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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157589
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20221006BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20221006BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20221006BHJP
   C09J 7/10 20180101ALN20221006BHJP
   C09J 133/08 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/04
H05K9/00 M
H05K9/00 W
C09J7/10
C09J133/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061897
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】正木 克枝
(72)【発明者】
【氏名】石井 陽奈子
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5E321
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA07
4J004DA04
4J004DB02
4J004FA05
4J040DF041
4J040HA166
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040LA09
4J040NA19
5E321AA23
5E321BB32
5E321BB44
5E321BB51
5E321BB60
5E321CC16
5E321GG11
(57)【要約】
【課題】粘着性及び一定の比誘電率を備えることで、電磁波吸収体用などとして好適に使用できる粘着テープを提供すること。
【解決手段】本発明は、粘着剤層を備え比誘電率が3.5以上の粘着テープである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を備え、比誘電率が3.5以上である粘着テープ。
【請求項2】
粘着力が0.5N/25mm以上である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層が、粘着剤層全量基準で無機系誘電性材料を20質量%以上含有する、請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記無機系誘電性材料がチタン酸バリウムである、請求項3に記載の粘着テープ。
【請求項5】
厚みが10~500μmである、請求項1~4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層がアクリル系粘着剤により構成されている、請求項1~5のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層のみからなる、請求項1~6のいずれかに記載の粘着テープ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な技術分野において、両面粘着テープが使用されている。例えば、携帯電話などの携帯電子機器やタッチパネルなどの分野において、各種部材間の固定に両面粘着テープが使用されている。
【0003】
ところで、近年、多くの電子機器類が無線で通信するようになってきており、ノイズ対策の観点から、電磁波吸収体が注目されている。
例えば特許文献1では、「高分子フィルムからなる誘電体層と、誘電体層の一方の面に酸化インジウムスズを主成分とする抵抗層と、誘電体層の他方の面に上記抵抗層より低いシート抵抗の導電層とを有する電磁波吸収体であって、前記酸化インジウムスズに含まれる酸化スズが20~40重量%である電磁波吸収体」に関する発明が記載されている。そして、高分子フィルムからなる誘電体層が、一定の比誘電率を有すると、電磁波吸収効果に優れる電磁波吸収体とすることができる旨記載されている。
また、特許文献2には、高い誘電率を備える誘電性シートとして、有機樹脂マトリックス内に、フィラーが樹枝状に凝集し厚み方向に配向しているシート状複合材料からなり、フィラーとして誘電性無機粒子及び誘電性無機繊維のうち少なくとも1種を含有する、誘電性シートに関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-112373号公報
【特許文献2】特開2007-332224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した誘電体層や誘電性シートとして使用されているものは、高分子フィルムやシートなどであり、粘着性を備えないものである。
粘着性有し、かつ一定の比誘電率を有する粘着シートであれば、例えば電磁波吸収体に使用する際に、導電層や抵抗層などの電磁波吸収体を構成する各種部材を固定することができ、かつ電磁波吸収効果を高めることが期待できる。一方で、粘着シートの比誘電率を一定以上に高める場合は、粘着性が低下してしまう傾向があり、粘着性及び一定の比誘電率を有する粘着シートを製造するのは技術上の困難性があった。
そこで、本発明では、粘着性及び一定の比誘電率を備えることで、電磁波吸収体用などとして好適に使用できる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、粘着剤層を備え、比誘電率が3.5以上である粘着テープによって、上記課題が解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]粘着剤層を備え、比誘電率が3.5以上である粘着テープ。
[2]粘着力が0.5N/25mm以上である、上記[1]に記載の粘着テープ。
[3]前記粘着剤層が、粘着剤層全量基準で無機系誘電性材料を20質量%以上含有する、上記[1]又は[2]に記載の粘着テープ。
