(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157698
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ビニル変性エポキシ樹脂組成物、水性被覆剤
(51)【国際特許分類】
C08F 283/00 20060101AFI20221006BHJP
C08G 59/14 20060101ALI20221006BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20221006BHJP
C08F 2/44 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C08F283/00
C08G59/14
C08F290/14
C08F2/44 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062063
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内田 智也
【テーマコード(参考)】
4J011
4J026
4J036
4J127
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011BA04
4J011CA05
4J011CC07
4J011PA86
4J011PC08
4J026AB05
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4J026BA05
4J026BA25
4J026BA27
4J026BA32
4J026BA34
4J026BA36
4J026BB04
4J026DA02
4J026DA08
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4J026DB09
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4J026EA06
4J026FA07
4J026GA06
4J026GA07
4J036AD08
4J036CB04
4J036CB10
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC06
4J036DC12
4J036EA04
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4J036JA01
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB131
4J127BB221
4J127BC061
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4J127BD181
4J127BE311
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4J127BE34Y
4J127BF301
4J127BF30Y
4J127BF511
4J127BF51Y
4J127BG101
4J127BG10Z
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4J127CB161
4J127CC231
4J127DA02
4J127DA06
4J127DA08
4J127DA11
4J127DA12
4J127FA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水に対して良く分散し、かつ乾燥性に優れる水性被覆剤を与えるビニル変性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)及び(B)を必須の反応成分とする重合体を含む、ビニル変性エポキシ樹脂組成物。
(A)ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂(a1)、アミン類(a2)及びグリシジル基含有ビニルモノマー(a3)からなる反応生成物である変性エポキシ樹脂
(B)(メタ)アクリルアミド類(b1)を含むモノマー成分
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び(B)を必須の反応成分とする重合体を含む、ビニル変性エポキシ樹脂組成物。
(A)ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂(a1)、アミン類(a2)及びグリシジル基含有ビニルモノマー(a3)からなる反応生成物である変性エポキシ樹脂
(B)(メタ)アクリルアミド類(b1)を含むモノマー成分
【請求項2】
(a2)成分が、アルカノールアミンを含む請求項1に記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(b1)成分が、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(b1)成分の使用量が、不揮発分重量で、(A)成分100重量部に対して、0.4~30重量部である請求項1~3のいずれかに記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分が、更にカルボキシル基含有ビニルモノマー及び/又はそのエステル(b2)を含む請求項1~4のいずれかに記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(b1)成分及び(b2)成分の使用比率が、不揮発分重量で、(b1)/(b2)=0.01~30である請求項5に記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物を含む水性被覆剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル変性エポキシ樹脂組成物、水性被覆剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から水性被覆剤により得られる塗膜は、溶剤系被覆剤に比べ防錆性に劣る特性を有するが、かかる防錆性を改良したものとして、脂肪酸変性エポキシエステルの存在下に、ビニル単量体を重合して得られるビニル変性エポキシエステルが公知化されている(特許文献1)。当該ビニル変性エポキシエステルは、エポキシ樹脂を原料に使用しているため、比較的良好な防錆性を有し、脂肪酸成分により常温硬化が期待でき、しかもビニル単量体成分の選択により水性化が可能であるという特徴を有する。
