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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157704
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】車両用開閉体制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/657 20150101AFI20221006BHJP
   E05F 15/659 20150101ALI20221006BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20221006BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20221006BHJP
   E05F 15/622 20150101ALN20221006BHJP
【FI】
E05F15/657
E05F15/659
B60J5/04 C
B60J5/10 K
E05F15/622
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062078
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】中西 雅之
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA08
2E052DB08
2E052EA09
2E052EB01
2E052EB03
2E052EC01
2E052GB13
2E052GC05
2E052GC06
2E052JA00
2E052JA02
2E052KA06
(57)【要約】
【課題】
開閉体が開状態の場合には保持力を強くし、ユーザが開閉体を手動で閉める場合には、自動的に保持力を弱くし、安全性を確保しつつ、利便性を向上させる。
【解決手段】
車両用開閉体制御装置100の制御部17は、位置検出部42で検出された開閉位置により開閉体3が開状態となる位置で停止したと判定すると、第1ブレーキ力で駆動部5の電動モータ6を制動する(第1ブレーキ制御)。制御部17は、第1ブレーキ制御中に、速度検出部43で検出された開閉速度が、第1所定速度以上となってから当該第1所定速度以下の第2所定速度よりも大きい状態を第1所定時間の間継続したと判定すると、第1ブレーキ力より小さい第2ブレーキ力で電動モータ6を制動する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として電動モータを有し、車体の開口部を開閉する開閉体を駆動する駆動部と、
前記電動モータの回転数により前記開閉体の開閉位置を検出する位置検出部と、
前記電動モータの回転速度により前記開閉体の開閉速度を検出する速度検出部と、
前記開閉体を開方向又は閉方向に移動させるように、前記駆動部の前記電動モータを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記駆動部の前記電動モータを制御して前記開閉体を前記開方向に移動させ、前記位置検出部で検出された前記開閉位置により前記開閉体が開状態となる位置で停止したと判定すると、第1ブレーキ力で前記電動モータを制動する第1ブレーキ制御を実行し、
前記制御部は、前記第1ブレーキ制御中に、前記速度検出部で検出された前記開閉速度が、第1所定速度以上となってから当該第1所定速度以下の第2所定速度よりも大きい状態を第1所定時間の間継続したと判定すると、前記第1ブレーキ力より小さい第2ブレーキ力で前記電動モータを制動する第2ブレーキ制御を実行する、車両用開閉体制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2ブレーキ制御中に、前記速度検出部で検出された前記開閉速度が、前記第2所定速度よりも小さい第3所定速度以下となったと判定すると、前記第1ブレーキ制御を再度実行する、請求項1に記載の車両用開閉体制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2ブレーキ制御中に、前記速度検出部で検出された前記開閉速度が、前記第1所定速度よりも大きい第4所定速度以上となったと判定すると、前記駆動部の前記電動モータを駆動して前記開閉体を前記開方向に移動させる、請求項1又は2に記載の車両用開