(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157533
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】流体機械及び水中航走体
(51)【国際特許分類】
B63G 8/08 20060101AFI20221006BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20221006BHJP
B63H 11/08 20060101ALI20221006BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20221006BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20221006BHJP
H02K 7/08 20060101ALI20221006BHJP
H02K 21/16 20060101ALI20221006BHJP
H02K 16/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B63G8/08 A
B63C11/00 B
B63H11/08 A
B63C11/48 D
H02K7/14
H02K7/08 A
H02K21/16 M
H02K16/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061813
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】磯部 真一
(72)【発明者】
【氏名】山田 航
(72)【発明者】
【氏名】西田 健彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓慶
(72)【発明者】
【氏名】細野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 善友
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】関根 裕一
【テーマコード(参考)】
5H607
5H621
【Fターム(参考)】
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC05
5H607DD02
5H607FF08
5H607FF12
5H607GG07
5H607GG09
5H607GG15
5H621BB01
5H621BB02
5H621GA04
5H621JK19
(57)【要約】
【課題】効率を向上させながらコンパクト化を図ることができる流体機械及び水中航走体を提供する。
【解決手段】軸部と、内周面が上流側から下流側に向かうにしたがって縮径するとともに、軸部との間で下流側に向かうにしたがって流路断面積が小さくなる流路を形成するシュラウドと、軸部とシュラウドとの間で軸線回りに回転可能に設けられて、上流側から下流側に向かって流体を圧送するプロペラと、プロペラに対応するように設けられて、プロペラの外周部に固定されたリング状をなしシュラウド内に収容されたロータ、及び、ロータを囲うリング状をなしシュラウド内に固定されたステータを有するモータと、を備え、プロペラは、軸線方向に離間して複数が設けられており、各プロペラに対応するように各プロペラと同数のモータが設けられており、複数のモータは下流側に位置するモータほどロータの平均外径が小さくなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる軸部と、
前記軸部を囲うように設けられて、内周面が前記軸線方向一方側である上流側から前記軸線方向他方側である下流側に向かうにしたがって縮径するとともに、前記軸部との間で前記下流側に向かうにしたがって流路断面積が小さくなる流路を形成するシュラウドと、
前記軸部と前記シュラウドとの間で軸線回りに回転可能に設けられて、前記上流側から前記下流側に向かって流体を圧送するプロペラと、
前記プロペラに対応するように設けられて、前記プロペラの外周部に固定されたリング状をなし前記シュラウド内に収容されたロータ、及び、前記ロータを囲うリング状をなし前記シュラウド内に固定されたステータを有するモータと、
を備え、
前記プロペラは、前記軸線方向に離間して複数が設けられており、
前記モータは、各前記プロペラに対応するように各前記プロペラと同数が設けられており、
複数の前記モータは、前記下流側に位置する前記モータほど前記ロータの平均外径が小さくなる流体機械。
【請求項2】
前記軸線方向に互いに隣り合う前記モータのうち、前記下流側に位置する前記モータの前記ステータの平均内径は、前記上流側に位置する前記モータの前記ステータの平均内径よりも小さく、かつ、前記下流側に位置する前記モータの前記ロータの平均外径は、前記上流側に位置する前記モータの前記ロータの平均外径よりも小さい請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
前記シュラウドは、前記軸線に直交する断面形状が、前記上流側の端部を前縁とし、前記下流側の端部を後縁とした翼型をなしている請求項1又は2に記載の流体機械。
【請求項4】
前記プロペラは、前記軸線方向に二つが設けられており、
二つの前記プロペラの回転方向は互いに反対とされており、
各前記プロペラは、周方向に複数が配置された羽根を有しており、
前記下流側の前記プロペラの前記羽根における負圧面圧力分布は、負荷が前縁に偏った前縁負荷型とされており、
前記上流側の前記プロペラの前記羽根における負圧面圧力分布は、前記下流側の前記羽根の負圧面圧力分布よりも負荷が前記軸線方向に分散するとともに径方向内側の負荷が小さい負荷均一型とされている請求項1から3のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項5】
前記プロペラは、前記軸部の外周側にクリアランスを介して嵌め込まれた内周リングを有し、
前記軸部に固定されて、前記内周リングの前記上流側に周方向にわたって対向するスラスト軸受と、
前記シュラウドを前記軸部に対して支持するストラットと、
をさらに備える請求項1から4のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項6】
前記シュラウドは、前記軸線方向に複数に分割された複数の分割体から構成されており、
これら複数の分割体を前記軸線方向に連結する連結部をさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項7】
前記連結部は、前記シュラウドの外周面から突出する凸曲面状をなしているとともに、前記シュラウドの外周面に沿う断面形状が前記上流側を前縁とし前記下流側を後縁とする翼型をなしている請求項6に記載の流体機械。
【請求項8】
複数の前記モータのうちの少なくとも一つは、前記ロータ及び前記ステータが、前記上流側から前記下流側に向かうにしたがって縮径しているコニカルモータである請求項1から7のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項9】
前記コニカルモータの前記ステータは、
前記軸線を中心とする環状をなすとともに前記下流側に向かうにしたがって縮径するバックヨーク、及び、該バックヨークの内周面から径方向内側に突出するとともに前記軸線方向にわたって延びるように周方向に複数が設けられ、前記下流側に向かうにしたがって縮径しながら周方向の厚さが小さくなるティースを有するステータコアと、
各前記ティースの外面を囲うように設けられた複数のコイルと、
を備える請求項8に記載の流体機械。
【請求項10】
各前記コイルは、前記ティースの周りで径方向に複数層が積層された偏平状をなす平角線によって構成されており、
前記コイルの各層は、径方向視で前記下流側に向かうにしたがって周方向の間隔が小さくなる矩形状をなしている請求項9に記載の流体機械。
【請求項11】
前記コイルの各層は、前記下流側に向かうにしたがって径方向内側に向かうように傾斜している請求項10に記載の流体機械。
【請求項12】
前記コイルは、コイルエンドの前記軸線方向の端部の軸線方向位置が、各層で互いに一致している請求項11に記載の流体機械。
【請求項13】
前記コイルの各層における前記コイルエンドを構成する部分が、前記軸線に対して平行となるように折り曲げられている請求項12に記載の流体機械。
【請求項14】
前記コニカルモータの前記ロータは、
前記軸線を中心とする環状をなすとともに前記下流側に向かうにしたがって縮径するロータコアと、
該ロータコアに周方向に間隔をあけて複数が配置されて、前記軸線方向にわたって延びる永久磁石と、
を有し、
前記永久磁石は、前記下流側に向かうにしたがって径方向内側に傾斜するように延びているとともに、周方向の幅が前記下流側に向かうにしたがって小さくなる請求項8から13のいずれか一項に記載の流体機械。
【請求項15】
前記永久磁石の着磁方向が、前記ロータの外周面に対して垂直である請求項14に記載の流体機械。
【請求項16】
前記プロペラは、該プロペラの外周部を構成するリング状をなす外周リングをさらに有し、
前記ロータコアは、前記外周リングの外周面に嵌め込まれており、
前記外周リングと前記ロータコアとの前記下流側の端部に当接する押さえ板と、
該押さえ板を前記軸線方向に貫通するように設けられて、該押さえ板を前記外周リングに固定する押さえボルトと、
をさらに備える請求項14又は15に記載の流体機械。
【請求項17】
前記外周リングは、前記下流側に向かうにしたがって径方向の厚さが小さくなり、
前記ロータコアの前記下流側の端部における互いに隣り合う前記永久磁石の間の部分に、前記押さえ板を挿通した押さえボルトの外周面の一部を収容する切欠部が形成されている請求項16に記載の流体機械。
【請求項18】
航走体本体と、
該航走体本体に設けられた推進装置と、を備え、
前記推進装置は、請求項1から17のいずれか一項に記載の流体機械である水中航走体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体機械及び水中航走体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、流体機械の一例として、外周駆動の推進装置が記載されている。推進装置は、軸線を中心とした円筒状をなすシュラウドと、該シュラウドの内側に同軸に配置されたプロペラと、を有している。プロペラは軸線方向に二つが配置されている。
【0003】
シュラウド内には二つのプロペラに対応するように計二つのモータが収容されている。モータは、プロペラの外周部に設けられたロータと、ロータを外周側から取り囲むステータとを有している。モータ及びステータは、いずれも外周面及び内周面が軸線に対して平行な円筒状をなしている。また、二つのモータは、同一の径方向位置に並設されている。
