IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ APB株式会社の特許一覧 ▶ 三洋化成工業株式会社の特許一覧

特開2022-157566電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法
<>
  • 特開-電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法 図1
  • 特開-電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法 図2
  • 特開-電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法 図3
  • 特開-電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法 図4
  • 特開-電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157566
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20221006BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20221006BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20221006BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20221006BHJP
   B05C 15/00 20060101ALI20221006BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
G01B11/00 C
B05C13/02
B05C15/00
B05C9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061860
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】榎 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【テーマコード(参考)】
2F065
4F042
5H050
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA07
2F065AA19
2F065HH04
2F065JJ01
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA08
4F042DC03
4F042DE01
4F042DE09
4F042DF23
4F042DH09
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB11
5H050GA03
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】減圧時における搬送方向に隣り合う作業機構の相対位置情報を外部に出力することで、電池用電極製造装置の作動時におけるチャンバーの変形に基づいた搬送方向に隣り合う作業機構の相対位置の変化を外部に出力する電池用電極製造装置を提供すること。
【解決手段】電池用電極製造装置100は、内部空間Sが大気圧よりも減圧されたチャンバー200と、内部空間Sに配置され、外部から搬送される帯状の基材フィルム(集電体21X)に対して作業を行う複数の作業機構と、チャンバー200に固定され、帯状の集電体21Xの搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構300に向けて光L1~L4を出射する投光器400と、光L1~L4を受光する受光センサ500と、光L1~L4に基づいて、減圧時における搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構300の相対位置に関する情報である相対位置情報P1~P3を外部に出力する出力部600と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間が大気圧よりも減圧されたチャンバーと、
前記内部空間に配置され、外部から搬送される帯状の基材フィルムに対して作業を行う複数の作業機構と、
前記チャンバーに固定され、前記複数の作業機構のうち、少なくとも前記帯状の基材フィルムの搬送方向において隣り合う対象作業機構に向けて光を出射する投光器と、
前記投光器からの光を受光する受光センサと、
前記受光センサにより受光した前記投光器からの光に基づいて、減圧時における前記搬送方向において隣り合う前記対象作業機構の相対位置に関する情報である相対位置情報を外部に出力する出力部と、
を備える、
ことを特徴とする電池用電極製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池用電極製造装置において、
前記投光器は、前記搬送方向において隣り合う前記対象作業機構の間に配置され、かつ、上流側の前記対象作業機構および下流側の前記対象作業機構に向けて光を出射するものであり、
前記受光センサは、前記搬送方向において隣り合う前記対象作業機構にそれぞれ設けられている、
電池用電極製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池用電極製造装置において、
前記投光器は、前記搬送方向の上流側または下流側の少なくとも一方側に向かって複数の光を出射するものであり、
前記受光センサは、前記投光器よりも前記一方側に複数設置された前記搬送方向において隣り合う前記対象作業機構にそれぞれ設けられ、かつ複数の光の出射方向から見た場合に、互いに離間して設けられている、
電池用電極製造装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電池用電極製造装置において、
前記搬送方向において隣り合う前記対象作業機構は、
搬送された前記帯状の基材フィルムに対して活物質を供給する活物質供給機構と、
前記内部空間のうち、前記活物質供給機構よりも下流側に配置され、かつ、搬送された前記帯状の基材フィルム上の前記活物質を圧縮するロールプレス機構と、
である、
電池用電極製造装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電池用電極製造装置において、
前記対象作業機構は、前記チャンバーに対する前記対象作業機構の高さを調節する高さ調節機構を有する、
電池用電極製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電池用電極製造装置において、
前記高さ調節機構は、前記相対位置情報に基づいて、前記搬送方向において隣り合う前記対象作業機構の高さの差を減少するように、チャンバーに対する前記対象作業機構の高さを調節する、
電池用電極製造装置。
【請求項7】
内部空間が大気圧よりも減圧されたチャンバーと、
前記内部空間に配置され、外部から搬送される帯状の基材フィルムに対して作業を行う複数の作業機構と、
