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2022-157646サスペンションシステムおよび車高調整可能な車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157646
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】サスペンションシステムおよび車高調整可能な車両
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20221006BHJP
   B60G 17/052 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B60G17/015 C
B60G17/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061985
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 文寛
(72)【発明者】
【氏名】草谷 征也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大治朗
(72)【発明者】
【氏名】小澤 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦宜
(72)【発明者】
【氏名】松本 祐希
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA48
3D301AA62
3D301CA01
3D301DA14
3D301DA64
3D301DA66
3D301DA67
3D301EA04
3D301EA71
3D301EB04
3D301EB09
3D301EC01
3D301EC05
3D301EC37
3D301EC46
(57)【要約】
【課題】車両の安定性を確保しながら、電力の消費を抑えることができる。
【解決手段】サスペンションシステム(車両100)は、車体1と各車輪3との間に介挿され作動流体の圧力によって伸縮可能なエアサスペンション6と、作動流体を制御する圧縮空気制御ユニット15と、圧縮空気制御ユニット15への電力を供給する電力供給部と、電力供給部に異常が発生した場合に作動流体の流通を停止する省電力手段12と、を備え、省電力手段12は、車両100が所定の車高の場合は作動流体の流通を停止し、車両100が所定の車高以外の場合は、所定の車高になるまで作動流体を流通した後で該作動流体の流通を停止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と各車輪との間に介挿され作動流体の圧力によって伸縮可能なサスペンションと、
前記作動流体を制御する制御ユニットと、
前記制御ユニットへの電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部に異常が発生した場合に前記作動流体の流通を停止する省電力手段と、を備え、
前記省電力手段は、車両が所定の車高の場合は前記作動流体の流通を停止し、車両が所定の車高以外の場合は、前記所定の車高になるまで前記作動流体を流通した後で該作動流体の流通を停止する
ことを特徴とするサスペンションシステム。
【請求項2】
前記省電力手段は、前記車両が水平の場合は前記作動流体の流通を停止し、車両が水平ではない場合は車両を水平にした後で該作動流体の流通を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項3】
前記サスペンションへ前記作動流体を供給するタンクと、
前記タンクと前記サスペンションとの間の通路を開閉するバルブと、を備え、
前記バルブは、電力を停止した時に前記通路を閉じる
ことを特徴とする請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項4】
車体における各車輪の位置での車高を調整する車高調整装置と、
前記車高調整装置による車高調整を制御する車高制御手段と、を備え、
前記所定の車高は、上下に所定の幅を備えた領域であり、
前記車高制御手段は、
前記電力供給部に異常が発生したときに車高が前記領域外である場合、前記領域の境界に車高を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のサスペンションシステム。
【請求項5】
前記車高制御手段は、
前記電力供給部に発生した異常が解消された場合は、前記異常の発生前の目標車高に戻すように車高を調整する
ことを特徴とする請求項4に記載のサスペンションシステム。
【請求項6】
車体と各車輪との間に介挿され作動流体の圧力によって伸縮可能なサスペンションと、
前記作動流体を制御する制御ユニットと、
前記制御ユニットへの電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部に異常が発生した場合に前記作動流体の流通を停止する省電力手段と、を備え、
前記省電力手段は、車両が所定の車高の場合は前記作動流体の流通を停止し、車両が所定の車高以外の場合は、前記所定の車高になるまで前記作動流体を流通した後で該作動流体の流通を停止する
