(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157755
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】ガス処理システムおよび船舶
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20221006BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20221006BHJP
B63B 11/04 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F17C13/00 302Z
B63B25/16 D
B63B25/16 F
B63B11/04 B
B63B25/16 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062168
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨永 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】松尾 真志
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 翔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 広崇
(72)【発明者】
【氏名】中土 洋輝
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172BB06
3E172BD01
3E172BD05
3E172CA10
3E172DA03
3E172DA05
3E172DA15
3E172EA12
3E172EA22
3E172HA08
3E172JA09
3E172KA22
(57)【要約】
【課題】多重殻タンクにおける内槽の外側の空間からその外部へ排出される可燃性ガスを安全に処理する。
【解決手段】一態様に係るガス処理システムは、内部に低温液体が貯蔵された内槽と、内槽を収容する1つまたは複数の外槽と、を備え、内槽と1つまたは複数の外槽との間または複数の外槽のうち互いに隣接する2つの外槽間の断熱空間に可燃性ガスが充填された多重殻タンクと、1つまたは複数の外槽の外部に設けられた燃焼装置と、可燃性ガスを断熱空間から排出し、燃焼装置へ導く排出路と、排出路に設けられた排出弁と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に低温液体が貯蔵された内槽と、前記内槽を収容する1つまたは複数の外槽と、を備え、前記内槽と前記1つまたは複数の外槽との間または前記複数の外槽のうち互いに隣接する2つの外槽間の断熱空間に可燃性ガスが充填された多重殻タンクと、
前記1つまたは複数の外槽の外部に設けられた燃焼装置と、
前記可燃性ガスを前記断熱空間から排出し、前記燃焼装置へ導く排出路と、
前記排出路に設けられた排出弁と、を備える、ガス処理システム。
【請求項2】
前記排出弁は、前記断熱空間の圧力が設定上限圧以上になったときに自動的に開く自動弁である、請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項3】
前記断熱空間を大気開放する大気開放路と、前記大気開放路に設けられた大気開放弁とを更に有し、
前記大気開放弁は、前記断熱空間内の圧力が設定上限圧以上になったときに開く自動弁である、請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項4】
前記排出路における前記排出弁と前記燃焼装置との間に設けられ、前記可燃性ガス中の異物を除去するフィルタを更に備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス処理システム。
【請求項5】
前記断熱空間内には、前記内槽内のボイルオフガスと同じ種類の可燃性ガスが充填されており、
前記多重殻タンクは、前記内槽内のボイルオフガスを前記断熱空間内へ導入する導入路と、前記導入路に設けられた導入弁とを更に有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス処理システム。
【請求項6】
前記複数の外槽は、第1外槽と、前記第1外槽を収容する第2外槽とを含み、
前記断熱空間は、前記内槽と前記第1外槽との間の第1断熱空間であり、前記排出路は第1排出路であり、前記排出弁は第1排出弁であり、
前記第1外槽は、前記第1断熱空間と、前記第1外槽と前記第2外槽との間の第2断熱空間とを仕切っており、前記第2断熱空間には、前記第1断熱空間に充填された可燃性ガスと同じまたは異なる種類の可燃性ガスが充填されており、
前記ガス処理システムは、前記可燃性ガスを前記第2断熱空間から排出し、前記第1排出路における前記第1排出弁と前記燃焼装置の間の部分または前記燃焼装置へ導く第2排出路と、前記第2排出路に設けられた第2排出弁と、を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のガス処理システム。
【請求項7】
前記内槽内のボイルオフガスは可燃性であり、
前記ガス処理システムは、前記ボイルオフガスを前記内槽内から排出し、前記排出路における前記排出弁と前記燃焼装置との間の部分または前記燃焼装置へ導くBOG排出路と、前記BOG排出路に設けられたBOG排出弁と、を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載のガス処理システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のガス処理システムを備える船舶。
【請求項9】
前記多重殻タンクは、メンブレン方式のタンクであり、
