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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157766
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 9/14 20200101AFI20221006BHJP
   B62J 9/40 20200101ALI20221006BHJP
【FI】
B62J9/14
B62J9/40
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062187
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博昭
(57)【要約】
【課題】ボディカバーに物品を収容する構造において、車体内部に連通しながらも防塵可能な収容スペースを提供する。
【解決手段】鞍乗り型車両は、乗員が着座するシート(17)の下方をボディカバー(35)で覆い、ボディカバー(35)の一部を車体内側方向に窪ませて凹部(35B)からなる物入部(35D)を形成し、物入部(35D)には車体内部に連通する開口(35C)があり、開口(35C)がサイドカバー(37)で覆われる鞍乗り型車両において、開口(35C)を閉塞する着脱可能な蓋部材(50)を有し、物品(71、72、73、74)は蓋部材(50)に支持される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシート(17)の下方をボディカバー(35)で覆い、該ボディカバー(35)の一部を車体内側方向に窪ませて凹部(35B)からなる物入部(35D)を形成し、該物入部(35D)には車体内部に連通する開口(35C)があり、前記開口(35C)がサイドカバー(37)で覆われる鞍乗り型車両において、
前記開口(35C)を閉塞する着脱可能な蓋部材(50)を有し、物品(71、72、73、74)は該蓋部材(50)に支持されることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記サイドカバー(37)は椀状をなすことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記蓋部材(50)には、前記開口(35C)の周縁に係合する複数のフランジ部(52)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記蓋部材(50)には、前記物品(71、72、73、74)を保持する保持部(60)を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記開口(35C)には、電装品(42)が位置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記物品(71、72、73、74)は、オーナーズマニュアル(71)と車載ツール(73、74)との少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボディカバーに凹部を形成して物入部をなし、該凹部をサイドカバーで覆う鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、凹部には車体内部に連通する切り欠きを設けることで物品の収容スペースを大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-163076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、車体内部には駆動輪が位置するため、車輪が巻き上げる泥や水、土埃などが物入部に入り込んでしまう場合があり、収容物の防塵などの対応が必要であった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ボディカバーに物品を収容する構造において、車体内部に連通しながらも防塵可能な収容スペースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鞍乗り型車両は、乗員が着座するシートの下方をボディカバーで覆い、該ボディカバーの一部を車体内側方向に窪ませて凹部からなる物入部を形成し、該物入部には車体内部に連通する開口があり、前記開口がサイドカバーで覆われる鞍乗り型車両において、前記開口を閉塞する着脱可能な蓋部材を有し、物品は該蓋部材に支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