このようなモータによりプロペラが外周駆動されることによって、流体がシュラウド内を軸線方向に圧送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、流体がプロペラによって圧送されると、当該流体の流速が加速される結果、流体の流れは径方向内側に絞られたものとなる。したがって、このような流体が流通する流路も下流側に向かって絞られた形状であること、即ち、流路断面積が下流側に向かうにしたがって小さくなることが好ましい。これに対して上記特許文献1に記載の推進装置では、シュラウドの内側の流路断面積は下流側に向かうにつれて大きい構成とされている。そのため、プロペラの効率上、好ましくない。
【0006】
一方で複数のモータで外周駆動を行う場合、シュラウド内に複数のモータを配置する必要がある。複数のモータの配置構造によっては、これに合わせてシュラウドを大型化しなければならない場合がある。推進装置の外形をなすシュラウドが大型化すれば、推進装置全体の体積が大きくなるため好ましくない。
【0007】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、効率を向上させながらコンパクト化を図ることができる流体機械及び水中航走体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る流体機械は、軸線方向に延びる軸部と、前記軸部を囲うように設けられて、内周面が前記軸線方向一方側である上流側から前記軸線方向他方側である下流側に向かうにしたがって縮径するとともに、前記軸部との間で前記下流側に向かうにしたがって流路断面積が小さくなる流路を形成するシュラウドと、前記軸部と前記シュラウドとの間で軸線回りに回転可能に設けられて、前記上流側から前記下流側に向かって流体を圧送するプロペラと、前記プロペラに対応するように設けられて、前記プロペラの外周部に固定されたリング状をなし前記シュラウド内に収容されたロータ、及び、前記ロータを囲うリング状をなし前記シュラウド内に固定されたステータを有するモータと、を備え、前記プロペラは、軸線方向に離間して複数が設けられており、各前記プロペラに対応するように各前記プロペラと同数の前記モータが設けられており、複数の前記モータは、下流側に位置する前記モータほど前記ロータの平均外径が小さくなる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、効率を向上させながらコンパクト化を図ることができる流体機械及び水中航走体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る水中航走体の船尾の斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る推進装置の縦断面図である。
【
図4】実施形態に係る推進装置のプロペラにおける羽根の負圧面圧力分布を示す図であって、(a)は第一羽根の負圧面圧力分布を示す図、(b)は第二羽根の負圧面圧力分布を示す図である。
【
図5】シュラウドの外周面に配置された連結部の縦断面図である。
【
図6】シュラウドの外周面に配置された連結部を径方向外側から見た模式的な図である。
【
図7】
図3のVII-VII図であって、コニカルモータの軸線に直交する断面図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII図であって、コニカルモータの軸線を含む縦断面図である。
【
図9】コニカルモータのコイルを構成するコイル層を径方向外側から見た図である。
【
図10】
図3の一部拡大図であって、コニカルステータの外周リングへの取り付け構造を説明する図である。
【
図11】コニカルロータの永久磁石を示す二面図である。
【
図12】第一変形例に係るコニカルステータの縦断面図である。
【
図13】第二変形例に係るコニカルステータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<水中航走体の全体構成>
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1及び
図2に示すように、水中航走体1は、航走体本体2及び推進装置8を有している。
【0012】
<航走体本体>
航走体本体2は、軸線Oに沿って延びる耐圧性容器によって構成されている。航走体本体2内には、例えば水中航走に必要な各種機器、電源、通信設備、センサ等が収容されている。
【0013】
<推進装置>
推進装置8は、航走体本体2の後部に該航走体本体2と一体に設けられている。推進装置8は、水中航走体1を水中で推進させるための装置である。
推進装置8は、軸部3、第一プロペラ10A、第二プロペラ10B、軸受部40、シュラウド50、連結部70、ストラット78、円筒モータ80及びコニカルモータ90を有している。
【0014】
<軸部>
図2に示すように、軸部3は航走体本体2の後部に一体に設けられている。軸部3は、航走体本体2の一部であってもよい。軸部3は軸線Oに沿って延びる棒状をなしている。本実施形態の軸部3は、軸線O方向一方側(航走体本体2の前方側)から軸線O方向他方側(航走体本体2の後方側)に向かうにしたがって縮径する円錐台形状をなしている。軸部3の径方向外側を向く面は、軸線O方向他方側に向かうにしたがって縮径するテーパ状をなす軸外周面3aとされている。
【0015】
軸部3には、軸外周面3aから径方向内側に凹むとともに周方向にわたって環状に延びる収容溝5が形成されている。収容溝5は、軸線O方向に間隔をあけて二つが形成されている。
詳しくは
図3に示すように、収容溝5の底となる径方向外側を向く面は、溝底面5aとされている。溝底面5aは軸線Oを中心とした円筒面状をなしている。
【0016】
収容溝5を構成する軸線O方向一方側の面は、溝上流側面5bとされている。溝上流側面5bは、軸線Oに直交する平面状をなしており、軸線O方向他方側を向いている。溝上流側面5bは、軸線Oを中心とする環状に延びている。
【0017】
収容溝5を構成する軸線O方向他方側の面は、溝下流側面5cとされている。溝下流側面5cは、軸線Oに直交する平面状をなしており、軸線O方向一方側を向いている。溝下流側面5cは、軸線Oを中心とする環状に延びている。溝下流側面5cは、溝上流側面5bと平行をなしている。
【0018】
<第一プロペラ、第二プロペラ>
図2及び
図3に示すように、第一プロペラ10A及び第二プロペラ10Bは、軸部3の外周側に配置されており、軸部3に対して軸線O回りに相対回転可能とされている。第一プロペラ10Aは、内周リング11、第一羽根20A及び外周リング30から構成されている。第二プロペラ10Bは、内周リング11、第二羽根20B及び外周リング30から構成されている。
【0019】
<内周リング>
内周リング11は、軸線Oを中心とするリング状をなす部材である。第一プロペラ10Aの内周リング11は、軸線O方向一方側の収容溝5内に収容されている。第二プロペラ10Bの内周リング11は、軸線O方向他方側の収容溝5内に収容されている。
【0020】
図3に示すように、内周リング11は、リング内面12、上流端面13、下流端面14及び外周流路面15を有している。
リング内面12は、内周リング11の内周面を構成している。リング内面12は、周方向にわたって溝底面5aと対向する円筒面状をなしている。リング内面12の内径は溝底面5aの外径よりも大きく設定されている。
【0021】
上流端面13は、内周リング11における軸線O方向一方側を向く面であって、溝上流側面5bの軸線O方向他方側に間隔をあけて配置されている。
下流端面14は、内周リング11における軸線O方向他方側を向く面であって、溝下流側面5cの軸線O方向一方側に間隔をあけて配置されている。
【0022】
外周流路面15は、内周リング11における径方向外側を向く外周面を構成している。外周流路面15は、軸線O方向他方側に向かうにしたがって縮径するテーパ面状をなしている。外周流路面15は、軸外周面3aに連なるように延びている。
【0023】
<第一羽根20A、第二羽根20B>
第一羽根20Aは、第一プロペラ10Aの内周リング11における外周流路面15から径方向外側に延びるように設けられている。第二羽根20Bは、第二プロペラ10Bの内周リング11における外周流路面15から径方向外側に向かうように延びている。第一羽根20A及び第二羽根20Bは、周方向に間隔をあけて複数が設けられている。第一羽根20A及び第二羽根20Bの軸線O方向の寸法は、内周リング11の軸線O方向の寸法よりも小さい。
【0024】
第一羽根20A及び第二羽根20Bは、径方向に交差する断面形状が翼型をなしている。第一羽根20A及び第二羽根20Bの軸線O方向一方側の縁部は、上流側となる前縁とされている。第一羽根20A及び第二羽根20Bの軸線O方向他方側の縁部は、下流側となる後縁とされている。以下では、軸線O方向一方側を単に「上流側」と称し、軸線O方向他方側を単に「下流側」と称する。
【0025】
ここで、第一羽根20A及び第二羽根20Bの詳細構造について
図4を参照して説明する。
図4は、第一羽根20A及び第二羽根20Bを所定の速度で回転させた場合における負圧面の圧力分布を示している。
【0026】
図4(a)に示すように、第一羽根20Aの負圧面の圧力分布は、前縁側かつ径方向外側に、最も圧力の高い領域、即ち、最も負荷の大きい領域が形成された分布とされている。また、径方向内側の部分には、負荷の高い部分は存在せず、軸線O方向にわたって低負荷とされている。
【0027】
図4(b)に示すように、第二羽根20Bの負圧面の圧力分布は、前縁の径方向全域にわたって最も負荷の大きい部分が形成された分布とされている。特に前縁側かつ径方向外側の部分には局所的に高負荷となる部分が存在する。
【0028】
以上のように、第二羽根20Bの負圧面圧力分布は、負荷が前縁に偏った前縁負荷型とされている。一方で、第一羽根20Aの負圧面圧力分布は、第二羽根20Bの負圧面圧力分布よりも負荷が軸線O方向に分散するとともに径方向内側の負荷が小さい負荷均一型とされている。
【0029】
<外周リング>
図2及び
図3に示すように、外周リング30は、第一プロペラ10A及び第二プロペラ10Bの外周部を構成する部材であって、軸線Oを中心としたリング状をなしている。第一プロペラ10Aの外周リング30は、周方向に配列された複数の第一羽根20Aを周方向に接続している。第二プロペラ10Bの外周リング30は、周方向に配列された複数の第二羽根20Bを周方向に接続している。第一プロペラ10Aの外周リング30の軸線O方向の寸法は、第一羽根20Aの軸線O方向の寸法よりも大きい。第二プロペラ10Bの外周リング30の軸線O方向の寸法は、第二羽根20Bの軸線O方向の寸法よりも大きい。
【0030】