前記内槽は、一次メンブレンであり、
前記複数の外槽は、第1外槽としての二次メンブレンと、前記第1外槽を収容する第2外槽としての前記船舶の船体内殻とを含む、請求項8に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス処理システムおよびこれを備える船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に低温液体が貯蔵された内槽と当該内槽を収容する外槽とを有し、内槽と外槽との間の空間にガスを充填した多重殻タンクが知られている。例えば特許文献1には、内槽と外槽とを有する二重殻タンクが開示されている。この二重殻タンクにおける内槽と外槽との間の空間には、内槽から排出されたボイルオフガスが充填されている。内槽と外槽との間の空間の圧力が高くなりすぎたときにその空間のガスを排出できるように、外槽には排出路が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/202578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内槽と外槽との間の空間内に可燃性ガスが充填されており、上記のように内槽と外槽との間の空間から可燃性ガスを排出する場合には、その可燃性ガスを安全に処理する必要がある。三重以上の多重殻タンクにおいても、2つの外槽間の空間から可燃性ガスを排出する場合も同様である。
【0005】
そこで、本発明は、多重殻タンクにおける内槽の外側の空間からその外部へ排出される可燃性ガスを安全に処理することができるガス処理システムおよびこれを備える船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るガス処理システムは、内部に低温液体が貯蔵された内槽と、前記内槽を収容する1つまたは複数の外槽と、を備え、前記内槽と前記1つまたは複数の外槽との間または前記複数の外槽のうち互いに隣接する2つの外槽間の断熱空間に可燃性ガスが充填された多重殻タンクと、前記1つまたは複数の外槽の外部に設けられた燃焼装置と、前記可燃性ガスを前記断熱空間から排出し、前記燃焼装置へ導く排出路と、前記排出路に設けられた排出弁と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る船舶は、上記のガス処理システムを備える船舶。
【0008】
上記の構成によれば、多重殻タンクにおける内槽の外側の断熱空間から排出される可燃性ガスを燃焼装置により燃焼させて安全に処理できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多重殻タンクにおける内槽の外側の空間からその外部へ排出される可燃性ガスを安全に処理することができるガス処理システムおよびこれを備える船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガス処理システムを含む船舶の概略側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すガス処理システムの全体的な構成を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の変形例1に係るガス処理システムの全体的な構成を示す概略構成図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例2に係るガス処理システムの全体的な構成を示す概略構成図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の変形例3に係るガス処理システムの全体的な構成を示す概略構成図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すガス処理システムの構成の別の例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係るガス処理システムの全体的な構成を示す概略構成図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の変形例1に係るガス処理システムの全体的な構成を示す概略構成図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の変形例2に係るガス処理システムの全体的な構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本願明細書において、「内側」とは多重殻タンクの内槽内の空間の中心部分に近い側を意味し、「外側」とは多重殻タンクの内槽内の空間の中心部分から遠い側を意味する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る多重殻タンク10を含む船舶1の概略側面図である。船舶1は、低温液体を運搬する液化ガス運搬船である。船舶1は、多重殻タンク10を備える。多重殻タンク10は、内槽11と、内槽11を収容する外槽12を備える。内槽11の内部の貯留空間R0に低温液体が貯蔵されている。外槽12が内槽11を覆うことによって、内槽11より外側で且つ外槽12より内側に密閉された断熱空間R1が形成されている。断熱空間R1には、断熱材が配置されている。なお、断熱材は、例えば、パーライトなどの粒状体であってもよいし、内槽11の表面などに張り付けられた防熱パネルであってもよい。
【0013】
本実施形態において、内槽11および外槽12は、いずれも球形である。内槽11および外槽12は、必ずしも球形でなくてもよい。例えば内槽11および外槽12は、上半球体とした半球体との間に短い筒状体が挟まれた形状であってもよいし、横置き円筒状であってもよいし、方形状であってもよい。あるいは、例えば、内槽11および外槽12は、内槽11の中心から上45度の角度方向および/または下45度の角度方向が膨らんだ形状であってもよい。内槽11の形状および外槽12の形状は、互いに相似であってもよいし非相似であってもよい。
