(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157699
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車両のパーキング機構
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20221006BHJP
F16H 61/28 20060101ALI20221006BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F16H63/34
F16H61/28
B60T1/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062066
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】酒井 和明
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067BA17
3J067BA58
3J067DA33
3J067DA34
3J067FA56
3J067FA63
3J067FB83
3J067FB90
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】製造コストを低減するとともに全体の小型化を図ることができる車両のパーキング機構を提供する。
【解決手段】パーキング機構1は、爪部15がパーキングギヤ5に近接する方向に回動するように付勢されるパーキングポール7と、カム溝20が設けられ回動可能に軸支されるカム10と、カム10側に付勢されるパーキングピン8とを備える。パーキングピン8はパーキングポール7に設けられる。カム溝20は、カム10の回動に伴って爪部15をパーキングギヤ5に近接させるようにパーキングピン8をガイド可能であるとともにパーキングピン8をパーキングギヤ5側に押圧可能に形成され爪部15とギヤ溝11とが係合した状態にてパーキングピン8を固定可能に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一端側にパーキングギヤのギヤ溝に係合可能な爪部が設けられる部材であり、且つ、筐体内に支持されるシャフトに回動可能に軸支されるとともに該シャフトを回動軸として前記爪部が前記パーキングギヤに近接する方向に回動するように付勢されるパーキングポールと、
円筒状に形成されるとともに外周の一部にカム溝が設けられ、且つ、前記筐体内に支持されるホルダに回動可能に軸支されるとともに前記パーキングポールの軸方向他端と対向して配置されるカムと、
前記パーキングポールの前記他端に設けられ、且つ、前記カム側に付勢されるとともに前記カム溝にガイドされるパーキングピンと、
を備え、
前記カム溝は、前記カムの回動に伴って前記爪部を前記パーキングギヤに近接させるように前記パーキングピンをガイド可能であるとともに該パーキングピンを前記パーキングギヤ側に押圧可能に形成され、且つ、前記爪部と前記ギヤ溝とが係合した状態にて前記パーキングピンを固定可能に形成される
ことを特徴とする車両のパーキング機構。
【請求項2】
前記カム溝は、それぞれ、前記パーキングピンが当接可能に形成される、ガイド面と、第一カム部と、第二カム部と、を有し、
前記ガイド面は、前記カムの回動に伴って前記爪部を前記パーキングギヤに近接させるように前記パーキングピンをガイド可能に形成され、
前記第一カム部は、前記ガイド面に連続し、且つ、該ガイド面に対し交差するように形成され、
前記第二カム部は、前記第一カム部に連続し、且つ、該第一カム部に連続する箇所から次第に該第一カム部よりも前記カムの外周側に近づくように前記第一カム部から突出して形成され、
前記ガイド面と、前記第一カム部と、前記第二カム部と、にて取り囲まれた空間は、前記爪部と前記ギヤ溝とが係合した状態にて前記パーキングピンが嵌合可能に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両のパーキング機構。
【請求項3】
前記カムは、前記パーキングピンの付勢による前記カムの回動方向と反対方向への回動を防止可能に設けられる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のパーキング機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパーキング機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載される自動変速機は、車輪に連動して回転するように構成された出力軸の回転を規制することにより、車両をパーキング状態にするパーキング機構を備えている。このような車両のパーキング機構としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたパーキング機構は、パーキングギヤと、パーキングポールと、サポートと、カムと、パーキングロッドと、回動レバーと、を備えている(特許文献1の
