(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157529
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】流体膜軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 17/06 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
F16C17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061808
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 善友
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 拓造
(72)【発明者】
【氏名】横山 真平
(72)【発明者】
【氏名】吉峰 千尋
(72)【発明者】
【氏名】河野 将弥
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA04
3J011BA15
3J011DA01
3J011JA02
3J011KA03
3J011LA06
3J011MA02
3J011PA02
3J011SB02
3J011SB03
3J011SB04
3J011SB05
3J011SC01
3J011SC02
3J011SC12
3J011SC13
3J011SC14
(57)【要約】
【課題】回転体を適切に支持することができる流体膜軸受を提供する。
【解決手段】軸線を中心として回転する回転体の周方向に複数が配置されて、流体膜を介して回転体を支持する軸受パッドを備え、を備え、軸受パッドは、金属から構成されたベース層と、該ベース層における回転体側に積層されて、弾性変形可能な弾性材料から構成された弾性層と、該弾性層における回転体側に積層されて、回転体に対向するとともに、軸受材料から構成された摺動層と、弾性層と摺動層との間に積層されて、弾性層及び摺動層よりも剛性の高い金属板と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心として回転する回転体の周方向に複数が配置されて、流体膜を介して前記回転体を支持する軸受パッドを備え、
前記軸受パッドは、
金属から構成されたベース層と、
該ベース層における前記回転体側に積層されて、弾性変形可能な弾性材料から構成された弾性層と、
該弾性層における前記回転体側に積層されて、前記回転体に対向するとともに、軸受材料から構成された摺動層と、
前記弾性層と前記摺動層との間に積層されて、前記弾性層及び前記摺動層よりも剛性の高い金属板と、
を有する流体膜軸受。
【請求項2】
前記摺動層における前記回転体に対向するパッド面は、前記回転体の回転方向前方側に向かうにしたがって前記回転体に近づくように延びている請求項1に記載の流体膜軸受。
【請求項3】
前記軸受パッドは、
前記摺動層と前記金属板との間に配置されて、前記金属板よりも熱伝導率の高い金属材料から構成された冷却板をさらに有する請求項1又は2に記載の流体膜軸受。
【請求項4】
前記軸受パッドは、前記回転体に対して軸線方向から対向するように周方向に複数が配置されており、
前記摺動層における前記回転体に対向するパッド面は、前記軸線方向から前記回転体を支持する請求項1から3のいずれか一項に記載の流体膜軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体膜軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、水没状態で使用される軸受として、周囲の水を回転体の回転により引き込んで、潤滑剤として使用するスラスト軸受が開示されている。このスラスト軸受は、回転体の周方向に複数が配置されるとともに該回転体に対して該回転体の軸線方向から対向する軸受パッドを有している。
【0003】
スラストパッドは、金属からなるベース層、該ベース層に積層されてゴム等の弾性材料からなる弾性層、及び、該弾性層に積層されて樹脂等の軸受材料からなる摺動層の三層構造とされている。
回転体の回転時には、回転体と摺動層との間に潤滑膜としての水膜を形成することで、スラストパッドが回転体を非接触で支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の軸受パッドでは、回転体から受ける面圧が回転方向の中央部で特に大きくなる。このような面圧が過剰になると、ゴムからなる比較的柔らかい弾性層が大きく凹むことにともなって、軸受パッド全体として大きな凹みが発生する。