【0014】
外槽12の上側部分は、タンクカバー13により覆われており、外槽12の残りの部分は、保持壁14により覆われている。保持壁14は、例えば船体2の一部である。すなわち、保持壁14は、外槽12の船幅方向両側で船長方向にそれぞれ延びる一対の縦通隔壁や、外槽12の下方で且つ船体2の船底外板の上方で船長方向に延びるインナーボトムプレートなどを含む。
【0015】
タンクカバー13および保持壁14は、外槽12を収容する1つの収容構造15として構成されている。タンクカバー13および保持壁14が外槽12を覆っていることによって、タンクカバー13および保持壁14の内側で且つ外槽12の外側に、密閉空間が形成されている。言い換えれば、タンクカバー13と保持壁14とは、外槽12を更に覆う1つの外槽として機能している。本願明細書および特許請求の範囲において、多重殻タンクの外槽には、タンクカバーおよび保持壁により構成される収容構造15など、内側の外槽との間に密閉空間を形成する最外槽として機能するものも含まれるものとする。
【0016】
多重殻タンク10は、必ずしも船舶1にカーゴタンクとして搭載される必要はなく、燃料タンクとして搭載されてもよい。また、
図1では、1つの多重殻タンク10を備えた船舶1を示したが、船舶1が複数の多重殻タンク10を備えてもよい。なお、船舶1が複数の多重殻タンク10を備える場合、隣接する2つの多重殻タンク10の間に設けられた隔壁も、外槽12を覆う収容構造15に含まれる。
【0017】
本実施形態において、断熱空間R1内の可燃性ガスの圧力が所定の上限圧を超えた場合には、断熱空間R1から可燃性ガスを排出して断熱空間R1内のガス圧を下げる必要がある。船舶1は、このような場合に断熱空間R1から排出した可燃性ガスを処理することを可能にするガス処理システム3Aを備えている。
【0018】
図2は、
図1に示すガス処理システム3Aの全体的な構成を示す概略構成図である。ガス処理システム3Aは、上述した多重殻タンク10を備える。
図2には、内槽11および外槽12の断面図を含む。ただし、
図2において、タンクカバー13および保持壁14は省略している。
図2に示すように、内槽11は、低温液体が収容された内槽11より内側の貯留空間R0と、内槽11より外側で且つ外槽12より内側の断熱空間R1とを仕切っている。
【0019】
貯留空間R0の上部の気層は、貯留空間R0内の低温流体が気化したボイルオフガスで満たされている。貯留空間R0内のボイルオフガスは、可燃性ガスであり、また、断熱空間R1内には、内槽11内のボイルオフガスと同じ種類の可燃性ガスが充填されている。例えば、貯留空間R0の低温液体は、液化水素であり、断熱空間R1のガスは、水素ガスである。
【0020】
多重殻タンク10は、内槽11内のボイルオフガス、すなわち貯留空間R0におけるボイルオフガスを、断熱空間R1内へ導入する導入路21を備えている。導入路21には、導入弁22が設けられている。例えば導入弁22は、断熱空間R1内の圧力が予め定めた設定下限圧より低くなったときに開けられる弁である。本実施形態では、導入弁22は、作業者によって操作される手動弁または遠隔操作弁である。
【0021】
ただし、ガス処理システム3Aは、別途、導入路21および導入弁22の代わりにまたは加えて、多重殻タンク10の外部から断熱空間R1内へ可燃性ガスを導入するガス供給装置を備えてもよい。
【0022】
ガス処理システム3Aは、燃焼装置31、排出路32、排出弁33およびフィルタ34を備える。燃焼装置31は、外槽12の外部に設けられている。排出路32の一端部は、断熱空間R1内に配置され、排出路32の他端部は、燃焼装置31に接続されている。排出路32は、可燃性ガスを断熱空間R1から排出し、燃焼装置31へ導く。燃焼装置31は、排出路32により導かれた可燃性ガスを燃焼する。
【0023】
排出弁33は、排出路32に設けられている。本実施形態では、排出弁33は、断熱空間R1の圧力が設定上限圧以上になったときに断熱空間R1の圧力を放出させる弁である。本実施形態では、排出弁33は、作業者によって操作される手動弁または遠隔操作弁、あるいは、断熱空間R1の圧力が設定上限圧以上になったときに自動的に開かれる自力式の自動弁(例えば安全弁)である。
【0024】
本実施形態では、排出路32における燃焼装置31側の圧力が、断熱空間R1内の圧力よりも低い状態に保たれている。このため、排出弁33が開かれると、断熱空間R1内のガス圧によって、排出路32を通じて断熱空間R1から燃焼装置31に可燃性ガスが送られる。ただし、排出路32に排気装置を設けて、強制的に断熱空間R1から燃焼装置31に可燃性ガスが送られてもよい。排気装置としては、圧縮機や排気ポンプが例示される。この場合、排出路32における燃焼装置31側の圧力は、断熱空間R1内の圧力よりも低い状態に保たれていなくてもよい。
【0025】
フィルタ34は、排出路32における排出弁33と燃焼装置31との間に設けられている。フィルタ34は、断熱空間R1から導かれた可燃性ガス中の異物を除去する。ガス中の異物としては、断熱空間R1に配置された断熱材のくず、工事などで断熱空間R1に入り込んだガス中のチリなどが想定される。
【0026】
以上に説明したように、本実施形態のガス処理システム3Aによれば、多重殻タンク10における内槽11の外側の断熱空間R1から排出される可燃性ガスを燃焼装置31により燃焼させて安全に処理できる。
【0027】
また、本実施形態では、導入弁22が開かれることで、導入路21を通じて内槽11内のボイルオフガスを断熱空間R1内へ導入することができる。このため、断熱空間R1にガスを導入するための装置を、多重殻タンク10の外部に別途用意しなくて済む。
【0028】
