(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022157788
(43)【公開日】2022-10-14
(54)【発明の名称】コバルト含有酸化物膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/40 20060101AFI20221006BHJP
H01L 21/365 20060101ALI20221006BHJP
H01L 21/368 20060101ALI20221006BHJP
C23C 18/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C23C16/40
H01L21/365
H01L21/368 Z
C23C18/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021062218
(22)【出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(72)【発明者】
【氏名】金子 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 静雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将人
(72)【発明者】
【氏名】三竹 雅也
(72)【発明者】
【氏名】四戸 孝
【テーマコード(参考)】
4K022
4K030
5F045
5F053
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022AA05
4K022AA31
4K022AA41
4K022BA06
4K022BA15
4K022DA06
4K022DB13
4K022DB19
4K022EA01
4K030AA11
4K030BA05
4K030BA42
4K030CA01
4K030EA01
4K030FA10
4K030JA10
5F045AA03
5F045AB40
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045DP04
5F045DP07
5F045EE03
5F045EK06
5F053AA50
5F053BB60
5F053FF01
(57)【要約】
【課題】コバルト含有酸化物膜を工業的有利に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】原料溶液からコバルト含有酸化物膜を製造する方法において、前記原料溶液がコバルトの有機金属錯体を含み、前記原料溶液を霧化し、得られた霧化液滴に対してキャリアガスを供給し、前記霧化液滴を前記キャリアガスでもって前記基体まで搬送した後、前記霧化液滴を前記基体表面近傍にて熱反応させることにより、前記基体上にコバルト含有酸化物膜を形成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料溶液からコバルト含有酸化物膜を製造する方法であって、
前記原料溶液がコバルトの有機金属錯体を含み、
前記原料溶液を霧化し、得られた霧化液滴に対してキャリアガスを供給し、前記霧化液滴を前記キャリアガスでもって前記基体まで搬送した後、前記霧化液滴を前記基体表面近傍にて熱反応させることにより、前記基体上にコバルト含有酸化物膜を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記熱反応を500℃以上の温度で行う請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記原料溶液が、溶媒として水を含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記原料溶液が、さらにハロゲン化水素酸を含む請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記基体が、コランダム構造を有する基板である請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記熱反応を、大気圧下で行う請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記原料溶液が、コバルトアセチルアセトナート錯体を含む請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミストCVD法を用いたコバルト含有酸化物膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化コバルトは、エレクトロクロミック特性を示す酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化モリブデンと類縁化合物であり、酸化還元により色変化を起こすのでエレクトロクロミックディスプレイとしての用途が期待されている。また、実用例としては、太陽光選択的吸収剤、原油の水素化分解反応の触媒、ガラスやセラミクスの顔料としての利用が挙げられる。また近年、新型のリチウム二次電池材料として酸化コバルト微粒子を用いる方法が提案され、従来のリチウム二次電池の2倍の充放電容量を有することが報告されている。
【0003】
そして酸化コバルトの製造方法にも様々な手法が用いられており、例えばコバルト化合物の溶液を高温に保った基板上に吹き付ける方法(非特許文献1)、コバルト化合物を電解酸化する方法(非特許文献2)、コバルト化合物を基板上にスピンコートし、しかる後に熱分解する手法(非特許文献3)などをあげることができる。
【0004】
一方、酸化物膜の形成方法としては、例えばミストCVD法等も検討されているが(特許文献1)、酸化コバルトをミストCVD法で製膜する際には、製膜速度や原料効率等の点においてさらなる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/043503号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】P.S.Patil、L.D.Kadam、C.D.Lokhande、Solar Energy Materials、53巻、229-234頁、1998年
【非特許文献2】C.N.Polo da Fonseca、Marco-A.De Paoli、Annette Gorenstein、Advanced Materianl、3巻、553-555頁、1991年
【非特許文献3】M.Ando、T.Kobayashi、Solid State Ionics、136-137巻、1291-1293頁、2000年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、工業的有利にコバルト含有酸化物膜を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、原料溶液からコバルト含有酸化物膜を製造する方法であって、前記原料溶液がコバルトの有機金属錯体を含み、前記原料溶液を霧化し、得られた霧化液滴に対してキャリアガスを供給し、前記霧化液滴を前記キャリアガスでもって前記基体まで搬送した後、前記霧化液滴を前記基体表面近傍にて熱反応させることにより、前記基体上にコバルト含有酸化物膜を形成すると、工業的有利にコバルト含有酸化物膜を製造することができ、他の原料(例えば塩化コバルト等)を用いた場合と比較して、原料効率等の点で優れていることを見出した。また、本発明者らは、上記したコバルト含有酸化物膜の製造方法が、上記した従来の問題を解決できるものであることを知見した。