ことを特徴とする車高調整可能な車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションシステムおよび車高調整可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車高調整装置は、走行中、もしくは、目標車高が運転者により変更になったり、イグニッションスイッチがオンになったり、ドアやトランクが開いたりしたときに、車体の下部等と路面との距離を計測して、目標車高を高く設定し、その目標車高に実車高が一致するように車高調整を行う。
【0003】
特許文献1には、圧力制御弁に司令値を与える電気系の異常を検知した時に、流体圧シリンダの作動流体圧を予め設定された設定圧力にする能動型サスペンションが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2625824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の能動型サスペンションは、電気系の異常時に一律で設定圧力に変えてしまう。しかしながら、バッテリ容量の減少など多少猶予がある場合は、車両状況に合わせて最適な制御を行うことが好ましい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両の安定性を確保しながら、電力の消費を抑えることができるサスペンションシステムおよび車高調整可能な車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るサスペンションシステムは、車体と各車輪との間に介挿され作動流体の圧力によって伸縮可能なサスペンションと、前記作動流体を制御する制御ユニットと、前記制御ユニットへの電力を供給する電力供給部と、前記電力供給部に異常が発生した場合に前記作動流体の流通を停止する省電力手段と、を備え、前記省電力手段は、車両が所定の車高の場合は前記作動流体の流通を停止し、車両が所定の車高以外の場合は、前記所定の車高になるまで前記作動流体を流通した後で該作動流体の流通を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の安定性を確保しながら、電力の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るサスペンションシステム(車両)の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るサスペンションシステム(車両)の側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るサスペンションシステム(車両)のブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係るサスペンションシステム(車両)の車高調整および電力抑制処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係るサスペンションシステム(車両)の車高UP時の車高調整機能を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係るサスペンションシステム(車両)の車高DOWN時の車高調整機能を説明する図である。
図7】本発明の実施形態に係るサスペンションシステム(車両)の車両状態に応じたエアサスペンションシステムの動作を説明する図である。
図8図7の車両状態に応じたサスペンションシステムの動作のタイミングチャートである。
図9図7の車両状態に応じたサスペンションシステムの車高の領域を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るサスペンションシステムを搭載した車両100の構成図である。図2は、車両100の側面図である。サスペンションシステムが、車両100に広範囲に組み込まれ一体となっているので、車両そのものと考えてもよく、サスペンションシステムが、車両100に搭載されていると考えてもよい。
本実施形態の車両100は、ガソリン車であるが、ディーゼル車または電気自動車(ハイブリッド車および燃料電池車を含む。)であってもよい。
【0012】
図1および図2に示すように、車両100の車体1には、車輪3が前後左右に4個設置されている。車輪3は、左前輪3fl、左後輪3rl、右前輪3frおよび右後輪3rrとからなる。これら各車輪3は、4つのサスペンションアーム4を介して車体1に支持されており、各車輪3と車体1との間には、車高調整装置5が設けられている。
なお、本明細書では、4つの車輪3fr,3fl,3rr,3rlに対応して配置されている部材、例えば車輪速センサ2fr,2fl,2rr,2rl等については、それぞれを総称するときには符号の数字部分を用いる。また、個々の部材について言及するときは、その配置位置に応じて、符号にfr(右前)、fl(左前)、rr(右後)、rl(左後)のアルファベット部分を含む符号を用いて識別する。したがって、以下で総称するときは、例えば、「車輪3」といい、個々の部材(位置)を指示するときは、例えば「車輪3fr」等という。