閉体制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記駆動部の前記電動モータにパルス幅変調信号を供給し、前記電動モータの両端を短絡するブレーキ期間と、前記電動モータの両端を開放するフリー期間とのデューティ比により、前記第1ブレーキ力と前記第2ブレーキ力を設定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用開閉体制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1ブレーキ制御の前記第1ブレーキ力の前記ディーティ比を100%に設定する請求項4に記載の車両用開閉体制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2ブレーキ制御において、前記第2ブレーキ制御の開始から第2所定時間で0%となるように前記デューティ比を漸減させる、請求項4又は5に記載の車両用開閉体制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1所定時間における前記開閉体の前記開閉速度である平均速度を算出し、前記平均速度に応じて前記第2所定時間を設定する、請求項6に記載の車両用開閉体制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2ブレーキ制御中に、前記デューティ比が0%となったと判定すると、前記駆動部の前記電動モータを駆動して前記開閉体を前記閉方向に移動させる、請求項6又は7に記載の車両用開閉体制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第2ブレーキ制御における前記第2ブレーキ力を一定に設定する、請求項1に記載の車両用開閉体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の開口部を開閉する開閉体としてのバックドアを電動で駆動する車両用開閉体制御装置が開示されている。この車両用開閉体制御装置では、バックドアが開状態のときに衣服等を吊しても、閉方向に移動しないように保持力を強くし、バックドアを閉めるときには保持力を弱くするように、ユーザが保持力を設定することができる。
【0003】
しかし、特許文献1の車両用開閉体制御装置では、衣服等を吊すために保持力を強く設定した後、バックドアを閉める場合には、保持力を弱く設定し直す必要があり、利便性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-035584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車体の開口部を開閉する開閉体について、開閉体が開状態の場合には保持力を強くし、ユーザが開閉体を手動で閉める場合には、ユーザが設定することなく、自動的に保持力を弱くすることができ、安全性を確保しつつ、利便性を向上させた車両用開閉体制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、動力源として電動モータを有し、車体の開口部を開閉する開閉体を駆動する駆動部と、前記電動モータの回転数により前記開閉体の開閉位置を検出する位置検出部と、前記電動モータの回転速度により前記開閉体の開閉速度を検出する速度検出部と、前記開閉体を開方向又は閉方向に移動させるように、前記駆動部の前記電動モータを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記駆動部の前記電動モータを制御して前記開閉体を前記開方向に移動させ、前記位置検出部で検出された前記開閉位置により前記開閉体が開状態となる位置で停止したと判定すると、第1ブレーキ力で前記電動モータを制動する第1ブレーキ制御を実行し、前記制御部は、前記第1ブレーキ制御中に、前記速度検出部で検出された前記開閉速度が、第1所定速度以上となってから当該第1所定速度以下の第2所定速度よりも大きい状態を第1所定時間の間継続したと判定すると、前記第1ブレーキ力より小さい第2ブレーキ力で前記電動モータを制動する第2ブレーキ制御を実行する、車両用開閉体制御装置を提供する。
【0007】