(第1実施形態の変形例1)
導入弁22および排出弁33は、電気的に制御される他力式の自動弁であってもよい。
図3は、第1実施形態の変形例1に係るガス処理システム3Bの全体的な構成を示す概略構成図である。
【0029】
ガス処理システム3Bは、上記したガス処理システム3Aの構成要素に加えて、圧力計41および制御装置42を備える。圧力計41は、断熱空間R1内の圧力を計測する。圧力計41は、制御装置42に通信可能に接続されている。圧力計41により計測された圧力の情報は、制御装置42に送られる。
【0030】
本変形例1において、導入弁22および排出弁33は、制御装置42により制御される制御弁である。制御装置42は、いわゆるコンピュータであって、CPU等の演算処理部、ROM、RAM等の記憶部を有している(いずれも図示せず)。記憶部には、演算処理部が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。演算処理部は、外部装置とのデータ送受信を行う。制御装置42では、記憶部に記憶された所定のガス圧調整プログラムを演算処理部が読み出して実行することにより、断熱空間R1のガス圧を調整するためのガス圧調整処理が行われる。なお、制御装置42は複数のコンピュータにより構成されてもよい。この場合、制御装置42は、複数のコンピュータの協働による分散制御により導入弁22および排出弁33を制御してもよいし、導入弁22および排出弁33を個別に制御してもよい。
【0031】
制御装置42の記憶部には、予め設定された設定上限圧と、設定上限圧より低い設定下限圧が記憶されている。例えば制御装置42は、内槽11内の気層の圧力および/または内槽11内の温度に応じて、設定上限圧および設定下限圧の一方または双方を決定してもよい。制御装置42は、断熱空間R1のガス圧が設定上限圧以下で且つ設定下限圧以上の範囲内に維持されるよう、排出弁33および導入弁22を制御する。
【0032】
具体的には、制御装置42は、圧力計41により計測される圧力が設定上限圧を超えたときに開くよう排出弁33を制御する。そして、排出弁33を開いた後は、例えば制御装置42は、圧力計41により計測される圧力が、設定上限圧より低くなったとき、または、設定上限圧と設定下限圧との間の所定の第1設定値より低くなったときに閉じるよう排出弁33を制御する。
【0033】
また、制御装置42は、圧力計41により計測される圧力が設定下限圧を下回ったときに開くよう導入弁22を制御する。そして、導入弁22を開いた後は、例えば制御装置42は、圧力計41により計測される圧力が、設定下限圧より高くなったとき、または、設定上限圧と設定下限圧との間の所定の第2設定値より高くなったときに閉じるよう導入弁22を制御する。
【0034】
本変形例1に係る構成によれば、制御装置42の記憶部に記憶されたガス圧調整プログラムにより断熱空間R1のガス圧を調整するため、断熱空間R1のガス圧を維持する範囲を変更しやすい。なお、本変形例1において、導入弁22および排出弁33の双方が制御装置30により制御される必要はなく、導入弁22および排出弁33の一方のみが制御装置30により制御されてもよい。すなわち、制御装置42は、導入弁22および排出弁33のいずれか一方のみを制御するものであってもよい。
【0035】
(第1実施形態の変形例2)
図4は、第1実施形態の変形例2に係るガス処理システム3Cの全体的な構成を示す概略構成図である。ガス処理システム3Cでは、上記したガス処理システム3Aの構成要素に加えて、断熱空間R1を大気開放する大気開放路43と、大気開放路43に設けられた大気開放弁44を更に有する。大気開放路43の一端部は、断熱空間R1内に配置され、大気開放路43の他端部は、大気開放されている。
【0036】
本変形例2では、排出弁33は、断熱空間R1の圧力を放出させるべく、作業者によって操作される手動弁または遠隔操作弁である。
【0037】
また、大気開放弁44は、断熱空間R1の圧力が設定上限圧以上になったときに自動的に断熱空間R1の圧力を放出させる自動弁である。断熱空間R1の圧力が設定上限圧に達する前に、排出弁33が開くよう作業者により操作されるため、基本的に、大気開放弁44が開かれることはない。しかし、断熱空間R1から可燃性ガスを燃焼装置31に供給しても断熱空間R1の減圧が間に合わない場合(例えば許容処理容量を超えるガスが燃焼装置31供給されている場合)や、燃焼装置31が故障している場合のような場合がある。このような緊急時に断熱空間R1の圧力が設定上限圧に達して、大気開放弁44は開かれる。このため、変形例2によれば、燃焼装置31に可燃性ガスを導いているときでも断熱空間R1内に余剰の可燃性ガスが存在するような緊急時において、大気開放弁44が開かれることで、大気開放路43を通じて余剰の可燃ガスを断熱空間R1から排出できる。従って、断熱空間R1内のガスの圧力を、内槽11および外槽12の構造強度上許容される圧力範囲内に抑えることができる。
【0038】
なお、例えば大気開放弁44は、自力式の自動弁(例えば安全弁)であってもよい。あるいは、例えば大気開放弁44は、上記変形例1で説明された制御装置42により制御されてもよい。
【0039】
また、大気開放路43は、排出路32の途中から分岐するように延びていてもよい。この場合、ガス処理システム3Cは、排出路32を通じて燃焼装置31にガスを供給するか、大気開放路43を通じて大気に放出するかを選択可能に構成されていてもよい。
【0040】
(第1実施形態の変形例3)
図5は、第1実施形態の変形例3に係るガス処理システム3Dの全体的な構成を示す概略構成図である。本変形例3では、ガス処理システム3Dが、断熱空間R1から排出した可燃性ガスと貯留空間R0の気層のボイルオフガスとを共通の1つの燃焼装置31に導くように構成されている。
【0041】
