。
【0012】
上述の水処理システムは、前記原水の水質を検知する原水検知部をさらに備え、前記前処理状態検知部は、前記原水検知部が検知した前記原水の水質を考慮して前記前処理装置の状態を判定してもよい。
【0013】
上述の水処理システムにおいて、前記膜分離制御部は、前記前処理状態検知部が検知した前記前処理装置の状態の経時変化に応じて前記膜分離装置を制御してもよい。
【0014】
上述の水処理システムにおいて、前記膜分離装置は、分離膜を洗浄する洗浄ユニットを有し、当該水処理システムは、前記洗浄ユニットによる前記分離膜の洗浄の複数の洗浄手順を記憶する洗浄手順記憶部と、前記前処理状態検知部が検知した前記前処理装置の状態に応じていずれかの前記洗浄手順を選択する洗浄手順選択部と、をさらに備えてもよい。
【0015】
上述の水処理システムは、前記膜分離装置の状態を検知する膜処理状態検知部と、前記二次処理水の水質を検知する二次処理水検知部と、前記膜処理状態検知部が検知した前記膜分離装置の状態、及び前記二次処理水検知部が検知した前記二次処理水の水質に基づいて、前記洗浄ユニットによる前記分離膜の洗浄を評価する洗浄評価部と、前記洗浄評価部の評価結果に基づいて、前記洗浄手順選択部における前記洗浄手順の選択基準を修正する選択基準修正部と、をさらに備えてもよい。
【0016】
上述の水処理システムにおいて、前記膜分離装置は、前記分離膜を洗浄する洗浄ユニットを有し、当該水処理システムは、前記洗浄ユニットによる前記分離膜の洗浄手順を構成する要素情報を記憶する要素情報記憶部と、前記前処理状態検知部が検知した前記前処理装置の状態に応じて、前記要素情報を用いて前記洗浄ユニットによる前記分離膜の洗浄手順を作成する洗浄手順作成部と、をさらに備えてもよい。
【0017】
上述の水処理システムは、前記膜分離装置の状態を検知する膜処理状態検知部と、前記二次処理水の水質を検知する二次処理水検知部と、前記膜処理状態検知部が検知した前記膜分離装置の状態、及び前記二次処理水検知部が検知した前記二次処理水の水質に基づいて、前記洗浄ユニットによる前記分離膜の洗浄を評価する洗浄評価部と、前記洗浄評価部の評価結果に基づいて、前記洗浄手順作成部における前記洗浄手順の作成基準を修正する作成基準修正部と、をさらに備えてもよい。
【0018】
上述の水処理システムは、前記洗浄評価部の評価結果に基づいて、前記洗浄ユニットによる前記分離膜の次回の洗浄のタイミングを予測する洗浄予測部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、膜分離装置を適切に制御して処理効率を向上できる水処理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水処理システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図1の水処理システムにおける洗浄手順の選択基準を示す表である。
【
図3】
図1の水処理システムにおける洗浄手順の
図2とは異なる選択基準を示す表である。
【
図4】
図1の水処理システムにおける洗浄手順の
図2及び3とは異なる選択基準を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる水処理システム1の構成を示す模式図である。水処理システム1は、原水を多段に処理して純度を向上した処理水を得るシステムであり、例えば海水から真水を得るために利用され得る。
【0022】
