(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157765
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 41/00 20200101AFI20221006BHJP
B62J 23/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B62J41/00
B62J23/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062185
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 浩平
(72)【発明者】
【氏名】新島 瞬
(72)【発明者】
【氏名】林 敬済
(57)【要約】
【課題】フレームの形態に寄らず剛性の出易い位置でラジエータを支持でき、ラジエータの取り付け自由度を向上させることができる鞍乗り型車両を提供する。
【解決手段】鞍乗り型車両(10)は、ヘッドパイプ(18)から垂下するダウンチューブ(19c)の前方にラジエータ(39)を配置する鞍乗り型車両において、前記ラジエータ(39)に設けられるラジエータシュラウド(60)を備え、前記ラジエータ(39)は、前記ラジエータシュラウド(60)にのみに支持され、前記ラジエータシュラウド(60)を介して車体(11、12)に支持される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(18)から垂下するダウンチューブ(19c)の前方にラジエータ(39)を配置する鞍乗り型車両において、
前記ラジエータ(39)に設けられるラジエータシュラウド(60)を備え、前記ラジエータ(39)は、前記ラジエータシュラウド(60)にのみに支持され、前記ラジエータシュラウド(60)を介して車体(11、12)に支持されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記ラジエータシュラウド(60)は、車体カバー(30)およびフレーム(11)に固定されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記ラジエータシュラウド(60)は、前記ラジエータ(39)の後面を覆う後壁部(61)を備え、該後壁部(61)で前記ラジエータ(39)と接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記ラジエータシュラウド(60)は、前記ラジエータ(39)の側面を覆う側壁部(65、66)を備え、該側壁部(65、66)で車体カバー(30)と接続されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記ラジエータシュラウド(60)は、前記ラジエータ(39)の上面を覆う上壁部(63)と、前記ラジエータ(39)の下面を覆う下壁部(64)と、を備え、前記上壁部(63)と前記下壁部(64)には、それぞれ、フレーム(11)と接続されるフランジ部(63A、64A)が設けられ、前記フランジ部(63A、64A)が前記フレーム(11)と接続されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記ダウンチューブ(19c)に設けられる前記ラジエータ(39)の上側の固定部は一対のステー(100)であり、前記ステー(100)は、車幅方向に延出した位置で前記ラジエータシュラウド(60)の前記上壁部(63)に設けられる前記フランジ部(63A)と接続されることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両において、ラジエータを一対のダウンチューブの前方に配置し、ダウンチューブに締結することでラジエータを固定することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、一対のダウンチューブであるため、車幅方向に距離のある位置でラジエータを支持でき、ラジエータを、剛性を持ってフレームに固定することができる。