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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157590
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】空燃比制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
F02D45/00 368F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061900
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市橋 哲志
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384BA31
3G384DA04
3G384FA40Z
3G384FA58Z
(57)【要約】
【課題】内燃エンジンの仕様に拘わらず、長期にわたって、正確に空燃比を検出することができる空燃比制御装置を提供する。
【解決手段】空燃比制御装置1は、4サイクル形式の内燃エンジンの排気に接するように設けられた酸素濃度センサからの信号値を読み取り、読み取った信号値VHに基づき、空燃比制御部4により前記排気の空燃比を算出するものである。この算出は、内燃エンジンの排気弁が開いてから閉じられるまでの期間における、前記内燃エンジンのクランク角に対する酸素濃度センサ2からの信号値VHの変化に基づいて、前記排気ではない気体中の酸素に基づく信号値VHを排除し、排除した後の信号値VHに基づいて行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4サイクル形式の内燃エンジンの排気に接するように設けられた酸素濃度センサからの信号値を読み取り、読み取った信号値に基づいて前記排気の空燃比を求める空燃比制御装置であって、
前記内燃エンジンの排気弁が開いてから閉じられるまでの期間における、前記内燃エンジンのクランク角に対する前記酸素濃度センサからの信号値の変化に基づいて前記排気の空燃比を算出することを特徴とする空燃比制御装置。
【請求項2】
前記内燃エンジンのクランク角センサのタイミングパルスに応じて割込み信号を発生する割込み発生部と、
前記割込み信号毎に、前記内燃エンジンにおける圧縮、爆発、排気、吸気の4つの行程に応じて循環するように実行ステージ値を設定する実行ステージ設定部と、
前記酸素濃度センサの信号値を、前記割込み信号に同期して読み取る酸素信号読取部と、
前記割込み信号毎に、読み取った前記信号値を前記実行ステージ値に紐付けしつつ時系列順に記憶する第1記憶部と、
前記割込み信号毎に、前記信号値の変化量を算出する変化量算出部と、
前記変化量に応じて、前記排気が前記酸素濃度センサ付近に供給されるタイミングを決定し、同タイミングに該当する前記実行ステージ値を読取開始ステージ値として設定する読取開始ステージ設定部と、
前記読取開始ステージ値に応じて、内燃エンジンの排気弁が閉じられるタイミングに該当する前記実行ステージ値を読取終了ステージ値として設定する読取終了ステージ設定部と、
前記読取終了ステージ値に前記実行ステージ値の現在値が一致したときに、前記第1記憶部内で前記読取開始ステージ値から前記読取終了ステージ値まで各紐付けされた複数個の前記信号値の第1平均値を求める第1平均値設定部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の空燃比制御装置。
【請求項3】
前記読取開始ステージ設定部は、
前記第1記憶部に記憶される前記信号値の前記変化量について、前記排気行程からの変化量のピーク値を抽出するピーク抽出部と、
前記抽出した変化量のピーク値に基づいて、前記変化量についての閾値を設定する閾値設定部とを有し、
前記変化量が前記閾値を連続して下回るに至る前記実行ステージ値を前記読取開始ステージ値として設定することを特徴とする請求項2に記載の空燃比制御装置。
【請求項4】
前記内燃エンジンの運転状態に応じて、サンプル個数を設定するサンプルサイズ設定部と、
少なくとも前記サンプル個数の前記第1平均値を算出する毎に該第1平均値を順次記憶する第2記憶部と、