水処理システム1は、原水を一次処理することにより一次処理水を得る前処理装置10と、一次処理水を分離膜で膜分離することにより二次処理水を生成する膜分離装置20と、を備える。また、水処理システム1は、原水の水質を測定する原水測定器31と、一次処理水の水質を測定する一次処理水測定器32と、二次処理水の水質を測定する二次処理水測定器33と、を備える。さらに、水処理システム1は、前処理装置10及び膜分離装置20を制御する制御装置40を備える。なお、「一次処理水」及び「二次処理水」は便宜的に使用する名称であって、水処理システム1のさらに前段に原水を処理する装置を設けることを排除するものではなく、後述する実施形態から明らかなように前処理装置10内で原水を多段処理することを排除するものでもない。
【0023】
本実施形態における前処理装置10は、原水に例えば凝集剤、殺菌剤、pH調整剤、スケール防止剤等の薬剤を注入する薬剤注入ユニット11と、砂状の濾材(アンスラサイト、マンガンコーティング濾材等の除鉄マンガン濾材であってもよい)によって原水中の比較的粒径が大きい懸濁物質を除去することにより内部処理水を得る砂濾過ユニット12と、フィルタによって内部処理水から粒径がさらに小さい懸濁物質を除去することにより一次処理水を得るプレフィルタユニット13と、を有する。前処理装置10は、図示しないが、還流流路、バイパス流路、バッファタンク、流路切換弁機構、ポンプ等をさらに有してもよい。薬剤注入ユニット11、砂濾過ユニット12、プレフィルタユニット13を含む前処理装置10の動作は、従来の水処理システムにおける動作と同様である。
【0024】
前処理装置10は、その状態の指標となる1又は複数の状態信号を制御装置40に入力する。状態信号としては、薬剤注入ユニット11、砂濾過ユニット12、プレフィルタユニット13及びその他の構成要素において検出される各種検出信号、内部機構の駆動信号及び接点信号等が挙げられる。状態信号は、薬剤注入ユニット11のように薬剤を消費するユニットの場合には薬剤消費量を含むことが好ましく、砂濾過ユニット12及びプレフィルタユニット13のように圧力損失が増大し得る処理ユニットの場合には、処理ユニットの差圧又は流量の情報を含むことが好ましい。また、状態信号は、ユニット内の流量、温度、逆洗の時期、回数(頻度)等の情報を含んでもよい。
【0025】
膜分離装置20は、分離膜を用いて一次処理水を、分離膜を透過して分離対象物質(不純物)が取り除かれた二次処理水(透過水)と、分離対象物質濃度が増大した濃縮水とに分離する装置である。具体的な膜分離装置20としては、例えば逆浸透膜装置、電気再生脱イオン装置(EDI装置)、限外濾過膜装置、精密濾過膜装置等が挙げられる。
【0026】
本実施形態における膜分離装置20は、分離膜の一種である逆浸透膜を用いて一次処理水を二次処理水と濃縮水とに分離する逆浸透膜ユニット21と、逆浸透膜ユニット21の分離膜を含む内部を洗浄する洗浄ユニット22と、を有する。
【0027】
逆浸透膜ユニット21は、二次処理水の水質を一定に保持するよう、運転条件が調整されることが好ましい。具体例としては、膜分離装置20は、回収率、つまり逆浸透膜ユニット21に供給される一次処理水の流量に対する流出する二次処理水の流出量の比率を調整することで、二次処理水の水質を一定に保持するよう制御され得る。
【0028】
洗浄ユニット22は、逆浸透膜ユニット21に清水及び洗浄剤を混合した洗浄液を供給することによって分離膜の付着物を除去する。洗浄ユニット22は、複数種類の薬剤を供給可能に構成されてもよい。洗浄ユニット22が供給する洗浄剤としては、例えば界面活性剤、酸又はアルカリ剤、殺菌剤、分散剤、キレート剤等が例示される。洗浄ユニット22は、逆浸透膜ユニット21から洗浄廃液を回収し、その水質を確認することで、洗浄の達成度を確認しながら、洗浄手順を進行するよう構成されることが好ましい。
【0029】
膜分離装置20は、その状態の指標となる1又は複数の状態信号を制御装置40に入力する。膜分離装置20の状態信号としては、例えば逆浸透膜ユニット21の逆浸透膜の差圧、逆浸透膜の透過流束、処理水又は装置の温度、弁開度、洗浄ユニット22の洗浄液供給圧力、供給する薬剤の種類及び量、洗浄廃液の水質等が例示される。