【0009】
また、本発明者らは、上記知見を得たのち、さらに検討を重ね、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の発明に関する。
【0010】
[1] 原料溶液からコバルト含有酸化物膜を製造する方法であって、
前記原料溶液がコバルトの有機金属錯体を含み、
前記原料溶液を霧化し、得られた霧化液滴に対してキャリアガスを供給し、前記霧化液滴を前記キャリアガスでもって前記基体まで搬送した後、前記霧化液滴を前記基体表面近傍にて熱反応させることにより、前記基体上にコバルト含有酸化物膜を形成することを特徴とする製造方法。
[2] 前記熱反応を500℃以上の温度で行う前記[1]記載の製造方法。
[3] 前記原料溶液が、溶媒として水を含む前記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記原料溶液が、さらにハロゲン化水素酸を含む前記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記基体が、コランダム構造を有する基板である前記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 前記熱反応を、大気圧下で行う前記[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 前記原料溶液が、コバルトアセチルアセトナート錯体を含む前記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコバルト含有酸化物膜の製造方法は、コバルト含有酸化物膜を工業的有利に製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例において用いられる製膜装置(ミストCVD装置)の概略構成図である。
【
図2】実施例において得られたコバルト含有酸化物膜の外観写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0014】
本発明のコバルト含有酸化物膜の製造方法は、原料溶液からコバルト含有酸化物膜を製造する方法であって、前記原料溶液がコバルトの有機金属錯体を含み、前記原料溶液を霧化し(霧化工程)、得られた霧化液滴に対してキャリアガスを供給し、前記霧化液滴を前記キャリアガスでもって前記基体まで搬送した後(搬送工程)、前記霧化液滴を前記基体表面近傍にて熱反応させることにより、前記基体上にコバルト含有酸化物膜を形成する(製膜工程)ことを特長とする。
【0015】
(霧化工程)
霧化工程は、コバルトの有機金属錯体を含む原料溶液を霧化し、霧化液滴を生成する。霧化手段は、前記原料溶液を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段が好ましい。超音波を用いて得られた霧化液滴(以下、単に「ミスト」ともいう。)は、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストであるので衝突エネルギーによる損傷がないため、非常に好適である。ミストの液滴のサイズは、特に限定されず、数mm程度であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは100nm~10μmである。
【0016】
(原料溶液)
前記原料溶液は、コバルトの有機金属錯体を含んでいれば特に限定されず、無機材料が含まれていても、有機材料が含まれていてもよい。本発明においては、前記コバルトの有機金属錯体を有機溶媒または水に溶解又は分散させたものを前記原料溶液として好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。本発明の実施態様においては、前記原料溶液が、コバルトアセチルアセトナート錯体を含むのが好ましい。前記原料溶液中におけるコバルトの有機金属錯体の含有割合は、前記原料溶液中におけるコバルトのモル濃度で0.001mol/L~0.5mol/Lの範囲内であるのが好ましく、0.01mol/L~0.2mol/の範囲内であるのがより好ましい。
【0017】
前記原料溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水または水とアルコールとの混合溶媒であるのがより好ましく、水であるのが最も好ましい。前記水としては、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられるが、本発明においては、超純水が好ましい。
【0018】
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合してもよい。本発明においては、前記原料溶液が、さらに、ハロゲン化水素酸を含むのが好ましい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられる。本発明の実施態様においては、前記ハロゲン化水素酸が塩酸であるのが好ましい。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H2O2)、過酸化ナトリウム(Na2O2)、過酸化バリウム(BaO2)、過酸化ベンゾイル(C6H5CO)2O2等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0019】
前記原料溶液には、前記ドーパントが含まれていてもよい。前記原料溶液にドーパントを含ませることにより、得られる膜の特性を制御することができる。前記ドーパントとしては、例えば、n型ドーパントまたはp型ドーパント等が挙げられる。前記n型ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブまたはこれらの2種以上の元素等が挙げられる。前記p型ドーパントとしては、例えば、Mg、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Ca、Sr、Ba、Ra、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Ti、Pb、N、Pまたはこれらの2種以上の元素等が挙げられる。前記ドーパントの含有量は、所望のキャリア密度に対するドーパントの原料中の濃度の関係を示す検量線を用いることにより適宜設定される。
【0020】
(基体)
前記基体は、前記コバルト含有酸化物膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されない。
【0021】
前記基板は、板状であって、前記コバルト含有酸化物膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、導電性基板であってもよいが、前記基板が、絶縁体基板であるのが好ましく、また、表面に金属膜を有する基板であるのも好ましい。前記基板としては、好適には例えば、コランダム構造を有する基板などが挙げられる。基板材料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記のコランダム構造を有する基板としては、例えば、コランダム構造を有する基板材料を主成分とする下地基板などが挙げられ、より具体的には例えば、サファイア基板(好ましくはc面サファイア基板)やα型酸化ガリウム基板などが挙げられる。ここで、「主成分」とは、前記特定の結晶構造を有する基板材料が、原子比で、基板材料の全成分に対し、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは90%以上含まれることを意味し、100%であってもよいことを意味する。