【0003】
しかしながら、水性被覆剤の適用分野が拡大するに伴い、水性被覆剤に対する要求性能も高まり、防錆性や耐水性のレベルアップや、塗膜の高い初期硬度が求められており、前記ビニル変性エポキシエステル等では当該要求を満足できない。例えば、当該樹脂中の脂肪酸成分の酸化重合に伴って塗膜の硬度が上昇するが、乾燥に長時間を要し、また塗膜が得られたとしても、その硬度が目的値に到達するのに数日を要するため、塗膜形成初期の傷つきが問題となりやすく、また当該樹脂から調製された塗膜が浸水時に白化する現象(以下、耐水白化という)も課題となっていた。かかる耐水白化は、ビニル変性エポキシエステル中の脂肪酸成分の比率を増加させることにより改善されるが、塗膜の硬度が一層低下するという問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、短時間で乾燥でき(優れた乾燥性を有し)、得られた塗膜の硬度が高く、かつ水による白化も生じにくいビニル変性エポキシ樹脂組成物として、芳香族エポキシ樹脂と脂肪族エポキシ樹脂とを併用してなるビニル変性エポキシ樹脂水性物を提案した(特許文献2)。しかしながら、当該ビニル変性エポキシ樹脂水性物は、水性被覆剤を調製する際に、水に対して分散し難く、さらに乾燥性も乏しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-269249号公報
【特許文献2】特開2005-120340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水に対して良く分散し、かつ乾燥性にも優れる水性被覆剤を与えるビニル変性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討したところ、特定の官能基を有するビニルモノマーと共重合させたビニル変性エポキシ樹脂組成物が、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のビニル変性エポキシ樹脂組成物、水性被覆剤に関する。
【0008】
1.下記(A)及び(B)を必須の反応成分とする重合体を含む、ビニル変性エポキシ樹脂組成物。
(A)ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂(a1)、アミン類(a2)及びグリシジル基含有ビニルモノマー(a3)からなる反応生成物である変性エポキシ樹脂
(B)(メタ)アクリルアミド類(b1)を含むモノマー成分
【0009】
2.(a2)成分が、アルカノールアミンを含む前項1に記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物。
【0010】
3.(b1)成分が、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である前項1又は2に記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物。
【0011】
4.(b1)成分の使用量が、不揮発分重量で、(A)成分100重量部に対して、0.4~30重量部である前項1~3のいずれかに記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物。
【0012】
5.(B)成分が、更にカルボキシル基含有ビニルモノマー及び/又はそのエステル(b2)を含む前項1~4のいずれかに記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物。
【0013】
6.(b1)成分及び(b2)成分の使用比率が、不揮発分重量で、(b1)/(b2)=0.01~30である前項5に記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物。
【0014】
7.前項1~6のいずれかに記載のビニル変性エポキシ樹脂組成物を含む水性被覆剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明のビニル変性エポキシ樹脂組成物によれば、水性被覆剤を調製する際に、水に対して良く分散し、かつ乾燥性にも優れる。また、当該水性被覆剤を用いて作製した塗膜は、一次密着性、耐水白化性及び耐水接着性にも優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のビニル変性エポキシ樹脂組成物は、(A)特定の変性エポキシ樹脂(以下、(A)成分という)及び(B)特定のモノマー成分(以下、(B)成分という)を構成成分とする重合体を含むものである。以下、各成分について詳細に説明する。
【0017】
[(A)成分について]
(A)成分は、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂(a1)(以下、(a1)成分という)、アミン類(a2)(以下、(a2)成分という)及びグリシジル基含有ビニルモノマー(a3)(以下、(a3)成分という)からなる反応生成物である。
【0018】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノール類並びに、エピクロルヒドリン若しくは2-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシドの反応生成物等が挙げられる。
【0019】
