(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157651
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】送風機および室内機
(51)【国際特許分類】
F04D 17/04 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
F04D17/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021061997
(22)【出願日】2021-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 大貴
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB26
3H130AB54
3H130AC11
3H130BA03A
3H130BA17A
3H130BA66A
3H130CA05
3H130EA07A
3H130EB01A
(57)【要約】
【課題】騒音レベルの増大を抑制しつつ、送風性能の低下を抑制する。
【解決手段】送風機は、貫流ファンと、貫流ファンの前面側に配置される前面側舌部14と、貫流ファンの背面側に配置される背面側舌部15とを備えている。前面側舌部14のうちの貫流ファンに対向する前面側ファン対向面54は、凹凸が形成されている複数の前面側凹凸部分58と、凹凸が形成されていない複数の前面側平坦部分59とを備えている。背面側舌部15のうちの貫流ファンに対向する背面側ファン対向面64は、凹凸が形成されている複数の背面側凹凸部分65と、凹凸が形成されていない複数の背面側平坦部分66とを備えている。複数の背面側凹凸部分65は、貫流ファンを挟んで複数の前面側平坦部分59にそれぞれ向かい合っている。複数の背面側平坦部分66は、貫流ファンを挟んで複数の前面側凹凸部分58にそれぞれ向かい合っている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫流ファンと、
回転軸を中心に前記貫流ファンを回転させる機構と、
前記貫流ファンの前面側に配置される前面側舌部と、
前記貫流ファンの背面側に配置される背面側舌部とを備え、
前記前面側舌部のうちの前記貫流ファンに対向する前面側ファン対向面は、
凹凸が形成されている複数の前面側凹凸部分と、
凹凸が形成されていない複数の前面側平坦部分とを有し、
前記背面側舌部前記貫流ファンに対向する背面側ファン対向面は、
凹凸が形成されている複数の背面側凹凸部分と、
凹凸が形成されていない複数の背面側平坦部分とを有し、
前記複数の背面側凹凸部分は、前記貫流ファンを挟んで前記複数の前面側平坦部分にそれぞれ向かい合い、
前記複数の背面側平坦部分は、前記貫流ファンを挟んで前記複数の前面側凹凸部分にそれぞれ向かい合う
送風機。
【請求項2】
前記複数の前面側凹凸部分には、前記前面側ファン対向面から窪む溝が形成され、
前記複数の背面側凹凸部分には、前記背面側ファン対向面から窪む溝が形成される
請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記貫流ファンは、前記回転軸と平行に並ぶ複数の羽根車を有し、
前記複数の羽根車の各々は、
前記複数の前面側凹凸部分のうちの少なくとも1つの前面側凹凸部分に対向し、
前記複数の背面側凹凸部分のうちの少なくとも1つの背面側凹凸部分に対向する
請求項1または請求項2に記載の送風機。
【請求項4】
前記前面側舌部の先端には、凹凸が形成され、
前記背面側舌部の先端には、凹凸が形成される
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の送風機。
【請求項5】
前記前面側ファン対向面には、前記回転軸に平行である直線に沿う段差が形成され、
前記段差には、前記回転軸に平行に並ぶ複数の凹凸が形成される
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の送風機。
【請求項6】
熱交換器と、
前記熱交換器を通過した空気を送風する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の送風機
とを備える室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、送風機および室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の翼を備える貫流ファンを回転させることにより送風する送風機が設けられた空気調和機の室内機が知られている。貫流ファンが格納されるケーシングは、貫流ファンの近傍に配置される舌部を備えている(特許文献1~5)。舌部には、貫流ファンと舌部との間で発生する翼ピッチ音を低減するために、様々な凹凸が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-70519号公報
