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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015779
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】照明装置及び内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A61B1/06 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020118859
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】菅野 哲生
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161NN01
4C161QQ02
4C161QQ04
4C161QQ07
4C161RR02
4C161RR04
4C161RR24
(57)【要約】
【課題】演色性を向上させることができる照明装置及び内視鏡装置を得ることを目的とする。
【解決手段】第1可視光源11、第2可視光源12、及び第3可視光源13は、互いに異なる色の可視光を出射する。第1可視光源11、第2可視光源12、及び第3可視光源13は、マルチ波長光源として、それぞれ対応する色の波長帯域内において互いに異なる複数の波長の光を出射する。混合器21は、第1可視光源11から出射された光と、第2可視光源12から出射された光と、第3可視光源13から出射された光と、励起光源14から出射された光とを混合する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる色の可視光を出射する複数の可視光源と、
前記複数の可視光源から出射された光を混合する混合器と
を備え、
前記複数の可視光源は、少なくとも1つのマルチ波長光源を含み、
前記マルチ波長光源は、対応する色の波長帯域内において互いに異なる複数の波長の光を出射する照明装置。
【請求項2】
前記マルチ波長光源は、互いに異なる波長の光を出射する複数の発光素子を有している請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記複数の発光素子は、それぞれ半導体レーザー発光素子である請求項2記載の照明装置。
【請求項4】
蛍光造影剤の励起波長の光を出射する励起光源
をさらに備え、
前記混合器は、前記複数の可視光源から出射された光と、前記励起光源から出射された光とを混合する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記複数の可視光源及び前記励起光源の発光を制御する照明制御部
をさらに備え、
前記照明制御部は、前記複数の可視光源及び前記励起光源を、選択的に発光させることができる請求項4記載の照明装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の照明装置
を備えている内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置及び内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバープローブでは、光源として、発光ダイオード照明装置が用いられている。発光ダイオード照明装置は、赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオード、及び青色発光ダイオードを含んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-38847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の光ファイバープローブでは、単に赤、緑、及び青の3原色の光が用いられているだけであるため、演色性が低い。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、演色性を向上させることができる照明装置及び内視鏡装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る照明装置は、互いに異なる色の可視光を出射する複数の可視光源と、複数の可視光源から出射された光を混合する混合器とを備え、複数の可視光源は、少なくとも1つのマルチ波長光源を含み、マルチ波長光源は、対応する色の波長帯域内において互いに異なる複数の波長の光を出射する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の照明装置及び内視鏡装置によれば、演色性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による内視鏡装置を一部ブロックにより示す構成図である。
図2図1の照明装置を示すブロック図である。
図3図2の第1可視光源、第2可視光源、第3可視光源、及び励起光源から出射される光の波長と相対強度との関係を示すグラフである。
