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特開2022-157724圃場水管理システム、圃場水管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157724
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】圃場水管理システム、圃場水管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A01G25/00 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062115
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】300072462
【氏名又は名称】株式会社ほくつう
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】竹村 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】谷口 輝行
(72)【発明者】
【氏名】田中 正
(72)【発明者】
【氏名】関 裕之
(57)【要約】
【課題】気象状況に応じて水田等の圃場に水を貯留させるための給水装置と排水装置の動作について適切に制御されるようにする。
【解決手段】圃場に水を供給するように設けられる給水装置と、圃場から水を排出させるように設けられる排水装置と、営農に対応して行われる前記給水装置と前記排水装置の制御を制限したうえで、前記圃場に水が貯留可能な状態となるように前記給水装置と前記排水装置とを制御する排水制御部とを備えて圃場水管理システムを構成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に水を供給するように設けられる給水装置と、
圃場から水を排出させるように設けられる排水装置と、
営農に対応して行われる前記給水装置と前記排水装置の制御を制限したうえで、前記圃場に水が貯留可能な状態となるように前記給水装置と前記排水装置とを制御する排水制御部と
を備える圃場水管理システム。
【請求項2】
前記圃場に水を貯留させることが必要であるか否かを判定する貯留要否判定部を備え、
前記貯留要否判定部は、気象情報に基づいて、前記圃場に水を貯留させることが必要であるか否かを判定する
請求項1に記載の圃場水管理システム。
【請求項3】
前記排水制御部は、前記貯留要否判定部が前記圃場に水を貯留させることが必要であると判定した後において前記圃場に水を貯留させる必要がなくなったと判定したことに応じて、圃場に貯留された水を所定の水位とするにあたり、排水路に排出される水の量が所定以下に制限されるように、前記排水装置による水の排出を制御する
請求項2に記載の圃場水管理システム。
【請求項4】
前記排水制御部は、
前記圃場に水が貯留可能な状態となるようにする前記排水制御部による前記排水装置の制御の前の段階で、前記圃場における水位を所定以下とするように前記給水装置と前記排水装置とを制御する
請求項1から3のいずれか一項に記載の圃場水管理システム。
【請求項5】
圃場に水を供給する給水装置と圃場から水を排出させる排水装置とが備えられる圃場水管理システムにおける圃場水管理方法であって、
営農に対応して行われる前記給水装置と前記排水装置の制御を制限したうえで、前記圃場に水が貯留可能な状態となるように前記給水装置と前記排水装置とを制御する排水制御ステップと
を備える圃場水管理方法。
【請求項6】
圃場に水を供給する給水装置と圃場から水を排出させる排水装置とが備えられる圃場水管理システムにおけるコンピュータを、
営農に対応して行われる前記給水装置と前記排水装置の制御を制限したうえで、前記圃場に水が貯留可能な状態となるように前記給水装置と前記排水装置とを制御する排水制御部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場水管理システム、圃場水管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
水田に設けられた排水管に対して排水量調整部を設け、雨量が多いときに排水量調整部を操作して排水量を調整することで、水田から公共排水路への排水量を抑制するようにされた田んぼダムシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6496230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される田んぼダムは、排水量調整部のハンドルを操作するという人的作業によって排水量を調整している。作業効率や安全性等の観点によれば、豪雨等の気象状況に応じて水田等の圃場に水を貯留させるため、給水装置と排水装置の動作について適切に制御されることが好ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、気象状況に応じて水田等の圃場に水を貯留させるための給水装置と排水装置の動作について適切に制御されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、圃場に水を供給するように設けられる給水装置と、圃場から水を排出させるように設けられる排水装置と、営農に対応して行われる前記給水装置と前記排水装置の制御を制限したうえで、前記圃場に水が貯留可能な状態となるように前記給水装置と前記排水装置とを制御する排水制御部とを備える圃場水管理システムである。
【0007】
本発明の一態様は、圃場に水を供給する給水装置と圃場から水を排出させる排水装置とが備えられる圃場水管理システムにおける圃場水管理方法であって、営農に対応して行われる前記給水装置と前記排水装置の制御を制限したうえで、前記圃場に水が貯留可能な状態となるように前記給水装置と前記排水装置とを制御する排水制御ステップとを備える圃場水管理方法である。
【0008】
本発明の一態様は、圃場に水を供給する給水装置と圃場から水を排出させる排水装置とが備えられる圃場水管理システムにおけるコンピュータを、営農に対応して行われる前記給水装置と前記排水装置の制御を制限したうえで、前記圃場に水が貯留可能な状態となるように前記給水装置と前記排水装置とを制御する排水制御部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、気象状況に応じて水田等の圃場に水を貯留させるための給水装置と排水装置の動作について適切に制御されるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る用水管理システムの全体的な構成例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る圃場管理サーバの機能構成例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る圃場管理情報の一例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る用水路管理サーバの機能構成例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る用水路情報、支流給水路情報、支流排水路情報、水位センサ情報の一例を示す図である。
図6】第1実施形態に係る用水路管理サーバが雨水貯留に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る用水路管理サーバが雨水貯留に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図8】本実施形態の第1変形例に係る用水管理システムの全体的な構成例を示す図である。
図9】本実施形態の第2変形例に係る用水管理システムの全体的な構成例を示す図である。
図10】本実施形態の第3変形例に係る圃場の一態様例を示す図である。
図11】本実施形態の第4変形例に係る圃場の一態様例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による用水管理システムについて図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
[用水管理システムの全体構成例]
図1は、本実施形態における用水管理システムの全体的な構成例を示している。本実施形態の用水管理システムは、「用水管理」として、「圃場管理(営農管理)」と「用水路管理」とを行う。圃場管理は、圃場主(営農者)が営農のため行う圃場の管理であって、営農対応の圃場における用水の給排水を含む管理である。
用水路管理は、圃場管理に対して上位となる管理であって、圃場群に対応して設けられた用水路における用水の流れを管理するものである。用水路管理は、用水路管理サーバ300を運用する用水路管理者が行う。