【特許文献2】特開2014-70756号公報
【特許文献3】特開2014-70755号公報
【特許文献4】特開2014-152724号公報
【特許文献5】特開2014-190543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような送風機は、また、送風の流量が所定の範囲に含まれるときにサージングを発生させ、送風性能を低下させるという問題がある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、貫流ファンと舌部との間で発生する翼ピッチに起因する騒音を低減しつつ、送風性能の低下を抑制する送風機および室内機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による送風機は、貫流ファンと、回転軸を中心に前記貫流ファンを回転させる機構と、前記貫流ファンの前面側に配置される前面側舌部と、前記貫流ファンの背面側に配置される背面側舌部とを備えている。前記前面側舌部のうちの前記貫流ファンに対向する前面側ファン対向面は、凹凸が形成されている複数の前面側凹凸部分と、凹凸が形成されていない複数の前面側平坦部分とを有している。前記背面側舌部のうちの前記貫流ファンに対向する背面側ファン対向面は、凹凸が形成されている複数の背面側凹凸部分と、凹凸が形成されていない複数の背面側平坦部分とを有している。前記複数の背面側凹凸部分は、前記貫流ファンを挟んで前記複数の前面側平坦部分にそれぞれ向かい合う。前記複数の背面側平坦部分は、前記貫流ファンを挟んで前記複数の前面側凹凸部分にそれぞれ向かい合う。
【発明の効果】
【0007】
開示の送風機および室内機は、騒音レベルの増大を抑制しつつ、送風性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例の送風機が設けられた室内機を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施例の送風機を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、前面側舌部のうちの2つの羽根車に対応する部分を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、背面側舌部のうちの2つの羽根車に対向する部分を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、前面側舌部と背面側舌部とを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる送風機および室内機について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例0010】
実施例の送風機1は、
図1に示されているように、空気調和機の室内機10に設けられている。
図1は、実施例の送風機1が設けられた室内機10を示す断面図である。空気調和機は、室内機10を備え、図示されていない室外機を備えている。室外機は、屋外に設置されている。室内機10は、屋外から隔てられた空調室の壁面に設置されている。室内機10は、送風機1と筐体2と熱交換器3とを備えている。筐体2の内部には、空気通路5が形成されている。筐体2の上部には、空気通路5と筐体2の外部とを連通させる吸込み口6が形成されている。熱交換器3は、空気通路5に配置されている。送風機1は、筐体2の内部のうちの下側の領域に配置され、空気通路5のうちの熱交換器3の下流側の領域に配置されている。
【0011】
送風機1は、ファンケーシング7と貫流ファン8とを備えている。ファンケーシング7は、空気通路5のうちの熱交換器3の下流側の領域に配置され、筐体2に固定され、または、筐体2と一体に形成されている。ファンケーシング7には、送風路11と吹き出し口12とが形成されている。送風路11は、ファンケーシング7の内部に形成されている。送風路11の一端は、空気通路5のうちの送風機1と熱交換器3との間の領域に接続されている。吹き出し口12は、ファンケーシング7の下端に配置されている。送風路11の他端は、吹き出し口12に接続され、吹き出し口12を介して室内機10の筐体2の外部に接続されている。
【0012】
貫流ファン8は、送風路11に配置されている。ファンケーシング7は、前面側舌部14と背面側舌部15とを備えている。前面側舌部14は、送風路11の前面側に配置されている。背面側舌部15は、送風路11の背面側に配置されている。