ガス処理システム3Dは、上述した多重殻タンク10、導入路21、導入弁22、燃焼装置31、排出路32、排出弁33およびフィルタ34を備える。さらに、ガス処理システム3Dは、BOG排出路45およびBOG排出弁46を備える。
【0042】
BOG排出路45の一端部45aは、貯留空間R0内の気層に配置され、BOG排出路45の他端部は、排出路32におけるフィルタ34と燃焼装置31との間の部分に接続されている。BOG排出路45は、ボイルオフガスを内槽11内から排出し、排出路32におけるフィルタ34と燃焼装置31との間の部分に導く。なお、BOG排出路45の他端部は、排出路32における排出弁33とフィルタ34との間の部分に接続されていてもよい。以下、排出路32におけるBOG排出路45の接続箇所を、合流箇所32bと称する。
【0043】
BOG排出弁46は、BOG排出路45に設けられている。例えばBOG排出弁46は、貯留空間R0の気層の圧力が設定上限圧以上になったときに貯留空間R0の気層の圧力を放出させる弁である。例えばBOG排出弁46は、作業者によって操作される手動弁または遠隔操作弁、あるいは、貯留空間R0の気層の圧力が設定上限圧以上になったときに自動的に開かれる自力式の自動弁(例えば安全弁)である。
【0044】
逆止弁35は、排出路32における排出弁33と合流箇所32bとの間の部分に設けられている。逆止弁35は、断熱空間R1にガスが逆流するのを防止する。また、逆止弁47は、BOG排出路45における他端部(すなわち合流箇所32b)とBOG排出弁46との間の部分に設けられている。逆止弁47は、貯留空間R0の気層にガスが逆流するのを防止する。
【0045】
本変形例3では、排出路32における燃焼装置31側の圧力が、断熱空間R1の圧力および貯留空間R0の気層の圧力よりも低い状態に保たれている。このため、排出弁33が開かれると、断熱空間R1内のガス圧によって、排出路32を通じて断熱空間R1から燃焼装置31に可燃性ガスが送られる。また、BOG排出弁46が開かれると、貯留空間R0の気層内のガス圧によって、BOG排出路45を通じて貯留空間R0の気層から燃焼装置31に可燃性ガスが送られる。
【0046】
ただし、
図6に示すように、排出路32における合流箇所32bと燃焼装置31との間の部分に、排気装置48を設けて、強制的に断熱空間R1および貯留空間R0の気層から燃焼装置31にガスが送られてもよい。あるいは、排出路32における合流箇所32bとフィルタ34との間の部分、および、BOG排出路45にそれぞれ排気装置48を設けてもよい。この場合、排出路32における燃焼装置31側の圧力は、断熱空間R1の圧力および貯留空間R0の気層の圧力よりも低い状態に保たれていなくてもよい。なお、排気装置48としては、圧縮機や排気ポンプが例示される。
【0047】
なお、フィルタ34および排気装置48の双方が、排出路32における合流箇所32bと燃焼装置31との間の部分に設けられてもよい。この場合、排出路32における合流箇所32bと排気装置48との間にフィルタ34が配置される。断熱空間R1から導かれた可燃性ガス中の異物が排気装置48に入り込むのを防止するためである。
【0048】
以上に説明したように、本変形例3に係る構成によれば、多重殻タンク10における内槽11の外側の断熱空間R1から排出される可燃性ガスと、内槽11内で発生したボイルオフガスを、1つの燃焼装置31により燃焼させて安全に処理できる。
【0049】
また、排出路32およびBOG排出路45に、それぞれ、逆止弁35および逆止弁47を設けるため、排出弁33とBOG排出弁46の双方が開かれているときに、断熱空間R1と貯留空間R0の気層の一方から他方へ可燃性ガスが流れるのを阻止できる。
【0050】
なお、本変形例3において、排出路32およびBOG排出路45に、それぞれ、逆止弁35および逆止弁47が必ずしも設けられている必要はない。例えば、排出弁33とBOG排出弁46を、それらのうちのいずれか一方のみを開くように運用または制御してもよい。あるいは、
図6に示すように、排出路32における合流箇所32bと燃焼装置31との間の部分に排気装置48を設けて、強制的にガスを燃焼装置31に送ってもよい。
【0051】
なお、第1実施形態の変形例1および変形例2は、後述する第2実施形態とその変形例にも適用可能である。
【0052】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係るガス処理システム4Aの全体的な構成を示す概略構成図である。
図7は、ガス処理システム4Aが備える多重殻タンク50の断面図を含む。本実施形態において、多重殻タンク50は、船舶に搭載されたメンブレン方式のタンクである。
【0053】
多重殻タンク50は、低温液体を収容する一次メンブレン51と、それを覆う二次メンブレン52と、二次メンブレン52を更に覆っている船体内殻53とを備える。船体内殻53は、船体の一部である。
【0054】
一次メンブレン51の内部の貯留空間M0に低温液体が貯蔵されている。一次メンブレン51と二次メンブレン52との間には、密閉された第1断熱空間M1(いわゆる、防壁間空間(IBS:Inter Barrier Space))が形成されている。当該第1断熱空間M1に断熱材が配置されている。また、二次メンブレン52と船体内殻53との間には、密閉された第2断熱空間M2が形成されている。当該第2断熱空間M2(いわゆる防熱空間(IS:Insulation Space))に断熱材が配置されている。
【0055】
一次メンブレン51および二次メンブレン52は、それら自体に一次メンブレン51内の低温液体の圧力や重量を支持する強度を備えていない。一次メンブレン51内の低温液体の圧力や重量は、第1断熱空間M1内の断熱材や第2断熱空間M2内の断熱材を介して船体に支持されている。ただし、一次メンブレン51は、貯留空間M0と第1断熱空間M1とを仕切る密閉機能を備え、二次メンブレン52は、第1断熱空間M1と第2断熱空間M2とを仕切る密閉機能を備える。