第一プロペラ10Aの外周リング30は、内周流路面31、円筒固定面32、押さえ部34及び下流端面35を有している。第二プロペラ10Bの外周リング30は、内周流路面31、テーパ固定面33、押さえ部34及び下流端面35を有している。
【0031】
内周流路面31は、各外周リング30の内周面を構成する面である。第一プロペラ10Aの外周リング30の内周流路面31は、周方向に配列された複数の第一羽根20Aの径方向外側の端部に一体に接続されている。第二プロペラ10Bの外周リング30の内周流路面31は、周方向に配列された複数の第二羽根20Bの径方向外側の端部に一体に接続されている。
【0032】
円筒固定面32は、第一プロペラ10Aの外周リング30における外周面を構成する面である。円筒固定面32は、軸線Oを中心とする円筒面状をなしており、軸線O方向に延びている。円筒固定面32は、軸線Oを平行とされている。
【0033】
テーパ固定面33は、第二プロペラ10Bの外周リング30における外周面を構成する面である。テーパ固定面33は、下流側に向かうにしたがって縮径するテーパ面状をなしている。テーパ固定面33は一様のテーパ角度で、即ち、軸線Oに対して一様な傾斜角で軸線O方向に延びている。このようなテーパ固定面33を有することで、第二プロペラ10Bの外周リング30の径方向の厚さは、下流側に向かうにしたがって小さくなっている。
【0034】
ここでテーパ固定面33の平均外径は、円筒固定面32の平均外径よりも小さく設定されている。本実施形態ではテーパ固定面33は、軸線O方向で一様なテーパ形状で延びている。そのため、テーパ固定面33の平均外径は、テーパ固定面33の軸線O方向の中央での外径と同一である。また、円筒固定面32の平均外径は、円筒固定面32の軸線O方向での任意の部分での外径と同一である。
本実施形態では、テーパ固定面33の上流側の端部の外径は、円筒固定面32の下流側の端部の外径と同一、又は該円筒固定面32の下流側の端部の外径よりも小さく設定されている。
【0035】
押さえ部34は、各外周リング30における円筒固定面32の上流側の端部、及び、テーパ固定面33の上流側の端部からそれぞれ径方向外側に張り出すとともに周方向にわたって延びている。
【0036】
<軸受部>
軸受部40は、第一プロペラ10A及び第二プロペラ10Bを軸部3に対して回転可能に支持する。軸受部40は、収容溝5内に設けられており、第一プロペラ10A及び第二プロペラ10Bの内周リング11を回転可能に支持している。軸受部40は、ラジアル軸受41、上流側スラスト軸受42及び下流側スラスト軸受43から構成されている。
【0037】
ラジアル軸受41は、収容溝5における溝底面5a上に周方向にわたって設けられている。ラジアル軸受41として、本実施形態ではジャーナル軸受を採用している。ジャーナル軸受の外径は内周リング11の内径よりも小さい。これにより、ジャーナル軸受と内周リング11との間には周方向にわたってクリアランスが形成されている。
【0038】
上流側スラスト軸受42は、収容溝5における溝上流側面5b上に周方向にわたって設けられている。上流側スラスト軸受42は、内周リング11の上流端面13と軸線O方向にクリアランスを介して対向している。
下流側スラスト軸受43は、収容溝5における溝下流側面5c上に周方向にわたって設けられている。下流側スラスト軸受43は、内周リング11の下流端面14と軸線O方向にクリアランスを介して対向している。
【0039】
ラジアル軸受41、上流側スラスト軸受42及び下流側スラスト軸受43と、内周リング11と、の間には、収容溝5に流入する水が介在されている。これによって、ラジアル軸受41、上流側スラスト軸受42及び下流側スラスト軸受43は、内周リング11との間に形成される水膜を介して該内周リング11を回転可能に支持している。
【0040】
<シュラウド>
シュラウド50は、軸部3、第一プロペラ10A及び第二プロペラ10Bを外周側から囲うように設けられている。シュラウド50は、軸線Oを中心とした環状をなしている。シュラウド50は、軸部3の外周面から径方向に間隔をあけて配置されている。これによって、シュラウド50と軸部3との間には、軸線O方向にわたって環状をなす流路が形成されている。流路内には、第一プロペラ10Aの第一羽根20A、第二プロペラ10Bの第二羽根20Bが位置しており、第一プロペラ10A及び第二プロペラ10Bの外周リング30は、シュラウド50内に収容されている。
【0041】
シュラウド50における径方向内側を向く面は、シュラウド内周面51とされている。該シュラウド内周面51は、流路に面している。シュラウド50における径方向外側を向く面は、シュラウド外周面52とされている。
本実施形態のシュラウド50は、軸線Oを含む断面形状が翼型をなしている。シュラウド内周面51とシュラウド外周面52との上流側の端部の接続箇所は、周方向にわたって環状に延びるシュラウド前縁53とされている。シュラウド内周面51とシュラウド外周面52との下流側の端部での接続箇所は、周方向にわたって延びる環状をなすシュラウド後縁54とされている。シュラウド後縁54の軸線O方向位置は、軸部3の後端の軸線O方向位置と同一とされている。
【0042】
シュラウド50は、上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に縮径する形状をなしている。本実施形態では、シュラウド50の断面翼型におけるシュラウド内周面51とシュラウド外周面52からの距離が等しい翼中心線(キャンバーライン)が、上流側から下流側に向かうにしたがって徐々に径方向内側に傾斜している。これにより、シュラウド後縁54はシュラウド前縁53よりも径方向内側に位置している。
【0043】
シュラウド外周面52は、シュラウド前縁53付近では下流側に向かうにしたがって一旦拡径し、その後さらに下流側に向かうにしたがって滑らかに縮径していく。シュラウド外周面52は、径方向外側に向かって凸となる凸曲面状をなしている。
【0044】
シュラウド内周面51は、軸線O方向にわたって、下流側に向かうにしたがって径方向内側に縮径している。シュラウド内周面51は、径方向内側に向かって凸となる凸曲面状をなしている。シュラウド内周面51と軸部3の軸外周面3aとの間に形成される環状の流路は、下流側に向かうにしたがって径方向内側に絞られていく。これによって、流路の流路断面積は、下流側に向かう程小さくなる。
なお、シュラウド内周面51は、シュラウド前縁53からシュラウド後縁54までの全域で縮径している必要はなく、シュラウド前縁53から少なくとも第二プロペラ10Bにおける第二羽根20Bの後縁の軸線O方向位置まで縮径していればよい。
これに伴って、シュラウド内周面51と軸外周面3aとによって形成される流路の流路断面積も、シュラウド50の軸線O方向の全範囲で徐々に縮小する必要はなく、シュラウド前縁53から少なくとも第二プロペラ10Bにおける第二羽根20Bの後縁軸線O方向位置まで徐々に縮小していればよい。
【0045】
シュラウド50には、シュラウド内周面51から径方向外側に向かって凹む第一キャビティ50A及び第二キャビティ50Bが形成されている。第一キャビティ50Aはシュラウド50における上流側寄りの部分に形成されており、第二キャビティ50Bはシュラウド50における下流側寄りの部分に形成されている。即ち、第二キャビティ50Bは第一キャビティ50Aよりも下流側に形成されている。
【0046】
第一キャビティ50Aには、第一プロペラ10Aの外周リング30が収容されている。第二キャビティ50Bには第二プロペラ10Bの外周リング30が収容されている。それぞれの外周リング30の内周流路面31は、シュラウド内周面51に軸線O方向に連なるようにして延びている。即ち、内周流路面31は、シュラウド内周面51の凸曲面の一部を構成するように延びている。
【0047】
第一キャビティ50A内における径方向内側を向く面には、軸線Oを中心とする円筒面状をなす底部を有する円筒固定凹部56が形成されている。円筒固定凹部56は、第一プロペラ10Aの外周リング30における円筒固定面32と対応する軸線O方向位置に形成されている。
【0048】
第二キャビティ50Bにおける径方向内側を向く面には、下流側に向かうにしたがって一様のテーパ角度で縮径する底部を有するテーパ固定凹部57が形成されている。テーパ固定凹部57は、第二プロペラ10Bの外周リング30におけるテーパ固定面33と対応する軸線O方向位置に形成されている。
【0049】
ここで、テーパ固定凹部57の底部の平均内径は、円筒固定凹部56の底部の平均内径よりも小さく設定されている。テーパ固定凹部57の底部は軸線O方向に一様なテーパ角度で延びている。そのため、テーパ固定凹部57の底部の平均内径は、該テーパ固定凹部57の底部の軸線O方向中央の内径と一致する。円筒固定凹部56の底部は、軸線Oに平行な円筒面状をなすため、円筒固定凹部56の平均内径は、円筒固定凹部56の底部の軸線O方向の任意の箇所の内径と同一である。
なお、「平均内径」とは、軸線O方向での平均の内径を意味している。
【0050】
ここで、本実施形態のシュラウド50は、軸線O方向に分割された複数の分割体を連結することによって構成されている。即ち、分割体としてのシュラウド50は、上流分割体61、中間分割体62及び下流分割体63によって構成されている。
【0051】
上流分割体61は、シュラウド前縁53を含む上流側の部分を構成している。
中間分割体62は、シュラウド50における上流分割体61の下流側に連なる部分を構成している。上流分割体61における径方向内側かつ下流側の部分を大きく切り欠いた箇所を、中間分割体62が下流側から閉塞することによって第一キャビティ50Aが区画形成されている。
下流分割体63は、中間分割体62の下流側に連なる部分であって、シュラウド後縁54を含む部分を構成している。下流分割体63における径方向内側かつ上流側の部分を大きく切り欠いた箇所を、中間分割体62が上流側から閉塞することによって第二キャビティ50Bが区画形成されている。
【0052】
<連結部>
図1に示すように、連結部70は、シュラウド50におけるシュラウド外周面52から突出するように設けられている。連結部70はシュラウド50の複数の分割体を互いに連結する。
詳しくは
図5に示すように、連結部70は、上流凸部71、中間凸部72、下流凸部73、連結ボルト74、及び充填部75を有している。
【0053】
上流凸部71は、シュラウド50における上流分割体61に一体に設けられており、該上流分割体61の外周面から突出している。上流凸部71には、下流側から上流側に向かって凹むようにして、ボルト固定孔71aが形成されている。
中間凸部72は、シュラウド50における中間分割体62に一体に設けられており、該上流分割体61の外周面から突出している。中間凸部72には、該中間凸部72を軸線O方向に貫通するボルト貫通孔72aが形成されている。
【0054】