【0006】
その結果、軸受パッドと回転体との間に適切に水膜を形成することが困難となり、負荷容量が低下するという問題があった。
【0007】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、回転体を適切に支持することができる流体膜軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る流体膜軸受は、軸線を中心として回転する回転体の周方向に複数が配置されて、流体膜を介して前記回転体を支持する軸受パッドを備え、前記軸受パッドは、金属から構成されたベース層と、該ベース層における前記回転体側に積層されて、弾性変形可能な弾性材料から構成された弾性層と、該弾性層における前記回転体側に積層されて、前記回転体に対向するとともに、軸受材料から構成された摺動層と、前記弾性層と前記摺動層との間に積層されて、前記弾性層及び前記摺動層よりも剛性の高い金属板と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、回転体を適切に支持することができる流体膜軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る回転機械の概略構成図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るスラスト軸受を軸線方向から見た図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るスラスト軸受の軸受パッドの斜視図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るスラスト軸受の軸受パッドの変形態様を示す側面図であって、(a)は変形前、(b)は変形後の態様を示す図である。
【
図5】比較例に係るスラスト軸受の軸受パッドの変形態様を示す図であって、(a)は変形前、(b)は変形後の態様を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態の変形例に係るスラスト軸受の軸受パッドの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係る回転機械について、
図1~
図4を参照して詳細に説明する。
図1に示す回転機械1は水没状態で用いられものであって、例えば、船舶や水中航走体の推進装置、水中ポンプ、水中発電機、水中モータ等の各種機器である。回転機械1は、回転体10、静止体100及び流体膜軸受としてのスラスト軸受200を有している。
【0012】
<回転体>
回転体10は、回転軸20及びスラストカラー30を有している。
回転軸20は、直線状に延びる軸線Oに沿って延びている。該回転軸20は、図示しないラジアル軸受によって径方向外側から支持されている。これにより回転軸20は、軸線O回りに回転可能とされている。回転軸20には、プロペラ、翼、スクリュー等の回転機械1としての機能上必要な構成が一体に設けられている。
【0013】
スラストカラー30は、回転軸20の外周面の周方向全域から径方向外側に張り出す円盤状をなしている。スラストカラー30は、回転軸20に一体に設けられている。回転軸20の軸線O回りの回転に伴ってスラストカラー30も軸線O回りに回転する。
【0014】
静止体100は、回転体10の外周側で該回転体10を径方向外側から囲うように設けられている。静止体100は、例えば、回転体10を囲うケーシング、ハウジング、船体、機体等の種々の構造物の一部分である。上記回転体10は静止体100に対して軸線O回りに相対回転する。本実施形態では、静止体100は、スラストカラー30を軸線O方向両側から挟み込むように一対が設けられている。
【0015】
<スラスト軸受>
スラスト軸受200は、スラストカラー30と静止体100との間に配置されている。スラスト軸受200は、静止体100に固定されている。本実施形態のスラスト軸受200は、スラストカラー30を軸線O方向両側から挟み込むように一対が設けられている。
図1及び
図2に示すように、スラスト軸受200は、ディスク205、及び、軸受パッドとしてのスラストパッド210を有している。
【0016】
<ディスク>
ディスク205は、軸線Oを中心とする円環状をなすとともに軸線O方向に一定の厚さを有する板状をなす部材である。ディスク205の径方向の寸法は、周方向にわたって一定とされている。ディスク205は、回転軸20を囲うように該回転軸20と同軸に設けられている。ディスク205におけるスラストカラー30の反対側の面は、周方向全域にわたって静止体100に対して固定されている。