【0013】
図2は、実施例の送風機1を示す斜視図である。貫流ファン8は、概ね円柱状に形成されている。貫流ファン8は、ファンケーシング7の長手方向(図の軸方向35)に沿うように送風路11に配置され、回転軸16を中心軸として回転可能にファンケーシング7に支持されている。貫流ファン8は、複数の羽根車31と複数の仕切板32と第1端板33と第2端板34とを備えている。複数の羽根車31は、回転軸16に平行である軸方向35に並び、複数の仕切板32を介して互いに固定されている。複数の羽根車31のうちの1つの羽根車36は、
図1に示されているように、複数の翼41を備えている。複数の翼41の各々は、いわゆる流線形に形成されている。複数の翼41は、回転軸16を中心とする円周方向に並んでいる。複数の翼41の各々は、回転軸16に平行である直線に沿うように配置されている。複数の羽根車31のうちの羽根車36と異なる他の羽根車は、羽根車36と同様に、複数の翼41を備えている。
【0014】
複数の仕切板32は、それぞれ、概ね円板状に形成されている。複数の仕切板32は、
図2に示されているように、それぞれ、回転軸16に直交する複数の平面にそれぞれ沿うように、配置されている。複数の仕切板32の各々は、複数の羽根車31のうちの2つの羽根車の間に配置され、その2つの羽根車の複数の翼41に固定されている。
【0015】
第1端板33は、概ね円板状に形成されている。第1端板33は、回転軸16に直交する平面に沿うように貫流ファン8の一端に配置され、複数の羽根車31のうちの一端に配置される第1羽根車37の複数の翼41に固定されている。第2端板34は、概ね円板状に形成されている。第2端板34は、回転軸16に直交する平面に沿うように貫流ファン8の他端に配置され、複数の羽根車31のうちの他端に配置される第2羽根車38の複数の翼41に固定されている。複数の羽根車31のうちの第1羽根車37と第2羽根車38とに異なる第3羽根車36は、第1羽根車37と第2羽根車38との間に配置されている。
【0016】
送風機1は、図示されていないモータ部をさらに備えている。モータ部は、
図1に示されているように、回転軸16を中心に貫流ファン8を予め定められた回転方向40に回転させる機構である。複数の羽根車31の各々は、貫流ファン8が回転方向40に回転することにより、空気が送風路11を吹き出し口12に向かって流れるように、形成されている。
【0017】
図3は、前面側舌部14のうちの2つの羽根車に対応する部分を示す斜視図である。前面側舌部14のうちの2つの羽根車に対応する部分の軸方向35における位置は、2つの羽根車の軸方向35における位置に等しい。前面側舌部14は、本体部分51と先端部分52と段差部分53とを備えている。本体部分51には、前面側ファン対向面54が形成されている。前面側ファン対向面54は、回転軸16を中心軸とする円柱の側面に概ね沿うように形成されている。前面側ファン対向面54は、貫流ファン8に対向し、貫流ファン8を挟んで背面側舌部15に対向している。先端部分52は、前面側舌部14のうちの上側の端に形成されている部分であり、本体部分51より上側に配置されている。先端部分52には、貫流ファン8に対向する先端側ファン対向面55が形成されている。先端側ファン対向面55は、先端側ファン対向面55と回転軸16との間の距離が前面側ファン対向面54と回転軸16との間の距離より長くなるように、前面側ファン対向面54より前面側に形成されている。
【0018】
先端部分52には、さらに、複数の凸部56が形成されている。複数の凸部56は、先端部分52の上側の端がのこぎり状に形成されるように、形成されている。すなわち、複数の凸部56は、前面側舌部14の上側の端から上側に向かって突出するように形成され、予め定められた間隔で軸方向35に並んでいる。複数の凸部56は、さらに、前面側舌部14のうちの1つの羽根車に対応する部分に複数の凸部56のうちの1つの凸部が形成されるように、形成されている。
【0019】
段差部分53は、前面側舌部14のうちの本体部分51と先端部分52との間に形成されている。段差部分53には、回転軸16に平行である直線に沿う段差面57が形成されている。段差面57は、前面側ファン対向面54に繋がっており、先端側ファン対向面55に繋がっている。
【0020】