前記チャンバーに固定され、複数の前記作業機構のうち、少なくとも前記帯状の基材フィルムの搬送方向において隣り合う対象作業機構に対して光を出射する投光器と、
前記投光器からの光を受光する受光センサと、
前記受光センサにより受光した前記投光器からの光に基づいて、前記搬送方向において隣り合う前記対象作業機構の相対位置に関する情報である相対位置情報を外部に出力する出力部と、
を備える電池用電極製造装置の位置検出方法であって、
前記チャンバーを減圧する工程と、
前記出力部により、前記相対位置情報を外部に出力する工程と、
を含む、ことを特徴とする電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年注目されているリチウムイオン電池は、一般に、集電体の表面に活物質層が形成された複数の電極を、セパレータを介して積層させることで構成される。このようなリチウムイオン電池用の電極は、例えば、特許文献1に示すように、帯状の部材の搬送経路上に配置された複数の作業機構により、搬送される帯状の部材、例えば帯状の集電体に対して作業を行うことで製造される。
【0003】
上記リチウムイオン電池用の電極の製造においては、作業機構による作業により、活物質の微粒子等が飛散することで製造設備を汚染してしまうおそれがある。これに対して、複数の作業機構を大気圧よりも減圧されたチャンバーの内部空間に配置し、減圧環境下でリチウムイオン電池用の電極の製造を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-27043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減圧時、すなわち作動時のチャンバーは、大気圧であるチャンバーの外部と減圧時の内部空間との気圧差に基づいて、非作動時におけるチャンバーに対して変形することとなる。作動時におけるチャンバーの変形は、搬送方向に隣り合う作業機構の相対位置関係に影響を与えるため、製造される電池用電極の品質にも影響を与える可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、減圧時における搬送方向に隣り合う作業機構の相対位置情報を外部に出力することで、作動時におけるチャンバーの変形に基づいた搬送方向に隣り合う作業機構の相対位置の変化を外部に出力することができる電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の電池用電極製造装置は、内部空間が大気圧よりも減圧されたチャンバーと、前記内部空間に配置され、外部から搬送される帯状の基材フィルムに対して作業を行う複数の作業機構と、前記チャンバーに固定され、複数の前記作業機構のうち、少なくとも前記帯状の基材フィルムの搬送方向において隣り合う2つの対象作業機構に向けて光を出射する投光器と、前記投光器からの光を受光する受光センサと、前記受光センサにより受光した前記投光器からの光に基づいて、減圧時における前記搬送方向において隣り合う前記対象作業機構の相対位置に関する情報である相対位置情報を外部に出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の電池用電極製造装置の位置検出方法は、内部空間が大気圧よりも減圧されたチャンバーと、前記内部空間に配置され、外部から搬送される帯状の基材フィルムに対して作業を行う複数の作業機構と、前記チャンバーに固定され、複数の前記作業機構のうち、少なくとも前記帯状の基材フィルムの搬送方向において隣り合う2つの対象作業機構に対して光を出射する投光器と、前記投光器からの光を受光する受光センサと、前記受光センサにより受光した前記投光器からの光に基づいて、前記搬送方向において隣り合う前記対象作業機構の相対位置に関する情報である相対位置情報を外部に出力する出力部と、を備える電池用電極製造装置の位置検出方法であって、前記チャンバーを減圧する工程と、前記出力部により、前記相対位置情報を外部に出力する工程と、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法は、減圧時における搬送方向に隣り合う作業機構の相対位置情報を外部に出力することで、電池用電極製造装置の作動時におけるチャンバーの変形に基づいた搬送方向に隣り合う作業機構の相対位置の変化を外部に出力することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、単電池の概略構成図である。
図2図2は、実施形態に係る電池用電極製造装置の概略構成図である。
図3図3は、実施形態に係る電池用電極製造装置の要部概略構成図である。
図4図4は、実施形態に係る電池用電極製造装置による電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法をしめすフローチャート図である。
図5図5は、実施形態の変形例に係る電池用電極製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る電池用電極製造装置および電池用電極製造装置内作業機構の位置検出方法につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
[実施形態]
図2に示す本実施形態に係る電池用電極製造装置100は、図1に示す単電池1に適用される電極2を製造するための電池用電極製造装置である。以下では、まず、図1を参照して単電池1、電極2の基本的な構成について説明した後、図2等を参照して電池用電極製造装置100について詳細に説明する。
【0014】
<単電池>
単電池1は、本実施形態では、非水電解質二次電池の1種である双極型リチウムイオン二次電池である。双極型リチウムイオン二次電池とは、双極型電極を含み、正極2aと負極2bとの間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。なお、以下の説明では、「正極2a」と「負極2b」とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「電極2」という場合がある。
【0015】
単電池1は、図1に示すように、正極2aと、負極2bと、セパレータ3と、枠体4とを有する。正極2aは、単電池1を構成する2つの電極(電池用電極)2のうち、一方の電極2である。負極2bは、単電池1を構成する2つの電極2のうち、他方の電極2である。セパレータ3は、正極2aと負極2bとの間に配置される板状の部材である。枠体4は、セパレータ3の周縁部を囲う枠状の部材である。単電池1は、正極2a、セパレータ3、負極2bの順番で積層され、かつ、枠体4がセパレータ3の周縁部を囲う位置関係で一体化される。
【0016】
正極2aは、正極集電体層21aと、正極活物質層22aとを有し、正極集電体層21aの両面のうち、一方の面に正極活物質層22aが電気的に結合している。一方、負極2bは、負極集電体層21bと、負極活物質層22bとを有し、負極集電体層21bの両面のうち、一方の面に負極活物質層22bが電気的に結合している。正極2aおよび負極2bは、全体として双極型電極を構成する。本実施形態における正極2aおよび負極2bは、矩形板状に形成されている。
【0017】