前記第2記憶部から、最新の前記第1平均値から前記サンプル個数の前記第1平均値を時系列順に遡って選出し、選出した前記サンプル個数の前記第1平均値の平均値として、第2平均値を求める第2平均値設定部とを有し、
前記第2平均値に基づいて前記排気の空燃比を求めることを特徴とする請求項3に記載の空燃比制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4サイクル形式の内燃エンジンにおける排気の空燃比を酸素濃度センサからの信号値に基づいて求める空燃比制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃エンジンの排気に接するように設けられた酸素濃度センサを用いて得られる空燃比に基づいて、内燃機関に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の空燃比制御装置では、酸素濃度センサの出力をクランク軸の回転に同期しかつエンジンの上死点の周期より短い所定の周期で読み込み、読み込んだ酸素濃度センサ出力の上死点周期間の積算値を算出し、この積算値を酸素濃度センサの濃度ばらつき及び大気圧で補正し、補正後の積算値に対応するテーブル値をリミット処理した値に基づいて空燃比を求めている。
【0004】
また、内燃エンジンの空燃比を検出する装置として、内燃エンジンの排気系に配置された空燃比センサの出力をサンプリングして空燃比を検出する装置が知られている(特許文献2参照)。特許文献2の装置では、内燃エンジンの所定クランク角度ごとに、空燃比センサの出力を順次サンプリングして記憶し、記憶されたサンプリング値群の中のいずれかを機関回転数及び機関負荷に応じて選択し、選択されたサンプリング値に基づいて空燃比が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-360523号公報
【特許文献2】特開平7-259588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2の技術によれば、センサの出力を所定の上死点の周期や所定のクランク角位置に基づいてサンプリングしている。しかしながら、好適なサンプリングのタイミングは、内燃エンジンの回転速度のみならずスロットル開度やセンサの応答特性の劣化等によっても変化する。このため、空燃比を長期間にわたって高精度に検出するためには、かかるタイミングの変化に応じてサンプリングのタイミングを較正又は補正する必要があるが、このような較正や補正は困難である。
【0007】
しかも、制御対象である内燃エンジンの排気量や排気管寸法の仕様などが変更する毎に、サンプリングのタイミングを、その仕様の変化に合わせて較正し直す必要がある。このため、較正や補正に関するセッティングデータの汎用性がないなど、装置の応用範囲が狭く、スケーラビリティに乏しい。
【0008】
また、上記特許文献2の技術によれば、所定クランク角度毎に1点でサンプリングを行うので、サンプリング時の量子化誤差などが大きい影響を与え、正確な空燃比の算出に支障を来す。
【0009】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、内燃エンジンの仕様に拘わらず、長期にわたって、正確に空燃比を検出することができる空燃比制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の空燃比制御装置は、
4サイクル形式の内燃エンジンの排気に接するように設けられた酸素濃度センサからの信号値を読み取り、読み取った信号値に基づいて前記排気の空燃比を求める空燃比制御装置であって、
前記内燃エンジンの排気弁が開いてから閉じられるまでの期間における、前記内燃エンジンのクランク角に対する前記酸素濃度センサからの信号値の変化に基づいて前記排気の空燃比を算出することを特徴とする。
【0011】
一般に、4サイクル形式の内燃エンジンにおいては、排気弁と、排気通路に配置される酸素濃度センサとの間に、今回(直近)の排気行程で排出された排気ではない気体、例えば前回の排気行程での排気や、排気管内に逆流入した外気が存在する。酸素濃度センサは、排気弁が開いた直後に、そのような今回の排気ではない気体中の酸素にも反応する。
【0012】
したがって、酸素濃度センサからの信号値に基づいて排気の空燃比(空気過剰率)を算出する場合には、上記のような今回の排気ではない気体の酸素に起因する信号は、本来読み取るべき信号についてのノイズとなるので排除することが望ましい。このことは、酸素濃度センサとして、酸素濃淡電池型センサ(例えば、ジルコニア酸素センサ)に比べて応答性が高い抵抗型酸素センサ(例えば、チタニア酸素センサ)を使用する場合により強く望まれる。