前面側ファン対向面54は、複数の前面側凹凸部分58と複数の前面側平坦部分59とを含んでいる。複数の前面側凹凸部分58と複数の前面側平坦部分59とは、複数の前面側凹凸部分58のうちの2つの前面側凹凸部分の間に、複数の前面側平坦部分59のうちの1つの前面側平坦部分が配置されるように、軸方向35に交互に並んでいる。すなわち、複数の前面側凹凸部分58は、前面側舌部14のうちの羽根車36に対応する部分に複数の前面側凹凸部分58のうちの1つの前面側凹凸部分が形成されるように、予め定められた間隔で軸方向35に並んでいる。複数の前面側平坦部分59は、前面側舌部14のうちの1つの羽根車に対応する部分に複数の前面側平坦部分59のうちの1つの前面側平坦部分が形成されるように、予め定められた間隔で軸方向35に並んでいる。
【0021】
複数の前面側凹凸部分58の各々には、複数の溝が形成されている。複数の溝は、前面側ファン対向面54から窪むように形成され、複数の平行線に沿うように形成されている。複数の平行線は、前面側ファン対向面54が沿う平面に平行であり、かつ、回転軸16に直交する。複数の前面側平坦部分59の各々は、回転軸16を中心軸とする円柱の側面に沿うように形成され、凹凸が形成されないように滑らかに形成されている。
【0022】
図4は、背面側舌部15のうちの2つの羽根車に対向する部分を示す斜視図である。背面側舌部15のうちの2つの羽根車に対応する部分の軸方向35における位置は、2つの羽根車の軸方向35における位置に等しい。背面側舌部15は、先端部分61と本体部分62とを備えている。先端部分61は、背面側舌部15のうちの上側の端に形成されている部分である。先端部分61には、複数の凸部63が形成されている。複数の凸部63は、先端部分61の上側の端がのこぎり状に形成されるように、形成されている。すなわち、複数の凸部63は、背面側舌部15の上側の端から上側に向かって突出するように形成され、予め定められた間隔で軸方向35に並んでいる。複数の凸部63は、さらに、背面側舌部15のうちの1つの羽根車に対応する部分に複数の凸部63のうちの1つの凸部が形成されるように、形成されている。
【0023】
本体部分62には、背面側ファン対向面64が形成されている。背面側ファン対向面64は、回転軸16を中心軸とする円柱の側面に概ね沿うように形成されている。背面側ファン対向面64は、貫流ファン8に対向し、貫流ファン8を挟んで前面側舌部14に対向している。背面側ファン対向面64は、複数の背面側凹凸部分65と複数の背面側平坦部分66とを含んでいる。複数の背面側凹凸部分65と複数の背面側平坦部分66とは、複数の背面側凹凸部分65のうちの2つの背面側凹凸部分の間に、複数の背面側平坦部分66のうちの1つの背面側平坦部分が配置されるように、軸方向35に交互に並んでいる。すなわち、複数の背面側凹凸部分65は、背面側舌部15のうちの1つの羽根車に対応する部分に複数の背面側凹凸部分65のうちの1つの背面側凹凸部分が形成されるように、予め定められた間隔で軸方向35に並んでいる。複数の背面側平坦部分66は、背面側舌部15のうちの1つの羽根車36に対応する部分に複数の背面側平坦部分66のうちの1つの背面側平坦部分が形成されるように、予め定められた間隔で軸方向35に並んでいる。
【0024】
複数の背面側凹凸部分65の各々には、複数の溝が形成されている。複数の溝は、複数の平行線に沿うように形成され、背面側ファン対向面64から窪むように形成されている。複数の平行線は、背面側ファン対向面64が沿う平面に平行であり、かつ、回転軸16に垂直である。複数の背面側平坦部分66の各々は、回転軸16を中心軸とする円柱の側面に沿うように形成され、凹凸が形成されないように滑らかに形成されている。
【0025】
図5は、前面側舌部14と背面側舌部15とを示す斜視図である。背面側ファン対向面64は、複数の背面側凹凸部分65が前面側舌部14の複数の前面側平坦部分59に対向するように、かつ、複数の背面側平坦部分66が前面側舌部14の複数の前面側凹凸部分58に対向するように、形成されている。すなわち、複数の背面側凹凸部分65の軸方向35における位置は、複数の前面側平坦部分59の軸方向35における位置に等しい。複数の背面側平坦部分66の軸方向35における位置は、複数の前面側凹凸部分58の軸方向35における位置に等しい。
【0026】
[空気調和機の動作]
空気調和機は、室内機10と室外機との間で冷媒を循環させる。室外機は、冷媒と外気とを熱交換する。送風機1は、回転軸16を中心に貫流ファン8を回転方向40に回転させる。送風機1は、貫流ファン8が回転することにより、空調室の空気を室内機10の吸込み口6から空気通路5に供給する。熱交換器3は、吸込み口6から空気通路5に供給された空気と冷媒とを熱交換し、空気通路5に供給された空気の温度を調節する。そして、熱交換器3により温度が調節された空気は吹き出し口12から空調室に吹き出される。空気調和機は、このような動作により室内機10が設置された空調室を冷房または暖房することができる。
【0027】