同図との対応では、用水路管理の対象となる用水路は、本流給水路MSP、支流給水路BSP(BSP-1、BSP-2)、支流排水路BDR(BDR-11、BDR-12、BDR-21、BDR-22)、及び本流排水路MDRを含む。
【0012】
同図を参照して、用水管理システムが対応する圃場の給排水系について説明する。同図では、用水管理システムが圃場FM-11~FM-16による第1圃場群と、圃場FM-21~FM-26による第2圃場群を管理対象とした例が示されている。
同図の圃場FM-11~FM-16、FM-21~FM-26は、例えば水田であり、稲作の時期に応じて、適切な水位となるように灌漑、排水(給排水)が行われる。
以降の説明において、圃場FM-11~FM-16、圃場FM-21~FM-26について特に区別しない場合には圃場FMと記載する。なお、本実施形態の用水管理システムが管理対象とする圃場FM、圃場群の数は特に限定されるものではない。
【0013】
圃場FMには、河川RVから引き込まれた用水が以下のように供給される。
河川RVに対しては、入水ゲートGTSが設けられる。入水ゲートGTSは、例えば水門とポンプを備える。
入水ゲートGTSには入水ゲートID(識別子)が付与されている。用水路管理サーバ300が、ネットワークNW経由で、入水ゲートGTSにおける水門の開閉とポンプの駆動を制御することで、本流給水路MSPに流す用水の量を調整することができる。
【0014】
本流給水路MSPを流れる用水は、支流給水路BSP(BSP-1、BSP-2)に分流する。
支流給水路BSP-1は、第1圃場群を貫通するようにして配置される。第1圃場群における圃場FMには、それぞれ、支流給水路BSP-1に対応して所定数の給水栓10(給水装置の一例)が設けられる。給水栓10は、入水口と排水口との間の流路に設けられた栓部(弁)の開度に応じて、入水口から供給された用水の排出口からの排出量を調整する。
第1圃場群の圃場FMに設けられた給水栓10は、支流給水路BSP-1から供給される用水を圃場FMに排出することで、対応の圃場FMに用水を供給する。
第2圃場群の圃場FMに設けられた給水栓10は、支流給水路BSP-2から供給される用水を排出することで、対応の圃場FMに用水を供給する。
【0015】
上記のように圃場FMに設けられる給水栓10には、それぞれ給水栓IDが付与されている。給水栓10は、ネットワークNW経由での圃場管理サーバ100による制御に応じて開度が変更されることで、圃場FMに供給する用水の量を調整する。
【0016】
また、第1圃場群において圃場FM-11~FM-13の支流給水路BSP-1の対岸側には支流排水路BDR-11が配置される。第1圃場群における圃場FMには、それぞれ、支流排水路BDR-11に対応して所定数の排水栓20(排水装置の一例)が設けられる。排水栓20は、入水口と排水口との間の流路に設けられた栓部(弁)の開度に応じて、入水口から供給された用水の排出口からの排出量を調整する。
排水栓20は、対応の圃場FMに貯留されている用水を支流排水路BDR-11に排出させる。
また、第1圃場群において圃場FM-14~FM-16の支流給水路BSP-1の対岸側には支流排水路BDR-12が配置される。第2圃場群における圃場FMには、それぞれ、支流排水路BDR-12に対応して所定数の排水栓20が設けられる。排水栓20は、対応の圃場FMに貯留されている用水を支流排水路BDR-12に排出させる。
【0017】
また、第2圃場群において圃場FM-21~FM-23の支流給水路BSP-2の対岸側には支流排水路BDR-21が配置される。第2圃場群における圃場FMには、それぞれ、支流排水路BDR-21に対応して所定数の排水栓20が設けられる。排水栓20は、対応の圃場FMに貯留されている用水を支流排水路BDR-21に排出させる。
また、第1圃場群において圃場FM-24~FM-26の支流給水路BSP-2の対岸側には支流排水路BDR-22が配置される。第2圃場群における圃場FMには、それぞれ、支流排水路BDR-22に対応して所定数の排水栓20が設けられる。排水栓20は、対応の圃場FMに貯留されている用水を支流排水路BDR-22に排出させる。
【0018】
上記のように圃場FMに設けられる排水栓20には、排水栓IDが付与されている。排水栓20は、ネットワークNW経由での圃場管理サーバ100の制御に応じて開度が変更されることで、圃場FMから排出させる用水の量を調整する。
【0019】
支流排水路BDR-11、BDR-12、BDR-21、BDR-22に排出された用水は、本流排水路MDRに流入する。本流排水路MDRに流入した用水は、出水ゲートGTDから河川RVに排出される。出水ゲートGTDは、入水ゲートGTSに対して下流側に設けられた例を示している。
出水ゲートGTDは、例えば水門とポンプを備える。出水ゲートGTDには出水ゲートIDが付与されている。用水路管理サーバ300が、ネットワークNW経由で、出水ゲートGTDにおける水門の開閉とポンプの駆動を制御することで、河川RVに排出させる用水の量を調整することができる。
【0020】
また、本流給水路MSPにおいて支流給水路BSP-1、BSP-2よりも上流には、本流給水センサ50Aが設けられる。本流給水センサ50Aは、本流給水路MSPにおける用水の流量を検出する。本流給水センサ50AにはセンサIDが付与されている。本流給水センサ50Aは、検出した流量をネットワークNW経由で用水路管理サーバ300に送信する。
【0021】
また、支流給水路BSP(BSP-1、BSP-2)には、それぞれ支流給水センサ50Bが設けられる。支流給水センサ50Bは、対応の支流給水路BSPにおける用水の流量を検出する。支流給水センサ50BにはセンサIDが付与されている。支流給水センサ50Bは、検出した流量をネットワークNW経由で用水路管理サーバ300に送信する。
【0022】
また、支流排水路BDR(BDR-11、BDR-12、BDR-21、BDR-22)には、それぞれ支流排水センサ60Bが設けられる。支流排水センサ60Bは、対応の支流排水路BDRにおける用水の流量を検出する。支流排水センサ60BにはセンサIDが付与されている。支流排水センサ60Bは、検出した流量をネットワークNW経由で用水路管理サーバ300に送信する。
【0023】
また、本流排水路MDRにおいて支流排水路BDRよりも下流には、本流排水センサ60Aが設けられる。本流排水センサ60Aは、本流排水路MDRにおける用水の流量を検出する。本流排水センサ60AにはセンサIDが付与されている。本流排水センサ60Aは、検出した流量をネットワークNW経由で用水路管理サーバ300に送信する。
【0024】
また、圃場FMのそれぞれには、営農用の水位センサ30が設けられる。水位センサ30は、対応の圃場FMの水位を検出する。水位センサ30には、センサIDが付与されている。水位センサ30は、検出した水位をネットワークNW経由で圃場管理サーバ100に送信する。なお、水位センサ30は、給水栓10または排水栓20が備える通信機能を利用して、検出した水位を圃場管理サーバ100に送信してもよい。この場合、水位センサ30は、検出した水位を無線通信または有線通信により給水栓10または排水栓20に送信する。
【0025】
また、圃場FMのそれぞれには、用水路管理用の水位センサ40が設けられる。水位センサ40は、対応の圃場FMの水位を検出する。水位センサ40には、センサIDが付与されている。水位センサ40は、検出した水位をネットワークNW経由で用水路管理サーバ300に送信する。
【0026】
なお、用水路管理サーバ300は、営農用の水位センサ30により検出された水位を、圃場管理サーバ100を経由して取得するようにされてもよい。この場合、用水路管理用の水位センサ40は省力されてよい。
【0027】
圃場管理サーバ100は、圃場FMの圃場主と圃場管理サービスを契約した圃場管理者が運用するサーバである。圃場管理サーバ100は、圃場主端末200、水栓装置(給水栓10、排水栓20)、営農用の水位センサ30等とネットワークNW経由で通信可能とされる。
圃場管理サーバ100は、圃場主により設定された営農スケジュールに従って水栓装置の開閉を制御することで、営農スケジュールに従った圃場FMでの水位が維持されるようにする。
営農スケジュールの設定は、例えば、圃場主が圃場主端末200を圃場管理サーバ100にアクセスさせたことで表示される営農スケジュール設定画面に対する操作を行うことにより可能とされている。
また、圃場主は、例えば圃場主端末200を操作して、水栓装置を指定して開度を指定することにより、リアルタイムに水栓装置の開度を調整するようにして遠隔制御することができる。また、圃場主は、圃場FMに赴いて水栓装置自体を操作することで、水栓装置の開度を調整することもできる。
【0028】
圃場主端末200は、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等であってよい。圃場主端末200としてのこれらの情報処理機器は、ウェブブラウザあるいは圃場管理用のアプリケーションにより、圃場管理サーバ100にアクセスすることができる。