【0013】
そこで、本発明では、排気弁が開いてから閉じられるまでの期間における、クランク角に対する酸素濃度センサからの信号値の変化に基づいて排気の空燃比(空気過剰率)が算出される。この信号値の変化に基づけば、排気の空燃比を求めるために読み取る信号値に、排気ではない気体の酸素に起因する信号値が含まれる期間を確実に除外して読み取りを行うことができる。このようにして読み取った信号値に基づけば、長期間にわたって正確に排気の空燃比を算出できるので、算出される空燃比に基づいて空燃比制御を適切に行うことができる。
【0014】
しかも、信号値の変化に基づいて、排気ではない気体の酸素に起因する信号値を読み込むタイミングを排除できるので、従来のように酸素濃度センサからの信号値読み込みのタイミングを、車種の仕様に合わせて微に入り細に入り別個に設定する手間を要しない。これにより、空燃比制御装置のスケーラビリティを向上させることができる。
【0015】
本発明において、
前記内燃エンジンのクランク角センサのタイミングパルスに応じて割込み信号を発生する割込み発生部と、
前記割込み信号毎に、前記内燃エンジンにおける圧縮、爆発、排気、吸気の4つの行程に応じて循環するように実行ステージ値を設定する実行ステージ設定部と、
前記酸素濃度センサの信号値を、前記割込み信号に同期して読み取る酸素信号読取部と、
前記割込み信号毎に、読み取った前記信号値を前記実行ステージ値に紐付けしつつ時系列順に記憶する第1記憶部と、
前記割込み信号毎に、前記信号値の変化量を算出する変化量算出部と、
前記変化量に応じて、前記排気が前記酸素濃度センサ付近に供給されるタイミングを決定し、同タイミングに該当する前記実行ステージ値を読取開始ステージ値として設定する読取開始ステージ設定部と、
前記読取開始ステージ値に応じて、内燃エンジンの排気弁が閉じられるタイミングに該当する前記実行ステージ値を読取終了ステージ値として設定する読取終了ステージ設定部と、
前記読取終了ステージ値に前記実行ステージ値の現在値が一致したときに、前記第1記憶部内で前記読取開始ステージ値から前記読取終了ステージ値まで各紐付けされた複数個の前記信号値の第1平均値を求める第1平均値設定部とを備えてもよい。
【0016】
これによれば、酸素濃度センサの信号値の変化量に応じて読取開始ステージ値を設定した読取開始ステージ値から読取終了ステージ値に至るまでの間に読み取られる信号値に基づいて、排気ではない気体の酸素に起因する信号値が含まれる期間を確実に除外した信号値を取得することができる。また、読み取った複数個の信号値の第1平均値に基づいて、正確に排気の空燃比を算出することができる。
【0017】
この場合、前記読取開始ステージ設定部は、前記第1記憶部に記憶される前記変化量について、前記排気行程からの変化量のピーク値を抽出するピーク抽出部と、前記抽出した変化量のピーク値に基づいて、前記変化量についての閾値を設定する閾値設定部とを有し、前記変化量が前記閾値を連続して下回るに至る前記実行ステージ値を前記読取開始ステージ値として設定してもよい。
【0018】
これによれば、今回(直近)の燃焼に係る排気ではない気体の酸素に起因する酸素濃度センサの信号を変化量のピーク値として感知し、例えばこのピーク値を避けるように読取開始ステージを適切に設定することができる。これにより、排気ではない気体の酸素に起因する信号値が含まれる期間を確実に除外して信号値を取得するとともに、正確な空燃比を算出することができる。
【0019】
この場合、前記内燃エンジンの運転状態に応じて、サンプル個数を設定するサンプルサイズ設定部と、少なくとも前記サンプル個数の前記第1平均値を算出する毎に該第1平均値を順次記憶する第2記憶部と、前記第2記憶部から、最新の前記第1平均値から前記サンプル個数の前記第1平均値を時系列順に遡って選出し、選出した前記サンプル個数の前記第1平均値の平均値として、第2平均値を求める第2平均値設定部とを有し、前記第2平均値に基づいて前記排気の空燃比を求めてもよい。
【0020】
これによれば、第1平均値を、選出したサンプル個数分にわたってさらに平均した値を用いて空燃比を求めるので、空燃比をより正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る空燃比制御装置の構成を示すブロック図である。