[4]前記無機系誘電性材料がチタン酸バリウムである、上記[3]に記載の粘着テープ。
[5]前記粘着剤層の厚みが10~500μmである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の粘着テープ。
[6]前記粘着剤層がアクリル系粘着剤により構成されている、上記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着テープ。
[7]前記粘着剤層のみからなる、上記[1]~[6]のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粘着性及び一定の比誘電率を備えることで、電磁波吸収体用などとして好適に使用できる粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、粘着剤層を備え、比誘電率が3.5以上である。
【0009】
(比誘電率)
本発明の粘着テープは、比誘電率が3.5以上である。比誘電率が3.5未満であると、例えば、電磁波吸収体用として使用したときに、所望の電磁波吸収効果を得られ難くなる傾向がある。粘着テープの比誘電率は、好ましくは3.7以上であり、さらに好ましくは4以上であり、そして実用上は50以下である。
粘着テープの比誘電率は、粘着剤層の組成により調整することができ、例えば、粘着剤層に含有される後述する無機系誘電性材料の種類及び量などにより調整できる。
粘着テープの比誘電率は、23℃、測定周波数10GHzにおいて、空洞共振器摂動法により測定することができる。
【0010】
本発明の粘着テープの粘着力は、0.5N/25mm以上である。0.5N/25mm以上であると、粘着力及び一定の比誘電率を備えた粘着テープとして有用であり、例えば電磁波吸収体を構成する各部材を、他の粘着性材料及び接着性材料を用いることなく固定化することができる。粘着テープの粘着力は、好ましくは10N/25mm以上であり、より好ましくは20N/25mm以上であり、そして実用上は50N/25mm以下である。
粘着テープの粘着力は、粘着剤層の組成、厚みなどにより調整することができる。
なお、上記粘着力は90°ピール粘着力を意味し、JIS Z0237に準じて測定される。具体的には、実施例に記載の方法で測定される。
【0011】
[粘着剤層]
本発明の粘着テープは、粘着剤層を備える粘着テープであり、基材の両面に粘着剤層が設けられた両面粘着テープであってもよいし、基材の片面に粘着剤層が設けられた片面粘着テープであってもよいし、基材を含まない粘着テープであってもよい。基材を含まない粘着テープは、粘着剤層単体からなるものであるため、両面粘着テープの概念に含まれる。
この中でも、両面粘着テープが好ましく、両面粘着テープの中でも、比誘電率の調整のし易さ、製造上の容易性の観点から、粘着剤層のみからなる粘着テープ(基材を含まない両面粘着テープ)がより好ましい。
粘着テープの基材としては、不織布、和紙等の紙、天然繊維、合成繊維等からなる織布、ポリエステル、ポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、アセテート等からなる樹脂フィルム、フラットヤーンクロスなどが挙げられる。
【0012】
<無機系誘電性材料>
本発明における粘着剤層は、無機系誘電性材料を含むことが好ましい。無機系誘電性材料を含むことにより、粘着テープの比誘電率を上記した所望の範囲に調整しやすくなる。
粘着剤層中の無機系誘電性材料の含有量は、粘着剤層全量基準で、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、そして好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下である。
粘着剤層中の無機系誘電性材料の含有量がこれら下限値以上であると、粘着テープの比誘電率を上記した所望の範囲に調整しやすくなり、これら上限値以下であると粘着テープの粘着力を上記した所望の範囲に調整しやすくなる。
【0013】
無機系誘電性材料としては、誘電特性を有する無機材料であれば特に制限されず、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ストロンチウム、ジルコン酸チタン酸鉛、タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム、ビスマスフェライトなどが挙げられ、中でもチタン酸バリウムが好ましい。チタン酸バリウムを用いると、少量で比誘電率を所望の範囲に調整できる。そのため、粘着力を高めつつ、比誘電率を一定以上に調整することが可能となる。また、後述するアクリル系粘着剤を用いつつ、チタン酸バリウムを用いることで、粘着力及び比誘電率の高い粘着テープを得やすくなる。
【0014】
[粘着剤]
粘着テープの粘着剤層を構成する粘着剤は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びシリコーン系粘着剤などが挙げられる。これらは単独で使用してよいし、組み合わせて使用してもよい。これらの中では、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。アクリル系粘着剤は、後述するように重合性モノマーを含む粘着剤組成物に光を照射して形成されるため、厚みが均一になりやすく、所定の比誘電率及び厚みの粘着テープが得やすくなる。
【0015】
<アクリル系粘着剤>
以下、粘着剤層を構成するアクリル系粘着剤の一実施形態についてより詳細に説明する。アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)を含む重合性モノマーを重合したアクリル系重合体を含有する粘着剤である。