制御部は開閉体が開状態となる位置で停止したと判定すると相対的に強い第1ブレーキ力で電動モータを制動する。つまり、開閉体が開状態の場合には保持力を強くでき、例えば衣服を開閉体に吊した場合でも安全性を確保できる。また、制御部は開閉体の開閉速度が第1所定速度以上となってから第1所定速度以下の第2所定速度よりも大きい状態が第1所定時間継続した場合、ユーザが開閉体を手動で閉めようとしていると判断し、相対的に弱い第2ブレーキ力で電動モータを制動する。つまり、ユーザが開閉体を手動で閉めようとする場合には、ユーザが設定することなく、自動的に保持力を弱くすることができ、利便性を向上させることができる。
【0008】
前記制御部は、前記第2ブレーキ制御中に、前記速度検出部で検出された前記開閉速度が、前記第2所定速度よりも小さい第3所定速度以下となったと判定すると、前記第1ブレーキ制御を再度実行してもよい。
【0009】
制御部は、第2ブレーキ制御中の開閉体の開閉速度が第2所定速度よりも小さい第3所定速度以下となった場合、例えば、ユーザが開閉体の手動操作を中断したことで開閉体が停止して開閉速度がゼロとなった場合に、再び第1ブレーキ制御を実行するとで、停止状態のドアの変位を防ぐことができる。
【0010】
前記制御部は、前記第2ブレーキ制御中に、前記速度検出部で検出された前記開閉速度が、前記第1所定速度よりも大きい第4所定速度以上となったと判定すると、前記駆動部の前記電動モータを駆動して前記開閉体を前記開方向に移動させてもよい。
【0011】
制御部は、第2ブレーキ制御中の開閉体の開閉速度が第1所定速度よりも大きい第4所定速度以上となった場合、つまり、ユーザの手動操作により開閉体の開閉速度(閉方向への移動速度)が速くなった場合に、開閉体を自動的に閉方向に移動させる(オート閉作動)。オート閉作動開始後は、ユーザは開閉体を手動操作する必要がない。つまり、第2ブレーキ制御中にユーザが手動操作で開閉体を閉じようとした場合に、最後まで手動操作を行う必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0012】
前記制御部は、前記駆動部の前記電動モータにパルス幅変調信号を供給し、前記電動モータの両端を短絡するブレーキ期間と、前記電動モータの両端を開放するフリー期間とのデューティ比により、前記第1ブレーキ力と前記第2ブレーキ力を設定してもよい。
【0013】
デューティ比の設定のみでブレーキ力を簡単に変更できるので、車種によって異なる開閉体の重量に適した第1及び第2ブレーキ力を設定できる。
【0014】
前記制御部は、前記第1ブレーキ制御の前記第1ブレーキ力の前記ディーティ比を100%に設定してもよい。
【0015】
第1ブレーキ制御時、つまり、開閉体に作用する力が大きくなる開状態となる位置に開閉体が停止したときに、デューティ比を100%に設定した第1ブレーキ力で電動モータを制動することで、開閉体が閉方向に移動するのを確実に防止し、ユーザの安全性を確保できる。
【0016】
前記制御部は、前記第2ブレーキ制御において、前記第2ブレーキ制御の開始から第2所定時間で0%となるように前記デューティ比を漸減させてもよい。
【0017】
第2ブレーキ制御におけるデューティ比を第2所定時間かけて0%まで漸減し、第2ブレーキ力を徐々に弱くしていくことで、ユーザが手動で開閉体を閉方向に移動させるために必要な力を小さくしていくことができ、利便性を向上させることができる。
【0018】
前記制御部は、前記第1所定時間における前記開閉体の前記開閉速度である平均速度を算出し、前記平均速度に応じて前記第2所定時間を設定してもよい。
【0019】
開閉速度の平均値である平均速度に応じて、第2所定時間、つまり第2ブレーキ力を漸減する時間を設定することにより、ユーザの手動操作による開閉体の開閉速度に合わせて第2ブレーキ力を弱くしていくことができ、ユーザが開閉体の手動操作をスムーズに行うことができる。
【0020】
前記制御部は、前記第2ブレーキ制御中に、前記デューティ比が0%となったと判定すると、前記駆動部の前記電動モータを駆動して前記開閉体を前記閉方向に移動させてもよい。
【0021】
制御部は、第2ブレーキ制御中にデューティ比が0%、つまり第2ブレーキ力がゼロとなった場合に、開閉体を自動的に閉方向に移動させる(オート閉作動)。オート閉作動開始後は、ユーザは開閉体を手動操作する必要がない。つまり、第2ブレーキ制御が開始されてある程度の時間が経過すれば、ユーザは最後まで手動操作で開閉体を閉じる必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0022】