図2図1の空燃比制御装置の実行ステージ設定部により設定される実行ステージ値を示す図である。
図3図1の空燃比制御装置の信号値算出部における信号値算出処理の前半部のフローチャートである。
図4図3の信号値算出処理の後半部のフローチャートである。
図5図3図4の信号算出処理によって、空燃比制御装置の空燃比制御部に供給される制御用の信号値を求める様子を示す
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る空燃比制御装置の構成を示す。この空燃比制御装置1は、4サイクル形式の内燃エンジンの排気に接するように設けられた酸素濃度センサ2からの信号値VHを読み取り、読み取った信号値VHに基づいて排気の空燃比を求めるものである。
【0023】
空燃比制御装置1は、排気の空燃比を求める際に、内燃エンジンの排気弁が開いてから閉じられるまでの期間における、内燃エンジンのクランク角に対する酸素濃度センサ2からの信号値VHの変化に基づいて内燃エンジンの排気の空燃比を算出するための制御用信号値CVを求める信号値算出部3を備える。
【0024】
信号値算出部3は、酸素濃度センサ2からの信号値VHから、排気ではない気体の酸素に起因する信号を信号値VHの変化に基づいて極力排除し、これにより得られたより適切な信号値CVを、内燃エンジンが搭載された車両のECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)における空燃比制御部4に供するものである。
【0025】
信号値算出部3は、内燃エンジンの不図示のクランク軸が所定角度(例えば、15度)回転する毎にクランク角センサ5が発生するタイミングパルス(クランクパルス)に応じて割込み信号ISを発生する割込み発生部6と、割込み信号IS毎に実行ステージ値STGを設定する実行ステージ設定部7と、酸素濃度センサ2の信号値VHを、割込み信号ISに同期して読み取る酸素信号読取部8と、割込み信号IS毎に、読み取った信号値VHを実行ステージ値STGに紐付けしつつ時系列順に記憶する第1記憶部9とを備える。
【0026】
図2を併せて参照して、実行ステージ設定部7は、4サイクル形式の内燃エンジンにおける圧縮CP、爆発(燃焼)CM、排気EX、吸気INの4つの行程に応じて循環する如くに前記割込み信号IS毎に実行ステージ値STGを設定するものであり、例えば、圧縮行程CPの先頭(吸気行程INの直後)で、内燃エンジンの不図示のピストンが下死点に至るクランク角に対応する実行ステージ値STGを「#0(ゼロ)」として、該#0(ゼロ)ステージからクランク軸の回転進行方向に向かって#1ずつインクリメントされるように設定される。この実施の形態においては、圧縮行程CPに対応する実行ステージ値STGは#0~11まで設定され、続いて、爆発(燃焼)行程CMに対応する実行ステージ値STGは#12~23、排気行程EXに対応する実行ステージ値STGは#24~35、吸気行程INに対応する実行ステージ値STGは#36~47にそれぞれ割り当てされ、しかも、吸気行程INの#47ステージ直後に圧縮行程CPの#0ステージが配列される循環(ループ)カウンタ状を呈する。斯くして、各行程に12個ずつ計48個の実行ステージ値STGが、前記クランク軸が720度回転する毎に循環するように設定される。
【0027】
制御用信号値算出部3は、クランク角度センサ5の検出結果に基づいて内燃エンジンの回転速度NEを算出する回転速度演算部20と、実行ステージ値STG毎に、信号値VHの変化量DVHを算出する変化量算出部10と、この変化量DVHに応じて、内燃エンジンの排気が酸素濃度センサ2付近に供給されるタイミングを決定し、同タイミングに該当する実行ステージ値STGを読取開始ステージ値BSとして設定する読取開始ステージ設定部11と、この読取開始ステージ値BSから内燃エンジンの排気弁が開かれる直前のタイミングに該当する実行ステージ値STGまでの間で読取終了ステージ値ESを設定する読取終了ステージ設定部12と、読取終了ステージ値ESに実行ステージ値STGの現在値が一致したときに、第1記憶部9内で読取開始ステージ値BSから読取終了ステージ値ESまで各紐付けされた複数個の信号値VHの第1平均値FVを求める第1平均値設定部13とを備える。
【0028】