【0056】
本実施形態において、一次メンブレン51は、内部に低温液体が貯蔵された内槽として機能し、二次メンブレン52は、内槽としての一次メンブレン51を収容する外槽として機能し、船体内殻53は、外槽としての二次メンブレン52を更に覆う外槽として機能する。以下、説明の便宜上、一次メンブレン51を内槽51と呼び、二次メンブレン52を第1外槽52と呼び、船体内殻53を第2外槽53と呼ぶこととする。
【0057】
貯留空間M0の上部の気層は、貯留空間M0内の低温流体が気化したボイルオフガスで満たされている。貯留空間M0内のボイルオフガスは、可燃性ガスであり、また、第1断熱空間M1および第2断熱空間内にも、可燃性ガスが充填されている。本実施形態では、例えば貯留空間M0に液化水素が貯留されており、第1断熱空間M1に水素ガスが充填されており、第2断熱空間M2に窒素ガスまたは水素ガスが充填されている。
【0058】
本実施形態では、ガス処理システム4Aが、第1断熱空間M1から排出した可燃性ガスを処理するように構成されている。ガス処理システム4Aは、燃焼装置61、排出路62、排出弁63およびフィルタ64を備える。燃焼装置61は、第1外槽52および第2外槽53の外部に設けられている。排出路62の一端部は、第1断熱空間M1内に配置され、排出路62の他端部は、燃焼装置61に接続されている。排出路62は、可燃性ガスを第1断熱空間M1から排出し、燃焼装置61へ導く。
【0059】
排出弁63は、排出路62に設けられている。例えば排出弁63は、第1断熱空間M1の圧力が設定上限圧以上になったときに第1断熱空間M1の圧力を放出させる弁である。本実施形態では、排出弁33は、作業者によって操作される手動弁または遠隔操作弁、あるいは、第1断熱空間M1の圧力が設定上限圧以上になったときに自動的に開かれる自力式の自動弁(例えば安全弁)である。
【0060】
本実施形態では、排出路62における燃焼装置61側の圧力が、第1断熱空間M1内の圧力よりも低い状態に保たれている。このため、排出弁63が開かれると、第1断熱空間M1内のガス圧によって、排出路62を通じて第1断熱空間M1から燃焼装置61に可燃性ガスが送られる。ただし、排出路62に排気装置を設けて、強制的に第1断熱空間M1から燃焼装置61に可燃性ガスが送られてもよい。排気装置としては、例えば圧縮機や排気ポンプが例示される。
【0061】
フィルタ64は、排出路62における排出弁63と燃焼装置61との間に設けられている。フィルタ64は、第1断熱空間M1から導かれた可燃性ガス中の異物を除去する。ガス中の異物としては、第1断熱空間M1に配置された断熱材のくずなどが想定される。
【0062】
以上に説明したように、本実施形態のガス処理システム4Aによれば、多重殻タンク50における内槽51の外側の第1断熱空間M1から排出される可燃性ガスを燃焼装置61により燃焼させて安全に処理できる。
【0063】
(第2実施形態の変形例1)
図8は、第2実施形態の変形例1に係るガス処理システム4Bの全体的な構成を示す概略構成図である。本変形例1では、ガス処理システム4Bが、第2断熱空間M2から排出した可燃性ガスを処理するように構成されている。本変形例1において、第2断熱空間M2には水素ガスが充填されている。
【0064】
ガス処理システム4Bは、燃焼装置61、排出路62、排出弁63およびフィルタ64に代えて、燃焼装置71、排出路72、排出弁73およびフィルタ74を備える。本変形例1では、排出路62と異なり、排出路72の端部が第1断熱空間M1内ではなく第2断熱空間M2内に配置されている。この点以外は、燃焼装置71、排出路72、排出弁73およびフィルタ74は、ガス処理システム4Aにおける燃焼装置61、排出路62、排出弁63およびフィルタ64とそれぞれ同様の構成であるため、説明を省略する。
【0065】
本変形例1では、多重殻タンク50における内槽51の外側の第2断熱空間M2から排出される可燃性ガスを燃焼装置71により燃焼させて安全に処理できる。
【0066】
(第2実施形態の変形例2)
図9は、第2実施形態の変形例2に係るガス処理システム4Cの全体的な構成を示す概略構成図である。本変形例2では、ガス処理システム4Cが、第1断熱空間M1だけでなく、第2断熱空間M2から排出した可燃性ガスを処理するように構成されている。本変形例2において、第2断熱空間M2には水素ガスが充填されている。
【0067】
ガス処理システム4Cは、多重殻タンク50、燃焼装置81、第1排出路82、第2排出路83、第1排出弁84、第1逆止弁85、第2排出弁86、第2逆止弁87、およびフィルタ88を備える。
【0068】
燃焼装置81は、第1外槽52および第2外槽53の外部に設けられている。第1排出路82の一端部82aは、第1断熱空間M1内に配置され、第1排出路82の他端部は、燃焼装置81に接続されている。第1排出路82は、可燃性ガスを第1断熱空間M1から排出し、燃焼装置81へ導く。
【0069】
第2排出路83の一端部83aは、第2断熱空間M2内に配置され、第2排出路83の他端部は、第1排出路82の途中に接続されている。第2排出路83は、可燃性ガスを第2断熱空間M2から排出し、第1排出路82に導く。以下、第1排出路82における第2排出路83の接続箇所を、合流箇所82bと称する。
【0070】
第1排出弁84は、第1排出路82における一端部82aと合流箇所82bとの間の部分に設けられている。例えば第1排出弁84は、第1断熱空間M1の圧力が設定上限圧以上になったときに第1断熱空間M1の圧力を放出させる弁である。例えば第1排出弁84は、作業者によって操作される手動弁または遠隔操作弁、あるいは、第1断熱空間M1の圧力が設定上限圧以上になったときに自動的に開かれる自力式の自動弁(例えば安全弁)である。また、第1逆止弁85は、第1排出路82における第1排出弁84と合流箇所82bとの間の部分に設けられている。第1逆止弁85は、第1断熱空間M1にガスが逆流するのを防止する。