図1参照)。上記パーキングギヤは、自動変速機の出力軸に対して一体に設けられており、外縁には周方向に等間隔となるように複数のギヤ溝が形成されている。
【0004】
このようなパーキング機構は、捩りコイルスプリングの付勢により回動レバーが回動しパーキングロッドを押し込むことにより、カムがサポートとパーキングポールとの間に挿入され(特許文献1の
図2参照)、パーキングポールを上方側に揺動してパーキングポールの爪部をパーキングギヤのギヤ溝と係合させることによりパーキング状態が維持されるようになっている。
【0005】
また、上記パーキング機構には、例えば、特許文献2に開示されたディテント機構を組み合わせることが考えられる。特許文献2に開示されたディテント機構は、シフトポジションに対応する溝部、及び、これら溝部の間に設けられた凸部を有するディテントレバーと、溝部に係合する係合部を板状部材の先端部に有するディテントスプリングと、を備えている。このようなディテント機構により、パーキングロッドの位置決めをすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-223329号公報
【特許文献2】特開平9-144857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1、2(以下、本明細書では「従来技術」と言う)では、部品点数が比較的多く構造が複雑となり、製造コストが嵩んでしまうという問題点があった。また、従来技術では、上記の通り、部品点数が多く構造が複雑となることから、パーキング機構全体の小型化が図り難くなってしまうという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、従来技術よりも製造コストを低減するとともに全体の小型化を図ることができる車両のパーキング機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するためになされた本発明の車両のパーキング機構は、軸方向一端側にパーキングギヤのギヤ溝に係合可能な爪部が設けられる部材であり、且つ、筐体内に支持されるシャフトに回動可能に軸支されるとともに該シャフトを回動軸として前記爪部が前記パーキングギヤに近接する方向に回動するように付勢されるパーキングポールと、円筒状に形成されるとともに外周の一部にカム溝が設けられ、且つ、前記筐体内に支持されるホルダに回動可能に軸支されるとともに前記パーキングポールの軸方向他端と対向して配置されるカムと、前記パーキングポールの前記他端に設けられ、且つ、前記カム側に付勢されるとともに前記カム溝にガイドされるパーキングピンと、を備え、前記カム溝は、前記カムの回動に伴って前記爪部を前記パーキングギヤに近接させるように前記パーキングピンをガイド可能であるとともに該パーキングピンを前記パーキングギヤ側に押圧可能に形成され、且つ、前記爪部と前記ギヤ溝とが係合した状態にて前記パーキングピンを固定可能に形成されることを特徴とする。
【0010】
上記(1)のような特徴を有する本発明によれば、カムの回動に伴ってパーキングポールの爪部をパーキングギヤに近接させるとともにパーキングピンがパーキングギヤ側に押圧される。パーキングポールは、爪部がパーキングギヤに近接する方向に回動するように付勢されているため、爪部とパーキングギヤの外縁とが接触し、この接触状態においてパーキングギヤを回動させると爪部とギヤ溝とが係合する。そして、爪部とギヤ溝とが係合した状態にてパーキングピンが固定される。このような本発明によれば、パーキングピンを設けたパーキングポールとカムとを組み合わせることにより、従来技術のような、パーキングロッドの押し込みによるパーキングポールの爪部とパーキングギヤのギヤ溝とを係合させる機構(特許文献1参照)と、パーキングロッドの位置決めをする機構(特許文献2参照)とが一体化される。したがって、本発明によれば、従来技術に比べて部品点数が少なく済むとともに構造が簡易になる。
【0011】