前記制御部は、前記第2ブレーキ制御における前記第2ブレーキ力を一定に設定してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る車両用開閉体制御装置によれば、開閉体が開状態の場合には保持力を強くし、ユーザが開閉体を手動で閉める場合には、ユーザが設定することなく、自動的に保持力を弱くすることができ、安全性を確保しつつ、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る車両用開閉体制御装置を備える車両の後部を示す斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る車両用開閉体制御装置のブロック図。
図3】スピンドルドライブ機構の縦断面図。
図4A】電動モータのHブリッジ回路の回路図(スタンバイモード)。
図4B】電動モータのHブリッジ回路の回路図(正回転モード)。
図5A】電動モータのHブリッジ回路の回路図(逆回転モード)。
図5B】電動モータのHブリッジ回路の回路図(ブレーキモード)。
図6】本発明の実施形態に係る車両用開閉体制御装置によるバックドアの制御を説明するためのフローチャート。
図7A】ブレーキ力低減制御を説明するためのフローチャート。
図7B】ブレーキ力低減制御を説明するためのフローチャート。
図8】本発明の実施形態に係る車両用開閉体制御装置によるバックドアの制御の一例を示すタイムチャート。
図9】本発明の実施形態に係る車両用開閉体制御装置によるバックドアの制御の他の一例を示すタイムチャート。
図10A】変形例の車両用開閉体制御装置によるブレーキ力低減制御を説明するためのフローチャート。
図10B】変形例の車両用開閉体制御装置によるブレーキ力低減制御を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用開閉体制御装置100を備える車両(本実施形態では乗用車)の車体1の後部を示す。図2は、車両用開閉体制御装置100のブロック図である。
【0027】
車体1の後部には開口部2が形成されている。開口部2は、開閉体であるバックドア3(開閉体)によって開閉される。バックドア3は、図示しない上方部分の回転軸を中心として、開口部2を完全に開放する全開位置と、完全に閉鎖する全閉位置との間を回動可能に設けられている。バックドア3は、スピンドルドライブ機構5(駆動部)の駆動により、全開位置に向かう方向(開方向)又は全閉位置に向かう方向(閉方向)に回動する。
【0028】
スピンドルドライブ機構5は、バックドア3の両側にそれぞれ設けられる第1スピンドルドライブ機構5Aと、第2スピンドルドライブ機構5Bとで構成されている。各スピンドルドライブ機構5A,5Bは、車体1とバックドア3の間に接続されている。
【0029】
ここで、スピンドルドライブ機構5を、図3を参照して簡単に説明する。スピンドルドライブ機構5は、動力源としての電動モータ6が収容される第1ハウジング7と、スピンドル10等が収容される第2ハウジング8とで構成されている。第1ハウジング7の一端部には、バックドア3に設けたジョイントボール3aが回転自在に連結されるドア側連結部7aが設けられている。電動モータ6の回転軸6aは、減速ギア機構9を介して第2ハウジング8内のスピンドル10に接続されている。スピンドル10にはスピンドルナット11が螺合し、スピンドルナット11の前方部分の外周には筒状のプッシュロッド12の後端が固定されている。プッシュロッド12の先端には、径方向に間隔を空けて同軸上に配置される筒状の内筒14の端部が固定されている。第2ハウジング8には、プッシュロッド12を進退可能にガイドするガイド筒部15aと、内筒14を進退可能にガイドする外筒15が設けられている。ガイド筒部15aの外周には圧縮コイルばね13が配置され、その外周側には内筒14及び外筒15が順次配置されている。圧縮コイルばね13は、長手方向には、第2ハウジング8の後端部分と内筒14の先端部分の間に配置されている。プッシュロッド12の先端には、車体に設けたジョイントボール1aに回動自在に連結される車体側連結部12aが設けられている。
【0030】
スピンドルドライブ機構5では、電動モータ6を正回転駆動し、スピンドル10を回転させ、スピンドルナット11を前方へと移動させると、プッシュロッド12を介して内筒14が外筒15から前方へと突出する。これにより、バックドア3が開方向に回動する。逆に、電動モータ6を逆回転駆動し、スピンドルナット11を後方へと移動させると、内筒14が外筒15内へと後退する。これにより、バックドア3が閉方向に回動する。