しかしながら、ラジエータ側の取付位置は予め決まっていることが多く、鞍乗り型車両のフレーム形態によっては、ラジエータ側に対応させて剛性を持たせるために、フレームから延出するブラケットを大型化するなどして車幅方向の距離を稼ぐ必要が生じる場合がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、フレームの形態に寄らず剛性の出易い位置でラジエータを支持でき、ラジエータの取り付け自由度を向上させることができる鞍乗り型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鞍乗り型車両は、ヘッドパイプから垂下するダウンチューブの前方にラジエータを配置する鞍乗り型車両において、前記ラジエータに設けられるラジエータシュラウドを備え、前記ラジエータは、前記ラジエータシュラウドにのみに支持され、前記ラジエータシュラウドを介して車体に支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
フレームの形態に寄らず剛性の出易い位置でラジエータを支持でき、ラジエータの取り付け自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の左前方からの斜視図である。
【
図4】
図3からフロントサイドカウルとフロントロアーカウルとの図示を省略した図である。
【
図5】ラジエータとラジエータシュラウドとダウンフレームとの位置関係を示す正面図である。
【
図6】ラジエータとラジエータシュラウドの平面図である。
【
図7】ラジエータとラジエータシュラウドの底面図である。
【
図8】ラジエータとラジエータシュラウドの背面図である。
【
図9】
図4から接続カバーが省略された場合の鞍乗り型車両の左側面図である。
【
図10】
図9からサイドカバーの図示を省略した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
本実施の形態では、フロントフレーム19は、ヘッドパイプ18から後下方に延びる左右一対のメインフレーム19aと、メインフレーム19aの後端部から下方に延びるピボットフレーム19bと、ヘッドパイプ18においてメインフレーム19aの前端の下方の位置から下方に延びるダウンフレーム19cと、ダウンフレーム19cの下端から後下方に延びた後に後方に延びてピボットフレーム19bの下端部に接続される左右一対のロアフレーム19dと、を備える。
【0016】
リアフレーム20は、左右のピボットフレーム19bの上部から後上がりに車両後端部まで延びる左右一対のシートフレーム20aと、左右のピボットフレーム19bの上下方向中間部からシートフレーム20aの後端部まで延びる左右一対のリアサブフレーム20bと、を備える。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の正面図である。
図1、
図2に示すように、鞍乗り型車両10は、車体フレーム11及びパワーユニット12等によって構成される車体を覆う車体カバー30を備える。
車体カバー30は、ヘッドパイプ18及びフロントフォーク14の上部を前方及び左右側方から覆うフロントカウル31と、フロントカウル31の後方で、燃料タンク29の側面を外側方から覆う左右一対のサイドカバー32と、を備える。
【0018】
また、車体カバー30は、クランクケース23を下方から覆うアンダーカバー33と、サイドカバー32の後方でシート17の下方を側方から覆う左右一対のリアカバー34と、を備える。
【0019】
フロントカウル31の上部には、メーター35を覆うメーターバイザー36が設けられる。メーターバイザー36には、後上がりに延びる板状のウインドスクリーン37が設けられる。
フロントカウル31には、左右一対のヘッドライト38が設けられる。フロントカウル31で覆われる空間にラジエータ39が配置されている。
【0020】
図3は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の左前方からの斜視図である。
図4は、
図3からフロントサイドカウル43とフロントロアーカウル44との図示を省略した図である。
フロントカウル31は、ヘッドライト38の上方を覆うフロントアッパーカウル41と、ヘッドライト38の下方で鞍乗り型車両10の前端部を覆うフロント前端カウル42と、ヘッドライト38から後方に延びる左右一対のフロントサイドカウル43と、フロントサイドカウル43の下方を覆う左右一対のフロントロアーカウル44と、フロントアッパーカウル41、フロント前端カウル42、フロントサイドカウル43、および、フロントロアーカウル44で覆われるインナーカバー45(