ボディカバーに物品を収容する構造において、車体内部に連通しながらも防塵可能な収容スペースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
図2】シートの周辺を示す鞍乗り型車両の平面図である。
図3】シートの下方周辺を示す鞍乗り型車両の左側面図である。
図4】シートの下方周辺を示す鞍乗り型車両の右側面図である。
図5図4のメンテナンス開口を蓋部材で閉塞した状態を示す図である。
図6】蓋部材の右側面図である。
図7】蓋部材の左側面図である。
図8】蓋部材の正面図である。
図9】前輪の周辺部を示す鞍乗り型車両の左側面図である。
図10】前輪の周辺部を左後方から見た斜視図である。
図11図10からディスクカバーの図示を省略した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に位置するフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に位置するリアフレーム20とを備える。フロントフレーム19の前端部は、ヘッドパイプ18に接続される。
シート17は、リアフレーム20に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0013】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0014】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、車体フレーム11に支持される。
【0015】
本実施の形態では、フロントフレーム19は、ヘッドパイプ18から後下方に延びるメインフレーム19aと、メインフレーム19aの後端部から下方に延びてピボット軸22が支持されるセンターフレーム19bと、を備える。また、リアフレーム20は、メインフレーム19aの後部の中間部から後方斜め上方に延びている左右一対のシートフレーム20aと、メインフレーム19aの後端部からシートフレーム20aの後端部まで延びる左右一対のリアサブフレーム20bとを備える。
【0016】
図2は、シート17の周辺を示す鞍乗り型車両10の平面図である。
図1図2に示すように、鞍乗り型車両10は、車体フレーム11及びパワーユニット12等によって構成される車体を覆う車体カバー30を備える。
車体カバー30は、フロントフォーク14の前側を覆うフロントカバー31と、フロントカバー31の後方に配置されて、乗員である運転者の脚部を前方から覆うレッグシールド32と、レッグシールド32の車幅方向中央部の後端に接続されてシート17の下方まで延びるセンターカバー33と、センターカバー33の左右に配置され、レッグシールド32の左右外側後端からシート17の下方を後方に延びる左右一対のボディカバー34、35(図2参照)と、左右それぞれのボディカバー34、35に取り付けられる左右一対のサイドカバー36、37(図2参照)と、を備える。
【0017】
図3は、シート17の下方周辺を示す鞍乗り型車両10の左側面図である。図3では、左側のボディカバー34から左側のサイドカバー36が取り外された状態を示す。
センターカバー33は、前後方向に厚みを有する湾曲板状である。センターカバー33は、レッグシールド32の後端部から後方に延び、後部では上方に湾曲している。
センターカバー33の左右両側には、ボディカバー34、35(図2参照)が接続される。ボディカバー34、35は、車幅方向に厚みを有する板状である。ボディカバー34、35は、センターカバー33の左右外端部から後方に延びて燃料タンク29(図1参照)などを車幅方向外側から覆う。ボディカバー34、35の後部上端には、車幅方向内側に湾曲する接続部34Z、35Z(図2参照)が形成されている。接続部34Z、35Zでボディカバー34、35同士が接続される。センターカバー33と、左右のボディカバー34、35との囲み形状で燃料タンク29を上方に露出させる開口状のタンク開口部(不図示)が形成される。このタンク開口部の上方にはシート17が配置される。シート17はタンク開口部を上方から覆う。
【0018】