【0030】
原水測定器31、一次処理水測定器32及び二次処理水測定器33が検出する水質としては、例えば電気伝導度、硬度、特定波長の吸収、散乱又は蛍光、濁度、有機物濃度、クロロフィル濃度、シリカ濃度、鉄分濃度、マンガン濃度、pH等が挙げられる。原水測定器31、一次処理水測定器32及び二次処理水測定器33は、これらの複数を測定するよう複数のセンサを含み得る。原水測定器31は、流路内で測定を行うものに限定されず、採水して分析する装置であってもよい。また、原水測定器31は、流路に配設されるインラインセンサと、インラインセンサの信号を受けて測定値を算出する装置とに分割された測定装置であってもよい。
【0031】
制御装置40は、例えばメモリ、CPU、入出力インターフェイス等を有する1又は複数のコンピュータ装置に適切なプログラムを実行させることにより実現できる。つまり、制御装置40は、全ての構成要素が一つの装置により構成されてもよく、複数の装置に分けて構成されてもよい。また、制御装置40は一部または全部がクラウド・コンピューティングを利用して構成されてもよい。制御装置40は、前処理装置10及び膜分離装置20から独立して設けられてもよく、前処理装置10及び膜分離装置20の一部又は全部の動作を制御する制御装置と一体であってもよい。このため、前処理装置10の状態信号及び膜分離装置20の状態信号は、制御装置の内部処理に係るデータであり得る。
【0032】
制御装置40は、原水検知部41と、一次処理水検知部42と、二次処理水検知部43と、前処理状態検知部44と、膜処理状態検知部45と、膜分離制御部46と、洗浄手順記憶部47と、洗浄手順選択部48と、洗浄評価部49と、選択基準修正部50と、要素情報記憶部51と、洗浄手順作成部52と、作成基準修正部53と、洗浄予測部54と、を備える。なお、これらの構成要素は、制御装置40の機能を類別したものであって、物理構成及びプログラム構成において明確に区別できるものでなくてもよい。
【0033】
原水検知部41は、原水の水質を検知する。つまり、原水検知部41は、原水測定器31の測定値を取得する。原水検知部41は、原水の水質の経時変化、つまり時刻毎の原水検知部41の測定値を時系列データとして記憶することが好ましい。
【0034】
一次処理水検知部42は、一次処理水の水質を検知する。つまり、一次処理水検知部42は、一次処理水測定器32の測定値を取得する。一次処理水検知部42は、一次処理水の水質の経時変化を示す時系列データを記憶することが好ましい。
【0035】
二次処理水検知部43は、二次処理水の水質を検知する。つまり、二次処理水検知部43は、二次処理水測定器33の測定値を取得する。前処理状態検知部44は、二次処理水の水質の経時変化を示す時系列データを記憶することが好ましい。
【0036】
前処理状態検知部44は、前処理装置10の状態を検知する。つまり、前処理状態検知部44は、前処理装置10から入力される状態信号の内容を確認することにより、前処理装置10の状態を判定する。前処理状態検知部44は、前処理装置10の状態の経時変化を示す時系列データ記憶することが好ましい。つまり、前処理状態検知部44は、過去の前処理装置10の状態信号及び過去の前処理装置10の状態の判定結果を考慮して現在の前処理装置10の状態を判定してもよい。
【0037】
前処理状態検知部44は、前処理装置10の状態信号に加えて、原水測定器31及び一次処理水測定器32の少なくともいずれかの測定値、つまり原水及び一次処理水の少なくともいずれかの現在の水質又は現在までの水質の経時変化を考慮して前処理装置10の状態を判定してもよい。原水及び一次処理水の少なくともいずれかの水質を考慮することによって前処理装置10の状態をより正確に把握し、水処理の効率を向上できる。