図4参照)と、フロントサイドカウル43に外方が覆われてフロント前端カウル42とサイドカバー32とを接続する接続カバー46(
図4参照)と、を備える。
【0021】
図5は、ラジエータ39とラジエータシュラウド60とダウンフレーム19cとの位置関係を示す正面図である。
本実施の形態のパワーユニット12は水冷式エンジンである。以下、パワーユニット12をエンジン12という。エンジン12は、ラジエータ39との間で冷却水が循環して冷却される。
【0022】
ラジエータ39は、車幅方向(左右方向)に延びる板状に形成されている。本実施の形態では、ラジエータ39は、矩形板状に形成されている。ラジエータ39は、左側のサイドカバー32(
図2参照)と右側のサイドカバー32(
図2参照)との間に位置する。ラジエータ39は、ダウンフレーム(ダウンチューブ)19cの前方に配置される。ダウンフレーム19cはヘッドパイプ18から垂下する。本実施の形態のダウンフレーム19cは、ヘッドパイプ18からやや後方に垂下している。ダウンフレーム19cは、前後左右面を有する角筒状に形成されている。
【0023】
ラジエータ39は、車幅方向に延びる矩形状のコア39Aと、コア39Aの左側に設けられた左側のタンク39Bと、コア39Aの右側に設けられた右側のタンク39Cと、を備える。
コア39Aは、左側のタンク39Bと右側のタンク39Cとを連通させる複数のチューブ(不図示)と、このチューブ(不図示)の周囲に設けられる複数のフィン(不図示)とを備えて板状に形成されている。
【0024】
図6は、ラジエータ39とラジエータシュラウド60の平面図である。
図7は、ラジエータ39とラジエータシュラウド60の底面図である。
図5~
図7に示す左側のタンク39Bの上部には、後方に突出する筒状のホース接続部39B1(
図6参照)が形成されている。ホース接続部39B1には、ラジエータホース51が接続されている。このラジエータホース51は、
図4に示すように、シリンダー部24(
図1参照)の左側面に接続される。ラジエータホース51には、エンジン12を冷却した冷却水が流入する。
【0025】
右側のタンク39Cの下部には、後方に突出する筒状のホース接続部39C1が形成されている。ホース接続部39C1には、ラジエータホース52が接続されている。このラジエータホース52はシリンダー部24(
図1参照)の右側面に接続される。ラジエータホース52は、排気装置25の排気管25A(
図4参照)を越えてシリンダー部24に接続されている。
右側のタンク39Cの上部には、ラジエータキャップ53が設けられている。
【0026】
なお、冷却水は、クランクケース23に設けられたウォーターポンプ(不図示)によって圧送され、エンジン12とラジエータ39との間を循環する。エンジン12を冷却して昇温した冷却水はラジエータホース51で左側のタンク39Bに流入し、ラジエータ39のコア39Aで走行風により冷却される。コア39Aで冷却された冷却水は、右側のタンク39Cから流出して、ラジエータホース52でエンジン12に送られ、エンジン12を冷却してラジエータ39に戻り、これを繰り返す。
【0027】
図8は、ラジエータ39とラジエータシュラウド60の背面図である。
ラジエータ39は、ラジエータシュラウド60を介してダウンフレーム19cに支持される。ラジエータ39はダウンフレーム19cに対して略左右対称に支持される。ラジエータシュラウド60は、ラジエータ39のコア39Aの後方に位置して、ラジエータ39の排風を導風する部材である。
【0028】
ラジエータシュラウド60は、ラジエータ39の後面を覆う後壁部61を有する。後壁部61は、ラジエータ39の後面形状に対応して、後方視では、車幅方向に延びる矩形状に形成されている。後壁部61の外周には、前方に延出する外周壁62(
図5参照)が形成されている。外周壁62は、ラジエータ39の上面を覆う上壁部63と、ラジエータ39の下面を覆う下壁部64と、ラジエータ39の左面を覆う左側の側壁部65と、ラジエータ39の右面を覆う右側の側壁部66と、を有する。
【0029】
図6~
図8において、ラジエータシュラウド60の後壁部61の車幅方向中央部には、フレーム近接部61Aが形成されている。フレーム近接部61Aの左右両側には、後方に膨出するファン収容部61Bが形成されている。ファン収容部61Bは、後壁部61の上下全体に対して、上方に偏って形成されている。ファン収容部61Bには、ラジエータファン67が収容される。ラジエータファン67は、前後方向に延びる締結部材68でファン収容部61Bの締結部61B1に締結される。締結部材68は、例えばボルトである。