なお、本明細書において、用語「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、アクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸アルキルエステルの両方を含む概念を指すものであり、他の類似の用語も同様である。また、用語「重合性モノマー」は、繰り返し単位を有しない化合物のみならず、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)と共重合する化合物であれば、後述するオレフィン重合体(C)などのモノマー自身が繰り返し単位を有するものも含みうる概念を指す。
【0016】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)>
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)は、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステルであって、脂肪族アルコールのアルキル基の炭素数が、好ましくは2~14、より好ましくは4~10である脂肪族アルコールに由来するアルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数がこの範囲内であると、粘着剤層のガラス転移温度(Tg)を適切な温度範囲にして、粘着力を上記した範囲に調整しやすくなる。
【0017】
具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート又はこれらの組み合わせがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位は、粘着剤において主成分を構成するものであって、その含有量は、粘着剤全量基準で一般的に30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。このように、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)の含有量を多くすると、粘着剤に所望の粘着力を付与することが可能になる。
なお、粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位の含有量は、後述する粘着剤組成物における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)の含有量と実質的に同じであるので、置き換えて表すことができる。以下で説明する(B)(C)成分など、(A)成分以外の成分も同様である。
【0019】
<極性基含有ビニルモノマー(B)>
重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)に加えて、極性基含有ビニルモノマー(B)を含有することが好ましい。極性基含有ビニルモノマー(B)は、極性基とビニル基を有するものである。粘着剤層に極性基含有モノマー(B)を用いることで、粘着剤層の粘着力などを調整しやすくなる。
極性基含有ビニルモノマー(B)としては、例えば、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、及びその無水物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等の窒素含有ビニルモノマーが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸、及びその無水物が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸がさらに好ましい。これらの極性基含有ビニルモノマー(B)は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
極性基含有ビニルモノマー(B)を使用する場合、粘着剤において極性基含有ビニルモノマー(B)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは1~15質量部、より好ましくは2~12質量部、さらに好ましくは3~10質量部である。極性基含有ビニルモノマー(B)の含有量をこのような範囲内とすることで粘着剤層の、凝集力、粘着力などを制御でき、粘着テープの粘着力を上記範囲に調整しやすくなる。
【0021】
<オレフィン重合体(C)>
重合性モノマーは、さらに末端に重合性結合を有するオレフィン重合体(C)を含むことが好ましい。このようなオレフィン重合体(C)を使用することで、粘着テープの粘着力を上記した所望の範囲に調整しやすくなる。なお、重合性結合は、重合性モノマーと重合することが可能な不飽和の炭素-炭素結合を意味し、例えば不飽和二重結合が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
オレフィン重合体(C)としては、(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンが挙げられ、例えば、片末端のみに(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィン、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンが挙げられる。なお、ポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、イソプレンなどの二重結合を有する脂肪族炭化水素化合物の重合体、又はその水素添加物である。
【0022】
片末端のみに(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンとしては、例えば、片末端にエポキシ基を有するポリエチレンと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより調製された、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエチレン等が挙げられる。また、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン又はその水素添加物が挙げられ、その市販品として株式会社クラレ製の「L-1253」等が挙げられる。
【0023】
