(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157551
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】浴室
(51)【国際特許分類】
A47K 3/12 20060101AFI20221006BHJP
A47K 4/00 20060101ALI20221006BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A47K3/12
A47K4/00
A61H33/00 310Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061837
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】宮本 寛希
【テーマコード(参考)】
2D132
4C094
【Fターム(参考)】
2D132DA00
2D132GA00
4C094BA25
4C094CC03
4C094CC05
(57)【要約】
【課題】浴室における移乗台の配置の自由度を高め、かつ浴室床に排水勾配があっても、移乗台の傾斜を抑える。
【解決手段】排水勾配が形成された浴室床2の奥側部における浴槽3の側方に移乗台10を移動可能に設置する。移乗台10は、長板状の座板11及び複数の支持脚20を有している。浴室床2の奥側部の幅寸法は浴槽3の幅寸法より大きく、座板11の長手寸法は、浴室床2の奥側部と浴槽3との幅寸法差と同等またはそれ以下とする。支持脚20の少なくとも1つには、該支持脚20を段階的に伸縮させる伸縮機構23を設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水勾配が形成された浴室床と、
前記浴室床における奥側部に配置された浴槽と、
長板状の座板及び前記座板を支持する複数の支持脚を有して、移動可能な移乗台と、を備え、
前記浴室床の奥側部の幅寸法が、前記浴槽の幅寸法より大きく、
前記座板の長手寸法が、前記浴室床の奥側部と前記浴槽との幅寸法差と同等またはそれ以下であり、
前記複数の支持脚の一部又は全部には、当該支持脚を段階的に伸縮させる伸縮機構が設けられていることを特徴とする浴室。
【請求項2】
前記浴室床の奥端又は側方の縁部には、上方へ突出する段差が形成されており、
前記伸縮機構が、前記支持脚を、収縮状態と、前記収縮状態より実質的に前記段差の高さ分だけ伸びた伸長状態とに固定する固定手段と、前記固定を解除する解除手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の浴室。
【請求項3】
前記浴室床の奥側部が、浴槽パンと、前記浴槽パン上に敷設された床ボードとを有し、
前記床ボードの上面には奥側へ向かって下がる勾配が形成され、かつ前記床ボードの奥側の端部には、前記奥端の段差を構成するボード段差部が形成されており、
前記浴槽パンの幅方向の縁には、前記側方の段差を構成するパン段差部が形成され、前記パン段差部と前記ボード段差部の上面どうしが面一であることを特徴とする請求項2に記載の浴室。
【請求項4】
前記支持脚が、第1脚部と、前記第1脚部に対して昇降可能に係合された第2脚部と、を含み、
前記第1脚部には、2つの係止孔が実質的に前記段差の高さ分だけ上下に離れて形成され、
前記第2脚部には、出没可能な出没係止部と、前記出没係止部を突出方向へ付勢する付勢手段とが設けられ、
前記出没係止部が、前記係止孔の1つと一致したとき突出して前記1つの係止孔に嵌ることを特徴とする請求項2又は3に記載の浴室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や介助施設の浴室に関し、特に入浴動作をサポートする移乗台を有する浴室に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や介助施設の浴室において、要介助者の浴槽への入浴動作をサポートするために移乗台を設けたものは公知である(特許文献1等参照)。例えば、特許文献1の浴室においては、浴槽の側方に空きスペースが設けられ、該空きスペースに移乗台が設置されている。移乗台は、長方形の座板と、その四隅を支持する支持脚とを含む。座板の長手寸法は浴槽及び空きスペースの奥行寸法と同等であり、座板の短手寸法は空きスペースの幅寸法と同等になっている。これによって、移乗台が、座板の長手方向を奥行方向へ向けて、空きスペースにぴったり納まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-273915号公報(