ビスフェノール類としては、特に限定されず、フェノール若しくは2,6-ジハロフェノール(以下、フェノール類という)、並びにアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等)の反応生成物;フェノール類及びケトン(例えば、アセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等)の反応生成物;ジヒドロキシフェニルスルフィドの過酸による酸化反応生成物;ハイドロキノン同士のエーテル化反応生成物等が挙げられ、詳細には、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールΑ)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも塗膜の硬度及び防錆性に優れる点から、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。
【0020】
(a1)成分には、ビスフェノール型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂(以下、他のエポキシ樹脂ともいう)を含めても良い。他のエポキシ樹脂を用いることにより、ビニル変性エポキシ樹脂組成物のガラス転移温度や重量平均分子量を調整でき、塗膜の防錆性や耐水密着性に優れたものとなりやすい。他のエポキシ樹脂の具体例としては、特に限定されず、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0021】
脂肪族エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、脂肪族二塩基酸のグリシジルエステル、脂肪族ポリオールのグリシジルエーテル、ポリエーテルポリオールのグリシジルエーテル等を含む樹脂が挙げられる。
【0022】
脂肪族二塩基酸としては、特に限定されず、例えば、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、8,11-ジメチル-7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボン酸、7-エチルオクタデカンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
脂肪族ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等が挙げられる。
【0024】
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されず、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0025】
芳香族エポキシ樹脂としては、特に限定されず、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールエタン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
ビスフェノール型エポキシ樹脂及び他のエポキシ樹脂の使用比率としては、特に限定されないが、不揮発分重量で、(ビスフェノール型エポキシ樹脂)/(他のエポキシ樹脂)=30/70~100/0程度が好ましい。
【0027】
(a1)成分の物性としては、エポキシ基濃度が、0.4×10-3~3.5×10-3eq/g程度が好ましく、0.5×10-3~2.5×10-3eq/g程度がより好ましく、0.8×10-3~2.1×10-3eq/g程度が特に好ましい。エポキシ基濃度が当該範囲のものを用いると、(a2)成分と反応させることで、塗膜が高い硬度と優れた防錆性を有するものとなる。
【0028】
(a1)成分のエポキシ基濃度は、(a1)成分1gあたりに含まれるエポキシ基の数で表される。
【0029】
(a1)成分を1種類用いた場合のエポキシ基濃度は、エポキシ当量の逆数(=1/(a1)成分のエポキシ当量)で算出される。
【0030】
(a1)成分を2種類用いた場合、(a1)成分のエポキシ基濃度は、各々の仕込み重量及びエポキシ当量を用いて、(式1)から算出される。なお、2種類の(a1)成分をそれぞれ(a1-1)成分及び(a1-2)成分で表記する。
【0031】
【0032】
また同様に、(a1)成分n種類を用いる場合、(a1)成分のエポキシ基濃度は、(式2)から算出される。
【0033】
【0034】
(a2)成分は、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。例えば、アルカノールアミン、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。(a2)成分を用いることにより、高分子量化された(A)成分が得られ、塗膜とした際に防錆性や耐水密着性が付与される。
【0035】
アルカノールアミンとしては、特に限定されず、例えば、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等の第1級アルカノールアミン;ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジ-2-ヒドロキシブチルアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ベンジルエタノールアミン等の第2級アルカノールアミン;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等の第3級アルカノールアミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0036】
脂肪族アミンとしては、特に限定されず、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ラウリルアミン、n-ステアリルアミン、n-パルミチルアミン、n-オレイルアミン、2-エチルヘキシルアミン等の第1級脂肪族モノアミン;ジエチルアミン、ジn-プロピルアミン、ジn-ブチルアミン等の第2級脂肪族モノアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0037】
脂環族アミンとしては、特に限定されず、例えば、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ノルボニルアミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0038】