左側のボディカバー34には、車幅方向外側に環状に隆起した隆起部34Aが形成されている。隆起部34Aは、前後方向に延びる下部34A1と、下部34A1の前端から前上がりに延びる前部34A2と、下部34A1の後端から後上がりに延び前部34A2よりも上下方向に長い後部34A3と、前部34A2および後部34A3の上端を接続して前上がりに延びる上部34A4と、を備える。隆起部34Aの車幅方向外端、すなわち、隆起部34Aの頂部には、隆起部34Aの環状形状に沿った凹溝34A5が形成されている。側面視における凹溝34A5の前端部には、スリット状の係合孔34A6が形成されている。また、凹溝34A5には、複数のスリット状の係合孔34A7が形成されている。
【0019】
隆起部34Aに囲まれた部分には、車幅方向内側に凹んだ凹部34Bが形成されている。凹部34Bの外周部は、隆起部34Aで構成される。凹部34Bの底面(車幅方向内面)34B1には、厚み方向に貫通する開口34Cが形成されている。開口34Cは、凹部34Bの上部に沿って延びる矩形状に形成されている。開口34Cは、車体内部、すなわち、車体カバー30で覆われた車幅方向内側の空間に連通する。開口34Cの前端下部には下方に切り欠かれた扁平U字状のハーネス導出部34C1が形成されている。ハーネス導出部34C1の後部には、支持部34Fが形成されている。支持部34Fにはレギュレータ40が支持される。支持部34Fの後上部には、ねじ止め用の締結部34Eが形成されている。締結部34Eには、サイドカバー36がねじ(締結部材)38で締結される。
【0020】
サイドカバー36は、車幅方向外側に膨出する椀状である。サイドカバー36の開放端は、凹溝34A5に嵌合され、サイドカバー36は凹部34Bを覆う。よって、サイドカバー36の椀形状と凹部34Bの凹み形状により、物品収容スペース34D(図2参照)が形成される。
【0021】
詳細には、サイドカバー36は、凹溝34A5の形状に対応する形状の開放端を有する。サイドカバー36には、図示しない複数の係合片が設けられており、これらの係合片が係合孔34A6、34A7に係合し、サイドカバー36の開放端が凹溝34A5に嵌合される。そして、サイドカバー36の後部がねじ38でねじ止めされることにより、サイドカバー36がボディカバー34に取り付けられる。サイドカバー36と、凹部34Bの底面34B1とに挟まれた空間により、物品収容スペース34D(図2参照)が形成される。左側の物品収容スペース34Dには、レギュレータ40が配置される。
【0022】
レギュレータ40は、支持部34Fに支持される。レギュレータ40は、開口34Cを通じてボディカバー34の内外に亘った状態で配置される。レギュレータ40には、凹部34Bの底面34B1よりも左側、すなわち、物品収容スペース34Dで、ハーネス41が接続されている。ハーネス41は、ハーネス導出部34C1を通じて、車体内部に延びている。
【0023】
本実施の形態のレギュレータ40は開口34Cから物品収容スペース34Dに配置されており、放熱し易くなっている。特に、本実施の形態では、レギュレータ40は、排気装置25のマフラー(不図示)とは、車幅方向で車両中心線L(図2参照)を挟んで反対側となる左側に配置される。このため、排気装置25からの熱影響を受け難い位置でレギュレータ40が放熱可能となっている。
【0024】
図4は、シート17の下方周辺を示す鞍乗り型車両10の右側面図である。図4では、右側のボディカバー35から右側のサイドカバー37が取り外された状態を示す。
右側のボディカバー35および右側のサイドカバー37も、左側のボディカバー34および左側のサイドカバー36と、外観上の基本構成は同様である。よって、右側のボディカバー35は、隆起部35Aや、凹部35Bを備える。また、右側のサイドカバー37は車幅方向外側に膨出する椀状である。サイドカバー37は凹部35Bを覆い、物品収容スペース35D(図2参照)を形成する。
【0025】
詳述すれば、右側のボディカバー35の隆起部35Aは、前後方向に延びる下部35A1と、下部35A1の前端から前上がりに延びる前部35A2と、下部35A1の後端から後上がりに延び前部35A2よりも長い後部35A3と、前部35A2および後部35A3の上端を接続して前上がりに延びる上部35A4とを備える。隆起部35Aの車幅方向外端に対応する頂部には、隆起部35Aの環状形状に沿った凹溝35A5が形成されている。側面視における凹溝35A5の前端部には、スリット状の係合孔35A6が形成されている。また、凹溝35A5には、複数のスリット状の係合孔35A7が形成されている。隆起部34Aに囲まれた部分には、車幅方向内側に凹んだ凹部35Bが形成されている。凹部35Bの外周部は、隆起部35Aで構成される。