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
要介助者の身体機能や入浴のさせ方等に応じて、前記空きスペースにおける移乗台の向きや位置を変えることができれば、介助をしやすくなり、移乗台の利便性が高まる。一方、浴室床には排水勾配があるために、移乗台が向きや位置によっては傾斜して不安定になるおそれがある。
本発明は、かかる事情に鑑み、移乗台の配置の自由度を高め、しかも、浴室床に排水勾配があっても移乗台の傾斜を抑えることができる浴室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、
排水勾配が形成された浴室床と、
前記浴室床における奥側部に配置された浴槽と、
長板状の座板及び前記座板を支持する複数の支持脚を有して、移動可能な移乗台と、を備え、
前記浴室床の奥側部の幅寸法が、前記浴槽の幅寸法より大きく、
前記座板の長手寸法が、前記浴室床の奥側部と前記浴槽との幅寸法差と同等またはそれ以下であり、
前記複数の支持脚の一部又は全部には、当該支持脚を段階的に伸縮させる伸縮機構が設けられていることを特徴とする。
【0006】
当該浴室においては、浴室床の奥側部の幅寸法が浴槽の幅寸法より大きいために、浴槽の側方に空きスペースが出来る。該空きスペースに移乗台を配置できる。しかも、空きスペースの幅寸法(浴室床の奥側部と浴槽との幅寸法差)が、座板の長手寸法ひいては移乗台の長手寸法と同等以上になるから、空きスペースに配置する移乗台の長手方向を空きスペースの奥行方向へ向けることは勿論のこと、移乗台の長手方向を空きスペースの幅方向へ向けることもできる。移乗台の向きに応じて支持脚の長さを調節する。例えば、互いに同じ水平レベルの床面上に配置された支持脚どうしは、互いに同じ長さとする。排水勾配の下流側の床面上に配置された支持脚は、排水勾配の上流側の床面上に配置された支持脚より長くする。段差上に配置された支持脚は、段差から外れた支持脚よりも段差の高さ分だけ伸縮させる。これによって、座板の傾斜を抑えることができ、好ましくは座板を略水平に配置することができる。
【0007】
前記浴室床の奥端又は側方の縁部には、上方へ突出する段差が形成されており、
前記伸縮機構が、前記支持脚を、収縮状態と、前記収縮状態より実質的に前記段差の高さ分だけ伸びた伸長状態とに固定する固定手段と、前記固定を解除する解除手段とを含むことが好ましい、
これによって、段差上に配置された支持脚を収縮状態とする一方、段差から外れて配置された支持脚を伸長状態とすることで、座板の傾斜を抑えることができ、好ましくは座板を略水平に配置できる。
支持脚の長さを変える際は、解除手段によって、長さの固定状態を解除する。そのうえで、収縮状態から伸長状態、又は伸長状態から収縮状態にした後、固定手段によって当該支持脚の長さを固定する。支持脚を2つの長さ状態の間でワンタッチで伸縮させることができる。
【0008】
前記浴室床の奥側部が、浴槽パンと、前記浴槽パン上に敷設された床ボードとを有し、
前記床ボードの上面には奥側へ向かって下がる勾配が形成され、かつ前記床ボードの奥側の端部には、前記奥端の段差を構成するボード段差部が形成されており、
前記浴槽パンの幅方向の縁には、前記側方の段差を構成するパン段差部が形成され、前記パン段差部と前記ボード段差部の上面どうしが面一であることが好ましい。
この場合、パン段差部及びボード段差部上に配置された支持脚は収縮状態とし、これら段差部から外れて床ボード上に配置された支持脚は伸長状態とする。これによって、座板の傾斜を抑えることができ、好ましくは座板を略水平に配置できる。
【0009】
前記支持脚が、第1脚部と、前記第1脚部に対して昇降可能に係合された第2脚部と、を含み、
前記第1脚部には、2つの係止孔が実質的に前記段差の高さ分だけ上下に離れて形成され、
前記第2脚部には、出没可能な出没係止部と、前記出没係止部を突出方向へ付勢する付勢手段とが設けられ、
前記出没係止部が、前記係止孔の1つと一致したとき突出して前記1つの係止孔に嵌ることが好ましい。
これによって、出没係止部を係止孔内に押し込むことで支持脚が伸縮可能となる。出没係止部が所定の係止孔と一致して該係止孔に嵌ることで、支持脚の長さを固定できる。これによって、支持脚をワンタッチで長さ調節できる。