芳香族アミンとしては、特に限定されず、例えば、トルイジン、キシリジン、クミジン(イソプロピルアニリン)、ヘキシルアニリン、ノニルアニリン、ドデシルアニリン、ベンジルアミン、フェネチルアミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0039】
これらの(a2)成分の中でも、塗膜が優れた硬度を有する点から、アルカノールアミンを含むことが好ましく、モノエタノールアミンを含むことがより好ましい。また、アルカノールアミンを使用する場合、その使用量も特に限定されず、(a2)成分の合計を100重量%として、通常は1~90重量%であり、好ましくは1~60重量%である。当該範囲とすることで、塗膜が優れた一次密着性、耐水密着性を有する。
【0040】
(a3)成分は、特に限定されず、各種公知のものを使用できる。(a3)成分としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でもグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0041】
(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分の使用比率としては、{((a1)成分のエポキシ基数)+((a3)成分のエポキシ基数)}/((a2)成分のアミノ基の活性水素数)が100/120~100/80程度、好ましくは100/110~100/90程度、より好ましくは100/105~100/95程度である。当該範囲とすることで、(A)成分が高収率で得られ、優れた塗膜性能を発揮しやすくなる。
【0042】
(a1)成分のエポキシ基数は、(a1)成分の仕込み重量を、(a1)成分のエポキシ当量で除した値である。(a1)成分として、(a1-1)成分、(a1-2)成分、・・・、(a1-n)のn種類を用いた場合、前記エポキシ基数は、(式3)から算出される。
【0043】
【0044】
(a3)成分のエポキシ基数も、前述の(a1)成分のエポキシ基数の計算と同じ方法で算出できる。
【0045】
(a2)成分のアミノ基の活性水素数は、(a2)成分の仕込み重量を、(a2)成分のアミン当量で除した値である。(a2)成分が複数の場合、前記活性水素数は、(式4)から算出される。
【0046】
【0047】
また、(A)成分の構成成分には、必要に応じて、ポリイソシアネートを使用しても良い。
【0048】
ポリイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、ブロックイソシアネート等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0049】
芳香族ポリイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、オルトトルイジンジイソシアネート、ポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0050】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0051】
脂環族ポリイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0052】
ブロックイソシアネートとしては、特に限定されず、例えば、前記ポリイソシアネートを各種公知のブロック剤でブロックしてなる化合物等が挙げられる。ブロック剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール等のフェノール系ブロック剤;メチルエチルケトンオキシム、アセトンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸エチル等の活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール等のアルコール系ブロック剤;その他にはアミン系ブロック剤、イミン系ブロック剤、イミド系ブロック剤、イミダゾール系ブロック剤、メルカプタン系ブロック剤等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0053】
ポリイソシアネートの使用量としては、特に限定されないが、{ポリイソシアネートのイソシアネート基数}/{(a1)~(a3)成分の水酸基数}の使用比率で0.005~2程度が好ましく、0.05~0.5程度がより好ましい。
【0054】
ポリイソシアネートのイソシアネート基数は、ポリイソシアネートの仕込みモル量を、ポリイソシアネート1分子あたりのイソシアネート基数で乗じた値である。なお、ポリイソシアネートが複数の場合、前記イソシアネート基数は、各成分のイソシアネート基数の合計である。
【0055】
(a1)成分の水酸基数は、(a1)成分の仕込みモル量に、(a1)成分のエポキシ基が開環したときに生じる水酸基を含む1分子あたりの水酸基数を乗じて算出できる。なお、(a1)成分が複数の成分を含む場合、(a1)成分の水酸基数は、各成分の水酸基数の合計である。なお、(a3)成分の水酸基数も同様である。
【0056】
(a2)成分の水酸基数は、(a2)成分の仕込みモル量に、(a2)成分の1分子あたりの水酸基数を乗じて算出できる。尚、(a2)成分が複数の成分を含む場合、(a2)成分の水酸基数は、各成分の水酸基数の合計である。
【0057】
(A)成分は、(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分、必要に応じて、(a1)以外のエポキシ樹脂、ポリイソシアネートを用いて、各種公知の製造方法により得ることができる。製造条件としては、特に限定されず、例えば、反応温度が通常、50~250℃程度であり、好ましくは80~150℃程度である。また、反応時間も特に限定されず、反応温度に依存して、例えば、通常は3~12時間程度であり、好ましくは3~8時間である。
【0058】