読取開始ステージ設定部11は、第1記憶部9に記憶される信号値VHの変化量DVHについて、排気行程EXで排気弁が開いてからの変化量DVHのピーク値PVを抽出するピーク抽出部14と、抽出した変化量DVHのピーク値PVに基づいて、変化量DVHについての閾値DVHJUDを設定する閾値設定部15とを有し、直近の排気行程EXで排気弁が開いてからの変化量DVHが、閾値DVHJUDを下回るに至る実行ステージ値STGを読取開始ステージ値BSとして設定するものである。
【0029】
また、信号値算出部3は、前記内燃エンジンの運転状態に応じてサンプル個数Nを設定するサンプルサイズ設定部16と、少なくともクランク軸が720度回転して前記第1平均値FVが算出される毎に同第1平均値FVを順次記憶する第2記憶部17と、該第2記憶部17に記憶された複数個の第1平均値FVについて、最新の第1平均値FVからサンプル個数N個分の第1平均値FVを時系列順に遡って選出し、該選出したサンプル個数Nの第1平均値FVの平均値としての第2平均値を求める第2平均値設定部18とを有する。後述するように、空燃比制御部4は、第2平均値を制御用の信号値CVとして、排気の空燃比を求め、空燃比制御を行う。
【0030】
サンプルサイズ設定部16におけるサンプル個数Nの設定は、例えば、回転速度NEに応じて行われる。この実施の形態においては、例えば、内燃エンジンの回転速度NEが比較的低いアイドリング状態である場合、サンプル個数Nとしては#3(個)が設定され、また、回転速度NEがアイドリング状態よりも上昇した場合は、例えばサンプル個数Nに#1(個)が設定される。
【0031】
図3図4は、信号値算出部3における制御用信号値CVを求める信号値算出処理を示す。この信号値算出処理は、クランク角センサ5からのクランクパルス信号に基づき、内燃エンジンにおける排気、吸気、圧縮、燃焼の4つの行程(エンジン2回転)に同期して実行される。
【0032】
信号値算出処理が開始されると、まず、クランクパルスの各パルス間の時間間隔から内燃エンジンの回転速度NEを求め(ステップS1)、また、現時点での実行ステージ値STGを実行ステージ設定部7により設定する(ステップS2)。
【0033】
次に、酸素信号読取部8により、酸素濃度センサ2からの信号値VHの最新値を読み取り、該信号値VHの最新値と前回読み取った信号値VHとの差の絶対値である変化量DVHを算出する(ステップS3)。ここで、信号値VHの最新値は、ステップS2で設定された実行ステージ値STGに紐付けさせて、第1記憶部9に記憶される(ステップS4)。
【0034】
次に、ステップS1で設定された現在の実行ステージ値STGが、所定のEXSTSTG(たとえば、排気行程EXの先頭である#24ステージ)と同一であるか否かを確認し(ステップS5)、現在の実行ステージ値STGが所定のEXSTSTGと同一である場合には、ステップS6に進み、フラグF_EXINITを「1」、フラグF_BLOWOFを「0(ゼロ)」に設定し、且つ、ピーク抽出部14のピーク値PV、計数値CTPEAK及び、閾値DVHJUDをそれぞれゼロにリセットして、今回の信号値算出処理を終了する。
【0035】
ステップS5において、現在の実行ステージ値STGが所定のEXSTSTGと同一ではないと判定した場合には、ステップS7に進み、フラグF_EXINIT=1であるか否かを判定する。F_EXINIT=0であるならば、ピーク値PV等が初期設定されていないことを示すので、排気行程EXからの変化量DVHのピーク値PVを抽出することができない。この場合、フラグF_BLOWOFを「0(ゼロ)」に設定し、且つ、ピーク抽出部14のピーク値PV、計数値CTPEAK及び、閾値DVHJUDをそれぞれゼロにリセットして、今回の信号値算出処理を終了する。
【0036】
ステップS7において、F_EXINIT=1であるならば、ステップS8に進み、フラグF_BLOWOF=1であるか否かを判定する。F_BLOWOF=0であるならば、ステップS9に進み、ステップS3で算出された変化量DVHがピーク値PVよりも大きいか否かを判定する。変化量DVHがピーク値PVよりも大きい場合には、ピーク値PVの値を変化量DVHの値に上書き更新する(ステップS10)とともに計数値CTPEAKをゼロにリセットする(ステップS11)。
【0037】
ステップS9において、変化量DVHがピーク値PV以下である場合には、ステップS12に進み、ピーク値PVに応じて閾値DVHJUDを設定する。この閾値DVHJUDは、例えば、所定の閾値演算係数を#MDVHとした場合、閾値設定部15において次式(1)により求められる。