【0026】
右側の凹部35Bの底面(車幅方向内面)35B1には、左側の凹部34Bとは異なり、厚み方向に貫通するメンテナンス開口(開口)35Cが形成されている。
メンテナンス開口35Cは、凹部35Bの底面35B1の前部全体に形成されている。メンテナンス開口35Cは、車体内部に連通する。メンテナンス開口35Cは、隆起部35Aの下部35A1に沿って前後方向に延びる下部35C1と、下部35C1の前端から隆起部35Aの前部35A2に沿って前上がりに延びる前部35C2と、下部35C1の後端から、隆起部35Aの後部35A3に対して離間しながら後上がりに延びる後部35C3と、隆起部35Aの上部35A4に沿って、前部35C2および後部35C3の上端を接続する上部35C4とにより形成される。
【0027】
メンテナンス開口35Cに側面視で重複して、車体内部にはECU42が配置されている。ECUは、Electronic Control Unitの略語である。メンテナンス開口35Cを通じて車体内の電装品、例えば、ECU42や、リレー(不図示)、ヒューズ(不図示)等に作業者がアクセス可能となっている。
【0028】
図5は、図4のメンテナンス開口35Cを蓋部材50で閉塞した状態を示す図である。図6は、蓋部材50の右側面図である。図7は、蓋部材50の左側面図である。図8は、蓋部材50の正面図である。
メンテナンス開口35Cは、蓋部材50で着脱可能に閉塞される。蓋部材50は、例えば、樹脂で形成され、弾性的に変形可能な部材である。
図6図8に示すように、蓋部材50は、板状の蓋本体部51を備える。蓋本体部51は、メンテナンス開口35Cの開口形状に応じた外周形状を有する。すなわち、蓋本体部51には、メンテナンス開口35Cの下部35C1に沿って前後方向に延びる下部51Aと、下部51Aの前端からメンテナンス開口35Cの前部35C2に沿って前上がりに延びる前部51Bと、下部51Aの後端からメンテナンス開口35Cの後部35C3に沿って後上がりに延びる後部51Cと、メンテナンス開口35Cの上部35C4に沿って、前部51Bおよび後部51Cの上端を接続する上部51Dとが形成される。
【0029】
蓋本体部51の外周部には、外周方向に突出するフランジ片(フランジ部)52が設けられている。フランジ片52は、蓋本体部51に対して車幅方向内面に形成されて外周方向に突出する内側フランジ片52Aと、蓋本体部51の車幅方向外面に形成されて外周方向に突出する外側フランジ片52Bと、を備える。内側フランジ片52Aと外側フランジ片52Bとは外周方向に交互に形成されている。内側フランジ片52Aと外側フランジ片52Bとは外周方向に沿って離間して設けられている。
【0030】
蓋部材50は、弾性的に変形させることにより、蓋部材50をボディカバー35に着脱可能となる。すなわち、内側フランジ片52Aはメンテナンス開口35Cを通過させてボディカバー35の内側に配置し、外側フランジ片52Bをボディカバー35の外側に配置する。これにより、蓋部材50の本体部50Aがメンテナンス開口35Cを閉塞する。また、内側フランジ片52A及び外側フランジ片52Bで、メンテナンス開口35Cの内周縁の部分のボディカバー35を厚み方向に挟持した状態となり、蓋部材50がボディカバー35に保持される。よって、ECU42などは蓋部材50で車体外方から覆われる。蓋本体部51の車幅方向内面には、ECU42の右側面形状に応じて、車幅方向外側に凹んだ凹部51Eが形成されている。よって、蓋部材50がECU42に近接した状態でメンテナンス開口35Cを閉塞可能である。すなわち、物品収容スペース35D(図2参照)を蓋部材50によって区画できる。
【0031】
蓋部材50の外周部の前後方向中央部には、その周形状の内側に凹んだように切り欠かれた切り欠き部53、54が形成されている。上側の切り欠き部53は、蓋部材50の上部51Dの前後方向中央部に形成されている。下側の切り欠き部54は、蓋部材50の下部51Aの前後方向中央部やや後方に形成されている。下側の切り欠き部54は、上側の切り欠き部53よりも後方に形成されている。蓋本体部51の車幅方向内面において、上下の切り欠き部53、54の前方には、車幅方向内側に突出するボス55が形成されている。
【0032】