前記製造方法においては、各種公知の溶剤を使用できる。溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル等のエーテル;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n-ブチルセロソルブ、t-ブチルセロソルブ等のセロソルブ;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブアセテート等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。なお、本発明の製造後であれば、希釈溶剤として、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等のアルコールも差し支えなく使用しうる。溶剤の使用量としては、特に限定されず、反応濃度が30~80重量%程度となるように調整すれば良い。
【0059】
得られた(A)成分の物性としては、アミン価が、通常は15~90mgKOH/gであり、好ましくは40~60mgKOH/gである。ここでのアミン価は、JIS K-7237に準拠して測定された値である。
【0060】
[(B)成分について]
(B)成分は、(メタ)アクリルアミド類(b1)(以下、(b1)成分という。)を含むモノマー成分である。(b1)成分を使用すると、水性被覆剤を調製する際に、ビニル変性エポキシ樹脂組成物が水に対して良く分散しやすくなる。また、塗膜にした際の硬度、耐水白化及び耐水密着性も優れやすくなる。
【0061】
(b1)成分としては、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキルアクリルアミド;N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノイソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルアミド;メタクリルアミド、アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、水性被覆剤を調製する際に、ビニル変性エポキシ樹脂組成物が水に対して良く分散しやすく、塗膜が短時間で得られる点から、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドが好ましく、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0062】
(b1)成分の使用量としては、水性被覆剤を調製する際に、ビニル変性エポキシ樹脂組成物が水に対してよく分散する点から、不揮発分重量で、(A)成分100重量部に対して、0.4~30重量部程度が好ましく、0.8~10重量部程度がより好ましい。
【0063】
(B)成分は、更にカルボキシル基含有ビニルモノマー及び/又はそのエステル(b2)(以下、(b2)成分という。)をモノマー成分として使用しても良い。
【0064】
(b2)成分の内、カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のα,β-不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸;前記カルボン酸の無水物;前記カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、水性被覆剤を調製する際に、ビニル変性エポキシ樹脂組成物が水に対して良く分散する点から、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸が好ましく、メタクリル酸、アクリル酸がより好ましい。
【0065】
(b2)成分の内、カルボキシル基含有ビニルモノマーのエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、塗膜の耐水密着性に優れやすい点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチルが好ましい。
【0066】
(b2)成分の使用量としては、水性被覆剤を調製する際に、ビニル変性エポキシ樹脂組成物が水に対してよく分散する点から、不揮発分重量で、(A)成分100重量部に対して、1~40重量部程度が好ましく、1~10重量部程度がより好ましい。
【0067】
また、(b1)成分及び(b2)成分の使用比率は、水性被覆剤を調製する際に、ビニル変性エポキシ樹脂組成物が水に対してよく分散する点から、不揮発分重量で、(b1)/(b2)=0.01~30が好ましく、(b1)/(b2)=0.02~10がより好ましく、0.05~2が更に好ましい。
【0068】
(b2)成分を使用する場合、必要に応じて、カルボジイミドを用いても良い。
【0069】
カルボジイミドとしては、例えば、ポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(1,6-ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-テトラメチレンカルボジイミド)、ポリ(1,3-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’-メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1-メチル-3,5-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(イソプロピルフェニレンカルボジイミド)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド・塩酸塩等が挙げられる。また市販品としては、「カルボジライトE-02」、「カルボジライトV-02」、「カルボジライトV-04」(以上、日清紡ケミカル(株)製)等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0070】
カルボジイミドの使用量としては、{カルボジイミドのイミド基数}/{(b1)成分のカルボン酸基数}の使用比率で0.005~3程度が好ましく、0.05~2程度がより好ましい。
【0071】
カルボジイミドのイミド基数は、カルボジイミドの仕込みモル量を、カルボジイミド1分子あたりのイミド基数で乗じた値である。なお、カルボジイミドが複数の場合、前記イミド基数は、各成分のイミド基数の合計である。
【0072】