【0029】
用水路管理サーバ300は、用水路管理者が運用するサーバであって、圃場FMに対する用水の給排水を、圃場管理サーバ100の上位で管理する。用水路管理サーバ300は、入水ゲートGTS、出水ゲートGTD、用水路に設けられるセンサ(本流給水センサ50A、支流給水センサ50B、支流排水センサ60B、本流排水センサ60A)、各圃場FMの水位センサ40)とネットワークNW経由で通信可能に接続される。
【0030】
用水路管理サーバ300は、平常時においては、例えば予め定められた規則に従って、圃場群(第1圃場群及び第2圃場群)にて給排水される用水量の調整を行う。用水路管理サーバ300は、圃場群にて給排水される用水量の調整にあたり、入水ゲートGTSと出水ゲートGTDとにおける水門の開度を適宜変更する制御を行う。
【0031】
用水路管理サーバ300は、ネットワークNW経由で気象情報を取得し、取得した気象情報に基づいて、圃場FMにて一時的に雨水を貯留させること(雨水貯留)の必要があるか否かを判定する。
具体的に、用水路管理サーバ300は、気象情報に基づき、例えば、所定時間後において、所定以上の降雨量(豪雨)の状態となると予測した場合に、豪雨となる時間帯に対応して、圃場FMにおける雨水を排出させずに貯留すること(雨水貯留)が必要であると判定する。
雨水貯留が必要であると判定した場合、用水路管理サーバ300は、圃場管理サーバ100による営農対応の水栓装置の制御に優先して、雨水貯留のための水栓装置の制御を実行する。用水路管理サーバ300が実行する雨水貯留のための水栓装置の制御の具体例については後述する。
なお、雨水を貯留させる必要があるか否かは用水管理者が種々の情報を基に判定してもよく、この場合、用水路管理サーバ300は、気象情報や、入水ゲートGTS、出水ゲートGTD、用水路に設けられるセンサ、各圃場FMの水位センサ40などの情報を統合して用水管理者に表示等によって提示し、雨水を貯留させる必要があるか否かの判断を促す様にしてもよい。
【0032】
[圃場管理サーバの構成例]
図2を参照して、圃場管理サーバ100の機能構成例について説明する。同図の圃場管理サーバ100としての機能は、圃場管理サーバ100が備えるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することにより実現される。圃場管理サーバ100は、通信部101、制御部102、及び記憶部103を備える。
通信部101はネットワーク経由で通信を行う。
【0033】
制御部102は、圃場管理サーバ100における制御を実行する。制御部102は、営農に対応して水栓装置(給水栓10、排水栓20)の動作を制御する。例えば、制御部102は、圃場主により設定された営農スケジュールにおいて定められた時期や時間帯ごとの水位となるように、ネットワークNW経由で水栓装置の開閉を制御することができる。また、制御部102は、圃場主の圃場主端末200に対する操作によって圃場主端末200から送信されたコマンドに従って、水栓装置の開閉等の動作を制御することができる。
また、制御部102は、圃場主端末200に対して各種の報知を行うことができる。
【0034】
記憶部103は、圃場管理サーバ100に関連する各種の情報を記憶する。同図の記憶部103は、圃場管理情報記憶部131を備える。
圃場管理情報記憶部131は、圃場管理情報を記憶する。圃場管理情報は、圃場FMごとの管理情報である。
【0035】
図3は、圃場管理情報記憶部131が記憶する圃場管理情報の一例を示している。同図における1行(1レコード)が1の圃場に対応する圃場管理情報である。
1の圃場に対応する圃場管理情報は、圃場ID、給水栓ID、排水栓ID、営農用水位センサID、圃場主情報、圃場主端末情報、営農スケジュールの領域を含む。
圃場IDの領域は、対応の圃場FMに付与された圃場IDを格納する。
給水栓IDの領域は、対応の圃場FMに設けられた給水栓10ごとの給水栓IDを格納する。
排水栓IDの領域は、対応の圃場FMに設けられた排水栓20ごとの給水栓IDを格納する。
営農用水位センサIDは、対応の圃場FMに設けられた営農用の水位センサ30のセンサIDを格納する。
圃場主情報の領域は、対応の圃場主に関する情報(圃場主情報)を格納する。圃場主情報には、対応の圃場主に付与された圃場主IDが含まれる。
圃場主端末情報の領域は、対応の圃場主が所有する圃場主端末200に関する情報(圃場主端末情報)を格納する。圃場主端末情報には、対応の圃場主端末200に付与された圃場主端末IDが含まれる。
営農スケジュールの領域は、対応の圃場FMについて設定された営農スケジュールを格納する。営農スケジュールは、圃場主が圃場主端末200を操作することで設定できる。営農スケジュールにおいては、対応の圃場FMにおいて営農のために必要な水位が、月、週、日付等の単位で設定されている。
【0036】
[用水路管理サーバの構成例]
図4を参照して、用水路管理サーバ300の機能構成例について説明する。同図の用水路管理サーバ300としての機能は、用水路管理サーバ300が備えるCPUがプログラムを実行することにより実現される。用水路管理サーバ300は、通信部301、制御部302、及び記憶部303を備える。
通信部301はネットワーク経由で通信を行う。
【0037】
制御部302は、用水路管理サーバ300における制御を実行する。制御部302は、給排水制御部322を備える。
給排水制御部322は、用水路における用水の流れの調整を行う。つまり、給排水制御部322は、入水ゲートGTSと出水ゲートGTDとの開度を制御することで、河川RVから本流給水路MSPに流入(給水)させる用水の量と、本流排水路MDRから河川RVに流出(排水)させる用水の量とを調整する。
また、給排水制御部322は、気象情報に基づき、雨水貯留が必要であるか否かを判定する。給排水制御部322は、雨水貯留が必要であると判定した場合、圃場管理サーバ100による営農対応の水栓装置の制御に優先して、雨水貯留のための水栓装置の制御を実行する。
【0038】
記憶部303は、用水路管理サーバ300に対応する各種の情報を記憶する。記憶部303は、用水路情報記憶部331、支流給水路情報記憶部332、支流排水路情報記憶部333、及び水位センサ情報記憶部334を備える。
【0039】
用水路情報記憶部331は、用水路情報を記憶する。用水路情報は、用水路を流路(本流給水路MSP、本流排水路MDR、支流給水路BSP、支流排水路BDR)単位で管理する情報である。
【0040】
支流給水路情報記憶部332は、支流給水路情報を記憶する。支流給水路情報は、支流給水路BSPごとに対応して設けられた給水栓10と支流給水センサ50Bを管理する情報である。
【0041】
支流排水路情報記憶部333は、支流排水路情報を記憶する。支流排水路情報は、支流排水路BDRごとに対応して設けられた排水栓20と支流排水センサ60Bを管理する情報である。
【0042】
水位センサ情報記憶部334は、水位センサ情報を記憶する。水位センサ情報は、対応の地域の圃場FMに設けられた用水路管理用の水位センサ40を管理する情報である。
【0043】
図5(A)は、用水路情報記憶部331が記憶する用水路情報の一例を示している。同図の用水路情報は、図1の第1圃場群と第2圃場群を含む地域に対応して配された用水路に対応する。
同図の用水路情報は、河川ID、地域情報、本流給水路ID、本流給水センサID、本流排水路ID、本流排水センサID、支流給水路ID、支流排水路IDの領域を含む。
河川IDの領域は、用水の供給元及び排出先となる河川RVに付与された河川IDを格納する。
地域情報の領域は、対応の地域についての情報(地域情報)を格納する。地域情報には、対応の地域がどこに存在するのかを示す情報(例えば、緯度・経度、住所等)を含む。
本流給水路IDの領域は、対応の地域における本流給水路MSPに付与された本流給水路IDを格納する。
本流給水センサIDの領域は、本流給水路MSPに配置された本流給水センサ50Aを示す本流給水センサIDを格納する。
本流排水路IDの領域は、対応の地域における本流排水路MDRに付与された本流排水路IDを格納する。
本流排水センサIDの領域は、本流排水路MDRに配置された本流排水センサ60Aを示す本流排水センサIDを格納する。
支流給水路IDの領域は、対応の本流給水路MSPと本流排水路MDRとに対応して設けられた支流給水路BSPごとに付与された支流給水路IDを格納する。
支流排水路IDの領域は、対応の本流給水路MSPと本流排水路MDRとに対応して設けられた支流排水路BDRごとに付与された支流排水路IDを格納する。
【0044】
図5(B)は、支流給水路情報記憶部332が記憶する支流給水路情報の一例である。同図における1レコードが1つの支流給水路BSPに対応する支流給水路情報である。1つの支流給水路BSPに対応する給水路情報は、支流給水路ID、圃場ID、給水栓ID、支流給水センサIDの領域を含む。
支流給水路IDの領域は、対応の支流給水路BSPに付与された支流給水路IDを格納する。