図4図2の第1可視光源及び第1駆動部の詳細な構成を示すブロック図である。
図5】半導体レーザー発光素子の電流による発光強度特性の一例を示すグラフである。
図6】半導体レーザー発光素子の温度による波長特性の一例を示すグラフである。
図7】光の波長による被写体への深部浸透度合いの違いを示すグラフである。
図8】キセノン照明により光を照射して得られた画像の一例を示す図である。
図9図8と同じ被写体に実施の形態1の照明装置により光を照射して得られた画像を示す図である。
図10図8の画像を得る際の光の状態を示す説明図である。
図11図9の画像を得る際の光の状態を示す説明図である。
図12】赤色波長帯域、緑色波長帯域、及び青色波長帯域のそれぞれについて1つずつの波長の光を出射する照明装置を用いた場合の演色評価数の例を示す図である。
図13】実施の形態1の照明装置を用いた場合の演色評価数の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による内視鏡装置を一部ブロックにより示す構成図である。図において、内視鏡装置は、内視鏡本体1、照明装置2、照明伝送ケーブル3、制御装置4、制御ケーブル5、及び表示装置6を有している。
【0010】
照明装置2は、照明伝送ケーブル3を介して、内視鏡本体1に接続されている。照明装置2からの光は、照明伝送ケーブル3を介して、内視鏡本体1に伝送される。
【0011】
制御装置4は、制御ケーブル5を介して内視鏡本体1に接続されている。表示装置6は、制御装置4に接続されている。内視鏡本体1によって撮像された映像は、表示装置6によって表示される。制御装置4は、内視鏡本体1、照明装置2、及び表示装置6を制御する。
【0012】
図2は、図1の照明装置2を示すブロック図である。照明装置2は、第1可視光源11、第2可視光源12、第3可視光源13、励起光源14、第1駆動部15、第2駆動部16、第3駆動部17、第4駆動部18、照明制御部19、照明電源部20、及び混合器21を有している。
【0013】
第1可視光源11、第2可視光源12、及び第3可視光源13は、互いに異なる色の可視光を出射する。この例では、可視光として、レーザー光が用いられている。励起光源14は、蛍光造影剤の励起波長の光を出射する。
【0014】
第1駆動部15は、第1可視光源11を駆動する。第2駆動部16は、第2可視光源12を駆動する。第3駆動部17は、第3可視光源13を駆動する。第4駆動部18は、励起光源14を駆動する。
【0015】
照明制御部19は、第1駆動部15、第2駆動部16、第3駆動部17、及び第4駆動部18を制御する。これにより、照明制御部19は、第1可視光源11、第2可視光源12、第3可視光源13、及び励起光源14の発光を制御する。また、照明制御部19は、第1可視光源11、第2可視光源12、第3可視光源13、及び励起光源14を、同時に発光させることも、選択的に発光させることもできる。
【0016】
照明電源部20は、照明制御部19、及び他の必要箇所に電力を供給する。
【0017】
混合器21は、第1可視光源11から出射された光と、第2可視光源12から出射された光と、第3可視光源13から出射された光と、励起光源14から出射された光とを混合する。混合器21としては、レーザー光混合用ロッドインテグレーターが用いられている。
【0018】
第1可視光源11、第2可視光源12、第3可視光源13、及び励起光源14と、混合器21との間は、複数本の光ファイバーによって接続されている。混合器21からの出力は、照明伝送ケーブル3に入力される。
【0019】
図3は、図2の第1可視光源11、第2可視光源12、第3可視光源13、及び励起光源14から出射される光の波長と相対強度との関係を示すグラフである。第1可視光源11、第2可視光源12、及び第3可視光源13は、マルチ波長光源として、それぞれ対応する色の波長帯域内において互いに異なる複数の波長の光を出射する。
【0020】
具体的には、第1可視光源11は、青色に対応しており、青色の波長帯域内において互いに異なる2つの波長の光を出射する。図2において、第1可視光源11からの出力は、分光特性S1,S2を有している。
【0021】
第2可視光源12は、緑色に対応しており、緑色の波長帯域内において互いに異なる2つの波長の光を出射する。図2において、第2可視光源12からの出力は、分光特性S3,S4を有している。
【0022】
第3可視光源13は、赤色に対応しており、赤色の波長帯域内において互いに異なる2つの波長の光を出射する。図2において、第3可視光源13からの出力は、分光特性S5,S6を有している。
【0023】
励起光源14は、可視領域よりも長い波長の光を出射する。可視領域は、400nmから700nmまでの領域である。図2において、励起光源14からの出力は、分光特性S7を有している。
【0024】
図4は、図2の第1可視光源11及び第1駆動部15の詳細な構成を示すブロック図である。第1可視光源11は、第1発光素子31、第2発光素子32、温度センサー33、及び冷却装置34を有している。
【0025】