【0038】
膜処理状態検知部45は、膜分離装置20の状態を検知する。つまり、膜処理状態検知部45は、膜分離装置20から入力される状態信号の内容を確認することにより、逆浸透膜ユニット21及び洗浄ユニット22の状態を判定する。膜処理状態検知部45は、膜分離装置20の状態の経時変化を示す時系列データを記憶することが好ましい。つまり、膜処理状態検知部45は、過去の膜分離装置20の状態信号及び過去の膜分離装置20の状態の判定結果を考慮して現在の膜分離装置20の状態を判定してもよい。
【0039】
膜処理状態検知部45は、膜分離装置20の状態信号に加えて、一次処理水検知部42が検知した一次処理水の水質及び二次処理水検知部43が検知した二次処理水の現在水質又は現在までの水質の経時変化を考慮して、膜分離装置20の状態を判定することが好ましい。このように、膜分離装置20の状態信号に加えて、一次処理水及び二次処理水の水質を考慮することで、より正確に膜分離装置20の状態を把握できるので、水処理の効率をさらに向上できる。例えば、逆浸透膜ユニット21が正常である場合、一次処理水からイオンなどの分離対象物質が所定の比率で除去され二次処理水が生成される。分離対象物質の除去率はpHや温度などの影響を受けるほか、逆浸透膜の劣化及び汚れによって大きく影響を受けることから、一次処理水と二次処理水の分離対象物質濃度に基づいて、逆浸透膜ユニットの状態が正常とは異なることを判断できる。
【0040】
膜分離制御部46は、前処理状態検知部44が検知した前処理装置10の状態に応じて膜分離装置20を制御する。つまり、膜分離制御部46は、前処理装置10の状態に応じて、逆浸透膜ユニット21及び洗浄ユニット22を動作させるよう構成され得る。膜分離制御部46は、前処理装置10の状態を考慮することで、膜分離装置20に供給される一次処理水の状態をより正確に把握できるので、分離膜の閉塞等を抑制して水処理の効率を向上できる。
【0041】
膜分離制御部46は、前処理状態検知部44が検知した前処理装置10の状態の経時変化に応じて膜分離装置20を制御することが好ましい。前処理装置10の状態の時系列変化から、前処理装置10の状態の変化速度等を把握することで、膜分離装置20への影響をより正確に評価し、水処理の効率を向上することができる。
【0042】
膜分離制御部46は、前処理状態検知部44が検知した前処理装置10の状態に加えて、膜処理状態検知部45が検知した膜分離装置20の状態を考慮して、膜分離装置20を制御してもよい。つまり、膜分離制御部46は、膜分離装置20の状態の履歴に応じて制御内容を修正したり、膜分離装置20の現在の状態に応じた制御を行ったりしてもよい。具体例として、膜分離制御部46は、逆浸透膜ユニット21の差圧が所定の閾値以上となった場合に洗浄ユニット22による逆浸透膜ユニット21の分離膜の洗浄を開始するよう構成され得る。
【0043】
洗浄手順記憶部47は、洗浄ユニット22による逆浸透膜ユニット21の分離膜の洗浄の複数の洗浄手順を記憶する。「洗浄の手順」とは、例えば洗浄液の種類、洗浄液の流量、洗浄液の圧力、洗浄時間等の複数の条件の組み合わせによってそれぞれ定義される1又は複数の工程の組み合わせとして設定される。また、「洗浄の手順」には、一定時間毎に洗浄を行う場合の洗浄間隔、洗浄を開始する条件(例えば逆浸透膜ユニット21差圧等)を含み得る。
【0044】
洗浄手順選択部48は、前処理状態検知部44が検知した前処理装置10の状態に応じていずれかの洗浄手順を膜分離制御部46が実行すべき手順として選択する。前処理装置10の状態に応じて洗浄手順を選択することで、逆浸透膜ユニット21の分離膜のより効果的な洗浄が可能になる。
【0045】