DVHJUD=PV×#MDVH (1)
【0038】
ステップS12において閾値DVHJUDが設定された場合には、ステップS13に進み、ステップS3で算出された変化量DVHが閾値DVHJUDよりも大きいか否かを判定する。ステップS13において、変化量DVHが閾値DVHJUDよりも大きいと判定した場合には、計数値CTPEAKをゼロにリセットする(ステップS11)。ステップS13において、変化量DVHが閾値DVHJUD以下と判定した場合には、計数値CTPEAKをプラス1だけインクリメントする(ステップS14)。
【0039】
次に、ステップS16へと進み、計数値CTPEAKが所定値#CTPEAKHよりも大きいか否かを判定する。計数値CTPEAKが所定値#CTPEAKH以上である場合には、フラグF_BLOWOFを「1」に設定し、且つ、ステップS2で設定された現在の実行ステージ値STGに応じて次式(2)により読取開始ステージ値BSが設定される(ステップS17)。
BS=STG-#CTPEAKH (2)
【0040】
次に、ステップS18に進み、ステップS2で設定された現在の実行ステージ値STGが、所定のEXENDSTG(たとえば、爆発(燃焼)行程CMの末尾である#23ステージ)と同一であるか否かを確認し、現在の実行ステージ値STGが所定のEXENDSTGと同一である場合には、ステップS19に進み、フラグF_BLOWOF=1であるか否かを判定する。ステップS19において、F_BLOWOF=1であるならば、ここまでに読取開始ステージ値BSが設定済であることを示すので、ステップS17で設定された読取開始ステージ値BSに応じて、例えば、所定の実行ステージ数をEXRDSTGとした場合、次式(3)により、読取終了ステージ値ESが設定される(ステップS20)。
ES=BS+EXRDSTG (3)
【0041】
ステップS19において、フラグF_BLOWOF=0である場合には、ステップS21に進み、読取開始ステージ値BSを代替値に設定する。ステップ21において、読取開始ステージ値BSとして例えば前記EXSTSTGが設定され、且つ、読取終了ステージ値ESとして例えば前記EXENDSTGが設定される。
【0042】
次に、ステップS22に進み、ステップS4において第1記憶部9内へ記憶された複数個の信号値VHのうち、第1記憶部9内で読取開始ステージ値BSから読取終了ステージ値ESまで各紐付けされた複数個の信号値VHの相加平均値が第1平均値FVの最新値として第1平均値設定部13により算出され、該算出された第1平均値FVの最新値を時系列順に順次記憶するように設けられた第2記憶部17へ記憶する(ステップS23)。ステップ23において、第1平均値FVの最新値は、後述するサンプル個数カウンタCTSPの最新値に紐付けさせて、第2記憶部17に順次記憶される。
【0043】
次にステップS24に進み、ステップS1で算出された回転速度NEに応じて、サンプル個数Nを設定する。次に、ステップS23において第2記憶部17に記憶された複数個の第1平均値FVのうち、第2記憶部17内で、第1平均値FVの最新値からサンプル個数N個前までの分を時系列順に遡及したサンプル個数N個の第1平均値FVの相加平均値を求め、これを第2平均値として設定する(ステップS25)。
【0044】
次にステップS26に進み、サンプル個数カウンタCTSPを#1だけインクリメントする。なお、サンプル個数カウンタCTSPは、上記サンプルサイズ設定部16におけるサンプル個数Nの最大値を上限として循環するように準備された循環(ループ)カウンタであり、この実施の形態において上記サンプル個数カウンタCTSPは、例えば、上記サンプル個数Nの設定可能な値を#1~#16個であるとすれば、これに対応する#0~#15の範囲で循環するように設定されるものである。而して上記ステップS26の場合においては、上記#1だけインクリメントされたサンプル個数カウンタCTSPが、サンプルサイズ設定部16により予め設定されたサンプル個数Nの最大値(上記#16)に関する上限値(上記#15)を超えたか否かが判定され、超えたと判定された場合には、サンプル個数カウンタCTSPは#0に設定され、斯くしてサンプル個数カウンタCTSPは所定値の範囲(#0~#15の範囲)で循環(ループ)される。
【0045】