また、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するオレフィン重合体としては、例えば、両末端にエポキシ基を有するポリプロピレンと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより調製された、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリプロピレン等が挙げられる。また、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン又はその水素添加物が挙げられ、その市販品としては、日本曹達株式会社製の「TEAI-1000」、「EA-3000」、「TE-2000」、大阪有機化学工業株式会社製の「BAC-45」等が挙げられる。
オレフィン重合体(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
オレフィン重合体(C)としては、上記した中では、両末端又は片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンが好ましく、中でも両末端又は片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリブタジエン又はその水素添加物が好ましい。
なお、オレフィン重合体(C)として、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオレフィンなどを使用すると、アクリル系重合体を網目状に重合することが可能となる。そのため、粘着剤の凝集力を高めやすくなり、粘着力を上記所望の範囲に調整しやすくなる。
【0025】
オレフィン重合体(C)は、その数平均分子量が好ましくは500~20000、より好ましくは1000~10000である。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出すればよい。
また、粘着剤においてオレフィン重合体(C)由来の構成単位の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、4~12質量部がさらに好ましい。
【0026】
<多官能モノマー(D)>
重合性モノマーは、多官能モノマー(D)を含有することが好ましい。多官能モノマー(D)を含有させることで、重合時に分子鎖が架橋されて、粘着剤層の粘着力を高めることができる。
多官能モノマー(D)としては、ビニル基を2つ以上有するモノマーが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
具体的な多官能モノマーとしては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジアクリレート等が挙げられる。
具体的な商品としては、例えば、日本曹達製TEAI-1000、新中村化学製NKエステルA-HD-N(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート)などが挙げられる。
多官能モノマー(D)を使用する場合、多官能モノマー由来の構成単位の含有量は、粘着剤層の貯蔵弾性率を所望の範囲に調整する観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、0.3~15質量部、より好ましくは0.4~5質量部、さらに好ましくは0.5~3質量部である。
【0027】
<その他のモノマー>
重合性モノマーは、上記した(A)~(D)以外のその他のモノマーを含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、スチレン系モノマーなどが挙げられる。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、及びp-メチルスチレン等が挙げられる。
【0028】
<粘着付与樹脂>
アクリル系粘着剤は、粘着力を向上させる観点から、粘着付与樹脂を含有してもよい。粘着付与樹脂としては、水添テルペン樹脂、水添ロジン、不均化ロジン樹脂、石油樹脂等の重合阻害性の低い粘着付与樹脂が好ましい。これらの中でも、粘着付与樹脂が二重結合を多く有していると重合反応を阻害することから、水添系のものが好ましく、中でも水添石油樹脂が好ましい。
粘着付与樹脂の軟化点は、粘着剤の凝集力及び粘着力を向上させる観点から、95℃以上程度であればよいが、120℃以上のものを含むことが好ましく、例えば、95℃以上120℃未満のものと、120℃以上150℃以下のものとを併用してもよい。なお、軟化点は、JISK2207に規定される環球法により測定すればよい。
アクリル系粘着剤における粘着付与樹脂の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは5~40質量部、より好ましくは7~35質量部、さらに好ましくは10~25質量部である。
【0029】
<微粒子>
アクリル系粘着剤は、微粒子を含有してもよい。微粒子を含有させることで、被着体に対する粘着力、並びに、粘着剤の凝集力を向上させることができる。
微粒子としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、及びフライアッシュバルーン等の無機質中空粒子、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、及びフェノール樹脂等からなる有機質中空粒子、ガラスビーズ、シリカビーズ、及び合成雲母等の無機質微粒子、ポリアクリル酸エチル、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレン等の有機質微粒子が挙げられる。
アクリル系粘着剤における微粒子の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(A)由来の構成単位100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部である。
【0030】
<その他の成分>