【0071】
第2排出弁86は、第2排出路83に設けられている。例えば第2排出弁86は、第2断熱空間M2の圧力が設定上限圧以上になったときに第2断熱空間M2の圧力を放出させる弁である。例えば第2排出弁86は、作業者によって操作される手動弁または遠隔操作弁、あるいは、第2断熱空間M2の圧力が設定上限圧以上になったときに自動的に開かれる自力式の自動弁(例えば安全弁)である。また、第2逆止弁87は、第2排出路83における他端部(すなわち合流箇所82b)と第2排出弁86との間の部分に設けられている。第2逆止弁87は、第2断熱空間M2にガスが逆流するのを防止する。
【0072】
本変形例2では、第1排出路82における燃焼装置81側の圧力が、第1断熱空間M1内の圧力および第2断熱空間M2内の圧力よりも低い状態に保たれている。このため、第1排出弁84が開かれると、第1断熱空間M1内のガス圧によって、第1排出路82を通じて第1断熱空間M1から燃焼装置81に可燃性ガスが送られる。また、第2排出弁86が開かれると、第2断熱空間M2内のガス圧によって、第2排出路83を通じて第2断熱空間M2から燃焼装置81に可燃性ガスが送られる。
【0073】
ただし、第1排出路82における合流箇所82bと燃焼装置81との間の部分に、排気装置を設けて、強制的に第1断熱空間M1および第2断熱空間M2から燃焼装置81に可燃性ガスが送られてもよい。2つの排気装置を、第1排出路82における一端部82aと合流箇所82bとの間の部分、および、第2排出路83にそれぞれ設けてもよい。
【0074】
フィルタ88は、第1排出路82における合流箇所82bと燃焼装置81との間の部分に設けられている。フィルタ88は、第1断熱空間M1および第2断熱空間M2から導かれた可燃性ガス中の異物を除去する。ガス中の異物としては、第1断熱空間M1および第2断熱空間M2にそれぞれ配置された断熱材のくずなどが想定される。
【0075】
以上に説明したように、本変形例2に係る構成によれば、多重殻タンク50における内槽51の外側の第1断熱空間M1および第2断熱空間M2から排出される可燃性ガスを燃焼装置81により燃焼させて安全に処理できる。
【0076】
また、第1断熱空間M1内の可燃性ガスと第2断熱空間M2内の可燃性ガスの双方を1つの燃焼装置81により燃焼させて安全に処理できる。
【0077】
また、第1排出路82および第2排出路83に、それぞれ、第1逆止弁85および第2逆止弁87を設けるため、第1排出弁84と第2排出弁86の双方が開かれているときに、第1断熱空間M1と第2断熱空間M2の一方から他方へ可燃性ガスが流れるのを阻止できる。
【0078】
なお、本変形例2において、第1排出路82および第2排出路83に、それぞれ、第1逆止弁85および第2逆止弁87が必ずしも設けられている必要はない。例えば、第1排出弁84および第2排出弁86を、それらのうちのいずれか一方のみを開くように運用または制御してもよい。あるいは、例えば、第1排出路82における合流箇所82bと燃焼装置81との間の部分に排気装置を設けて、強制的にガスを燃焼装置31に送ってもよい。
【0079】
<その他の実施形態>
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0080】
例えば第1実施形態とその変形例1,2,3および第2実施形態とその変形例1,2の構成は、適宜組み合わせ可能である。
【0081】
例えば燃焼装置へ導かれる対象となる可燃性ガスは、水素ガスに限定されない。例えば、可燃性ガスは、天然ガスなどであってもよい。内槽内のボイルオフガスと内槽とそれに隣接する外槽との間のガスとは、互いに異なる種類のガスであってもよい。また、内槽とそれに隣接する外槽との間のガスと、2つの隣接する外槽間のガスとは、互いに同じ種類のガスでもよいし、異なる種類のガスでもよい。
【0082】
燃焼装置は、第1実施形態の変形例3で説明されたようにガス燃焼ユニット(GCU:Gas Combustion Unit)であってもよいし、推進用エンジン、発電用エンジン、ボイラ、燃料電池などであってもよい。また、燃焼装置には、可燃性ガスと不活性ガスとが混合したガスが導かれてもよい。
【0083】
また、第1実施形態およびその変形例1,2,3では、断熱空間R1内には、内槽11内のボイルオフガスと同じ種類の可燃性ガスが充填されていたが、断熱空間R1には、内槽11内のボイルオフガスと異なる種類のガスであってもよい。この場合、多重殻タンク10は、導入路21および導入弁22の代わりに、多重殻タンク10の外部から断熱空間R1内へ可燃性ガスを導入するガス供給装置を備えてもよい。
【0084】
また、第2実施形態およびその変形例1,2では、例えば排出弁63,73,84,86は、第1実施形態の変形例1のように制御装置により制御される制御弁であってもよい。第2実施形態およびその変形例1,2におけるガス処理システムも、導入路および導入弁を備えてもよいし、第1実施形態の変形例2のように大気開放路などを備えてもよいし、第1実施形態の変形例3のようにBOG排出路を備えてもよい。また、第1実施形態およびその変形例1,2,3における多重殻タンク10も、第2実施形態のように複数の外槽を備えてもよい。この場合、第1実施形態およびその変形例1,2,3におけるガス処理システムは、第2実施形態の変形例1のように内槽と第1外槽との間の第1断熱空間の代わりに第1外槽と第2外槽との間の第2断熱空間からガスを燃焼装置に導くように構成されていてもよいし、第2実施形態の変形例2のように内槽と第1外槽との間の第1断熱空間と第1外槽と第2外槽との間の第2断熱空間との双方からガスを燃焼装置に導くように構成されていてもよい。
【0085】