圃場IDの領域は、対応の支流給水路BSPにより給水が行われる圃場FMごとの圃場IDを格納する。
給水栓IDの領域は、対応の支流給水路BSPから圃場FMに給水を行うように設けられた給水栓10ごとの給水栓IDを格納する。
支流給水センサIDの領域は、対応の支流給水路BSPに設けられた支流給水センサ50BのセンサIDを格納する。
【0045】
図5(C)は、支流排水路情報記憶部333が記憶する支流排水路情報の一例である。同図における1レコードが1つの支流排水路BDRに対応する支流排水路情報である。1つの支流排水路BDRに対応する排水路情報は、支流排水路ID、圃場ID、排水栓ID、支流排水センサIDの領域を含む。
支流排水路IDの領域は、対応の支流排水路BDRに付与された支流排水路IDを格納する。
圃場IDの領域は、対応の支流排水路BDRにより排水が行われる圃場FMごとの圃場IDを格納する。
排水栓IDの領域は、対応の支流排水路BDRから圃場FMに排水を行うように設けられた排水栓20ごとの排水栓IDを格納する。
支流排水センサIDの領域は、対応の支流排水路BDRに設けられた支流排水センサ60BのセンサIDを格納する。
【0046】
図5(D)は、水位センサ情報記憶部334が記憶する水位センサ情報の一例を示している。同図の水位センサ情報は、圃場IDごとに対応付けて用水路管理用水位センサIDを格納した構造である。つまり、水位センサ情報は、圃場FMごとに設けられる用水路管理用の水位センサ40を示す情報である。
【0047】
[雨水貯留について]
本実施形態の用水管理システムでは、平常時の用水路管理サーバ300は、例えば平常時に対応して定めた用水割り当てスケジュールに従って入水ゲートGTSと出水ゲートGTDとにおける水門の開度を制御する。これにより、用水路管理サーバ300は、用水割り当てスケジュールに従って圃場FMに用水を供給したり、用水の供給を停止させたりするようにされる。
【0048】
また、平常時の圃場管理サーバ100は、設定された営農スケジュール、圃場主端末200からの遠隔操作に応じて水栓装置の開度を制御することで、営農のための圃場FMでの給排水が行われるようにする。
また、平常時における用水路管理サーバ300は、圃場管理サーバ100による営農のための水栓装置に対する制御を優先させる。この場合、用水路管理サーバ300は、特に水栓装置の制御は行わないようにされる。
【0049】
ここで、圃場FMの所在地に対応する該当地域が豪雨となった場合には、河川RVの水位が上昇する。ここでの該当地域とは、圃場FMを含む一定範囲の地域と、圃場FMが対応する河川RVの上流における一定範囲の地域とのいずれかであってよい。
該当地域にて豪雨が発生した状況のもとで、圃場FMに降った雨が排水栓20により排水されている状態にあると、圃場FMから排水された雨水が支流排水路BDRから本流排水路MDRを経由して出水ゲートGTDから河川RVに流入する。このように雨水が圃場FMから河川RVに流入すると、河川RVの水位がさらに上昇し、河川RVが氾濫する可能性も生じる。
【0050】
なお、出水ゲートGTDの水門を閉状態とした場合、圃場FMの雨水は河川RVに流入しなくなる。しかしながら、この場合には、排水栓20により圃場FMから排出される雨水が排水路(支流排水路BDR、本流排水路MDR)に貯まることとなってあふれ出てしまうという不具合も生じる。
【0051】
そこで、本実施形態の用水管理システムは、該当地域が豪雨となることに応じて、雨水貯留を行う。つまり、用水管理システムは、該当地域が豪雨となることに応じて、圃場FMに降った雨水を排出させることなく圃場FMに貯留させるようにする。このように豪雨に対応して雨水を圃場FMに貯留させることにより、河川RVの水位情報が抑制されることになる。また、排水路から雨水があふれ出すことも防止できる。
本実施形態の用水管理システムにおいて、雨水貯留は、用水路管理者の権限のもとで行われる。雨水貯留が行われる場合、圃場管理は制限される。このため、雨水貯留の制御は、用水路管理サーバ300が主導して行い、圃場管理サーバ100は、用水路管理サーバ300による水栓装置の制御を中継するように機能する。
【0052】
[処理手順例]
図6のフローチャートを参照して、用水路管理サーバ300が雨水貯留に関連して実行する処理手順例について説明する。
【0053】
ステップS101:用水路管理サーバ300において、貯留要否判定部321は、所定のタイミングで、圃場群に対応する該当地域の気象情報を取得する。なお、必ずしも気象情報を取得しなくてもよく、代わりに、圃場の水位の実態を把握するため、圃場FMの水位を圃場管理サーバ100から取得してもよい。
貯留要否判定部321は、例えば、一定期間が経過したこと、あるいは用水路管理者による指示が行われたこと等をトリガとして、圃場群に対応する該当地域の気象情報を取得するようにされてよい。貯留要否判定部321は、気象情報を提供する気象情報サーバにネットワークNW経由でアクセスすることにより気象情報を取得するようにされてよい。
【0054】
ステップS102:貯留要否判定部321は、ステップS101により取得された気象情報に基づいて、該当地域にて所定時間後に豪雨の発生することが予測されたか否かを判定する。当該ステップS102による豪雨の発生することが予測されたか否かの判定は豪雨の発生に応じた圃場FMへの水の貯留(雨水貯留)が必要となったか否かの判定に相当する。
豪雨の発生することが予測されなかった場合、同図の処理が終了されてよい。
なお、貯留要否判定部321は、例えば用水路管理者が、雨水貯留が必要となったと破断したことにより、雨水貯留のための水栓装置等の強制制御の有効化を指示する操作が、用水路管理サーバ300に接続された入力インターフェース、あるいは、用水路管理サーバ300と通信可能に接続された端末に対して行われたことに応じて、雨水貯留が必要となったと判定してもよい。
【0055】
ステップS103:ステップS102にて所定時間後に豪雨の発生することが予測された場合、給排水制御部322は、該当地域における圃場FM(圃場群)を管理対象とする圃場管理サーバ100に、圃場管理制限要求を送信する。圃場管理制限要求を受信した圃場管理サーバ100は、平常時に対応する圃場管理を制限する。
具体的に、圃場管理サーバ100は、平常時に対応して行う、営農スケジュールに従った水栓装置の制御、圃場主端末200からの遠隔制御に応じた水栓装置の制御の実行を強制的に停止する。また、圃場主端末200からの遠隔制御に応じた水栓装置の制御の停止ではなく、後述するS104、S015の用水路管理サーバ300による雨水貯留のための水栓装置の制御を優先的に実行させることでもよい。さらに、圃場管理サーバ100は、圃場管理の強制的な停止として、水栓装置自体に対する手動操作による開度の調整も不可なように水栓装置を制御してよい。
【0056】
当該ステップS103の実行により、圃場管理サーバ100による営農に対応の水栓装置の制御は行われなくなり、用水路管理サーバ300による雨水貯留のための水栓装置の制御が可能となる。以降において圃場管理サーバ100は、用水路管理サーバ300による雨水貯留のための水栓装置の制御のための通信を中継するようにされる。
【0057】
ステップS104:雨水貯留の手順として、給排水制御部322は、まず、給水停止要求を圃場管理サーバ100に送信する。給水停止要求は、該当地域における全ての給水栓10の栓部を閉状態として給水を停止させることを要求するコマンドである。
給水停止要求の送信に応じて、圃場管理サーバ100は、該当地域の給水栓10の全てを強制的に閉状態とするように制御する。この結果、圃場FMへの給水が停止される。
なお、給排水制御部322は、当該ステップS104により閉要求を送信することと併せて、入水ゲートGTSの水門を閉状態とする制御を行って河川RVから給水路への用水の流入を停止させてよい。
【0058】
ステップS105:また、給排水制御部322は、ステップS104による給水停止要求の送信とともに、排水要求を圃場管理サーバ100に送信する。排水要求は、該当地域における全ての排水栓20について強制的に栓部を全開状態として排水を行わせることを要求するコマンドである。排水要求の送信に応じて、圃場管理サーバ100は、該当地域の排水栓20の全てを強制的に全開状態とするように制御する。
【0059】
ステップS104及びステップS105の制御によって、該当地域の圃場FMにおいては、給水されることなく排水が行われるため、水位が低下していくことになる。つまり、給排水制御部322は、ステップS104及びステップS105の制御により、豪雨となるより以前の時期において、該当地域の圃場FMにおける水位を強制的に低下させる。これにより、豪雨となったときに圃場FMにて貯留可能な雨水の量を多くすることができる。
なお、使用状態にない給水栓10や排水栓20を停止させると、予期しない事故を発生させる可能性があるため、強制的に制御する給水栓10、排水栓20としては、直近の営農スケジュールが登録されていないもの、取得された現在の位置情報が予め登録された所定の圃場の位置でないもの、異常停止しているものなどは、強制的な制御から除外してもよい。