第1発光素子31及び第2発光素子32は、青色の波長帯域内において互いに異なる2つの波長の光を出射する。第1発光素子31が出射する光の中心波長は、例えば450nmである。第2発光素子32が出射する光の中心波長は、例えば462nmである。第1発光素子31及び第2発光素子32としては、それぞれ半導体レーザー発光素子が用いられている。
【0026】
温度センサー33は、第1発光素子31及び第2発光素子32の周囲の温度を検出する。冷却装置34は、第1発光素子31及び第2発光素子32を冷却する。
【0027】
第1発光素子31から出射された光は、第1光ファイバー35を通して、混合器21に伝送される。第2発光素子32から出射された光は、第2光ファイバー36を通して、混合器21に伝送される。
【0028】
第1駆動部15は、第1検知回路38、第2検知回路39、及び発光素子駆動回路40を有している。
【0029】
第1検知回路38は、第1発光素子31に供給される電流を検知する。第2検知回路39は、第2発光素子32に供給される電流を検知する。
【0030】
発光素子駆動回路40は、照明制御部19からの指令に基づいて、第1発光素子31及び第2発光素子32を同時に発光させる。また、発光素子駆動回路40は、温度センサー33からの情報に基づいて、冷却装置34を駆動制御する。
【0031】
図4には、第1可視光源11の構成を示したが、第2可視光源12及び第3可視光源13の構成も第1可視光源11と同様である。但し、第2可視光源12の第1発光素子が出射する光の中心波長は、例えば512nmである。また、第2可視光源12の第2発光素子が出射する光の中心波長は、例えば520nmである。
【0032】
また、第3可視光源13の第1発光素子が出射する光の中心波長は、例えば650nmである。第3可視光源13の第2発光素子が出射する光の中心波長は、例えば664nmである。
【0033】
また、励起光源14は、第2発光素子を有していない。励起光源14の第1発光素子が出射する光の中心波長は、例えば780nmである。780nmは、蛍光造影剤としてのインドシアニングリーンの励起波長である。
【0034】
また、図4には、第1駆動部15の構成を示したが、第2駆動部16、第3駆動部17、及び第4駆動部18の構成も、第1駆動部15と同様である。但し、第4駆動部18は、第2検知回路を有していない。
【0035】
図5は、半導体レーザー発光素子の電流による発光強度特性の一例を示すグラフである。半導体レーザー発光素子による発光は、光による共振を伴うものであり、ある閾値以上の電流が必要である。図5において、A点は、半導体レーザー発光素子の閾値電流である。照明制御部19は、発光維持のため、半導体レーザー発光素子に閾値電流以上の電流が流れるように制御を行う。
【0036】
また、照明制御部19は、第1検知回路38により検知された電流に基づいて、図5のA点からB点までの範囲の中央値であるC点となるように、第1発光素子31に流れる電流を制御する。図5のA点からB点までの範囲は、閾値電流以上であって、電流に対して相対発光強度が線形に変化する範囲である。従って、B点は、相対発光強度が線形に変化する電流の最大値、又は最大値の近傍の値である。同様に、照明制御部19は、第2検知回路39により検知された電流に基づいて、第2発光素子32に流れる電流を制御する。
【0037】
図6は、半導体レーザー発光素子の温度による波長特性の一例を示すグラフである。半導体レーザー発光素子の発光波長は、素子の物性と構造とによって決まるが、発光中は温度に依存する。図6の例では、0℃から25℃までの周囲温度範囲内において、仕様範囲内の波長の光が出射される。
【0038】
この例では、発光素子駆動回路40は、温度センサー33によって検知される温度が20℃から25℃までの温度となるように、冷却装置34を制御する。これにより、第1可視光源11が出射する光の波長は、450nm±2nmと、462nm±2nmとに制御される。ここで、±2nmは、各発光素子の発光波長の帯域幅である。
【0039】
また、第2可視光源12が出射する光の波長は、512±2nmと520±2nmとに制御される。また、第3可視光源13が出射する光の波長は、650±2nmと664±2nmとに制御される。また、励起光源14が出射する光の波長は、780±2nmに制御される。
【0040】
第1可視光源11からの青色の光と、第2可視光源12からの緑色の光と、第3可視光源13からの赤色の光とが同時に出射され、混合器21により混合されることによって、混合器21からは白色光が出射される。
【0041】
また、混合器21は、入射された光を拡散させる。これにより、レーザー光のコヒーレント性が抑制され、入射された光が自然光と同様の特性に変換され、図3に示す分光特性を持つ光が出力される。混合器21は、できるだけ効率良く光を利用できるように、図示しない専用アタッチメントを介して、外部機器に接続される。
【0042】
このような照明装置2では、第1可視光源11、第2可視光源12、及び第3可視光源13が、それぞれ対応する色の波長帯域内において互いに異なる複数の波長の光を出射する。このため、演色性を向上させることができる。また、色の再現範囲を広げることができる。