【0030】
ファン収容部61Bの車幅方向内部には、厚み方向に貫通する排風口61B2、61B3が形成されている。後方視で、排風口61B2、61B3からラジエータファン67が露出する。左側のファン収容部61Bとフレーム近接部61Aと右側のファン収容部61Bとにより、前方に凹んだ形状のフレーム配置スペース61Cが形成される。フレーム配置スペース61Cには、ダウンフレーム19cが、前面をフレーム近接部61Aに近接させ、左右の側面を、左右のファン収容部61Bに対向させた状態で、配置される。
【0031】
ファン収容部61Bの車幅方向外側には、後方に延出する排風ガイド部61Dが形成されている。排風ガイド部61Dは、ラジエータファン67に後方視で重複しており、車幅方向外側に進むに連れて後方に傾斜している。排風ガイド部61Dの車幅方向外端には車幅方向外側に開口する排風口61E(
図8参照)が形成される。排風ガイド部61Dの後端部には、ハーネス保持部61Fが形成されている。ハーネス保持部61Fには、図示しないハーネスが保持される。
【0032】
図8において、フレーム近接部61Aの上端部には、四角状の開口61A1が形成されている。開口61A1の下方には、車幅方向に延びる長孔状の開口61A2が複数形成されている。また、ファン収容部61Bの下方には、四角状の開口61A3が左右一対形成されている。
【0033】
ラジエータシュラウド60は、上端部では、開口61A1の車幅方向外側の締結部61Gでラジエータ39に締結される。また、ラジエータシュラウド60は、下端部では、車幅方向外端側の締結部61Hで締結される。締結部61G、61Hでは、前後方向に延びる締結部材69で締結される。締結部材69は、例えばボルトである。
【0034】
図6に示すように、ラジエータシュラウド60の上壁部63の左側では、ホース接続部39B1が露出する。また、上壁部63の右側では、ラジエータキャップ53が露出する。上壁部63には、車幅方向中央部に対応して、左右一対の上側のフランジ部(接続片)63Aが形成されている。
上側のフランジ部63Aは、上壁部63の上面から上方に突出する板状の固定部63Bと、固定部63Bの前後両端から車幅方向外側に延びて、上壁部63の上面に接続された補強部63Cとを備える。フランジ部63Aは、平面視では、略U字状である。
フランジ部63Aの固定部63Bは、上側の締結部61Gに車幅方向で近接して形成されており、締結部61Gよりも車幅方向外側に形成されている。
【0035】
フランジ部63Aは、
図5に示すように、ダウンフレーム19cの上部ステー(ステー、固定部)100にラバーマウントされる。上部ステー100は、左右一対設けられており、ダウンフレーム19cに固定されている。各上部ステー100は、ダウンフレーム19cの車幅方向の側面から車幅方向外側に延出する延出部101と、延出部101の車幅方向外端で前方に屈曲する固定部102と、固定部102に形成された締結孔部103と、を備える。
【0036】
フランジ部63Aの固定部63Bの車幅方向両面には円環状のラバー105、106が配置される。そして、固定部63Bおよびラバー105、106が、上部ステー100の固定部102と、ワッシャ107で車幅方向から挟まれた状態で、ボルト108が車幅方向外側から挿通される。そして、ボルト108の車幅方向内端が上部ステー100の締結孔部103に締結される。これにより、上側のフランジ部63Aが上部ステー100にラバー105、106を介して接続されて、ラバーマウントされる。このとき、ラバー106は、フランジ部63Aの固定部63Bの車幅方向外側に配置され、前側の補強部63Cと後側の補強部63Cの間に配置される。
【0037】
図7に示すように、ラジエータシュラウド60の下壁部64には、下側のフランジ部(接続片)64Aが形成されている。下側のフランジ部64Aは、上側のフランジ部63Aと同様に構成される。すなわち、下側のフランジ部64Aは、下壁部64の下面から、ダウンフレーム19cの傾斜に沿ってやや後下方に延びる板状の固定部64Bと、固定部64Bの前後両端から車幅方向外側に延びて、下壁部64の下面に接続された補強部64Cと、を備える。フランジ部64Aは、底面視では、略U字状である。
本実施の形態のフランジ部64Aの固定部64Bは、ダウンフレーム19cの幅方向の中心よりも車幅方向外側に位置する。
【0038】
下側のフランジ部64Aは、