下流凸部73は、シュラウド50における下流分割体63に一体に設けられており、該下流分割体63の外周面から突出している。下流凸部73には、下流側から上流側に凹むようにしてボルト用凹部73aが形成されている、ボルト用凹部73aの底部には、該底部と下流凸部73における上流側を向く面とを貫通するボルト挿入孔73bが形成されている。
【0055】
連結ボルト74は、上流凸部71、中間凸部72及び下流凸部73を互いに連結している。連結部70によって上流分割体61、中間分割体62及び下流分割体63を連結する際には、上流凸部71、中間凸部72及び下流凸部73が、上流側から下流側に順次当接するように位置決めする。この状態では、ボルト挿入孔73b、ボルト貫通孔72a及びボルト固定孔71aが互いに軸線O方向に連通した状態となる。そして、このように連通したボルト挿入孔73b、ボルト貫通孔72a及びボルト固定孔71aにボルト用凹部73aを介して連結ボルト74が挿入、固定される。これによって、上流凸部71、中間凸部72及び下流凸部73が一体に連結され、これら上流凸部71、中間凸部72及び下流凸部73とそれぞれ一体をなす上流分割体61、中間分割体62及び下流分割体63が軸線O方向に一体に連結される。
【0056】
充填部75は、ボルト用凹部73aに充填されるように設けられている。充填部75は、例えば硬化した樹脂である。充填部75は、連結ボルト74を取り付けた後に、ボルト用凹部73aに液体の樹脂を流し込み、その後、該樹脂が硬化することで形成されている。充填部75の一部は連結部70の外面を形成している。
【0057】
ここで上記のような連結部70の外面形状について
図5及び
図6を用いて説明する。連結部70の外面形状は、上流凸部71、中間凸部72、及び下流凸部73に加えて充填部75におけるボルト用凹部73aからの露出面によって形成されている。連結部70は全体としてシュラウド外周面52から突出する凸曲面状をなしている。連結部70は、軸線O方向を長手方向とした凸曲面状をなしている。
【0058】
さらに本実施形態の連結部70は、
図6に示すように、シュラウド外周面52に沿う断面形状が上流側を前縁とし下流側を後縁とする翼型をなしている。連結部70の前縁は凸部前縁70aとされている。連結部70の後縁は凸部後縁70bとされている。より詳細には、連結部70は、シュラウド外周面52の法線方向に離れるにしたがって順次小さくなる相似形状をなす翼型を、法線方向に積み重ねたような形状をしている。
【0059】
<ストラット>
図1及び
図2に示すように、ストラット78は、シュラウド50と軸部3とを連結することで、軸部3に対してシュラウド50を支持する。ストラット78は、周方向に間隔をあけて複数が設けられており、軸線O方向に延びている。ストラット78における下流側の端部は、シュラウド50に固定されている。ストラット78の上流側の端部は軸部3の軸外周面3aに固定されている。
ストラット78の軸線Oに直交する断面形状は、径方向を長手方向として周方向を短手方向とした偏平矩形状をなしている。これによって、水中航走体1の推進の回転を抑制している。
【0060】
<円筒モータ>
図2及び
図3に示すように、円筒モータ80は、シュラウド50における第一キャビティ50A内に収容されている。円筒モータ80は、第一プロペラ10Aを回転駆動する。円筒モータ80は、円筒ステータ81及び円筒ロータ82を有している。
【0061】
円筒ステータ81は、軸線Oを中心として軸線O方向に延びる円筒状をなしている。円筒ステータ81の内周面及び外周面は、軸線Oに平行とされている。円筒ステータ81は、シュラウド50の第一キャビティ50A内における円筒固定凹部56に外周面が嵌め込まれている。即ち、円筒モータ80は、シュラウド50に固定一体化されている。円筒ステータ81の外周面の外径は、円筒固定凹部56の底面の内径と軸線O方向にわたって同一とされている。
【0062】
円筒ロータ82は、軸線Oを中心として軸線O方向に延びる円筒状をなしている。円筒ロータ82の内周面及び外周面は、軸線Oに平行とされている。円筒ロータ82の外径は円筒ステータ81の内径よりも小さく設定されている。円筒ロータ82の軸線O方向の寸法は、円筒ステータ81と同一とされている。円筒ロータ82は、第一プロペラ10Aの円筒固定面32に外周側から一体に固定されている。したがって、円筒ロータ82の内径は、円筒固定面32の外径と軸線O方向にわたって同一とされている。円筒ロータ82の外周面は、円筒ステータ81の内周面に周方向及び軸線O方向にわたって対向している。円筒ロータ82の外周面と円筒ステータ81の外周面との間には、周方向及び軸線O方向にわたってクリアランスが形成されている。
【0063】
円筒ロータ82の上流側の端面は、第一プロペラ10Aの外周リング30における押さえ部34に下流側から当接している。
円筒ロータ82の下流側の端面には第一押さえ板83が当接している。第一押さえ板83は、円筒ロータ82の下流側の端面と第一プロペラ10Aの外周リング30における下流端面35との間にわたって設けられている。該第一押さえ板83が図示しないボルトによって外周リング30に固定されていることで、円筒ロータ82は第一押さえ板83によって下流側から固定されている。
このような円筒モータ80では、円筒ステータ81に通電されることで回転磁界が発生し、これによって円筒ロータ82が軸線O回りに回転する。
【0064】
<コニカルモータ>
図2及び
図3に示すように、コニカルモータ90は、シュラウド50における第二キャビティ50B内に収容されている。コニカルモータ90は、第二プロペラ10Bを駆動する。コニカルモータ90は、コニカルステータ100及びコニカルロータ130を有している。
【0065】
<コニカルステータ>
コニカルステータ100は、
図2及び
図3に示すように、シュラウド50の第二キャビティ50B内に固定されている。コニカルステータ100は、
図7及び
図8に示すように、ステータコア101及びコイル110を備えている。
【0066】
<ステータコア>
ステータコア101は、軸線Oを中心とする環状をなすバックヨーク104と、該バックヨーク104の内周面から突出するティース106を有している。
【0067】
バックヨーク104は、内周面及び外周面が下流側に向かうにしたがって径方向内側に向かって傾斜するテーパ状をなしている。即ち、バックヨーク104は、全体として下流側に向かうにしたがって縮径する形状をなしている。バックヨーク104の径方向の厚さは軸線O方向及び周方向にわたって一定とされている。バックヨーク104の外周面は、ステータ外周面102とされている。ステータ外周面102は、
図3に示すシュラウド50の第二キャビティ50Bにおけるテーパ固定凹部57に嵌まり込むように固定されている。これによって、コニカルステータ100がシュラウド50の第二キャビティ50B内に一体に固定されている。バックヨーク104の外周面であるステータ外周面102のテーパ角度とテーパ固定凹部57の底面のテーパ角度は互いに等しく設定されている。また、ステータ外周面102の外径とテーパ固定凹部57の底部の内径とは、軸線O方向のいずれの位置でも同一の径とされており、即ち、軸線O方向にわたって同一の径とされている。
【0068】
<ティース>
図7に示すように、ティース106は、バックヨーク104の内周側に周方向に間隔をあけて複数が設けられている。ティース106は、バックヨーク104に接続されて径方向に延びるティース本体107と、該ティース本体107の径方向内側の端部に設けられてティース本体107から周方向両側に広がる部分であるティース先端部108とを有している。
【0069】
図8に示すように、ティース106のバックヨーク104の内周面からの突出高さは軸線O方向で一定とされている。これにより、ティース106の径方向内側の端部であるステータ内周面103は、下流側に向かうにしたがって径方向内側に向かうように傾斜している。即ち、ステータ内周面103は、下流側に向かうにしたがって縮径している。隣り合うティース106同士の間の空間は、コイル110を収容するためのスロットとされている。
【0070】
ステータ内周面103とステータ外周面102とのテーパ角度は、軸線О方向にわたって同一かつ一定とされている。これにより、軸線Oを含む断面では、ステータ内周面103とステータ外周面102とは平行をなしている。
【0071】
また、ティース106の周方向の厚さは、下流側に向かうにしたがって小さくなるように構成されている。これによって、下流側に向かうにしたがって縮径するバックヨーク104の内側に複数のティース106が互いに干渉することなく配置できるようになっている。
【0072】
<コイル>
コイル110は、径方向に延びる各ティース本体107の周囲を囲うように複数が設けられている。各コイル110は、
図9に示すコイル層120が径方向に複数積層されることによって構成されている。各コイル層120がティース本体107の外面を囲うことで、コイル全体がティース本体107の外面に設けられた状態となる。
【0073】
各コイル層120は、平角線によって構成されている。当該平角線の断面形状は、ティース本体107の延びる方向に潰れた形状をなしており、即ち、径方向を短手方向とした偏平状をなしている。
【0074】
コイル層120は、ティース本体107の径方向に直交する断面形状に応じて、
図9に示すように、ティース本体107の周囲を取り囲む矩形環状をなしている。コイル層120における上流側で周方向に延びる部分は、ティース本体107に上流側から接する上流片121とされている。
コイル層120における下流側で周方向に延びる部分は、ティース本体107に下流側から接する下流片122とされている。下流片122の周方向の寸法は上流片121の周方向の寸法よりも短い。
コイル層120におけるティース106の周方向両側で軸線O方向に延びる一対の部分は、それぞれ側方片123とされている。一対の側方片123は、ティース106に周方向両側から接しており、下流側に向かうにしたがって互い近づくように延びている。
【0075】
各コイル110は、複数のコイル層120が径方向に積層されて互いに電気的に接続されることで、ティース本体107の周囲に螺旋状の巻線を構成している。
図8に示すようにティース106の周囲に設けられたコイル110における軸線O方向両端の部分、即ち、ティース106よりも上流側、下流側にそれぞれ突出する部分は、コイルエンド111とされている。コイル110におけるコイルエンド111以外の部分、即ち、ティース106に対して周方向両側から接する部分は、コイル主部112とされている。
【0076】
本実施形態では、
図8に示すように、コイル110におけるコイル主部112及び下流側のコイルエンド111を構成する部分は、下流側に向かうにしたがって径方向内側に傾斜するように延びている。即ち、各コイル層120の側方片123及び下流片122は、下流側に向かうにしたがって径方向内側に傾斜するように配置されている。