以上のように求められた第2平均値は、制御用の信号値CVとして空燃比制御部4に供給され、今回の信号値算出処理を終了する。
【0046】
図5は、図3図4の信号算出処理によって、空燃比制御部4に供給される制御用の信号値CVを求める様子を示す。図4においては、内燃エンジンのクランク角センサ5からのタイミングパルス19に対し、酸素濃度センサ2からの信号値VHが、排気EX、吸気IN、圧縮CP、燃焼CMの4行程(エンジン2回転)のタイミングとともに示されている。
【0047】
各排気行程EXにおいては、酸素濃度センサ2が排気ではない気体中の酸素にも反応し、その信号値分が重畳されて信号値VHが山型になっていることが諒解される。図3の信号算出処理では、排気行程EXが開始されてから、タイミングパルス(クランクパルス)19の1パルス毎の信号値VHの変化量DVHが読み取られ(ステップS3)、且つ、変化量DVHのピーク値PVが読み取られ(ステップS9~S10)、ピーク値PVに応じて閾値DVHJUDを求めるのに続いて、変化量DVHが所定回数閾値DVHJUD以下となるタイミング(ステップS11~S16)に読み取り開始ステージBSを設定(ステップS17)するという構成により、排気ではない気体中の酸素に酸素濃度センサ2が反応する図5において期間T1の信号値VHを排除した信号値VH、すなわち読取開始ステージBSから読取終了ステージESまでの図5において期間T2に読み取られる信号値VHにより第1平均値FVが求められる(ステップS22)。
【0048】
しかも、図5に示す複数の各期間T2の信号値VHからそれぞれ求められる複数の第1平均値FVは、第2記憶部17に時系列順に蓄積記憶され(ステップS23)、さらに、記憶されたサンプル個数N個分の第1平均値FVを相加平均した第2平均値が求められる(ステップS24~S25)。この第2平均値は上述のように、制御用の信号値CVとして空燃比制御部4に供給される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、排気弁が開いてからの期間における、クランク角に対する酸素濃度センサからの信号値VHの変化に基づき、内燃エンジンの排気ではない気体の酸素に起因する信号値が含まれる期間T1を除外して信号値VHの読み取りを行うので、このようにして読み取った信号値VHにより算出される制御用の信号値CVに基づき、空燃比制御部4は、長期間にわたって正確に排気の空燃比を算出し、空燃比制御を適切に行うことができる。
【0050】
しかも、信号値VHの変化に基づいて、排気ではない気体の酸素に起因する信号値VHを読み込むタイミングを排除できるので、従来のように酸素濃度センサからの信号値読み込みのタイミングを、車種の仕様に合わせて微に入り細に入り別個に設定する手間を要しない。これにより、空燃比制御装置1のスケーラビリティを向上させることができる。
【0051】
また、排気ではない気体の酸素に起因する信号値VHを読み込むタイミングを排除するために、酸素濃度センサ2の信号値VHの変化量DVHに応じて設定した読取開始ステージ値BSから読取終了ステージ値ESに至るまでの間に読み取られる信号値VHを用いているので、排気ではない気体の酸素に起因する信号値が含まれる期間T1を確実に除外して信号値VHを取得することができる。また、読み取った複数個の信号値VHの第1平均値FVに基づいて、正確に排気の空燃比を算出することができる。
【0052】
また、第1平均値FVを、選出したサンプル個数N分にわたってさらに平均した値を用いて空燃比を求めることにより、空燃比をより正確に求めることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1信号値FVをそのまま制御用の信号値CVとして空燃比制御部4に供給してもよい。このように、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0054】
1…空燃比制御装置、2…酸素濃度センサ、3…信号値算出部、4…空燃比制御部、5…クランク角センサ、6…割込み発生部、7…実行ステージ設定部、8…酸素信号読取部、9…第1記憶部、10…変化量算出部、11…読取開始ステージ設定部、12…読取終了ステージ設定部、13…第1平均値設定部、14…ピーク抽出部、15…閾値設定部、16…サンプルサイズ設定部、17…第2記憶部、18…第2平均値設定部、19…タイミングパルス、20…回転速度演算部。
図1
図2
図3
図4
図5