洗浄手順選択部48は、前処理状態検知部44が検知した前処理装置10の状態の経時変化に応じて洗浄手順を選択することが好ましい。前処理装置10の状態の時系列変化から、前処理装置10の状態の変化速度等を把握することで、膜分離装置20の分離膜の状態をより正確に評価し、洗浄効率を向上することができる。
【0046】
洗浄手順選択部48は、前処理状態検知部44が検知した前処理装置10の状態に加えて、膜処理状態検知部45が検知した膜分離装置20の状態を考慮して、洗浄手順を選択することが好ましい。特に、前処理装置10の状態の経時変化と膜分離装置20の状態の経時変化との相関を考慮することによって、分離膜の状態を正確に推測し、より適切な洗浄手順を選択することができる。
【0047】
また、洗浄手順選択部48は、原水検知部41が検知した原水の水質、一次処理水検知部42が検知した一次処理水の水質、及び二次処理水検知部43が検知した水質の少なくともいずれかを考慮して、洗浄手順を選択することができる。これらの水質を考慮することにより、前処理装置及び膜分離装置への負荷並びにそれらの装置の運転状態を推測することができる。
【0048】
図2に、前処理状態検知部44による前処理装置10の状態の判定パターン(個々の検出値の値又は変化の組み合わせ)と、膜処理状態検知部45による膜分離装置20の状態の判定基準と、原水水質(原水検知部41の検知結果)及び一次処理水水質(一次処理水検知部の検知結果)の判定パターンと、洗浄手順選択部48による洗浄手順の選択パターンとを合わせて例示する。つまり、洗浄手順選択部48は、前処理状態検知部44における前処理装置10の判定パターンを基礎として、表に例示されるように原水検知部41、一次処理水検知部42、二次処理水検知部43及び膜処理状態検知部45における原水、一次処理水、二次処理水及び膜分離装置20の判定パターンを組み合わせて、膜分離装置20の洗浄手順を選択する。なお、表中の「-」は、判定に際して考慮しないことを意味する。
図2は、前処理装置10において、薬剤注入ユニット11が凝集剤を注入し、砂濾過ユニット12が凝集した濁質を取り除くことが想定されている。つまり、
図2において、前処理装置10は、濁度、有機物、鉄のうち少なくともいずれかを除去する濾過装置である。
【0049】
図示する例において、原水の水質については、濁度及び有機物濃度が基準値を超えるか否かが判定材料とされている。前処理装置10の状態については、薬剤注入ユニット11による凝集剤注入量、並びに砂濾過ユニット12の差圧が基準値を超えるか否か、差圧の上昇率及び上昇タイミングが判定材料とされている。凝集剤の過剰は凝集剤流量あるいは凝集剤貯留量から推定される。一次処理水の水質については、濁度の値の基準値との関係及び時間変化が判定材料とされている。膜分離装置20の状態については、逆浸透膜ユニット21の差圧の上昇率及び上昇タイミング並びに前回の洗浄からの経過時間が判定材料とされている。
【0050】
具体例として、原水の濁度上昇に伴って砂濾過ユニット12及び逆浸透膜ユニット21の差圧が上昇し、砂濾過ユニット12の処理流量が低下した場合、並びに砂濾過ユニット12及び逆浸透膜ユニット21の差圧が上昇した場合は、濁度成分による逆浸透膜ユニット21の分離膜の軽度の閉塞と推定される。このような場合、フラッシング又は逆洗浄による簡易な洗浄のみを行う洗浄手順が選択される。
【0051】
原水の水質及び砂濾過ユニット12の状態に特に問題がない(差圧の緩やかな上昇)にもかかわらず一次処理水の濁度上昇し、逆浸透膜ユニット21の差圧が前処理装置10の差圧上昇に伴って上昇し膜分離装置の前回洗浄から日数が経過してない場合は、前処理装置10の処理能力不足により捕集できずに透過した固形成分を主因とする分離膜の閉塞と推定される。このような場合、フラッシング又は逆洗浄による簡易な洗浄のみを行う洗浄手順が選択される。