図5に示すように、ダウンフレーム19cの下部ステー110にラバーマウントされる。下部ステー110は一つ設けられており、ダウンフレーム19cの幅方向中心部に固定されている。下部ステー110は、L字状に屈曲している。下部ステー110は、ダウンフレーム19cの前面に固定された板状の固定部111と、固定部111の車幅方向外端から前方に屈曲して延出する延出部112と、延出部112の先端に形成された締結孔部113と、を備える。
【0039】
下側のフランジ部64Aも、上側のフランジ部63Aと同様にラバーマウントされる。すなわち、フランジ部64Aの固定部64Bの車幅方向両面にはラバー105、106が配置され、固定部64Bおよびラバー105、106が、下部ステー110の延出部112と、ワッシャ107で車幅方向から挟まれた状態で、ボルト108が車幅方向外側から挿通される。そして、ボルト108の車幅方向内端が下部ステー110の締結孔部113に締結される。これにより、下側のフランジ部64Aが下部ステー110にラバー105、106を介して接続されて、ラバーマウントされる。このとき、ラバー106は、フランジ部64Aの固定部64Bの車幅方向外側に配置され、前側の補強部64Cと後側の補強部64Cの間に配置される。
【0040】
ラジエータ39は、ラジエータシュラウド60を介して車体フレーム11に支持される。したがって、ラジエータシュラウド60の形状を変化させるだけで、車体フレーム11から上部ステー100や下部ステー110等を介して、剛性の出易い位置で固定することができる。したがって、ラジエータ39側の取付位置に左右されずに、本実施の形態では、ラジエータシュラウド60を介することにより、車体フレーム11の適宜の位置に接続することができ、ラジエータ39の支持構造の設計自由度が増している。
【0041】
図9は、
図4から接続カバー46が省略された場合の鞍乗り型車両10の左側面図である。
図10は、
図9からサイドカバー32の図示を省略した図である。
図10に示すように、ラジエータシュラウド60の左側の側壁部65は、側面視では、後方に進むに連れて上下幅が狭くなる三角板状である。側壁部65は、ラジエータ39の側面を車幅方向外側から覆う。側壁部65は、車幅方向内側の排風ガイド部61Dから離間しており、側壁部65と排風ガイド部61Dとの間にはラジエータファン67からの排風が通過可能である。排風は排風ガイド部61Dで車幅方向外側にガイドされ、排風口61Eから排風される。
【0042】
側壁部65の後部には、厚み方向に貫通するカバー係合孔65Aが形成されている。カバー係合孔65Aは、上下方向沿って延びている。カバー係合孔65Aの上下には、カバー固定孔65Bが形成されている。カバー係合孔65Aには、サイドカバー32が係合する。
右側の側壁部66も、左側の側壁部65と同様に形成されている。右側の側壁部66にも、左側の側壁部65のカバー係合孔65Aやカバー固定孔65Bに対応して、カバー係合孔66Aやカバー固定孔66Bが形成されている(
図8参照)。
【0043】
図9に示すように、サイドカバー32は、シート17から前方に向かって延出している。
左右のサイドカバー32は、燃料タンク29およびシート17の前部下方を側方から覆う。サイドカバー32の前端部には、側面視で、略S字状に延びる突出部32Aが形成されている。突出部32Aは、上端から前下がりに延びる上部32Bと、上部32Bの下端から後下がりに延びる中間部32Cと、中間部32Cの下端から前下がりに延出する延出部32Dと、を備える。中間部32Cの下端は、側面視では、ラジエータホース51の位置まで延びている。延出部32Dは、ラジエータ39のラジエータシュラウド60の後方に沿って延びている。
【0044】
延出部32Dの前端には、上方に延びる第一接続部32Eが形成されている。第一接続部32Eは、板状の係合部32E1を備える。係合部32E1の車幅方向内面には、車幅方向内側に突出する係合部本体(不図示)が形成されている。この係合部本体は、ラジエータシュラウド60の側壁部65、66のカバー係合孔65A、66A(
図8参照)に係合し、係合部32E1(右側の係合部32E1は不図示)の上下が、ラジエータシュラウド60のカバー固定孔65B、66B(
図8参照)に固定具132で固定され接続される。
【0045】
サイドカバー32は、燃料タンク29の係合部29A、29B(
図10参照)にも係合する。
また、左側のサイドカバー32は、アンダーカバー33に支持された左側のフットディフレクター80の上端に設けられたカバー係合部82C(