【0013】
<車高調整装置5>
車高調整装置5は、車体1における各車輪3の位置での車高を調整する。
車高調整装置5は、エアサスペンション6と、車高センサ20(20fr,20fl,20rr,20rl)と、圧縮空気制御ユニット15と、を備える。
エアサスペンション6は、車体1と各車輪3との間に介挿され作動流体の圧力(作動流体圧)によって伸縮可能である。
エアサスペンション6は、圧縮空気(作動流体)が供給されることで、各エアサスペンション6内の空気圧が調整され、車高調整装置5のストロークを変化させることで、車高を調整することができる。
【0014】
車高センサ20(20fr,20fl,20rr,20rl)は、4つの車輪3fr,3fl,3rr,3rlのエアサスペンション6に設けられる。車高センサ20は、車高調整装置5の伸縮した長さ(ストローク)を計測することができる。車高センサ20は、車輪3と車体1との相対的な位置関係に基づいて、車輪3fr,3fl,3rr,3rlの位置での車高Hfr,Hfl,Hrr,Hrlを検出する。車高Hfr,Hfl,Hrr,Hrlは、路面から車体1の下端までの距離を示す。
【0015】
図3は、サスペンションシステム(車両100)のブロック図である。
図3に示すように、圧縮空気制御ユニット15は、コンプレッサ30と、エアタンク31と、第1バルブ32~第7バルブ38と、圧力センサ39と、を備える。コンプレッサ30、エアタンク31、第1バルブ32~第7バルブ38、および圧力センサ39は、配管40により接続されている。
圧縮空気制御ユニット15は、圧縮空気(作動流体)の供給によって能動的に動作するエアサスペンション6への作動流体を制御する。
圧縮空気制御ユニット15は、サスペンションECU(Electronic Control Unit)9(図1参照)の起動に伴って起動し、サスペンションECU9の停止に伴って停止する。圧縮空気制御ユニット15は、圧縮空気を発生させるコンプレッサ30と、開弁してその圧縮空気を各エアサスペンション6に供給し、閉弁して各エアサスペンション6に供給された圧縮空気を保持する第1バルブ32~第7バルブ38とを有している。
【0016】
エアサスペンション6は、車体1と各車輪3との間に介挿され作動流体圧によって伸縮可能な能動型サスペンションである。
エアサスペンション6は、車輪3毎に設けられるものである。各エアサスペンション6は、配管40を介してコンプレッサ30側から供給されるエアを空気室(図示省略)に収容することで車高を維持/調整する。
【0017】
コンプレッサ30は、サスペンションECU9からの指令(モータ駆動指令)(図5図6参照)に基づいて図示しないモータを駆動し、配管40内のエアの圧力を調整する。
【0018】
各バルブ32~37は、サスペンションECU9からの指令(バルブ切替指示)(図5図6参照)に基づいて開閉する。第1バルブ32は、コンプレッサ30およびエアタンク31を結ぶ配管40上に配置される。第2バルブ33は、コンプレッサ30およびエアタンク31と各エアサスペンション6とを結ぶ配管40上に配置される。第3バルブ34は、大気と各エアサスペンション6とを結ぶ配管40上に配置される。第4バルブ35~第7バルブ38は、各エアサスペンション6の手前に配置され、第1バルブ32~第3バルブ34側からエアサスペンション6に対するエアの供給を制御する。
【0019】
圧力センサ39は、配管40内の圧力Pを検出する。本実施形態では、圧力センサ39により、各車輪3fl、3fr、3rl、3rrの圧力値を検出する。
【0020】
図1および図2に示すように、車両100には、車両100の全般にわたる各種の制御を実行する電子制御装置10(以下「ECU10」という。)と、サスペンションECU9と、車高調整装置5による車高調整の制御を実行する車高制御手段11と、省電力手段12と、が設けられている。
【0021】
<ECU10>
ECU10、車高制御手段11、サスペンションECU9および圧縮空気制御ユニット15は、イグニッションスイッチIG(電力供給部)のオン(ON)で起動(電源オン)し、イグニッションスイッチIGのオフ(OFF)で停止(電源オフ)する。ECU10は、イグニッションスイッチIGのオン(ON)で起動してから、イグニッションスイッチIGのオフ(OFF)で停止するまで、車両100の全般にわたる各種の制御を実行する。
イグニッションスイッチIGと図示しないバッテリおよびその電力供給路は、圧縮空気制御ユニット15への電力を供給する電力供給部を構成する。
【0022】
<サスペンションECU9>
サスペンションECU9は、ECU10からの指示に従い、能動型のエアサスペンション6の制御を行う。サスペンションECU9は、圧縮空気制御ユニット15のコンプレッサ30および各バルブ32~37に指令を送信し、エアサスペンション6への作動流体を制御する。コンプレッサ30は、サスペンションECU9からの指令(モータ駆動指令)(図5図6参照)に基づいて配管40内のエアの圧力を調整する。各バルブ32~37は、サスペンションECU9からのバルブ切替指示(図5図6参照)に基づいて開閉する。
【0023】