(2)また、本発明の車両のパーキング機構は、上記(1)に記載の発明において、前記カム溝は、それぞれ、前記パーキングピンが当接可能に形成される、ガイド面と、第一カム部と、第二カム部と、を有し、前記ガイド面は、前記カムの回動に伴って前記爪部を前記パーキングギヤに近接させるように前記パーキングピンをガイド可能に形成され、前記第一カム部は、前記ガイド面に連続し、且つ、該ガイド面に対し交差するように形成され、前記第二カム部は、前記第一カム部に連続し、且つ、該第一カム部に連続する箇所から次第に該第一カム部よりも前記カムの外周側に近づくように前記第一カム部から突出して形成され、前記ガイド面と、前記第一カム部と、前記第二カム部と、にて取り囲まれた空間は、前記爪部と前記ギヤ溝とが係合した状態にて前記パーキングピンが嵌合可能に形成されることを特徴とする。
【0012】
上記(2)のような特徴を有する本発明によれば、第一カム部に当接するパーキングピンがカムの回動に伴って第一カム部から第二カム部に沿うようになる。第二カム部が次第に第一カム部よりもカムの外周側に近づくように形成されることから、パーキングピンは、カムの回動に伴ってパーキングギヤ側に押圧される。そして、爪部とギヤ溝とが係合した状態にてパーキングピンが、ガイド面と第一カム部と第二カム部とにて取り囲まれた空間に嵌合する。したがって、本発明によれば、パーキングギヤを回動させると爪部とギヤ溝とが係合し、当該状態にてパーキングピンが固定されることが、より明確になる。
【0013】
(3)また、本発明の車両のパーキング機構は、上記(1)又は(2)に記載の発明において、前記カムは、前記パーキングピンの付勢による前記カムの回動方向と反対方向への回動を防止可能に設けられることを特徴とする。
【0014】
上記(3)のような特徴を有する本発明によれば、カムがパーキングピンの付勢によってはカムの回動方向と反対の方向へ回動しないため、従来技術のように、付勢部材による付勢にてカムを回動方向とは反対の方向へ回動しないように固定する必要が無くなる。したがって、本発明によれば、従来技術に比べて部品点数が、より少なく済む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来技術に比べて車両のパーキング機構の部品点数が少なく済むとともに車両のパーキング機構の構造が簡易になることから、車両のパーキング機構の製造コストを低減するとともに車両のパーキング機構全体の小型化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る車両のパーキング機構の実施形態を示す図であり、(a)は部分的に透視したパーキング機構の平面図、(b)は(a)における矢印A方向から視たとき部分的に透視したパーキング機構の側面図である。
【
図2】
図1に図示する車両のパーキング機構をパーキング状態にする動作を説明する図であり、(a)はカムが回動を開始する前の状態を示す部分的に透視したパーキング機構の側面図、(b)は(a)におけるカムのD-D間断面図である。
【
図3】
図2に続く図であり、(a)はカムが略90°回動した状態を示す部分的に透視したパーキング機構の側面図、(b)は(a)におけるカムの断面図(
図2(a)におけるカムのD-D間と同様の区間の断面図である。以下同じ)である。
【
図4】
図3に続く図であり、(a)はカムが略180°回動した状態を示す部分的に透視したパーキング機構の側面図、(b)は(a)におけるカムの断面図である。
【
図5】
図4に続く図であり、(a)はパーキングポールの爪部がパーキングギヤギヤ溝に係合した状態を示す部分的に透視したパーキング機構の側面図、(b)は(a)におけるカムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る車両のパーキング機構の実施形態について説明する。
【0018】
図1は本発明に係る車両のパーキング機構の実施形態を示す図であり、(a)はパーキング機構の平面図、(b)は(a)における矢印A方向から視たとき部分的に透視したパーキング機構の側面図、
図2は
図1に図示する車両のパーキング機構をパーキング状態にする動作を説明する図であり、(a)はカムが回動を開始する前の状態を示す部分的に透視したパーキング機構の側面図、(b)は(a)におけるカムのD-D間断面図、
図3は
図2に続く図であり、(a)はカムが略90°回動した状態を示す部分的に透視したパーキング機構の側面図、(b)は(a)におけるカムの断面図(
図2(a)におけるカムのD-D間と同様の区間の断面図である。以下同じ)、
図4は
図3に続く図であり、(a)はカムが略180°回動した状態を示す部分的に透視したパーキング機構の側面図、(b)は(a)におけるカムの断面図、