例えば、使用状態にない給水栓10や排水栓20は、或る場所に移動されているなどして、用水路管理サーバ300との通信経路に介在するように圃場にて設けられるゲートウェイの通信範囲から外れている場合がある。このようにゲートウェイの通信範囲から外れている給水栓10や排水栓20について、強制的な制御から除外されるようにしてよい。
【0060】
ステップS106:ステップS104及びステップS105の処理の後、給排水制御部322は、該当地域の圃場FMに設けられた水位センサ40により検出された水位を、水位センサ40との通信により取得する。給排水制御部322は、取得した水位が予め定められた下限水位となった圃場FMの排水栓20からの排水を停止させる制御(排水停止制御)を実行する。
ステップS107:給排水制御部322は、ステップS106により該当地域における或る1つの圃場FMを対象とする排水停止制御を行うと、現段階で該当地域における全ての圃場FMの排水停止制御が完了したか否かを判定する。
全ての圃場FMの排水停止制御が完了していないと判定された場合には、ステップS106に処理が戻される。
【0061】
ステップS107までの処理を終了した段階では、該当地域の全ての圃場FMは下限水位とされたうえで全ての給水栓10と排水栓20とが閉状態にある。これにより、圃場FMは、給水路からの用水は流入することなく、圃場FMの規模に応じた量の雨水を貯留可能な状態となっている。
なお、全ての圃場FMの排水停止制御が完了しないうちに豪雨となってしまう場合もある。この場合には、給排水制御部322が豪雨の状態になったと判定したタイミングで、まだ排水停止制御が完了していない圃場FMであっても強制的に排水栓20を閉状態とするように制御してよい。
【0062】
なお、ステップS106及びS107の処理に代えて、給排水制御部322は、ステップS105により排水要求を送信して各圃場FMにて排水を開始させてから所定時間が経過するまで待機し、所定時間を経過したことに応じて、各圃場FMの排水栓20を閉状態とするように制御してもよい。
【0063】
ステップS108:上記のように雨水を貯留可能な状態とした後において、或る時間に至って豪雨の状態となると、圃場FMに雨水が貯留されていくことになる。そこで、貯留要否判定部321は、例えばステップS106及びステップS107の処理の後、一定時間ごとに気象情報を取得し、取得した気象情報に基づいてそのときの天候を判定する。そのうえで、貯留要否判定部321は、豪雨が発生したことを判定した後において、発生した豪雨が収束したか否かを判定するようにされる。貯留要否判定部321は、例えば気象情報に基づく降雨量が一定以下となった状態が一定時間継続したか否かを判定することにより、豪雨が収束したか否かを判定するようにされてよい。
豪雨が収束したか否かの判定は、これまでの雨水貯留が必要がなくなったか否かの判定に相当する。
【0064】
ステップS109:圃場FMに貯留した雨水が過多となった場合には、雨水が圃場FMから畦畔を超えて流出するような状態となる。例えば畦畔の保全等を考慮すると、雨水が畦畔を超えて流出するような状態は回避されることが好ましい。
そこで、ステップS108にて豪雨が収束していないと判定されている状態において、給排水制御部322は、水位超過抑止制御を実行する。水位超過抑止制御は、圃場FMの水位が、豪雨時に対応して設定された上限水位(貯留対応上限水位)を超えないように制御することである。貯留対応上限水位は、営農に対応して定められる上限水位(営農対応上限水位)よりも高く、かつ、畦畔の高さよりも低くなるようにして設定されてよい。
なお、貯留対応上限水位は、圃場主あるいは圃場管理者等により設定されてもよい。
【0065】
水位超過抑止制御として、給排水制御部322は、圃場FMごとの水位センサ40により検出される水位を監視し、監視している水位が貯留対応上限水位に対応して設定された閾値以上となった圃場FMがあるか否かを判定する。水位が閾値以上となった圃場FMがあることを判定した場合、給排水制御部322は、水位が閾値以上となった圃場FMにおける排水栓20を開状態とする制御を実行する。つまり、この場合の給排水制御部322は、水位が閾値以上となった圃場FMに設けられた排水栓20を指定して開状態とすることを要求する排水要求を圃場管理サーバ100に送信する。これにより、水位が閾値以上となった圃場FMにおける排水栓20が開状態となって、圃場FMからの排水が行われ、圃場FMの水位が低下する。この場合において指示される排水栓20の栓部の開度は、全開であってもよいし、全開より小さい所定の開度であってもよい。
また、給排水制御部322は、上記のようにして排水栓20に排水を行わせている圃場FMについて監視している水位が所定以下となったことに応じて、当該排水栓20を閉状態とするように制御する。
【0066】
上記のような制御が行われることで、豪雨が発生している状態のもとで、圃場FMにおいて雨水を貯留させつつ、畦畔を超えて流出しないように水位を調整することができる。
この場合において、給排水制御部322は、出水ゲートGTDの水門を開状態としていてよい。あるいは、給排水制御部322は、排水路における水量に余裕がある状態であれば、出水ゲートGTDの水門を閉状態としてよい。
【0067】
ステップS110:ステップS108にて豪雨が収束したと判定した場合、給排水制御部322は、抑制排水制御を実行する。
抑制排水制御は、例えば所定時間ごとに、あるいは水位を監視しながら、圃場FMに貯留された雨水を、段階的に河川RVに排出させる制御である。豪雨自体が収束した後においても河川RVには或る程度の時間にわたって相当量の水が流れている。圃場FMに貯留された雨水を一斉に排出させることなく、段階的に河川RVに排出させることにより、圃場FMから排水路を経て河川RVに流入する水量を所定以下に抑制(制限)することとなり、河川RVの水位、水量が過剰に増加することを回避するようにされる。
【0068】
具体的に、給排水制御部322は、抑制排水制御として、圃場群において区分した1以上の圃場FMのグループ単位で、順次、排水路への排水が行われるように排水栓20を制御してよい。この際には、給排水制御部322は、排水を行っている圃場FMについて予め定めた下限閾値にまで水位が低下したことを判定すると排水を停止させ、続けてあるいは所定時間を待機したうえで、次の所定の1以上の圃場FMにて排水が行われるように該当の排水栓20を制御してよい。また、上記の下限閾値は、この後の営農への移行を考慮して設定されてよい。
また、給排水制御部322は、抑制排水制御として、圃場群における全ての圃場FMから一斉に排水させる水量を、排水栓20の栓部の開度の調整により制限するようにしてもよい。
【0069】
ステップS111:ステップS110による抑制排水制御が終了すると、給排水制御部322は、制限解除要求を用水路管理サーバ300に送信する。制限解除要求は、ステップS103にて送信された圃場管理制限要求に応じて圃場管理サーバ100が設定した平常時対応の圃場管理の制限の解除を要求するコマンドである。
圃場管理サーバ100は、制限解除要求を受信したことに応じて平常時対応の圃場管理の制限を解除する。以降において、圃場管理サーバ100は、平常時に対応する営農対応の圃場管理のための水栓装置の制御を実行する。
【0070】
なお、ステップS109の水位超過抑制制御やステップS110の抑制排水制御のもとで給水栓を制御するための判定にあたり、排水センサ(本流排水センサ60A、支流排水センサ60B、60B)にて検出される排水路の流量を用いてよい。
【0071】
なお、用水路管理サーバ300は、ステップS102にて豪雨の発生が予測されて以降における、水栓装置の強制制御(豪雨前の圃場FMからの用水の排出、豪雨中の水位超過抑止制御、豪雨収束後の抑制排水制御等)についての履歴を、記憶部103に記憶させてよい。
【0072】
なお、ステップS105~S107による、豪雨前の段階において事前に圃場FMの貯水量を一定以下とするための制御(事前排水制御)は省略されてもよい。例えば、圃場FMの水位が既に下限水位もしくは下限水位に近い所定以下の水位であることが検出された場合に、事前排水制御を行わないようにされてよい。この場合には、ステップS104により排水停止制御も送信して排水栓20も閉状態とさせておくようにしてよい。
【0073】
[圃場主への報知]
本実施形態において、上記のようにして豪雨の発生に応じて、圃場管理サーバ100による営農対応の水栓装置の制御が制限され、用水路管理サーバ300による雨水貯留のための強制的な水栓装置の制御が行われる際には、圃場主への報知が行われる。以下に、圃場主への報知の態様について説明する。
【0074】
まず、用水路管理サーバ300は、図6のステップS102、S103として示したように、所定時間後に豪雨発生を予測した場合には、圃場管理サーバ100に圃場管理制限要求を送信する。