多重殻タンクが備える外槽の数は、上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば3つ以上の外槽を備える多重殻タンクにおいて、排出路を通じて燃焼装置に導かれるのは、複数の外槽のうち互いに隣接する2つの外槽間の可燃性ガスであればよい。すなわち、内槽に最も近い外槽とその1つ外側の外槽との間の可燃性ガスが燃焼装置に導かれてもよいし、内側から2番目以降の外槽とその1つ外側の外槽との間の可燃性ガスが燃焼装置に導かれてもよい。
【0086】
上記実施形態では、多重殻タンクが船舶に備えられていたが、多重殻タンクは、地上に設置されてもよい。
【0087】
本発明の一態様のガス処理システムは、内部に低温液体が貯蔵された内槽と、前記内槽を収容する1つまたは複数の外槽と、を備え、前記内槽と前記1つまたは複数の外槽との間または前記複数の外槽のうち互いに隣接する2つの外槽間の断熱空間に可燃性ガスが充填された多重殻タンクと、前記1つまたは複数の外槽の外部に設けられた燃焼装置と、前記可燃性ガスを前記断熱空間から排出し、前記燃焼装置へ導く排出路と、前記排出路に設けられた排出弁と、を備える。
【0088】
上記態様のガス処理システムにおいて、前記排出弁は、前記断熱空間の圧力が設定上限圧以上になったときに自動的に開く自動弁であってもよい。なお、前記排出弁が前記断熱空間の圧力が設定上限圧以上になったときに自動的に開く安全弁である場合、電力供給が遮断された場合でも確実に排出弁を作動させることができる。また、上記態様のガス処理システムが、前記断熱空間内の圧力を計測する圧力計と、制御装置とを備え、前記排出弁が、前記圧力計により計測される圧力が設定上限圧を超えたときに開くよう前記制御装置により制御される制御弁である場合、断熱空間のガス圧を維持する範囲を変更しやすい。
【0089】
また、上記態様のガス処理システムは、前記断熱空間を大気開放する大気開放路と、前記大気開放路に設けられた大気開放弁とを更に有し、前記大気開放弁は、前記断熱空間内の圧力が設定上限圧を超えたときに開く自動弁(例えば安全弁)であってもよい。この構成によれば、燃焼装置に可燃性ガスを導いているときでも断熱空間内に余剰の可燃性ガスが存在するような緊急時において、開装置が開かれることで、大気開放路を通じて余剰の可燃ガスを断熱空間から排出できる。このため、断熱空間内のガスの圧力を、多重殻タンクに構造強度上許容される圧力範囲内に抑えることができる。
【0090】
また、上記態様のガス処理システムは、前記排出路における前記排出弁と前記燃焼装置との間に設けられ、前記可燃性ガス中の異物を除去するフィルタを更に備えてもよい。この構成によれば、断熱空間内の可燃性ガス中に、燃焼装置での燃焼に適さない異物が混ざっていた場合でも、異物が除去された可燃性ガスを燃焼装置へ送り込むことができる。
【0091】
また、上記態様のガス処理システムにおいて、前記断熱空間内には、前記内槽内のボイルオフガスと同じ種類の可燃性ガスが充填されており、前記多重殻タンクは、前記内槽内のボイルオフガスを前記断熱空間内へ導入する導入路と、前記導入路に設けられた導入弁とを更に有してもよい。この構成によれば、多重殻タンクの外部に、断熱空間に可燃性ガスを導入するための装置を別途用意しなくて済む。
【0092】
また、上記態様のガス処理システムにおいて、前記複数の外槽は、第1外槽と、前記第1外槽を収容する第2外槽とを含み、前記断熱空間は、前記内槽と前記第1外槽との間の第1断熱空間であり、前記排出路は第1排出路であり、前記排出弁は第1排出弁であり、前記第1外槽は、前記第1断熱空間と、前記第1外槽と前記第2外槽との間の第2断熱空間とを仕切っており、前記第2断熱空間には、前記第1断熱空間に充填された可燃性ガスと同じまたは異なる種類の可燃性ガスが充填されており、前記ガス処理システムは、前記可燃性ガスを前記第2断熱空間から排出し、前記第1排出路における前記第1排出弁と前記燃焼装置の間の部分または前記燃焼装置へ導く第2排出路と、前記第2排出路に設けられた第2排出弁と、を備えてもよい。この構成によれば、第1断熱空間内の可燃性ガスと第2断熱空間内の可燃性ガスの双方を1つの燃焼装置により燃焼させて安全に処理できる。
【0093】
また、上記態様のガス処理システムにおいて、前記内槽内のボイルオフガスは可燃性であり、前記ガス処理システムは、前記ボイルオフガスを前記内槽内から排出し、前記排出路における前記排出弁と前記燃焼装置との間の部分または前記燃焼装置へ導くBOG排出路と、前記BOG排出路に設けられたBOG排出弁と、を備えてもよい。この構成によれば、断熱空間から排出される可燃性ガスと、内槽内で発生したボイルオフガスを、1つの燃焼装置により燃焼させて安全に処理できる。
【0094】
また、上記態様のガス処理システムを備える船舶において、前記多重殻タンクは、メンブレン方式のタンクであり、前記内槽は、一次メンブレンであり、前記複数の外槽は、第1外槽としての二次メンブレンと、前記第1外槽を収容する第2外槽としての前記船舶の船体内殻とを含んでもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 :船舶
2 :船体
3A、3B、3C、3D :ガス処理システム
4A、4B、4C :ガス処理システム
10 :多重殻タンク
11 :内槽
12 :外槽
21 :導入路
22 :導入弁
23 :排出路
31 :燃焼装置
32 :排出路
33 :排出弁
34 :フィルタ
41 :圧力計
42 :制御装置
43 :大気開放路
44 :大気開放弁
45 :BOG排出路
46 :BOG排出弁
50 :多重殻タンク
51 :一次メンブレン(内槽)
52 :二次メンブレン(外槽)
53 :船体内殻(外槽)
61 :燃焼装置
62 :排出路
63 :排出弁
64 :フィルタ
71 :燃焼装置
72 :排出路
73 :排出弁
74 :フィルタ
81 :燃焼装置
82 :第1排出路
83 :第2排出路
84 :第1排出弁
85 :第1逆止弁
86 :第2排出弁
87 :第2逆止弁
88 :フィルタ