<車高制御手段11>
車高制御手段11は、イグニッションスイッチIGのオン(ON)で起動してから、イグニッションスイッチIGのオフ(OFF)で停止するまで、車高調整装置5による車高調整の制御を実行する。
【0024】
車高制御手段11は、車高センサ20が計測したストロークを取得し、取得したストロークに基づいて、車高(実車高)を算出することができる。車高制御手段11は、算出された車高が、予め記憶手段(図示省略)に記憶させておいた目標車高になるように制御された車高調整を行う。
【0025】
車高制御手段11は、電力供給部に異常が発生したときに車高が領域外である場合、車両100(車体1)が上下に所定の幅を備えた所定の車高の領域の境界になるように車高を調整する。
車高制御手段11は、電力供給部に発生した異常が解消された場合は、異常の発生前の目標車高に戻すように車高を調整する。
【0026】
車高調整は、車高制御手段11で車高調整装置5を制御することによって行われるが、車高制御手段11による制御は、圧縮空気制御ユニット15を介して行われている。
【0027】
なお、ECU10が、車高制御手段11を含んでいてもよく、省電力手段12からの信号を受信して、車高制御手段11を含むECU10全体が起動してもよい。
【0028】
<省電力手段12>
省電力手段12は、圧縮空気制御ユニット15への電力を供給する電力供給部に異常が発生した場合に作動流体の流通を停止する。
省電力手段12は、車両100が所定の車高の場合は作動流体の流通を停止し、車両100が所定の車高以外の場合は、所定の車高になるまで作動流体を流通した後で該作動流体の流通を停止する。
省電力手段12は、車両100が水平の場合は作動流体の流通を停止し、車両100が水平ではない場合は車両100を水平にした後で該作動流体の流通を停止する。
【0029】
以下、サスペンションシステム(車両)の車高調整および電力抑制制御について説明する。
図4は、サスペンションシステム(車両)の車高調整および電力抑制処理を示すフローチャートである。
【0030】
まず、ステップS1で省電力手段12は、車両100から電力供給部品故障を受信したか否かを判別する。
車両100から電力供給部品故障を受信しない場合(S1:No)、ステップS2で車高制御手段11は、車高調整機能ONにし、車高調整装置5による車高調整の制御を実行して本フローの処理を終了する。
例えば、車両100が走行中に、自動車高調整をONにすることで、車高制御手段11は、車高調整装置5による車高調整の制御を実行する。走行中の動車高調整は、Driving modeに合わせた設定車高の変更であり、選択したDriving modeで目標車高を変化させる。また、車速と連動して車高を調整する。例えば、Driving modeがスポーティの場合は、重心高ダウンによるハンドリング特性向上がある。また、高速走行時には、車高を下げて、高速走行時の安定性の向上を図る。また、車速の連動による頻繁な車高の変更(車高の上げ下げ)を抑制するため車高変更にヒステリシスを設ける。さらに、安定性確保のため、段階的に車高を低減する。
【0031】
ステップS1で車両100から電力供給部品故障を受信した場合(S1:Yes)、ステップS3で省電力手段12は、安定性が確保可能な車高であるか否かを判別する。
安定性が確保可能な車高でない場合(S3:No)、ステップS4で省電力手段12は、車高制御手段11が車高調整装置5を用いて安定性を確保可能な車高に調整してステップS7に進む。
【0032】
安定性が確保可能な車高である場合(S3:Yes)、ステップS5で省電力手段12は、車高調整動作が実行中(車高が水平ではない)か否かを判別する。車高調整動作が実行中(車高が水平ではない)の場合、ステップS6で車高制御手段11が、車高を水平に調整してステップS7に進む。
【0033】
ステップS7で省電力手段12は、エアサスペンション6の伸縮を制御するための作動流体の流通を停止してステップS8に進む。
【0034】
ステップS5で車高調整動作が実行中でない場合(S5:No)、または、ステップS7で作動流体の流通を停止した場合は、ステップS8で省電力手段12は、車高制御手段11が車高調整装置5による車高調整機能をOFFにして本フローの処理を終了する。
【0035】
このように、省電力手段12は、車両100が安定性が確保可能な車高でない場合は、安定性を確保可能な車高に調整して作動流体の流通を停止し(ステップS3:No~ステップS4~ステップS7)、車両100が安定性が確保可能な車高で所定の車高以外の場合は、所定の車高になるまで作動流体を流通した後で該作動流体の流通を停止する(ステップS3:Yes~ステップS5~ステップS6~ステップS7)。
【0036】
<エアサスペンションシステム(車両)の車高調整機能>
図5および図6は、エアサスペンションシステム(車両)の車高調整機能を説明する図であり、図5は車高UP時の車高調整機能を示し、図6は車高DOWN時の車高調整機能を示す。なお、図5および図6では、バルブをエアバルブと記載している。
図5および図6に示すように、本実施形態に係る車両100は、図3に示すエアサスペンション6(エアスプリング)とエアタンク31もしくは大気間を、コンプレッサ30を用いて、空気の移動を行うことで車高調整を行う。