【0043】
例えば、内視鏡装置においては、演色性が改善されることにより、体腔内の状態をより鮮明に確認することができる。
【0044】
また、第1可視光源11、第2可視光源12、及び第3可視光源13は、それぞれ第1発光素子31及び第2発光素子32を有している。このため、冗長系を構成することができ、第1発光素子31及び第2発光素子32のいずれかが故障した場合にも、照明装置2としての機能を維持することができる。
【0045】
また、第1可視光源11、第2可視光源12、及び第3可視光源13がそれぞれ1つの発光素子のみを有している場合と比べて、第1発光素子31及び第2発光素子32の発光出力をそれぞれ抑えることができる。そのため、第1発光素子31及び第2発光素子32の長寿命化を図ることができる。
【0046】
また、照明装置2は励起光源14を有しているため、被写体からの蛍光を得るために必要な励起光を選択的に照射することができる。
【0047】
また、必要な波長の光を必要とされるときに出射できるため、不要な波長の光成分を抑制することができ、被写体、術者、観察者等への悪影響を低減することができる。また、不必要な光を発生させず、管理され制御された波長帯域の光を選択的に発光することができる。不必要な光としては、例えば、目及び皮膚に有害な紫外線領域の光、及び熱線としての近赤外線領域の光が挙げられる。
【0048】
また、運用又は目的により、発光パターンを選択的に変えることができる。例えば、通常の可視光源としての運用時は、第1可視光源11、第2可視光源12、及び第3可視光源13を発光させ、励起光源14は発光させなくてもよい。また、蛍光観察に必要な波長のみを発光させることも可能である。
【0049】
また、第1発光素子31及び第2発光素子32として、半導体レーザー発光素子が用いられている。このため、より高出力な光を出射することができるとともに、波長を容易に制限することができる。また、固体デバイスを使用することによって、発光状態を検知することなどの自己診断機能を実現することができる。
【0050】
また、第1発光素子31に第1検知回路38が接続され、第2発光素子32に第2検知回路39が接続されているため、第1発光素子31及び第2発光素子32のそれぞれの状態を個別に診断することができる。
【0051】
例えば、第1検知回路38により検知される電流が図5のA点未満であったとき、照明制御部19は、第1発光素子31の発光が極めて弱いか、又は停止していると診断することができる。また、照明制御部19は、この診断結果に基づいて、第1発光素子31が寿命に達しているという自己診断結果を、ユーザーに報知することもできる。また、照明制御部19は、寿命に達していない第2発光素子32の出力を上げて、可視光源としての発光機能を継続させることもできる。
【0052】
ここで、図7は、光の波長による被写体への深部浸透度合いの違いを示すグラフである。図7において、P1は青色光の深部浸透度合いを表し、P2は緑色光の深部浸透度合いを表し、P3は赤色光の深部浸透度合いを表している。また、破線で囲んだ領域A1は、生体に安全な領域である。
【0053】
生体に安全な領域A1内のパワー密度でレーザー光を照射することによって、被写体の表面から数ミリメートル奥まで、レーザー光を浸透させることができる。これにより、被写体の表面だけでなく、数ミリメートル奥からも反射光及び拡散光が発生する。このため、実施の形態1の照明装置2では、一般的な光源とは異なり、被写体をより明るく鮮明で色鮮やかに観察することができる。
【0054】
例えば、キセノン照明からの光を乾燥肉に照射した場合、表面反射光が殆どであるため、表面の乾燥状態が強調されて見える。これに対して、実施の形態1の照明装置2からの光を乾燥肉に照射した場合、照明装置2からの光は、乾燥肉の内部に浸透する。そのため、乾燥肉の表面から数ミリメートル奥からも発色し、乾燥肉が非常に鮮明に見え、照射条件によっては乾燥肉が生肉に見える場合もある。これは、照明装置2からの光のパワー密度が、キセノン照明のパワー密度よりも高いからである。
【0055】
また、図7に示すように、被写体への浸透度合いは、光の波長によって異なる。具体的には、波長が長くなれば、浸透度合いが大きくなる。この特性を利用して、被写体の表面に近い部分には短い波長の光を使い、被写体の奥の部分には長い波長の光を使うことにより、より明瞭に被写体を映し出すことができる。
【0056】
観察の目的によっては、1波長のみを用いることも、複数の波長を組み合わせて用いることもできる。また、複数の波長を組み合わせて用いる場合、各波長のパワー密度及び強度に差をつけることにより、被写体内の観察したい部分をより強調することもできる。
【0057】
図8は、キセノン照明により光を照射して得られた画像の一例を示す図である。図9は、図8と同じ被写体に実施の形態1の照明装置2により光を照射して得られた画像を示す図である。図9の画像は、図8の画像に比べて、明るく、明瞭な画像となっている。
【0058】