【0052】
原水の濁度水質及びが基準値以下であり、砂濾過ユニット12の状態に特に問題がないにもかかわらず一次処理水の濁度が上下変動し、逆浸透膜ユニット21の差圧が緩やかに上昇かつ透過流束が緩やかに低下し、膜分離装置20の前回洗浄から日数が経過している場合は、微生物を含む通常の有機物の蓄積による分離膜の閉塞と推定される。このような場合、アルカリ性の洗浄液による洗浄を行う工程を含む洗浄手順が選択される。
【0053】
また、原水の有機物濃度が上昇し、砂濾過ユニット12の処理流量が低下し、一次処理水の濁度が基準値を超え、逆浸透膜ユニット21の差圧が上昇し、処理水量が低下した場合、逆浸透膜ユニット21の分離膜がバイオファウリングによって閉塞していると推定される。このような場合、殺菌剤を含む洗浄液による洗浄を行う工程と、アルカリ性の洗浄液による強めの洗浄(洗浄液を高濃度としたり、洗浄時間を長く設定したりする)を行う工程とを含む洗浄手順が選択される。
【0054】
砂濾過ユニット12の差圧が上昇することなく、逆浸透膜ユニット21の差圧が急激に上昇し、凝集剤注入量の過剰が確認された場合は、凝集剤の蓄積による分離膜の閉塞と推定される。この場合、凝集剤に適した洗浄液を用いて洗浄を行う工程を含む洗浄手順が選択される。例として、凝集剤がポリ塩化アルミニウムの場合はアルカリ性の洗浄液による洗浄を行う工程を含む洗浄手順が選択され得る。
【0055】
なお、
図2には、前処理装置10が砂ろ過装置である場合を例示したが、前処理装置10は他の塔式ろ過装置であってもよい。前処理装置10が除鉄除マンガン装置の場合は、使用される薬剤が次亜塩素酸になり、一次処理水検知部42は鉄濃度または濁度を検知することが想定される。また、前処理装置10が活性炭ろ過装置の場合は、使用される薬剤は還元剤になり、一次処理水検知部42は有機物濃度を検知することが想定される。
【0056】
図3に、
図2とは異なり、前処理装置10がイオン交換により硬度成分を除去する軟水装置である場合の、前処理状態検知部44による前処理装置10の状態の判定パターンと洗浄手順選択部48による洗浄手順の選択基準とを例示する。
【0057】
原水の硬度及び一次処理水の硬度が共に基準値を超え、軟水装置のイオン交換能力が不足し、これらに合わせて逆浸透膜ユニット21の透過流束が低下した場合、硬度成分の蓄積による分離膜の閉塞と推定される。このような場合、酸性の洗浄液により強めの洗浄を行う工程を含む洗浄手順が選択される。
【0058】
他に問題がなく、前回の洗浄から長時間を経過して逆浸透膜ユニット21の透過流束が緩やかに低下した場合、正常運転範囲内での硬度成分の蓄積による分離膜の閉塞と推定される。このような場合、酸性の洗浄液により弱め(洗浄液を低濃度としたり、洗浄時間を短く設定したりする)の洗浄を行う工程を含む洗浄手順が選択される。
【0059】
原水のシリカ濃度及び一次処理水のシリカ濃度が共に基準値を超え、これらに合わせて逆浸透膜ユニット21の透過流束が低下した場合、シリカの蓄積による分離膜の閉塞と推定される。このような場合、アルカリ性の洗浄液により強めの洗浄を行う工程を含む洗浄手順が選択される。
【0060】
原水の硬度が基準値以下であっても、軟水装置のイオン交換体の再生に異常が生じ(イオン交換体の再生不良及びイオン交換能力低下など)、一次処理水の硬度が基準値を超え、これらに合わせて逆浸透膜ユニット21の透過流束が低下した場合、硬度成分の蓄積による分離膜の閉塞と推定される。このような場合、酸性の洗浄液により強めの洗浄を行う工程を含む洗浄手順が選択される。
【0061】
図4に、さらに異なる例として、前処理装置10が分散剤を注入する薬剤注入ユニット11と、pH調整剤を注入する薬剤注入ユニット11とを有する薬注装置である場合の、前処理状態検知部44による前処理装置10の状態の判定パターンと洗浄手順選択部48による洗浄手順の選択基準とを例示する。