コンプレッサ30は、サスペンションECU9からの指令(モータ駆動指令)に基づいて配管40内のエアの圧力が調整される。バルブ32(他のバルブ33~38についても同様である)は、サスペンションECU9からのバルブ切替指示に基づいて開閉される。
【0037】
図5の符号aに示す車両前側車高UP時には、サスペンションECU9がバルブ32およびコンプレッサ30を制御し、エアタンク31からエアサスペンション6(エアスプリング)側に空気を移動させる。
【0038】
図6の符号bに示す車両後側車高DOWN時には、サスペンションECU9がバルブ32およびコンプレッサ30を制御し、エアサスペンション6(エアスプリング)からエアタンク31側に空気を移動させる。
【0039】
ここで、バルブ32は、電力を停止した時に通路を閉じる構造となっている。このため、通路を閉じた状態では電力を消費しないので、車高調整機能の停止時の消費電力を抑えることができる。すなわち、コンプレッサ30が介在しないので、コンプレッサ30の駆動停止(モータへの電力供給停止)が可能になる。
【0040】
<車両状態に応じたエアサスペンションシステムの動作>
車両状態に応じたエアサスペンションシステムの動作について説明する。
車両状態は、車両状態Aと、車両状態Bと、その組み合わせである車両状態A+Bと、がある。
・車両状態A:車高がある基準より高い時に、車両電源が故障した場合
システム動作は、安定性が確保出来る車高までシステムを動作後、システムを停止し電力を抑制する。
【0041】
・車両状態B:車高調整中に、車両電源が故障した場合
システム動作は、前輪/後輪も車高が水平になるまでシステムを動作後、システムを停止し電力を抑制する。
【0042】
・車両状態A+B:目標の車高設定がある基準より高く、かつ、車高調整中の場合
図7は、車両状態A+Bに応じたエアサスペンションシステムの動作を説明する図である。
図7左図(図7(a))に示すように、車両100の前後ともある基準より高い目標車高(図7の矢印c参照)をユーザが選択する。
【0043】
図7中図(図7(b))の符号dに示すように、車高調整中に、車両電源故障が発生したとする。図7(b)は、故障していない後ろ側は上げることができたが、前側は故障のためUPできないので、車両の前後を通してみると、前側が下がった感じになっていることを表わしている。
エアサスペンションシステムは、車両から電力制限通知を受信する(図4のフローのステップS1参照)。
【0044】
図7右図(図7(c))に示すように、車両状態をシステムが判断し、安定性確保可能な車高に下げて、車高が水平になるように車高調整(図7の矢印e参照)を実行する(図4のフローのステップS4参照)。図7(c)は、図7(b)で故障により前方が下がってしまったので(あるいは前側を上げることができなかったので)、後方を下げて水平にすることを表わしている。
【0045】
図8は、図7の車両状態A+Bに応じたエアサスペンションシステムの動作のタイミングチャートである。縦軸に電力制限通知信号とVehicle height(車高)、横軸に時間をとる。
縦軸のVehicle height(車高)において、adjustable(調整可能な車高の領域)は上限がX2、下限がX1(ただしX2>X1)、Target vehicle height(目標車高)である。また、縦軸の電力制限通知信号は、Limited(制限信号あり「1」)(ここでは「故障検知信号」あり「1」)である。Adjustableの上限X2と下限X1との間の領域が、安定性確保可能な車高の領域(図8の矢印f参照)である。
【0046】
横軸のNormal stateは通常状態、Limited stateは故障時制限動作状態、Adjustment of front/rear wheel heightsはNormal stateからLimited stateに移行する際の車高調整高さ状態である。
上記タイミングチャートにおいて、Actual vehicle heightは、走行時の目標車高である。車両100は、故障発生確定(図8の矢印g参照)を受信して、故障発生前のNormal stateはAdjustment of front/rear wheel heightsに移行し、エアサスペンションシステムは、車高DOWNを実行する(図8の矢印h参照)。図7では、前側は故障しているから、後側を下げる車高DOWNを実行する。
【0047】
その後、エアサスペンションシステムは、Limited state中では車高を水平に調整後(図8の符号i参照)、完全停止させる(図4のフローのステップS6,S7参照)。
【0048】
電力制限通知信号のLimited(制限信号なし「0」)を受信して、車両100は、Normal stateに復帰する。エアサスペンションシステムは、電力復帰後、システム動作を再開し、車高を目標値まで移動する(図8の符号j参照)(図4のフローのステップS2参照)。
このように、サスペンションシステム(車両100)は、車両状態に応じてシステム動作を実行後、電力を抑制する。
【0049】
<車高の領域>
車高の領域について説明する。