蓋部材50のボス55には、樹脂製の保持部60が係合する。保持部60は、上下方向に延びる部材である。保持部60は、形状としては、無端状の線状部材を上下に引張り、その状態で、両端以外の部分が接合されたような形状である。すなわち、保持部60は、上下方向に延びる本体部61と、本体部61の上下方向両端に形成された環状の端部62とを備える。端部62は車幅方向内側に向けて上下方向に屈曲している。両方の端部62が、蓋部材50の上下の切り欠き部53、54を介して蓋部材50の裏面(車幅方向)に配置され、蓋部材50のボス55に引っ掛けられる。これにより、保持部60は、端部62が、蓋本体部51の裏面(内面)に当接し、本体部61が、蓋本体部51の表面(外面)から離間した状態で、蓋部材50に保持される。
【0033】
図4、5に示すように、メンテナンス開口35Cの後部には、締結部35Eが形成されている。締結部35Eには、サイドカバー37がノブ(締結具)39で締結される。図2に示すように、ノブ39は円板状の操作部39Aと、操作部39Aの厚み方向に突出するねじ部39Bとを備える。
【0034】
右側のサイドカバー37は、ノブ39で締結される点以外は、左側のサイドカバー36と同様に取り付けられる。
すなわち、右側のサイドカバー37は、凹溝35A5の形状に対応する形状の開放端を有する。サイドカバー37には、図示しない複数の係合片が設けられており、これらの係合片が係合孔35A6、35A7に係合し、サイドカバー37の開放端が凹溝35A5に嵌合される。そして、サイドカバー37の後部がノブ39で締結部35Eに締結されることにより、サイドカバー37がボディカバー35に取り付けられる。サイドカバー37と、凹部35Bの底面35B1とに挟まれた空間により、図2に示す物品収容スペース35D(物入部)が形成される。右側の物品収容スペース35Dには、オーナーズマニュアル(物品)71や、車載ツール(物品)73、74が収容される。
【0035】
オーナーズマニュアル71や、車載ツール73、74は、保持部60と蓋部材50との間に挟まれた状態で弾性的に保持される。オーナーズマニュアル71は冊子であり、袋(物品)72に収容された状態で保持される。
車載ツール73、74は軸状に延びる工具であり、長手形状を有する。詳細には、車載ツール74はドライバーの柄であり、車載ツール73が車載ツール74に差し込まれる差し込みドライバーである。なお、本実施の形態では、オーナーズマニュアル71のみが袋72に収容されたが、車載ツール73、74もオーナーズマニュアル71を収容する袋72に一緒に収容して、保持部60と蓋部材50との間に保持してもよい。
【0036】
右側のサイドカバー37は、ノブ39によりボディカバー35の締結部35Eに締結される。このため、簡易にサイドカバー37を取り外し易くなっており、物品収容スペース35Dに容易にアクセスし易く、オーナーズマニュアル71や、車載ツール73、74に作業者がアクセスし易くなっている。
【0037】
ここで、メンテナンス開口35Cは、作業者が作業できる程度には開口形状が大きい。鞍乗り型車両10の車体内部には駆動輪としての後輪15が位置するため、後輪15が巻き上げる泥や水、土埃などがメンテナンス開口35Cを通じて車体内から物品収容スペース35Dに入り込む可能性がある。しかしながら、本実施の形態では、メンテナンス開口35Cが蓋部材50で閉塞されるため、メンテナンス開口35Cを通じて物品収容スペース34D側に泥や水、土埃などが進入することが蓋部材50で防止される。
【0038】
図9は、前輪13の周辺部を示す鞍乗り型車両10の左側面図である。図10は、前輪13の周辺部を左後方から見た斜視図である。図11は、図10からディスクカバー98の図示を省略した図である。
フロントフォーク14は、前下がりに延びる円筒状のボトムケース81を左右一対有する。
ボトムケース81の下端部には、車軸支持部81Aが形成されている。左右の車軸支持部81Aには車軸13aが支持され、車軸13aを介して前輪13が支持される。
前輪13は、車軸13aに軸支されるホイール82と、ホイール82の外周部に取り付けられるタイヤ83とを備える。
【0039】
ボトムケース81の上部には、フェンダーステー84が支持される。フェンダーステー84は、左右のボトムケース81に跨って前輪13の上方に配置される。フェンダーステー84には、前輪13を覆うフロントフェンダー26が支持される。
フェンダーステー84の左部には、後方に延びるU字状のハーネスガード85が設けられている。ハーネスガード85は、前輪13の左側に配置され、側面視で前輪13のタイヤ83と重複している。