(b2)成分のカルボン酸基数は、(b2)成分の仕込みモル量を、(b2)成分1分子あたりのカルボン酸基数で乗じた値である。なお、(b2)成分が複数の場合、前記カルボン酸基数は、各成分のカルボン酸基数の合計である。
【0073】
(B)成分には、必要に応じて、(b1)~(b2)成分以外のモノマー成分(b3)(以下、(b3)成分という)を使用しても良い。
(b3)成分としては、例えば、スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミド-t-ブチルスルホン酸等のスルホン酸類;これらのスルホン酸類のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等のスルホ基含有ビニルモノマー;
スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、アセトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、クロルビニルトルエン等のスチレン類;
酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0074】
(b3)成分の使用量としては、水性被覆剤を調製する際に、ビニル変性エポキシ樹脂組成物が水に対してよく分散する点から、(A)成分100重量部に対して、40重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。
【0075】
(A)成分及び(B)成分の重合方法は限定されないが、溶液重合法が好ましい。その条件としては、特に限定されず、例えば、重合開始剤の存在下で温度が60~150℃程度、好ましくは70~140℃程度であり、時間が1~8時間程度、好ましくは2~6時間程度である。また、系内には溶剤を使用しても良い。
【0076】
重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2′-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ系化合物、また過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキシド、t-ブチルハイドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルペルオキシド等の有機過酸化物等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0077】
重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、1~10重量部程度が好ましい。
【0078】
また溶剤としては、特に限定されず、例えば、(A)成分の製造方法の項で列挙したもの等が挙げられる。溶剤の使用量としては、特に限定されず、反応濃度が30~90重量%程度となるように調整すれば良い。なお、前記製造方法で得られた重合体中には、溶剤が含まれていても良いが、適宜減圧下で留去する等で除き、その含有量を20重量%未満にすることが好ましい。
【0079】
前記製造方法で得られるビニル変性エポキシ樹脂組成物は、酸又は塩基で中和されていても良い。
【0080】
酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸アスパラギン酸等の有機酸等が挙げられる。塩基としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン等のアミン;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0081】
水性被覆剤に使用する場合、本発明のビニル変性エポキシ樹脂組成物に水を加えて溶解ないし分散されたものにするが、水に溶解ないし分散するのを容易にするために、前記樹脂組成物が塩基で中和されている(すなわち、ビニル変性エポキシ樹脂組成物の塩基中和物にする)ことが好ましい。中和後のpHとしては、7~10程度にすることが好ましい。また、そのような塩基としては、乾燥時に揮発しやすい点から、アンモニア、アミンが好ましく、アンモニアがより好ましい。
【0082】
本発明のビニル変性エポキシ樹脂組成物の物性としては、特に限定されないが、例えば、塗膜の優れた硬度の点から、重量平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値)が10,000~250,000程度が好ましく、20,000~200,000程度がより好ましい。また、不揮発分としては、特に限定されず、粘度を考慮して適宜に決定すれば良いが、通常は、30~45重量%程度とされる。
【0083】
また不揮発分35重量%、温度23℃における粘度が、通常は800~4000mPa・s程度、好ましくは1000~3000mPa・s程度である。
【0084】
本発明の水性被覆剤は、前記ビニル変性エポキシ樹脂組成物を含むものである。本発明の水性被覆剤は、木材、紙、繊維、プラスチック、セラミック、鉄、非鉄金属等の各種原料の塗料、表面処理剤等に適用できる。
【0085】
本発明の水性被覆剤の調製では、カーボンブラック、酸化チタン等の着色顔料;タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、酸化亜鉛等の防錆顔料;コバルト化合物、ニッケル化合物、ジルコニウム化合物等の金属化合物;シランカップリング剤、コロイダルシリカ等を適宜に配合することができる。また、必要に応じて、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアネート、ブロックイソシアネート、カルボジイミド等の硬化剤や、各種公知の溶剤、着色剤、可塑剤、防錆剤等の添加剤を配合しても良い。なお、水性被覆剤の不揮発分としては、特に限定されないが、5~80重量%程度が好ましく、10~60重量%程度がより好ましい。
【0086】
本発明の水性被覆剤の物性としては、特に限定されず、例えば、不揮発分20~60重量%、温度23℃における粘度が、通常は10~500mPa・s程度、好ましくは50~300mPa・s程度である。
【実施例0087】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されない。また、各実施例及び比較例において、部又は%は重量基準で示す。