セパレータ3は、正極2aと負極2bとの間の隔壁として機能し、正極活物質層22aと負極活物質層22bとが互いに接触することを抑制するものである。本実施形態におけるセパレータ3は、正極集電体層21aおよび負極集電体層21bよりも小さい矩形板状に形成されている。
【0018】
枠体4は、単電池1の骨格を形成するものである。枠体4は、正極集電体層21aとセパレータ3との間で正極活物質層22aを封止し、負極集電体層21bとセパレータ3との間で、負極活物質層22bを封止するものである。本実施形態における枠体4は、セパレータ3の外周を囲う額縁状に形成されている。
【0019】
単電池1は、正極集電体層21a、正極活物質層22a、セパレータ3、負極活物質層22b、負極集電体層21bの順番で積層される。つまり、単電池1は、正極集電体層21a及び負極活物質層2bが最外層に配置、すなわち単電池1の外部に露出する。
【0020】
なお、図1は、セパレータ3の一部が枠体4に入り込むように構成される場合を示している。すなわち、図1では、セパレータ3は、枠体4に周縁部を囲まれる正極活物質層2a、負極活物質層2bと比較して、幅が若干大きくなっており、その一部が枠体4に食い込んでいる。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではなく、例えば、正極活物質層22a、負極活物質層22b、セパレータ30の幅が同じになるように構成してもよい。また、図1に示す枠体4は、一体的に製造されてもよいし、例えば、正極2a側の枠体4と負極2b側の枠体4とを別個に製造して結合させることにより製造されてもよい。
【0021】
また、以下の説明では、「正極集電体層21a」と「負極集電体層21b」とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「集電体層21」という場合がある。同様に、「正極活物質層22a」と「負極活物質層22b」とを特に区別して説明する必要がない場合には、単に「電極活物質層22」という場合がある。
【0022】
<組電池>
単電池1は、複数組み合わせて、電圧及び容量を調節した組電池、すなわち電池パックの形態で使用することが可能である。組電池は、平板状の複数の単電池1を厚さ方向において積層して構成されている。厚さ方向において隣り合う単電池1は、互いの異なる電極2が接触、すなわち一方の正極2aと他方の負極2bとが接触するように積層される。組電池は、可撓性を有する絶縁材料で構成される外層フィルム、例えばラミネートフィルムにより、内部の単電池1が覆われている。組電池は、複数の単電池1の厚さ方向における両端に位置する正極2aおよび負極2bにそれぞれ電気的に接続される取り出し部が設けられる。取り出し部は、一部が外装フィルムの外部に露出しており、外部において電気的に接続された電気機器に電力が供給される。
【0023】
<正極集電体の具体例>
正極集電体層21aを構成する正極集電体としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015-005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。正極集電体層21aを構成する正極集電体は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0024】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は、薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0025】
樹脂集電体としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられるが、特に限定されない。導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択されれば特に限定されない。例えば、導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
【0026】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。また、複数の樹脂集電体を積層して用いてもよく、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0027】
正極集電体層21aの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体層21aとして用いる場合には、積層後の全体の厚さが5~150μmであることが好ましい。正極集電体層21aは、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0028】
<正極活物質の具体例>
正極活物質層22aは、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。正極活物質層22aが非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22aに応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22aの破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22aは、正極活物質層22aを、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22aにする等の方法で得ることができる。なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0029】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属元素が2種である複合酸化物及び金属元素が3種類以上である複合酸化物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0030】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であってもよい。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0031】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015-005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0032】
被覆材には、導電剤が含まれていてもよい。導電剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0033】
正極活物質層22aには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調節したもの、及び、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。したがって、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極バインダー)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0034】