【0040】
以下、前輪13の左側(車幅方向一側)の構成について説明する。
ボトムケース81の前部には、センサステー部81Bが形成されている。センサステー部81Bは、車軸支持部81Aからボトムケース81の前部に沿って上方に延びている。センサステー部81Bは、断面L字状に形成されており、車幅方向に厚みを有する配置部81B1と、配置部81B1の前端から左方に屈曲する保護部81B2とを備える。配置部81B1には、ホイール82側に貫通する開口(不図示)が形成されている。
【0041】
ボトムケース81の後部には、後方に突出する上下一対のキャリパ支持部81C、81Dが形成されている。キャリパ支持部81C、81Dには、上下方向に延びる板状のキャリパブラケット86が支持される。キャリパブラケット86は、車幅方向に延びるボルト80でキャリパ支持部81C、81Dに締結される。キャリパブラケット86には、前輪用ブレーキ装置87のブレーキキャリパ89が支持される。
【0042】
前輪用ブレーキ装置87は、ブレーキディスク88と、ブレーキディスク88を挟持して制動可能なブレーキキャリパ89と、を備える。
ブレーキディスク88は、ホイール82の左側側面に取付けられている。ブレーキディスク88は、車軸13aを中心にホイール82と一体に回転する。
【0043】
ブレーキキャリパ89は、車幅方向に延びるボルト90でキャリパブラケット86に固定される。ブレーキキャリパ89は、図示しないブレーキパッドとピストンとを備えており、ピストン(不図示)の押圧力によってブレーキパッドをブレーキディスク88に押し付けてブレーキディスク88を挟持する。
【0044】
ブレーキキャリパ89の後部には、ブレーキホース91が接続されている。ブレーキホース91は、ブレーキキャリパ89の後部から上方に延び、ハーネスガード85の車幅方向内側を通って、フロントフェンダー26の上方に配索される。ブレーキホース91は、前輪用のマスターシリンダ(不図示)に接続され、マスターシリンダが作動した場合に、ブレーキキャリパ89に液圧を供給する。これにより、ブレーキキャリパ89では、ピストンが作動し、一対のブレーキパッドで前輪13が制動される。
【0045】
ブレーキディスク88の左面には、円板状のパルサーリング92が締結されている。パルサーリング92はホイール82と一体に回転する。パルサーリング92の外周部には、全周に亘って複数のスリット孔92Aが形成されている。側面視において、スリット孔92Aの通過位置(回転位置)には、車輪速センサ93が配置される。
【0046】
車輪速センサ93は、例えば、磁気センサである。車輪速センサ93は、センサステー部81Bに支持される。車輪速センサ93は、車幅方向に延びるボルト94で、センサステー部81Bの配置部81B1に固定される。車輪速センサ93は、配置部81B1の図示しない開口を通じてパルサーリング92に対向する。車輪速センサ93は、単位時間のスリット孔92Aの有無に基づいて車輪速を検出する。
【0047】
車輪速センサ93の上部には、センサハーネス95が接続されている。センサハーネス95は、センサステー部81Bの保護部81B2と、ボトムケース81との間を通って、配置部81B1に沿って上方に延びる。センサハーネス95は、側面視で、ブレーキディスク88よりも上方に延びると、ボトムケース81の車幅方向内面に沿ってボトムケース81よりも後方に配索される。センサハーネス95は、ボトムケース81の後方では、ブラケット96を介して、ボトムケース81の上側のキャリパ支持部81Cに支持される。センサハーネス95は、ブラケット96の後方では、後上方に配索され、クランプ部材97でブレーキホース91にクランプされ、ECU(図4参照)に向けてフロントフォーク14の上部に配索される。
【0048】
図11に示すように、ブラケット96は、断面略U字状である。ブラケット96は、キャリパ支持部81Cの車幅方向外側面に沿って配置される板状の固定部96Aと、固定部96Aの上端から車幅方向内側にキャリパ支持部81Cを越えて延出する板状の架橋部96Bと、架橋部96Bの車幅方向内端から下方に延びる板状の保持部96Cと、を備える。
固定部96Aの後下部には、車幅方向内側に屈曲した形状の回り止め96A1が形成されている。回り止め96A1が上側のキャリパ支持部81Cの後面81C1に突き当てられた状態で、固定部96Aがキャリパ支持部81Cに固定される。固定部96Aは、車幅方向に延びるカバー締結ボルト99で上側のキャリパ支持部81Cに固定される。