サスペンションシステム(車両100)は、省電力手段12が、車両100が所定の車高の場合は作動流体の流通を停止し、車両100が所定の車高以外の場合は、所定の車高になるまで作動流体を流通した後で該作動流体の流通を停止する。所定の車高は、上下に所定の幅を備えた領域であり、車高制御手段11は、電力供給部に異常が発生したときに車高が領域外である場合、領域の境界に車高を調整する。
【0050】
図9は、サスペンションシステム(車両)の車高の領域を説明するためのタイミングチャートである。図8と同一部分には同一符号を付している。
図9のAdjustableの上限X2と下限X1との間の領域が、安定性確保可能な車高の領域(図9の矢印f参照)である。上述した、所定の車高は、車高の領域(図9の矢印f参照)の車高である。
【0051】
図9に示すように、車高制御手段11は、Actual vehicle heightでは、この車高の領域(図9の矢印f参照)の境界(上限)に車高を調整する。すなわち、車高制御手段11は、電力供給部に異常が発生したときに車高が領域外である場合、車両100(車体1)が上下に所定の幅を備えた所定の車高の領域(図9の符号k参照)の境界になるように車高を調整する。
【0052】
また、図9の符号jに示すように、車高制御手段11は、電力供給部に発生した異常が解消された場合は、異常の発生前の目標車高に戻すように車高を調整する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のサスペンションシステム(車両100)(図1参照)は、車体1と各車輪3との間に介挿され作動流体圧によって伸縮可能なエアサスペンション6と、作動流体を制御する圧縮空気制御ユニット15と、圧縮空気制御ユニット15への電力を供給する電力供給部と、電力供給部に異常が発生した場合に作動流体の流通を停止する省電力手段12と、を備え、省電力手段12は、車両100が所定の車高の場合は作動流体の流通を停止し、車両100が所定の車高以外の場合は、所定の車高になるまで作動流体を流通した後で該作動流体の流通を停止する。
【0054】
この構成により、安定性が確保できる車高まで作動した後に、作動流体の流通を停止することで、車両の安定性を確保しながら、電力の消費を抑えることができる。
【0055】
サスペンションシステム(車両100)において、省電力手段12は、車両100が水平の場合は作動流体の流通を停止し、車両100が水平ではない場合は車両100を水平にした後で該作動流体の流通を停止する。
【0056】
これにより、安定性が確保できる車高まで作動した後に、作動流体の流通を停止することで、車両の安定性を確保しながら、電力の消費を抑えることができる。
【0057】
サスペンションシステム(車両100)において、エアサスペンション6へ作動流体を供給するエアタンク31と、エアタンク31とエアサスペンション6との間の通路を開閉するバルブ32と、を備え、バルブ32は、電力を停止した時に通路を閉じる。
【0058】
これにより、通路を閉じた状態では電力を消費しないので、車高調整機能の停止時の消費電力を抑えることができる。
【0059】
また、サスペンションシステム(車両100)は、電源OFFで閉じるバルブの動作を止めることによる省電力化と同時に、コンプレッサ30の動作も止めるため、より省電力化を図ることができる。
【0060】
サスペンションシステム(車両100)において、車体1における各車輪3の位置での車高を調整する車高調整装置5と、車高調整装置5による車高調整を制御する車高制御手段11と、を備え、所定の車高は、上下に所定の幅を備えた領域であり、車高制御手段11は、電力供給部に異常が発生したときに車高が領域外である場合、領域の境界に車高を調整する。
【0061】
これにより、安定性を確保できる車高を領域として制御することで、不要な車高調整を減らすことができる。また、領域外だった場合は、近い境界に車高を調整することで、必要最低限の車高調整だけにして、電力消費を抑えることができる。
【0062】
サスペンションシステム(車両100)において、車高制御手段11は、電力供給部に発生した異常が解消された場合は、異常の発生前の目標車高に戻すように車高を調整する。
【0063】
これにより、異常が解消された場合は、元の車高調整に復帰することができる。また、境界に車高を調整しているので、より素早く元の車高に戻すことができる。
【0064】
上記した実施形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 車体
3,3fr,3fl,3rr,3rl 車輪
5 車高調整装置
6 エアサスペンション(サスペンション)
7 可変減衰力ダンパ
9 サスペンションECU
10 ECU(電子制御装置)
11 車高制御手段
12 省電力手段
15 圧縮空気制御ユニット(制御ユニット)
20,20fr,20fl,20rr,20rl 車高センサ
30 コンプレッサ
31 エアタンク
32~38 第1バルブ~第7バルブ
39 圧力センサ
100 サスペンションシステム(車両)
IG イグニッションスイッチ(電力供給部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9