正極活物質層22aには、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用できる。非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの(例えば、リン酸エステル、ニトリル化合物等及びこれらの混合物等)が使用できる。例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液を用いることができる。
【0035】
正極活物質層22aには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0036】
正極活物質層22aの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0037】
<負極集電体の具体例>
負極集電体層21bを構成する負極集電体としては、正極集電体で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体層21bは、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。負極集電体層21bの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。
【0038】
<負極活物質の具体例>
負極活物質層22bは、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層22bを得る方法等は、正極活物質層22aが非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22aを得る方法と同様である。
【0039】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物などを用いることができるが、特に限定されない。
【0040】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0041】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0042】
負極活物質層22bは、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層22aに含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0043】
負極活物質層22bには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極活物質層22aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0044】
負極活物質層22bには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、正極活物質層22aの任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0045】
負極活物質層22bの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0046】
<セパレータの具体例>
セパレータ3に保持される電解質としては、例えば、電解液又はゲルポリマー電解質などが挙げられる。セパレータ3は、これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータ3の形態としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム等が挙げられるが、特に限定されない。
【0047】
<枠体の具体例>
枠体4としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、例えば、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。枠体4を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよく、樹脂材料が好適に採用される。より具体的には、枠体4としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0048】
<製造装置>
次に、電池用電極製造装置100について説明する。本実施形態に係る電池用電極製造装置100は、図3に示すように、外部から帯状の集電体21Xが供給され、正極2aおよび負極2bのいずれかの電極2を製造するものでる。帯状の集電体21Xは、基材フィルムであり、分割されることで集電体層21を形成するものであり、ロール状に巻かれており、図示しないロール保持部により回転自在に支持された状態で、集電体ロール21X´として電池用電極製造装置100の外部に設置されている。
【0049】
電池用電極製造装置100は、チャンバー200と、チャンバー200の内部空間Sに配置され、外部から搬送される帯状の集電体21Xに対して作業を行う作業機構に含まれる複数の対象作業機構300と、投光器400と、受光センサ500と、出力部600と、外部機器700とを備える。ここで、本実施形態における対象作業機構300は、電池用電極製造装置100に用いられる作業機構のすべてである。枠体供給機構310、活物質供給機構320、ロールプレス機構330およびカット機構340である。電池用電極製造装置100は、帯状の集電体21Xの搬送方向Xにおいて、枠体供給機構310、活物質供給機構320、ロールプレス機構330、カット機構340の順番で内部空間Sに設置されている。なお、内部空間Sには、帯状の集電体21Xを搬送するための図示しない搬送ローラ機構(帯状の集電体21Xを挟んで駆動ローラと従動ローラとを含む)が、搬送方向Xにおいて離間して複数設置されている。ここで、搬送方向Xは、例えば、高さ方向Zに対して直交する方向である。
【0050】
チャンバー200は、内部を大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋である。チャンバー200は、閉空間を形成するチャンバー本体201を有する。チャンバー200の内部空間Sは、減圧ポンプ202により大気圧よりも減圧される。内部空間Sの圧力は、大気圧よりも減圧されていれば任意の値でよいが、例えば、大気圧から1×10-1~1×10-2Paまでの低真空環境となるように調節されていてもよいし、1×10-6~1×10-7Paの高真空環境となるように調節されていてもよいし、それ以上の超高真空や10-8~10-9Paレベルの極高真空であってもよい。なお、標準大気圧は、約1013hPa(約10Pa)である。
【0051】
チャンバー本体201は、スリット203を有する。スリット203は、外部から内部空間Sに帯状の集電体21Xを導入するものである。チャンバー本体201の搬送方向における上流側の側壁204に形成されている。スリット203は、搬送方向Xに側壁204を貫通して形成されている。なお、スリット203の開口面積は、チャンバー200の減圧時、減圧状態に極力影響を与えないように、小さく形成されている。なお、チャンバー本体201は、本実施形態では1つで形成されているが、複数のチャンバー本体201を連結してもよい。