【0031】
一方、電動モータ6を駆動していない状態で、バックドア3が外力によって開方向又は閉方向に変位すると、外筒15内を内筒14、プッシュロッド12及びスピンドルナット11が進退移動し、スピンドル10が回動して電動モータ6の回転軸6aを回転させる。
【0032】
すなわち、スピンドルドライブ機構5の進退動作と電動モータ6の回転とは連動しているため、電動モータ6の回転動作を抑制するブレーキ制御を行うことにより、スピンドルドライブ機構5の進退動作を制動することができる。
【0033】
電動モータ6の回転軸6aの回転は、図2にのみ図示する回転数センサ16によって検出される。回転数センサ16で検出される電動モータ6の回転軸6aの回転数は、制御装置17に入力される。
【0034】
電動モータ6への電力供給には、図4Aから図5Bに示すHブリッジ回路が使用されている。Hブリッジ回路には、オープン側ハイサイドスイッチ18、クローズ側ローサイドスイッチ19、クローズ側ハイサイドスイッチ20及びオープン側ローサイドスイッチ21を備える。そして、これらのスイッチ18~21をオン又はオフに設定することで、フリー状態、正回転状態、逆回転状態、ブレーキ状態に切り換えることができる。
【0035】
図4Aに示すように、フリー状態では、Hブリッジ回路のすべてのスイッチ18~121がオフに設定される。
【0036】
図4Bに示すように、正回転状態では、オープン側ハイサイドスイッチ18とクローズ側ローサイドスイッチ19がオンに設定され、クローズ側ハイサイドスイッチ20とオープン側ローサイドスイッチ21がオフに設定される。この状態で電力を供給すると、電動モータ6が正回転し、バックドア3が開方向に回動する。
【0037】
図5Aに示すように、逆回転状態では、オープン側ハイサイドスイッチ18とクローズ側ローサイドスイッチ19がオフに設定され、クローズ側ハイサイドスイッチ20とオープン側ローサイドスイッチ21がオンに設定される。この状態で電力を供給すると、電動モータ6が逆回転し、バックドア3が閉方向に回動する。
【0038】
図5Bに示すように、ブレーキ状態では、オープン側ハイサイドスイッチ18とクローズ側ハイサイドスイッチ20をオフに設定し、オープン側ローサイドスイッチ21とクローズ側ローサイドスイッチ19をオンに設定する。オープン側ローサイドスイッチ21とクローズ側ローサイドスイッチ19をオフに設定し、オープン側ハイサイドスイッチ18とクローズ側ハイサイドスイッチ20をオンに設定してもブレーキ状態を実現できる。ブレーキ状態では、電動モータ6が短絡されるので、電動モータ6の回転軸6aが外力により回転すると、ショートブレーキ(短絡制動)状態となる。
【0039】
制御装置17(制御部)は、認証処理部41、位置検出部42、速度検出部43、及びモータ制御部44を備える。制御装置17は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)のような記憶装置を含むハードウェアと、それに実装されたソフトウェアにより構築できる。
【0040】
認証処理部41は、レシーバECU32(Electronic Control Unit)を介して電子キー33と通信し、認証処理を実行する。
【0041】
位置検出部42は回転数センサ16から入力される、電動モータ6の回転軸6aの回転数からスピンドル10の回転数を算出し、外筒15に対する内筒14(プッシュロッド12)の相対位置、つまり全開位置から全閉位置までの間のバックドア3の位置(開閉位置)を検出する。
【0042】
速度検出部43は、回転数センサ16から入力される電動モータ6の回転軸6aの回転数に基づいて、スピンドル10の回転速度を算出し、外筒15に対する内筒14(プッシュロッド12)の進退速度、つまり開方向又は閉方向へのバックドア3の回動の速度を検出する。
【0043】
モータ制御部44は、ドア開スイッチ24(図1に示すように本実施形態ではバックドア3に設けられている)からの入力信号に基づいて、スピンドルドライブ機構5の電動モータ6を駆動して、バックドア3を開放方向へ回動させる開放作動を実行する。この際、モータ制御部44は、Hブリッジ回路を図4Bに示す正回転状態に設定する。
【0044】
また、モータ制御部44は、ドア閉スイッチ23(図1に示すように本実施形態ではバックドア3に設けられている)からの入力信号に基づいて、スピンドルドライブ機構5の電動モータ6を駆動して、バックドア3を閉方向へと回動させる閉鎖作動を実行する。この際、モータ制御部44は、Hブリッジ回路を図5Aに示す逆回転状態に設定する。