図10参照)にも係合する。
左右のサイドカバー32は、ラジエータシュラウド60、燃料タンク29などを介して、車体フレーム11に支持される。
【0046】
第一接続部32Eの上端には、第一接続部32Eの上端と、延出部32Dの上端と、を接続する第二接続部32Fが形成されている。第一接続部32Eと、第二接続部32Fと、延出部32Dとに囲まれた開口形状によりカバー排風部32Gが形成されている。カバー排風部32Gを横切るようにして、第一接続部32Eと延出部32Dとの間には、前後方向に延びるルーバー部32Hが複数設けられている。
カバー排風部32Gは、側面視で、ラジエータ39の排風ガイド部61D(
図9参照)に重複している。ラジエータ39からの排風ガイド部61Dの排風口61Eを通じた排風は、カバー排風部32Gを通じて、車体カバー30の外側に排出される。
【0047】
サイドカバー32には、係合部32M、32Nが形成されている。係合部32M、32Nには、フロントサイドカウル43(
図3参照)が係合する。
フロントサイドカウル43は、
図3に示すように、突出部32Aの上部32B、中間部32C、そして、第二接続部32F(
図10参照)に沿って、サイドカバー32と接続される。フロントサイドカウル43は、エアクリーナボックス56と、エアクリーナボックス56から下方に延びる左右一対の吸気ダクト57を覆う。
【0048】
また、フロントサイドカウル43は、フロントロアーカウル44の上縁と接続される。フロントロアーカウル44は、サイドカバー32の第一接続部32Eの前方を覆う。
車体カバー30は、フロントサイドカウル43と、フロントロアーカウル44と、サイドカバー32の突出部32Aの延出部32Dとの囲み形状で、カバー排風部32Gのための開口を形成している。
【0049】
突出部32Aは、フロントサイドカウル43よりも車幅方向に突出した部位を有し、カバー排風部32Gからの排風が突出部32Aでガイドされ易くなっている。
【0050】
以上説明したように、本発明を適用した本実施の形態によれば、ヘッドパイプ18から垂下するダウンフレーム19cの前方にラジエータ39を配置する鞍乗り型車両10において、ラジエータ39に設けられるラジエータシュラウド60を備え、ラジエータ39は、ラジエータシュラウド60にのみに支持され、ラジエータシュラウド60を介して車体フレーム11及びパワーユニット12等によって構成される車体に支持される。したがって、車体フレーム11の形態に寄らず剛性の出易い位置でラジエータ39を支持でき、ラジエータ39の取り付け自由度を向上させることができる。
【0051】
本実施の形態では、ラジエータシュラウド60は、車体カバー30のサイドカバー32および車体フレーム(フレーム)11に固定される。したがって、ラジエータシュラウド60を介して、サイドカバー32および車体フレーム11という剛性の出易い位置でラジエータ39を支持できる。
【0052】
また、本実施の形態では、ラジエータシュラウド60は、ラジエータ39の後面を覆う後壁部61を備え、後壁部61の締結部61G,61Hでラジエータ39と接続される。したがって、ラジエータ39の大きな面となり易い後面でラジエータ39をラジエータシュラウド60に接続でき、ラジエータシュラウド60で安定してラジエータ39を支持し易くできる。
【0053】
また、本実施の形態では、ラジエータシュラウド60は、ラジエータ39の側面を覆う側壁部65、66を備え、側壁部65、66でサイドカバー32と接続される。したがって、ラジエータシュラウド60を車幅方向外側の位置で車体カバー30に固定することができ、剛性を持ってラジエータ39を支持し易くできる。
【0054】
また、本実施の形態では、ラジエータシュラウド60は、ラジエータ39の上面を覆う上壁部63と、ラジエータ39の下面を覆う下壁部64と、を備え、上壁部63と下壁部64には、それぞれ、車体フレーム11と接続されるフランジ部63A、64Aが設けられ、フランジ部63A、64Aが車体フレーム11と接続される。したがって、ラジエータシュラウド60を上下で車体フレーム11に接続することができ、剛性を持ってラジエータ39を支持し易くできる。
【0055】
また、本実施の形態では、ダウンフレーム19cに設けられるラジエータ39の上側の固定部は左右一対の上部ステー100であり、上部ステー100は、車幅方向に延出した位置でラジエータシュラウド60の上壁部63に設けられるフランジ部63Aと接続される。したがって、ラジエータシュラウド60を車幅方向外側の位置で車体フレーム11に固定することができ、剛性を持ってラジエータ39を支持し易くできる。