圃場管理サーバ100は、圃場管理制限要求を受信したことに応じて、営農対応の水栓装置の制御を停止するとともに、豪雨発生前に対応する報知(豪雨前報知)を圃場主端末200に対して行うようにされる。
豪雨前報知は、例えば、圃場主に向けて、所定時間後に豪雨が発生すると予測されることにより、営農対応の水栓装置の制御は不可となったことを報知する内容を有する。また、豪雨が発生すると予測されたことで、用水路管理サーバ300(即ち、用水管理者)による雨水貯留のための水栓装置の制御として、まず、圃場FMの用水を強制的に排出させる制御が行われたことを報知する内容を有してよい。時間経過に応じて、圃場FMの用水を強制的に排出させる制御が完了したときには、その旨も報知されるようにしてよい。
また、豪雨前報知には、豪雨の発生することが予測される地域範囲、時間帯、降雨量などの情報が含まれてよい。
【0075】
圃場管理サーバ100は、例えば圃場主端末200が圃場管理サーバ100にアクセスすることによって表示される営農用の圃場管理システムのトップページに、上記のような内容の豪雨前報知を行ってよい。あるいは、圃場管理サーバ100は、豪雨前報知として、上記のような報知内容の本文が記述された電子メールを圃場主端末200に送信するようにしてもよい。
【0076】
また、圃場管理サーバ100は、圃場管理制限要求の受信に応じて営農対応の水栓装置の制御を停止させるにあたり、圃場主による営農用の圃場管理システムに対する所定操作の受け付けが不可となるようにしてよい。具体的に、少なくとも水栓装置をリアルタイムに遠隔制御するような操作が受け付け不可となるようにされてよい。
【0077】
また、圃場管理サーバ100は、豪雨前の状態から豪雨中の状態となったことが判定されたことに応じて、豪雨中に対応する報知(豪雨中報知)が圃場主端末200にて行われるようにする。
豪雨中の状態となったことの判定は、例えば用水路管理サーバ300または圃場主端末200が現時点での気象情報に基づいて行ってよい。あるいは、用水路管理サーバ300または圃場主端末200が、河川RVの水量についての測定結果に基づいて判定してよい。または、用水路管理者が、豪雨が発生したと判断し、用水路管理サーバ300に豪雨発生を確認する操作を行ったことに応じて、用水路管理サーバ300が豪雨中の状態となったことを判定してよい。
【0078】
豪雨中報知としては、例えば、圃場主に向けて、豪雨が発生中であるため、豪雨が収束するまで、引き続き営農対応の水栓装置の制御は不可であり、用水路管理サーバ300による雨水貯留のための水栓装置の制御が行われていることを報知する内容を有する。また、豪雨前報知には、現在における豪雨の地域範囲、豪雨の終了予想時刻、現在の降雨量などの情報が含まれてよい。
【0079】
圃場管理サーバ100は、営農用の圃場管理システムのトップページにおいて、前述の豪雨前報知に引き続いて、上記のような内容の豪雨中報知を行ってよい。あるいは、圃場管理サーバ100は、豪雨中報知として、上記のような報知内容の本文が記述された電子メールを圃場主端末200に送信するようにしてもよい。
【0080】
また、圃場管理サーバ100は、豪雨中においても引き続き、圃場主による営農用の圃場管理システムに対する所定操作の受け付けが不可となるようにしてよい。
【0081】
用水路管理サーバ300は、図6のステップS108により豪雨が収束したと判定すると、ステップS110、S111として示したように、抑制排水制御を行ったうえで圃場管理サーバ100に制限解除要求を送信する。制限解除要求が受信されたことに応じて、用水路管理サーバ300は、前述のように、これまで停止させていた営農対応の水栓装置の制御を復帰させる。
また、制限解除要求が受信されたことにより、圃場管理サーバ100は、豪雨が収束したと判定できる。そこで、圃場管理サーバ100は、制限解除要求が受信されたことに応じて、豪雨の収束に関する報知(豪雨収束報知)が圃場主端末200にて行われるようにする。
【0082】
豪雨収束報知としては、例えば、圃場主に向けて、豪雨が収束して抑制排水制御も完了したことから、営農対応の水栓装置の制御が可能となったことを報知する内容を有する。なお、豪雨収束報知として、図6のステップS110による抑制排水制御が行われているときに、当該抑制排水制御が実行されていることの報知も行われるようにされてよい。この場合において、抑制排水制御の実行中において水位センサによって測定される圃場FMの水位の遷移状況も報知されるようにしてよい。
【0083】
圃場管理サーバ100は、営農用の圃場管理システムのトップページにおいて、前述の豪雨中報知に引き続いて、上記のような内容の豪雨収束報知を行ってよい。あるいは、圃場管理サーバ100は、豪雨収束報知として、上記のような報知内容の本文が記述された電子メールを圃場主端末200に送信するようにしてもよい。
【0084】
<第2実施形態>
[概要]
先の第1実施形態においては、用水路管理サーバ300が管理下となる圃場FMが存在する地域(該当地域)が豪雨となる場合に対応して、河川RVから水を引き込むことなく雨水のみを圃場FMに貯留させるようにしていた。
しかしながら、例えば、河川RVの該当地域に対応する流域よりも上流または下流に対応する地域(上流地域または下流地域)にて豪雨が発生した場合には、該当地域においても河川RVの水位が上昇することになるものの、該当地域での降雨量は少ない。このため、該当地域の圃場FMについて、河川RVから水を引き込むことなく雨水のみを圃場FMに貯留させるようにしても、河川RVの水位上昇を有効に抑制することはできない。
そこで、本実施形態の用水路管理サーバ300は、上流地域または下流地域にて豪雨が発生した場合に対応して、以下に説明するようにして、該当地域の圃場FMにおいて積極的に河川RVから水を取り込んで貯留させるようにする。このように河川RVから水を取り込んで圃場FMに貯留させることで、該当地域における河川RVの水位の上昇を有効に抑止することが期待できる。
【0085】
[処理手順例]
図7のフローチャートを参照して、用水路管理サーバ300が雨水貯留に関連して実行する処理手順例について説明する。
ステップS201の処理は、図6のステップS201と同様でよい。
【0086】
ステップS202:貯留要否判定部321は、ステップS101により取得された気象情報に基づいて、上流地域または下流地域にて所定時間後に豪雨の発生することが予測されたか否かを判定する。豪雨の発生することが予測されなかった場合には、同図の処理が終了されてよい。
【0087】
ステップS203~S207の処理は、図6のステップS103~S107と同様でよい。ステップS203~S207の処理によって、豪雨の状態となる前の時期において、該当地域における各圃場FMの水位が一定以下となり、豪雨のときに水を貯留させるための準備が整った状態となる。
【0088】
ステップS208:上記のように雨水を貯留可能な状態とした後においては天候の変更により或る時期に上流地域または下流地域が豪雨状態となる。そこで、給排水制御部322は、要取水状態ではない状態から要取水状態に遷移したか否かを判定する。
要取水状態とは、河川RVの水位が許容限度を超えて上昇するのを抑制するため河川RVから圃場FMに水を流入させる(取り込む)べき状態である。給排水制御部322は、例えば気象情報により把握される降雨量の増加度合いが所定の条件を満たした場合に要取水状態に遷移したと判定してよい。あるいは、給排水制御部322は、例えば上流地域または下流地域における河川RVの水位、あるいは該当地域における河川RVの水位が一定以上となったこと応じて要取水状態に遷移したと判定してよい。
【0089】
ステップS209:ステップS208にて要取水状態に遷移したことが判定された場合、給排水制御部322は、取水要求を該当地域の圃場管理サーバ100に送信する。
圃場管理サーバ100は、取水要求の受信に応じて、圃場FMに河川RVの水を取り込み可能な取水状態とするように制御する。具体的に、取水状態とするにあたり、圃場管理サーバ100は、入水ゲートGTSの水門を開状態とするように制御するとともに、該当地域における圃場FMに設けられた給水栓10の栓部を開状態とする。
なお、取水状態における入水ゲートGTSの水門の開度と給水栓10の栓部の開度は、全開であってもよいし、全開よりも小さい所定の開度であってよい。あるいは、取水状態における入水ゲートGTSの水門の開度と給水栓10の栓部の開度は、降雨量や河川RVの水位等に応じて設定されてよい。
また、該当地域における圃場FMに設けられた排水栓20については、ステップS206、S207により得られている閉状態を維持させてよい。
【0090】
ステップS210:ステップS208にて要取水状態に遷移していないことが判定された場合、あるいはステップS209の処理の後、給排水制御部322は、これまでの要取水状態が解消されたか否かを判定する。給排水制御部322は、例えば気象情報により把握される降雨量の低下度合いが一定条件を満たした場合に要取水状態が解消したと判定してよい。あるいは、給排水制御部322は、例えば上流地域又は下流地域における河川RVの水位、あるいは該当地域における河川RVの水位が一定以下となったことに応じて要取水状態が解消したと判定してよい。