係止孔、出没係止部及び付勢手段によって、前記固定手段及び解除手段が構成される。
係止孔を有する第1脚部、並びに出没係止部及び付勢手段を有する第2脚部によって、前記伸縮機構が構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、浴室における移乗台の配置の自由度を高めることができる。かつ浴室床に排水勾配があっても移乗台の傾斜を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1(a)】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る移乗台が浴槽側方の空きスペースに設置された浴室の平面図である。
【
図1(b)】
図1(b)は、前記移乗台を同図(a)とは異なる向きにして前記空きスペースに設置した浴室の平面図である。
【
図2】
図2は、
図1(a)のII-II線に沿う、浴室の正面断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線に沿う、浴室の側面断面図である。
【
図4】
図4は、
図1(b)のIV-IV線に沿う、浴室の正面断面図である。
【
図5】
図5は、
図4のV-V線に沿う、浴室の側面断面図である。
【
図6】
図6(a)は、支持脚の伸縮機構を、収縮状態で示す解説断面図である。
図6(b)は、支持脚の伸縮機構を、固定解除状態で示す解説断面図である。
図6(c)は、支持脚の伸縮機構を、伸長状態で示す解説断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、浴室1は、浴室床2と、浴槽3を備えている。浴室床2は、洗い場パン2a及び浴槽パン4と敷設体5によって構成されている。浴室1の幅方向と直交する奥行方向の前側(
図1(a)において下)に防水構造の洗い場パン2a(洗い場床面)が配置されている。詳細な図示は省略するが、洗い場パン2aには、排水口2cへ向かって緩やかに下がる排水勾配が形成されている。排水口2cは、洗い場における浴槽側の縁の中央部に配置されているが、排水口2cの配置位置はこれに限らず、洗い場のコーナー部などに配置されていてもよい。
【0013】
図1(a)に示すように、浴室床2の奥側部(
図1(a)において上側)には、防水構造の浴槽パン4が配置されている。浴槽パン4の幅方向の縁には、パン段差部4d(側方の段差)が形成されている。
図2及び
図3に示すように、パン段差部4dは、敷設体5の後記床ボード50の上面よりも上方へ突出され、かつ浴室奥行方向(
図3の左右方向)へ延びている。パン段差部4dの上面は、水平になっている。
【0014】
図1(a)及び
図2に示すように、浴槽パン4上に複数の四角形の床ボード50が幅方向に並べられて敷設されている。これら床ボード50によって敷設体5が構成されている。
【0015】
図3に示すように、床ボード50の上面ひいては敷設体5の上面には、浴室の奥側(
図3において左)へ向かって緩やかに下がる排水勾配が形成されている。床ボード50の奥側の端部には、上方へ突出するボード段差部52(奥端の段差)が形成されている。
図2に示すように、ボード段差部52は、床ボード50の幅方向ひいては浴室幅方向(
図2の左右方向)へ延びている。ボード段差部52の上面は、水平になっている。
ボード段差部52の高さは、パン段差部4dの奥端(
図3において左端)における床ボード50の上面からの高さと等しい。これによって、パン段差部4dとボード段差部52の上面どうしが面一になっている。
【0016】
図1(a)に示すように、浴槽パン4上に、敷設体5を介して、浴槽3が配置されている。浴槽パン4(浴室床2の奥側部)の幅寸法は、浴槽3の幅寸法より大きい。このため、浴槽3の側方に空きスペース1sが形成されている。
【0017】
空きスペース1sに移乗台10が設けられている。移乗台10は、浴室の床2や壁に固定されておらず、任意に移動可能である。
【0018】
図1(a)、
図2及び
図3に示すように、移乗台10は、長板状の座板11と、4つ(複数)の支持脚20を有している。座板11は、長方形に形成されている。座板11の長手寸法は、浴槽パン4(浴室床2の奥側部)と浴槽3との幅寸法差と同等またはそれ以下である。すなわち、移乗台10の長手寸法は、空きスペース1sの幅寸法と同等またはそれ以下である。好ましくは、移乗台10の長手寸法は、空きスペース1sの幅寸法と略同等である。
座板11の短手寸法は、長手寸法の半分以下であり、空きスペース1sの幅寸法より小さい。