【0077】
一方で、コイル110における上流側のコイルエンド111を構成する部分は、コイル主部112に対して折り曲げられるようにして、軸線O方向に平行に延びている。即ち、各コイル層120の上流片121は、該コイル層120の一対の側方片123に対して折り曲げられることで、軸線Oに平行に延びている。
【0078】
ここで、本実施形態では、各コイル層120の下流側の端部の軸線O方向位置は、各コイル層120で互いに一致している。また、各コイル層120の上流側の端部の軸線O方向位置は、各コイル層120で互いに一致している。即ち、コイルエンド111の軸線O方向の端部は、各コイル層120同士で軸線O方向の位置が揃うように配置されている。
【0079】
<コニカルロータ>
図2及び
図3、詳しくは
図10に示すように、コニカルロータ130は、第二プロペラ10Bの外周リング30の外周側に固定されている。
図7及び
図8に示すように、コニカルロータ130は、ロータコア131と永久磁石140とを有している。
【0080】
ロータコア131は、軸線Oを中心とする環状をなしており、軸線O方向に延びている。ロータコア131の内周面はロータ内周面132とされている。ロータコア131の外周面はロータ外周面133とされている。ロータコア131は、ロータ内周面132及びロータ外周面133が下流側に向かうにしたがって径方向内側に向かって傾斜するテーパ状をなしている。即ち、ロータコア131は全体として下流側に向かうにしたがって縮径する形状をなしている。ロータコア131の外形はコニカルロータ130の外形となる。ロータ内周面132とロータ外周面133とのテーパ角度は、軸線O方向にわたって同一かつ一定とされている。これにより、軸線Oを含む断面では、ロータ内周面132とロータ外周面133とは平行をなしている。
【0081】
ロータ内周面132は、第二プロペラ10Bの外周リング30におけるテーパ固定面33に外周側から嵌め込まれている。これによって、ロータコア131が第二プロペラ10Bの外周リング30に一体に固定されている。ロータ内周面132のテーパ角度とテーパ固定面33のテーパ角度は同一とされている。また、ロータ内周面132の内径とテーパ固定面33の外径とは、軸線O方向のいずれの位置でも同一の径とされており、即ち、軸線O方向にわたって同一の径とされている。
【0082】
ロータコア131には、該ロータコア131の上流側の端面と下流側の端面とを連通させる挿入孔134が形成されている。挿入孔134は周方向に間隔をあけて複数が設けられている。ロータ内周面132及びロータ外周面133と平行に延びている。即ち、挿入孔134は、下流側に向かうにしたがって径方向内側に向かって傾斜するように延びている。挿入孔134の径方向の寸法は軸線O方向にわたって同一とされている。挿入孔134における周方向に対向する側面同士の間隔は、下流側に向かうにしたがって小さくなるように形成されている。
【0083】
<永久磁石>
図7及び
図8に示すように、永久磁石140は、ロータコア131に対して周方向に間隔をあけて複数が設けられている。各永久磁石140は、それぞれ対応するロータコア131の各挿入孔134に挿入されている。
【0084】
図11に示すように、永久磁石140は平板状をなしている。ロータコア131の挿入孔134に挿入された状態において、永久磁石140における径方向外側を向く面は磁石外周面141とされており、径方向内側を向く面は磁石内周面142とされている。磁石外周面141及び磁石内周面142は、互いに平行をなしており、それぞれ下流側に向かうにしたがって径方向内側に向かって傾斜するように延びている。磁石外周面141及び磁石内周面142は、径方向視にて、下流側に向かう程に周方向の寸法が小さくなる台形状をなしている。
【0085】
永久磁石140における周方向を向く一対の面は、磁石側面143とされている。一対の磁石側面143は、磁石外周面141と磁石内周面142とを軸線O方向にわたって径方向に接続している。磁石側面143は、磁石外周面141及び磁石内周面142と同様に、下流側に向かうにしたがって径方向内側に向かって延びている。
【0086】
永久磁石140における上流側を向く面は、磁石上流面144とされている。磁石上流面144は、軸線Oに直交する平面状をなしている。磁石上流面144は、磁石外周面141、磁石内周面142、及び一対の磁石側面143の上流側の端部に接続されている。
【0087】
永久磁石140における下流側を向く面は、磁石下流面145とされている。磁石下流面145は、軸線Oに直交する平面状をなしており、磁石上流面144と平行をなしている。磁石下流面145は、磁石外周面141、磁石内周面142、及び一対の磁石側面143の下流側の端部に接続されている。
【0088】
ここで、永久磁石140の着磁方向は、
図11の矢印で示すように、径方向外側に向かうにしたがって下流側に傾斜する方向とされている。より詳細には、着磁方向は、磁石内周面142及び磁石外周面141に直交するとともに磁石内周面142から磁石外周面141に向かう方向とされている。ここで、磁石内周面142及び磁石外周面141の軸線Oに対する傾斜角度は、ロータ外周面133のテーパ角度と同一とされている。したがって、永久磁石140の着磁方向は、ロータの外周面に対して垂直な方向となる。永久磁石140は、磁石内周面142及び磁石外周面141に沿う方向に一様に着磁されている。
【0089】
コニカルモータ90では、コニカルステータ100の各コイル110に通電されることで生じる回転磁界によって、コニカルロータ130が軸線O回りに回転駆動する。コニカルモータ90の回転方向は、円筒モータ80の回転方向とは逆方向とされている。即ち、コニカルモータ90と円筒モータ80とは、回転方向が互いに反対とされている。
【0090】
図10に示すように、コニカルロータ130は、第二プロペラ10Bの外周リング30に固定された状態で、上流側の端部が押さえ部34に対して下流側から当接している。
一方で、コニカルロータ130の下流側の端部は、第二押さえ板150によって下流側から押さえ込まれている。
【0091】
コニカルロータ130の下流側の端部と外周リング30の下流端面35とはいずれも軸線Oに直交する平面状をなしており、互いに面一に配置されている。そして、このようなコニカルロータ130の下流側の端部と外周リング30の下流端面35とにわたって第二押さえ板150が当接している。第二押さえ板150は、コニカルロータ130の下流側端部と外周リング30の下流端面35との形状に応じて、周方向全域にわたって延びる板状をなしている。
【0092】
このような第二押さえ板150は、押さえボルト151によって外周リング30に固定されている。押さえボルト151は、第二押さえ板150を軸線O方向に貫通するボルト止め孔150aに下流側から挿通された後、外周リング30の下流端面35から凹むように形成されたボルト止め孔150aに締結されている。
ここで、
図10に加えて
図9に示すように、ボルト止め孔150aの開口部付近では、押さえボルト151の周方向の一部分は、ロータコア131の外周面から凹むようにして形成された切欠部135に収容されている。切欠部135は、ロータコア131における周方向に隣り合う永久磁石140の間の部分に形成されている。
【0093】
ここで、コニカルモータ90におけるコニカルロータ130の平均外径R2は、円筒モータ80における円筒ロータ82の平均外径R1よりも小さく設定されている。本実施形態では、コニカルロータ130の外周面(ロータ外周面133)は軸線O方向に一様のテーパ角度で延びている。そのため、コニカルロータ130の平均外径R2は、コニカルロータ130の軸線O方向の中央の外径と同一である。円筒ロータ82の外径は軸線O方向に一様な径をなしているため、円筒ロータ82の平均外径R1は、該円筒ロータ82における軸線O方向の任意の箇所での外径と同一である。
【0094】
さらに、コニカルモータ90におけるコニカルステータ100の平均内径は、円筒モータ80における円筒ステータ81の平均内径よりも小さく設定されている。本実施形態では、コニカルステータ100の内周面は軸線O方向に一様のテーパ角度で延びている。そのため、コニカルステータ100の平均内径は、コニカルステータ100の軸線O方向の中央の内径と同一である。円筒ステータ81の内径は軸線O方向に一様な径をなしているため、円筒ステータ81の平均内径は、該円筒ステータ81における軸線O方向の任意の箇所での内径と同一である。
【0095】
また、コニカルモータ90の平均内径(コニカルロータ130の平均内径:コニカルロータ130の軸線O方向中央の内径)は、円筒モータ80(円筒ロータ82)の平均内径(円筒ロータ82の平均内径:円筒ロータ82の軸線O方向の任意の箇所の内径)よりも小さく設定されている。
本実施形態では、コニカルモータ90の内周面の上流側の端部の内径は、円筒モータ80の内周面の下流側の端部の内径以下とされている。即ち、コニカルモータ90の内周面の上流側の端部の内径は、円筒モータ80の内周面の下流側の端部と同一に設定されており、又は、円筒モータ80の内周面の下流側の端部の内径よりも小さく設定されている。
【0096】
また、コニカルモータ90の平均外径(コニカルステータ100の平均外径:コニカルステータ100の軸線O方向中央の外径)は、円筒モータ80(円筒ステータ81)の平均外径(円筒ステータ81の平均外径:円筒ステータ81の軸線O方向の任意の箇所の外径)よりも小さく設定されている。
本実施形態では、コニカルモータ90の外周面の上流側の端部の外径は、円筒モータ80の外周面の下流側の端部の外径以下とされている。即ち、コニカルモータ90の外周面の上流側の端部の外径は、円筒モータ80の外周面の下流側の端部の外径と同一に設定されており、又は、円筒モータ80の内周面の下流側の端部の外径よりも小さく設定されている。
【0097】
以上のように、本実施形態では、上流側のモータである円筒モータ80の平均径よりも下流側のモータであるコニカルモータ90の平均径が小さく設定されている。即ち、上流側のモータである円筒モータ80よりも下流側のモータであるコニカルモータ90が、径方向内側に偏った配置構造とされている。
【0098】
<作用効果>
上記構成の水中航走体1は推進装置8が駆動されることで水中を航行することができる。即ち、シュラウド50の第一キャビティ50A内の円筒モータ80が駆動されると、該円筒モータ80の円筒ロータ82に一体に固定された第一プロペラ10Aが周方向一方側に向かって軸線O回りに回転する。これにより、流路内に位置する第一羽根20Aによって下流側に水が圧送される。また、円筒モータ80の駆動と同時にコニカルモータ90が駆動されると、該コニカルモータ90のコニカルロータ130に一体に固定された第二プロペラ10Bが周方向他方側に向かって軸線O回りに回転する。これにより、流路内に位置する第二羽根20Bによって下流側に水が圧送される。