【0052】
枠体供給機構310は、帯状の集電体21Xに対して枠体4を供給することで、集電層21に対して枠体4を積層するものである。枠体供給機構310は、搬送方向Xにおいて最上流に設置される。枠体供給機構310は、枠体供給テーブル311と、ロボットアーム312と、高さ調節機構313とを有する。枠体供給テーブル311は、チャンバー本体201の床部205に固定されており、帯状の集電体21Xに対して枠体4が供給される際に、帯状の集電体21Xを支持するものである。ロボットアーム312は、例えば、空気圧により吸着した枠体4を帯状の集電体21X上まで搬送し、空気圧による吸着を解除することで、帯状の集電体21Xに枠体4を供給するものである。ここで、枠体4は、図示しない接着層により帯状の集電体21Xに固定される。ロボットアーム312が搬送する枠体4は、高さ方向Zから見た場合に、帯状の集電体21Xの外側において、高さ方向Zに積み上げられている。本実施形態におけるロボットアーム312は、枠体供給テーブル311に設置されている。高さ調節機構313は、枠体供給機構310の高さを調節するものである。本実施形態における高さ調節機構313は、チャンバー本体210の床部205に対する枠体供給テーブル311およびロボットアーム312の高さを調節するものである。本実施形態における高さ調節機構313は、例えば、リンク式、ねじ式、シリンダー式などであり、手動により動作するものでもよいし、駆動源が駆動することで動作するものであってもよい。
【0053】
活物質供給機構320は、帯状の集電体21Xに対して活物質22Xを供給することで、集電体21Xに対して活物質22Xを塗設するものである。活物質供給機構320は、枠体供給機構310よりも搬送方向Xにおいて下流側に設置され、搬送方向Xにおいて枠体供給機構310と隣り合う。活物質供給機構320は、活物質供給テーブル321と、塗設機構322と、高さ調節機構323とを有する。活物質供給テーブル321は、チャンバー本体201の床部205に固定されており、帯状の集電体21Xに固定された枠体4の枠内に対して活物質22Xが供給される際に、帯状の集電体21Xが載置され、帯状の集電体21Xおよび枠体4を支持するものである。活物質供給テーブル321は、帯状の集電体21Xが載置される載置面に図示しない吸引孔が複数形成されており、図示しない減圧ポンプにより吸引孔から内部空間Sの気体が吸引されることで、帯状の集電体21Xが支持されるとともに、飛散した活物質を吸引する。塗設機構322は、チャンバー200の外部に設置されている図示しない活物質供給タンクから活物質22Xが供給され、枠体4の枠内に向かって活物質22Xを一定量吐出することで、帯状の集電体21Xに固定された枠体4の枠内に活物質を塗設するものである。塗設機構322は、例えば、塗設機構322の内部に貯留される活物質22Xを図示しない開口から吐出させるための吐出機構と、貯留されている活物質22Xと、枠体4の枠内に塗設された活物質22Xとを分断する分断機構とを有する。高さ調節機構323は、活物質供給機構320の高さを調節するものである。本実施形態における高さ調節機構323は、チャンバー本体210の床部205に対する活物質供給テーブル321および塗設機構322の高さを調節するものであり、構成は上記高さ調節機構313と同様の構成である。
【0054】
ロールプレス機構330は、搬送された帯状の集電体21X上の活物質22Xを圧縮するものである。ロールプレス機構330は、活物質供給機構320よりも搬送方向Xにおいて下流側に設置され、搬送方向Xにおいて活物質供給機構320と隣り合う。ロールプレス機構330は、第1圧縮ローラ331と、第2圧縮ローラ332と、高さ調節機構323とを有する。第1圧縮ローラ331は、ローラ支持部334によりチャンバー本体201の床部205に固定されており、帯状の集電体21Xと接触するものである。第2圧縮ローラ332は、ローラ支持部334によりチャンバー本体201の床部205に固定されており、第1圧縮ローラ332と隙間が形成された状態で、第1圧縮ローラと高さ方向Zにおいて対向して配置され、帯状の集電体21X上の活物質22Xと接触するものである。第1圧縮ローラ331および第2圧縮ローラ332は、図示しない駆動源により、帯状の集電体21Xを搬送方向Xに移動させる方向に回転するものであり、帯状の集電体21X上の活物質22Xを圧縮することで、活物質22X内の空気などを外部に放出させて、活物質22Xを帯状の集電体21Xに定着させる。本実施形態におけるロールプレス機構330は、帯状の集電体21Xに固定された枠体4の枠内全域において活物質22Xを充填させる。第1圧縮ローラ331と第2圧縮ローラ332との間の隙間は、図示しない隙間調節機構により調節することができる。高さ調節機構333は、ロールプレス機構330の高さを調節するものである。本実施形態における高さ調節機構333は、チャンバー本体210の床部205に対する第1圧縮ローラ331および第2圧縮ローラ332の高さを調節するものであり、構成は上記高さ調節機構313と同様の構成である。
【0055】
カット機構340は、帯状の集電体21Xを切断し、帯状の集電体21Xから枠体4の枠内に活物質22Xが充填された単体の集電体21Xを生成、すなわち電極2を製造するものである。カット機構340は、ロールプレス機構330よりも搬送方向Xにおいて下流側に設置され、搬送方向Xにおいてロールプレス機構330と隣り合う。カット機構340は、搬送台載置テーブル341と、カット治具342と、高さ調節機構343とを有する。搬送台載置テーブル341は、チャンバー本体201の床部205に固定されており、帯状の集電体21Xがカットされる際に、搬送台344を介して帯状の集電体21Xを支持するものである。カット治具342は、例えば、搬送方向における両端部に帯状の集電体21Xをカットするための刃が設けられており、図示しない駆動源により、搬送台344上の帯状の集電体21Xに向かって接近することで、枠体4を搬送台344側に押圧しつつ、刃により帯状の集電体21Xを枠体4の搬送方向における両端部において切断するものである。本実施形態におけるカット治具342は、搬送台載置テーブル341に設置されている。高さ調節機構343は、カット機構340の高さを調節するものである。本実施形態における高さ調節機構343は、チャンバー本体210の床部205に対する搬送台載置テーブル341およびカット治具342の高さを調節するものであり、構成は上記高さ調節機構313と同様の構成である。なお、製造された電極2は、搬送台344に載置された状態で、図示しない搬送台搬送機構により、カット機構340の下流側に位置する図示しない保管部まで搬送され、図示しないロボットアームなどにより、保管部において保管される。搬送台344は、保管部において電極2が保管されると、搬送台搬送機構により再びカット機構340の搬送台載置テーブル341に空の状態で載置される。
【0056】