【0062】
原水及び一次処理水の硬度が共に基準値を超え、これらに合わせて逆浸透膜ユニット21の透過流束が低下した場合、硬度成分の蓄積による分離膜の閉塞と推定される。このような場合、酸性の洗浄液により強めの洗浄を行う工程を含む洗浄手順が選択される。
【0063】
他に問題がなく、前回の洗浄から長時間を経過して逆浸透膜ユニット21の透過流束が緩やかに低下した場合、正常運転範囲内での硬度成分の蓄積による分離膜の閉塞と推定される。このような場合、酸性の洗浄液により弱めの洗浄を行う工程を含む洗浄手順が選択される。
【0064】
原水のシリカ濃度及び一次処理水のシリカ濃度が共に基準値を超え、これらに合わせて逆浸透膜ユニット21の透過流束が低下した場合、シリカの蓄積による分離膜の閉塞と推定される。このような場合、アルカリ性の洗浄液により強めの洗浄を行う工程を含む洗浄手順が選択される。
【0065】
前処理装置10における分散剤の注入量が異常であり、これに合わせて逆浸透膜ユニット21の透過流束が低下した場合、分散剤の薬注不良による硬度成分、鉄、マンガン、シリカ等よる分離膜の閉塞と推定される。このような場合、酸性の洗浄液により強めの洗浄を行う工程とアルカリ性の洗浄液により強めの洗浄を行う工程とを含む洗浄手順が選択される。
【0066】
前処理装置10におけるpH調整剤の注入量が異常であり、これに合わせて逆浸透膜ユニット21の透過流束が低下した場合には、pH調整剤の薬注不良による硬度成分、鉄、マンガン、シリカ等よる分離膜の閉塞と推定される。このような場合にも、酸性の洗浄液により強めの洗浄を行う工程とアルカリ性の洗浄液により強めの洗浄を行う工程とを含む洗浄手順が選択される。
【0067】
洗浄評価部49は、膜処理状態検知部45が検知した膜分離装置の状態、及び二次処理水検知部43が検知した二次処理水の水質に基づいて、洗浄ユニット22による分離膜の洗浄を評価する。つまり、洗浄終了後の二次処理水の水質が十分に向上していない場合は、分離膜の洗浄が不適切であったと判断できる。
【0068】
選択基準修正部50は、洗浄評価部49の評価結果に基づいて、洗浄手順選択部48における洗浄手順の選択基準を修正する。選択基準の修正は、例えば前処理状態検知部44及び膜処理状態検知部45における状態の判定に用いられる閾値の修正によって行い得る。選択基準修正部50が洗浄評価部49の評価結果に基づいて洗浄手順の選択基準を修正することによって、洗浄手順選択部48がより適切な洗浄手順を選択できるので、水処理の効率を確実に向上できる。
【0069】
要素情報記憶部51は、洗浄ユニット22による分離膜の洗浄手順を構成する要素情報を記憶する。要素情報としては、洗浄液の組成、つまり清水に注入する薬剤の種類及び量、洗浄液の供給量及び供給圧力、洗浄液の温度等が挙げられる。また、要素情報は、各工程の時間、例えば洗浄液供給時間、すすぎ時間などの時間設定を含んでもよい。
【0070】
洗浄手順作成部52は、前処理状態検知部44が検知した前処理装置10の状態に応じて、要素情報記憶部51に記憶されている要素情報を用いて洗浄ユニット22による分離膜の洗浄手順を作成する。洗浄手順作成部52は、前処理状態検知部44が検知した前処理装置10の状態に加えて、膜処理状態検知部45が検知した膜分離装置の状態、原水検知部41が検知した原水の水質を、一次処理水検知部42が検知した一次処理水の水質、二次処理水検知部43が検知した二次処理水の水質等を考慮して分離膜の洗浄手順を作成することが好ましい。
【0071】