【0099】
そして、第一プロペラ10A及び第二プロペラ10Bには水を圧送する際の反力として、上流側に向かっての推進力が発生する。この推進力は、第一プロペラ10A及び第二プロペラ10Bの内周リング11から水膜及び上流側スラスト軸受42を介して軸部3に伝達される。これによって、軸部3及びこれと一体とされた航走体本体2に推進力が作用し、水中航走体1が推進する。
【0100】
本実施形態の推進装置8によれば、
図2及び
図3に示すように、シュラウド50が下流側に向かって縮径し、さらに軸部3も下流側に向かって縮径している。そのため、これらシュラウド50及び軸部3の間に形成される流路は、下流側に向かうにしたがって径方向内側に絞られた形状となり、即ち、流路断面積は下流側に向かうにしたがって小さくなる。
ここで、第一羽根20A及び第二羽根20Bによって水が圧送されると該水の流速が加速される結果、水の流れは径方向内側に絞られたものとなる。本実施形態では、流路形状が水の流れに合った形状とされているため、水の圧送効率を向上させることができる。
【0101】
また、シュラウド50の内周面が下流側に向かうにしたがって縮径していることに伴って、下流側に位置するコニカルモータ90の平均径が上流側に位置する円筒モータ80の平均径よりも小さく設定されており、即ち、下流側のモータが上流側のモータに比べて径方向内側に偏った配置構造とされている。
【0102】
仮に複数のモータの平均外径が同一とされている場合、即ち、同一の径をなすモータが単に軸線O方向に並設されている場合、シュラウド50の内周面の縮径形状に反するように複数のモータが軸線O方向に配置されることになる。この場合、シュラウド50の形状と複数のモータの配置構造が合っておらす、シュラウド50をモータの配置構造に合わせる必要がある。そのため、シュラウド50を不用意に大型しなければならなくなってしまう。
【0103】
これに対して本態様では、上述の通り、下流側のモータであるコニカルロータ130が径方向内側に偏った配置構造とされているため、当該配置構造はシュラウド50の縮径形状に合ったものとなる。したがって、そのため、シュラウド50の形状をモータの配置に応じて大型化させる必要はなく、コンパクトな構成とすることができる。
【0104】
また、本実施形態ではシュラウド50が下流側に向かうにしたがって徐々に縮径する全体形状をなしており、即ち、下流側程縮径するテーパ形状をなしている。そして、当該シュラウド50の形状に合わせてシュラウド50内に収容されるコニカルモータ90も下流側に向かうにしたがって縮径するテーパ状をなしている。そのため、シュラウド50の形状に沿って外周駆動装置としてのコニカルモータ90を配置することができる。したがって、シュラウド50の形状をモータの構成に応じて不用意に大型化させる必要はなく、シュラウド50自体の構成をコンパクトにすることができる。
【0105】
本実施形態では、シュラウド50がコンパクト化されることで、水中航走体1の推進時の水の抵抗が小さくなる。これにより、水中航走体1の速度を向上させることができるとともに、推進効率を向上させることができる。
【0106】
さらに、本実施形態ではシュラウド50の断面形状が上流側を前縁、下流側を後縁とする翼型をなすため、水の抵抗を最小限に抑えることができる。さらに、シュラウド50の断面翼型の翼中心線が下流側に向かうにしたがって径方向内側に傾斜しているため、翼型をなすシュラウド50全体として下流側に向かって縮径するテーパ形状とされている。これによって、シュラウド50の形状は、圧送される水の流れ方向に沿った形状となるため、圧送効率をより向上させることができる。
【0107】
また、シュラウド50内に配置されるコニカルモータ90はシュラウド50の形状に応じたテーパ形状とされているため、シュラウド50の翼型形状をコニカルモータ90に合わせて不用意に大型化させる必要はない。したがって、シュラウド50の形状を、翼型を維持しながらコンパクトなものとすることができる。よって、推進時の水の抵抗を最小限に抑えることができる。
【0108】
ここで、水の吸込時には、上流側に位置する第一プロペラ10Aの第一羽根20Aと軸部3との間で圧力干渉が起こり、水の抵抗が増加する傾向がある。特に、プロペラ効率向上を図るために羽根の前縁の全域に負荷を集中させた場合には、当該水の抵抗は顕著なものとなる。
これに対して本実施形態では、
図4に示すように、第一羽根20Aの負圧面負荷分布が、軸線O方向に負荷が分散するとともに径方向内側の負荷が小さい負荷均一型とされている。そのため、圧力干渉による流体抵抗の増加を最小限に抑えることができる。
一方で、軸部3との圧力干渉が起こりにくい下流側の第二プロペラ10Bの第二羽根20Bは、前縁に負荷が集中した前縁負荷型の負圧面圧力分布とされているため、プロペラ効率を向上させることができる。
【0109】
また、
図3に示すように、第一プロペラ10A及び第二プロペラ10Bの推進力は上流側スラスト軸受42を介して軸部3に伝達される。即ち、推進力は上流側スラスト軸受42に荷重として伝達される。推進力が大きい場合、上流側スラスト軸受42に伝達される荷重も大きくなり、即ち、上流側スラスト軸受42の負荷は大きくなる。
ここで、本実施形態では、コニカルモータ90の駆動時には、コニカルモータ90のコニカルロータ130とコニカルステータ100との対向方向(ギャップ方向)への電磁力が作用する。当該電磁力は、径方向外側かつ下流側に向かったものとなる。したがって、コニカロータ130には電磁力の軸線O方向の分力として下流側に向かっての力が付与される。
【0110】
即ち、コニカルロータ130に対しては下流側に向かって引き込まれるような力が作用する。これによって、第二プロペラ10Bから上流側スラスト軸受42に付与される荷重が低減させるため、上流側スラスト軸受42によるスラスト荷重の負担を低減することができる。
【0111】
さらに、本実施形態では、
図5に示す連結部70による連結を解除することでシュラウド50を複数の分割体(上流分割体61、中間分割体62、下流分割体63)に分解することができる。これにより、
図3に示す円筒モータ80の円筒ステータ81、コニカルモータ90のコニカルステータ100をシュラウド50内に容易に取り付けることができる。
【0112】
また、
図5及び
図6に示すように、連結部70は、前記シュラウド50の外周面から突出する凸曲面状をなし、シュラウド50の外周面に沿う断面形状が上流側を凸部前縁70aとし下流側を凸部後縁70bとする翼型をなしている。そのため、水中航走体1の推進時に連結部70が抵抗となってしまうことを抑制することができる。
【0113】
本実施形態のコニカルモータ90のコニカルステータ100は、第二キャビティ50Bに収容されており、当該第二キャビティ50Bを区画形成する中間分割体62と下流分割体63のうち、下流側の分割体である第二キャビティ50Bのみに固定されている。
ここで、上述のようにコニカルロータ130には電磁力の分力として下流側に向かっての力が作用するのに対して、当該コニカルロータ130と対をなすコニカルステータ100には、電磁力の分力として上流側に向かっての力が作用する。そのため、コニカルステータ100が一体に取り付けられた下流分割体63にも、上流側に向かって力が作用することになる。
【0114】
そのため、当該力によって、下流分割体63が中間分割体62に押し付けられる。これによって、下流分割体63と中間分割体62をより強固に固定一体化することができるとともに、これらを連結する連結部70の締結力を緩和することができる。したがって、締結部の締結ボルトの径を小さくすることができるとともに連結部70のコンパクト化を図ることができ、連結部70による水流に対する抵抗をより低減させることができる。
【0115】
さらに、コニカルモータ90のコニカルステータ100は、シュラウド50の形状に応じたテーパ形状とされている。これにより、モータのステータとしての機能を実現しながら、シュラウド50のコンパクト化に寄与することができる。
【0116】
また、
図9に示すように、コイル110の各層を構成するコイル層120の形状がティース106の外面に合わせた構成、即ち、上流側に向かうにしたがって周方向の間隔が小さくなる矩形環状とされているため、コイル110をティース106に対して密度高く配置することができる。
【0117】
さらに、
図8に示すように、ティース106のテーパ形状に応じて、コイル110の各層を構成するコイル層120が下流側に向かうにしたがって径方向内側に傾斜している。そのため、コニカルステータ100のステータコア101に対してコイル110を密度高く配置することができる。
【0118】
また、コイルエンド111の上流側の端部及び下流側の端部の軸線O方向位置が、各コイル層120で互いに一致しているため、コイル110を密度高く、かつ、軸線O方向の寸法をコンパクトに配置することができる。
仮に同一の断面形状の平角線を用いた同形状のコイル層120を積層させながら、各コイル110の軸線O方向の端部の軸線O方向位置が揃っていないとすれば、各コイル層120とティース106との間に軸線O方向の隙間が生じている。このような場合、漏れ磁束が多くなり、モータ効率を低下させる。本実施形態では、ティース106に対して隙間を最小限に抑えながら密度高くコイル層120を配置することができる。そのため、モータ効率を向上させることができる。
さらに、コイル110全体としてのコイル110長を短くすることができるため、コイル110の銅損を低減させることができ、モータの高効率化を図ることができる。
【0119】
さらに、本実施形態では、コイル110の各層を構成するコイル層120における上流側の端部が、軸線Oに対して平行となるように折り曲げられた構成とされている。これによって、コイルエンド111での各層の密度を高めながら、コイルエンド111での平角線とティース106との隙間を最小限に抑えることができる。
【0120】
また、コニカルモータ90のコニカルロータ130は、シュラウド50のテーパ形状に応じたテーパ形状をされている。これにより、モータのロータとしての機能を実現しながら、シュラウド50のコンパクト化に寄与することができる。
【0121】
さらに本実施形態では、永久磁石140の着磁方向が単に径方向とされているのではなく、コニカルロータ130のロータ外周面133に対して垂直とされている。即ち、永久磁石140の着磁方向は、ロータとステータとの対向方向に一致している。そのため、永久磁石140によるトルクへの寄与を最大とすることができ、コニカルモータ90のトルクを向上させることができる。
【0122】
ここで、コニカルモータ90のロータコア131には、径方向外側かつ下流側に向かっての電磁力が作用する。これに対して本実施形態では、ロータコア131が第二押さえ板150で下流側から抑え込まれていることで、該ロータコア131下流側への脱落を回避することができる。