【0049】
保持部96Cは、キャリパ支持部81C側が開放された半円筒状に形成されている。保持部96Cには、その半円筒形状にセンサハーネス95が装着される。センサハーネス95は保持部95Cとキャリパ支持部81Cの車幅方向内側面とで挟まれるようにして保持される。
【0050】
図10に示すように、ボトムケース81には、ブレーキディスク88を覆うディスクカバー98が支持される。ディスクカバー98は、側面視では略半円状である(図1図9参照)。
ディスクカバー98は、ブレーキディスク88の側方に配置される半円板状の本体部98Aを備える。本体部98Aの外周部には、車幅方向内側に突出する外周カバー部98Bが形成されている。外周カバー部98Bは、ブレーキディスク88の外周を覆う。本体部98Aには、厚み方向に貫通する格子状の開口98Cが形成されている。開口98Cを通じてブレーキディスク88が側方から視認可能となっている。
【0051】
本体部98Aの上部後方には、開口がない部分としてのセンサカバー部98Dが形成されている。センサカバー部98Dは、本体部98Aに対して車幅方向外側に膨出している。センサカバー部98Dは、ボトムケース81の前方に沿って上方に延びている。センサカバー部98Dは、センサステー部81Bを車幅方向外側から覆い、車輪速センサ93を覆う。
【0052】
センサカバー部98Dの下部には、前方に円弧状に切り欠かれた形状の車軸回避部98Eが形成されている。車軸回避部98Eを通じて車軸13aがセンサカバー部98Dよりも車幅方向外側に突出する。
車軸回避部98Eの後下方には、本体部98AがU字状に下方に切り欠かれた形状のボトムケース回避部98Fが形成されている。ボトムケース回避部98Fには、ボトムケース81の下端が配置され、ボトムケース81がディスクカバー98の本体部98Aよりも車幅方向外側に突出する。
【0053】
センサカバー部98Dの上部には、ボトムケース81よりも後方に延出する後方延出部98Gが形成されている。後方延出部98Gの後部には、ブラケットカバー部98Hが形成されている。ブラケットカバー部98Hは、ブラケット96を後上方から覆う湾曲板状である。ブラケットカバー部98Hの右下側には、円弧状に切り欠かれたハーネス導出部98Jが形成されている。ハーネス導出部98Jからブラケット96に支持されたセンサハーネス95が後上方に導出される。
【0054】
ディスクカバー98には、ボトムケース回避部98Fの後方に下側の固定部98Kが形成されている。下側の固定部98Kは、下側のキャリパ支持部81Dに固定される。
ディスクカバー98には、センサカバー部98Dの上部に前上側の固定部98Lが形成されている。前上側の固定部98Lはセンサステー部81Bに固定される。
ディスクカバー98には、ブラケットカバー部98Hの車幅方向外側に、上側の固定部98Mが形成されている。上側の固定部98Mは上側のキャリパ支持部81Cに固定される。
各固定部98K、98L、98Mは、車幅方向に延びるカバー締結ボルト99で固定される。特に、上側の固定部98Mでは、カバー締結ボルト99は、ディスクカバー98とブラケット96を共締めする。
これにより、ディスクカバー98がボトムケース81に支持される。
【0055】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、乗員が着座するシート17の下方をボディカバー35で覆い、ボディカバー35の一部を車体内側方向に窪ませて凹部35Bからなる物品収容スペース35Dを形成し、物品収容スペース35Dには車体内部に連通するメンテナンス開口35Cがあり、メンテナンス開口35Cがサイドカバー37で覆われる鞍乗り型車両10において、メンテナンス開口35Cを閉塞する着脱可能な蓋部材50を有し、物品71~74は蓋部材50に支持される。したがって、物品収容スペース35Dにメンテナンス開口35Cを有することで車体の内部空間へのアプローチを作業者ができるためメンテナンス性を有し、また、メンテナンス開口35Cを蓋部材50で閉塞した物品収容スペース35Dとすることで、後輪15が巻き上げる泥や水、土埃などの影響を受けない物品収容スペース35Dとすることができる。よって、ボディカバー35に物品71~74を収容する構造において、車体内部に連通しながらも防塵可能な収容スペースを提供することができる。
【0056】
本実施の形態では、サイドカバー37は椀状をなす。したがって、サイドカバー37の内側面を収容スペースの一部とすることができ、物品収容スペース35Dを大きくできる。