図5は
図4に続く図であり、(a)はパーキングポールの爪部がパーキングギヤギヤ溝に係合した状態を示す部分的に透視したパーキング機構の側面図、(b)は(a)におけるカムの断面図である。
【0019】
図1において、引用符号1は、本発明に係る車両のパーキング機構(以下、本実施形態では、適宜、「パーキング機構」と言うものとする)の実施形態を示している。パーキング機構1は、車両に搭載される自動変速機(図示せず)を構成するケース2の内部に配置されている。ケース2は、特許請求の範囲に記載される「筐体」に相当するものであり、本実施形態では、第一ケース3と、この第一ケース3に対向するように配置される第二ケース4と、からなるものである。
【0020】
パーキング機構1は、
図1に示すように、パーキングギヤ5と、シャフト6と、パーキングポール7と、パーキングピン8と、ホルダ9と、カム10と、を備えている。以下、パーキング機構1の各構成について説明する。
【0021】
まず、パーキングギヤ5について説明する。
パーキングギヤ5は、
図1(b)に示すように、パーキングギヤ5の外縁にギヤ溝11が形成されている。ギヤ溝11は、特に図示しないが、パーキングギヤ5の周方向に等間隔となるように複数形成されている。
【0022】
つぎに、シャフト6について説明する。
シャフト6は、
図1(a)に示すように、第一ケース3と第二ケース4との間に支持されている。シャフト6は、大径部12と、大径部12に比べ径の小さい小径部13と、を備えている。大径部12は、一端が第一ケース3に支持されており、大径部12の外周に捩りコイルスプリング14が嵌挿されている。小径部13は、一端が大径部12の他端に連続し小径部13の他端が第二ケース4に支持されている。
【0023】
つぎに、パーキングポール7について説明する。
パーキングポール7は、
図1(b)に示すように、パーキングポール7の軸方向一端側に爪部15が設けられるとともに、パーキングポール7の軸方向他端側にパーキングピン収容孔16が設けられている。爪部15は、パーキングギヤ5のギヤ溝11に係合可能に形成されている。パーキングピン収容孔16は、後述するパーキングピン8を挿入及び収容可能に形成されている。また、パーキングピン収容孔16には、コイルスプリング17が収容されている。コイルスプリング17は、パーキングピン8を後述するよに、カム10側に付勢するための付勢部材として配置されている。
【0024】
また、パーキングポール7は、
図1に示すように、パーキングポール7の軸方向中間部をシャフト6(小径部13)にて回動可能に軸支されている。パーキングポール7は、
図1(b)に示すように、シャフト6(小径部13)を回動軸としてパーキングポール7が矢印Bの指示するように時計回りに回動するように付勢される。上記付勢は、捩りコイルスプリング14にて行われる。捩りコイルスプリング14は、詳細な説明を省略するが、
図1(a)に示すように、大径部12の外周に嵌挿されるとともに、第一ケース3とパーキングポール7とに支持されている。
【0025】
つぎに、パーキングピン8について説明する。
パーキングピン8は、
図1に図示するように、このパーキングピン8の軸方向一端側がパーキングポール7のパーキングピン収容孔16に挿入及び収容されている。パーキングピン8は、
図1(b)に示すように、パーキングピン収容孔16に収容されるコイルスプリング17にて矢印Cの指示する方向(後述するカム10側)に付勢されている。また、パーキングピン8は、
図1(b)に示すように、このパーキングピン8の軸方向他端側がカム10の後述するカム溝20にガイドされている。
【0026】
つぎに、ホルダ9について説明する。
ホルダ9は、
図1(a)に図示するように、ケース2内(本実施形態では、第一ケース3)に支持されている。ホルダ9には、カム10が回動可能に軸支されている。
【0027】
つぎに、カム10について説明する。
カム10は、所謂、円筒カムであり、
図1に図示するように、ホルダ9に回動可能に軸支されるとともにパーキングポール7の軸方向他端と対向して配置されている。カム10は、円筒部18と、一対の回動軸部19と、を備えている。
【0028】
図1(b)に図示する円筒部18は、カム10の本体をなす部分であり、円筒状に形成されるとともに円筒部18の外周の一部に円筒部18の外周の周方向に沿うようにカム溝20が設けられている。カム溝20は、この内面が、カム10の回動に伴ってパーキングポール7の軸方向一端(爪部15)をパーキングギヤ5に近接させるようにパーキングピン8をガイド可能であるとともに、パーキングピン8をパーキングギヤ5側に押圧可能に形成され、且つ、爪部15とギヤ溝11とが係合した状態にてパーキングピン8を固定可能に形成されている。