【0045】
さらに、モータ制御部44は、後述するように、電動モータ6の両端を短絡することにより、つまり図5Bに示すブレーキ状態とすることで、スピンドルドライブ機構5を制動するブレーキ制御を実行する。
【0046】
図5Bに示すブレーキ状態と図4Aに示すフリー状態とを交互に繰り返すことで、ブレーキ状態とする期間(ブレーキ期間)とフリー状態の期間(フリー期間)とのデューティ比によりスピンドルドライブ機構5に対するブレーキ力を調節できる。ブレーキ期間のデューティ比が高い程、スピンドルドライブ機構5に対して強いブレーキ力を作用させることができる。より具体的には、ブレーキ期間のデューティ比が100%のときに、スピンドルドライブ機構5に作用するブレーキ力は最大となり、ブレーキ期間のデューティ比が0%のときにスピンドルドライブ機構5に作用するブレーキ力は最小となる。
【0047】
以下、図6から図7Bを参照して、制御装置17によって実行されるスピンドル駆動機構5の制御を説明する。
【0048】
図6を参照すると、ステップS1において、モータ制御部44は、ドア開スイッチ24がオンに設定されると、スピンドル駆動機構5を制御して、より具体的には電動モータ6を正回転駆動してバックドア3を開方向に移動させる(オート開作動)。
【0049】
次に、ステップS2において、位置検出部42が検出する開閉位置によりバックドア3が所定の開状態となる位置で停止したと判定されると、ステップS3の処理を実行する。こここで「所定の開状態となる位置」は、全開位置であってもよいが、全開位置までは到達しないがそれに近い開放状態の位置であってもよい。
【0050】
ステップS3の第1ブレーキ制御では、相対的に強い第1ブレーキ力でスピンドルドライブ機構5の電動モータ6を制動する。具体的には、ブレーキ期間のデューティ比が100%に設定される。
【0051】
ステップS4でブレーキ力低減制御が実行される。このブレーキ力低減制御は、ステップS5においてバックドア3が所定の閉状態となる位置(例えば全閉位置)で停止するまで継続される。
【0052】
以下、図7A及び図7Bを参照する。
【0053】
まず、ステップS21において、速度検出部43がバックドア3の開閉速度を検出する。
【0054】
次に、ステップS22において、ステップS21で検出した開閉速度が、第1所定速度(例えば10rps)以上でなければステップS33の処理を実行し、第1所定速度以上であればステップS23の処理を実行する。第1所定速度はユーザが手動でバックドア3を閉じようとしている可能性があると判定できる速度に設定される。
【0055】
ステップS33、つまりステップS21で検出した開閉速度が第1所定速度以上ではなく、ユーザが手動でバックドア3を閉じようとしている可能性がないと判定できる場合には、図6のステップS3に戻り、第1ブレーキ制御が実行される。
【0056】
ステップS23は、速度検出部43で検出するバックドア3の開閉速度が第1所定時間の間、継続して第2所定速度より大きいかが判断される。ステップS23の判断が成立する場合にはステップS24の処理が実行され、成立しない場合にはステップS33の処理が実行される。
【0057】
第2所定速度は第1所定速度以下に設定される。例えば、第1所定速度を10rpsに設定する場合は、第2所定速度を5rpsに設定できる。なお、第2所定速度を、第1所定速度と同じ速度に設定してもよい。つまり、開閉速度が第1所定速度以上となった後に、第1所定時間の間、継続して第1所定速度より大きいかを判断するようにしてもよい。第1所定時間は、例えば100~1000msecに設定される。第1所定時間と第2所定速度は、ユーザが手動でバックドア3を閉じようとしていると判定できるように設定される。つまり、ステップS23においてそのように判定される場合にはステップS24の処理が実行される。一方、ステップS23においてそのように判定できない場合、つまりバックドア3の開閉速度が、最初は第1所定速度を上回ったが、その後は比較的短時間で小さくなり、バックドア3をユーザが閉じようとしていないと判定できる場合には、ステップS33の処理が実行される。
【0058】
ステップS24では、第1所定時間におけるバックドア3の開閉速度の平均値(平均速度)が算出される。次に、ステップS25において、第2所定時間が算出される。第2所定時間は第1所定時間におけるバックドア3の平均速度が、大きい程長く設定され、小さい程短く設定される。第2所定時間は、例えば100~5000msecの範囲で設定される。