【0022】
(搬送工程)
搬送工程では、キャリアガスを前記霧化液滴に供給し、前記霧化液滴を前記キャリアガスでもって前記基体まで搬送する。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが挙げられるが、本発明においては、キャリアガスとして酸素を用いるのが好ましい。酸素が用いられているキャリアガスとしては、例えば空気、酸素ガス、オゾンガス等が挙げられるが、とりわけ酸素ガス及び/又はオゾンガスが好ましい。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。本発明においては、霧化室、供給管及び製膜室を用いる場合には、前記霧化室及び前記供給管にそれぞれキャリアガスの供給箇所を設けるのが好ましく、前記霧化室にはキャリアガスの供給箇所を設け、前記供給管には希釈ガスの供給箇所を設けるのがより好ましい。また、キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01~20L/分であるのが好ましく、1~10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001~2L/分であるのが好ましく、0.1~1L/分であるのがより好ましい。
【0023】
(製膜工程)
製膜工程では、前記ミストを前記基体表面近傍で熱反応させて、前記基体表面の一部または全部に製膜する。前記熱反応は、前記ミストから膜が形成される熱反応であれば特に限定されず、熱でもって前記ミストが反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、あまり高すぎない温度以下が好ましい。本発明においては、前記熱反応を、1200℃以下で行うのが好ましく、300℃~700℃の温度で行うのがより好ましく、350℃~600℃で行うのが最も好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸化雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよく、また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、酸化雰囲気下で行われるのが好ましく、大気圧下で行われるのも好ましく、酸化雰囲気下でかつ大気圧下で行われるのがより好ましい。なお、「酸化雰囲気」は、コバルト含有酸化物膜を形成できる雰囲気であれば特に限定されない。例えば、酸素を含むキャリアガスを用いたり、酸化剤を含む原料溶液からなるミストを用いたりして酸化雰囲気とすること等が挙げられる。また、膜厚は、製膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0024】
本発明においては、前記基体上にそのまま製膜してもよいが、前記基体上に、前記コバルト含有酸化物膜とは異なる層(例えば、n型半導体層、n+型半導体層、n-型半導体層等)や絶縁体層(半絶縁体層も含む)、バッファ層等の他の層を積層したのち、前記基体上に他の層を介して製膜してもよい。半導体層や絶縁体層としては、例えば、前記第13族金属を含む半導体層や絶縁体層等が挙げられる。バッファ層としては、例えば、コランダム構造を含む半導体層、絶縁体層または導電体層などが好適な例として挙げられる。前記のコランダム構造を含む半導体層としては、例えば、α―Fe2O3、α―Ga2O3、α―Al2O3などが挙げられる。前記バッファ層の積層手段は特に限定されず、前記p型酸化物半導体の形成手段と同様であってよい。
【0025】
上記のようにして得られたコバルト含有酸化物膜は、工業的に有用なものである。前記コバルト含有酸化物膜は、各種機器又はその部品等に用いられる。前記機器としては、電子機器又は光学機器などが好適な例として挙げられる。前記電子機器又は光学機器としては、例えば、光学物品、電気機器、電子部品、燃料電池、太陽電池、車両、産業用機器などが挙げられる。
【実施例0026】
(実施例1)
1.製膜装置
図1を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置を説明する。ミストCVD装置19は、基板20を載置するサセプタ21と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給手段22aと、キャリアガス供給手段22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給手段22bと、キャリアガス(希釈)供給手段22bから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、内径40mmの石英管からなる供給管27と、供給管27の周辺部に設置されたヒーター28とを備えている。サセプタ21は、石英からなり、基板20を載置する面が水平面から傾斜している。製膜室となる供給管27とサセプタ21をどちらも石英で作製することにより、基板20上に形成される膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。
【0027】
2.原料溶液の作製
超純水にコバルトアセチルアセトナート(コバルト濃度0.02mol/L)を加えた水溶液に、塩酸を体積比で1%となるように加え、これを原料溶液とした。
【0028】
3.製膜準備
上記2.で得られた原料溶液24aミスト発生源24内に収容した。次に、基板20として、サファイア基板をサセプタ21上に設置し、ヒーター28の温度を500℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁23a、23bを開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段22a、22bからキャリアガスを供給管27内に供給し、供給管27内の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を5.0L/分に、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/分にそれぞれ調節した。
【0029】
4.膜形成
次に、超音波振動子を振動させ、その振動を、水25を通じて原料溶液24aに伝播させることによって、原料溶液24aを霧化させてミストを生成させた。このミストが、キャリアガスによって、供給管27に搬送され、大気圧下、500℃にて、ミストが熱反応して基板20上にコバルト含有酸化物膜が形成された。なお、製膜時間は3時間であった。得られたコバルト含有酸化物膜の外観写真を
図2に示す。
【0030】
(比較例1)
原料溶液として、超純水に塩化コバルト(コバルト濃度0.01mol/L)を加えた水溶液に塩酸を体積比で1%となるように添加して調整した溶液を用いたこと、製膜温度を600℃としたこと、および製膜時間を60分間としたこと以外は、実施例1と同様にして、製膜を行った。
【0031】
実施例および比較例の製膜結果より、実施例の方が比較例と比較して原料効率に優れていることがわかった。また、
図2から明らかなように、本実施例によれば、良好なCo含有酸化物膜を得ることができる。
本発明のコバルト含有酸化物膜の製造方法は、半導体(例えば化合物半導体電子デバイス等)、電子部品・電気機器部品、光学・電子写真関連装置、工業部材などあらゆる分野に用いることができる。