【0091】
ステップS211:ステップS210にて要取水状態の解消されたことが判定された場合、給排水制御部322は、取水停止要求を圃場管理サーバ100に送信する。
圃場管理サーバ100は、取水停止要求の受信に応じて、これまでの取水状態から、圃場FMに河川RVの水を取り込み不可な取水停止状態とするように制御する。具体的に、圃場管理サーバ100は、該当地域における圃場FMに設けられた給水栓10の栓部を閉状態とする。この際に、圃場管理サーバ100は、入水ゲートGTSの水門も閉状態とするように制御してよい。あるいは、圃場管理サーバ100は、取水停止状態として、入水ゲートGTSの水門を閉状態とし、給水栓10については栓部を開状態としておいてもよい。
【0092】
ステップS210にて要取水状態が解消されないことが判定された場合、あるいはステップS211の処理の後、ステップS212、S213の処理が実行される。ステップS212~S213の処理は、図6のステップS108、S109と同様でよい。ただし、ステップS213にて水位超過抑止制御を実行した後は、ステップS208に処理が戻されることで、豪雨中の状況に応じて要取水状態と取水停止状態とで遷移が可能なようにされている。
【0093】
ステップS214、S215の処理は、図6のステップS110、S111と同様となる。
【0094】
なお、ステップS208やステップS210の判定にあたり、給水センサ(本流給水センサ50A、支流給水センサ50B)にて検出される給水路の流量や、排水センサ(本流排水センサ60A、支流排水センサ60B、60B)にて検出される排水路の流量を用いてよい。
【0095】
<変形例>
以下に、本実施形態の変形例について説明する。以下の変形例は、適宜組み合わせが可能である。
【0096】
[第1変形例]
本変形例は、第2実施形態に対応する。豪雨により河川RVの水位が上昇している状況では、河川RVの水は濁流となっている場合がある。このため、第2実施形態のように上流地域または下流地域が豪雨の状態である場合に対応して圃場FMに河川RVから水を取り込んだ場合には、圃場FMに濁水が流入する場合がある。圃場FMから河川RVに水を取り込むにあたっては、できるだけ濁水が避けられるようにすることが好ましいという側面がある。
そこで、本変形例としては、河川RVの水が入水ゲートGTSから給水路を経て圃場FMに流入するまでの経路において、圃場FMよりも上流において河川RVから流入する水を貯留する貯留槽を設けるようにされる。
【0097】
図8は、本変形例に対応する用水管理システムの全体的な構成例を示している。同図において、図1と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
同図においては、図1における第2圃場群に相当する1の圃場群が存在している。そのうえで、本変形例では、貯留槽80-1、80-2が設けられている。貯留槽80-1、80-2について特に区別しない場合には、貯留槽80と記載する。
貯留槽80は、例えば口径の大きいパイプ(例えば、RCP(繊維強化複合管))や雨水浸透槽などを地中に埋設するようにして設けられてよい。
【0098】
本流給水路MSPから分岐する支流給水路BSP-1は、さらに支流給水路BSP-11、BSP-12に分岐されている。
貯留槽80-1には給水弁81が設けられている。給水弁81には支流給水路BSP-11が接続される。また、貯留槽80-1には排水弁82が設けられている。排水弁82には支流排水路BDR-11が接続される。
また、貯留槽80-2にも給水弁81と排水弁82が設けられている。貯留槽80-2の給水弁81には支流給水路BSP-12が接続され、貯留槽80-2の排水弁82には支流排水路BDR-12が接続される。
給水弁81と排水弁82は、用水路管理サーバ300により開度が制御される。
【0099】
貯留槽80-1、80-2に用水を供給する支流給水路(BSP-1、BSP-11、BSP-12)は、本流給水路MSPにおいて、圃場FMに水を供給する支流給水路BSP-2よりも上流となる。つまり、貯留槽80は、圃場FMよりも上流で河川RVから流入する水を取り込んで貯留することができる。
【0100】
本変形例の用水路管理サーバ300は、圃場群を対象として、図7と同様の手順による制御を実行してよい。
そのうえで、本変形例の用水路管理サーバ300は、要取水状態となったことに応じて、貯留槽80にも河川RVから取り込んだ水を貯留させるようにする。この際、用水路管理サーバ300は、貯留槽80における給水弁81を開状態とし、排水弁82を閉状態とするように制御する。
【0101】
このようにして、本変形例では、要取水状態において、河川RVから取り込んだ水を圃場FMに貯留させる際に、貯留槽80にも同じ河川RVから取り込んだ水を貯留させるようにする。給水路において貯留槽80は、圃場FMよりも上流にある。このため、河川RVが濁流になっていたとしても、濁水の多くがまず貯留槽80に貯留される。この結果、圃場FMに貯留される水の濁りを抑えることができる。
【0102】
なお、用水路管理サーバ300は、豪雨が収束した後において、貯留槽80に貯留される水についても抑制排水制御を行うようにされてよい。この場合、用水路管理サーバ300は、圃場FMから水を排出させるタイミングと、貯留槽80からの水を排出させるタイミングとを異ならせるように抑制排水制御を行ってよい。
【0103】
なお、同図においては、支流排水路BDR-21の上流側が支流給水路BSP-1と接続された例が示されている。このように支流排水路BDR-21を支流給水路BSP-1と接続することで、支流給水路BSP-1に流入した水が貯留槽80-1、80-2だけではなく、支流排水路BDR-21にも流れるようにされる。これにより、例えば貯留槽80における水が満杯となったとしても、本流給水路MSPに流入した水の一部を支流給水路BSP-1、支流排水路BDR-21を経由して本流排水路MDRに流すことができるので、本流給水路MSPから水あふれ出してしまうことを防ぐことができる。
【0104】
なお、1の本流給水路MSPに対応して設けられる貯留槽80の数は特に限定されない。また、同図においては、2つの貯留槽80を並列に設けているが、直列に設けられてもよい。
【0105】
[第2変形例]
本変形例は、第1変形例のように圃場FMの上流に貯留槽を設ける態様についての変形例となる。
図9は、本変形例に対応する用水管理システムの全体的な構成例を示している。同図において、図1図8と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
図8の用水管理システムでは、圃場FMに水を供給する支流給水路BSP-2よりも本流給水路MSPの上流にて分岐された支流給水路BSP-1に貯留槽80を設けるようにしていた。
これに対して、本変形例においては、図9に示されるように、上流側の本流給水路MSP-Uと下流側の本流給水路MSP-Dの間に貯留槽80Aを設けるようにされている。つまり、本変形例のように、貯留槽80Aは、圃場FMの上流の本流給水路に対して設けられてもよい。
同図の例では、上流側の本流給水路MSP-Uから給水弁81を介して貯留槽80Aに水が流入するようにされている。また、貯留槽80A内の水は、排水弁82-1を介して支流排水路BDR-1に排出可能とされるとともに、排水弁82-2を介して下流側の本流給水路MSP-Dにも排出可能とされている。
【0106】
この場合の用水路管理サーバ300は、平常時においては、貯留槽80Aに水を貯留しておくか、貯留槽80Aにて河川RVから入水ゲートGTSを介して取り込んだ水を貯留槽80Aに貯留させることなくバイパス経路(図示せず)を経由して下流側の本流給水路MSP-Dに水を供給するように制御する。これにより、圃場管理サーバ100は、平常時における営農用の用水を圃場FMに供給することが可能となる。
豪雨に対応しては、用水路管理サーバ300は、例えばまずは貯留槽80Aに河川RVから取り込んだ水を貯留させ、貯留槽80Aにおける水の貯留量が一定以上となったことに応じて、貯留槽80Aから支流排水路BDR-1と下流側の本流給水路MSP-Dに適宜、水を排出させてよい。
このような構成によっては、豪雨における河川RVの水位上昇の抑制を貯留槽80による水の貯留によって賄うことが可能であった場合には、圃場FMに濁水を貯留させなくともよくなる。また、圃場FMに濁水を貯留させた場合であっても、水の濁りを抑えることができる。
【0107】
[第3変形例]
先の各実施形態において、水栓装置(給水栓10、排水栓20)は、栓部の開度を調整することで入水口から出水口に流れる流量が調整されるようになっていた。そのうえで、用水路管理サーバ300が、圃場FMの水位を或る目標値とするように水栓装置を制御するにあたっては、圃場FMに設けられた水位センサにより検出される水位を監視するようにされていた。