【0059】
次に、ステップS26において、第2ブレーキ制御が実行され。ステップS26で第2ブレーキ制御が実行されるのは、前述のようにステップS23において、ユーザが手動でバックドア3を閉じようとしていると判定された場合である。第2ブレーキ制御では、第1ブレーキ制御の相対的に強い第1ブレーキ力を、第2ブレーキ制御の開始から第2所定時間でゼロになるように漸減する。本実施形態では、第1ブレーキ力では100%であるブレーキ期間のデューティ比が、第2ブレーキ制御の開始から第2所定時間で0%となるように、ブレーキ期間のデューティ比を漸減する。
【0060】
ステップS27~S32の処理は、第2ブレーキ制御中に実行される。
【0061】
ステップS27において、速度検出部43で検出するバックドア3の開閉速度が、第3所定速度以下であればステップS28の処理が実行され、第3所定速度以下でなければステップS29の処理が実行される。
【0062】
第3所定速度は第2所定速度よりも小さく設定される。例えば、第1所定速度が10rps、第2所定速度が5rpsにそれぞれ設定される場合、第3所定速度は0rpsに設定される。第3所定速度は、バックドア3の開閉速度が小さくなり、ユーザがバックドア3を手動で閉じる操作を中断したと判定できるように設定される。つまり、ステップS27において、そのように判定される場合にステップS28の処理が実行され、そのようには判定できない場合にステップS29の処理が実行される。
【0063】
ステップS28の処理、つまりユーザがバックドア3を手動で閉じる操作を中断したと判定できる場合の処理としては、図6のステップS3に戻り、第1ブレーキ制御が実行される。
【0064】
ステップS29においては、つまりユーザがバックドア3を手動で閉じる操作を中断していないと判定できる場合、速度検出部43で検出するバックドア3の開閉速度が第4所定速度以上であるかが判断される。ステップS29の判断が成立する場合にはステップS30の処理が実行され、成立しない場合にはステップS31の処理が実行される。
【0065】
第4所定速度は第1所定速度よりも大きく設定される。例えば、第1所定速度を10rpsに設定する場合、第4所定速度を20rpsに設定できる。第4所定速度は、例えばユーザの手動操作によりバックドア3の開閉速度(閉方向への移動速度)が速くなったと判定できるように設定される。つまり、ステップS29においてそのように判定される場合にステップS30の処理が実行され、そのように判定されない場合にステップS31の処理が実行される。
【0066】
ステップS30においては、例えばユーザの手動操作によりバックドア3の開閉速度(閉方向への移動速度)が速くなったと判定できる場合には、モータ制御部44は、スピンドル駆動機構5を制御して、より具体的には電動モータ6を逆回転駆動してバックドアを閉方向に移動させる(オート閉作動)。
【0067】
ステップS31においては、例えばユーザの手動操作によりバックドア3の開閉速度が速くなったと判定できない場合には、現時点でのブレーキ期間のデューティ比が0%であるか否かが判断される。ステップS31において、ブレーキ期間のデューティ比が0%であれば、ステップS32において、ステップS30と同様にオート閉作動が実行される。一方、ステップS31において、ブレーキ期間のデューティ比が0%ではなければ、ステップS26に戻り、第2ブレーキ制御が継続される。
【0068】
以上の制御によれば、バックドア3が開状態となる位置で停止したと判定されると、相対的に強い第1ブレーキ力で電動モータ6を制動する(第1ブレーキ制御)。つまり、バックドア3が開状態の場合には保持力を強くでき、例えば衣服をバックドア3に吊した場合でも安全性を確保できる。また、バックドア3の開閉速度が第1所定速度以上となってから第1所定速度以下の第2所定速度よりも大きい状態が第1所定時間継続した場合、ユーザが開閉体を手動で閉めようとしていると判断し、相対的に弱い第2ブレーキ力で電動モータ6を制動する(第2ブレーキ制御)。つまり、ユーザがバックドア3を手動で閉めようとする場合には、ユーザが設定することなく、自動的に保持力を弱くすることができ、利便性を向上させることができる。
【0069】
第2ブレーキ制御中のバックドア3の開閉速度が第2所定速度よりも小さい第3所定速度以下となった場合、例えば、ユーザがバックドア3の手動操作を中断したことで開閉体が停止して開閉速度がゼロとなった場合に、再び第1ブレーキ制御を実行するとで、停止状態のバックドア3の変位を防ぐことができる。