本発明において用いるアクリル系粘着剤は、前述した成分以外にも、可塑剤、軟化剤、顔料、染料、光重合開始剤、難燃剤等の粘着剤に従来使用されている各種の添加剤を含有してもよい。
【0031】
粘着剤層を構成する粘着剤は、アクリル系粘着剤を使用する場合には、上記した重合性モノマーを含む粘着剤組成物に光を照射して、重合性モノマーを重合させることで得ることが可能である。また、粘着剤組成物は、必要に応じて上記した粘着付与樹脂、微粒子、及びその他の成分の少なくとも1種を含んでいてもよい。
より具体的に説明すると、まず、重合性モノマー、さらに必要に応じて配合される粘着付与樹脂、微粒子、その他の成分を、ガラス容器等の反応容器に投入して混合して、粘着剤組成物を得る。
次いで、粘着剤組成物中の溶存酸素を除去するために、一般に窒素ガス等の不活性ガスを供給して酸素をパージする。そして、粘着剤組成物を剥離シート上に塗布するか、又は、樹脂フィルム、織布、不織布等の支持体などに塗布した後、光を照射し重合性モノマーを重合することにより粘着剤層を得ることができる。
前記粘着剤組成物の塗布もしくは含浸から光を照射する工程までは、不活性ガス雰囲気下、又はフィルム等により酸素が遮断された状態で行うことが好ましい。
なお、本製造方法では、各成分を混合して得た粘着剤組成物は、粘度を高くするために、剥離シート又は支持体などに塗布する前に予備重合をしてもよい。
【0032】
粘着剤組成物に光を照射する際に用いることができるランプとしては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。これらの中でも、ケミカルランプが好ましい。粘着剤組成物に対して光を照射する際の光照射強度は、光重合開始剤の有無等によっても異なるが、0.1~100mW/cm2程度が好ましい。
【0033】
<ゴム系粘着剤>
ゴム系粘着剤は、ゴム成分と、粘着付与樹脂を含有するものであり、ゴム成分としては、スチレン-イソプレンブロック共重合体を使用することが好ましい。スチレン-イソプレンブロック共重合体は、ジブロック率が好ましくは25~70質量%、より好ましくは30~65質量%、さらに好ましくは45~60重量%である。ここでジブロックとは、スチレンとイソプレンとからなるジブロックのことをいう。スチレン-イソプレンブロック共重合体は、ジブロック以外にも、スチレン、イソプレン、スチレンブロックからなるトリブロックなどブロックを3つ以上有するものも含有する。
【0034】
スチレン-イソプレンブロック共重合体におけるスチレン量は、特に限定されないが、14~24質量%であることが好ましく、より好ましくは15~18質量%である。スチレン量が14質量%以上であると、凝集性の高い粘着剤となる。また、24質量%以下とすると、凝集力が適度な大きさとなり粘着力を発現しやすくなる。
スチレン-イソプレンブロック共重合体の分子量は、特に限定されないが、質量平均分子量で100,000~400,000が好ましく、150,000~250,000がより好ましい。なお、ここでいう質量平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によりポリスチレン換算分子量として測定されるものをいう。
【0035】
ゴム系粘着剤に使用される粘着付与樹脂は、各種の粘着付与樹脂が使用可能であるが、好ましくは石油系樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂を使用する。粘着系樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、石油系樹脂と、テルペン樹脂及びクマロン樹脂から選択される少なくとも1種とを併用することが好ましい。このような粘着付与樹脂の組み合わせによりピール粘着力を良好にしやすくなる。
石油系樹脂としては、脂肪族系石油樹脂(C5系石油樹脂)、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂等が挙げられ、スチレン-イソプレンブロック共重合体との相溶性の観点から脂肪族系石油樹脂が好ましい。また、石油系樹脂は、軟化点が90~120℃程度のものを使用することが好ましい。
また、テルペン樹脂としては、軟化点が80~120℃程度のものが使用可能であるが、粘着力確保の観点から100℃未満のものが好ましい。また、クマロン樹脂としては、凝集力確保のために、軟化点が好ましくは110~130℃、より好ましくは115~125℃のものを使用する。
【0036】
粘着付与樹脂はゴム成分100質量部に対して60~250質量部が好ましく、100~200質量部がより好ましく、110~180質量部がさらに好ましい。粘着付与樹脂の配合量を上記範囲内とすることで、凝集力を良好にして適度な粘着力を付与できるようになる。
また、石油系樹脂と、テルペン樹脂及びクマロン樹脂から選択される少なくとも1種とを併用する場合、石油系樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、50~200質量部が好ましく、60~150質量部が好ましく、60~110質量部がより好ましい。一方で、テルペン樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、10~70質量部が好ましく、20~60質量部がより好ましく、30~50質量部がさらに好ましい。さらに、クマロン樹脂は、ゴム成分100質量部に対して、10~60質量部が好ましく、15~50質量部がより好ましく、20~40質量部がさらに好ましい。
ゴム系粘着剤は、アクリル系粘着剤と同様に上記した微粒子を含有してもよく、また、ゴム系粘着剤は、必要に応じて、軟化剤、酸化防止剤、充填剤等を含有してもよい。
【0037】
<ウレタン系粘着剤>