【0123】
さらに、第二プロペラ10Bの外周リング30は下流端の径方向の厚さが小さいため、外周リング30の下流端の部分にボルト孔36を形成することは困難な場合がある。当該部分に無理にボルト孔36を形成すれば、外周リング30の強度不足を招き好ましくない。これに対して、本実施形態では、ロータに押さえボルト151の外周面の一部が収容される切欠部135が形成されていることで、押さえボルト151は切欠部135に案内されるように挿通される。また、押さえボルト151からの荷重の一部は切欠部135で受け持つことができる。これにより、押さえボルト151を外周リング30に対して適切に固定することができ、第二押さえ板150によるロータコア131の脱落をより一層回避することができる。
【0124】
また、切欠部135によって、ロータコア131の外周リング30に対する周方向の移動を規制することができる。これにより、ロータコア131が不用意に周方向にずれてしまうことを回避し、ロータコア131と外周リング30との固定をより強固なものとすることができる。
さらに、切欠部135はロータコア131における隣り合う永久磁石140の間の部分に形成されている。仮に永久磁石140の径方向外側の部分に切欠部135を形成した場合、ロータコア131を通過する磁束の妨げとなり磁気抵抗の増加を招く。本実施形態のように隣り合う永久磁石140の間に切欠部135を形成することで、ロータコア131の磁路の浸食を最小限とすることができ、磁気抵抗の増加を低減できる。
【0125】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0126】
実施形態では、第一プロペラ10A、第二プロペラ10Bの二つのプロペラのうち、第二プロペラ10Bを駆動するモータのみをコニカルモータ90とした例について説明した。しかしながらこれに限定されることはない。
即ち、複数のプロペラに対応するように当該プロペラと同数のモータが設けられていればよく、これらモータのそれぞれは円筒型であってもコニカル型のいずれであってもよい。
【0127】
また、3つ以上の複数のモータが軸線O方向に並設されている場合には、下流側に向かうにしたがってモータの平均径が小さくなる配置構造であればよい。即ち、下流側に位置するモータ程、径方向内側に偏った配置構造であればよい。
【0128】
なお、下流側のモータのロータにおける上流側の端部の外径が、上流側のモータのロータにおける下流側の端部の外径よりも大きくてもよい。この場合であっても。下流側のモータのロータの平均外径が、上流側のモータのロータの平均外径よりも小さければよい。これによっても、下流側のモータが上流側のモータに比べて径方向内側に偏った配置構造を実現できる。
【0129】
また、下流側のモータのステータにおける上流側の端部の内径が、上流側のモータのステータにおける下流側の端部の内径よりも大きくてもよい。この場合であっても。下流側のモータのステータの平均内径が、上流側のモータのステータの平均内径よりも小さければよい。これによっても、下流側のモータが上流側のモータに比べて径方向内側に偏った配置構造を実現できる。
【0130】
さらに、下流側のモータの上流側の端部の径(内径、外径)が、上流側のモータの下流側の端部の径(内径、外径)よりも大きくてもよい。この場合であっても、下流側のモータの平均径(内径の平均径、外径の平均径)が、上流側のモータの平均径(内径の平均径、外径の平均径)よりも小さければよい。)これによっても、下流側のモータが上流側のモータに比べて径方向内側に偏った配置構造を実現できる。
【0131】
さらに実施形態では、シュラウド50の断面形状を翼型にした例について説明したが、必ずしも翼型でなくてもよい。シュラウド50の断面形状は流線形状であることが好ましいが、例えば、矩形状等の他の形状であってもよい。この場合であっても、シュラウド50は下流側に向かって縮径することで、流路断面積が下流側程小さくなる流路を区画形成する。
【0132】
また、シュラウド50の形状は少なくともシュラウド内周面51が下流側に向かうにしたがって縮径していればよい。即ち、シュラウド外周面52の形状は下流側に向かうにしたがって縮径していなくてもよい。
【0133】
また、実施形態では、モータの個数に応じてシュラウド50を3つの分割体に分割する例について説明した。しかしながらこれに限定されることはなく、シュラウド50を軸線O方向に二つに分割してその間にプロペラの外周リング30及びモータを配置する構成としてもよい。また、シュラウド50を軸線O方向に四つ以上に分割して互いに隣り合う分割体の間にプロペラの外周リング30及びモータを配置する構成としてもよい。
【0134】
さらに、実施形態では、コニカルモータ90のコニカルステータ100を中間分割体62と下流分割体63とのうち、下流分割体63のみに固定する構成について説明したが、これに限定されることはない。コニカルステータ100を、下流分割体63のみならず中間分割体62に固定してもよい。即ち、隣り合う分割体の双方にモータのステータを固定してもよい。
より好ましくは、隣り合う分割体のうち下流側の分割体のみにコニカルステータ100を固定してもよい。これにより、実施形態同様、これら隣り合う分割体を軸線O方向により強固に固定することができる他、連結部70のコンパクト化を図ることができる。
【0135】
また、実施形態では、上流側及び下流側のコイルエンド111のうち上流側のコイルエンド111のみを軸線Oに平行となるように折り曲げた例について説明した。これに限定されることはなく、例えば第一変形例として、
図12に示すように、上流側及び下流側のコイルエンド111の双方を軸線Oに平行となるように折り曲げた形状であってもよい。また、第二変形例として
図13に示すように、下流側のコイルエンド111のみを軸線O方向に折り曲げた形状としてもよい。これによっても、実施形態同様の作用効果を奏する。
【0136】
さらに、実施形態では、本発明に係る流体機械を水中航走体1の推進装置8に適用した例について説明した。しかしながらこれに限定されることはなく、例えば、水上を航行する船舶等の推進装置8に流体機械を適用してもよい。
また、本発明に係る流体機械は、推進装置8のみならず、ポンプ等の他の水中で用いられる流体機械に適用してもよい。また、水を圧送する流体機械のみならず、油等の他の液体を圧送する流体機械に本発明を適用してもよい。
【0137】
<付記>
各実施形態に記載の推進装置(流体機械)8及び水中航走体1は、例えば以下のように把握される。
【0138】
(1)第1の態様に係る流体機械は、軸線O方向に延びる軸部3と、前記軸部3を囲うように設けられて、内周面が前記軸線O方向一方側である上流側から前記軸線O方向他方側である下流側に向かうにしたがって縮径するとともに、前記軸部3との間で下流側に向かうにしたがって流路断面積が小さくなる流路を形成するシュラウド50と、前記軸部3と前記シュラウド50との間で軸線O回りに回転可能に設けられて、前記上流側から前記下流側に向かって流体を圧送するプロペラと、前記プロペラに対応するように設けられて、前記プロペラの外周部に固定されたリング状をなし前記シュラウド50内に収容されたロータ、及び、前記ロータを囲うリング状をなし前記シュラウド50内に固定されたステータを有するモータと、を備え、前記プロペラは、軸線O方向に離間して複数が設けられており、各前記プロペラに対応するように各前記プロペラと同数の前記モータが設けられており、複数の前記モータは、下流側に位置する前記モータほど前記ロータの平均外径が小さくなる。
【0139】
上記構成によれば、シュラウド50の内周面が下流側に向かって縮径しており、その内側の流路の流路断面積が下流側程小さくなるため、流体の圧送効率を向上させることができる。
また、シュラウド50の内周面が下流側に向かうにしたがって縮径していることに伴って、複数のモータにおけるロータの平均外径が下流側ほど小さくなる。これによって、下流側のモータ程、径方向内側に偏った配置構造となる。
仮に複数のモータにおける平均外径が同一とされていれば、シュラウド50の内周面の縮径形状に対して、モータは同一の径方向位置に並設されることになる。この場合、シュラウド50の形状と複数のモータの配置構造が合っていないため、シュラウド50をモータの配置構造に合わせる必要があり、シュラウド50の大型化を招く。
これに対して本態様では、上述の通り、下流側のモータが径方向内側に偏った配置構造とされているため、当該配置構造はシュラウド50の縮径形状に合ったものとなる。したがって、そのため、シュラウド50の形状をモータの配置に応じて大型化させる必要はなく、コンパクトな構成とすることができる。
【0140】
(2)第2の態様に係る流体機械は、前記軸線方向に互いに隣り合う前記モータのうち、下流側に位置する前記モータの前記ステータの平均内径は、上流側に位置する前記モータの前記ステータの平均内径よりも小さく、かつ、下流側に位置する前記モータの前記ロータの平均外径は、上流側に位置する前記モータの前記ロータの平均外径よりも(1)の流体機械である。
【0141】
これによって、複数のモータからなるモータ群の内径及び外径がシュラウド50の縮径形状に沿ったものとなる。したがって、シュラウド50をより一層コンパクトにすることができる。
【0142】
(3)第3の態様に係る流体機械は、前記シュラウド50は、前記軸線Oに直交する断面形状が、上流側の端部を前縁とし、下流側の端部を後縁とした翼型をなしている(1)又は(2)に記載の流体機械である。
【0143】
シュラウド50の断面形状が翼型をなすため、流体機械を水中に設けた場合における水流による抵抗を小さく抑えることができる。また、プロペラによって圧送される流体の流れ方向に沿った形状となるため、圧送効率をより向上させることができる。
一方で、内部に複数のモータを収容しながら翼型を維持するためには、シュラウド50の形状を複数のモータの配置構造に合わせて必要以上に大型化させなればならない場合がある。これに対して、本態様では、複数のモータの配置構造がシュラウド50の形状に合ったものとされているため、シュラウド50の大きさを小さく抑えることができる。
【0144】
(4)第4の態様に係る流体機械は、前記プロペラは、前記軸線方向に二つが設けられており、二つの前記プロペラの回転方向は互いに反対とされており、各前記プロペラは、周方向に複数が配置された羽根を有しており、下流側の前記プロペラの前記羽根における負圧面圧力分布は、負荷が前縁に偏った前縁負荷型とされており、上流側の前記プロペラの前記羽根における負圧面圧力分布は、下流側の前記羽根の負圧面圧力分布よりも負荷が前記軸線O方向に分散するとともに径方向内側の負荷が小さい負荷均一型とされている(1)から(3)のいずれかの流体機械である。
【0145】