【0070】
第2ブレーキ制御中のバックドア3の開閉速度が第1所定速度よりも大きい第4所定速度以上となった場合、つまり、ユーザの手動操作によりバックドア3の開閉速度が速くなった場合に、バックドア3を自動的に閉方向に移動させる(オート閉作動)。オート閉作動開始後は、ユーザはバックドア3を手動操作する必要がない。つまり、第2ブレーキ制御中にユーザが手動操作でバックドア3を閉じようとした場合に、最後まで手動操作を行う必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0071】
第1及び第2ブレーキ力は、デューティ比の設定のみで簡単に変更できるので、車種によって異なる開閉体の重量に適した第1及び第2ブレーキ力を設定できる。
【0072】
第1ブレーキ制御時、つまり、開閉体に作用する力が大きくなる開状態となる位置にバックドア3が停止したときに、デューティ比を100%に設定した第1ブレーキ力で電動モータ6を制動することで、開閉体が閉方向に移動するのを確実に防止し、ユーザの安全性を確保できる。
【0073】
第2ブレーキ制御におけるデューティ比を第2所定時間かけて0%まで漸減し、第2ブレーキ力を徐々に弱くしていくことで、ユーザが手動でバックドア3を閉方向に移動させるために必要な力を小さくしていくことができ、利便性を向上させることができる。
【0074】
開閉速度の平均値である平均速度に応じて、第2所定時間、つまり第2ブレーキ力を漸減する時間を設定することにより、ユーザの手動操作によるバックドア3の開閉速度に合わせて第2ブレーキ力を弱くしていくことができ、ユーザがバックドア3の手動操作をスムーズに行うことができる。
【0075】
第2ブレーキ制御中にデューティ比が0%、つまり第2ブレーキ力がゼロとなった場合に、バックドア3を自動的に閉方向に移動させる(オート閉作動)。オート閉作動開始後は、ユーザは開閉体を手動操作する必要がない。つまり、第2ブレーキ制御が開始されてある程度の時間が経過すれば、ユーザは最後まで手動操作でバックドア3を閉じる必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0076】
図8に示す本実施形態における制御の一例では、時間t1に開始された第1ブレーキ制御中に、時間t2~t3(第1所定時間)の間、開閉速度が第1所定速度以上となり、時間t3から第2ブレーキ制御が開始される。その後、時間t4にブレーキ期間のディューティ比が0%まで減少し、時間t4からオート閉作動が開始される。
【0077】
図9に示す本実施形態における制御の一例では、時間t1’に開始された第1ブレーキ制御中に、時間t2’~t3’(第1所定時間)の間、開閉速度が第1所定速度以上となり、時間t3’から第2ブレーキ制御が開始される。その後、ブレーキ期間のディューティ比が0%まで減少する前に、時間t4’に開閉速度が第4所定速度以上となり、時間t4’からオート閉作動が開始される。
【0078】
図10A及び図10Bに示すブレーキ力低減制御の変形例では、ステップS26の第2ブレーキ制御における第2ブレーキ力を漸減するのではなく、第1ブレーキ力より弱い一定値に設定される。そのため、図7AのステップS24,25の処理と、図7BのステップS31,32の処理は実行されない。また、ステップS29においてバックドア3の開閉速度が第4所定速度以上でない場合には、ステップS26に戻り、第2ブレーキ制御が継続される。
【符号の説明】
【0079】
1 車体
2 開口部
3 バックドア(開閉体)
5 スピンドルドライブ機構(駆動部)
6 電動モータ
7 第1ハウジング
8 第2ハウジング
9 減速ギア機構
10 スピンドル
11 スピンドルナット
12 プッシュロッド
13 圧縮コイルばね
14 内筒
15 外筒
16 回転数センサ
17 制御装置(制御部)
18 オープン側ハイサイドスイッチ
19 クローズ側ローサイドスイッチ
20 クローズ側ハイサイドスイッチ
21 オープン側ローサイドスイッチ
23 ドア閉スイッチ
24 ドア開スイッチ
32 レシーバECU
33 電子キー
41 認証処理部
42 位置検出部
43 速度検出部
44 モータ制御部
100 車両用開閉体制御装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B