【0019】
図1(a)、
図2及び
図3に示すように、座板11が4つの支持脚20によって支持されている。
図2及び
図3に示すように、4つの支持脚20の中間部どうしが、連結部材25によって連結されている。
図1(a)に示すように、平面投影視で、支持脚20は、座板11の外周縁の内側に収まっている。
【0020】
図2及び
図3に示すように、各支持脚20には、伸縮機構23が設けられている。伸縮機構23によって、支持脚20が、段階的に長さ調整可能になっている。ここでは、支持脚20は、収縮状態と伸長状態との2つの長さ状態を取り得る。伸長状態の支持脚20は、収縮状態の支持脚20よりも、実質的に段差部52,4dの段差高さD
1分だけ伸びている。
【0021】
伸縮機構23は、次のように構成されている。
図2及び
図3に示すように、支持脚20が、第1脚部21と、第2脚部22を含む。これら脚部21,22は、例えば金属パイプによって形成されているが、脚部21,22の材質はこれに限定されない。第1脚部21の上端部に座板11が固定されている。第1脚部21は、中間部が屈曲され、屈曲部より下側部分が上側部分よりも平面投影視で外側に配置されているが、第1脚部21が全長にわたって真っ直ぐであってもよい。
【0022】
図6(a)に示すように、第1脚部21の下端部に、第2脚部22が係合されている。第2脚部22の上端部が、第1脚部21の下端部の内部に嵌め入れられ、第2脚部22の下端部が、第1脚部21から下方へ突出されている。
【0023】
第1脚部21の下端部の周壁部には、2つ(複数)の係止孔31,32が上下に並んで形成されている。上側の係止孔31と下側の係止孔32とは、実質的に段差部52,4dの段差高さD1分だけ上下に離れている。「実質的に」とは、係止孔31,32どうしの離間距離D2は、段差高さD1と必ずしも厳密に一致している必要は無く、段差高さD1に対して±数%程度以下ないしは±10%以下程度の大小差は許容される趣旨である。
【0024】
第2脚部22の内部には、球状の出没係止部30と、カム機構33と、ばね34(付勢手段)とが収容されている。出没係止部30は、第2脚部22の径方向に出没可能になっている。ばね34は、カム機構33を介して、出没係止部30を突出方向へ付勢している。
【0025】
図6(b)に示すように、出没係止部30が係止孔31,32内に押し込まれた状態では、第2脚部22が第1脚部21に対して昇降可能であり、したがって、支持脚20が伸縮可能となる。
図6(a)及び同図(c)に示すように、出没係止部30が、係止孔31,32の1つと一致したとき、ばね34の付勢によって突出されて、前記1つの係止孔31,32に嵌る。これによって、第2脚部22が第1脚部21に対して昇降不能になり、支持脚20の長さが固定される。
【0026】
図6(a)に示すように、出没係止部30が上側の係止孔31に嵌っている支持脚20は、収縮状態になっている。
図6(c)に示すように、出没係止部30が下側の係止孔32に嵌っている支持脚20は、伸長状態になっている。
係止孔31,32、出没係止部30、カム機構33及びばね34によって、支持脚20を収縮状態と伸長状態とに固定する固定手段が構成されるとともに、前記固定を解除する解除手段が構成されている。
係止孔31,32を有する第1脚部21、並びに出没係止部30、カム機構33及びばね34を有する第2脚部22によって、伸縮機構23が構成される。
【0027】
図1(a)及び同図(b)に示すように、当該浴室1においては、空きスペース1sの幅寸法(浴室床2の奥側部と浴槽3との幅寸法差)が、座板11の長手寸法と同等以上になる。ひいては、移乗台10の長手寸法と同等以上になる。したがって、
図1(b)に示すように、移乗台10を、短手方向を浴室幅方向へ向けて、空きスペース1sに配置できることはもちろんのこと、
図1(a)に示すように、長手方向を浴室幅方向へ向けて、空きスペース1sに配置することもできる。好ましくは、空きスペース1sの幅寸法を座板11の長手寸法と同等にすることで、長手方向を浴室幅方向へ向けた移乗台1を空きスペース1sにぴったりと収めることができる。
【0028】
図2~
図5に示すように、空きスペース1sにおける移乗台10の位置及び向きに応じて、各支持脚20の長さを調節する。互いに同じ水平レベルの浴室床面上に配置された支持脚20どうしは、互いに同じ長さとする。排水勾配の下流側の床面上に配置された支持脚20は、排水勾配の上流側の床面上に配置された支持脚20より長くする。段差部4d,52上に配置された支持脚20は、段差部4d,52から外れて床ボード50上に配置された支持脚20よりも、段差部4d,52の高さ分だけ収縮させる。