【0029】
カム溝20は、より具体的には、このカム溝20の内面を構成する第一カム部21と、第二カム部22と、第一ストッパ23と、第二ストッパ24と、上面25と、下面26と、を有している(
図2参照)。第一カム部21と、第二カム部22とは、それぞれ、パーキングピン8の軸方向他端の端面が当接可能に形成されている。また、第一ストッパ23と、第二ストッパ24と、上面25とは、それぞれ、パーキングピン8の軸方向他端側の側部が当接可能に形成されている。
【0030】
第一カム部21は、上面25に対し交差するように連続して形成されている。第二カム部22は、第一カム部21に連続し、且つ、第一カム部21に連続する箇所から第二ストッパ24側へと行くにしたがって次第に第一カム部21よりもカム10(円筒部18)の外周側に近づくように第一カム部21から突出して形成されている(
図2参照)。
【0031】
上面25は、特許請求の範囲に記載される「ガイド面」に相当するものであり、カム10の回動に伴ってパーキングポール7の軸方向一端をパーキングギヤ5に近接させるようにパーキングピン8をガイド可能に形成されている。具体的には、上面25は、第一ストッパ23側から第二ストッパ24側に行くにしたがってカム10の高さ方向における高さが次第に高くなるような傾斜形状に形成されている。
【0032】
カム溝20における、第一カム部21、第二カム部22、上面25、さらに、第二ストッパ24にて取り囲まれた空間は、爪部15とギヤ溝11とが係合した状態にてパーキングピン8の軸方向他端が嵌合可能に形成されている(
図5参照)。
【0033】
回動軸部19は、カム10の回動軸をなす部分であり、
図1(b)に示すように、円筒部18の上端と下端それぞれに設けられている。回動軸部19は、ホルダ9に回動可能に軸支されている。一対の回動軸部19の一方は、
図1(b)に示すように、パーキングアクチュエーター27に接続されている。カム10は、パーキングアクチュエーター27の駆動により回動軸部19を回動軸として回動するようになっている。
【0034】
カム10は、パーキングアクチュエーター27の駆動により上記回動をするように構成されていることから。パーキングピン8の付勢にてカム10の回動方向(反時計回り方向)と反対方向への回動を防止することができるように設けられると言える。
【0035】
つぎに、パーキング機構1をパーキング状態にする動作について説明する。
まず、
図2(a)において、パーキングポール7は矢印Bの指示するように時計回りに回動するように付勢されることから、パーキングピン8の軸方向他端側が上面25に押し付けられている。
【0036】
図2(a)において、カム10をパーキングアクチュエーター27(
図1(b)参照)の駆動にて矢印E(
図2(b)参照)の指示するように反時計回りに回動するとパーキングピン8の軸方向他端側が上面25に追従するように摺接する。上面25は、第一ストッパ23側から第二ストッパ24側に行くにしたがって次第に高さが高くなるような傾斜形状に形成されていることから、パーキングピン8の軸方向他端側が上面25に追従することによりパーキングポール7の軸方向一端側(爪部15)がパーキングギヤ5に近接する。
【0037】
カム10が略90°回動すると、
図3(a)に図示するように、パーキングポール7の爪部15がパーキングギヤ5の外縁に当接する。
【0038】
図3に図示するように、パーキングポール7の爪部15と、パーキングギヤ5のギヤ溝11とが一致していないときは、パーキングポール7の回動は、
図3に図示する位置で停止する。カム10の回動が続くことにより、パーキングピン8は、上面25から離れるとともに、第一カム部21から第二カム部22に当接する。第二カム部22にてパーキングピン8が矢印F(
図4(a)参照)の方向に押圧される。この作用によりパーキングポール7の爪部15がパーキングギヤ5の外縁に当接していてもカム10は回動可能となる。
【0039】
図4に図示すように、カム10が略180°回動すると、
図4(b)に図示するように、パーキングピン8が第二ストッパ24に当接する。この状態において、パーキングギヤ5が矢印G(
図4(a)参照)の指示するように反時計回りに回動すると、
図5(a)に図示するように、時計回りに回動するように付勢されたパーキングポール7の回動にて爪部15がギヤ溝11に係合する。さらに、パーキングピン8がスプリングコイル17にて矢印C(