【0056】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0057】
上記実施の形態では、ダウンフレーム19cが一本の構成を説明したが、ダウンフレームが左右に一対設けられた構成でもよく、ヘッドパイプ18から二本のダウンフレームが垂下するような構成でもよい。
【0058】
上記実施の形態では、側壁部65、66には、サイドカバー32が接続される構成を説明したが、サイドカバー32に代えて、例えば、フロントサイドカウル43が接続させる構成でもよく、任意の車体カバー30が側壁部65、66に接続されてもよい。
【0059】
上記実施の形態では、鞍乗り型車両10として前輪13と後輪15とを有する自動二輪車を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備えた3輪の鞍乗り型車両や4輪以上を備えた鞍乗り型車両に適用可能である。
【0060】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0061】
(構成1)ヘッドパイプから垂下するダウンチューブの前方にラジエータを配置する鞍乗り型車両において、前記ラジエータに設けられるラジエータシュラウドを備え、前記ラジエータは、前記ラジエータシュラウドにのみに支持され、前記ラジエータシュラウドを介して車体に支持されることを特徴とする鞍乗り型車両。
この構成によれば、フレームの形態に寄らず剛性の出易い位置でラジエータを支持でき、ラジエータの取り付け自由度を向上させることができる。
【0062】
(構成2)前記ラジエータシュラウドは、車体カバーおよびフレームに固定されることを特徴とする構成1に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、ラジエータシュラウドを介して、車体カバーおよびフレームという剛性の出易い位置でラジエータを支持できる。
【0063】
(構成3)前記ラジエータシュラウドは、前記ラジエータの後面を覆う後壁部を備え、該後壁部で前記ラジエータと接続されることを特徴とする構成1又は2に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、ラジエータの大きな面となり易い後面でラジエータをラジエータシュラウドに接続でき、ラジエータシュラウドで安定してラジエータを支持し易くできる。
【0064】
(構成4)前記ラジエータシュラウドは、前記ラジエータの側面を覆う側壁部を備え、該側壁部で車体カバーと接続されることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、ラジエータシュラウドを車幅方向外側の位置で車体カバーに固定することができ、剛性を持ってラジエータを支持し易くできる。
【0065】
(構成5)前記ラジエータシュラウドは、前記ラジエータの上面を覆う上壁部と、前記ラジエータの下面を覆う下壁部と、を備え、前記上壁部と前記下壁部には、それぞれ、フレームと接続されるフランジ部が設けられ、前記フランジ部が前記フレームと接続されることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、ラジエータシュラウドを上下でフレームに接続することができ、剛性を持ってラジエータを支持し易くできる。
【0066】
(構成6)前記ダウンチューブに設けられる前記ラジエータの上側の固定部は一対のステーであり、前記ステーは、車幅方向に延出した位置で前記ラジエータシュラウドの前記上壁部に設けられる前記フランジ部と接続されることを特徴とする構成5に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、ラジエータシュラウドを車幅方向外側の位置でフレームに固定することができ、剛性を持ってラジエータを支持し易くできる。
【符号の説明】
【0067】
10 鞍乗り型車両
11 車体フレーム(フレーム、車体)
12 エンジン(パワーユニット、車体)
18 ヘッドパイプ
19c ダウンフレーム(ダウンチューブ)
32 サイドカバー(車体カバー)
39 ラジエータ
60 ラジエータシュラウド
61 後壁部
65、66 側壁部
63 上壁部
64 下壁部
63A、64A フランジ部
100 上部ステー(ステー)