ここで上流側の羽根と軸部3との間では、水を吸い込む際の圧力干渉によって流体抵抗が増加する傾向がある。特に、プロペラ効率向上を図るために羽根の前縁の全域に負荷を集中させた場合には顕著となる。本態様では、上流側の羽根は、負荷均一型の負圧面圧力分布とされているため、圧力干渉による流体抵抗の増加を最小限に抑えることができる。
一方で、下流側の羽根は、前縁に負荷が集中した前縁負荷型の負圧面圧力分布とされているため、プロペラ効率を向上させることができる。
【0146】
(5)第5の態様に係る流体機械は、前記プロペラは、前記軸部3の外周側にクリアランスを介して嵌め込まれた内周リング11を有し、前記軸部3に固定されて、前記内周リング11の上流側に周方向にわたって対向するスラスト軸受と、前記シュラウド50を前記軸部3に対して支持するストラット78と、をさらに備える(1)から(4)のいずれかの流体機械である。
【0147】
プロペラの回転時には流体の圧送の反力としてプロペラ自身には上流側に向かっての荷重が作用する。当該プロペラの荷重はスラスト軸受によって支持される。一方、コニカルモータの駆動時には、コニカルロータ130に径方向外側かつ下流側に向かっての電磁力が生じる。即ち、コニカルロータ130は下流側に向かって引き込まれるように力が作用する。これによって、プロペラからスラスト軸受に付与される荷重が低減させるため、スラスト荷重の負担を低減することができる。
【0148】
(6)第6の態様に係る流体機械は、前記シュラウド50は、前記軸線O方向に複数に分割された複数の分割体から構成されており、これら複数の分割体を前記軸線O方向に連結する連結部70をさらに備える(1)から(5)のいずれかの流体機械である。
【0149】
連結部70による連結を解除することでシュラウド50を複数の分割体に分解することができる。これにより、モータのロータ及びステータをシュラウド50内に取り付け易くすることができる。
【0150】
(7)第7の態様に係る流体機械は、前記連結部70は、前記シュラウド50の外周面から突出する凸曲面状をなしているとともに、前記シュラウド50の外周面に沿う断面形状が上流側を前縁とし下流側を後縁とする翼型をなしている(6)に記載の流体機械である。
【0151】
これによって、シュラウド50の外周面に水流がある場合に、連結部70が抵抗となってしまうことを抑えることができる。
【0152】
(8)第8の態様に係る流体機械は、複数の前記モータのうちの少なくとも一つは、前記ロータ及び前記ステータが、前記上流側から前記下流側に向かうにしたがって縮径しているコニカルモータ90である(1)から(7)のいずれかの流体機械である。
【0153】
モータとしてロータ及びステータが下流側に向かうにしたがって縮径するコニカルモータ90を採用することで、個々のモータの形状をシュラウド50の形状に沿ったものとすることができる。そのため、シュラウド50の形状をモータの構成に応じて大型化させる必要はなく、コンパクトな構成とすることができる。
【0154】
(9)第9の態様に係る流体機械は、前記ステータは、前記軸線Oを中心とする環状をなすとともに下流側に向かうにしたがって縮径するバックヨーク104、及び、該バックヨーク104の内周面から前記径方向内側に突出するとともに前記軸線O方向にわたって延びるように周方向に複数が設けられ、下流側に向かうにしたがって縮径しながら周方向の厚さが小さくなるティース106を有するステータコア101と、各前記ティース106を囲うように設けられた複数のコイル110と、を備える(8)の流体機械である。
【0155】
これによって、ステータの構成をシュラウド50の縮径形状に合ったコニカル形状をすることができる。
【0156】
(10)第10の態様に係る流体機械は、各前記コイル110は、前記ティース106の周りで径方向に複数層が積層される偏平状をなす平角線から構成されており、前記コイル110の各層は、径方向視で下流側に向かうにしたがって周方向の間隔が小さくなる矩形状をなしている(8)の流体機械である。
【0157】
コイル110の各層の形状をティース106に合わせた構成とすることで、コイル110をティース106に対して密度高く配置することができる。
【0158】
(11)第11の態様に係る流体機械は、前記コイル110の各層は、下流側に向かうにしたがって径方向内側に向かうように傾斜している(10)の流体機械である。
【0159】
これによって、上流側に向かうにしたがって径方向内側に傾斜して延びるティース106に対して、効率よくコイル110を配置することができる。
【0160】
(12)第11の態様に係る流体機械は、前記コイル110は、コイルエンド111の前記軸線O方向の端部の軸線O方向位置が、各層で互いに一致している(11)の流体機械である。
【0161】
これによって、コイル110を密度高く、かつ、軸線O方向の寸法をコンパクトに配置することができる。コイル110全体としてのコイル110長も短くなるため、モータの高効率化を図ることができる。
【0162】
(13)第13の態様に係る流体機械は、前記コイル110の各層における前記コイルエンド111を構成する部分が、前記軸線Oに対して平行となるように折り曲げられている(11)の流体機械である。
【0163】
これによって、コイルエンド111での各層の密度を高めながら、コイルエンド111での平角線とティース106との隙間を最小限に抑えることができる。
【0164】
(14)第13の態様に係る流体機械は、前記ロータは、前記軸線Oを中心とする円筒状をなすとともに下流側に向かうにしたがって縮径するロータコア131と、該ロータコア131に周方向に間隔をあけて複数が配置されて、前記軸線O方向にわたって延びる永久磁石140と、を有し、前記永久磁石140は、下流側に向かうにしたがって径方向内側に傾斜するように延びているとともに、周方向の幅が下流側に向かうにしたがって小さくなる(8)から(13)のいずれかの流体機械である。
【0165】
これによって、ロータの構成をシュラウド50の縮径形状に合ったコニカル形状をすることができる。
【0166】
(15)第14の態様に係る流体機械は、前記永久磁石140の着磁方向が、前記ロータの外周面に対して垂直である(14)の流体機械である。
【0167】
永久磁石140の着磁方向が単に径方向とされているのではなく、ロータとステータとの対向方向に一致しているため、モータのトルクを向上させることができる。
【0168】
(16)第15の態様に係る流体機械は、前記プロペラは、該プロペラの外周部を構成するリング状をなす外周リング30をさらに有し、前記ロータコア131は、前記外周リング30の外周面に嵌め込まれており、前記外周リング30と前記ロータコア131との下流側の端部に当接する押さえ板と、該押さえ板を前記軸線O方向に貫通するように設けられて、該押さえ板を前記外周リング30に固定する押さえボルト151と、をさらに備える(14)又は(15)の流体機械である。
【0169】
コニカルモータ90のロータコア131には、径方向外側かつ下流側に向かっての電磁力が作用する。これに対してロータコア131が押さえ板で下流側から抑え込まれていることで、ロータコア131の脱落を抑制することができる。
【0170】
(17)第17の態様に係る流体機械は、前記外周リング30は、下流側に向かうにしたがって径方向の厚さが小さくなり、前記ロータコア131の下流側の端部における互いに隣り合う永久磁石140の間の部分に、前記押さえ板を挿通した押さえボルト151の外周面の一部を収容する切欠部135が形成されている(15)の流体機械である。
【0171】
外周リング30は下流端の径方向の厚さが小さいため、ボルトの径によっては外周リング30の下流端の部分にボルト孔36を形成できない場合がある。これに対して、ロータに押さえボルト151の外周面の一部が収容される切欠部135があることで、押さえボルト151の挿通が許容され、当該押さえボルト151を外周リング30に対して適切に固定することができる。
また、切欠部135によって、ロータコア131の外周リング30に対する周方向の移動を規制することができる。
さらに、切欠部135はロータコア131における永久磁石140の間の部分に形成されているため、ロータコア131の磁路の浸食を最小限とすることができ、磁気抵抗の増加を低減できる。
【0172】
(18)第18の態様に係る水中航走体1は、航走体本体2と、該航走体本体2に設けられた推進装置8と、を備え、前記推進装置8は、(1)から(15)のいずれかの流体機械である水中航走体1である。
【0173】
このような水中航走体1によれば、推進効率を向上させながら推進装置8のコンパクト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0174】
1…水中航走体 2…航走体本体 3…軸部 3a…軸外周面 5…収容溝 5a…溝底面 5b…溝上流側面 5c…溝下流側面 8…推進装置(流体機械) 10A…第一プロペラ(プロペラ) 10B…第二プロペラ(プロペラ) 11…内周リング 12…リング内面 13…上流端面 14…下流端面 15…外周流路面 20A…第一羽根(羽根) 20B…第二羽根(羽根) 30…外周リング 31…内周流路面 32…円筒固定面 33…テーパ固定面 34…押さえ部 35…下流端面 36…ボルト孔 40…軸受部 41…ラジアル軸受 42…上流側スラスト軸受 43…下流側スラスト軸受 50…シュラウド 50A…第一キャビティ 50B…第二キャビティ 51…シュラウド内周面 52…シュラウド外周面 53…シュラウド前縁 54…シュラウド後縁 56…円筒固定凹部 57…テーパ固定凹部 61…上流分割体(分割体) 62…中間分割体(分割体) 63…下流分割体(分割体) 70…連結部 70a…凸部前縁 70b…凸部後縁 71…上流凸部 71a…ボルト固定孔 72…中間凸部 72a…ボルト貫通孔 73…下流凸部 73a…ボルト用凹部 73b…ボルト挿入孔 74…連結ボルト 75…充填部 78…ストラット 80…円筒モータ(モータ) 81…円筒ステータ 82…円筒ロータ 83…第一押さえ板 90…コニカルモータ(モータ) 100…コニカルステータ(ステータ) 101…ステータコア 102…ステータ外周面 103…ステータ内周面 104…バックヨーク 106…ティース 107…ティース本体 108…ティース先端部 110…コイル 111…コイルエンド 112…コイル主部 120…コイル層 121…上流片 122…下流片 123…側方片 130…コニカルロータ(ロータ) 131…ロータコア 132…ロータ内周面 133…ロータ外周面 134…挿入孔 135…切欠部 140…永久磁石 141…磁石外周面 142…磁石内周面 143…磁石側面 144…磁石上流面 145…磁石下流面 150…第二押さえ板 150a…ボルト止め孔 151…押さえボルト O…軸線 R1…上流側のモータのロータの平均外径 R2…下流側のモータのロータの平均外径