図5(a)参照)の指示する方向に付勢され、カム溝20における、第一カム部21と、第二カム部22と、上面25と、第二ストッパ24とにて取り囲まれた空間にパーキングピン8の軸方向他端が嵌合する(
図5参照)。以上で、パーキング機構1をパーキング状態にする動作が完了する。
【0040】
以上は、カム10が略90°回動したときに爪部15とギヤ溝11とが一致していない場合の動作について説明したが、爪部15とギヤ溝11とが一致しているときは、時計回りに回動するように付勢されたパーキングポール7の回動にて爪部15がギヤ溝11に入っていくので、カム10が回動を続けるとパーキングピン8は、上面25にガイドされるため、
図5(a)に図示するように、パーキングポール7の回動にて爪部15がギヤ溝11に係合する。
【0041】
なお、パーキング機構1のパーキング状態を解除するには、カム10をパーキングアクチュエーター27(
図1(b)参照)の駆動にて時計回りに回動させる。ここで、パーキングピン8の軸方向他端が、第一カム部21と、第二カム部22と、上面25と、第二ストッパ24とにて取り囲まれた空間に嵌合していることから、カム10の上記回動に伴い、パーキングポール7が反時計回りに回動し、爪部15とギヤ溝11との係合が解除される。以上で、パーキング機構1のパーキング状態が解除される。
【0042】
以上の本実施形態によれば、カム10の回動に伴ってパーキングポール7の爪部15をパーキングギヤ5に近接させるとともにパーキングピン8がパーキングギヤ5側に押圧される。パーキングポール7は、爪部15がパーキングギヤ5に近接する方向に回動するように付勢されているため、爪部15とパーキングギヤ5の外縁とが接触し、この接触状態においてパーキングギヤ5を回動させると爪部15とギヤ溝11とが係合する。そして、爪部15とギヤ溝11とが係合した状態にてパーキングピン8が固定される。このような本実施形態によれば、パーキングピン8を設けたパーキングポール7とカム10とを組み合わせることにより、従来技術のような、パーキングロッドの押し込みによるパーキングポールの爪部とパーキングギヤのギヤ溝とを係合させる機構(特許文献1参照)と、パーキングロッドの位置決めをする機構(特許文献2参照)とが一体化される。したがって、本実施形態によれば、従来技術に比べてパーキング機構1の部品点数が少なく済むとともにパーキング機構1の構造が簡易になる。
【0043】
また、本実施形態によれば、第一カム部21に当接するパーキングピン8がカム10の回動に伴って第一カム部21から第二カム部22に沿うようになる。第二カム部22が次第に第一カム部21よりもカム10(円筒部18)の外周側に近づくように形成されることから、パーキングピン8は、カム10の回動に伴ってパーキングギヤ5側に押圧される。そして、爪部15とギヤ溝11とが係合した状態にてパーキングピン8が、カム溝20における、第一カム部21と、第二カム部22と、上面25と、第二ストッパ24とにて取り囲まれた空間に嵌合する。したがって、本実施形態によれば、パーキングギヤ5を回動させると爪部15とギヤ溝11とが係合し、当該状態にてパーキングピン8が固定されることが、より明確になる。
【0044】
また、本実施形態によれば、カム10がパーキングピン8の付勢によってはカム10の回動方向と反対の方向へ回動しないため、従来技術のように、付勢部材による付勢にてカム10を回動方向とは反対の方向へ回動しないように固定する必要が無くなる。したがって、本発明によれば、従来技術に比べてパーキング機構1の部品点数が、より少なく済む。
【0045】
つぎに、本実施形態の効果について説明する。
以上、
図1乃至
図5を参照しながら説明してきたように、本実施形態によれば、従来技術に比べて車両のパーキング機構1の部品点数が少なく済むとともに車両のパーキング機構1の構造が簡易になることから、車両のパーキング機構1の製造コストを低減するとともに車両のパーキング機構1全体の小型化を図ることができるという効果を奏する。
【0046】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1…車両のパーキング機構
2…ケース(筐体)
3…第一ケース
4…第二ケース
5…パーキングギヤ
6…シャフト
7…パーキングポール
8…パーキングピン
9…ホルダ
10…カム
11…ギヤ溝
12…大径部
13…小径部
14…捩りコイルスプリング
15…爪部
16…パーキングピン収容孔
17…コイルスプリング
18…円筒部
19…回動軸部
20…カム溝
21…第一カム部
22…第二カム部
23…第一ストッパ
24…第二ストッパ
25…上面(ガイド面)
26…下面
27…パーキングアクチュエーター