投光器400は、搬送方向Xにおいて隣り合う2つの対象作業機構300に向けて光を出射するものである。本実施形態における投光器400は、搬送方向Xにおいて隣り合う活物質供給機構320とロールプレス機構330との間に配置され、チャンバー本体201の床部205に固定されている。投光器400は、図3に示すように、枠体供給機構310、活物質供給機構320、ロールプレス機構330およびカット機構340に対して光を出射するものである。投光器400は、発光部401~404を有し、チャンバー本体201の床部205に固定されている。発光部401~404は、枠体供給機構310、活物質供給機構320、ロールプレス機構330およびカット機構340にそれぞれ対応するものである。発光部401は枠体供給機構310に向けて光L1を出射し、発光部402は活物質供給機構320に向けて光L2を出射し、発光部403はロールプレス機構330に向けて光L3を出射し、発光部404はカット機構340に向けて光L4を出射するものである。本実施形態における発光部401~404は、例えばレーザー発光素子を有しており、指向性を有するレーザー光を光として出射するものである。発光部401,402は、搬送方向Xにおいて投光器400の上流側の対象作業機構300に向けて複数の光L1,L2を出射するものであり、投光器400の搬送方向Xと反対方向における側面に設けられている。発光部403,404は、搬送方向Xにおいて投光器400の下流側の対象作業機構300に向けて複数の光L3,L4を出射するものであり、投光器400の搬送方向Xにおける側面に設けられている。
【0057】
受光センサ500は、投光器400からの光を受光するものである。本実施形態における受光センサ500は、投光器400から出射される光が図示しない受光面に対して高さ方向Zにおいてどの位置で受光されているかを検出することができる。受光センサ500は、図2に示すように、出力部600と電気的に接続されており、受光センサ500の検出信号が出力部600に入力される。受光センサ500は、各対象作業機構300にそれぞれ設けられている。受光センサ501は、図3に示すように、枠体供給機構310、本実施形態ではセンサ支持部314を介して枠体供給テーブル311に設けられており、発光部401からの光L1を受光し、投光器400に対する枠体供給機構310の高さ方向Zにおけるずれ量H1(非減圧時に対する減圧時の変化量)を出力信号として出力部600に出力する。受光センサ502は、活物質供給機構320、本実施形態ではセンサ支持部314よりも幅方向Yの長さが短いセンサ支持部324を介して活物質供給テーブル321に設けられており、発光部402からの光L2を受光し、投光器400に対する活物質供給機構320の高さ方向Zにおけるずれ量H2を出力信号として出力部600に出力する。受光センサ503は、ロールプレス機構330、本実施形態ではセンサ支持部335を介してローラ支持部334に設けられており、発光部403からの光L3を受光し、投光器400に対するロールプレス機構330の高さ方向Zにおけるずれ量H3を出力信号として出力部600に出力する。受光センサ504は、カット機構340、本実施形態ではセンサ支持部335よりも幅方向Yの長さが長いセンサ支持部345を介して搬送台載置テーブル341に設けられており、発光部404からの光L4を受光し、投光器400に対するカット機構340の高さ方向Zにおけるずれ量H4を出力信号として出力部600に出力する。受光センサ501~504は、非減圧状態の内部空間Sにおいて、同一平面上に配置されている。受光センサ501,502は、複数の光L1,L2の出射方向、すなわち搬送方向Xと反対方向から見た場合に、幅方向Yにおいて離間して設けられている。受光センサ503,504は、複数の光L3,L4の出射方向、すなわち搬送方向Xと反対方向から見た場合に、幅方向Yにおいて離間して設けられている。従って、上流側において搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構300(枠体供給機構310、活物質供給機構320)に対して投光器400が出射する複数の光L1,L2が互いに干渉することなく、光L1,L2を受光センサ501,502により受光することができる。また、下流側において搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構300(ロールプレス機構330、カット機構340)に対して投光器400が出射する複数の光L3,L4が互いに干渉することなく、光L3,L4を受光センサ503,504により受光することができる。従って、対象作業機構300ごとに投光器400を設けずに、1つの投光器400により上流側の複数の対象作業機構300に向けて光L1,L2を出射することができ、1つの投光器400により下流側の複数の対象作業機構300に向けて光L3,L4を出射することができる。これにより、内部空間Sに配置する投光器400の数を減らすことができ、電池用電極製造装置100の製造コストを抑制することができる。
【0058】
出力部600は、受光センサ500により受光した投光器400からの光L1~L4に基づいて、減圧時における搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構300の相対位置に関する情報である相対位置情報Pをチャンバー200の外部に出力するものである。出力部600は、外部機器700と有線または無線の少なくともいずれか一方により電気的に接続されている。本実施形態における出力部600は、減圧時における搬送方向Xにおいて隣り合う枠体供給機構310および活物質供給機構320の相対位置情報P1、減圧時における搬送方向Xにおいて隣り合う活物質供給機構320およびロールプレス機構330の相対位置情報P2、減圧時における搬送方向Xにおいて隣り合うロールプレス機構330およびカット機構340の相対位置情報P3を外部に出力するものである。本実施形態における相対位置情報P1は、搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構の高さ方向Zにおけるずれ量である。出力部600は、受光センサ501および受光センサ502から入力されたずれ量H1およびずれ量H2に基づいて、枠体供給機構310および活物質供給機構320の高さ方向Zにおける相対ずれ量H12を算出し、相対ずれ量H12を相対位置情報P1として外部機器700に出力する。出力部600は、受光センサ502および受光センサ503から入力されたずれ量H2およびずれ量H3に基づいて、活物質供給機構320およびロールプレス機構330の高さ方向Zにおける相対ずれ量H23を算出し、相対ずれ量H23を相対位置情報P2として外部機器700に出力する。出力部600は、受光センサ503および受光センサ504から入力されたずれ量H3およびずれ量H4に基づいて、ロールプレス機構330およびカット機構340の高さ方向Zにおける相対ずれ量H34を算出し、相対ずれ量H34を相対位置情報P3として外部機器700に出力する。なお、出力部600のハードウェア構成は、通信部、処理部などを備える既知のハードウェア構成と同等であるのでその説明は省略する。
【0059】
外部機器700は、相対位置情報Pをチャンバー200の外部にいる作業員に報知するものである。本実施形態における外部機器700は、相対位置情報P1~P3を作業員が視認可能なように表示する図示しない表示部を有する。なお、外部機器700のハードウェア構成は、表示部、通信部、処理部などを備える既知のハードウェア構成と同等であるのでその説明は省略する。