【0057】
また、本実施の形態では、蓋部材50には、メンテナンス開口35Cの周縁に係合する複数のフランジ片52を備える。したがって、蓋部材50で開口を閉塞し易くできる。
【0058】
また、本実施の形態では、蓋部材50には、物品71~74を保持する保持部60を備える。したがって、簡易に物品71~74を蓋部材50に保持させることができる。
【0059】
また、本実施の形態では、メンテナンス開口35Cには、ECU42が位置する。したがって、蓋部材50を取り外すことでECU42をメンテナンスすることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、物品71~74は、オーナーズマニュアル71と車載ツール73、74との両方である。したがって、オーナーズマニュアル71と車載ツール73、74を収容することができる。
【0061】
[他の実施の形態]
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
【0062】
上記実施の形態では、鞍乗り型車両10として前輪13と後輪15とを有する自動二輪車を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、前輪または後輪を2つ備えた3輪の鞍乗り型車両や4輪以上を備えた鞍乗り型車両に適用可能である。
【0063】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0064】
(構成1)乗員が着座するシートの下方をボディカバーで覆い、該ボディカバーの一部を車体内側方向に窪ませて凹部からなる物入部を形成し、該物入部には車体内部に連通する開口があり、前記開口がサイドカバーで覆われる鞍乗り型車両において、前記開口を閉塞する着脱可能な蓋部材を有し、物品は該蓋部材に支持されることを特徴とする鞍乗り型車両。
この構成によれば、物入部に開口を有することで車体の内部空間へのアプローチを作業者ができるためメンテナンス性を有し、開口を蓋部材で閉塞した物入部とすることで、車輪が巻き上げる泥や水、土埃などの影響を受けない物入部とすることができる。よって、ボディカバーに物品を収容する構造において、車体内部に連通しながらも防塵可能な収容スペースを提供することができる。
【0065】
(構成2)前記サイドカバーは椀状をなすことを特徴とする構成1に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、サイドカバーの内側面を収容スペースの一部とすることができ、物入部を大きくできる。
【0066】
(構成3)前記蓋部材には、前記開口の周縁に係合する複数のフランジ部を備えることを特徴とする構成1または2に記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、蓋部材で開口を閉塞し易くできる。
【0067】
(構成4)前記蓋部材には、前記物品を保持する保持部を備えることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、簡易に物品を蓋部材に保持させることができる。
【0068】
(構成5)前記開口には、電装品が位置することを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、蓋部材を取り外すことで電装品をメンテナンスすることができる。
【0069】
(構成6)前記物品は、オーナーズマニュアルと車載ツールとの少なくともいずれか一方であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
この構成によれば、オーナーズマニュアルと車載ツールとの少なくともいずれか一方を収容することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 鞍乗り型車両
17 シート
35 ボディカバー
35B 凹部
35C メンテナンス開口(開口)
35D 物品収容スペース(物入部)
37 サイドカバー
42 ECU(電装品)
50 蓋部材
52 フランジ片(フランジ部)
60 保持部
71 オーナーズマニュアル(物品)
72 袋(物品)
73 車載ツール(物品)
74 車載ツール(物品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11