送風機1は、前面側舌部14に段差面57が形成されていることにより、送風路11に入り込む空気の流れの乱れを抑制し、騒音の発生を低減することができる。送風機1は、前面側舌部14の先端に複数の凸部56が形成されていることにより、さらに、送風路11に入り込む空気の流れの乱れを抑制し、騒音の発生を低減することができる。送風機1は、背面側舌部15の先端に複数の凸部63が形成されていることにより、さらに、送風路11に入り込む空気の流れの乱れを抑制し、騒音の発生を低減することができる。
【0028】
前面側ファン対向面54と貫流ファン8との間では、貫流ファン8が回転して前面側ファン対向面54の付近を通過するときに、すなわち、複数の翼41の各々が前面側ファン対向面54に接近したり前面側ファン対向面54から遠ざかったりすることより、当該箇所で圧力変動が生じる。当該箇所では、この圧力変動に起因して翼ピッチ音が発生する。翼ピッチ音は、nz音とも呼ばれ、翼枚数×回転数を基本周波数とする騒音成分である。騒音成分には、前面側翼ピッチ音の他、貫流ファン8と前面側の熱交換器3の間で発生する気流の乱れに起因して生じる前面側風切り音が含まれる。前面側風切り音の周波数は、貫流ファン8と前面側の熱交換器3の間の空気の流れの流速に応じて変化する。前面側風切り音は、前面側凹凸側風切り音と前面側平坦側風切り音とを含んでいる。前面側平坦側風切り音は、前面側凹凸側風切り音と異なっている。具体的には、複数の前面側凹凸部分58があることにより、平坦な場合(複数の前面側平坦部分59)と比較して貫流ファン8との隙間の距離が大きい部分(溝)が形成されているが、当該距離が大きい程空気の流速が小さく、前面側風切り音の周波数は流速に応じて変化するため、前面側平坦側風切り音の周波数は、前面側凹凸側風切り音の周波数と異なっている。前面側ファン対向面54の軸方向35の一端から他端にかけて複数の前面側凹凸部分58の様な溝形状が形成されない平坦な面だった場合、前面側熱交換器26の軸方向35の一端から他端にかけて一定の周波数の風切り音が発生するため騒音レベルが高く、また、翼ピッチ音の周波数と重なった場合に騒音レベルがさらに増大する。本発明では、翼ピッチ音と共鳴する音源となる部分を少なくすることができ、共鳴音による騒音が低減される。送風機1は、前面側凹凸側風切り音と前面側平坦側風切り音とが異なっていることにより、翼ピッチ音と共鳴する音源となる部分を少なくすることができ、騒音レベルの増大を抑制することができる。
【0029】
背面側ファン対向面64と貫流ファン8との間では、気流の乱れに起因して背面側風切り音が発生する。背面側風切り音の周波数は、貫流ファン8と背面側の熱交換器3の間の空気の流れの流速に応じて変化する。背面側風切り音は、背面側凹凸側風切り音と背面側平坦側風切り音とを含んでいる。背面側平坦側翼ピッチ音は、背面側凹凸側翼ピッチ音と異なっている。具体的には、複数の背面側凹凸部分65があることにより、平坦な場合(複数の背面側平坦部分66)と比較して貫流ファン8との隙間の距離が大きい部分(溝)が形成されている。当該距離が大きい程空気の流速が小さく、翼ピッチ音の周波数は流速に応じて変化するため、背面側平坦側風切り音の周波数は、背面側凹凸側風切り音の周波数と異なっている。具体的には、複数の背面側凹凸部分65があることにより、平坦な場合(複数の背面側平坦部分66)と比較して貫流ファン8との隙間の距離が大きい部分(溝)が形成されているが、当該距離が大きい程空気の流速が小さく、背面側風切り音の周波数は流速に応じて変化するため、前面側平坦側風切り音の周波数は、前面側凹凸側風切り音の周波数と異なっている。前面側風切り音と同様に、翼ピッチ音と共鳴する音源となる部分を少なくすることができ、共鳴音による騒音が低減される。送風機1は、背面側凹凸側風切り音と背面側平坦側風切り音とが異なっていることにより、翼ピッチ音と共鳴する音源となる部分を少なくすることができ、騒音レベルの増大を抑制することができる。
【0030】
[実施例の送風機1の効果]
実施例の送風機1は、貫流ファン8と、回転軸16を中心に貫流ファン8を回転させる機構と、貫流ファン8の前面側に配置される前面側舌部14と、貫流ファン8の背面側に配置される背面側舌部15とを備えている。前面側舌部14のうちの貫流ファン8に対向する前面側ファン対向面54は、凹凸が形成されている複数の前面側凹凸部分58と、凹凸が形成されていない複数の前面側平坦部分59とを備えている。背面側舌部15のうちの貫流ファン8に対向する背面側ファン対向面64は、凹凸が形成されている複数の背面側凹凸部分65と、凹凸が形成されていない複数の背面側平坦部分66とを備えている。複数の背面側凹凸部分65は、貫流ファン8を挟んで複数の前面側平坦部分59にそれぞれ向かい合っている。複数の背面側平坦部分66は、貫流ファン8を挟んで複数の前面側凹凸部分58にそれぞれ向かい合っている。
【0031】