【0088】
実施例1
撹拌機、冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた反応装置に、t-ブチルセロソルブ80部、YD-014(日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、商品名:『エポトートYD-014』、エポキシ当量:950g/eq)70部、YD-011(日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、商品名:『エポトートYD-011』、エポキシ当量:475g/eq)130部及びグリシジルメタクリレート1部を加え窒素気流下120℃で溶解させた後、モノエタノールアミン2.0部、ジエタノールアミン4.0部、ジn-ブチルアミン4.0部及びステアリルアミン30.0部を加えて7時間反応させ、変性エポキシ樹脂(A-1)を得た。次いで、滴下ロートに、アクリル酸8部、アクリル酸n-ブチル6部、メタクリル酸メチル3部、グリシジルメタクリレート4部及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート15部からなる混合物を仕込み、反応系内へ1時間かけて滴下し3時間保温した。80℃に冷却後、アンモニア水溶液(不揮発分:28%)5部および水370部を順に添加混合することにより、不揮発分35%のビニル変性エポキシ樹脂組成物を得た。前記組成物の物性を表1に示す(以下同様)。
【0089】
[ビニル変性エポキシ樹脂組成物の重量平均分子量]
装置: HLC-8220(東ソー(株)製)
カラム: TSKgel α-2500×1、α-3000×1
分離溶媒: DMF(LiBr 5mmol/kg含有)、
流量: 1ml/分
温度: 40℃
標準: ポリスチレン
【0090】
実施例2~6、比較例1
表1に示す組成で、実施例1と同様の方法に従って合成し、ビニル変性エポキシ樹脂組成物をそれぞれ得た。
【0091】
(乾燥性)
脱脂ダル鋼板(商品名:「SPCC-SD」、0.8×70×150mm)(以下、SPCC-SDという)上に、乾燥後の膜厚が15~20μmとなるように、バーコーターにより塗工し、常温で乾燥し、塗膜に指で軽く触れたときに痕が残らないときの時間(指触乾燥時間)を確認した。以下の基準で乾燥性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
○:10分以下
△:10分を超えて20分以下
×:20分を超える
【0092】
(水性被覆剤の調製)
以下に示す組成の混合物をそれぞれペイントシェイカーで練合して水性被覆剤を調製した。得られた水性被覆剤を、SPCC-SD上に、乾燥後の膜厚が25~30μmとなるように、バーコーターにより塗工し、強制乾燥(80℃×20分)後、温度20℃、湿度60%の環境下で6日放置させて塗膜を調製した。得られた塗膜を用いて、以下の試験に供した。
【0093】
(組成)
各実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物 200部
タルク 38部
カーボンブラック 4部
酸化亜鉛 2.7部
リン酸亜鉛系防錆顔料 8部
炭酸カルシウム 18部
イオン交換水 5部
【0094】
(塗膜の評価試験)
(1)分散性
上記の組成で配合した各水系被覆剤の粒子径をグラインドゲージ(太佑機材(株)製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す(以下同様)。
(評価基準)
○:20μm未満
△:20μm以上50μm未満
×:50μm以上
(2)鉛筆硬度
JIS K5600-5-4に準拠して塗膜の硬度を測定した。
【0095】
(3)一次密着性
JIS K5600-5-6に準じて行い、塗工後に温度23℃、湿度50%の環境下で6日間養生した塗膜を剥離した際の碁盤目密着性を、100として評価した。なお、比較例1のビニル変性エポキシ樹脂組成物を用いて調製した水性被覆剤については評価しなかった(以下同様)。
【0096】
(4)耐水密着性
JIS K5600-6-2に準じて行い、温度40℃の温水中に10日間浸した塗膜を剥離した際の碁盤目密着性を、100として評価した。
【0097】
(5)耐水白化
各水性被覆剤を、SPCC-SD上に、乾燥後の膜厚が25~30μmとなるように、バーコーターにより塗工し、温度100℃の循風乾燥機で20分間強制乾燥した後、温度20℃、湿度60%の環境下で6日放置させて塗膜を調製した。JIS K5600-6-2に準拠して、温度40℃の温水中に10日間浸した塗膜の外観を目視で観察した。以下に評価基準を示す。
(評価基準)
○:白化しなかった
△:部分的に白化した
×:完全に白化した
【0098】
【0099】
[(A)成分]
(a1)成分
・YD-014:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、商品名:『エポトートYD-014』、エポキシ当量:950g/eq)
・YD-011:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル(株)製、商品名:『エポトートYD-011』、エポキシ当量:475g/eq)
(a2)成分
・MEA:モノエタノールアミン(アミン当量:30.5g/eq)
・DEA:ジエタノールアミン(アミン当量:105.1g/eq)
・DBA:ジ-n-ブチルアミン(アミン当量:129.3g/eq)
・SA:ステアリルアミン(アミン当量:134.8g/eq)
(a3)成分
・GMA:グリシジルメタクリレート(エポキシ当量:142.2g/eq)
[(B)成分]
(b1)成分
・DAAM:ダイアセトンアクリルアミド
・DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド
・DMAPAA:N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
(b2)成分
・AA:アクリル酸
・BA:アクリル酸n-ブチル
・MMA:メタクリル酸メチル
[その他]
・NH3:アンモニア水溶液(不揮発分:28%)
・TEA:トリエチルアミン