図10は、図8の画像を得る際の光の状態を示す説明図である。キセノン照明から出射された直接光L1は、被写体の表面において反射され、反射光L2となる。
【0059】
図11は、図9の画像を得る際の光の状態を示す説明図である。照明装置2から出射された直接光L3は、被写体の表面において反射され、反射光L4となる。また、照明装置2から出射された直接光L3の一部である直接光L5は、被写体の内部に浸透し、反射光又は拡散光L6となる。
【0060】
このように、照明装置2によれば、通常の反射光L4に、被写体の内部からの反射光又は拡散光L6が加わるため、3次元的な反射光を見ることができ、全体に明るく鮮やかに被写体、特に生体を観察することができる。また、被写体の表面だけでなく、被写体の深部の観察光像を得ることができる。
【0061】
ここで、「演色性」とは、照明の色に関する客観的評価方法であり、JIS Z 8726:1990において定められている。
【0062】
図12は、赤色波長帯域、緑色波長帯域、及び青色波長帯域のそれぞれについて1つずつの波長の光を出射する照明装置を用いた場合の演色評価数の例を示す図である。図12の例では、平均演色評価数Raは、約50である。また、特殊演色評価数R9は、約-70である。これら数値は、100に近い方が自然光に近いとされるのに対して、かなり低い値であると言える。
【0063】
一方、図13は、実施の形態1の照明装置2を用いた場合の演色評価数の例を示す図である。図13の例では、平均演色評価数Raは、80である。また、特殊演色評価数R9は、30である。このように、実施の形態1の照明装置2では、色再現性が改善され、より自然光に近い評価結果が得られている。
【0064】
なお、可視光源の数は、3つに限定されない。
【0065】
また、必ずしも全ての可視光源をマルチ波長光源としなくてもよく、少なくとも1つの可視光源をマルチ波長光源とすれば、マルチ波長光源を持たない場合に比べて、演色性を向上させることができる。
【0066】
また、各マルチ波長光源が出射する光の波長は、上記の例に限定されない。例えば、青色の可視光源が出射する光の中心波長は、450nmと462nmとに限定されず、可視光としての青色を構成できる複数の波長を選択すれば、440nmでも460nmでもよい。
【0067】
また、各可視光源が出射する光の波長の帯域幅についても、±2nmに限定されず、例えば、±10nm程度であってもよい。また、計測用途とする場合、さらに狭帯域、例えば±0.2nmとしてもよい。
【0068】
また、マルチ波長光源は、対応する色の波長帯域内において互いに異なる3つ以上の波長の光を出射してもよく、これにより演色性をさらに向上させることができる。また、異なる波長の光の数を増やすことにより、それぞれの発光出力を抑えることができ、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【0069】
また、照明制御部は、自己診断機能として、各検知回路によって検知された発光素子の電流の経年変化を監視してもよい。この場合、検知される電流値が低下閾値まで低下したとき、発光停止が近いと判断し、ユーザーに報知してもよい。低下閾値は、例えば図5のA点に対して余裕分だけ高い値に設定される。
【0070】
また、励起光源が出射する光の中心波長及び帯域幅も、上記の例に限定されず、例えば、励起効率のピーク付近である800nm±5nmであってもよい。
【0071】
また、励起光源が出射する光の波長は、インドシアニングリーンの励起波長に限定されず、例えば、フルオレセインの励起波長である490nm、又は5-ALA(5-アミノレブリン酸)の励起波長である400nmであってもよい。フルオレセイン及び5ALAは、蛍光血管造影剤である。例えば、フルオレセインの場合は、励起光源14のみを発光させることにより、ブロードな特性のLED照明及びキセノン照明よりも効率良く蛍光像を得ることができる。
【0072】
また、可視光源が励起光源を兼ねてもよい。例えば、青色の可視光源から、フルオレセインの励起波長である490nmの波長の光を出射させてもよい。この場合、可視光照明としての使用時は、3つの可視光源を同時に駆動し、蛍光血管造影観察時は、490nmの波長の光の発光素子のみを駆動すればよい。
【0073】
また、励起光源は、省略してもよい。
【0074】
また、発光素子は、半導体レーザー発光素子に限らず、波長と帯域とを制御可能、かつ制限可能であれば、LED、他のレーザー発光素子等であってもよい。
【0075】
また、照明装置の用途は、医療に限らず、産業用途であってもよい。具体的には、照明装置の用途は、内視鏡装置に限らず、無影灯、顕微鏡等であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
2 照明装置、11 第1可視光源(マルチ波長光源)、12 第2可視光源(マルチ波長光源)、13 第3可視光源(マルチ波長光源)、14 励起光源、19 照明制御部、21 混合器、31 第1発光素子、32 第2発光素子。
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