【0108】
本変形例としては、圃場FMから排水路に水を排出させる排水装置として、排水栓20に代えて、水位調整管を用いる。水位調整管は、上端開口部の高さを調整することで、圃場FMの水位を調整可能なように設けられる排水管である。本変形例においては、水位調整管の上端開口部の高さを、圃場管理サーバ100の制御によって調整可能なようにされる。
【0109】
図10(A)は、排水装置として水位調整管70が用いられている圃場FMの一態様例を示している。同図において図1等と同一部分には同一符号を付して適宜説明を省略する。
水位調整管70は、圃場FMにおいて、同図に示されるように管部の延伸方向が上下方向に沿うようにして配置される。水位調整管70は、駆動装置20Aによって上下方向において所定の可動範囲で移動するように動作することが可能とされている。駆動装置20Aは、例えば手動操作に応じて水位調整管70を駆動することができる。また、駆動装置20Aは、用水路管理サーバ300と通信可能とされていることで、用水路管理サーバ300の制御に応じて水位調整管70を駆動することができる。
水位調整管70の下側は、排水管71の一方の端部と接続されている。排水管71は畦畔RDの下に埋設されており、他方の端部は、支流排水路BDRに水を排出するように設けられる。
また、同図には、圃場FMにおいて営農用の水位センサ30と用水路管理用の水位センサ40とが設けられた例が示されている。本変形例において、営農用の水位センサ30は、営農に応じて定められた上限までの水位を検出(測定)可能とされている。
また、同図の給水栓10は、先の実施形態と同様に、支流給水路BSPから取り込んで圃場FMに供給する水量を調整する。
【0110】
上記のように水位調整管70が備えられる圃場FMの場合、営農のもとでの目標水位は水位調整管70の上端開口部の高さに対応して設定される。図10(A)においては、水位調整管70の上端開口部の高さが営農の際の上限水位と同じとされていることで、圃場FMにおける水位が、営農の際の上限水位となっている状態が示されている。
【0111】
また、図10(B)は、水位調整管70の上端開口部の高さが図10(A)よりも低く設定されたことで、圃場FMにおける水位についても、営農の際の上限水位より低くなっている状態が示されている。
【0112】
本変形例の場合、用水路管理サーバ300は、水栓装置の強制制御(豪雨前の圃場FMからの用水の排出、豪雨中の雨水貯留及び水位超過抑止制御、豪雨収束後の抑制排水制御等)にあたり目標の水位とするために、水位調整管70の上端入水口の高さを制御するようにされる。このために、用水路管理サーバ300は、水位調整管70の上端開口部が目標の水位に対応した高さとなるように、駆動装置20Aを制御する。この場合の制御は、圃場管理サーバ100を経由して行われてよい。
また、水栓装置の強制制御の際には、営農用の水位センサ30にて検出可能な水位の上限より高い水位の範囲も含めて水位を監視し、調整する必要がある。そこで、用水路管理サーバ300は、水栓装置の強制制御の際には、用水路管理用のセンサ40が検出した水位を利用するようにされる。
【0113】
[第4変形例]
先の第3変形例のもとで水位調整を行う水位調整管70の水位調整範囲の上限は、畦畔の高さよりも低い場合がある。しかしながら、豪雨中においては、畦畔の高さを上限として圃場FMに雨水を貯留させたい場合がある。この場合、水位調整管70を備える圃場FMでは、畦畔の高さよりも低い水位調整管70の水位調整範囲の上限までしか雨水を貯留させることができない。
そこで、本変形例では、以下に説明するようにして、水位調整管70を備える圃場FMにおいても、畦畔の高さを上限として圃場FMに雨水を貯留させることが可能なようにされる。
【0114】
図11(A)は、本変形例に対応する圃場FMの一態様例を示している。同図において図10(A)、図10(B)と同一部分には同一符号を付して適宜説明を省略する。
同図の圃場FMにおいては、水位調整管70を覆うようにして囲い箱BXが設けられる。囲い箱BXは、上面部の高さが畦畔RDの高さhと同じとなるように設けられている。
囲い箱BXは、上面部が開口しているとともに、側面においては開口部OPが設けられている。側面の開口部OPは、駆動装置20BがゲートGを上下に移動させるように駆動することに応じて、ゲートGにより開閉されるようになっている。
【0115】
図11(A)は、ゲートGが上に引き上げられた状態となっていることに応じて、開口部OPが開いている状態を示している。開口部OPが開いている状態では、当該開口部OPを介して囲い箱BXの側面から圃場FMの水が入ってくる。この場合、圃場FMの水位の上限は、水位調整管70の上端開口部の高さに応じて定まる。つまり、この場合には、水位調整管70の上端開口部の高さを調整することにより圃場FMの水位を調整することになる。営農に際しては、このように囲い箱BXの開口部OPを開放したうえで、水位調整管70の高さを調整することにより、圃場FMの水位を調整する。
【0116】
一方、豪雨の発生に対応して水栓装置の強制制御(豪雨前の圃場FMからの用水の排出、豪雨中の雨水貯留及び水位超過抑止制御、豪雨収束後の抑制排水制御等)を行う場合には、用水路管理サーバ300は、ゲートGにより囲い箱BXの開口部OPが閉じられた状態となるように駆動装置20Bを制御する。この際、水位調整管70については、特定の高さとなるように制御される必要はない。また、この場合の用水路管理サーバ300による駆動装置20Bの制御は、圃場管理サーバ100を介して行われてよい。
本変形例では、豪雨のとき、上記のように囲い箱BXの開口部OPが閉じられていることで、圃場FMの水は開口部OPに流れ込むことなく貯留されていくことになり、水位が上昇していく。そして、囲い箱BXの上端にまで水位が到達すると、以降においては、囲い箱BXの上端から内部に圃場FMに貯留された水が流入していくことになる。従って、この場合の圃場FMの水位は、囲い箱BXの上端に対応する畦畔RDの高さで維持される。
このようにして、本変形例では、豪雨の発生に応じて圃場FMに貯留させるべき上限の水位(貯留対応上限水位)が水位調整管70により調整可能な範囲よりも高い場合であっても、囲い箱BXを設けることにより、豪雨発生時において圃場FMを貯留対応上限水位で維持することが可能となる。
【0117】
なお、第3変形例及び第4変形例において、豪雨発生前の圃場FMからの排水を補助するための排水栓をさらに圃場FMに設けてよい。これにより、豪雨発生前の圃場FMからの排水をより短時間で行うことが可能となる。
【0118】
[第5変形例]
上記各実施形態において、給水栓10に加えて、圃場管理サーバ100による制御は不可で用水路管理サーバ300が制御可能な用水路管理対応の給水栓がさらに圃場FMに設けられてよい。同様に、排水栓20に加えて、圃場管理サーバ100による制御は不可で用水路管理サーバ300が制御可能な用水路管理対応の排水栓がさらに圃場FMに設けられてよい。
この場合、用水路管理サーバ300は、豪雨の発生が予測されたことに応じて、全ての給水栓10と排水栓20についての圃場管理サーバ100による制御を制限させたうえで、水栓装置の強制制御(豪雨前の圃場FMからの用水の排出、豪雨中の水位超過抑止制御、豪雨収束後の抑制排水制御等)にあたり、用水路管理対応の給水栓と排水栓を制御するようにされる。
【0119】
[第6変形例]
用水路管理サーバ300と圃場管理サーバ100とは統合されて1つのサーバとして構成されてよい。あるいは、用水路管理サーバ300としての機能が複数のサーバに分散されるようにして構成されてもよい。また、圃場管理サーバ100としての機能が複数のサーバに分散されるようにして構成されてもよい。
【0120】
なお、上述の水栓装置(給水栓10、排水栓20)、圃場管理サーバ100、用水路管理サーバ300、圃場主端末200等の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の水栓装置(給水栓10、排水栓20)、圃場管理サーバ100、用水路管理サーバ300、圃場主端末200等としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0121】
10 給水栓、20 排水栓、30 水位センサ、40 水位センサ、50A 本流給水センサ、50B 支流給水センサ、60A 本流排水センサ、60B 支流排水センサ、80(80-1、80-2、80A) 貯留槽、100 圃場管理サーバ、101 通信部、102 制御部、103 記憶部、131 圃場管理情報記憶部、200 圃場主端末、300 用水路管理サーバ、301 通信部、302 制御部、303 記憶部、321 貯留要否判定部、322 給排水制御部、331 用水路情報記憶部、332 支流給水路情報記憶部、333 支流排水路情報記憶部、334 水位センサ情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11