ディスク205におけるスラストカラー30側を向く面は、軸線Oに直交する平面とされている。
【0017】
<スラストパッド>
スラストパッド210は、ディスク205におけるスラストカラー30側の面である表面に設けられている。
図2に示すように、スラストパッド210は、ディスク205の表面に周方向に複数が設けられている。スラストパッド210は、ディスク205の表面に周方向に敷き詰められるように設けられており、複数のスラストパッド210全体で軸線Oを取り囲む環状をなしている。
【0018】
図3に示すように各スラストパッド210は、ディスク205側(静止体100側:
図3の下側)からスラストカラー30側(回転体10側:
図3の上側)に向かって、ベース層220、弾性層230、金属板240及び摺動層250が順次積層された四層構造をなしている。これらベース層220、弾性層230、金属板240及び摺動層250は、それぞれ、回転体10とスラストパッド210の対向方向(軸線O方向)、即ち、スラストパッド210の各層の積層方向を厚さ方向とする板状をなしている。以下では、これら各層における静止体100側の面を裏面、回転体10側の面を表面と称する。
【0019】
<ベース層>
ベース層220は、金属から構成されている。ベース層220は、例えばステンレス鋼によって構成されている。ベース層220は、スラストパッド210の強度を確保する強度メンバーである。
ベース層220は、裏面がディスク205に当接するように配置されている。ベース層220は各層の積層方向(軸線O方向)から見て、円環を周方向に複数(本実施形態では8つ)に分割した円弧状形をなしている。互いに隣り合うスラストパッド210同士では、ベース層220の周方向の端部が互いに接している。ベース層220は、例えばボルト等を介してディスク205に一体に固定されている。
ベース層220の表面及び裏面は、軸線Oに直交する平面とされている。
【0020】
<弾性層>
弾性層230はベース層220の表面に積層されている。弾性層230は、弾性変形可能な材料、即ち、弾性限界の高い材料から構成されている。弾性層230は、例えば。ポリブタジエン系、ニトリル系、クロロプレン系等の各種の合成ゴムによって構成されている。
弾性層230の表面及び裏面は、スラストパッド210に外力が付与されていない状態では、軸線Oに直交する平面とされている。
【0021】
<金属板>
金属板240は、弾性層230の表面に積層されている。金属板240は弾性層230の表面全域を覆うように設けられている。金属板240は、ベース層220同様、金属によって構成されている。金属板240は、例えばステンレス鋼等の鋼材、その他チタン等の耐食性及び剛性の高い金属から構成されている。
金属板240の表面及び裏面は、軸線Oに直交する平面とされている。
【0022】
<摺動層>
摺動層250は、金属板240の表面に積層されている。摺動層250は金属板240の表面全域を覆うように設けられている。摺動層250の表面は、スラストカラー30に水を介して対向するパッド面260とされている。即ち、スラストパッド210における回転体10に対向する面がパッド面260である。
【0023】
摺動層250は、スラストパッド210を構成する他の層よりも摩擦係数の小さい軸受材料によって構成されている。軸受材料としては、樹脂系軸受材、金属系軸受材のいずれであってもよい。
【0024】
樹脂系軸受材としては、例えば潤滑特性の高いPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いることができる。その他、樹脂系軸受材としては、例えばポリアセタール、ナイロン、ポリエチレン、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド等の各種樹脂を用いてもよい。
【0025】
金属系軸受材としては、上記金属板240に比べて剛性は小さいが摩擦係数の低い各種の軸受合金を用いることができる。例えば、金属系軸受材として、スズ・鉛系の合金であるホワイトメタル、その他、アルミ合金や銅合金等、各種の軸受合金を用いることができる。
【0026】
<スラストパッドの全体形状>
弾性層230、金属板240及び摺動層250は、これらの積層方向から見て同形状をなしている。弾性層230、金属板240及び摺動層250は、積層方向視で円環を複数に分割したような円弧形状をなしている。弾性層230、金属板240及び摺動層250の周方向の寸法は、ベース層220の周方向の寸法よりも小さい。したがって、ベース層220の表面における弾性層230、金属板240及び摺動層250の周方向両側の部分は、これら弾性層230、金属板240及び摺動層250に覆われることなく露出している。
【0027】