【0060】
次に、電池用電極製造装置100内の作業機構の位置検出方法について説明する。ここで、対象作業機構300は、非減圧状態の内部空間Sにおいて、搬送方向Xにおいて帯状の集電体21Xが一直線状すなわち平坦となるように、チャンバー200に対して設置されている。つまり、対象作業機構300は、チャンバー200が非作動状態において、ずれ量H1~H4が0、および相対ずれ量H12~H34が0となるように、内部空間Sに設置されている。
【0061】
まず、電池用電極製造装置100は、減圧工程を実行する(ST1)。ここでは、チャンバー200の内部空間Sは、減圧ポンプ202により大気圧よりも減圧され、チャンバー200が減圧状態となる。なお、電池用電極製造装置100は、チャンバー200が減圧状態であれば、チャンバー200が電極2を製造していない状態でも、電極2を製造している状態であってもよい。
【0062】
次に、電池用電極製造装置100は、相対位置検出工程を実行する(ST2)。ここでは、減圧状態の内部空間Sに配置されている投光器400は、光L1~L4を出射し、受光センサ500が光L1~L4を受光する。受光センサ500は、光L1~L4を受光することで、減圧時におけるずれ量H1~H4が出力部600に出力する。
【0063】
次に、電池用電極製造装置100は、相対位置情報出力工程を実行する(ST3)。ここでは、出力部600は、ずれ量H1~H4に基づいて、相対ずれ量H12である相対位置情報P1、相対ずれ量H23である相対位置情報P2、および相対ずれ量H23である相対位置情報P3を算出し、算出された各相対位置情報P1~P3を外部機器700に出力する。
【0064】
次に、作業員は、作業機構校正工程を実行する(ST4)。ここでは、作業員は、各相対位置情報P1~P3を視認し、搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構300の相対ずれ量が0となるように修正する。具体体には、作業員は、減圧時における相対ずれ量H12が0ではない場合に、減圧ポンプ202による減圧が終了されたのち、枠体供給機構310の高さ調節機構313および活物質供給機構320の高さ調節機構323の少なくともいずれか1を操作することで、減圧時における相対ずれ量H12が0となるように、枠体供給機構310および活物質供給機構320の少なくとも一方のチャンバー200に対する高さを調節する。また、作業員は、減圧時における相対ずれ量H23が0ではない場合に、減圧ポンプ202による減圧が終了されたのち、活物質供給機構320の高さ調節機構323およびロールプレス機構330の高さ調節機構333の少なくともいずれか1を操作することで、減圧時における相対ずれ量H23が0となるように、活物質供給機構320およびロールプレス機構330の少なくとも一方のチャンバー200に対する高さを調節する。また、作業員は、減圧時における相対ずれ量H34が0ではない場合に、減圧ポンプ202による減圧が終了されたのち、ロールプレス機構330の高さ調節機構333およびカット機構340の高さ調節機構343の少なくともいずれか1を操作することで、減圧時における相対ずれ量H34が0となるように、ロールプレス機構330およびカット機構340の少なくとも一方のチャンバー200に対する高さを調節する。
【0065】
以上のように、本実施形態では、チャンバー200の減圧時における搬送方向Xに隣り合う対象作業機構300の相対位置情報P、すなわち隣り合う対象作業機構300の高さ方向Zにおける相対ずれ量H12~H34を外部に出力することができる。つまり、電池用電極製造装置が電極2を製造する作動時におけるチャンバー200の変形に基づいた搬送方向Xに隣り合う対象作業機構300の相対位置の変化を外部に出力することができる。これにより、相対位置情報Pに基づいて搬送方向Xに隣り合う対象作業機構300の相対位置の変化を減少させるように、搬送方向Xに隣り合う対象作業機構300の相対位置を修正することで、内部空間Sにおいて帯状の集電体21Xを安定的に搬送することができ、製造される電極2の歩留まり向上を図ることができる。
【0066】
また、本実施形態では、搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構300、活物質供給機構320およびロールプレス機構330の間に投光器400が配置され、かつ、上流側の活物質供給機構320および下流側のロールプレス機構330に向けて光L2,L3を出射する。従って、対象作業機構300ごとに投光器400を設けずに、1つの投光器400により複数の対象作業機構300に向けて光L2,L3を出射することができる。これにより、内部空間Sに配置する投光器400の数を減らすことができ、電池用電極製造装置100の製造コストを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構に活物質供給機構320およびロールプレス機構330が含まれ、電極2の製造において電極2の品質に最も影響を与える活物質供給機構320およびロールプレス機構330間で、帯状の集電体21Xを安定的に搬送することができることになるので、製造される電極2の歩留まり向上をさらに図ることができる。
【0068】
また、本実施形態では、各対象作業機構310~340にそれぞれ高さ調節機構313~343が設けられ、各対象作業機構310~340のチャンバー200に対する高さをそれぞれ個別に調節することができる。従って、相対ずれ量H12~H34に基づいた各対象作業機構310~340の高さの微調節を行うことができる。
【0069】
なお、本実施形態における各高さ調節機構313~343は、手動により各対象作業機構310~340のチャンバー200に対する高さを調節するがこれに限定されるものではない。例えば、高さ調節機構313~343は、図示しないアクチュエータにより、各対象作業機構300の高さを調節してもよい。この場合、各高さ調節機構313~343の図示しないアクチュエータは、出力部600と電気的に接続されており、相対位置情報P1に基づいて枠体供給機構310および活物質供給機構320のずれ量H12が減少するように、相対位置情報P2に基づいて活物質供給機構320およびロールプレス機構330のずれ量H23が減少するように、相対位置情報P3に基づいてロールプレス機構330およびカット機構340のすれ量H34が減少するように、チャンバー200に対する各対象作業機構310~340の高さを調整してもよい。各高さ調節機構313~343は、電池用電極製造装置100の作動時において常時、または定期的(所定時間、所定期間)にチャンバー200に対する各対象作業機構310~340の高さを調整してもよい。
【0070】
また、本実施形態における各受光センサ501~504は、各対象作業機構310~340にそれぞれ1つ設けられているが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、各対象作業機構310~340に対して複数の受光センサ501~508が設けられていてもよい。
【0071】