【0029】
具体的には、
図1(a)に示すように、移乗台10は、長手側縁を浴室1の奥側壁7bに近接又は接触させ、かつ短手側縁を浴室1の側方の壁7aに近接又は接触させて配置できる。この場合、
図2及び
図3に示すように、3つの支持脚20がそれぞれパン段差部4d又はボード段差部52に接地される。かつ残り1つの支持脚20が、床ボード50の上面に接地される。そこで、段差部4d,52上の3つの支持脚20は収縮状態とし、床ボード50上の残り1つの支持脚20は伸長状態とする。
これによって、座板11の傾斜を抑えることができ、好ましくは座板11を実質的に水平に配置することができる。「実質的に水平」とは数度未満の傾斜は許容される趣旨である。
【0030】
また、
図1(b)に示すように、移乗台10は、長手側縁を浴室1の側方壁7aに近接又は接触させて配置することもできる。移乗台10を奥側壁7bからは少し離して配置してもよい。この場合、
図4及び
図5に示すように、移乗台10の一部が洗い場側にはみ出し、該洗い場側(手前側)の2つの支持脚20が洗い場パン2aに接地され、奥側かつ側方壁7a側の支持脚20がパン段差部4dに接地され、残り1つの支持脚20が床ボード50の上面に接地される。そこで、洗い場パン2a上の2つの支持脚20及びパン段差部4d上の支持脚20は収縮状態とし、残り1つの床ボード50上の支持脚20を伸長状態とする。これによって、座板11の傾斜を抑えることができ、好ましくは座板11を実質的に水平に配置することができる。
要介助者の身体機能や入浴のさせ方等に応じて、移乗台10の向きや位置を変えることができ、移乗台10の配置の自由度を高めることができ 移乗台10の利便性が高まり、介助を容易化できる。浴室床2に排水勾配があっても、移乗台10の向きや位置に拘わらず、座板11をほぼ水平にでき、がたつきを抑えて、安定性を確保できる。
【0031】
収縮状態(
図6(a))の支持脚20を伸長させる際は、出没係止部30を係止孔31から引っ込ませて第2脚部22を第1脚部21に対して引き下げる(
図6(b))。やがて、出没係止部30が、下側の係止孔32と一致されることで、ばね34に付勢されて突出されて、下側の係止孔32に嵌る。これによって、支持脚20が伸長状態に固定される(
図6(c))。
【0032】
伸長状態(
図6(c))の支持脚20を収縮させる際は、出没係止部30を係止孔32から引っ込ませて第2脚部22を第1脚部21に対して押し上げる(
図6(b))。やがて、出没係止部30が、上側の係止孔31と一致されることで、ばね34に付勢されて突出されて、係止孔31に嵌る。これによって、支持脚20が収縮状態に固定される(
図6(a))。
このようにして、支持脚20をワンタッチで長さ調節できる。ひいては、ワンタッチで移乗台10を実質水平になるよう調節できる。
【0033】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、座板11は、長板状であればよく、長方形に限らず、楕円形状等であってもよい。
一部の支持脚20だけが伸縮機構23を有していてもよい。例えば、4つの支持脚20のうち、2つ又は3つの支持脚20が伸縮機構23を有し、他の支持脚20の長さは固定であってもよい。長さが固定の支持脚20については、常に段差4d,52又は洗い場パン2a上に配置するようにするか、又は常に床ボード50上に配置するようにしてもよい。
支持脚20は、伸縮機構23によって、複数段階にわたって長さ調整可能であってもよい。更に、支持脚20には、任意の長さに微調整可能な機構が付加されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば介護施設における浴槽に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 浴室
1s 空きスペース
2 浴室床
2a 洗い場パン
2c 排水口
3 浴槽
4 浴槽パン
4d パン段差部(側方の段差)
5 敷設体
7a 浴室1の側方の壁
7b 浴室1の奥側の壁
10 移乗台
11 座板
20 支持脚
21 第1脚部
22 第2脚部
23 伸縮機構
25 連結部材
30 出没係止部
31 上側の係止孔
32 下側の係止孔
33 カム機構
34 ばね(付勢手段)
50 床ボード
52 ボード段差部(奥端の段差)