<パッド面の形状>
ここで
図4(a)に示すように、摺動層250の表面、即ち、パッド面260は、その全域にわたって、スラストカラー30の回転方向R前方側に向かうにしたがって、該スラストカラー30に近づくように延びている。即ち、パッド面260のディスク205からの高さは、周方向における回転方向R前方側に向かうにしたがって高くなる。言い換えれば、パッド面260は、回転方向R前方側に向かっての上り勾配を有している。
【0028】
これにより、パッド面260における回転方向R後方側の縁部は、スラストカラー30から軸線O方向に最も離れている。また、パッド面260における回転方向R前方側の縁部は、スラストカラー30から軸線O方向に最も近づいている。
さらに、摺動層250の裏面は、軸線Oに直交する平面とされている。そのため、摺動層250の積層方向の厚さは、回転方向R前方側に向かうにしたがって徐々に厚くなる。
また、パッド面260とスラストカラー30との間には、回転方向R前方側に向かうにしたがって間隔が次第に小さくなるくさび型のクリアランスが形成されている。
【0029】
<作用効果>
回転体10が回転すると、スラストカラー30によって水が連れまわされることで、スラストカラー30とパッド面260との間のクリアランスに水が引き込まれる。特に本実施形態では、
図4(a)に示すように、パッド面260に回転方向R前方側に向かっての上り勾配が形成されており、クリアランスにおける水の入口側が開いた形状とされている。そのため、スラストカラー30によって連れ回される水を当該クリアランスに容易に引き込むことができる。
【0030】
そして、このようにクリアランス内に引き込まれた水によって、該クリアランス内に潤滑膜としての水膜が形成される。この水膜を介してスラストパッド210に荷重が伝達されると、パッド面260の全域に当該荷重が面圧として作用する。これにより、
図4(b)に示すように、スラストパッド210の弾性層230が、特にクリアランスの小さい回転方向R前方側の部分で大きく変形する。その結果、パッド面260の勾配は当初よりも小さい微小勾配となる。
【0031】
このような微小勾配が形成されると、クリアランス内に適切なくさび形状の水膜が形成される。これによって、パッド面260の一部のみに局所的な荷重が付与されることがなくなり、パッド面260全体に面圧が付与される。これにより、スラストパッド210の負荷能力を向上させることができる。
【0032】
ここでスラストカラー30から水膜を介してスラストパッド210に伝達される面圧は、パッド面260における回転方向R中央の部分で特に大きくなる。
例えば
図5(a)に示すように、金属板240がなくベース層220、弾性層230及び摺動層250のみを備えた三層スラストパッド300の場合、面圧により弾性層230が大きく潰れるように変形する。その結果、
図5(b)に示すように、スラストパッド210全体として特に回転方向R前方側の部分が反るように凹んでしまう。そのため、クリアランスの適切なくさび型形状を維持できず、パッド面260に対して局所的な荷重が付与されることとなる。この場合、回転方向R後方側の端部で境界潤滑となるため、スラストパッド210全体としての負荷能力が低下する。
【0033】
これに対して本実施形態によれば、パッド面260に水膜を介して面圧が作用した場合であっても、摺動層250と弾性層230との間に剛性の高い金属板240が配置されていることで、弾性層230が凹むように変形することを抑制することができる。
即ち、摺動層250の中央部に大きな面圧が付与されたとしても、その裏面側の剛性の高い金属板240により当該面圧は分散されて弾性層230に付与される。そのため、弾性層230が大きく凹んでしまうことを回避できる。そのため、クリアランスのくさび型形状を保つことができ、負荷能力を高く維持することができる。
【0034】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0035】
例えば変形例として、例えば
図6に示すように、摺動層250と金属板240との間に、金属板240よりも熱伝導率の高い金属材料から構成された冷却板を設けた構成であってもよい。当該金属材料としては、銅やアルミニウム、または、これらを含む合金を用いることができる。
当該構成によって、スラストパッド210の上記機能を維持したまま、スラストパッド210の熱を効率よく除去することができる。
【0036】
また、例えば、スラストパッド210のパッド面260に、冷却用の溝が形成されていてもよい。また、スラストパッド210の内部に、外面に開口する孔部が形成されていてもよい。これら溝や孔部内を水が流通することによって、スラストパッド210をより効率的に冷却することができる。