実施例の送風機1は、前面側舌部14に凹凸が形成され、背面側舌部15に凹凸が形成されることにより、貫流ファン8と前面側舌部14との間で発生する翼ピッチ音が発生するタイミングをずらして騒音レベルを低減し、貫流ファン8と背面側舌部15との間で発生する翼ピッチ音が発生するタイミングをずらして騒音レベルを低減することができる。複数の前面側凹凸部分58や複数の背面側凹凸部分65は、貫流ファン8との隙間の距離が大きい部分(溝)を有するため、空気の流速を下げる効果を有している。もし複数の前面側凹凸部分58が複数の背面側凹凸部分65に対向する場合、過度に流速が低下して流れが不安定になり、サージングが発生するおそれがある。実施例の送風機1は、複数の前面側凹凸部分58が複数の背面側平坦部分66に対向し、複数の前面側平坦部分59が複数の背面側凹凸部分65に対向している。これにより、サージングの発生を防止し、送風性能の低下を抑制することができる。
【0032】
ところで、既述の実施例の送風機1の複数の前面側凹凸部分58と複数の背面側凹凸部分65とには、前面側ファン対向面54または背面側ファン対向面64から窪む複数の溝が形成されているが、複数の溝と異なる他の構造物が形成されてもよい。その構造物としては、前面側ファン対向面54または背面側ファン対向面64から突出する複数のリブが例示される。要するに、前面側舌部14(背面側舌部15)と貫流ファン8との隙間の距離を、複数の前面側平坦部分59(複数の背面側平坦部分66)と異ならせる構造物であれば良い。このような構造物が形成されている送風機も、既述の実施例の送風機1と同様に、翼ピッチ音を低減しつつ、送風性能の低下を抑制することができる。
【0033】
ところで、既述の実施例の送風機1の貫流ファン8の複数の羽根車31の各々は、複数の前面側凹凸部分58のうちの1つの前面側凹凸部分に対向しているが、複数の前面側凹凸部分58のうちの2つ以上の前面側凹凸部分に対向してもよい。また、複数の羽根車31の各々は、複数の背面側凹凸部分65のうちの1つの背面側凹凸部分に対向しているが、複数の背面側凹凸部分65のうちの2つ以上の背面側凹凸部分に対向してもよい。複数の羽根車31の各々が2つ以上の前面側凹凸部分に対向し2つ以上の背面側凹凸部分に対向する送風機も、既述の実施例の送風機1と同様に、騒音レベルの増大を抑制しつつ、送風性能の低下を抑制することができる。
【0034】
また、実施例の送風機1の前面側舌部14の先端には、凹凸が形成され、背面側舌部15の先端には、凹凸が形成されている。このとき、実施例の送風機1は、送風路11に入り込む空気の流れの乱れを抑制し、騒音の発生を低減することができる。ところで、既述の実施例の送風機1の前面側舌部14の先端と背面側舌部15の先端とには、凹凸が形成されているが、凹凸が形成されていなくてもよい。前面側舌部14の先端と背面側舌部15の先端とに凹凸が形成されていない送風機も、既述の実施例の送風機1と同様に、騒音レベルの増大を抑制しつつ、送風性能の低下を抑制することができる。
【0035】
また、実施例の送風機1の前面側ファン対向面54には、回転軸16に平行である直線に沿う段差面57が形成されている。実施例の送風機1は、段差面57が形成されていることで、前面側ファン対向面54と段差面57とに面する空間に空気が流れ込むことで小さな渦が形成される。この小さな渦は送風路11に入り込む空気の流れの乱れを抑制し、騒音の発生を低減することができる。また、実施例の送風機1の前面側舌部14の段差面57と先端側ファン対向面55との境界の周辺に複数の溝が形成されていてもよい。このような複数の溝が形成された送風機は、さらに、送風路11に入り込む空気の流れの乱れを抑制し、騒音の発生をより低減することができる。
【0036】
ところで、既述の実施例の送風機1は、前面側ファン対向面54と先端側ファン対向面55との間に段差面57が形成されているが、前面側ファン対向面54と先端側ファン対向面55との間に段差が形成されていなくてもよい。すなわち、前面側ファン対向面54と先端側ファン対向面55との両方が、回転軸16を中心軸とする円柱の側面に沿うように形成されてもよい。前面側ファン対向面54と先端側ファン対向面55との間に段差がない送風機も、既述の実施例の送風機1と同様に、騒音レベルの増大を抑制しつつ、送風性能の低下を抑制することができる。
【0037】
ところで、既述の実施例の送風機1は、空気調和機の室内機10に利用されているが、室内機10と異なる他の装置に利用されてもよい。その装置としては、エアカーテン装置が例示される。この場合も、送風機1は、騒音レベルの増大を抑制し、送風性能の低下を抑制することができる。
【0038】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。