投光器400は、発光部401~404と、さらに発光部405~408を有する。発光部405は枠体供給機構310に向けて光L5を出射し、発光部406は活物質供給機構320に向けて光L6を出射し、発光部407はロールプレス機構330に向けて光L7を出射し、発光部408はカット機構340に向けて光L8を出射するものである。発光部405,406は、幅方向から見た場合において、投光器400の搬送方向Xと反対方向における側面のうち、帯状の集電体21Xを挟んで、発光部401,402と対向して設けられている。発光部407,408は、幅方向から見た場合において、投光器400の搬送方向Xにおける側面のうち、帯状の集電体21Xを挟んで、発光部403,404と対向して設けられている。
【0072】
受光センサ505は、枠体供給機構310、本実施形態ではセンサ支持部315を介してロボットアーム312に設けられており、発光部405からの光L5を受光し、枠体供給機構310の高さ方向Zにおけるずれ量H5を出力信号として出力部600に出力する。受光センサ506は、活物質供給機構320、本実施形態ではセンサ支持部315よりも幅方向Yの長さが短いセンサ支持部325を介して塗設機構322に設けられており、発光部406からの光L6を受光し、投光器400に対する活物質供給機構320の高さ方向Zにおけるずれ量H6を出力信号として出力部600に出力する。受光センサ507は、ロールプレス機構330、本実施形態ではセンサ支持部336を介して、ローラ支持部334のうち、幅方向から見た場合において受光センサ503が設けられている側と反対側に設けられており、発光部407からの光L7を受光し、投光器400に対するロールプレス機構330の高さ方向Zにおけるずれ量H7を出力信号として出力部600に出力する。受光センサ508は、カット機構340、本実施形態ではセンサ支持部336よりも幅方向Yの長さが長いセンサ支持部346を介してカット治具342に設けられており、発光部408からの光L8を受光し、投光器400に対するカット機構340の高さ方向Zにおけるずれ量H8を出力信号として出力部600に出力する。受光センサ505~509は、非減圧状態の内部空間Sにおいて、同一平面上に配置されている。受光センサ505,506は、搬送方向Xと反対方向から見た場合に、幅方向Yにおいて離間して設けられている。受光センサ507,508は、幅方向Yにおいて離間して設けられている。
【0073】
出力部600は、受光した投光器400からの光L1~L8に基づいて、各相対位置情報P1~P3をチャンバー200の外部に出力するものである。出力部600は、ずれ量H1およびずれ量H2に基づいて算出された相対ずれ量H12と、ずれ量H5およびずれ量H6に基づいて算出された相対ずれ量H56とに基づいて算出(例えば、平均化)された相対ずれ量H1256を算出し、相対ずれ量H1256を相対位置情報P1として外部機器700に出力する。出力部600は、ずれ量H2およびずれ量H3に基づいて算出された相対ずれ量H23と、ずれ量H6およびずれ量H7に基づいて算出された相対ずれ量H67とに基づいて算出(例えば、平均化)された相対ずれ量H2367を算出し、相対ずれ量H2367を相対位置情報P2として外部機器700に出力する。出力部600は、ずれ量H3およびずれ量H4に基づいて算出された相対ずれ量H34と、ずれ量H7およびずれ量H8に基づいて算出された相対ずれ量H78とに基づいて算出(例えば、平均化)された相対ずれ量H3478を算出し、相対ずれ量H3478を相対位置情報P3として外部機器700に出力する。出力部600は、1つの対象作業機構300に対して、複数の受光センサ500を設け、複数の受光センサ500から受光した投光器400からの光L1~L8に基づいた相対位置情報P1~P3を外部に出力するので、電池用電極製造装置が電極2を製造する作動時におけるチャンバー200の変形に基づいた搬送方向Xに隣り合う対象作業機構300の相対位置の詳細な変化を外部に出力することができる。
【0074】
また、本実施形態における各相対位置情報P1~P3は、搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構300の高さ方向Zにおけるずれ量であるが、これに限定されるものではなく、搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構300の幅方向Yにおけるずれ量を含めてもよい。この場合、高さ調節機構313~343は、各対象作業機構310~340のチャンバー200に対する高さを調節するだけではなく、各相対位置情報P1~P3に基づいて搬送方向Xにおいて隣り合う対象作業機構300の幅方向における相対位置を調整してもよい。
【0075】
また、本実施形態における枠体供給機構310は、内部空間Sに配置されるがこれに限定されるものではなく、チャンバー200の外部に設けられていてもよい。この場合、帯状の集電体21Xは、枠体4が固定された状態で、内部空間Sに搬入される。
【0076】
また、本実施形態における出力部600は、相対位置情報P1~P3を表示する図示しない表示部を有していてもよい。チャンバー200には、出力部600の図示しない表示部を外部から視認できる窓が形成されており、作業員は外部機器700を用いずに、窓を介して、出力部600が出力する相対位置情報P1~P3を視認することができる。
【0077】
また、本実施形態においては、基材フィルムとして集電体21Xの場合を説明したが、これに限定されるものではない。基材フィルムは、集電体21Xの他に、セパレータ3、または、転写用のフィルムであってもよい。基材フィルムがセパレータ3の場合は、帯状のセパレータ3がチャンバー200内に搬入され、枠体供給機構310により枠体4が固定され、活物質供給機構320により活物質22Xが枠体4の枠内に供給され、ロールプレス機構330により搬送された帯状のセパレータ3上の活物質22Xが圧縮され、カット機構340により帯状のセパレータ3が切断され、帯状のセパレータ3から枠体4の枠内に活物質22Xが充填された単体のセパレータ3を生成することとしてもよい。また、基材フィルムが転写フィルムの場合は、帯状の転写フィルムがチャンバー200内に搬入され、転写フィルム上にマスクなど内部に活物質を形成できる空間のあるものが載置され、その内部に活物質供給機構320により活物質22Xが供給され、ロールプレス機構330により搬送された帯状の転写フィルム上の活物質22Xが圧縮され、カット機構340により帯状の転写フィルムが切断される、としてもよい。転写フィルム上に形成された活物質層(電極)が、集電体又は枠体4が載置された集電体(枠付き集電体)上に転写されることで、集電体上に電極が形成される。その際の枠体4の設置は、電極形成前又は電極形成後のいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1:単電池、 2:電極、 2a:正極、 2b:負極 21:集電体層、
21a:正極集電体層、 21b:負極集電体層、 21X:集電体、
22:電極活物質層、 22a:正極活物質層、 22b:負極集電体層、
22X:活物質、 3:セパレータ、 4:枠体
100:電池用電極製造装置、 200:チャンバー、300:対象作業機構、
310:枠体供給機構、 320:活物質供給機構、 330:ロールプレス機構、
340:カット機構、 400:投光器、 500:受光センサ、 600:出力部、
700:外部端末
図1
図2
図3
図4
図5