例として、バイオファウリングによる分離膜の閉塞が疑われる場合には殺菌剤を含む洗浄液による洗浄を行う工程、及びアルカリ性の洗浄液による洗浄を行う工程を追加し、スケールによる分離膜の閉塞が疑われる場合には酸性の洗浄液による洗浄を行う工程を追加し、長期間の運転による分離膜の閉塞と判断される場合には界面活性剤を含む洗浄液による洗浄を行う工程を追加することで、有効と考えられる洗浄手順を作成できる。また、原水の有機物濃度が高い場合には、アルカリ性の洗浄液による洗浄を行う工程を追加するようにしてもよい。このように、洗浄手順作成部52によって適切な洗浄手順を作成することで、水処理の効率を大きく向上できる。また、洗浄手順作成部52は、分離膜を洗浄液に浸漬する時間を調整してもよい。また、洗浄手順作成部52は、逆浸透膜ユニット21の差圧上昇の有無にかかわらず、前回の洗浄から設定時間が経過したときに洗浄ユニット22による分離膜の洗浄を行うタイマ洗浄を追加してもよい。
【0072】
作成基準修正部53は、洗浄評価部49の評価結果に基づいて、洗浄手順作成部52における洗浄手順の作成基準を修正する。作成基準修正部53によって洗浄手順の選択基準を修正することによって、より適切な洗浄手順を選択できるので、水処理の効率を確実に向上できる。例として、作成基準修正部53は、洗浄評価部49の評価結果に基づいて、各洗浄工程を追加する閾値を修正してもよく、追加する洗浄工程の条件、例えば洗浄剤の濃度、分離膜の浸漬時間、タイマ洗浄の設定時間等を修正してもよい。
【0073】
洗浄予測部54は、洗浄評価部49の評価結果に基づいて、洗浄ユニット22による分離膜の次回の洗浄のタイミングを予測する。洗浄予測部54は、過去の洗浄評価部49の評価結果とその次の洗浄までの時間との関係式を算出し、この関係式に最新の評価結果を代入することによって次回の洗浄のタイミングを予測する構成とされ得る。洗浄予測部54は、水処理システム1の管理者、水処理システム1の二次処理水又は二次処理水をさらに処理した水の需要者等が次回の洗浄のタイミングを認知可能とすることによって、透過水の不足に起因する需要設備の予期しない停止による損害の発生を防止することができる。このため、洗浄予測部54は、積極的に次回の洗浄のタイミングを知らせるために、洗浄のタイミングを表示、又は洗浄のタイミングを示す情報を送出するよう構成されてもよい。
【0074】
以上、本発明に係る水処理システムの好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例として、上述の実施形態の一部の構成要素を本発明の趣旨に反しない範囲で省略してもよい。
【0075】
上述の実施形態における前処理装置は、薬剤注入ユニット、砂濾過ユニット及びプレフィルタユニットの3つの処理ユニットを有するものとしたが、本発明に係る水処理システムにおける前処理装置は、1つ又は2つの処理ユニットから構成されてもよく、4つ以上の処理ユニットから構成されてもよい。例として、膜処理状態検知部は、前処理装置の状態に指標としてプレフィルタユニットの差圧を利用してもよい。
【0076】
また、本発明に係る水処理システムにおける前処理装置は、原水又は内部処理水に紫外線を照射する紫外線殺菌ユニット、原水又は内部処理水に溶存している二酸化炭素等の気体を除去する脱気ユニット等、任意の処理を行うユニットを有し得る。
【符号の説明】
【0077】
1 処理システム
10 前処理装置
11 薬剤注入ユニット
12 砂濾過ユニット
13 プレフィルタユニット
20 膜分離装置
21 逆浸透膜ユニット
22 洗浄ユニット
31 原水測定器
32 一次処理水測定器
33 二次処理水測定器
40 制御装置
41 原水検知部
42 一次処理水検知部
43 二次処理水検知部
44 前処理状態検知部
45 膜処理状態検知部
46 膜分離制御部
47 洗浄手順記憶部
48 洗浄手順選択部
49 洗浄評価部
50 選択基準修正部
51 要素情報記憶部
52 洗浄手順作成部
53 作成基準修正部
54 洗浄予測部