上記したウレタン系粘着剤は特に限定されず、例えば、少なくともポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン系樹脂等が挙げられる。上記ポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。上記ポリイソシアネート化合物として、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのウレタン系粘着剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ウレタン系粘着剤としては、ポリウレタンポリオールと多官能イソシアネート系硬化剤とを反応させて得られるウレタン系樹脂を使用してもよい。ポリウレタンポリオールは、上記したポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応したもの、又はポリオールとポリイソシアネート化合物とジアミンなどの鎖延長剤とを反応させたものが挙げられる。多官能イソシアネート系硬化剤としては、2以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、上記したイソシアネート化合物を使用可能である。
ウレタン系粘着剤は、ウレタン系樹脂に加えて、上記した微粒子を含有してもよく、また、ウレタン系粘着剤は、必要に応じて、粘着付与樹脂、軟化剤、酸化防止剤、充填剤等を含有してもよい。
【0038】
<シリコーン系粘着剤>
また、シリコーン系粘着剤としては、例えば、付加反応型、過酸化物硬化型又は縮合反応型のシリコーン系粘着剤等が挙げられる。なかでも、低温短時間で硬化可能という観点から、付加反応型シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。なお、付加反応型シリコーン系粘着剤は粘着剤層の形成時に硬化するものである。シリコーン系粘着剤として、付加反応型シリコーン系粘着剤を用いる場合、上記シリコーン系粘着剤は白金触媒等の触媒を含んでいてもよい。
また、シリコーン系粘着剤は、微粒子を含有してもよく、また、架橋剤、粘着力を制御するための各種添加剤を加えたりしてもよい。
【0039】
<厚み>
本発明における粘着テープの厚みは、好ましくは10~500μmであり、より好ましくは100~450μmであり、さらに好ましくは200~300μmである。粘着テープの厚みがこれら下限値以上であると、2つの部材の間に使用する場合の接着力が高まりやすく、固定しやすくなる。厚みがこれら上限値以下であると、粘着テープの貼り合わせの際の位置調整などが容易になる。さらに、このような厚み範囲であり、かつ上記した所定の比誘電率を有する粘着テープは、電磁波吸収体などに使用した際に、電磁波吸収の効果が高まりやすくなる。
なお、粘着テープの厚さとは、粘着テープが粘着剤層単体からなる場合には、粘着剤層単体の厚さを意味し、基材の一方又は両方の面に粘着剤層が設けられた粘着テープの場合は、基材と粘着剤層とを含む全体の厚さを意味する。
【0040】
<用途>
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、一定の比誘電率と粘着性とを必要とする用途に使用することができ、例えば、電磁波吸収体用など、電磁波吸収体の部材の一部として使用することができる。
【実施例0041】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0042】
各物性の測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
<90°ピール粘着力>
一方の面にPETフィルム(厚さ25μm)を貼り合わせた両面粘着テープを幅25mm×長さ150mmに切断し、その後SUS板を貼り合わせ2kgの圧着ローラーを2往復させて接合し、25℃で24時間放置した。その後、25℃、50%RHの環境下、引張速度300mm/minで90°方向に引っ張ることでピール粘着力として測定した。なお、同様の測定を3回行い、3点平均を90°ピール粘着力とした。
【0043】
<比誘電率>
両面粘着テープの比誘電率は、空洞共振器にアンリツ株式会社製「MS46122B」、ネットワークアナライザー一式に株式会社エーイーティー製「ADMS01Nc1」のTMモードを用いて、空洞共振器摂動法により測定した。測定周波数は10GHzとし、測定温度は23℃とした。なお、比誘電率εrの測定は、JIS C2565に準拠して行い、以下の式により求めた。
比誘電率ε=cd/ε
cは静電容量(F)、dはサンプルの厚さ(m)、εは真空の誘電率(F/m)、Sは電極の面積(m)である。
【0044】
[実施例1~2、比較例1]
表1に記載の配合にしたがって、粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物に窒素をパージして溶存酸素を除去した。次いで、剥離シートの剥離処理面上に厚さ250μmのスペーサーを設置し、粘着剤組成物を剥離シートの剥離処理面上に塗布した。次いで、塗布した粘着剤組成物の上に、剥離処理面が粘着剤組成物に接するように、別の剥離シートを被覆した。なお、剥離シートとしては、シリコーン離型処理されたPETフィルム(厚み50μm)を使用した。
この状態で被覆側の剥離シートにおける紫外線照射強度が5mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、15分間紫外線を照射し、粘着剤層単体からなり、両面に剥離シートが貼付された両面粘着テープを得た。剥離シートを剥離した、粘着剤層単体のみからなる両面粘着テープについて、各種評価を行った。
【0045】
【表1】

※表1における各成分は、以下のとおりである。
オレフィン重合体:商品名「L-1253」、株式会社クラレ製、(メタ)アクリロイル基を片末端に有する水素化ポリブタジエン
多官能アクリレート:日本曹達製TEAI-1000
粘着付与樹脂:商品名「アルコンP140」、荒川化学工業株式会社製、水添石油樹脂、軟化点140℃
チタン酸バリウム:アルモリックス株式会社製「B325」
微粒子:商品名「セルスターZ-27」、東海工業株式会社製、ガラスバルーン
重合開始剤:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン
【0046】
各実施例の粘着テープは、比誘電率が一定以上であり、粘着力にも優れているため、電磁波吸収体用として有用であることが分かった。これに対して、比較例の粘着テープは、比誘電率が実施例に比べ劣る結果となった。