【0037】
さらに、実施形態では、回転機械1を水没状態で用いるものとし、クリアランス内に水による水膜を形成する例について説明した。しかしながらこれに限定されることはなく、回転機械1を油等の他の液体中に没した状態で用いて、クリアランス内に油等の液膜を形成する構成であってもよい。また、回転機械1を気中で用いるものとして、クリアランスに空気等の気体による気膜を形成するものであってもよい。即ち、クリアランスに流体膜を形成できる環境であれば、いかなる環境で用いられる回転機械1であってもよい。
【0038】
また、実施形態では流体膜軸受をスラスト軸受200に適用した例について説明したが、これに限定されることはなく、流体膜軸受をラジアル軸受に適用してもよい。この場合、回転軸20を囲うリングの内周面に軸受パッドとしてのラジアルパッドを周方向に複数配置した構成となる。そして、当該ラジアルパッドは、径方向外側から内側に向かって、実施形態のベース層220、弾性層230、金属板240及び摺動層250が順次積層された構成となる。摺動層250の径方向内側の面は、回転軸20に対向するパッド面260とされる。パッド面260は、回転方向R前方側に向かうにしたがって回転軸20に近づく勾配を有していてもよい。これによって、実施形態のスラスト軸受200と同様の作用効果を奏する。
【0039】
<付記>
各実施形態に記載の流体膜軸受は、例えば以下のように把握される。
【0040】
(1)第1の態様に係る流体膜軸受は、軸線Oを中心として回転する回転体10の周方向に複数が配置されて、流体膜を介して前記回転体10を支持する軸受パッド210を備え、前記軸受パッド210は、金属から構成されたベース層220と、該ベース層220における前記回転体10側に積層されて、弾性変形可能な弾性材料から構成された弾性層230と、該弾性層230における前記回転体10側に積層されて、前記回転体10に対向するとともに、軸受材料から構成された摺動層250と、前記弾性層230と前記摺動層250との間に積層されて、前記弾性層230及び前記摺動層250よりも剛性の高い金属板240と、を有する。
【0041】
このような構成の流体膜軸受は、パッド面260に流体膜を介して面圧が作用した場合であっても、摺動層250と弾性層230との間に剛性の高い金属板240が配置されていることで、弾性層230が凹むように変形することを抑制することができる。そのため、軸受パッド210全体として大きく凹んでしまうことはなく。負荷容量の低下を避けることができる。
【0042】
(2)第2の態様に係る流体膜軸受は、前記摺動層250における前記回転体10に対向するパッド面260は、前記回転体10の回転方向R前方側に向かうにしたがって前記回転体10に近づくように延びている(1)に記載の流体膜軸受である。
【0043】
回転体10の回転に伴って流体が連れ回されることで、該回転体10とパッド面260とのクリアランスに流体が引き込まれる。ここで、本態様ではパッド面260に勾配が形成されており、クリアランスの流体の入口側が開いた形状となっている。そのため、当該クリアランスに容易に流体を引き込むことができる。
そして、このように引き込まれた流体からの面圧に応じて弾性層230が変形すると、パッド面260の勾配は当初よりも小さくなる。即ち、パッド面260が微小勾配面となることでクリアランス内に適切なくさび形状の水膜が形成され、負荷能力を向上させることができる。
【0044】
(3)第3の態様に係る流体膜軸受は、前記軸受パッド210は、前記摺動層250と前記金属板240との間に配置されて、前記金属板240よりも熱伝導率の高い金属材料から構成された冷却板をさらに有する(1)又は(2)に記載の流体膜軸受である。
【0045】
これにより、軸受パッド210の機能を維持したまま、効率よく熱を除去することができる。
【0046】
(4)第4の態様に係る流体膜軸受は、前記軸受けパッドは、前記回転体10に対して軸線O方向から対向するように周方向に複数が配置されており、前記パッド面260は、前記軸線O方向から前記回転体10を支持する(1)から(3)に記載の流体膜軸受である。
【0047】
これによって、負荷能力の高いスラスト軸受200を実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…回転機械 10…回転体 20…回転軸 30…スラストカラー 100…静止体 200…スラスト軸受(流体膜軸受) 205…ディスク 210…スラストパッド(軸受パッド) 220…ベース層 230…弾性層 240…金属板 250…摺動層 260…パッド面 280…第二スラストパッド 290…冷却層 300…三層スラストパッド O…軸線 R…回転方向